NanoTerasu(次世代放射光施設)の利活用の在り方に関する有識者会議 (第1回)議事録

1.日時

令和4年8月25日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省15階科学技術・学術政策局会議室1およびオンライン

3.議題

  1. 有識者会議の設置及び運営要領について【非公開】
  2. NanoTerasuに係る取組状況について
  3. その他

4.出席者

委員

千葉一裕 座長、平井良典 座長代理、荒井雄一郎 委員、石川哲也 委員、宇治原徹 委員、小松秀樹 委員、横山広美 委員

文部科学省

科学技術・学術政策局長 千原由幸、大臣官房審議官 阿蘇隆之、科学技術・学術政策局 研究環境課長 古田裕志、課長補佐 林周平

オブザーバー

光科学イノベーションセンター 高田昌樹 理事長、量子科学技術研究開発機構 次世代放射光施設整備開発センター 内海渉 センター長

5.議事録

今回の議事は、公開の取扱いに係る手続き等があったため、議題1は非公開とした。
 
【林補佐】  皆さん、おはようございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまからNanoTerasuの利活用の在り方に関する有識会議を開催いたします。
 事務局を担当しております林周平と申します。よろしくお願いいたします。
 本日は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンライン会議システムも併用しつつの開催といたします。
 なお、本会議は傍聴のためにYouTubeでライブ配信を行っておりまして、昨日までに260名を超える多数の御登録をいただいております。
 本日の議事は、主に有識者会議の設置及び運営要領について、NanoTerasuの整備、進捗状況についてとなります。有識者会議の設置及び運営要領については、本会議の開催規定に基づき、非公開といたします。
 本日は、オンライン参加2名を含む合計7名の委員の皆様に御出席いただいております。岸本委員と辻本委員は、本日、御欠席です。第1回会議ですので、各委員の皆様からの自己紹介とNanoTerasuとの関係等について一言ずついただきたいと考えております。
 まずは千葉座長、よろしくお願いいたします。
 
【千葉座長】  皆さん、おはようございます。東京農工大学学長の千葉でございます。このたび本会の座長という大変僣越な役回りを仰せつかりまして大変恐縮しております。私は、専門は有機合成化学でありまして、直接は、この技術に関係してきたものではないのですけれども、これまでに大学発のスタートアップとか、あるいは産学連携の事業開発などをやってきたということで、少しその経験を生かしなさいということで、恐らくこういう形で拝命されたのだと思います。ぜひ皆様の御協力をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【林補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、平井座長代理、よろしくお願いいたします。
 
【平井座長代理】  皆さん、おはようございます。AGC株式会社のCEOの平井です。私の専門は物理工学、物性物理です。課程で博士号を取った後に民間企業に入り会社の経営をしているというのは日本では極めて稀な経験ではないかと思っています。文科省とはこれまで産学連携を含めたいろいろな広がりを模索してきました。本分野は全くの専門外ですが、会社が素材・マテリアルの関係の仕事をしていますので、そういった分野の新しいイノベーションにつながればと思い参加させていただいております。これからよろしくお願いいたします。
 
【林補佐】  ありがとうございます。
 ここからは五十音順で、荒井委員、お願いいたします。
 
【荒井委員】  初めまして、株式会社博報堂、テーマビジネスデザイン局局長の荒井と申します。よろしくお願いいたします。私は、広告代理店ということで、民間企業さんのブランディングですとかマーケティングに30年ほど携わってきておりまして、この4月からテーマビジネスデザイン局の局長を拝命しております。テーマビジネスデザイン局は、国ですとか官公庁、それから、自治体などを主なクライアントとしておりまして、そのような流れで本日、委員を拝命したと認識しております。
 NanoTerasuのお話を聞いたときに、もう直感というか、感覚的なものなのですが、非常に何かワクワクする感じを受けておりまして、この施設が日本の宝になっていけるような気持ちと、あと若輩者ですけれども、マーケティング等やブランディング等の私の視点がお役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【林補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、石川委員、お願いいたします。
 
【石川委員】  理化学研究所の石川でございます。私は、ある意味でSPring-8という、このNanoTerasuの兄弟のようなものが、今、西日本、兵庫県にございまして、そこの責任者をしております。このような施設は、やはり作り上げてからどう使うかというところが非常に重要でございまして、そういう観点からいろいろと皆さんのお話を伺っていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【林補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、宇治原委員、お願いいたします。
 
【宇治原委員】  名古屋大学の未来材料・システム研究所の宇治原と申します。私の専門は半導体の結晶成長です。今は、最近話題のパワー半導体のSiCや放熱のためのセラミックス等を作っています。また、SiCにしても、放熱にしても、我々のところでは研究室発のベンチャーが3つあります。また、扱っている材料は結晶ですので、放射光もすごくよく活用させていただいています。そういう意味では放射光施設、マテリアル開発、それを社会実装するためのベンチャーという3つのキーワードが私の中にあると思っています。そういった観点で議論に参加させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
【林補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、小松委員、お願いいたします。
 
【小松委員】  おはようございます。ブリヂストンの小松でございます。私は、高分子合成から高分子物性、特に複合体の物性を専門としております。昨年初めから経営側のほうから離れて、今はフェローという形で産官学の連携に関していろいろと企画したり、展開したりしています。その一環で第3次のSIPの参画を目指していまして、その関連で古田課長ともお知り合いになることができました。
 NanoTerasuに関しましては、一応、協賛企業ということで、既にいろいろと議論させていただいていますが、我々としては、やはり使う側として非常に期待する部分も大きいと感じています。徹底的に使う側からの立場でいろいろとディスカッションさせていただければと思います。よろしくお願いします。
 
【林補佐】  ありがとうございます。
 続きまして、横山委員、お願いいたします。
 
【横山委員】  東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構の横山と申します。本日はオンラインで失礼いたします。私の専門は科学技術社会論といいまして、科学と社会、あるいは科学と地域、そしてコミュニケーションの研究をさせていただいております。博士課程まで素粒子実験で加速器を使った研究をしておりましたことから、長く加速器に関する議論に加わらせていただいております。いろいろ皆様からお教えいただきながら、微力ながら尽くしていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【林補佐】  ありがとうございます。
 また、議題2の関係で今回は量子科学技術研究開発機構次世代放射光施設整備開発センターの内海センター長及び光科学イノベーションセンターの高田理事長にも御出席いただいております。
 また、文部科学省からは、私、林と科学技術・学術政策局長、千原、大臣官房審議官、阿蘇、研究環境課長、古田も参加させていただいております。
 それでは、オンライン参加の方のための留意事項について説明させていただきます。通信を安定させるため、御発言されるとき以外は可能な限りマイクをミュートにしてください。また、御発言される際はミュートを解除してください。議事録作成のため、速記者を入れておりますので、お名前を言っていただいた後に御発言をお願いします。会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話をお願いします。オンライン参加の留意事項については、以上となります。
 次に配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は資料の1から7までと参考資料1となります。オンライン参加の方はZoom上に画面共有しておりますので、御覧ください。画面が見えにくい場合は、適宜、事前にお送りしている資料を御覧いただければと思います。
 御不明点はございませんでしょうか。特に会議中に御不明点があれば、事務局までお知らせいただくか、あるいはオンライン参加の委員の方は事務局までお電話ください。
 それでは、会議の冒頭に当たりまして科学技術・学術政策局長の千原から御挨拶をいただきたいと思います。千原局長、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【千原局長】  先生方、おはようございます。ただいま御紹介にあずかりました千原でございます。先生方におかれましては、大変お忙しい中、この有識者会議のメンバーをお引き受けくださりまして、また、本日もオンライン、または、対面で御参集を賜りまして誠にありがとうございます。
 現在、御案内のとおりでございますが、東北大学青葉山新キャンパスに建設中の次世代放射光施設でありますNanoTerasuにつきましては、令和5年度の稼働、そして令和6年度の運用開始を目指して着実に整備が進められているところでございます。軟X線領域の高輝度な放射光を提供するNanoTerasuにつきましては、官民地域パートナーシップという新しい仕組みに基づいて整備を進めておりまして、新しい時代のモデルケースとしての期待も大きいところでございます。
 NanoTerasuにつきましては、令和6年度より共用に供するため、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律、これを改正してNanoTerasuを同法において定める特定先端大型研究施設として新たに追加すること等を検討中でございます。このような中、NanoTerasuの運用開始に向けまして、その最大限の効果を得るべく、NanoTerasuの利活用の在り方についての検討を行うため、このたび産学から幅広い分野のキーパーソンである先生方にお集まりをいただいた次第でございます。
 本日は第1回目といたしまして、NanoTerasuの整備の進捗状況と運用期に向けた現在の対応状況について御議論いただければと考えてございます。今後、NanoTerasuが産学の幅広いユーザーへの利用に供されまして、最先端の研究成果の持続的な創出拠点となり、さらには産学連携によるイノベーションの創出拠点となるように有識者の皆様には忌憚のない御意見を賜れればと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。
 
【林補佐】  ありがとうございました。それでは、議事に入りたいと思います。ここからは研究環境課長の古田より進行いたします。
 
議題1.有識者会議の設置及び運営要領について、資料1-1及び資料1-2について承認された。
 
【古田課長】  それでは、続きまして議題2に入ります。資料2に基づきまして官民地域パートナーシップによるNanoTerasuの推進について説明をいたします。2ページにNanoTerasuの説明がございます。官民地域パートナーシップは、我が国で初めての取組でございまして、国側がQST、パートナー側が光科学イノベーションセンター(PhoSIC)を中心に宮城県、仙台市、東北大学、東経連がパートナーを組んでいるという形でございます。役割分担としましては、国が加速器、パートナーが基本建屋と整備用地になりまして、ビームラインはそれぞれ3本と7本を分担するということでございます。整備の総額が380億円ということで国が約200億、パートナーが180億円ということになっております。
 次の3ページを御覧いただきたいと思います。これまでの状況ですが、地域パートナーの選定から順調に整備が進んでおります。現在、基本建屋がほぼ完成して加速器などを搬入しているという状況でございます。今後は来年度中にファーストビーム、2024年度の運用開始を目指していきたいと考えてございます。
 4ページの詳しい説明は省略いたしますが、国側の3本はQSTが整備をしている世界最高性能で自然科学を先導するもの、PhoSIC側の7本は汎用性のある様々な物質の機能を可視化するものということになってございます。
 次の5ページを御覧いただきたいと思います。共用促進法と言っておりますが、SPring-8、SACLA、J-PARC、富岳がこの法律の対象施設に認定されておりまして、施設の設置者に対して登録施設利用促進機関というのが設けられてございます。NanoTerasuに関しましても法改正をして、この枠組みに入れていきたいと考えてございます。
 6ページは今回、NanoTerasuで工夫をしたところでございます。これまでですと、国が設置する共用ビームラインと国以外の者が設置する専用ビームラインで分かれて運用しておりました。今回、専用ビームラインに空きがある場合には、その時間を共用枠として、一般的な共用促進法に基づく共用を行うというような工夫を考えてございます。
 以上でございます。ただいまの説明に対して何か御質問などございましたら、お願いいたします。時間の関係上、かなり説明文書は少なくしております。参考文書にたくさんありますので、御質問いただければ詳しく説明いたします。
 
【古田課長】  続きまして資料3に基づきまして、高田理事長からNanoTerasuの整備進捗状況について御説明をお願いいたします。発表時間は10分となります。終了時間を超過した場合にはお声がけをさせていただきますので、速やかにまとめていただきますようお願いいたします。それでは、高田理事長、よろしくお願いします。
 
【高田理事長】  それでは、光科学イノベーションセンター理事長の高田から説明をさせていただきます。ここに御覧になっていただいておりますのは、現在のNanoTerasuでございます。ほぼ99%外側の建屋は完成をしております。遠くに見えますのが仙台市内でございまして、仙台駅から地下鉄で9分という利便性の高い東北大学のキャンパス内に今建設をされているところでございます。後ほど説明いたしますが、この建屋の中で今、加速器の整備が進んでいるところでございます。
 2ページをお願いいたします。NanoTerasuの整備方法ですけれども、我が国初といいますか、海外でも例のない官民地域パートナーシップというやり方で整備をしております。国、パートナーがそれぞれ役割分担を決めて、枢要部の加速器は国の主体でありますQST、そしてビームラインはQSTとパートナー、そして基本建屋はパートナーが整備をするという形になっております。
 3ページをお願いいたします。2024年より運用開始の予定になっておりますので、22年1月にQSTと我々財団、そして地域パーナトナーの学術の部分を担っております東北大学によって、次世代放射光施設運営会議が発足しております。こういった形で運用期に向けて様々な事項について議論を進めております。
 4ページをお願いいたします。次世代放射光施設の目指すものと書いております。上のグラフは、縦軸が放射光の輝度、横軸がエネルギーでございます。現在、我が国はSPring-8において、硬X線、エネルギーの高いところのX線を持っておりますけれども、軟X線向けは2桁、3桁、輝度の低い放射光施設しか持ち得ませんでした。海外にどんどん抜かれていったところ、NanoTerasuによって一気に逆転をして、SPring-8と互いに幅広い領域をカバーしていく。そして、特に軟X線のところは機能を可視化するというところを大きな目的としております。しかも、SPring-8での研究開発の成果として、コヒーレント、干渉性の高い光を使うことができるようになります。この本格的な活用によりまして、これまでと違う可視化が一気に進みますので、放射光によって出てきた成果が物づくりと非常に距離が近くなっていくというわけでございます。
 5ページをお願いいたします。スケジュールでございますが、2019年から整備に着手いたしまして、上側が国の役割分担における整備状況、下側がパートナー側の整備状況になっております。加速器の設置開始が2021年12月からでございまして、今はちょうど半ばまで来たところでございます。2023年12月にはファーストビームを見込んでおります。現在のところ、予定どおり全て順調に進んでおります。
 6ページをお願いいたします。加速器のほうは、先ほど申し上げましたようにQSTが建設を進めております。左上のグラフは、SPring-8と次世代放射光において輝度の違いとエネルギー領域の違いを示したものでございます。SPring-8でも軟X線は出していただいておりました。これはやはり企業、そして学術の大きなデマンドがあったということで出していたわけでございますが、やはり硬X線向きということで強度がどうしても、輝度がどうしても低くなってしまいました。そこをブルーで示したように、次世代放射光はしっかりと同じレベルの輝度でカバーをしていくということになるわけでございます。
 これを可能にしたのはSPring-8でやってきました加速器のR&Dの技術が基になっておりまして、それが左下の表になっております。ここで特に見ていただきたいのは、エミッタンスと書かれております下から3番目のカラムの数値でございます。これは加速器の中を走り回る電子ビームの細さでございますけれども、これが1.14nmradでSPring-8に比べて約半分の値になっております。それが目に見える形にしているものが右上の電子ビームサイズの比較というものでございます。この電子ビームから光が出てきますので、電子ビームが小さければ小さいほど輝度が高くなります。そして、コヒーレンス、干渉性がよくなるというのがこれまでのSPring-8でやってきましたR&Dの成果でございます。
 7ページをお願いいたします。これもQSTによるものでございますけれども、加速器の構成が示してあります。ここで大事なポイントは、設計図にあります線型加速器110メートルです。これがSPring-8、SACLAの直線加速器の技術を転用したものでございます。その成果を使ったものが、Cバンド加速管というのでございます。同じような直線加速器で直接蓄積リングに電子ビームを入れる方式はスウェーデンにもございますが、こちらはSバンドでございますので300メートルと長くなっております。この日本がSACLAの研究開発で作り上げた直線加速器の技術がこういった非常に短い加速器で加速を可能にしたという点が1つの成果でもございます。
 8ページをお願いいたします。ビームラインのレイアウトでございます。これはQSTとPhoSIC双方でやっております。赤で示しましたのが共用ビームライン、青で示しましたのがコアリションビームラインで、地域パートナーが整備しているものでございます。それぞれ3本と7本でございます。この実験ホールの中に作られましたビームラインそれぞれについて次のページで説明いたします。
 9ページをお願いいたします。QST、ここは3本の軟X線、これは学術的に最先端の研究開発をやるということでございまして、放射光の軟X線を入れていきますと、電子が出てきたり、散乱X線が出てきたり、透過したX線、これをそれぞれ計測いたしますと、電子状態であるとか、機能であるとか、そういったものが明らかになります。それぞれのビームラインはナノ光電子分光、超高分解能共鳴X線非弾性散乱、そしてナノ吸収分光という手法でございます。下にピクトグラムでどのような分野に使われるかということを示しております。
 10ページをお願いします。こちらはPhoSICの7本のビームラインでございます。それぞれのビームラインは、感染症対策、マテリアル革新力、Green、SDGsに寄与するものとしてピクトグラムで整理をしてございます。
 最後の11ページは放射線安全に関してでございます。実験ホールは研究者が実験をして、産学がイノベーションを起こすところでありますが、従来ですと、左側にありますように赤で示した管理区域に設定されてしまいまして、放射線従事者でないと入れないということになります。今回、QSTによりまして、管理区域を大幅に縮小いたしました。これにより、実験ホールに一般の研究者も入れるようになりまして、イノベーションを促進するという大きな進歩にもなっております。
 私からは以上でございます。
 
【古田課長】  どうもありがとうございました。
 ただいまの御質問に対して質疑の時間をとりたいと思います。何か御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。オンラインで御参加の宇治原先生、横山先生、何かございましたら、挙手をお願いします。
 
【横山委員】  どうもありがとうございます。すばらしい計画だなと改めて拝聴させていただきました。この最後のスライドなのですけれども、管理区域が小さくなっていろいろな研究者が自由に入れるというのは、本当にすばらしく、研究の活性化につながるのではないかと期待しているところです。一方で、私はJ-PARCの中性子ビームの議論に長く関わってきたのですが、やはり安全という意味でどれくらいきちんと整備されているのかというのは気になるところかと思います。この辺りの先生方の実感として、どの程度安全性がきちんと確保されているのかというのを改めてコメントいただけますでしょうか。
 
【古田課長】  ありがとうございます。放射線安全の責任はQSTですので、内海センター長からお願いできますか。
 
【内海センター長】  御質問ありがとうございます。内海から答えさせていただきます。高田理事長から御説明がありましたように、実験ホールを管理区域からはずすことができれば、ユーザーにとっての利便性が大きく高まるということで、これを何とかしようというのが今回の最初からの大きな目標でございました。一方で、利用者の利便性を高めるのとトレードオフで、施設側に求められる安全面での要求が高くなり、利用者の安全担保が非常に重要になります。
 細かいことは申し上げませんが、実験ホールを法律上管理区域から外すためには、3か月で1.3ミリシーベルト以下の放射線レベルを担保する必要があり、実験ホールの中にたくさんの放射線モニタを置いていて、少しでも漏洩が感知されれば加速器を即時に止めるシステムを我々の方で準備しております。原子力規制庁には、そういった諸々の内容をご理解いただき、今、審査をしていただいているところです。
 
【横山委員】  ありがとうございます。ぜひうまく進むことを期待しております。ハード側の整備と同時にソフト側、要するに危機時の対応の仕方だとか連絡の整備などもぜひ御検討いただくとよろしいのかなと拝聴した次第です。
 
【内海センター長】  ありがとうございました。
 
【古田課長】  ありがとうございました。
 
【高田理事長】  私から少しだけ。
 
【古田課長】  高田理事長。
 
【高田理事長】  今、内海センター長が説明をしてくださいました。付け加えますと、海外の放射光施設のほとんどが今回の我々が設定しているような実験ホールが管理区域から外されております。補足としてお伝えしておきます。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 それでは、ほかの委員の方、どなたか何かございますでしょうか。この後、運用の話をさせていただいた後に全体的な議論をいたしますので、その際でも結構ですので、次に進めさせていただきたいと思います。
 
【古田課長】  それでは、資料4に移りたいと思います。1枚紙を準備してございます。初めに説明しましたとおり、1から9の検討事項を事務局として準備をしております。当然、議論の展開によっては、これ以外の項目ないしは今少ししか書いていない項目を非常に大きくすることも考えられます。例えば、9番の将来的な発展の方向とビジョンというところは、本当に限りなく広いテーマだと思いますので、ぜひこのような観点から御議論いただきたいと思っております。特に説明をいたしませんが、こういったことを念頭に置きながら、この後の御説明を聞いていただきたいと思います。
 よろしければ、続きまして資料5に基づきまして、QSTの内海センター長より検討事項に係る現在の対応状況について御説明をお願いします。発表時間は10分で、終了時間を終了した場合には事務局からお声がけをさせていただきますので、まとめていただきますようお願いいたします。では、よろしくお願いします。
 
【内海センター長】  内海でございます。本来ですと、運営会議議長でQST理事の茅野のほうから御報告すべきところですが、今日、茅野が所用により欠席でございますので、内海から説明させていただきたいと思います。資料5、大変ボリューミーになっておりますが、ポイントだけ説明いたします。
 3ページ目をお願いいたします。これがまず2023年度と2024年度の運転計画でございます。既にお話が出ていますように、2023年度、令和5年度までが整備期間、そして2024年度から運用期ということになります。赤で加速器、ブルーとオレンジでビームラインの運用について書いてございます。そして、2023年の12月に加速器を回してファーストビームを出すという予定になっております。
 加速器のキーポイントとしては、最終的には400ミリアンペアという電流値で蓄積電流を回します。しかし、放射光施設の常で、加速器にしてもビームラインにしても運用を開始した段階でいきなりゼロから100になるというようなものではございませんので、少し時間をかけてそれを調整していくという作業が必要になります。運用開始の2024年4月に100ミリアンペア、そしてその年度末3月に200ミリアンペアを目標としております。2026年度は定格の400ミリアンペアを予定しているところでございます。
 加速器の調整時間が必要になりますので、2024年度についてはビームラインへの放射光供給は3,500時間を予定しております。これに伴いまして共用ビームラインとコアリションビームラインの2024年度の運用の様子を図に示しています。共用ビームラインとコアリションビームラインで少し様子が違っておりまして、共用ビームラインのほうはかなり先端的な装置でございますので、2024年度に関しては調整期間を少し長くとって、調整と試験的運用というのを並行して行う。そして、本格的な共用は3月からを予定しております。一方で、コアリションビームラインについては、利用者が多く待っておられますので、ビームラインの調整と並行して、できるだけ可及的速やかに調整ができたビームラインからコアリションビームタイムを利用するという予定になっております。
 4ページをお願いいたします。このスライドは2025年度、2026年度です。2025年度は、ビームラインへは4,500時間のビーム供給、2026年度以降は5,000時間の供給というところを予定しております。
 共用ビームラインについて、2025年度は本格的な共用を実施、コアリションビームラインのほうも同様です。そして2026年度から、先ほど古田課長からお話がありましたように、コアリションビームラインの一部を共用ビームタイムとして使わせていただくということを今議論しております。すなわち、コアリションビームラインにおける共用枠を2026年度から開始する予定になっているところでございます。
 6ページをお願いいたします。ここで共用ビームラインとコアリションビームラインの使い方の違い、イメージの違いを簡単に御説明させていただきます。まず、QSTが今整備を進めております3本の共用ビームラインでございます。こちらに関しましては、先ほどから何度か出ていますが、世界最高性能の装置で自然科学・学術分野を先導したいと考えております。共用ビームラインは、主として大学や公的研究機関、そしてもちろん民間企業にも使っていただきますが、各機関所属の個人の研究者から利用課題を公募して、その課題審査を行い、課題の採択・不採択を決めて、配分ビームタイムを決定するやり方を考えております。ビームを使った後には報告書並びに論文を書いていただきます。そして、利用料金ですが、共用ビームラインに関しては成果を公開していただくものに関しては原則無料とします。大学関係でもプロジェクト等々で、あるいは民間の方がお使いいただく場合などに成果を専有したい、発表したくないというユーザーさんは、当然おられますので、その場合には適正な利用料金をお支払いいただくという形にしたいと考えています。
 7ページでございます。PhoSICが整備されておられるコアリションビームラインについては、少し使い方が変わります。これが今回のNanoTerasuの非常に大きな特徴の1つです。7本のコアリションビームライは軟X線だけではなくて、ハードX線も使える非常にバランスのいいラインナップになっています。コアリションビームラインのコアリションビームタイムについては、PhoSICが運営を行うことになっており、原則として加入金を出資していただいた企業・大学・公的研究機関など、コアリションメンバーと称しているのですが、そこが組織として利用可能であるということです。コアリションメンバーの利用に関しては、課題審査は基本的にありません。安全審査だけは少しさせていただきますが、共用ビームラインで行われるような課題審査はなしで使うことができ、かつ成果公開の義務もないということです。
 コアリションビームラインのほうは個人単位の利用ではなくて、むしろ組織としての戦略的利用、組織対組織、それから、産学官の連携による社会的問題解決ということを目的にしております。原則として1口5,000万円の加入金というのをPhoSICに出資していただくことにより、コアリションビームラインの利用に関して10年間の権利をお持ちいただくということでございます。コアリションメンバーは、7本のビームラインどれでも、1口当たり1年間200時間まで利用可能ということになっています。毎月利用予約システムから希望を取り、臨機応変にビームを使えるようにする予定でございます。
 8ページのコアリションコンセプトについては、時間の関係で省略させていただきます。次、9ページでございますが、利用ニーズが高いビームラインに関しては、利用機会を増やすために、ビームラインを技術的に分岐することを考えております。ビームラインには、1本のビームライン当たり測定装置が複数個、Aの装置、Bの装置、Cの装置とついていることがよくありますが、多くの場合それを同時に使うことはできません。今回、幾つかのコアリションビームラインについては同時に複数の測定装置にビームを供給できるようなビームライン分岐を行うことを考えておりまして、これによってビーム利用可能時間を実質的に倍にするというようなこと検討しているところでございます。
 10ページでございますが、コアリションビームラインは、7本のビームラインとして非常に使い勝手のいい、バランスのとれたラインナップになっておりますので、大学の先生方等にも、ぜひここを使いたいという方がたくさんおられます。一方で個人の先生方が1口5,000万の加入金を支払うことは難しいので、先ほど申しましたように、コアリションビームラインの一部を共用枠として使えるようにすることを検討しております。
 これを実現するためには、ビームラインの分岐の改造をしたり、加速器の運転時間を増やしたりすることが必要になりますので、今のところ、共用枠の設定については、初年度からではなくて2年後の2026年度から開始する予定にしています。そのイメージをグラフで書いてございますが、おおむね40%程度のビームタイムをめどとしてコアリションビームラインの共用枠を設定して、それについては3本の共用ビームラインと同じような運用をするということを今検討しているところでございます。
 12ページをお願いいたします。組織体制でございます。すでにお聞きいただいてのとおり、非常に複雑な多岐にわたる組織がこのプロジェクトに関わっております。法律の改正後に詳細な組織体制が決まってくるわけですが、NanoTerasuの運営に関して基盤になる組織のイメージを示しています。
 量研とPhoSICの関係ですが、量研はNanoTerasu全体の設置者という形で国から補助金をいただく。一方で、PhoSICは建設いただいた基本建屋のオーナーであり、またコアリションビームラインのオーナー及び運営という立場でプロジェクトを担っていただく。そして、国の事業を実施するに当たって量研は基本建屋をその所有者であるPhoSICさんからお借りする。一方で、PhoSICは所有者として基本建屋の維持管理に責任を持つとともに、コアリションビームラインの維持管理及び運営を行うことを検討しているところでございます。
 それぞれ国の機関と一般財団法人というミッションが違う法人なので、なかなか1つの組織にはできないところがございます。そのため、共通する運営調整機能として、先ほど高田理事長から御説明があった運営会議というのを置いています。図中の矢印でお金の流れを書いています。
 15ページをお願いいたします。共用ビームラインについては、先ほど申し上げたように、少し時間をかけてこれを立ち上げていきたいと考えております。古田課長の御説明にありましたけれども、登録機関を共用法改正の後、設置するということになっておりますが、その設置は最速でも2024年度からということで、最初の2024年度、令和6年度は、共用ビームラインに関しては立ち上げと試験的共用を並行して行いながら、中身をブラッシュアップして本格的共用に備えるということを予定しています。試験的共用の詳細については16ページに書いてございますが、省略させていただきます。
 18ページまでお願いいたします。今度はアウトリーチの状況でございます。当然、ホームページがございますが、これまでの経緯で量研とPhoSIC、それから、東北大学がそれぞれのホームページでNanoTerasuに関するいろいろな情報を発信しております。各ホームページには、非常に詳しい情報が載ってはいるのですが、それぞれの組織のミッションに応じてばらばらの形で発信しているという状況でございました。
 19ページをお願いします。NanoTerasuという名前が決まりまして、ドメイン名を獲得することができ、「nanoterasu.jp」という形で共通のポータルサイトが作れる状況にようやくなりましたので、今後、ここを全体のポータルサイトにしていきたいと考えている次第でございます。
 20ページはポスターについてです。今、会議室の壁に貼っていただいていますが、文科省と東北大学の協力で非常にきれいなポスターを作っていただきました。また、これ以外の多くのアウトリーチ、非常にたくさんのシンポジウムでありますとかワークショップ、それから、コアリションメンバーに向けてのコンファレンス等々を行っておりますが、それは参考資料のほうにまとめましたので御参考ください。
 21ページでございます。文科省とQSTの合同で、実際どのくらいのニーズがあるのかを多くの学会等の協力を得てアンケート調査をいたしました。こ非常にたくさんの方々から回答をいただき、ここではその結果の一部だけを示しました。10本の各ビームラインについて、それぞれ何日使いたいかという日数を足し算した結果でございます。先ほど申しましたように年間で、3年目からでも5,000時間、約200日しかマシンタイムがないのに対して、1,000日とか、1,200日とか、非常にたくさんの方々が使いたいということで、競争率が4倍から7倍以上あるということが分かりました。これは単純なアンケートですので、そのまま実際の運用が始まったときに反映されるかどうかは分かりませんけれども、少なくとも潜在的にこれだけ非常にたくさんのポテンシャル的な利用ニーズがあるということは言えるかと思います。
 最後に23、24ページだけ簡単に御説明させていただきます。本プロジェクトの特徴の1つは、施設が東北大学のキャンパス内にあることで、これは計り知れないメリットでございます。今後いろいろな形で連携や将来構想を作らないといけないのですけれども、東北大学からスライドを2枚お借りしてきました。今の時代、デジタルトランスフォーメーションが非常に重要になるわけですけれども、東北大学のスパコンやストレージのようなインフラを使い、さらには新たな予算措置もしていただきながら、NanoTerasuを中心にした統合データ駆動研究センター構想などをこれから盛り上げていきたいと考えているところです。
また、東北大学は産学連携を、NanoTerasuが来る以前から非常に重要視されておりまして、NanoTerasu横の敷地にサイエンスパークゾーンというのを設置されております。ここを中心にして、官民地域、産学官での連携をより一層盛り上げていくことを今後のNanoTerasuの中核的な将来計画にしていきたいと考えている次第です。
 以上でございます。
 
【古田課長】  御説明、ありがとうございました。
 ここから1時間ほど質疑応答の時間をとっておりますので、フリーにディスカッションしていただきたいと思います。差し支えなければ、今日、御欠席の岸本委員からコメントを預かっておりますので、まずは議論の取っかかりとして私から御紹介をさせていただきたいと思います。資料6を御覧いただきたいと思います。
 岸本委員からのコメントです。コメント1、NanoTerasuは官民地域パートナーシップの下に整備と運用が進められている初めてのケースであり、今後の利活用の在り方に向けて詳細に議論していくことが重要である。そこで、長年の経験が蓄積されているSPring-8等をモデルとして、SPring-8等がうまく利活用しているところと課題として残っているところを整理し、NanoTerasuの利活用に生かしていく必要があるのではないかというコメントをいただいております。ここについては、もしよろしければ高田理事長から少しお答えをいただければありがたいのですけれども、お願いできますでしょうか。
 
【高田理事長】  はい。分かりました。高田でございます。実は6年前までSPring-8で石川先生の下で副センター長をやっておりました。10年以上、SPring-8で活動して見てきた中で、産業界の方々、そして放射光の非専門家の方々にとってなかなか敷居が高いというところがございました。そこをどうやって敷居を下げるかという問題があったということで、このコアリションという考え方を導入いたしました。やはり学術の先生、そして放射光の専門家の先生、こういった方と産業界がうまくマッチングをして課題解決、本当の意味でコアな課題に取り組んでいただけるということのために、先ほど内海センター長からありました利用のシステムを作っているというところでございます。
課題として残っているところを整理しというのは、そういうところなのですけれども、もう一つは、この光の性能が、コヒーレンスが高くなる。そうすると可視化されていく。今までの専門家にしか分からなかったデータが、実際の画像とか、そういうものになってまいります。ナノレベルでの画像になってまいりますので、そうしますと、いろいろとディスカッションをすることが可能になってまいります。そういったところをデータとして得ることができるようになりますので、さらにはデータ科学とか、そういったものとの親和性が極めて高くなるということで、このNanoTerasu、さらにこれまで利用していかなかった分野、これが今大きく広がろうとしています。
 そういうことで、この官民地域パートナーシップ、この利点は官のほうのボトムアップ、シーズプッシュのところと地域パートナー、ここに企業も入っておりますけれども、そこからのニーズ、これの好循環を生んで、イノベーションエコシステムのようなものを作り上げていくということで、今、QSTとPhoSICの間でこういった整備、そして運用に向けての仕組みづくり、これをしているというところでございます。こんなところでございますけれども、よろしいでしょうか。
 
【古田課長】  どうもありがとうございます。
 この点に関して、ほかの委員の方から何かコメントとか御意見があれば頂戴したいのですけれども。御指名させていただきますが、ユーザーの目線で小松委員、何か同じような観点から、どのように思われていますでしょうか。ないしは、NanoTerasuに対する期待ということでもいいと思います。SPring-8のユーザーから見てですね。
 
【小松委員】  いろいろなところが進化していて、すごくすばらしいなと思うのですけれども、先ほど御説明があった中で、私もSPring-8での経験というのは非常に有効活用されるべきだと思います。製造業からしますと、やはりトラブル、それはハード面もソフト面もあると思いますが、トラブルが二度と起こらないように会社は対策をどんどん進化させていって、安全な職場というかラボをつくっていくと思います。そういうちょっとネガティブ的なイメージかもしれませんが、トラブル事例みたいなものがあって、それがひょっとしたらNanoTerasuでも起こり得る可能性があるのではと思います。トラブルが起きたときに組織的およびハード的にこれまでの経験をどのように受け継いで、対応しいく予定なのでしょうか。
 
【古田課長】  どうでしょうか。高田理事長。
 
【高田理事長】  先ほどのトラブルとおっしゃったのは、利用におけるトラブルでしょうか。
 
【小松委員】  そうですね。利用だけではなくて全体的な意味も含めての話だと思います。基本的には、私の立場からすると利用ということになるとは思うのですけれども。
 
【高田理事長】  利用のシステム。
 
【小松委員】  そうです。
 
【高田理事長】  コアリションの部分におきましては、2017年からコアリションに参画する企業と話し合い、これは建設費を一部出していただいていますけれども、それでこのルールづくりとか仕組み、そういったものに対するコミットをしていただいています。参画している企業から委員を出していただいて、想定されているトラブルについていろいろと意見をいただいているということでございますので、それは反映されると思っております。今、そこの改良も取り組んでいるというところでございます。
 
【古田課長】  QST側からも少し御意見をいただきたいので、内海センター長からこのSPring-8の経験をどう生かすのかについてお願いいたします。
 
【内海センター長】  ありがとうございます。高田理事長とは少し違う観点で御説明させていただきますと、施設全体がきちんと安定して運転されるということは極めて重要なファクターです。それは加速器、ビームラインそれぞれがきちんと動くこともそうですし、何よりも安全対策、それから、先ほど横山委員からコメントいただきました放射線管理もございます。その辺りについては、私もSPring-8のOBでございますが、SPring-8での経験を十分理解した上でNanoTerasuの運営に活かしていかなければならないと考えています。そして、岸本委員のコメントにもあるのですが、官民地域パートナーシップは良いことは非常にたくさんある一方で、関連している組織が非常に複雑に絡み合っているので、上手に運営をしていかないといけないと思っています。
 加速器は一義的にQSTが責務を負っていますので、その運転はQSTがしっかりやります。一方で、施設全体の安全は、PhoSICとQSTの全面的協力は当然ですが、どちらかがきちっと親になって一元管理をしていくことが必要だと認識しております。また、放射線管理に関してはQSTが全体を一括して見させていただく。これは規制当局ともそういう話になっておりまして、QSTとして覚悟を決めてやっております。
 それ以外のいろいろなハードウエアなどの管理責任や運営に関しても、PhoSICとQSTの間の役割分担というのは、当然、細かいレベルで色々出てまいりますが、今の段階で申し上げられることは、放射線管理、安全管理については、QSTがしっかりやらせていただきますというところでございます。ほかにもこれからの議論の中でコメントいただけることが沢山あると思いますけれども、とりあえず、そういう御回答をさせていただきます。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 この論点、宇治原先生から手が挙がっていますので、お願いします。
 
【宇治原委員】  今の、少し違う話題にしてしまっても大丈夫ですか。
 
【古田課長】  次、コメント2を行きたいので、もし違う観点なら。
 
【宇治原委員】  では、コメント2の後でもいいです。
 
【古田課長】  いいですか。
 
【宇治原委員】  はい。分かりました。今、産業利用の未来像みたいなところを聞きたかったので、そういう話になると。
 
【古田課長】  それもまた次のテーマとしてあるので、それはまた後で御指名します。
 
【宇治原委員】  はい。
 
【古田課長】  では、この岸本先生のコメント1に関係して何かよろしいですか。では、次、コメント2のほうに参ります。今も少し内海センター長からの話で、いろいろな組織が複雑に絡み合っているという話がありましたが、それに対する御指摘です。コメント2、多数の機関が参画している官民地域パートナーシップは、迅速な意思決定に課題が生じる可能性がある。ユーザー目線で最適なサービスを提供するため、責任の所在を明確にし、各機関における適切な役割分担とともに施設全体の管理運営体制もしっかり議論していくことが重要と考える。施設全体を統括する統括責任者の下で適切に管理運営していくような仕組み・組織体制も検討する必要がないかということであります。これは、急にQSTやPhoSICに答えられる話ではないと思いますので、ほかの委員の方からぜひ違う観点でも、同じ観点でもいいので、御指摘をお願いしたいと思います。
 横山先生、お願いします。
 
【横山委員】  度々恐れ入ります。ぜひこの御指摘のような体制が必要ではないかなと感じております。繰り返しで恐縮ですが、東海村にあるJ-PARCのほうでは、高エネ研と原子力機構と2つの組織で議論をするというときに、1つのセンターを作って、そこで統括するというようなことをしておりました。それでも事故に関わるようなことは大変難しい議論で、どちらが主体となって発表していくのか、あるいはけが人が出たというようなケースのときにどうするのかなど、放射線安全ばかりでなく、東北大さんのほうにもお願いしなければいけないこととか、非常にルートが煩雑になると思います。意思決定の母体は、運営会議が今あるというふうに伺っておりますが、そこを発展させるのか、新たに設置するのか、ぜひ御議論いただくとよろしいのではないかと拝見いたしました。
 
【古田課長】  どうもありがとうございます。
 どなたか、この点に関してさらにあれば。千葉座長、お願いします。
 
【千葉座長】  今、安全管理の観点から統括責任者についてご意見をいただきましたが、それ以外にもNanoTerasu自身が経済的に成り立つようにするという事業性の確保という観点からも責任体制を明確にする必要があると思います。これはかなり新しいシステムで、非常に期待されているところですけれども、それを本当に官民、それから、地域が連携してどういう責任を持って、それから、経済的に難しい状況になったときには、どういうアクションを誰の判断で起こしていくかということも含めた形での統括ということが必要になると思います。
 これは必要になるという一方で、これができると日本としても非常に大きな未来が開けてくるのです。こういうやり方で大きな科学技術を発展させることができるということで、これは次々に波及させる非常に大きな最初の試金石になりますので、ぜひこの部分は皆さんのお知恵を拝借して、いい形にできればと思います。そういう観点でぜひ民間からの委員の皆様もいらっしゃると思いますので、厳しい御意見をいただけるとありがたいと思います。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 民間からということで、平井座長代理、どうでしょうか。何かコメントいただけないでしょうか。
 
【平井座長代理】  いろいろな学会の副委員長などを務めた経験から、アカデミアの方々が中心の組織では経営的な視点が後手に回ることが多いと感じます。我々民間企業の経営の場合には、例えば資金的にショートする可能性を前もって予見し、どう手当てするかといった話は普段から意識していることです。しかし、どうしてもそういった議論が後手に回った結果、今、国内のいろいろな学会が資金面で苦労されています。それは会員数がすごく減ってきているということと、従来型の資金集めの方法がかなり行き詰まってきていることが原因かと思います。本件についてはまず参加したいというふうな方々が非常に多くいらっしゃるということで、初期にそういう資金集めのスキームができると非常にいいのではないかと感じております。新しいモデルにできるのではないでしょうか。
 
【千葉座長】  そうですね。
 
【古田課長】  分かりました。どうもありがとうございます。
 この点についてさらに深堀りの御意見などございましたら、お願いしたいのですが。特になければ、宇治原先生からまた新しい視点というか、論点を出していただきますけれども、よろしいですか。では、宇治原先生、お願いします。
 
【宇治原委員】  今、平井さんに言っていただいた観点と関連しまして、学術的最先端の技術を使ってというスライドが1枚あったときに、一瞬、混乱してきたところがあって。このNanoTerasuというのはどこを向いているのかなと。最後まとめのところでおっしゃられた、今回の体制もそうですけれども、これを産学連携というか、むしろ、産業界を見据えて発展させていく、イノベーションを起こしていくということが大きな目的なんだなと。その観点で見たときに、まず、即座に思ったのは、予算はどうなっているのかなと。将来的な予算案はどういうふうになっているのかがすぐに気になりました。
 あともう一つは、ビームラインはもう十幾つ作れるはずですけれども、2026年でしたか、27年だかのロードマップでは、運用計画、運転計画になっていたので、そこには含まれていないのかもしれないのですが、残りの十何本の建設や計画があまり見えてこなかったので、そこが少し気になりました。
 基本的には、僕自身も、ネガティブな意味ではなくて、すごくポジティブな意味で、自立化していくような体制を目指すというのがすごく重要だと思っています。日本の国研、例えば産総研だとかいろいろなところが、我々に関連するところですが、印象としては、海外に比べると圧倒的に国費の負担というか、国費に頼っているところが多いと感じます。それをやっていると、産学連携を目指すのだ、産業界を目指すのだという割にはお金を取ってくる先が産業界ではないので、なかなか自立化に向いていかない。今後でいいですが、NanoTerasuでは、1つ自立化というのを目指してほしいなと。そうすると先ほど言われたように、経営協議会みたいなのをちゃんと作って責任をという話になってくると思います。
 もう一つ、さっきSPring-8を見本というのもあったのですが、多分、技術的とか科学的にはSPring-8、ものすごくいいお手本になっていると思います。一方で、今の産業界利用というのを考えたときに、海外のベンチマークをされたときに、それに一番近いものというのはどれなのかなと思いました。さきほどの安全管理区域の話も海外では普通みたいな話もあったので、経営という観点でも、もし海外にいい事例があるのかどうか、誰か御存じでしたら教えていただきたいです。そういう海外を参考にして、プロジェクトを進めることを考えているのか、その辺りを聞きたいです。
 以上です。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 私のほうで答えられる範囲で答えさせていただきます。予算に関しましては、今はQST側とパートナー側で切れておりまして、QST側は国からの予算、コアリション側は寄附や加入金を集める形で予算を獲得しようとしているところでございます。運営期に関しては、まだ正式には決まっておりませんが、そのデマケは基本的には継続される形で進むのではないかというふうに今は見込んでおります。ただ、少し、これは個人的な意見ですけれども、中長期的に見ると確かに一体的に経営という観点で全体を見て運営をしていく、経営をしていく、そういったことも必要ではないかというふうにも思っております。とりあえず、私が今答えられる範囲は以上です。
 あと、国際的とか海外での視点というのは、私には知見がないので、もし高田理事長、何か今の観点でお答えできるところがあればお願いしたいのですが、いかがでしょうか。
 
【高田理事長】  例えばイギリスにありますDiamond、これは完全に会社組織になっております。基本的には国からの予算と、その専用ビームラインの利用収入、これで運営をしているというのがSPring-8とほぼ同じような形になっております。ですので、この今回のNanoTerasuの仕組みは、ある意味初めてのケースになりますので、海外からもかなり注目をされておりまして、NanoTerasuはアントロポセンの研究対象になったりもしております。この官民地域パートナーシップは、先ほど予算が切れているというふうに申し上げましたけれども、地域パートナー側もしっかりと銀行とか、そういったところに監事に入っていただいて、地域パートナーの間でその経営についてしっかりと議論しながら進めているという状況でございます。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 多岐にわたる御指摘だったのでジャストミートができないのですが、ほかにこの点、御説明できる、ないしは自分の御意見があるという方、ぜひ挙手をお願いしたいのですが、石川センター長、何か少し御知見、どの点でも結構なのですけれども。
 
【石川委員】  SPring-8の石川でございます。この運営の仕方、いろいろな形がございまして、先ほど高田さんのほうから出たDiamondの形、あれはウエルカムトラストという会社というか財団が入って、それと国、あと利用料収入みたいなものでやっているところがございます。あと、アメリカの場合には、施設は国が支えるというのがかなり強い方針で、DOEがしっかりやっている。DOEと民間の利用についての話をいたしますと、それはあるといいねというような感じでございます。
 ヨーロッパでは、他にもSwiss Light Source、これはPSI(Paul Scherrer Institut)がやっているわけですが、ここにもかなり民間のお金が入っているのと、あとスピンアウトした会社等からいろいろお金が入ってくる。イタリアのトリエステにはElettraという施設があるわけですが、そこにはフェルミという自由電子レーザーもあるわけですが、そこも会社になっていますね。そういう意味では、いろいろな形があると思います。ただ、会社といっても、別の形で国のお金が入ってくるところがほとんどでございまして、この今回のコアリションという形はかなり違う形になっているのかなという感じがいたします。
 以上でございます。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 今の議論で何かございますか。なければ、宇治原先生が言われた将来プラン、私が示した資料4の一番下のところです。9の「施設の将来的な発展の方向とビジョン」で、具体的には「ビームラインの増設や高度化、データセンター、研究DX対応など施設のポテンシャルを活かした高度化・拡充の方向性、施設のライフサイクルも見据えた施設の在り方、様々なステークホルダーが関わる中で共通として目指すべきビジョン」です。このような例示をさせていただいておりますけれども、今、高田理事長、内海センター長のほうで、多分、お答えの準備はまだできていないとは思うのですが、逆に言えば、これから考えるというところが非常に多数ございますので、こういった方向で目指すべきではないかということを少し御提示いただければありがたいのですが。どなたか、まず先陣を切っていただけないでしょうか。千葉座長、どうでしょうか。
 
【千葉座長】  非常に重要で、まさにこのためにこの会議を設けていただいたという認識なのですけれども、いろいろな観点があると思います。1つは、このような大きな投資をしていただいたというチャンスをどこまで広げられるかというところ、それについては、かなり広いスタンスで考えていく必要があると思っております。例えばNanoTerasuをどう利用するかって、こういう会議ですと、ついそういう発想になりがちなのですけれども。例えば民間企業の方からのニーズから考えたときには、NanoTerasuを利用するために何を当て込みましょうかという発想では済まない部分があると私は思うんですね。というのは、それぞれが掲げている開発目標とか、企業さんの技術の発展の方向というのがあって、その流れの中でどれを重点的に使ってやっていくと、自分たちの目標に到達できるかという、そういうスタンスの中から、その選択肢の1つとしてこのNanoTerasuがあるような、そういう考え方なのかと思います。
 要するに、ほかの方法でもいいじゃないかというようなところを考えた上で、やはりこの方法でなければならないというところに帰結した場合は、非常に大きな経営資源を投入できるとか、そういう考え方があると思います。これがアカデミアの人間では、今、目の前にNanoTerasuがあるのだから、これをもっと有効利用しよう、何とか企業さんも使いませんかという発想に大体終始する場合が多いんです。このギャップを埋めていくという考えをできるだけ早く意識を統一していくことが必要だと思います。もちろん、その一方で、ディープテックという考えがあって、NanoTerasuの可能性というのを徹底的に追求していくというサイエンスをがっちり作っていくというところはもちろん必要です。この両面性のところをちゃんと理解した上で進めていくと、この施設というものは結果としては非常に大きく発展すると考えています。
 それから、国際的に今非常に高いレベルのものになりますというお話を最初に伺いましたけれども、それでは、これから世界の研究者にこれを使っていただく、あるいはこの日本の技術を例えば東北地方の企業さんも巻き込みながら世界に進出していくというような大きなビジョンが描けないだろうか。これからは経済的に発展する様々な国々がたくさん出てくるわけで、そういうところに日本のコアテクノロジーがもっと入っていって、サイエンスを高めながら日本の経済も発展していくというようなスタンス、非常に大きなビジョンでのスタンスも想定すべきだと思っています。ですから、今、私が申し上げたのは、どれだけこの施設を本当の意味でみんなが使っていい形で発展するかということと、それから、日本の経済発展、世界への貢献という形での経済発展というスタンスも踏まえた上で意見交換ができればと思います。ぜひよろしくお願いいたします。
 
【古田課長】  ありがとうございます。平井座長代理、いかがでしょうか。
 
【平井座長代理】  学会等において、最先端の設備が入ったときに、その協調領域と競争領域の区分けがきちっとできていないために、いろいろなデータがたまっているはずなのにそのデータを利活用できないという議論があります。私どもも、6年くらい前から社内の研究所の組織を変えて、高度な分析科学と計算機科学を推進しております。計算機科学もこの数年間で特に人工知能を使う技術は急速に発展しましたが、有効な解析を行うにはデータが整備された状態で蓄積されていることが前提となります。今回新しい取組を始めるに当たり、先々はそのデータから、計算機科学を利用して新しいことを発見できるのではないかという期待感を持っています。そのためにはデータの集め方について先ほどの競争領域と協調領域の線引きをどう考えるかということとが鍵になると考えています。民間企業の立場では重要なデータはできるだけクローズにしたいのですが、クローズにしたいという意識があまり強く出過ぎると、せっかく蓄積されているはずのデータが活用できないので、データの取り扱いに関する考え方も初期の段階に整理しておくことが必要だと思います。今の計算機科学、特にAIの進歩の速さから考えると向こう数年間くらいで色々なことができるようになることが予想されるので、今回の取り組みは非常にタイミングがいいと思います。そのあたりを賢く進めるという事例をこの取組の中で作りたいと考えており、逆に初期の段階に整理しておかないと、後で苦労するかもしれないと考えています。
 
【古田課長】  分かりました。ありがとうございます。
 今日はデータの管理、利活用について答えられる方がおられないと思いますので、宿題にさせていただいて、次回以降にその点については深堀をさせていただきたいと思います。
 あと、今の点で何かございますか。どうぞ、小松委員。
 
【小松委員】  今の議論を聞いていまして、企業の側からすると、すごいすんなりするような気がします。ただ、一方で企業の場合はやはり会社のトップのCEOという非常に強い権力というか、ある意味トップダウンで事を決めていくことができます。逆に言うと、そうしていかないと事が決まらないので、いろいろなデータ、いろいろな企業さんが入っていろいろなやりたいことがあると、どうしても発散してきてしまう。やはり何か強いガバナンスを効かせてやることで、方向性が決まっていくことも可能なのかなというふうに思います。あまり行き過ぎると社外取締役がガバナンスを効かすというのはあると思うのですが。NanoTerasuのようなある意味公共的なものの中でガバナンスがどこまでフィジブルなのか、どうなのかというのがちょっと話を聞きながら、頭の中ではよく分かるのですけれども。果たしてガバナンスをどうやって効かせていくのかなと。ただ、ベースにあるのは、非常にいいチャンスというか、いい事例にはなるのかなというのは感覚的には思いますけれども。
 
【古田課長】  我々文科省としても、政府としても、本当にこういったデータをどうやって利活用していくのかって非常に大きな課題でして、本当に我々としても悩んでいるところであります。これまでのような御指摘、ごもっともでありますので、もう少し我々のほうも準備をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 もう1個、宇治原委員から御指摘のあった自立化というところについては、今日は欠席なのですが、東工大の辻本委員から、昨日、エコサイクルというような言い方で、お話をいただいております。次回、9月22日のときに辻本委員から、その御発表をいただくということになっておりますので、ぜひその際に自立化についてさらに議論させていただきたいと思っております。
 それでは、次のテーマに参りたいと思いますが、よろしいですか。それでは、この検討事項の4、国内外のアウトリーチの在り方について、ぜひ荒井委員から切り出しをしていただけないでしょうか。お願いいたします。
 
【荒井委員】  はい。分かりました。今、いろいろな情報をいただいたり、議論を聞いている中で、現時点での私の意見は、1もそうですし、4も関連すると思うのですけれども、この施設やこの施設が提供するもの、そして世界基準だったり、世界レベルみたいな部分に関しては、しっかり伝えていけばユーザーを捉えていけると思います。しかも、先ほどのアンケートの中にもありましたように相当なニーズがありましたし、民間の利用者数が棒グラフ上は少ないなと思ったので、そこを上げていけばいい話なので、そんなに難しいことではないかなと思っています。
 それとは別に、これだけすばらしい施設で、国がこれだけの金額を投じて作って、しかも、日本の科学技術の未来を切り拓いていくものなので、例が適切かどうか分かりませんが、例えばペンタゴンと言えば国防省みたいな、このNanoTerasuと言えば日本の科学技術の最先端の英知が集まっているものであるということがシニアから子供たちまで伝わるようなものにしていくべきかと思います。今、国回りのこれだけの大規模のものの事例を見てみますと、どうしても必要最小限の広報活動だったりしてしまうと思います。お金をかけろという意味ではありませんが、このNanoTerasuが日本国民と科学技術のマッチングに活用され、科学技術に関して改めて自信を持っていけるような施設の急先鋒、一番の試金石そして旗印として位置づけるぐらいの高い気持ちと視座でアウトリーチを考えていったほうがいいのではないかなと思っています。
 今考えながら、アイディアは次から次へと出てくるんですけれども、今、細かい話をしてもしようがないと思うので、視点は、そういうぐらい高い視点でアウトリーチというものを考えていったほうがいいかなと思っています。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 このアウトリーチについて、ほかの方、どなたか意見ございませんか。宇治原先生、どうですか。アウトリーチの点について何かございませんか。
 
【宇治原委員】  今言っていただいた、その視座が僕も非常に大事だなと。もちろんホームページ等というのは、最初の試みとして必要なのですけれども。1つ見本にしていいのかなと思っているのは、世界最大のCERNという加速器かもしれません。僕は研究者としてそのときは訪問したのですが、驚いたのはやっぱり、観光客の人がいっぱいいて、そこ行きのツアーもあったこと。今の国民に対するとかを考えるのであれば、世界中からNanoTerasuに、少なくとも仙台に来たときの1つの観光コースになるくらいに思っておいたほうがいいかなと。最低限、それぐらいにはならないといけないかなと。そういうことをやることで結果的にそこで何ができたのかとか、どういうよさがあるのかというのはどんどん作っていかなければいけないことになるので、ひいては、それが一般国民に対する説明にもなっているのかなと思います。
 あともう一つ、かなり次元の違うことを言うのですけれども、今の若者たちや人材育成にも活用していく必要があると実は思っているのです。放射光施設がこれだけ町から近くて、こんなに大学からも近くて、地下鉄からも、もしかしたら歩いて行けるなんてことは、普通はあり得ないと思います。そういう意味では大学の教育だけではなくて、もっと下からの、いわゆる超拡張型のSTEM教育みたいな、そういうものにも活用されていく必要があるのかなと思います。その観点で言うと、また全然次元の違う話ですが、NEDOにお願いされて、今、AIで素材開発をやっているんですけれども、それについてユーチューバーの人と一緒に出てくださいというのがあって、NEDOが候補の中でユーチューバーとの共演みたいなことをやらせてくれて、私みたいな研究が、要は何万件も視聴される。なおかつ、そのとき、僕、本当に驚いたのは、ヨビノリという人だったんですけれども、僕、実は知らなかったんですけれども、その取材があるときに、うちの学生に、そう言えば今からユーチューバーのヨビノリという人が来るんだけどと言ったら、もうほぼ全員が椅子からずり落ちるぐらいに驚いたというのを見て。聞いたらやっぱり、理系を目指す高校生も大学生も知らないやつはいないというので、多分、我々が思っている以上に彼らの影響力ってすごく大きいので。そういうのがもうかなり先駆けて、今からやってしまってもいいのかなというふうに。そうすると、次世代人材育成もおのずとつながっていくような気がするので、そういう観点も欲しいかなと思って聞いていました。
 以上です。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 かなり具体的な話が出ました。同じように、これは多分いろいろなアイディアがあると思うのですけれども、どなたか何かあれば御紹介いただきたいと思います。小松委員どうぞ。
 
【小松委員】  機関は違うのですけれども、YouTubeのまてりある's eyeというところに、NIMSがやっている研究内容を非常に分かりやすく公開したところ、2021年のPRアワードで大賞を取り、その繰り返しの視聴回数はJAXAさんよりもかなり多かったと聞いています。そのために、NHKから報道の専門家を呼んでYouTubeの企画をしたことですごい反響があったそうです。YouTubeを見て、若い人たちがサイエンスの道に進むようにしましたというのが本当に出ているということなので、確かにホームページというのはあるとは思いますが、今はもう見るのはそっちではないのかもしれません。先ほど宇治原先生がおっしゃられたように非常に大きな効果があるので、良い事例だなと私は思いました。
 
【古田課長】  今、事例が出てきましたけれども、荒井委員、どうでしょうか、何かさらに参考になるような事例を。
 
【荒井委員】  どの辺のターゲットにどう伝えていくかというのは、やり方の話だと思うので、今のお話の中で、あっと思ったのは、JAXAぐらいのイメージにはなりたいなと。宇宙開発とかロケット技術の細かいところまでは国民は分かっていないと思うのですけれども、衛星がきっと我々に何かを享受してくれているとか、そのくらいの感覚で、このNanoTerasuの放射光みたいなものが、細かいことはいいのですけれども、どれだけ我々の生活のいろいろな側面で寄与しているかをすごく情報発信してアウトリーチの念頭に置くべきかとは思います。今のYouTubeの事例もそうですけれども、どれだけ口の端に「NanoTerasu」の単語が出てくるかということを情報設計していくということが極めて重要かなとは思っています。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 横山先生、手を挙げられていましたでしょうか。
 
【横山委員】  恐れ入ります。皆様の御意見に大変賛成です。NIMSの広報、NHKの方、非常に人気ですし、あと、CERNのほうもすごく長年力を入れてやっているというふうに拝見しています。そこで共通するのが専門人材の配置ということで、やはりJAXAもそうですが、かなりしっかりと専門の人たちを置いていると思います。そうするとやはり3つの母体がどうやって関係してくるかという話と非常に接点が出てきまして、リスク面のコミュニケーションもそうですけれども、ポジティブで次世代育成のコミュニケーションについても、どこが責任を持って人材を配置してやっていくのかという、さらに1つ上のステージの議論になってくるかと思いますので、ぜひそうしたところにも予算配分を御検討いただきながらお進めいただくとよろしいかなと思った次第です。よろしくお願いします。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 アウトリーチについて、さらにどなたかございますか。なければ、あとは、ずっと議論を聞いていただいておりました高田理事長、内海センター長から、どの点でも結構ですので、コメントいただけますでしょうか。
 
【高田理事長】  ありがとうございます。高田でございます。アウトリーチにつきましては、まさに重要であると考えておりまして、実は少し東北大学が主導になっていろいろと進めていただいております。先ほどのYouTube配信のものもつい先週、私、収録したりとか、仙台市が企業向けにウェビナーをやっていたりとか、NanoTerasuはこういうことができるんですということを企業向けにセミナーをやったりしたりしております。ただ、まだ今のお話を聞きますと、もっとかなりトータルの戦略を持ってやっていく必要があるんだなということは思っております。
 あとは、先ほど平井委員からありました企業がどういうふうに施設を使っていくかというところについては、今、フィージビリティースタディーという形で、協調領域と競争領域をどう分けていくかというところの試験的なところも含めて進めているというところでございます。ただ、これをそのデータ科学も含めて計測計算融合という言葉を我々使っておりますけれども、まさに計算機シミュレーションとこの放射光のNanoTerasuの可視化とをどうつないでいくかというところも含めて、企業の研究事例を取り込みながら進めていく。そのあたりはもう少し戦略的に進めていく必要があるかなと御意見を伺って感じました。ありがとうございました。
 
【古田課長】  内海センター長、お願いできますか。
 
【内海センター長】  ありがとうございます。アウトリーチ活動において、ホームページという時代ではなくて、SNSだよとおっしゃっていたのは、まさにそのとおりでして、こういう議論はぜひとも若手を入れてやらないといけないんですね。
 先ほどのNIMSのお話が出てまいりましたけれども、NIMSのYouTubeの中核をやっておられたNHKのディレクターの方はNanoTerasuという名前を決めたときの愛称選考委員会の委員に入っていただいていました。横山委員からも出ましたけれども、これは専門の人材、この分野のそういう方を何とか組織的に配置して、中心になって考えていくというところが必要だと感じております。研究者が片手間にやっているというようなことから、発想を大幅に変えていかない限りはこのようなことはできないだろうなと考えているところです。
 東北大学、PhoSIC、QSTはそれぞれ組織のミッションが少しずつ違っているので、全体を一元化するのはなかなか難しいところがあるのですけれども、この広報とかアウトリーチのところは、一元化をすぐにでもできるところだと考えているところです。今日もいろいろな参考になるコメントを頂いていますが、小さなことでも結構ですので教えていただいて、ぜひとも実現していきたいと考えている次第です。ありがとうございます。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 あと15分ほど時間がありますので、この9項目のうち、まだ議論されていない2番、3番、5番、6番、7番辺りについてまたさらに議論をしていただきたいのですが、切り出しとしてぜひ石川委員のほうから、どの点でも結構ですので、口火を切っていただけないでしょうか。お願いします。
 
【石川委員】  理研、SPring-8の石川でございます。先ほど千葉座長からNanoTerasuだけでなくて、いろいろなものを使っていく中で、NanoTerasuというものがあるのではないかというお話がありました。実はSPring-8でやっていますと、まさにそのとおりで、要するに放射光をメインに研究開発をやるなんて会社はないわけです。熱心なところは使い続けるけれども、時々使いに来られるところは、何年かに1回やってきて使って、また帰っていく。そういう形でございます。
 もう一つは、施設を使うのはハードルが高いがデータは欲しい。そういうところが圧倒的に多いわけです。そうしますと、使っていただいて、そこからお金をいただいて、それで自立化していくというのに加えて、使わないけれどもデータを差し上げることによって何らかの収入を得て、それでやっていくというふうなことも多分考えていかなくてはいけない。今のやり方ですと、使わないところにはデータもあげないので何もないわけですけれども、多分、そこの縛りを外すともっと広いところから何らかのコントリビューションが得られるのではないかというのが、今のSPring-8をやっているときの実感でございます。その辺りは、このコアリションのシステムからもう一歩進んでお考えになっていくと、将来というのは別の開け方があるのかなと考えております。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 今の点、ぜひユーザー目線ということで小松委員から。どういう見方でも結構ですので。
 
【小松委員】  少し違う話でもいいですか。
 
【古田課長】  いいですよ。違ってもいいです。
 
【小松委員】  実は2014年に次世代の放射光の活用に関してワーキンググループがありまして、私もそこの委員をさせていただいていたのですが、その中のユーザー側の発表で、すごい心に刺さった発表がありました。それは木材を専門にしている方で、放射光を使って国宝のような仏像の木を同定するという話がありました。木についていろいろな情報を調べることによって非常に文化的に価値が出てくる。ところが、なかなか専門家もいなくて、課題が採択されなかったということです。ですから、すごく先端的な研究をやるというのはその通りなのですが、一方でやっぱりユーザーのファンを増やすことも必要なのではと思います。そういう面ではやはりサイエンス一点張りではなくて、文理融合というんですか、そういうところにもまだまだ使える部分があるのではないかなと。例えば欧州などではそういう活動がすごく活発なので、そういうファンを増やすやり方というか、文理融合みたいな視点というのもあっていいかなとは思いました。
 
【古田課長】  どうもありがとうございます。
 そういった意味では、この資料5の8ページにコアリションコンセプトということで、コアリション側で行う支援体制が書いてあります。改めて高田理事長からこのページを御説明いただけますか。
 
【高田理事長】  高田でございます。コアリションコンセプトといいますのは、この地域パートナー側の企業に出資していただくためのコンセプトとして出しておりますけれども、これはできるだけ利用というところを広げていきたいということで、このツールを幅広く活用していただくためにやったものでございます。下の図にアカデミアとコアリションメンバーと書いてございます。我々、コアリションのメンバーになってくださった企業や学術、研究機関とアカデミアの専門家の方々をマッチングして、ゴールと課題をしっかりと共有して、その解決に向かっていくということでございます。ここでは、ユニット内での開発情報の管理をしながら競争領域とアカデミアのオープンにしていく部分とをしっかり切り分けていくということで進めております。
 先ほど小松委員からもありましたけれども、いろいろと使っていただきますと、もっと使いたいというようなところが増えていっております。今まで放射光とは全く関係のないと思っていたところが、ああ、こういう使い方があるんだということで、今どんどん広がっている。放射光施設の立場から、こういう社会的なニーズがあるところを取り上げていく仕組みにも今なりつつありますし、放射光を使いたいという企業、そして新しい分野、そういったところも今どんどん増えているというところでございます。例えば可視化が進んでいきますと、建築であるとか、芸術の分野とか、そういったところでもこの放射光を使うようになってきております。食品であるとか、そういったものも増えておりますので、うまく進めていきたいと考えております。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 この点について少し宇治原先生から御意見をいただきたいのですが、いかがですか。
 
【宇治原委員】  僕もこのスライド、すごく興味深いなと思って、さっきの説明では一旦飛ばされてしまったのですが、この分析会社と書いてあるのが少し気になっているところがあって、これって先にちょっと聞いていいですか、分析会社というこの赤い文字は、どういう意味で書かれているのですか。
 
【高田理事長】  必ずしもアカデミアと一緒にやるという場面でない課題も出てまいります。分析会社とやりたいというユーザーもおります。それともう一つは、分析会社は様々な分析装置を持っております。先ほど千葉座長からもありましたように、NanoTerasuだけではない。とかく放射光の専門家といろいろ一緒にやりますと、何が何でも放射光でやるという形になりかねない。しかし、分析会社ですと様々な分析手法、これをもっと広い視野で紹介していただく。そうするとお互いにメリットがある。そして、そういういろいろな分析装置間のいろいろな協力、協働が進んでいく。実は7社の分析会社が既にコアリションメンバーに入っておりまして、この中で自分たちは自ら名前を明かして既にフィージビリティースタディーを始めております。
 
【宇治原委員】  既にコアリションメンバーの中に分析会社の方が入られているわけですね。
 
【高田理事長】  はい。入っております。
 
【宇治原委員】  分かりました。それはすごく、やっていただきたいなと僕自身も思っていました。文科省でも、例えば大学の測定機器を有効に使おうというので、前だったらナノテクプラットフォーム、今だったらリサーチインフラと呼んでいますけれども、あれも単に装置を使ってくださいとやっている間は難しい部分があると思います。そこにちゃんとオペレーションをしてくれる人がきちんといて、データ解釈してくれる人がいるからこそ、なじみのない人でも初めて使えると思いますし、それがないと多分、ユーザーは使わないのではと思います。今おっしゃられるように本当に今まで放射光を使ったことがない人が使えるようになるのはとても重要なことだと思いました。
 あと、他の測定機器の話やDXの話、データの話もありましたけれども、重要なのは多分、放射光の結果と、一般的な測定機器の結果とを対応づけることだと思います。必ずしも毎日放射光を使って実験ができるという環境にはなり得ないので、放射光のデータが実は一般的な実験手法のデータの中にも含まれているみたいなのを見つけ出すと、放射光のデータがより一般的な成果として活用されるのではと思います。
 あと、この分析会社等を入れたときに分析会社にすべてお任せするのではなくて、もう少し連携してやってほしいなと思うことがあります。さっきも少し出ていましたけれども、中堅企業、中小企業、もっと言うとスタートアップ、それをもっとNanoTerasuに取り入れるような仕掛けが欲しいなと。さっきも言いましたけれども、僕もスタートアップをやっていますが、大学の研究室と連携して放射光を使うというのはあると思いますが、スタートアップのメンバーだけでは放射光を使うのは難しいと思います。そういうときには研究者だけではなくて、大学の技術部みたいなところと産学連携の枠組みの中で活用させていただくことが、今までの経験の中でかなり役に立っているというイメージがあります。
 あと、これからはディープテック系のスタートアップを増やそうというのが閣議でもありましたけれども、そういう中で決してスタートアップにとって放射光というのは遠い存在ではなくて、これからますます身近なものになっていくものと思います。分析会社等を通してNanoTerasuが積極的にスタートアップを支援していくようなエコシステムみたいな将来像も必要なのではないかなと思いました。ありがとうございます。
 
【古田課長】  どうもありがとうございます。すばらしいアイディアだと思います。
 この点についてどうですか。何かさらにコメントいただける方、いらっしゃればと思いますけれども、いらっしゃいませんか。あと残り二、三分、時間がありますので、さらにほかのテーマということでも結構ですし、今まで上がったテーマでも結構ですが、何かあればぜひお願いいたします。今日、宿題という形でいただきまして、次回とか次々回にまた御回答差し上げるというようなことでもできますので、ぜひご遠慮なく申し上げていただきたいと思います。
横山先生、お願いします。
 
【横山委員】  恐れ入ります。今日の御議論、本当に勉強になりました。ありがとうございます。少し先の話かもしれませんが、アカデミア側で恐らく研究採択のパックの審査をする際などにぜひ女性の先生を多く入れて、採択において女性研究者がたくさん入るように応援していただけるとよろしいかなと思っております。どうしてもこの領域、女性研究者が少ないものですから、後押しという意味も含めて支援をいただけるとよろしいかなと思っております。最近、天文の国際コミュニティーではそれがかなり進みまして、必ず審査に女性を入れるということをしておりますので、ぜひそういう観点からも応援をしていただきたいなと思った次第です。
 あともう一つは、海外のユーザーコミュニティーに対しての見せ方というのが重要になってくるかなと思っております。先ほどのコミュニケーションや広報の話もそうですが、英語ウェブサイトを早めに完備していただきたいと思います。既にニュースなどでは出ているのかなと拝見しておりますけれども、あるいは国際会議で周知いただいているのかなと思いますが、常日頃の発信をぜひ英語で同時にやっていくという体制も今後重要なのかなと思いました。以上です。
 
【古田課長】  どうもありがとうございます。
 大変重要な御指摘を2点伺いました。特に後者の海外コミュニティーというところは、今日の論点で抜けておりましたので、まだ時間がありますので、ぜひさらに深堀をしたいと思いますが、いかがでしょうか。高田理事長から何かお答えできますでしょうか。このNanoTerasuの海外展開というようなことだと思いますが。
 
【高田理事長】  東北大学にホストになっていただきまして、2019年から世界の放射光施設のトップ20の所長に集まっていただいて、日本ではSPring-8の石川先生にも入っていただいてサミットを開催(SR20)しております。毎年1回開催しておりまして、2019年は対面でできたのですけれども、20年、21年はウェブになりました。そこで、例えばCOVIDの問題にどう取り組むか、放射光施設同士でどう協調、協力体制ができるか、それとイクスチェンジをどうしていくかを議論しました。その中の10の施設とは、既にMOUを結んで東北大学を通じていろいろと人の交流をしていこうと進めております。毎年、サミットをただ開くだけではなくて、一応、青葉山コミュニケというものを制定いたしまして、これまで毎回発表して、昨年は青葉山コミュニケ3を出しております。そこもウェブで発信をしております。
 以上でございます。
 
【古田課長】  ありがとうございます。
 サイエンティストの間では国際展開が進んではいるのですが、海外のユーザーを取り込むというところは、まだ弱いのかなと思っていますので、ここは次の課題だなと思っております。特にここで大体予定の時間になっておりますが、さらに何かございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、本日のまとめに入らせていただきたいと思います。最後に、千葉座長から総括のコメントをお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 
【千葉座長】  皆様、活発な御意見をいただきまして、ありがとうございます。それから、今日の私の印象ですけれども、通常の国の施設をどうするかという、そういう観点を超えた官民地域が一体化するという全く新しいところにどう手を打っていくか、どうチャレンジしていくかということについて、皆さん本当に様々な観点で建設的な御意見をいただけたと思っております。簡単に今日、御意見が出たところを振り返りますと、1つは、運営体制です。安全管理というのは非常に重要ですし、それから、経済的なことも含めて、ここはしっかりと体制も全部措置した上で、きちんと作り上げる必要があるということで、全くごもっともでございます。それと、特に自立化、これについては今回、頭出しだけしていただいておりますけれども、経済的な観点、特に民間企業さんを非常に前向きな形で、単に一緒に加わりましょうとか、何か使い方を考えてみましょうというのではなくて、本当に意味のある形でご参画いただくということ、その道筋をどう作るかということ、これは真剣に取り組むべき課題だと思います。この自立化につきましては、次回以降、さらに深堀をしていきたいと考えております。
 それからあとは、施設の将来的な構想、ビジョン。企業側はデータの取扱いが重要だという観点がございます。実際に頻繁に施設を使えるかどうかということよりも、むしろ、必要なときに必要なものが獲得できるかどうかというところだと思いますので、それについてはアカデミア側がどうやって最先端の情報を常にキャッチしながら、オープンにできるものを広げていくかというところだと思います。非常に難しい部分もあると思いますが、これについても乗り越えていきましょう。
 それから、国内外のアウトリーチということで、これは非常に多くの委員の方々が様々なアイディアをお持ちで、これは今後非常に楽しみだなと思いました。また、高田先生、内海先生のほうもかなりそれにつきましては取り組んでいらっしゃるということも分かりましたので、ぜひそこをさらにマッチングして、もっとこうやってよくしていきましょうということで、発展できるのではないでしょうか。
 それからあと重要なのは、それを担っていく人材。もちろん若者の支援者を広げていくというのもそうですし、専門人材、そのプロフェッショナルを育成し、そのプロフェッショナルのキャリアパスはどうしていくかということも含めて、それからあとは民間の分析事業者もそこに入って、一緒に広いスタンスでこの活用を考えるという部分も、本日共有できたのではないかと思います。
 それから、横山委員から女性研究者の活躍の場の発展につながることが大事だということ。それから、海外のコミュニティーのインクルージョンも含めてまさに日本が遅れているという部分について、NanoTerasuがそれを加速していく大きなきっかけになればすばらしいなというふうに改めて感じた次第です。非常に大事なものを担った上でのこのNanoTerasuというものは存在するということを確認できましたので、ぜひ次回以降、また課題を共有しながら、大きな方向性を明確にしていきたいと思っております。本日は、どうもありがとうございました。
 
【古田課長】  どうもありがとうございました。
 最後に資料7に基づきまして、今後の有識者会議の進め方について御説明を差し上げます。第2回は9月22日に予定してございます。これは前半をNanoTerasuの視察ということで、仙台で開催します。後半は今日の議論の続きをさせていただきたいと思っております。第3回が10月21日、第4回、さらに終わらなければ第5回ということで11月9日と29日ということで予定してございます。9月22日にサイトビジットができない方は、9月1日にも実施をしておりますので、どちらかで御都合をつけていただければ幸いに存じます。
 それでは、本日の議題は以上となります。これをもちまして第1回NanoTerasu(次世代放射光施設)の利活用の在り方に関する有識者会議を閉会いたします。オンラインで御視聴の方には、2分間のNanoTerasuの紹介ムービーを流しますので、最後にお楽しみいただければ幸いに存じます。本日は、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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