令和4年11月29日(火曜日)14時00分~16時00分
文部科学省15階科学技術・学術政策局会議室1
オンライン
千葉一裕 座長、平井良典 座長代理、石川哲也 委員、小松秀樹 委員、辻本将晴 委員、横山広美 委員
大臣官房審議官 阿蘇隆之、科学技術・学術政策局 研究環境課長 古田裕志、課長補佐 林周平
量子科学技術研究開発機構 茅野政道 理事、光科学イノベーションセンター 高田昌樹 理事長
【古田課長】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、NanoTerasuの利活用の在り方に関する有識者会議第5回を開催いたします。
事務局を担当しております文科省研究環境課の古田と申します。
本日も、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンライン会議システムも併用しつつ開催といたします。なお、本会議は、傍聴のためにYouTubeでライブ配信を行っておりまして、昨日までに140名の多数の御登録をいただいております。
本日の議題は、(1)第4回有識者会議の結果について、(2)NanoTerasuのエコシステムについて(国内外の連携施策含む)、(3)その他となります。
本日は、現地参加4名、オンライン参加2名の、合わせて6名に御出席いただいております。荒井委員、宇治原委員、岸本委員は御欠席です。また、今回の議題(2)の関係で、量子科学技術研究開発機構(QST)の茅野理事及び光科学イノベーションセンター(PhoSIC)の高田理事長にも御出席いただいております。また、文科省から、私、古田と大臣官房審議官の阿蘇も参加させていただいております。
それでは、会議の留意事項について説明させていただきます。議事録作成のため、速記者を入れております。また、YouTubeにライブ配信しておりますので、御発言される前には、必ず御自身のお名前を言っていただき、その後に御発言をお願いいたします。
オンライン参加の方への留意事項としましては、通信を安定させるため、御発言されるとき以外は、可能な限りマイクをミュートにしてください。また、発言される際は、ミュートを解除にしてください。会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話いただくか、チャット機能でお知らせいただきましたら幸いでございます。
会議の留意事項については以上となります。
次に、配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は、資料1から3までと、参考資料1となります。オンライン参加の方は、Zoom上に画面共有しておりますので御覧ください。画面が見えにくい方は、適宜、事前にお送りしている資料を御覧ください。
それでは、何か御不明な点などございましたら、事務局までお知らせいただきますか、オンライン参加の方は、事務局までお電話で、またはチャット機能でお知らせいただきたいと思います。
それでは、議事に入りたいと思います。
まず、議題(1)第4回有識者会議の結果につきまして、資料1に基づいて説明いたします。
有識者会議の進め方と前回の概要です。第4回までが済んでおりまして、前回はNanoTerasuのエコシステムについてということで、2ページ目に概要をまとめております。3ページ目に座長の総括がございますので、こちらを主に御説明させていただきたいと思います。
宇治原先生からベンチャーの挑戦と御苦労のお話をいただいた。大学との連携の中で、ベンチャーの機能が明確化されたのではないか。ベンチャーが価値をつくって成長していくことで大学にもお金が回ってくる仕組みを、ほとんどの大学の人間は理解していないのでは。ベンチャーのセンスや才能のある人を発掘していくことが重要であるが、それに関して、まだ日本全体としてのアクティビティは低い。エコシステムを回していく中で、NanoTerasuがどのように発展していくかの仕組みづくりの重要性が今回の会議で投げかけられたのでは。
茅野議長からエコシステムの第1フェーズについて御説明いただいた。イノベーションがどの次元で誰が主体かを明確にしてほしいとの意見があった。その他にも、顧客(ユーザー)をもっと主体的に考えるべきではないか、最終的な顧客が何を求めていて、それを提供することに対してお金を払って、どうエコシステムを回してくれるか、拡散とリターンの全体のイメージを捉えることが必要ではないか等の意見があった。
そのためには、エコシステム全体を拡大して、それを機能的にコントロールしていくためのアクションとして、戦略企画広報の重要性も投げかけられた。対象となる研究者・学生、スタートアップ、中小企業、大企業においてそれぞれのエコシステムを広げていくこととそれが回るようにコントロールしていくことの2点が重要であり、そこが見えていないとNanoTerasuが単にいろいろやっているだけになってしまう。
それぞれのエコシステムを並列に分けて、それぞれ設計することが必要ではないか。次のステップの議論では、オーケストレータがどういう人で、どういう部分で、どのように貢献していくのかが焦点になるのでは。サーキュラーエコノミーシステムの構築はこれからの社会のあるべき姿の一つ。ボトルネックを見いだしてそこにNanoTerasuのテクノロジー、サイエンスが貢献していけば、システムが回り出して経済効果が大きくなるのでは。これを一つの例として、社会構造学的な要素も含めて、そこに踏み込んでいくNanoTerasuの姿を明確化することで、大きな動きが出てくるのではないかという総括をいただいたというところでございます。
続きまして、議題(2)NanoTerasuのエコシステムに移りたいと思います。
本日は、辻本委員から、エコシステムの事例について御発表をお願いしております。その後、NanoTerasu運営会議の茅野議長から、NanoTerasuのエコシステムについて御説明をお願いします。
まずは、辻本委員から、「NanoTerasu R&Dとは何か、何を目指すべきなのか エコシステム事例」というタイトルで御発表をいただきます。どうぞよろしくお願いします。
【辻本委員】 では、よろしくお願いいたします。
今回お話を依頼されまして、基本的にNanoTerasuに似たエコシステムの成功事例をということだったんですけれども、そもそものところで、私が、大企業中心ではあるんですが、いろんな会社や大学とか、R&Dの在り方、特に企業のR&Dのアドバイスとか、そういうことを求められることが多くて、その中で、学術的な立場から、そもそもR&Dってどういうものと考えているのかとか、何を目指していて、どう評価されるべきなのかという話をすることがあって、それについて最初に紹介させていただきます。
その上で、これはエコシステムの在り方に強く関係してきますので、まずお話しさせていただいた上で、エコシステム、オーケストレーションに取り組んで、ずっとそういう話は出ているものの、成果を出しているような例はあるのかということも聞かれていると思いますので、なかなか似ているとか成功というのは難しいんですけど、私なりに、IMECというコンソーシアムの例と、それから、UTIE(University of Tokyo Innovation Ecosystem)、あと、私自身が取り組んでいるGTIE(Greater Tokyo Innovation Ecosystem)の例を御紹介します。
その上で、総括的に、そもそもエコシステム設計とか実装とかと言っている中で、ポイントは何なんですかというところ、本質的に大事な点、裏を返すと、その大事な点と表裏ではあるんですが、はまりやすい落とし穴というか、トラップがあると思いますので、その点についても御指摘というか、私なりの考えを御説明したいと思います。これが課題意識ですね。
続きまして、内容、3つです。申し上げたとおり、R&Dとは何か、また、成功事例と設計・実装のエッセンスとトラップです。
最初、まずR&Dとは何かというところで、皆様には釈迦に説法かもしれないんですが、ちょっとお話みたいな感じで恐縮ではあるんですが、R&Dは、漢字を当てると、研究と開発となると思います。異論もあるかもしれないんですけど。例え話的に申し上げますと、研究は研ぎ澄まして究めること、開発は開いて発展させることと言えると思います。
私がいろんな会社の方々と議論する中で、一つのモデルを提示しています。見ていただきますとお分かりかと思うんですけれども、研究、開発、そして、新規事業と、(R)、(D)、(B)のつながりがあります。
説明というか、言葉があまりよくないかもしれないんですが、研究のところというのは下を向いていると。深めていく。研ぎ澄まして、究めて、深めて、狭める。私のいる東工大にも、こういう先生方がほとんどで、当然ながら、どんどん深めていく。世界で誰も見たことがないとか知らない知見を提示するのが研究の在り方というか、研ぎ澄ましていくもの、深めていくもの。
次が、開発ですね。この開発というのがそもそも向いている向きが、例えですけど、違うと思います。下ではなくて、横を向いていると。ですので、向いている方向が違っていて、しかも、深い研究ばかりではなくて、いろんな研究要素、あるいは、それ以外のファイナンスだとか、マーケティングだとか、マネジメントであるとか、そういったような要素をつないで、技術だけではなくて、それらをつないでデザインしていくということが必要になります。どういうマーケットに、どういう技術を、どういう形で持っていくのか。これは大企業にとっても大規模な仕組みで非常に難しいことで、これはスタートアップにとっても同様に難しいところです。
ビジネスのところは、新しい事業として、ここはまた向きが違っていて、今度は発散方向に行くと思います。いろんなマーケットセグメントをひたすら探して、どこに刺さるかということを見つけたら、そこに資源を集中的に投下するという、そういう仕組みです。
ここは当たり前と言えば当たり前なんですが、ポイントは、向かって行こうとしている方向が違うということですね。向いている方向が違うので、価値観とか評価軸が違ってくるのが当然で、お互いになかなか話が合わないです。何が大事だと思っているかとか、何によって評価されるかということも違っていますし、違っていて当然だと思います。私はこれをそれぞれコストセンター、バリューセンター、プロフィットセンターと呼んでいて、コストセンター、プロフィットセンターは一般用語ですが、その間のつなぐところをバリューセンターと呼んでいます。私がエコシステムとかいろいろ申し上げているのは、主にこのバリューセンターのところの設計をどうするのかというところの話です。
コストセンターと言うと言葉が悪いかもしれないんですけど、私としては、研究のところというのはむしろしっかりコストを使うべきだと思っていまして、どんどんコストを使って、ただし、評価は、世界最先端の研究であるという評価を受けられるように、そういう評価を整備すれば、逆に研究でお金を稼ごうとか、そういうふうな文脈に変につないでしまうことはむしろよくないと思っていまして、ここはしっかりコストをかけるべきではないかと。
プロフィットはもっと評価は簡単で、研究もそうですが、幾ら稼いだか、収益化して大きくしていくというところ評価されるので。問題は、このバリューセンターのところの評価が難しいというところなんですね。つないだり、仕組みをつくったり、エコシステムを設計したりして、それによって利益が上がったのかどうかもはっきりよく分からないし、ここの部分がどういうふうな評価――評価って、究めないと高い成果は出ないので、コストもプロフィットもしっかりと評価されて、徹底的にやるべきなんですが、バリューセンターのところの評価が曖昧だから、ここを徹底的にやろうという話にそもそもなりづらいです。なりづらいので、ここに予算もかけにくいし、人も充てにくいし、ここで成果が上がったと思うものも、プロフィットセンターの成果の陰に隠れて分からないと。なので、このバリューセンター機能は必然的に弱くなっていきます。それは大学でも、会社でも、どこでもそうですね。この部分が弱いから、研究の部分と事業の部分に接点がなくて、結果的に、それぞれ頑張ればいいということになるんですけど、新規事業のほうは、シーズというか、タマが入ってこないので、新しい収益を出すのに非常に苦労するというようなことがよく起きていると思います。これは我々だけではなくて、大学とかNanoTerasuだけではなくて、いろんな会社の問題でもあります。
ソニーがR&Dエコシステムということで、新しいCTOの方が新しい概念を出して、北野さんという方ですが、コンピュータサイエンスラボラトリの方ですが、R&Dをエコシステム化していくというふうにおっしゃっています。考え方は一部違っていますけれども、似てはいて、やっぱりバリューセンターのところ、いろんな技術要素をつないで、中と外をつないで新しい価値を創り出していく、それがR&Dの在り方だとおっしゃっていまして、これは非常に賛同するところですし、同時に、この部分が難しくて、かつ、ここがうまくできれば、今問題視されている様々な問題についての解決の糸口が見えてくると思っています。なので、そのエコシステムという議論をさせていただいていますし、その部分がとても大事だと言っているということです。
この前提の上で、次なんですが、何か参考になる例はないのかということで、NanoTerasuに似たエコシステムの成功事例と言われて、難しいなと思ったんですけど、似たというのは、一体何が似ているのかというところは、なかなかに基準が難しいと思います。ですので、私の中では、やっぱり先端の科学技術を中心にして、ある程度の地域的なまとまりの中で、新しい産業やスタートアップを拓いていった、そういうエコシステムというものが似ているかなと。NanoTerasuもそういうところを一部では目指していると思いますので、そういうエコシステムの成功というのも、これも成功・失敗の定義で非常に難しいというか、ほぼ不可能で、少なくとも存続して発展している、評価軸によってもいろいろ変わるわけですけれども、多くは、先ほど申し上げたみたいに、プロフィットか研究のレベルで評価されるわけですけど、あえてバリューセンターのところ、つなぐ仕組みやそのシステムが優れていると思われるもの、それが成功と言えるかはともかくですが、エコシステムの設計と実装に成功していると思われるものをご紹介します。
時間の関係であまり細かいことは言えないんですけれども、まずグローバルな例でいきますと、私より詳しい方はたくさんいらっしゃると思いますけれども、あえて私の分野の論文で御紹介しますが、IMECというコンソーシアムがあります。これはベルギーのコンソーシアムですね。歴史は長いですけれども、ここに示したのは、IP、知的財産の管理システムです。このコンソーシアムは非常に高度な仕組みを持っていまして、自分たちのコンソーシアムの中から、結果論ですけれども、ここで書かれているナノエレクトロニクスとか、半導体の製造装置分野に関しての非常に画期的な装置、あるいは、産業を創り出したと言っても、事後的にはそういうことに強く貢献している、非常に活性度の高い仕組みだと言って間違いないと思います。
その仕組みの中身ということで言いますと、例えばなんですが、知財管理において、レイヤーを分けたシステムを持っていて、IPの専門家が、それぞれパートナーごとにレイヤーを分けて、一個一個の契約の中で、IMECの持っている部分と先方が持っている部分、そして、バックグラウンドの部分と非常にディープな、コモンな部分とスペシフィックな部分を切り分けて、そのスペシフィックな部分が、特定のプレーヤーが、どういう産業で、どういうふうにして収益化しようとしているのかという戦略を理解した上で、IMECの役割を定義して、特定のパートナーに対しては、他のパートナーよりもより深い知財へのアクセスを許可したり、それらをつくり出すディープなパートナーシップを取っているということです。
次のページをお願いします。これも詳細な説明は省略いたしますけれども、NanoTerasuにとっても参考になるのではないかなと思っています。ちょっと細かいですけれども、技術の開発者と利用者という2つデュアルシステムがあって、デュアルコアをプログラムオファリングということで、お互いにつないでいくような仕組みをコンソーシアムの中で走らせています。ですので、これがNanoTerasuの場合ですと、施設の利用者と施設側ということになると思うんですが、その施設の利用者及びその周辺で産業なりエコシステムをつくろうとしている人たちまで視野に入れて、IMECがそういうエコシステムの立ち上がりに対して、全体的な戦略の中で自分たちの貢献をしていこうと。そのためにパートナーシップを結んで、一個一個エコシステムをつくることに貢献していると。
例えば、半導体製造装置の場合ですと、特定の企業名は挙げないですけど、幾つかの企業とかなりディープなアライアンスを結んで、端的に言うと、日本が一時的に非常に高いシェアを誇っていた装置に関して、このIMECのグループが世界的シェアを奪って、非常に大きな産業にしていったという経緯があります。全てがIMECのせいとは言いませんけれども、明らかにこの仕組みが、コンソーシアムが効果を奏していると思いますので、やりようによってはと言うと言い方が乱暴ですけど、こういったような仕組みとエコシステムの戦略によっては、産業を創り出したり、グローバルな競争力を上げたりすることができるという一つの例かと思っています。
次は、国内の例ですね。私の身近な例で申し訳ないんですけれども、UTIE(University of Tokyo Innovation Ecosystem)というものがあります。この資料は許可を得ておりますが、東大の各務先生が我々の東工大のイベントで発表いただいたものです。
そもそも、特にスタートアップ中心とは言えますけれども、大学発ベンチャーだけではなくて、実用化・市場拡大におけるイノベーションエコシステムのモデルが変わってきていますよねということをまずおっしゃっています。リニアモデルで基礎、応用、実用化というふうに普通は考えます。その順番に進めていけば、きっと実用化がなされると。これはもうそういうことではなくて、どういう仕組みでイノベーションが起きていくかというと、右側の基礎研究(大学)も重要なプレーヤーであり、この部分にNanoTerasuはほぼほぼ位置されるかと思うんですが、実用化・市場拡大の大企業と、スタートアップ、応用研究・実用化というところで、東北大学等は既にこういうことに取り組んでいると思いますけれども、NanoTerasuも、この中の一つの重要な組織、施設として、このネットワークの中で、例えば、大学発ベンチャーの支援であったり、実用化・市場拡大といっても、大企業と一緒に新しいエコシステムをつくっていくというプレーヤーになることによって、逆にリターンが得られるのではないかと思いますので、そういう貢献というのが求められていないかなと思います。
次のページ、お願いします。細かいところは省略しますけど、UTIEは、過去15年以上、東京大学のスタートアップ・エコシステムの構築に取り組んでこられて、高い成果も上げていると思います。インキュベーション施設、実験だけではないですけれども、様々な施設を新たに構築していき、テックガレージであったり、FoundXというコミュニティであったり、GAPファンドという、お金がつきにくいところへの資金提供であったり、もちろんTLO、知財のマネジメント、そして、ベンチャーキャピタル、UTECとIPC、こういったエンジンを持って進めていった結果がUTIEになっていると思います。
次、お願いします。これが私が取り組んでいるGTIEです。UTIEを拡大するという単純な話ではないんですが、UTIEを含んで、東大にも入っていただいて、Greater Tokyo Innovation Ecosystemということで、グレーター東京エリアでこのスタートアップ・エコシステムを育てていこうということで、取組を進めております。これも詳細は省略はさせていただくんですけれども、先ほど申し上げたようなGAPファンドも含めて、トレーニング、マッチング、大企業との連携、大学のシーズを社会に実装していく、そういう機能を持ったエコシステムをつくろうとしています。
次、お願いします。体制といたしましては、東大と早稲田と東工大でリーダーシップを取って、オーケストレーションして、協働機関、様々な大学に入っていただいております。民間のケンブリッジ・イノベーション・センターとか、SHIBUYA QWSとか、LINK-Jとか、そういうところにも協力いただいています。
その次、お願いします。自治体ですね。東京都をはじめ、横浜、川崎、渋谷、そういったところにも入っていただき、協力機関としましては、金融機能から、デベロッパー機能から、海外のプラグアンドプレイとか、インキュベーション機能を持ったところに入ってもらって、それぞれが得意としているノウハウを提供してもらって、組み合わせて、我々が新しいスタートアップを、産業をつくっていくというところに貢献していただけるように、今つながりをつくっていっているところです。
個別のスタートアップ、個別の案件、産業に関しては、様々それぞれ異なるデザインがあるので、それが全てうまくいくとは限らないですけれども、我々、こういったチームで支援して向かっていきたいと考えております。
こういった研究、取組、そういったところから、私なりに、ポイントを言ってくれということがあると思いますので、エッセンスとトラップ、これはもう表裏だと思います。
まず、エッセンスのほうからですね。この私の提示しているプロセスを進めていく上で一番のポイントになるところ、そして、我々が今検討している段階でポイントになってくるであろうと思うところというのは、オーケストレータだと思います。誰がそれぞれのエコシステム、エコシステムの境界とか設定にもよりますけれども、誰がオーナーシップを持って、自分事としてそのエコシステムの設定、設計、実装を進めていくのか。この点が非常に重要になってくると思います。それも一人の人間というわけではなくて、いろんなレイヤーにそういうオーケストレータ的な役割を果たしている人が必要だと思いますし、既にそういう人がいるという考え方もできると思いますけれども、それでもやっぱり大企業とのエコシステム構築において、オーケストレータというのは誰なんだと。それが民間企業側にいるならいるで構わないんですが、そういう方を認識して、NanoTerasu側がオーケストレータと一緒にエコシステムをつくっていくということが大事なのではないかと思います。
次が、『ワイドレンズ』という、ロン・アドナーという人が、私と同じエコシステムの研究者が書いた本があるんですけれども、広い視野ですね。何が言いたいかと言いますと、エコシステム全体で、エネルギーは誰かが供給してくれないと、つまり、支払いをしてくれないとエコシステムは死んでしまいますので、最終的に顧客が払ってくれているというのは非常に大事なんです。ただ、多くの場合は、私もそうですし、皆さんもそうかもしれないですけど、目の前の顧客というのに集中しちゃいます。そのお客さんは、そのさらに先に顧客を持っていて、顧客の顧客というふうに連鎖してネットワークになっているわけですよね。その最終顧客のところにちゃんと価値が提供されて、そこから利益が生まれているかというところが非常にポイントで、目先のサービスを一所懸命頑張るというのも大事なんですが、その先まで含めた全体の中で最終的に価値が提供できているかというところまで見通すというのが、なかなか簡単ではないんですけれども、非常に重要なポイントで、なぜなら、そここそが競争力であり、産業の実態だからだと思います。
そこのところも含め、最後のところも含めて、途中もそうなんですけど、それは本当に顧客ないしはアクターに刺さっているかということはすごく大事で、ニーズ及び一緒にやるならインセンティブが、本当にそれは欲しいと思っているかとか、自ら主体的に動いてくれるというようなことになっているかどうか。これというのは本当にやってみないと分からないところがありますし、やりながら変えないといけないところはあるわけですけど、付き合いで動いていたりとか、実際にはあんまり刺さっていないものを顧客に見せてしまったりとか、そういうことはよく起きることで、それをどういうふうにブラッシュアップしていくかが大事だと思います。
さらに、そんなものはつくれないという意見も結構受けます。エコシステムなんていうものは、自分たちでもうかるのなら出来上がるし、そうでないなら出来上がらないという考え方もあるかもしれないんですけど、私は、そういう面もあるんだけれども、やっぱりシステムとして設計可能だと思っていまして、先ほどのIMECの例などは非常に高度なシステムデザインがされていると思いますし、東大も、十何年かけて設計と自律の行動とのバランスを取ってきたと私は思っています。
我々も今そういうふうにしていますので、そういうことというのは時間もかかるんですけれども、なかなか最初から思いどおりには動かないわけですけど、大変ですが、フィードバックをかけながらシステムを変更して、動くシステムに至るまで頑張っていくしかないかなと思っています。
NanoTerasuの場合は、特にこの3つのセンターそれぞれに対応した設計と評価というのが必要なのではないかと。それぞれがばらばらなのではなくて、つながっていることが必要なのではないかなと思います。これは最後にもう一度言います。
次、お願いします。トラップですね。はまりやすいところ。結局、表裏で同じことを言っていると思うんですけれども、あえて申し上げますと、オーナーシップが不在のまま話が進んでいくと、これは誰の話なんだ、誰の仕組みなんだというところが、責任を伴いますので、オーナーシップを持った人がいないまま、何となくシステマティックな無責任体制という、若干トリッキーな言い方ではあるんですけど、よくできているんだけど、誰がオーナーなのかというのが分からない仕組みというのが結構散見されると思います。この点は非常にはまりやすいトラップかなと思っていまして、動きが遅くなったり、止まったりします。
もう少しましというか、いい例としては、自分がとにかくインセンティブ確保に注力するという。それはそれで当然大事で、その組合せがエコシステムだとは思っているんですけれども、例えば、自分のインセンティブだけをオーケストレータが注力してしまうと、ほかの人がついてこないということがあり、この点は非常に難しいです。ですので、企業であれば当然ここなんですけれども、それもやり過ぎると、自分たちが思い描いている全体像が成立しなくなるというところで、このバランスが非常に大事になります。
形だけの絵というのもよく見ると思います。私のやつも形だけの絵にしないようにしないといけないんですけど。絵はあるんだけど、きれいなんだけど、動かそうとすると全然機能していないとか、あるいは、一部は機能している、だけど一部は機能していないので、全体としてはあんまりパフォーマンス上がらないね、仕方ないよねという、そういうものは多いかなと思います。
そのときは、動かないとき、それは動かない君が悪いんだというふうに責任を押しつけたり、あるいは、動かないのはもうしようがないからと言って、ほかのアクターが必死でカバーするという例も時々見ます。ただ、それをやると、ほかのアクターが過負荷になって、結局全体が回らなくなる。
さらには、動かないなと思ったら、もうしようがない、こんな難しいことは無理だということで、フィードバックとかブラッシュアップはしないで、取りあえず「やっている感」を出すというのが大事だということで、粛々とやると。粛々とやるんだけど、あんまり大きくはなっていないかもしれないけど、それはそれでやるべきことはやっているんだという意見です。私もそれはある意味正しいとは思うんですけど、どこまでを目指すかということが大事だと思っていて、大きいところを目指すのであれば、こういう部分的なところだけではなくて、全体をブラッシュアップしていくということが大事かなと思います。
最後に、NanoTerasuの場合ですが、3つのセンターが、NanoTerasuだけではないですけど、こういう研究開発の高度な仕組みの場合、ばらばらになりがちだと思っています。ですので、その接続を意図的に行う必要があると思っていまして、最後のページをお願いします。
この赤い丸のところですね。ここの部分の仕組みが必要で、ここがかなり大変だというのも日々感じているところではあるんですけれども。研究の人たち、そして、プロフィットの人たちをつなぐバリューセンターの機能、これがエコシステムの担当部分なので、この部分を誰がどういうふうに行うのか。評価もなかなかされないようなところをやっていくことが、結局、全体としてのシームレスなつながりと成果につながっていくと。
そうでなくても成果は出るケースはあるとは思いますけれども、よくよく見てみると、誰かがこのコストセンターとプロフィットセンターをつないでいたりするということで、個人技だったりすることもあります。それだと、なかなか大きな取組にならないので、個人技だけではなくて、組織的にこういうところ、バリューセンターをつくることに取り組んでいくというのが大事ではないかと思っていて、NanoTerasuが今エコシステムのことを考えていただいて、一所懸命設計をしていただいているというところが、私はとても意義が大きいことだと思いますし、将来的な今まで以上の成長につながると思っています。
以上です。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
第2回に辻本先生からエコシステムの本当に初歩の初歩のような話をいただきまして、今回はさらに踏み込んで、具体的なお話をいただいたというところでございます。
本当にこの話、NanoTerasuや国のプロジェクトに特化する話ではなくて、民間とか、あらゆるこういった研究開発活動について当てはまる、非常に皆さん参考になるようなお話をいただいたと思っています。
私、個人的には、やっぱりこのオーケストレータが大事だというところ、本当に同調しまして、やはり過去自分が関わったこういう国プロに関しても、例えば、東北メディカル・メガバンクというのは、本当にオーケストレータが、彼一人だったんですが、非常に難しいことをずっとやられて、見事に成功されているというような直近の例もございます。当然、皆さん、自分たちの環境の中でも、成功事例も何となくあれば、失敗事例というのもあるのではないかなと思います。
あと、最後のコストセンター、バリューセンター、プロフィットセンターという分け方、これも何となく漠然と皆さん思っていたと思うんですけど、こういった図示をされますと、非常に納得感があるというか、こういったことだったんだなというような頭の整理ができたと思っています。
本当に、これ、皆さんいろんな見方ができると思うんですけど、ぜひ、企業でまさにこういった研究開発からプロフィットを出していただいている平井座長代理、ないしは小松委員から何か一言お願いできますでしょうか。
【小松委員】 意見を述べさせていただく前に、イメージをもうちょっと持ちたいんですけど。今回、ある意味の成功事例みたいな形で事例を説明いただいたんですが、時間の関係もあったかも分からないですけど、具体的に、例えば、IMECでも東大でもいいんですが、この中でオーケストレータというのはどういう立場の人で、具体的にこういう動きをやってうまくいったんだというか、そこがもうちょっと具体的にあると、オーケストレータというイメージがもっとはっきりするのかなと。今回、非常に具体的な例を出していただいたので、オーケストレータのこの中での役割みたいなものも、もう少し具体的な形で御説明いただければと思います。
【辻本委員】 IMECについては、私、当事者でもないし、あまり近くないので論文ベースになるんですけれども。ベルギーのルーベンというところの自治体と大学が中心になって、街自体をコンソーシアムでつくっていって、学生も世界中から呼んでというふうに進めていった経緯があると聞いていまして。その中で個人を特定するのは難しいんですけれども、やはり地元の大学が中心になって進めたというふうに聞いています。
UTIEについては、これも当事者から言うと異論があるかもしれないんですけど、ちょっと代替わりとかあるかもしれないんですが、具体名を挙げるとどうなのか分からないですけど、産学連携担当の副学長の先生方とか、その周辺の方々が、やっぱり相当長い間、様々な努力をしてこられたので、私は彼もしくは彼らがオーケストレータだと思っていまして。具体的に何をしたかというところですけど、これもいろいろ事実の同定が必要ですが、これらほぼ全てについて企画して、やる人に声をかけて連れてきて、実際に組織を立ち上げてというふうなことをやってきたと聞いておりますし、もちろんチームで動いてはいるものの、そういうチームリーダーが、あるいは、リーダーのグループがこういった活動をしてきたと思います。
UTECであれ、IPCであれば、社長というのは非常に大事な方で、当たり前ですけど、それを誰にやってもらうのかというのは非常に重要なところだと思いますので、そういう人を連れてきてやってもらうということですね。そういうことをやってきたと思っています。
GTIEについては、これからなので、私が頑張らなければいけないということで、ちゃんとやるべきことができるのかというのは、自分でもちょっとどきどきしていますけど、頑張っていきたいと思っています。
【古田課長】 いかがでしょうか。よろしいですか、小松委員。
【小松委員】 ちょっと考えさせてください。
【古田課長】 平井座長代理、お願いします。
【平井座長代理】 この資料の6ページのところで、まさに研究から開発、それから、新規事業を起こしていくというところが、なかなか日本ではうまく回ってこなかったということがあります。まさに先ほど御説明ありましたように、ここのバリューセンターというところが、結局、事業と研究の間に断絶がずっとあって、そこがつながらなかったというのが日本の非常に苦しかった点で、ようやくここが出てきています。しかし、今のところ、日本のベンチャー企業のかなりの部分はIT関連であり、やはり最初のコストがかからない分野で立ち上げているという事例がほとんどであって、例えば、私どものような素材産業になると、ほとんどが欧米です。私ども、この5年くらいで10社くらいM&Aをやっていますが、ほぼ全てアメリカとヨーロッパであって、日本のベンチャーの買収はゼロです。
今のところ、もっと手前の種まき段階ということで、ファンドのほうにお金を入れて支援をするということはやっていますが、そこがなぜつながっていないかというと、まさに事業と研究というところの間をまだうまくつなげるような仕組みが機能していないことに加えて、一番は人が足りないことが原因と考えています。アメリカのシリコンバレーは、ここが得意な人たちがいっぱいいて、まさに日本の場合には、ここをベンチャー企業の社長がやらないといけませんが、そんな社長がいっぱいいるわけでは決してないので、やっぱりもう少しVCのレベルが上がってくるということも必要かなと思いますし、企業側から見て、この右側のプロフィットセンターのほうから、もっと入っていかないといけないのではないか、というふうなことを思っております。
だから、そこのところをやらないと、アメリカとの30年の差というのは多分なかなか縮まらないだろうなということなので、そこを意識した上で、今回はいいチャンスなんですね。そういうことができるような仕組みと、まさに設計ができたらいいなと思っております。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
ほかの委員の方、いかがですか。オンラインで参加の横山先生、石川先生、何かありましたら、手を挙げていただくか、声を出していただいても結構です。
【横山委員】 大変勉強になりました。今のところ質問はございません。ありがとうございます。
【古田課長】 ありがとうございます。 石川先生、お願いします。
【石川委員】 このR&Dから開発、新規事業につながるという、非常にすばらしい絵を見せていただいたんですが、放射光の場合に本当にそうなるかというのは、あんまり関係なく、関係ないと言ったらいけないんだけれども、もちろんそこは大きいんだけど、実際に、例えば、SPring-8でやられていることは、むしろプロフィットセンターのところの問題から研究に戻っていくような話というのが多くて、何かを解決するととてももうかると、だから、その解決をしたいという話がすごく多いような気がするんです。ですから、R&Dから新規事業に向けてのベクトルだけを考えてはいけないのではないかというのが私の率直な感想でございます。
【古田課長】 なるほど。分かりました。
辻本先生、今の御意見どうですか。
【辻本委員】 なるほど。確かにそうだと思います。
矢印がちょっとミスリーディングかもしれないですね。流れが一方向で、いかにもダイレクトな感じがするんですけど、課題というのは現実の現場から出てくるものだと思いますので、その課題を解くことを、でも、やっぱり研究の中からそれを見いだして、課題とつないでいって、その課題を解くことも、解けさえすれば価値になるというケースもあると思うんですけど、解いたことで、また新しいビジネスモデルにつなげていかないと、よりコストが上がっちゃうというようなこともあるかと思うので、そこはやっぱりバリューセンター的な機能が必要なのではないかなと思うので。
矢印は、確かにおっしゃるとおりかなと思いました。
【古田課長】 先ほど平井座長代理が最後言われた話も重なる話で。
【平井座長代理】 そうです。多くの場合は、プル型といいましょうか、事業側が研究側に対してある課題設定をしているケースがやはり多いと思います。ただ、その課題設定に沿って進めるだけだと、新しい価値が本当に生まれるのかというのは疑問なので、そこは研究側からの価値創造が、ちゃんと事業側をうまく引っ張っていって実現していくというところが、日本ではあまりうまくつながっていないのではないだろうかということを申し上げたかったということです。
【古田課長】 分かりました。ありがとうございます。
千葉座長、お願いします。
【千葉座長】 千葉ですけれども、今の御議論、まさにそのとおりだと思って伺っていたんですけれども、あえてちょっと違うかもしれない観点で、もしかしたら辻本先生にお伺いしたいんですけれども。
このバリューですね。多分、今、共通認識は、経済価値としてのバリューというところが強いような印象を持った人が多いと思うんですけど。ただ、先生のお話では、このバリューとは何かというところ、新しい価値、新しいバリューということがあったので、単に株価が上がるとか、売上が上がるとかという話でないものというところにも視野が広がっているのかなと思ったんですね。
というのは、私、前も申し上げたんですけど、例えば、今、我々、マスクして、感染症が広がっていますけど、これの確率を減らすとか、あとは、今、地球温暖化で災害がどんどん起きていますけど、物すごい復興費がかかるんですけど、それを半分に減らすとか、これって私はバリューだと思うんです。今、日本中、あるいは、世界中が必要としている価値のこれからのものというのが、そういうものがすごく大きいと思うんです。それは、まさにこういうNanoTerasuの基礎研究から生まれてくる新しいバリューとして十分あり得るかなと。
その部分で、先生もちょっと価値の評価が難しいと、一般論としておっしゃったんですけど、その部分って難しいんですよ。要するに、お金としてすぐ返ってくるように見えないので。あるいは、国の機関等が、それについて、これで1,000億円助かったね、NanoTerasuすばらしいねって、なかなかそこにつながらないですよね。
これ、つながると、お金は動いていないんですけれども、実はすごく節約されているとかという新しいバリューになる。これがまさにこれからの最先端の科学をやっていく、それから、日本型の新しいイノベーションをやっていくという観点で、アメリカのまねではないところ、そういう意味では、すごく重要かなと、私、そういう面も大事かなと。
もちろん前半のところは物すごく私、理解しているんですけど、ここも広げていくと、日本のオリジナリティがもっと強く出せるかなとふと思ったので、ちょっと発言をしてみました。
【辻本委員】 おっしゃるとおりだと思いますし、私が自治体で支援しているプロジェクト、先生たちの多くも、やっぱり社会課題の解決ですね。一個一個は取り上げないですけど、本当に深刻な社会課題をどう解くかというところに焦点化して、自分自身の研究技術を使っていこうとされている方は多いので、そういう方々は非常にモチベーションは高いですよね。
あと、投資側も、ESGもインパクト投資もそうですけど、やっぱりそういうことを社会的に求めているので、そういう価値というのは非常に重要だし、もっともっと盛り上がっていくと思うんですけど、一方で、やっぱり全体を回すためには、マネタイズというか、財務的な価値を提供しつつ、社会的価値も最大化していく、両方が回っていないと実現しにくいと思うんですよね。何か別の投資が入るということはあると思うんですけど。なので、ゼブラ型スタートアップとかよく言いますけど、そういう両立していくということがやっぱり大事なのかなと思います。
【古田課長】 ありがとうございます。
小松委員、どうですか。
【小松委員】 私も最初、このコストセンター、バリューセンター、プロフィットセンターというのを見たときに、この最終ページに赤ポチがついているんですけど、ここがなかなか問題だよねと思って。
平井委員がおっしゃられたように、我々も基本的には、このコストセンター、バリューセンター、プロフィットセンターということで組織をつくってずっとやっているんですが、やっぱりここの重なりの部分というのが、なかなかどう有機的に回していくのか、技術者にもあるビジネスセンスを持たせていくのかというのは、もう喫緊の大きな課題ではあるんですが。
NanoTerasuの場合で考えたときに、どういうプレーヤーがそれぞれのところに。新規事業というのは、各企業側が考える話かも分からないですが。もしくは、そういう人、ベンチャーなんかをこのシステムに入れていくというのも一つはあると思うんですが、ここをNanoTerasuがどういう具体的な形でやっていくのかというのは、今のところ全然イメージがあれなんですが。
辻本先生にまた質問で申し訳ないんですが。例えば、東大のやつなんかは、こんなのすぐにできなくて、結構いろいろ試行錯誤でやられたという話があったかと思うんですが。そういう場合に、将来的にありたい姿はやっぱりこうだよねというのを最初にすごく大きく打ち出して、その途中でマイルストーンとして、ある程度のKPIを見た形で進めていくのか、それとも、それも要するにピボットしながら、いろんな状況を合わせた形で、最終的なゴールも多少変わっていくみたいな、それぐらいのフレキシビリティを持って、こういうエコシステムというのは本来そうあるべきなのか。その辺はどうなんでしょうか。
【辻本委員】 なるほど。ありがとうございます。
ゴールの粒度というか、抽象度によるかなと思います。大学が持っている、研究機関が持っているシーズでもって社会的価値を創り出していくんだというところは当然ぶれないと思うんですけど、その中でどういう取組をしていくのがいいのかとか、ある段階までにどういう機能を具備していなければいけないのかとか、それがどのようにネットワークとしてつながって、価値創出につながっていくのかというところのデザイン部分というのは変わっていくと思いますね。
ですので、その下のターゲットが動くことはあると思います。実際、マネタイズのところに非常に注力すべきだとか、いや、今はそうではなくてとか、グローバルなところでスタートしないと大きくならないんだとか、そういうより大きなものを目指していかなければというふうに、ゴールが拡大されたり、少し揺れたり、上振れしたりとか、そういうことというのはあるとは思います。
ですので、そういうふうにして進めてこられたのではないかなと思いますし、我々もそういうふうにして進めていますし、今の私たちがやっているプロジェクトでは、ターゲットはもうグローバルというところに置いていて、もう国外市場からスタートするようなゴーングローバルみたいなところもネイティブでつくっていこうとか、そういうふうにゴールに追加されているんですね。そういうことというのはあると思います。そうすると、新たな機能と新たなプレーヤーが必要になるので、そういう人を連れてきて、動いてもらうために整備して、どういう仕組みでというのがオーケストレータがやることだと。
【小松委員】 なるほど。よく分かりました。ありがとうございます。
【古田課長】 どうですかね。茅野理事、高田理事長、どの点でも結構です。質問でも結構なんですけど。
【茅野理事】 じゃ、私のほうから。私も、これ、NanoTerasuに当てはめたらどうなるのかなというのはずっと図を見ながら考えていたんですけれども。
コアリションという塊で見たときには、研究のところは、この新規事業をやるコアリションメンバーに対して、例えば東北大学さんが研究者としてサポートするとか、シーズを渡すとか、そういう形できれいにできてくると思うんですが。ここでサイエンスをやりたいという人たちが入ってきたときに、そこのところの成果がどういうふうに矢印で新規事業というふうに回っていくのかというところは、ちょっと考えどころだなと思いました。
それで、石川センター長からちょっとお話があった、ニーズプル型で結構放射光って使われているんだよという話ありましたけれども、その場合、使われているのは、専用ビームラインが結局使われているということになるんでしょうか。これは石川センター長にお伺いしたほうがいいと思うんだけど。
【石川委員】 石川でございますが、よろしいでしょうか。
今のお答えですが、これは専用ビームラインだけではなくて、例えば、共用の産業利用のところにもそういう需要は多いですし、あと、理研にやってくるものもございます。そういう意味では、むしろ専用のビームラインで、専用で持っている会社が何かをやるというのではなくて、いろいろなところが、例えば、公設試経由で中小企業なんていうのも含めて、理研のビームライン、共用ビームラインに来ているという現実がございます。
以上です。
【茅野理事】 ありがとうございます。
【古田課長】 では、高田理事長、お願いします。
【高田理事長】 辻本先生の今問題になっている6ページ目の図ですけれども、我々から見ると、コアリション・コンセプトの図に非常に似ているなと。研究のところがアカデミアの絵になって、プロフィットセンターのところが、我々がよく見せる競争領域の企業とその課題の絵になる。今、このバリューセンターという、つないでいく、デザインをする、そこを東北大学が、ベンチャーとか、そういったものでスタートアップをやっていこうというアイデアをサイエンスパークで出していただいていると。そういう構図に私にはちょっと見えてくると。そうすると、NanoTerasuがというよりは、NanoTerasuがつくり出すスキームがそういうものになってくるんだろうと。そのときに、先生の示された絵というのが、明確にもう少しそういう社会科学的観点から、そこを定義していただいているのかなというふうに感じました。
先ほどの共用のところというふうに茅野理事がおっしゃった。これは官民地域パートナーシップ、これのやはり共用のところで、ボトムアップで上がってくるテーマ、広くテーマを募集するというところ、ここがまさに重要で、そこを企業と学術がもうコアリションに機関として参画しているところのこの絵に対して、常にそういう新しいものを提供する、もしくは、そちら側に求めるようなものという形で、これにさらに何か加わる、もしくは、そこの研究のところをもう少し何か新しい仕組みを生み出そうとしているのかなというふうに感じます。そういう意味では、今までのものからさらに発展型として我々が提案しようとしているのではないかと。
これ、コアリションというのは、私は生き物だと思っています。ですので、それは皆さんがいろいろなことを考えを入れることによって、今日の辻本先生の整理なんかによって、さらにそれがもっとバージョンアップしていくのかなというのも、お話を伺いながら考えておりました。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
大体一回り御意見いただいたと思いますので、この流れで次の議題に参りたいと思いますが、何か特にございますか。よろしいですか。
【辻本委員】 一言だけ。コアリションが生き物というのは、まさしくおっしゃるとおりだなと思って、本当にエコシステムの本質ですよね。やっぱり生き物同士の自律的な動作をどういうふうにスキームでコントロールできるようにしていくかというところだと思うので。
1つあるとしたら、事業をやっている人たちのニーズが来るから、それに応えていればきっとエコシステムができるというのは、結構そこまで簡単な話ではないケースのほうが多いと思うんですよね。恐らくIMECなんかは、そこまで踏み込んで、一緒になって全体を考えていっているんだと思うんですね。コンソーシアムとして。だから、NanoTerasuが、ケースによると思うんですけど、そこまで踏み込むものがあってもいいのかなと思いますし、そうなったときに、より立ち上がってくる可能性が高まるのではないかなと思いますし、そういうポートフォリオを組むというのも大事な観点かなと思いました。
すみません。もう1点だけ。研究のところは、私は、深めていく方々は、ある意味、横とか見ないで、ひたすら深めるようなことができる環境をつくるというのも、全体からは絶対必要なことかなと思っていまして。変なことをしないで、どんどん深めていく。深めていく中で、初めて次の未来社会が見えてくるので、それはもう大きな資産だと思うんですよ。だから、そこは徹底的にやるべきで、逆に、そこを維持するためにこそ、バリューセンターとプロフィットセンターが機能しなければいけないと。
ということで、深めていっているところからある部分を取りだして、課題とつなげて、この部分で社会的価値をつくって、それを再投資するという、そういう考え方がエコシステムではないかなと私は思っています。
【古田課長】 ありがとうございます。どうぞ。
【平井座長代理】 全くおっしゃるとおりです。そこをどうつなげるかというところが、一番の課題であると思います。
深めることが得意な方が横に行ってはいけないと私も思っておりまして、それは多分横に行くのが得意な人がつなげていかないといけないので。ただし、そこは、例えば、今回の場合だと、東北大学がベースとなっていただくのですが、そこに民間企業の人間が入って一緒にやるとか、そういう工夫が必要なのかなと思います。
【辻本委員】 私の研究の中で、大企業の研究所の研究をしたことがあるんですけれども、研究者の複数のタイプがあるということで、非常にベクトルが真下を向いている人もいれば、ちょっと横を向く人もいるんですよ。これは履歴とか特徴で分かってくるので、そういう人たちをチーミングして、接点にゲートキーパーを置いて、ピックアップしてくる。その人たちの研究の過去のものでもいいので、ピックアップしてきてソリューションとつなぐという体制を研究所として持っていたんですね。それが非常に機能していたということがありまして、そういう運営の仕組みというのもあっていいのかなと思いました。
【古田課長】 よろしいですか。
それでは、時間になりましたので、続きまして、資料3に基づきまして、NanoTerasu運営会議の茅野議長から、NanoTerasuのエコシステムについて御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【茅野理事】 それでは、1ページ目から御説明します。エコシステムについては、第1フェーズ、第2フェーズ、第3フェーズというふうに設計・実装のお話があったわけで、前回、第1フェーズのお話をさせていただいたんですが、今回は、第2フェーズ、第3フェーズということで、検討していることを御説明させていただきたいと思います。
それで、2ページ目なんですが、今日御説明する内容をざっと書いてありますが、前回の説明した内容を最初にちょっと復習させていただいて、その後、NanoTerasuの利用者を対象としたエコシステム、それから、NanoTerasuの周りを取り巻いている人たちを対象としたエコシステム、それから、短期、中長期の取組と連携への考え方、それから、ガバナンス、設計見直しのフィードバックの順番に御説明します。
まず前回のおさらいということで、4ページですけれども、これはいわゆる利用者のマッピングでありまして、利用者を対象としたエコシステムを考える上で、どういう人たちがいますかということをそもそもマッピングしたものです。それで、右上のほうにあるのが、いわゆる組織ニーズプル型でイノベーションを加速する役割を果たすような利用者の方々ということで、大企業、中小企業、それから、スタートアップの方々もこちらのほうに入ってくると。それから、シーズプッシュ型、いわゆる学術研究を行う人たちが左下のほうに、主には共用に参加するということで塊があるという、こういった利用者がいると考えられます。
それで、こういう利用者に対するNanoTerasuの主要機能ですが、5ページにありますように、大きく言えば3つございまして、1つは、まさに放射光の提供、先端性の維持・開拓、人材の育成ということ、2つ目は、イノベーションの創出ですとか、こういった放射光施設などの加速器などの関連産業、こういったところへの価値の転換、3つ目が、戦略企画とそれを広報する機能、こういったものが考えられます。今回、こういった主要機能を踏まえまして、エコシステムの設計をもう少し深掘りしております。
それで、まずNanoTerasuの利用者を対象としたエコシステムということで、7ページに全体どんな感じかなというのを書いてみました。それで、これは成果占有から見たということなので、主には産業界の方々ということになるわけですけれども、このバリューチェーンって、よくあるものとして、研究開発から始まって、企画、試作、製造技術、製造、物流、販売、保守サービスとこう並ぶんですが、このうちNanoTerasuがイノベーションにつながるような研究開発や技術開発として貢献できる部分というのは、研究開発、試作、製造技術とか製造、こういったところになるわけです。
それで、これをさらに細かく見てみますと、その下にサイクルが書いてありますけれども、大企業、中小企業、スタートアップ、大学・国研等に対して、研究計画のチームの形成、資金確保、それから、まさにNanoTerasuの利用、結果の分析、こういったことになるわけで、この青の部分というのが、今回、大きな意味でのNanoTerasuで支援できる部分、それから、赤い利用という部分が、まさにNanoTerasuという装置といいますか、施設といいますか、それの主要な役割ということになります。
これに対して、こういった1から4のところをどうやってサポートするかというと、利用のところは、もちろんQSTとPhoSICさんで中心になるわけですけれども、そのほかの部分について、例えば、リサーチコンプレックスによる支援ですとか、支援産業による支援、それから、連携アクターによる支援、こういうものが入ってくるというのが全体像だろうと考えられます。
次に、このマル1から順番に、もう少しブレークダウンして御説明します。
8ページは研究計画チームの形成についてです。NanoTerasuでも支援できる部分というのは、リサーチコンプレックスによる支援とか、支援産業による支援等々なんですが、どういう課題・ニーズがあるかというのを考えてみますと、大企業や中小企業さんに対しては、例えば、自社の研究能力や技術を補うパートナーが欲しいなとか、それから、スタートアップとか大学・国研では、競争力のある技術はあるんだけど、製品まで持っていくパートナーが欲しいなとか、こういったものがあるんだろうと思います。
これに対して、PhoSICさんですと、コアリション・コンセプトに基づくコアリションを形成して、こういったニーズに応える。それから、QSTですと、量子科学技術プラットフォームを活用したチーム形成や参画。東北大学さんで言いますと、東北大の高度専門人材・専門組織などを活用したチーム形成。それから、分析会社やDX/AI企業ですと、コアリションとかチームへの参画。あとは、ネットワークを活用したパートナーの紹介等々、こういったサポートが考えられます。
2番目の資金確保について、次の9ページですけれども、これも連携アクターによる支援になるわけですけれども、どういった課題・ニーズがあるかと考えてみますと、自社の競争力のある技術に投資をしてほしいという、これに対して出資や融資による支援が考えられますし、これはインキュベーション機関とか金融機関等々ですね。
それから、スタートアップ、中小企業の中で、まず利用してみてから資金確保につなげていきたいというお考えもあると思うんですけれども、これに関しては、登録機関とQSTで、共用制度内での合理的な利用料金による単発的な利用機会の提供ですとか、ものづくりフレンドリーバンクによる小口利用の機会の提供とかトライアルユース、こういったものが考えられます。
それから、リスクが高い研究段階なので政府の支援も受けたいというような場合ですと、QSTですとかPhoSICさん、それから、政府、国研等々が一緒になって、国家プロジェクトやファンディング事業による支援とか、QSTのプラットフォームの活用による支援、こういったものが考えられると。
次、10ページ、これはまさに利用の部分ですけれども、これこそNanoTerasuという施設の主要な役割なんですが、ここを利用される方々から、申請から実施まで数か月も待てないとか、すぐ使いたいとか、こういったニーズが出てくる場合に対しては、コアリションとしては、原則1か月前までの予約が可能な制度を準備しています。
それから、利用したいが、測定を自ら行えるような人材が企業側にいないというような場合のコアリションの場合は、測定支援サービスやメールイン・測定代行サービスとか、共用の場合ですと、測定代行、こういったものについて今後検討してまいります。
また、現地に赴かなくても遠隔で測定できるような環境が欲しいなというようなニーズもあろうかと思うんですけれども、こういうものに対しては、アーバンネット仙台中央ビルなどと連携した形での支援を考えております。
次の11ページですが、これは分析に関するものです。これはリサーチコンプレックスによる支援とか、支援産業による支援が考えられますが、課題としては、測定後、大容量のデータセットをすぐ分析・活用できるように安全に転送したいというようなニーズもあろうかと思いますが、これには3者が連携した情報ネットワーク構築を検討しております。
それから、ビッグデータ解析が行える高性能計算環境をスムーズに利用したいというニーズ、こういったものに対しては、東北大学の高性能計算環境の提供ですとか、利用者ニーズに応じた民間クラウドサービスとの連携といったものを検討しております。
それから、不足している分析能力を支援してほしいというのもあるんだろうと思いますが、これに対しては、分析サービスとかデータ解析サービスの提供、こういったものをこれから考えていきたいと思っております。
それで、12ページですけれども、こういった形でやっていこうというときに、ビジネスモデルとして、これをどういうふうに成り立たせるかという、ちゃんとお金が回って維持できていくかということを考えてみますと、真ん中に利用者として大企業、中小企業、スタートアップ、大学・国研等と書いてありますけれども、ここからNanoTerasuを運用するQSTとかPhoSICさん、東北大さんに対しては、利用料とかオプションサービス料、共同研究費、QSTに対しては文科省さんからも補助金が入る。PhoSICさん、東北大学さんのほうには、同じように加入金とか利用料等々、あと、共同研究費とかサイエンスパークの入居費等々が入る。それから、宮城県、仙台市とか東北経済連合会、分析会社等々には、サービス料とか、会費とか、税金という形もあろうかと思いますけれども、こういう形でお金が回って、維持ができるのではないかということです。
そのインセンティブが次の13ページに記載しておりますけれども、こういう形で、サポートすることのインセンティブも、宮城県や仙台市や東北経済連合会等々にとっては、地域の経済・雇用の拡大というのがありますし、もちろん民間企業さんにとっては、自らのビジネスの拡大、それから、NanoTerasuを支えていくQSTやPhoSICさん、東北大学さんにとっては、まさに社会的な意義、社会課題の解決とか競争力のある技術の創出、スタートアップの創出・成長等々、我が国の国際競争力とか科学技術力、こういったものにきちんと貢献しているんだという社会的意義、これがインセンティブになっていくと考えています。
それから、次、14ページからですけれども、こちらは成果公開型の利用者から見たNanoTerasuの役割についてです。成果公開型のほうは、先端的な学術研究成果とか、若手研究者や学生の成長・育成、こういったところがアウトカム的に出てくるわけですけれども、このチェーンの図で見ますと、テーマ設定とか、研究調査とか、研究計画、ここまではいわゆる研究者の皆さんが考えるということで、放射光による実験・測定の機会と環境、これを提供するということが、NanoTerasuが貢献できる部分になってまいります。
対象、この矢印が出ていますけれども、シニアの研究者、若手研究者や学生、それから、海外研究者ということで、特に若手とか海外研究者に対してどういうふうにしていくかということは、共用制度において対応をこれから考えていきたいと考えております。当然のことながら、計算機環境ですとか、こういったものは、リサーチコンプレックスによる支援が期待されておるところでございます。
15ページですが、これはビジネスモデルというあれでもないんですけれども、この成果公開型の利用者ということに対して言いますと、文科省さんからの補助金での運用、QSTと登録機関への消耗品実費負担をしていただく。海外研究者とシニア研究者、若手研究者の費用負担が一緒でいいのかどうかとか、そういうところはまた考える余地があるんですけれども、基本的にはこういうことなんだろうと。特に人材育成という意味では、学生さんたちに対して費用負担の免除等も検討していく必要があるだろうと考えております。
以上が、NanoTerasuを利用する人を対象としたエコシステムです。
次は、NanoTerasu取り巻く者を対象としたエコシステムということで、実際の利用される方々以外にどういう方がいるかなというのを考えてみますと、国民・地域、政策関係者とか経営層、児童・生徒・学生、それから、潜在的利用者、海外ということで、それぞれに青い帯の中に書いてありますように、対象によってどういうことを期待しているかということが違ってくるだろうと思います。いずれにしても、こういう方たちに働きかけるというのは、エコシステムを広げていくという上で非常に重要なものだろうと思っています。
18ページですけれども、各対象について、NanoTerasuとしてどういう課題があるかということをまとめてみました。
国民・地域で言いますと、関心を持ってもらうきっかけをつくることが難しいとか、政府関係者等々については、研究現場担当者からの説明だけでは資金提供する意義が伝わりにくいとか、潜在的利用者がいそうなコミュニティに効率的にアクセスしたいというようなことが書いてありますけれども、こういった課題に対して、今後の取組方針として、県、市、東北大学のネットワーク・資源の活用ですとか、各メディアとの連携、それから、政策関係者や経営層等で言いますと、現場を視察してもらう機会を積極的に提供するとか、アウトカムが伝わるようなコンテンツを作成する。それから、潜在的利用者に対しては、いろいろな団体を通してアウトリーチ活動をしていく。あと、学生さんたちにとっても同じようなものですね。というような戦略企画と広報ということをこれから考えております。
それから、次は短期、中長期の取組と連携への考え方ということで、20ページです。
NanoTerasuの優位性をまず考えてみますと、高いアクセス性を持つ立地、世界最高水準の光源性能、官民地域パートナーシップという形での整備・運営を行っていく、この辺りが優位性なんだろうと思っております。
それで、短期的にはアクターを拡大ということで、利用者拡大とか認知度向上、世界レベルの研究環境を整備していくということが考えられますが、もう少し具体的に言いますと、広報の充実ですとか、成果創出を加速するようなビームラインの増設、それから、DX化等の整備。
それから、中長期的には、エコシステムの発展ということで、経済・雇用の拡大、競争力を維持する研究環境の高度化として、ここに書いてあるようなコアリション利用・成果占用型利用の成果アピールですとか、インキュベーション機関、投資機関等々との連携強化等があります。
それで、21ページが連携への考え方なんですけれども、現在、建設段階で、既に連携しているところはいっぱいありまして、理研さんやJASRIさん、KEKさん、こういったところにも大変お世話になっておりますし、ビームラインでも、同じようにいろんなところからお世話になって、それから、海外とも既に情報交換等、継続しておりまして、連携・協力の機会も検討しているということで、こういったところとは連携を継続・発展させていく。さらに、データ連携、高性能計算環境ということで、こういったところとも連携を強めて、研究DXの検討・充実を図っていきたいと考えております。
最後、5番目は、ガバナンスと設計見直しのフィードバックについてです。
まずガバナンスというところですけれども、国の機関としてのQST、登録機関の役割、それから、地域パートナーとしての5者会合を背景にした役割、PhoSICさんと東北大学さん、ここはもちろんあるわけですけれども、これに加えまして、全体を総務する、これは将来計画を立てるとか、戦略企画広報もあるんですけれども、安全とか、情報ネットワーク、こういったところを連携調整する体制を今後考えていきたいということが1つ。
左側に評価のことが書いてありますけれども、文科省さんも政策評価とか独法評価等々されますし、NanoTerasu自身としても利用者評価等を行いますので、こういったものを次の計画へフィードバックさせていくということで、24ページにその評価の例を記載しておりますけれども、左側にNanoTerasuの主な価値として、学術研究成果や国際競争力、それから、イノベーションにつながる研究開発・技術開発等々、若手研究者や学生の成長・育成、スタートアップの創出等、評価ポイントにつながるような価値が左側にありまして、真ん中に、具体的にこれをどう評価していくかというような例を記載しております。
こういった評価をしながら、最初の設計に対してどういう問題があるのかないのか、直すべきところはどこなのかということを検討しながら運営していくというようなことを今考えているところでございます。
最後のページは、今まで御説明したことをまとめたものですので、説明は省略させていただきます。
以上です。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
今御説明いただいた資料の一番頭に、第2フェーズ、第3フェーズというふうにあったんですが、このままこれに対する答えを書けるとまで、まだそういった状況にないということで、特に成果非公開、成果占有の場合を主に取り上げて、今できる範囲で御説明いただいたと考えております。
高田理事長、何か補足とかございますか。
【高田理事長】 いろいろたくさんの課題についてお話がありましたけれども、いろいろなプレーヤーが多い中で、NanoTerasuがどういう形でこのイノベーションエコシステムを回していくかというのは、もう少し詳細に検討していく必要がありますけれども、そこはやはり動きながらというところがまだ多少あります。
いろいろな財務状況とか、そういうようなことも含めて、どうちゃんとお金を回していくかとか、そういったところ。中長期的なところも、長期の計画を考えていく上で、多分、今のコアリション、そして、共用の部分、ここのところがどういうふうな連携をしていくかというところ、そこが物すごく重要になってくるのではないかと思います。
これはまさに官民地域パートナーシップという、ここで出した新しいものがどういう役割なのかを定義しながら動いていっているのかなと。先ほども生き物というふうに申し上げましたけれども、そういったところをぜひまた見ながら、いろいろなアドバイスをこの委員会でいただきたいなと思います。それが私のコメントでございます。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
あと40分ほどお時間がありますが、どなたからでも結構です。質問でもコメントでも結構ですが、いかがでしょうか。
どうぞ、千葉座長。
【千葉座長】 先ほど、私、あえて違う観点のエコシステムの御質問をしましたが、やはり経済的なところがないと、いわゆる社会的な価値というものについても実現できないという、全くそのとおりだと私は思っているんですけれども。
それから、今、茅野先生からは、ビジネスモデルを回されるというお話、表現があったんですけど、これについても、できる限り正確に共有して理解していくことが必要かなと思っています。
それで、NanoTerasuがビジネスモデルが回るというのは、経済的な指標で言うとどういうものなのか。例えば、初期投資もありますし、維持費とか、電力とか、人件費とか、いろいろあります。それについて、どれぐらいの規模感で、どれぐらいのスピード感で、ある部分を賄おうとしているのか。あるいは、全部を自律化しようとしているのか。もちろん、文科省から来るであろうことも含めて。文科省に対しては、何が返せるのか。これ、NanoTerasuとしては、その観点も重要だと思うんですけれども、そういう全体のお金のスケールでの動きというもの、目指すべき姿というのはどういうものかというのが共有できていないと、単にこういうのもやりましょう、こういうのもやりましょうという話になってしまうので、やはり目標を立てるというのは悪いことではないと思うんですね。目標があれば、じゃ、そこにどうやって近づけていこうかという形で、いろいろクリエイティブにみんなが考えられると思うので、そこの部分をもう少し明らかにしていったほうが議論が進むかなと思いました。
【古田課長】 どうもありがとうございます。SPring-8は、運用費としてもかなりの額を補助金として文科省から出しております。それは文科省だけではなくて、財務省も含めて、もしくは国会も含めて、やはりSPring-8のあれだけの成果、パフォーマンスを見て、これぐらいの運営費というのは本当に適当だということで、それこそ二十何年、継続して出しているということであります。
ですので、NanoTerasuについて補助金というのも、最初は多分必要経費の見積りから始まると思うんですけど、それが共用もコアリションも含めて、本当にその金額に見合った成果、アウトプットを出しているのかと。そういった観点で、我々としては考えていくことになりますので、そのように御理解いただきたいと思っております。
どうぞ、小松委員、お願いします。
【小松委員】 茅野理事からお話しいただいたことは、私は今日、本当にできればいいなと。特に成果占有のところなんかは、こういうのができれば、本当にいろいろぐるぐるプラスのサイクルで回るんだろうなと、ちょっとわくわくしながら聞いていたんですが。
ただ、先ほど千葉座長のほうからもありましたが、これはすごく魅惑的なんですけど、これだけだと、どうしてもウィッシュだけになってしまうので、これをどういう形で、誰が何をやるんだ。辻本先生からもありましたが、先ほどのエコシステムの顔が見えるような形でやらないと、変な意味ではないですけど、どうしても形だけの絵になってしまって、それが有機的に回らないという、そこによくある落とし穴に入らないようにするためにも、最後のガバナンスのところがありましたけど、これ、本当に全部できるのかなという気もちょっとしますけど、優先順位をつけるなどしたときに、これは具体的に、誰がやるんだ、どの組織がやるんだ、先ほど辻本先生のところでもありましたけど、その中のオーケストレータというのは一体誰なんだというようなのが、最終的にこのガバナンスの組織図というか、ここにまでがつんと落とし込まれてくると、非常にディスカッションのネタにもなると思いますし、よりウィッシュではなくてホープになって、リアリティになっていくかも分からないですけど、そういうプロセスというのは今後必要なんだろうな。
内容的には、私は非常にわくわくして聞いていました。だから、その中で、結局、先ほど茅野理事のあれにもありましたけど、今度はやっぱりビームライン1つ要るよねと。なぜならば、こうこうこうだよねというような形が、どんどんポジティブな形が回ってくれば、本当に最大の評価かなというような気もしますので、やりたいことと、それを絵だけで収まらせないガバナンスのシステム、プレーヤーというのをもうちょっと見えるような形にすれば、もっと身にしみてくるのかなと思いました。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
どうでしょうか。ほかの委員、何かございますか。辻本委員、何かお願いできますでしょうか。
【辻本委員】 おっしゃるとおり、中身とかもそうなんですけど、やっぱりガバナンスといいますか、組織の体制のところというのは、例えば、研究の専門家がいるように、ビジネスの専門家もいると思うんですよね。そういう人たちを、どういうふうな立ち位置とどういう形で巻き込むというか、入ってもらうかという観点もあっていいのかなと。
利用してコアリションで入ってくる企業の人たちはもちろん実務家で、力はあると思うんですけれども、やっぱりその各社のポジションというのがあるじゃないですか。だから、そこからいい意味でも悪い意味でも抜けられないということからすると、その会社も含めて、NanoTerasuも含めて、こういう座組みでいけば、こういうところのマーケットに刺さって、こういう課題が解けてということを考える人が、どちらかないしはどこかにいなければいけないということで、それはケースバイケースなのかもしれないんですけど、NanoTerasu側にそういうことをするのがPhoSICだとしたら、そのPhoSICの機能の拡充みたいなことが必要なのではないかなと思うんですよね。
併設する株式会社だったり、助けるようなものだったり、東北大はとてもいいと思うんですよ。VCも持っていますし、いろんな経験があるので。とはいっても、大学なので、やっぱりそこは東京大学に併設する株式会社のようなものも、エンジンの一つとしてあっていいのかもしれないなと思いますし、そういう実際に動く体制と、あまりにもどこかが背負い過ぎるということではなくて、やっぱりそれぞれがプロが集まって、全体が無理なく回るような仕組みができてくるといいなと思っていて、そういう観点では、このガバナンスの絵のところにもう少し工夫の余地がある。
つまりは、東北大も解像度を上げて、VCに何をやってもらうとか、そうではない会社をこういうふうに巻き込むとか、こういうコアリションの場合だと、こういう仕組みでというのが、言えるところ、言えないところあると思うんですけど、それぞれにカスタム化して、NanoTerasuのところに収益が返ってくる、もしくは、それが拡大していく、要は、みんなが入りたいと思うということが大事だと思うので、やっぱりそうやって実績を見せることが大事だと思うんですよね。
その実績を出していける体制をつくっていくというのがいいかなと思うのと、若干ミスリードがあるかもしれないんですけど、東北大を巻き込むことによって、東北大自体も戦略を持って大きくなっていくじゃないですか。そこにNanoTerasuも一緒に大きくなっていくという絵が描けるといいかなと思うんですよ。国際卓越だってありますし、これから様々な形で東北大は大きくなっていくと思うので、だから、逆に、東北大がつくるエコシステムという、彼らの見た目からのエコシステムがあると思うんですが、その中のNanoTerasuの立ち位置というのもとても大事かなと思うので、そういう観点で、全体として盛り上がっていくということが必要で、ミッシングピースは、やっぱりそういう実務的というか、ビジネス観点からすごくドライブをかけるようなアクターというのがいてもいいのかなということと、全体を統括するようなアクターがいてもいいのかなと。研究と、間をつなぐところと、収益化というのを全体を統括する人がいてもいいのかなとは思いました。
【古田課長】 ありがとうございます。
どうですか。何か今のお話から、よろしいですかね。
今までの議論のところで、茅野議長、または高田理事長から何か。
【高田理事長】 辻本先生がおっしゃっている意味は非常に重要だと思いました。
財団はやっぱり非営利型法人で、潤沢に稼げる仕組みにはなっていないと。そうすると、やはりそこにしっかりと、そういう東北大学なり子会社なりがそういうものをちゃんと担っていくと。それでお金を回していくような仕組みも必要なのかもしれませんね。
今のままだと、何となく、まだ今までの国の施設の範疇からあまり踏み出していないような感じがあって、どうしてもエコシステムを回していくという形で、なかなか発展的に広がっていくということが難しいかもしれない。ちょっとそんなことを感じました。ですので、非常にいいアドバイスをいただいたのではないかなと私は思います。
【古田課長】 ありがとうございます。
オンラインで参加の横山委員、お願いします。
【横山委員】 ありがとうございます。前回よりもさらに精密化された議論だなと、大変勉強になって拝聴しておりました。
少しだけ気になったのは、J-PARCやSPring-8、あるいは大型加速器などの議論では、やはりサイエンスの成果というのを常に議論の意識に置いてしてきたように思います。現在ももちろんそうではあるんですが、やはりこのビームでサイエンス領域としてはどこを狙えるのかという、花形の成果を念頭に置いた議論というのをある程度しておかないと、ちょっとぶれが出てくるかなというふうに懸念を持ちました。
例えば、J-PARCですと、中性子ビームだとか、住友ゴムさんですか、タイヤの成果というのが非常に大きく出ております。もちろん、私たちが文科省さんで20年ほど前にこの議論をしたときには、成果がどんなものが出てくるかというのは分からなかったわけではありますが、やっぱり中性子ビームならではの狙える成果というのは、かなり精密に議論しておいた記憶があるんですね。
やはりこのビームでどこを狙えるのかというのは、それぞれのビームラインで特徴があって違うにせよ、大体のエネルギー領域や見れるところは分かっているわけですので、もうちょっとサイエンスの成果の見込みがあるところを共有しながらの議論というのが望ましいのかなと思った次第です。
以上でございます。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
今言われたこと、私も実は最初はっきり言えなかったんですけど、やはり成果占有についてはかなり書かれているんですが、成果公開についてのエコシステムというのがあまり書かれていない。やはり学術研究の成果を環流して、次なる取組に発展させていく。何回も言っていますが、まだビームラインは10本しかできていませんので、残り18本をどう造っていくのかという議論もこれからしていく必要があって、そのときに、やはりエコシステムが回っていないと、だったら、次、共用ビームライン、何を造ったらいいのか分からない。そこは戦略的にQSTないしは運営会議で議論していただきたいと思っています。
どうぞ、辻本先生。
【辻本委員】 今の話はすごく大事だと思っていまして、やっぱりターゲットですよね。サイエンスの特徴と、その優位性を反映したターゲット。それは別に具体的なものでなくてもいいと思うんですけど、この領域は世界最先端で突き抜けられるというところというのは、他の追随を許さない競争力を持ち得るところなので、そういうところってどういうところがあるんだろうというのは、やっぱり具体的に、もちろん先生方は御承知だと思うんですけど、セットした上で、その上で戦略領域というんですか、優先順位をつけて、そこについては結構NanoTerasuがプロアクティブに関わっていて、それこそエコシステムをつくっていくような領域として位置づけて、場合によっては投資もするような形で動いていくということが必要で、そういう優先順位づけとか、ターゲティングとか、そこって、少しずつ稼いでいくというのも必要であるとは思うんですけど、VC的観点からすると、ちょっとずつ稼ぐのではなくて、もう先生の研究をどーんとやって、大きくがっと行ってくれないと、投資側としては困るわけなので、別に投資サイドだけではないですけど、やっぱり大きな成果を狙っていくというのは、具体的なところですごく大事かなと。それが常に当たるわけではもちろんないと思うんですけど、そういうのもあると思うんですけど、それを増やしていくというのはかなり大事で、そこにみんな集まってくるのではないかなと思います。
【古田課長】 ありがとうございます。
どうぞ、千葉座長、お願いします。
【千葉座長】 今のお話に関連して。そのとおりだと思います。
それで、前段のところで、物すごく先鋭化したところ、深掘りしていく研究、それをしっかりやっていくのは大事だという話と、今のお話はつながると思うんですけど。
もう一つの観点で、価値を生むとか、マネタイズというところと基礎研究はつながりにくい。これもそうなんですけど。日本の多くの場合の研究開発で抜けているのが、こういう世界をつくろう、そのためにはこういうことができたらいいねということを考えていって、そのときに、どんどんその実現の可能性を、いろんな人の知識を集めていくと、実はサイエンスで抜けているところというのが見えてくるんですね。ここのところできていないじゃない、これ、ここができていないし、ここができていないから、結局そこにたどり着けないねというようなことがたくさん見えてくる。そういうものを明確にしていくと、これを、例えばNanoTerasuのこういうテクノロジーだったらできるかもしれないというようなことを煮詰めていくというのは、すごく私は意味があると思っています。
逆に言うと、そこを突破すれば、大きなゴール、それはもうビジネスとしても大きなものになる。そういうものの進め方というのは、意外と科学者はあまりやっていなくて、興味があることを掘り下げていくというのが多いです。そうじゃない人が聞いていて叱られるかもしれませんけれども、一般的にはあまり多くなかった。ですから、逆に言うと、そういう観点で思いっ切りそこのところを深掘りすれば、橋が渡るんですね。
こういう議論というのをどこかのレベルでされると、これ、科学者としても割となじみやすいのではないかと思うんですよ。お金に代えてくださいとかと言うと、そんなの私たちは知りませんと、もう大体拒否反応を示してしまうので、科学者も一緒に参加できるような形で、そういう知恵を絞っていって、道筋を明らかにするというのは、せっかくこれだけのことをやっているんだったら、それはやったらいいかなと思いました。
【古田課長】 高田理事長、何かありませんか。
【高田理事長】 そこまでどうかは分かりませんが、例えば、JSTがやっているCREST研究の中でも、そういう社会課題に向けたテーマという戦略目標を立てたりしております。そこでやはり本当にそれが実装できるのか。そこの技術、そこの先生の研究開発がそこまで到達できるのかという厳しい議論を常にしております。
そこにできるだけ企業の研究者も入ってもらうとか、そういうようなこともやっておりますけれども、そこをもう少し企業のコアのところとつないでいくような仕組みができたら、もっとおっしゃるようなことが進むのかなと思います。
【千葉座長】 企業の方はゴールのところをかなり見て、こんなふうになったらいいなとか、あるいは、自分の会社が30年後こうなったらいいなとか、かなりビジョンはお持ちですけど。
【高田理事長】 そうですね。アドバイザーの先生に企業の人に入っていただいたりとか、そういうふうなことはしておりますけれども、やっぱりそうした人たちからは、常に国際的な競争であるとか、そういったものを俯瞰した意見は出ていますけれども、そこをもっと具体的に、例えば、NanoTerasuとかほかの基盤、そういったものをどう活用するかという観点から、もう少しそういうプロジェクトを位置づけるというのも1つの考え方かもしれません。
【千葉座長】 ありがとうございます。
【古田課長】 茅野理事、何かございますか。
【茅野理事】 サイエンスのお話があったので、前回も少し申し上げましたけれども、国プロの話ありますよね。今で言うと、量子というキーワードがかなり使われて、研究資金自体も、民間企業にも、国研とか大学にも入っているということで、量子とこのNanoTerasu、非常に関係が深いので、そういうトレンドになっていて、研究資金が結構いろんなところから出てくるもの、そういうものの中から、このNanoTerasuを使って新たな発見ができるもの、そういう研究テーマをきちんと掘り下げていくというのが大事だと思っていて、それは今QSTの中でもいろいろ検討はしています。
ですから、そういう国プロに対して、これをどうやって使っていくかというところは、これからきちんと設計していく必要があるなとは思っています。
【古田課長】 ありがとうございます。
阿蘇審議官、何かございますか。
【阿蘇審議官】 事務局の立場で申し訳ございません。
今日の辻本先生、茅野理事のプレゼンテーションを聞いておりまして、これ、前回の絵なんでしょうかね。もしかしたら、それぞれの利用者の視点でのエコシステムというのがそれぞれあるのかもしれないなと思って聞いておりました。
例えば、こちらの学術的な価値ということを創出するためには、NanoTerasuをとことん突き詰めていくことによって、例えば、軟X線という利用で、動的解析でこんな現象が出ましたということで、新たな学術的な価値を創出するというケースですとか、例えば、こちらの中小企業で、これまで知恵と経験、勘でやっていたものが、こちらのところを使うことによって分かるようになりましたというような場合ですとか、あるいは、大企業が、今回のやつでもありましたけれども、がっつりともう試作の段階からNanoTerasu、オープン・クローズド戦略でしっかり利用していくことによって、これはもしかしたらNanoTerasuは顕微鏡として利用して、ほかのいろんな研究施設を利用して、企業としての価値を創造していくケース。そういったそれぞれのプレーヤーですとか、それぞれの価値創造に向けたプレーヤーというのがもしかしたらいるのかなと。
恐らく、そういったことでデータの蓄積をしていくことによって、先ほど千葉座長がおっしゃったような、それぞれの利用者の視点でのデータの蓄積というのが、また違った価値の創造をしていくのかな。ちょっと抽象的なコメントで申し訳ありませんけれども、今日の辻本先生の資料と茅野理事の資料を、どうやったらうまく組み合わせていくことができるのかなという視点で、感想めいて恐縮ですけれども、そういうふうに感じましたので、よろしくお願いいたします。
【古田課長】 ありがとうございます。
石川委員、お願いします。
【石川委員】 今のお話ってすごく大切で、放射光って、最初はディスカバリードリブンというか、何かやっていると新しいものが見つかって、そこからサイエンスが発展していくという形で進んできたんですけれども、最近、データドリブンと申しますか、データサイエンスとの融合が進んでいます。このディスカバリードリブンとデータドリブンをすごくうまく組み合わせて何か新しいサイエンスの形をつくるというのが、多分、放射光とか、中性子もそうなんですけれども、そういうところにこれからすごく求められるのではないかという感じがしていて、そういう意味で、私は、NanoTerasu、SPring-8、J-PARCというのは、そういうところを目指すというのが1つの方向かなと考えております。
以上です。
【古田課長】 どうもありがとうございます。
どうしましょうか。どなたか、さらに深掘りの意見ございましたら、お願いしたいんですけど。
どうぞ、辻本先生。
【辻本委員】 国プロという観点からすると、私もCOI-NEXTのPIをやっていたり、SIPの支援に入ったり、これからもSIPの支援に入るんですけど、そういう観点からして、非常によく分かります。サイエンス的な突破がないと、やっぱり国プロレベルでの大きな取組のきっかけにはならないと思います。
ですし、そこが一番の競争要因になると思うんですけど、一方で、サイエンティフィックなところでの突破だけで社会全体を変えられる場合と、そうではない場合とあると思うんですよね。例えば、オーファンドラッグとか、そういう一点突破型のやつというのは、もうそこにとにかく集中で、サイエンスでもう全て解決ということになると思うんですけど、むしろそっちのほうが相対的に少なくて、サイエンスの課題が1個解けるんだけど、システムとして世の中で実際に使うためには、別の課題も解けていないといけないとか、こっちのNanoTerasuのあずかり知らないところの課題が意外とボトルネックになってしまっているとか。そうすると、使われるまでにまだまだ時間はかかりそうだけど、ちょっと困ったねみたいな話になると思うんですよね。
そこまでNanoTerasuがやるのかと言われると、そうではないかもしれないんですけど、国プロという観点からすると、そこも含めて、別の国プロを立てるなり何なりして、全体が出来上がって実装されてこないと価値が社会に生まれないということになると思うんですよね。そういう全体感の中で、NanoTerasuはここを解く。けど、ここを解くことというのは、こういうシステムのこの部分の課題を解いているんだという位置づけが国プロとしては必要かなと思いますし、今後ともそうなんだと思うんですね。
そういうところを誰がやるのかというときに、場合によっては、NanoTerasuの技術のサイエンスが果たす役割が大きい場合、NanoTerasu自体がそういう全体に対するインパクトが大きいので、システム提案とか、こういう社会をつくるんだという提案をしていくことが、あるいは、東北大と一緒でもいいんですけど、そういうふうにして全体を引っ張っていくことが求められると思うし、望ましいと思うし、そういう方々、そういうプレーヤーは全体から見られるので、期待感を持たれると思うんですよね。NanoTerasuと東北大のセットのチームはすごい強い、こういうのをすごい推進しているというようなものがあると、ほかのアクターも興味を持って集まってきて、それこそエコシステムにつながっていくと思うので、そういう取組というのも、あるケースについてはやってもいいのではないかなと思っています。
スタンフォードがずっとやっているイノベーションデザインとか、バイオデザインとか取組があるんですけど、基本的にメディカルとエンジニアリングとビジネスという3つのスクールがインターディシプリナリーに組み合わさることでイノベーションが生まれる。例えば、バイオデザインの場合はそうですし、メディアデザインの場合は別ですけど。そういうサイエンス、テクノロジー、そして、ビジネス、基本、このセットがつながることでつくり出されているものがあると思うので、どこかだけがあっても、システムをつくるときにはやっぱりそういう構成要素が必要だと思うので、NanoTerasuの場合も、そういった構成要素をうまくそろえられるといいなと思います。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
今のお話、茅野理事、何かありますか。
【茅野理事】 それはNanoTerasuが主導してということになるケースって、あんまりはないのではないかなと思うんですけど。
【高田理事長】 主導するのではなくて、NanoTerasuがそういうものを集めてくるというか、引きつけてくる、そういう場になるんだと思うんです。そういうものが全部寄ってきて、融合していくんだと。必要性があるということで融合していくと。無理矢理、やりましょう、やりましょうではなくて、そういったところを。
そのときに、ちゃんと学術的な深める仕組みがないと、そこはつながっていかないんだと思います。ただ、そこで学術に専念するために、そういうサービスをスタートアップでいろいろ補完していく。そういうものの間をつないでいくもの等がリングをつくっていくと循環が生まれていくというのが、今我々が青葉山で議論をしているところではあります。
そうしますと、例えば、さっきのバイオの話でも、オーファンドラッグとか、そういうのになると、どうしても普通、タンパク質の構造解析とか、単純にもうそこへ行ってしまう。そうではなくて、イメージングでそこの細胞の中の薬物動態を見るということも一緒に考えていく。原子レベルからナノのレベルまで考えていく。そういうものが新しく環流していくと、そういう突破する新しい概念が出てくると思います。そこをやらないといけないんだろうと思って。ですので、私は、そこは集まる場だと、そういう集まる場にしていかないといけないと思っています。
【辻本委員】 戻るんですけど、集まるときに、やっぱりビジョンとか、システムが必要なんですね。こういう社会をつくるから、これは魅力的でしょうと、課題解けているでしょうと、それに貢献しましょう、貢献したいよねということで集めていくというために、やっぱりビジョンの提示が必要で、それをNanoTerasuなのか、東北大NanoTerasuなのか、あのエリアのイノベーションエコシステムなのかは、3番目が一番理想的ですけど、いきなり一足飛びにはそうはならないかもしれないですけど、そういうものをつくるためにも、ビジョンドリブンな進め方というのが、幾つか代表的なものが例としてスターみたいなのが出てくるといいなと思いますし、その候補は具体的に挙げていくといい、既にあるとは思うんですけど、より挙げて外に見せていくというのがいいのではないかなと思います。
【茅野理事】 でも、多分、ビジョンって既に挙げている人たちがいっぱいいて、その中で、NanoTerasuを使えば、そこのビジョンを達成するために必要な結果とか、そういうものが得られるということを知らない場合があるわけですよね。そうすると、今、話を伺っていると、NanoTerasuをやっている側も、いろいろなそういう国プロに対して常にアンテナを張って、それならというような話がきちんとできるような体制も要るんだよなと、今ちょっと聞いていて思いました。
【辻本委員】 全くそうだと思います。そのとおりで。
【千葉座長】 今伺っていると、体制が要るという、やはりその体制をどうするかというところですね。
【茅野理事】 そういう調査機関というか、そういう運営組織の中に。
【千葉座長】 シンクタンクみたいな、いわゆる情報と戦略が集積されているところ、あるいは、そういう人たちというのが物すごく重要な機能を果たすと私は思っているんですけど。
先ほど私が申し上げた、いわゆる公的なメリットが重要だという観点もあるでしょうと申し上げたところで、確かにマネタイズがないと、要するに、事業性がないと広がらないし、定着しないし、その事業がつながらないですよね。例えば、防災とかというときにも、やはりそこには事業が起こらないと、概念としては、こうやればできるのにとただ指さして見ているだけでは意味がない。そうすると、そこに事業化が成り立つためには、例えば、カーボンクレジットとか、いろんな新しい社会システムをうまく組み合わせていく。じゃ、それをどう設計して、どうビジネスにするかということも動くと、ある発見が実際に炭素を減らすというようなところにつながってくるということになる。
実は、そういうところまで行かないとビジネスとして成り立たないというものも結構たくさんあると思うんですよね。できれば、日本はそういうところをどんどん先導したいという流れの中で、NanoTerasuが一番のコアになり得るのではないかと思うので。ということは、じゃ、そういうアクションをどうやって、これはオーケストレータという話もありますけれども、そこはすごく重要かなと思っています。
これ、今までそんなに例がないかもしれないので、先ほど高田先生もおっしゃったように、この研究では私たちは一番の成果ですよということは、日本はよくやっていたんです。そこから社会が動くというところに持っていくようになると、NanoTerasuの価値は物すごく、今ここで議論しているよりも上がるのではないかなと。それぐらいの夢を持ってやるべきかなと思います。
国プロを巻き込むというのは、辻本先生言われるように、すごく良くて、やはり国プロは先進的なことを狙っているんですよ。チームをつくって、今までやっていないことをやろうという意欲も結構あるところがあるので、そうすると、それをもっと巻き込んでいくためのお金を出してもらうお金の受皿とシステムはできているんだろうかとか、そこはもう一回考えたほうがいいなと。国プロが、個人の先生がお金を入れるのではなくて、このプロジェクト、このCRESTとか、この何というのがどんとお金を入れていくというようなものが、実は制度上なかなか難しい部分もあるかもしれないかと。
あと、大学によっては、例えば、科研費の直接経費を集めて、ここにお金を投入するということが現実的にできるのかどうかとか、それも工夫すれば、同じ国の中なので、できるのではないかと思うんですけど。でも、一個一個個別に考えると、結構苦労しているんですよ、大学。間接経費なら出せるけど、直接経費をどういうふうに出すんだろうとか、それも考えていくと、かなり大きなお金というか、むしろ仲間を増やすというか、そういうところは工夫されるといいのかなと思いました。
【古田課長】 どうぞ、小松委員、お願いします。
【小松委員】 先ほど高田理事長が、NanoTerasuに集まると言われていましたけど、今の議論からすると、本当は、理想的には、NanoTerasuにいろんな人だけではなくて、そういう情報も、言ってみれば、シンクタンクに云々というよりは、自然発生的なコミュニケーションの現場も含めた、コミュニケーションの中でそういうのを共有されていくように、要するに、自然とそういう有機的な会話ができて、自然とそういうのができていくというのが、私は一番理想かなと。
だから、国プロがあって、何か考えているんだけど、きっとこれ、NanoTerasuなり何なりでできますよね、こんなことできませんかねというのが、やっぱり現場レベルで自然にそういうのが回るというのがいい状況かなというような気が個人的にはしていて。
その面で、1点だけ細かな話ですけど、人材の育成のところで、今、茅野理事が言われたような、実際はそういうときに代行サービスとかというのがあったんですが、企業側からすると、いろいろ上下はあると思いますけど、現場レベルでの人材の育成というんですか、代行するのではなくて、企業は人を出すと思うんですよね。ですから、それが、いろんな技術者がいろんな測定をして、その裾野をどんどん広がっていく。今度、NanoTerasuは装置へのアクセスがすごく簡単になったという。きっとそういうのを使って、現場でのディスカッションということがもっと活発になっていくべきだと思うんですよね。
ですから、千葉座長言われたように、そういう仕掛けとか、システムであるかも分からないですけど、そういう場をせっかくつくったんだから、それをいかに有効に使って、自然発生的にボトムアップでいろんな議論を上げていくという、そういう組織になればいいなと思いました。
【古田課長】 ありがとうございます。
今の流れで、平井座長代理、何かございますか。
【平井座長代理】 以前、データの利活用という話をちょっとしたかと思いますが、成果占有型の場合に、これまでのいろんな取組だと、完全にクローズにしてしまうケースが多く見られます。今回のNanoTerasuの場合には、やはりそこでもコモンにすべき知見というのがちゃんと蓄積されるべきではないかと思っていて、そこのオープン・クローズの線引きというのは、割と初期段階からきちっとやっておくと、先ほどから話が出ている、深く突っ込んだところに関してどんどん蓄積がたまっていきそれが財産になっていって、また次のいろんな方々を呼び込むためのツール、資産になるわけですよね。そのためには、極力、この成果占有の部分でも、この部分は共通という、OSとかのオープンにしているところと本当にクローズにしているところを明確に切り分けていますよね。ああいうやり方を取れると思っております。
【古田課長】 今の点、石川委員、何か御発言できますか。
【石川委員】 やはりオープンというか、業界全体の利益になるようなことは、業界全体でコモンに持つというのが、多分やり方としてはいいんだろうと思っておりまして、そういうときには、業界として、例えばNanoTerasuを使いに行くとか、J-PARCを使いに行くとか、SPring-8を使いに来るとか、そういう仕組みがあると、いろいろうまくいくのではないかという感じがしております。
その上に載せるところは、個々の会社がやってクローズにしていくというような、そんな仕組みができるといいかなと思っています。
以上です。
【古田課長】 どうもありがとうございます。
もう時間がありません。少しだけ見落としてというか、21ページの連携への考え方について、もう少し深掘りをさせていただきたいと思います。
確かに、加速器、ビームライン、海外、データ連携、高性能計算環境、このような連携体制を目指していかれるんだと思うんですけど、やはりもっと戦略的に、先方からアプローチをされるときもあれば、NanoTerasu側から頭を下げて協力に行くところもあるし、そういった、単に手をつないでいるだけではなくて、戦略的にどこと手をつなぎたいのかとか、逆に、彼らにとっては非常に利益がある、そういう戦略的な連携の在り方というのがもしあれば、茅野理事、ないしは高田理事長、御説明いただきたいんですけど、いかがでしょうか。
【高田理事長】 戦略的な連携としては、やはりテーマごとの連携がはっきりしてくるんだと思います。先ほども研究テーマというのが出てきております。NIMSなんかもいろいろな研究部署がございます。それごとにしっかりと、NanoTerasuの基本的なビジョン、そこの可視化とか、そういうビジョンをしっかりと共有すると、今まで使っていなかった、そういう放射光を使うということを知らなかったところと連携をしていく。
海外の施設はそれぞれアップグレードもどんどん始めてまいります。そうすると、そこでブラックアウトもあります。そのブラックアウトは、彼らにとっては非常に重要な問題になりますので、NanoTerasuがちょうど始まる時期にそういうのが始まるというのは、まさにそういう戦略的な連携を構築するチャンスであると私は思っております。そういうところを進めていきたいと考えております。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
どうぞ、辻本先生。
【辻本委員】 IMECの仕組みを簡単に御紹介したんですけど、まさしくおっしゃったとおりの仕組みでして、コモンのIPとスペシフィックなIPと、その間に何段階かあって、会員の制度にも何段階かあって、どこまでのIPにアクセスできるかというのをコントロールしているんですね。そのコモンIPにアクセスしたいから、まずライト級の会員になるみたいな。自然に集まってくるというのもおっしゃるとおりなんですけど、やっぱり欲しいものがあるから集まってくるわけで、その欲しいものは、ただ単なるアクセスでは手に入らなくて、ライト級のアクセスでも手に入る、ある程度コモンに近いようなものと、それで一旦仲間の入口一歩には入ってもらってみたいな形で、だんだん引きずり込まれていくという話を聞いたことがあるんですけど、そういうIPのコントロールの仕組みとかも参考になるのかと思いますし、海外のこういった類似施設をディープに調べると、システムという意味でディープに調べると、結構いろんな工夫をやっているのではないかなと思うんですよね。すみません。私がちゃんと分かっていないところが多いと思うんですけど。産業の巻き込みとか、そこから地域全体にインパクトを与えていくとか、新しい産業をつくるとかという取組は、もしかしたら参考になる部分があるのではないかなと思いまして、IMECのみならず、いろんな仕組みが開発・導入されているのではないかなと思います。
【古田課長】 ありがとうございます。
回答できますけど、今日は時間の関係で、これで終了とさせていただきたいと思います。
特になければ、締めのほうに参りたいと思いますが、よろしいですね。
それでは、最後に、千葉座長から総括のコメントをお願いいたします。
【千葉座長】 どうも、皆様、御協力いただいて、ありがとうございます。
本日は、大きく分けて2つの課題を御提案いただきまして、1つはエコシステムの事例ということで、辻本先生からお話をいただきました。
3つのフェーズございますけれども、バリューセンターという部分が非常に重要で、これでいろいろな価値をつないで新しいバリューを生み出していくということですね。ここの部分が非常に難しいということです。
先端の科学技術をベースに、地域の中等々、あるいはグループの中からスタートアップをどう生み出していくかとか、そういうことが1つのバリューの指標になるということで、例として、今お話ありましたIMECの知財管理のシステムですね。これも大きなくくりの中でのエコシステムをつくって、グローバルな競争力をつけた1つの成功例だということ。
あとは、東大のUTIEは、基礎研究、スタートアップ、実用化・市場拡大という、この3つのファンクションをうまく結合させたもので、リニア型の開発モデルと違うものを示して、その成功例を出したということ。それから、辻本先生自身が御尽力しているGTIEについては、さらに大きなものを目指しているということで、GAPファンドとか、トレーニング、マッチングというような要素をさらに強めていくと。
いずれにしても、明確なことは、オーケストレータがオーナーシップを持っていくということで、NanoTerasuでいくと、一体誰がそれに該当するのかというようなところ、これは1つの問題提起、課題提起だと思いますので、大変重要なポイントかなと思います。
価値のところでは、今自分が対面している人だけではなくて、顧客の先の顧客まで全部見て、ある意味、社会システム全体を見ながら、どういう価値が出てくるのかというところが重要で、これをぜひNanoTerasu、3つのセンターがそれぞれ特徴的なものを持って、それを生かすというところが重要だということです。
うまくいかない例としては、形だけになってしまうとか、絵だけは大きいのを書けるとか、一人のアクターがほかの部門をカバーするというのもよく見られる失敗例なので、こういうことには注意しましょうと。一言で言うと、責任を持つのは誰か、あるいは、それぞれがちゃんと与えられた責任を果たすというところが非常に重要だということで、これ、かなり本質的なところを御示唆いただいたことだと思います。
それで、委員の皆様から、確かにコストセンターとプロフィットセンターはこれまでつながってこなかったとか、それから、プロフィットセンターからコストセンター、要するに、ニーズプッシュ型というモデルは結構SPring-8も含めてやってきましたということで、ここの部分を変えていこうということが1つの投げかけなのかなと思います。
あとは、経済価値以外の社会価値、そういうものについても大きな貢献をし得るので、やはりそのバリューの評価というのも大事ではないかという意見が出されました。
総括しますと、この3つのところ、コストセンター、バリューセンター、プロフィットセンター、NanoTerasuでは、QSTと、東北大と、産業、官民地域パートナーがそれぞれの役割を果たしているという形になっているので、これをコアリション、生き物としてどういうふうに意味のあるものにするかというところが大事なので、ぜひこれから皆さんさらに知恵を絞っていかなければいけないということで、まとめられたと思います。
それから、後段の茅野理事からのお話でございます。このエコシステムについて、特にNanoTerasuをどうしていくかということで、非常に魅力的なビジネスモデルという形がお示しされたということでございます。
利用者、取り巻くもの、それから、短期・中期的な観点ということで、アクターも拡大しながらということのビジョンをお示しいただきました。
それで、重要なのは、現実的な資金循環、スケール感と時間軸、この辺りをさらに明確にすると、議論もさらに具体的になるだろうという御意見をいただきました。
それから、誰がどこをやるのかということですね。全体としては非常にわくわくするものなんですけれども、ウィッシュからホープ、それから、リアリティという形で、現実的な姿に落とし込みましょうという御提案をいただきました。
やはり、研究とビジネス、両方の専門家をさらに巻き込んでいくということですね。例えば、東北大の大きな発展、国際卓越研究大学を目指されていると思いますけれど、それとともにどう発展していくかというスキームと、NanoTerasuがそれと連動してどう発展するかという絵ももっと明確にすると、これも具体的に見えやすくなるのではないかということですね。
それから、サイエンスのところでかなり議論が深まりまして、どういうサイエンスが成果として出てくるのかとか、どういうサイエンスのところが抜けているかをもっと明確にするような機能が必要とか、データドリブンとディスカバリードリブン、これが融合していくという観点が重要と。これは前段の議論にもつながるところですけれども。
それから、最後のほうで、国プロですね。せっかく国が巨額なお金を投入して、今、大学を挙げてのプロジェクトとか、そういうところにもかなり大きな動きが出ていますので、NanoTerasuに自然に、こういうものと連動して情報が集まるようにする。
それで、そのとき重要なのは、コモンにすべきデータと、秘匿すべきデータというのを最初からきちんと整理して、コモンにするところに多くの人が集まってきて、現実的な連携をして、人を巻き込みながら戦略的な非常に大きな社会的なつながりにしていくという形にできれば、NanoTerasuの存在意義が非常に高くなるだろうということで、まとめられたと思います。
以上でございます。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
関係機関におかれましては、本日、委員から出された意見等を踏まえて、引き続きNanoTerasuの利活用の在り方について検討を進めていただきたいと思います。
最後に、議題(3)その他としまして、幾つかアナウンスをさせていただきます。
次回の第6回は、来年1月25日水曜日10時から、今回と同じ文部科学省とオンラインのハイブリッド形式で開催する予定です。
本日の会議の議事録については、作成次第、委員の皆様にメールにて御確認いただき、文科省のウェブサイトに掲載させていただきます。本日の配付資料につきましても、後日、文科省のウェブサイトに公開いたします。
以上でございます。
特になければ、これで終了させていただきたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――
<担当>
科学技術・学術政策局
研究環境課 林、佐々木
電話:03-6734-4098(直通)
Eメール:research-env@mext.go.jp