令和4年11月9日(水曜日)15時00分~17時00分
文部科学省15階科学技術・学術政策局会議室1
オンライン
千葉一裕 座長、平井良典 座長代理、荒井雄一郎 委員、石川哲也 委員、宇治原徹 委員、岸本喜久雄 委員、小松秀樹 委員、辻本将晴 委員、横山広美 委員
科学技術・学術政策局長 柿田恭良、大臣官房審議官 阿蘇隆之、科学技術・学術政策局 研究環境課長 古田裕志、課長補佐 林周平
量子科学技術研究開発機構 茅野政道 理事、光科学イノベーションセンター 高田昌樹 理事長
【林補佐】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、NanoTerasuの利活用の在り方に関する有識会議を開催いたします。
事務局を担当しております文部科学省研究環境課の林と申します。
本日は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンライン会議システムも併用しつつ開催といたします。なお、本会議は、傍聴者のためにYouTubeでライブ配信を行っておりまして、昨日までに165名の多数の御登録をいただいております。
本日の議題は、1、第3回有識者会議の結果についてと、2、NanoTerasuのエコシステムについてとなります。
本日は、オンライン参加の横山委員は遅れての御参加と伺っておりますが、現地参加7名、オンライン参加2名の合わせて9名、全委員の皆様に御出席いただいております。また、今回、議題2の関係で、QSTの茅野理事及びPhoSICの高田理事長にも御出席いただいておりますが、茅野理事は所用のため遅れての参加となる予定でございます。
それでは、改めてではございますが、会議の留意事項について説明させていただきます。まず、議事録作成のために速記者を入れております。また、YouTubeのライブ配信をしておりますので、御発言をされる前には必ず御自身のお名前を言っていただき、その後に御発言をお願いいたします。また、オンライン参加の方への留意事項といたしましては、通信を安定させるため、御発言されるとき以外は、可能な限りマイクをミュートにしてください。また、御発言される際はミュートを解除にしてください。会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話いただくか、チャット機能でお知らせいただけましたら幸いでございます。
会議の留意事項については以上となります。
次に、配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は、資料1から3までと、参考資料の1になります。オンライン参加の方は、Zoom上に画面の共有をしておりますので御覧ください。画面が見えにくい方は、適宜、事前にお送りしている資料を御覧ください。
御不明点はございますでしょうか。もし、会議中に御不明点がございましたら、事務局までお知らせいただくか、オンライン参加の委員の方におかれましては事務局までお電話、またはチャット機能でお知らせください。
それでは、議事に入る前に、異動がございましたので、御紹介させていただきます。科学技術・学術政策局長の柿田でございます。
それでは、局長の柿田より御挨拶をいただきます。よろしくお願いいたします。
【柿田局長】 9月1日付で科学技術・学術政策局長を拝命いたしました柿田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。この有識者会議は第1回が8月25日ということで、それ以来、かなり精力的に開いていただいて、非常に多様なディスカッションをしていただいているというように聞いております。私も9月1日にこの局に参りまして、第2回目が9月22日、それで3回目が10月21日ということで、これまで2回、この会議のチャンスがあったにもかかわらず、ちょっとほかの業務とかいろいろありまして、今日が初めてとなりまして、後ればせながらの参加ということであります。どうぞよろしくお願いいたします。
古田課長から、何度もこの会議の議論の内容についてはこれまで説明をしていただいておりまして、各界のすばらしい先生方に、多様な視点でもってディスカッションに参加をしていただいているということを強く感じておりますし、当然、NanoTerasuという、初めての官民地域パートナーシップによる大型施設の整備運用という国家プロジェクトでありますけれども、それについて、運営体制でありますとか、施設の将来構想でありますとか、それからアウトリーチの問題、それから人材の育成とか、これまでの会議で多角的な議論をしていただいておりますこと非常に感謝しております。
どの項目も重要ですが、特にアウトリーチということについて、私どもこの施設を造り上げるということに向けて、財政当局とか、あるいは国会の先生方への説明とかする中で、どういう成果が出るのとかいうことをよく聞かれます。やはりアウトリーチという中で、このすばらしい施設を社会、世の中にPRしていくこととともに、ここで生まれる成果が具体的に国民の日々の生活の中にどのように生かされているのかということを、この新しいプロジェクトではそういったところも進めていきたいなと思います。あと人材育成ということについては、この施設で活躍していただく人材というのはもちろんですけれども、皆さん、もう施設を御視察されて、大体私も何回か行くチャンスはあったんですけど、そちらのほうも行けていないんですけれども、皆さんおっしゃるのが、感動したというようにおっしゃるんですね。本当に感動しますよと、早く行かないと、今しか見れないところが見れなくなりますよという話も聞いていまして、焦っているんですけども、やっぱり次の世代の、若い、日本の科学技術を担う次の世代の子供たちに向けても、新しいこの施設が子供たちの胸にぐっと迫っていくような、そういう点でのアウトリーチも進めていけると非常にいいのかなと思っております。
そういったことで、長くなりましたけれども、これまでの活発な御議論に感謝いたしますとともに、引き続きの忌憚のない御意見、御議論をどうぞよろしくお願いいたします。
以上です。ありがとうございます。
【林補佐】 ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。ここからは研究環境課長の古田より進行いたします。
【古田課長】 古田です。どうぞよろしくお願いいたします。資料1に基づきまして、前回の振り返りをしたいと思います。
前回はNanoTerasuの利用制度の在り方について議論させていただきました。2ページ以降にありますが、料金体系、あとエコシステムについてコメントをいただいております。最後に千葉座長におまとめいただいた総括が3ページ目にございます。SPring-8について、これまで25年の中で利用制度をいろいろと修正しながら進化してきた。柔軟な対応が非常に重要。料金のところで有償と無償に分けて、それぞれのエフォート、ミッションが異なることを明確にしてきた。財務状況のところでは国に頼っているところが多いが、その分、ベーシックなサイエンスの部分と企業競争力強化の部分という、数字で表れないところでの貢献が大きい。そういう中で、企業とアカデミアの考えの違い、知財の取扱い、オープン・クローズという、世の中とともに新しい課題が出てきたので、NanoTerasuにも継承していくことが大事。
NanoTerasuについて、これからの計画の中で利用料金の設定、論文化するか秘匿するか、実験データの供出等、多様な展開が見えてきたところ、コアリション加入に関して5,000万円という高額な料金が新たなユーザー参入にとって障壁になる可能性もある。これについては、地域、地方自治体、グループ参画等の多様な取組が検討されていると理解をした。そのほかに、加入金・使用料の財源だけではエコシステムは回らないとの指摘があり、ストックオプション、新株予約権等のベンチャー企業の将来の成長からバックしてもらう仕組みも考える必要があるのではないか。20年先の在りたい姿を共有して、そこに向かって投資したり、ベンチャーを育成したりすることも必要。NanoTerasuがあるからではなくて、どのようなニーズがあるのか掘り下げていくことが重要。提供できるサービスや多様な収入源をもっと広げられる可能性があり、そのためには課題をしっかり共有して、価値を提供していくことによって、究極的にはビームライン増設等の正の循環にもつながるというようなまとめをいただいたところでございます。
それでは引き続き、議題2のNanoTerasuのエコシステムに移っていきたいと思います。
今日は、有識者会議の委員であります名古屋大学の宇治原先生から、まさに大学ベンチャーの御経験について御発表をお願いしたいと思っています。その後引き続き、NanoTerasuの運営会議の議長でありますQSTの茅野理事から、NanoTerasuのエコシステムについて御説明をお願いしてございます。
よろしければ、宇治原委員から、資料2「技術ベンチャーにおける経験談と気づき」について御発表をお願いしたいと思います。宇治原先生、どうぞよろしくお願いします。
【宇治原委員】 ありがとうございます。名古屋大学の宇治原といいます。企業の方のいらっしゃる前でこういう話をするのは大変恥ずかしいところもあるんですが、とは言いつつ、大学の教員である私がなぜこういうことをやるのかとか、その中で、NanoTerasuというのは、やっぱり大学というか、アカデミアの観点というのがすごくあって、そことのはざまでどういうことが起きるのかみたいなのを、ちょっと生々しい話もありますけども、そういうところで何か協力できたらなと思い、お話しさせていただきます。
資料を早速めくっていただきまして、最初に私、自己紹介します。私は、名古屋大学の未来材料・システム研究所というところです。ここはノーベル賞の天野先生とかも一緒にやっているんですが、省エネに関わる半導体の素材からデバイスまで、もっと言うとシステムまで一貫して、みんなで集まってやろうと、そういう研究所というか、そういうセンターに今、私は所属しています。私自身の専門分野は、いわゆる結晶成長と言われる分野で、素材です。マテリアルサイエンスになります。特にパワー半導体とかのSiCとか、AIを使うだとか、あとはセラミックスだとか、もうまさにマテリアルサイエンスのど真ん中で研究をやっている者です。
立場としては、いろいろ今やっているというか、やらされているというのもあるんですけども、大学の教員でありつつ、産総研のOIL、オープンイノベーションラボラトリのラボ長、これはクロスアポイントといって、80%名古屋大学、20%産総研、なので給料20%は産総研からもらっているんですけども、そういう形で今やらせてもらっていたり、あと理化学研究所の客員研究員とか、今日の話に関係するところでは、U-MAPというのと、アイクリスタルというのとUJ-Crystal、今この3つの取締役で、一番最後のは代表取締役としてやっているということです。こういう背景を持っています。
ちなみに、私は企業に行くという経験はなくて、そのまま、ドクターを卒業して大学、最初は東北大学だったんですけど、東北大学へ行って、その後、名古屋大学という経歴の持ち主です。
それではまず、気づきの前に、私がどういうベンチャーをやっているかというのを少しだけ説明します。
3つあるんですけど、2つ説明します。1つ目がU-MAPという会社です。これは私が初めてベンチャーをやることになって始めた会社になります。ここは、メインはセラミックスを使った放熱材料の開発と製造と、販売もやっているので、開発、製造、販売というのがなりわいになっています。つくったのは2016年12月です。もうすぐ丸6年たつというところになります。資本金は1億円で、ここの一つの大きな特徴として、役員は始めた当時は私が代表だったんですけど、1年後に違う者に代表を譲りまして、その者も含めて役員、社員の5名が私の研究室のOBの者。これは直接就職したわけじゃなくて、一旦どこかに就職して、それで戻ってきて今、私たちと一緒にやっているということになります。これが一つ大きな特徴かなと思っています。
もう一つ、これが一番最近、昨年つくったばかりなんですけど、UJ-Crystalという会社です。これは私が一番、研究開発としても心血注いでやっているものですけども、シリコンカーバイド、最近いろいろなところで話題になりますが、パワー半導体で期待されているシリコンカーバイドの、誰よりも高品質なウエハーを作れるということで、そのウエハーの開発と製造というのをなりわいにしているものです。これは、設立はまだ1年ちょっと前、昨年の6月ですので、資本金3,000万で、強みとしては、シリコンカーバイドはもう既に売られているし、マーケットも小さいながらもあるし、電気自動車に期待されているので、最終的なマーケットサイズからいうと、まだその10分の1とか20分の1なので、今から10倍、20倍伸びていくところではあるんですが、とはいえもうマーケットもあるようなところなんですが、そこに我々独自の結晶成長技術、AI技術、あと大学ならではの、サプライチェーンの中でも我々、顧客探すなんていうところはもう既に突破してしまっていて、既に我々デバイスメーカーとの共同研究というのをずっと続けているので、そういう強固な共同研究関係、こういうのを武器にしながら、ある意味、見ようによっては無謀なんですけども、その無謀なところをどうやって乗り越えていくかというのを現在やっているということです。こういう背景を持っているということです。
あと2枚しかないんですけども、一個一個は実は結構タフな話が多いんですが、ここで今回、NanoTerasuに関係するだろうと思われる気づきみたいなところを少しピックアップしました。
まず、技術系ベンチャーは大企業に劣らずハイレベルになっていると。事実、我々の研究室では卒業生が多く戻ってきており、ベンチャーには最先端の人材がいる。これ、実は愛知県も、東京はもっと進んでいますけども、ベンチャーというのは今、アントレプレナーシップもそうですし、教育を通してもそうですし、世の中で必要なファンクションだというふうに言われているんですが、なかなか大学の、本当の技術という言い方したらちょっと失礼なんですが、世界に、グローバルな課題をグローバルに解決するレベルの技術のベンチャーというのはなかなか、数としてはまだまだ少ない。思いがある人は結構いるんですが。なので、世の中のベンチャー支援というのも、やっぱり多数のベンチャーに支援するという考え方が多くて、我々マイノリティーなので、ベンチャーやっているという、この言葉一つで、我々の規模感とかレベル感というのを物すごく定義されてしまうところがあって、そうするとなかなか、支援していただけるんですが、理解していただける方には適切な支援をしていただけるんですけども、そうでないところは少しレベル感が違う支援になってしまう。
今回NanoTerasuというのは、ここにもやっぱりベンチャー支援みたいなものが当然入ってくると思うんですけども、NanoTerasuはかなりハイレベル側のもので、そういう意味では、どういうベンチャーを支援するかというときに、今、日本でもこういう最先端をやろうとしているベンチャーというのが既にあるんだということを少しお伝えしておきたいなと思って、これを書きました。
2番目もそれと似ているんですけど、意外に我々もそうなんですが、もうジャイアントキリングを狙っていると。SiCというのは本当に今、アメリカの1社が素材開発ではもう最先端を走っているんですけども、物としては我々のほうが圧倒的にいいものをつくっていますし、価格を計算してもそれに勝てると。しかもマーケット、今から10倍は伸びるというふうに世の中で言われているので、打ち負かすというよりかは、これから伸びていくところにどうやって我々が、失礼ながらアメリカの皆さんにはちゃんと市場の地ならしをしていただいたので、そこをどうやって我々が入り込んでいくかということを狙っています。このレベルになると、もう2030年には大体1,000億円ぐらいのSiCの基板、ウエハーだけの市場があるんですが、その後ももちろん電気自動車は伸びていくので、我々はそのスケールのところの、要はニッチを狙うのではなくて、ど真ん中を狙っていこうと今やっています。そういうスケールのものを、今や大学発ベンチャーでもできるのではないかと我々信じてやっているということです。まずここが今の技術系ベンチャーの状況の一つです。
次に、前にエコシステムの御紹介いただいたときの3つのステップという、あれに従って少し話をしたいと思って持ってきたんですが、今日の議題の中にも顧客にとっての価値があるかという話が実は書いてあるんですけど、これは一つ、私の経験談ですが、U-MAPという一番最初のベンチャーをつくるときの話なんですが、なぜつくろうとしたかというきっかけがあって、我々、いわゆるフィラー材といって、樹脂とかセラミックスに混ぜて使う粉を売っている、そういうものなんですが、そういういわゆるフィラー材というものは、1キロ1万円でも高いと言われる、そういう世界です。1キロ1万円でも高いほうに分類される世界なんですけど、我々当時、これ使えるんじゃないかと思って、大学には成果有体物というルールがあって、有償でサンプルを企業等に提供するというルールがあるんですが、そのルールを使って当時、もう値段、なかなか言いにくいですけども、1グラムを数十万円で値をつけて、これでどうだとやったことがあったんですね。そうしたら4社がそれでも買っていったと、それも1グラム買っていったんじゃなくて、数十グラム単位で買っていくと。正直私自身、そのときに物すごく驚いたんですけど、あれを見たときに、面白かったのは、とても高いものを売ったので、会社の方も、自分たちの会社の技術の最先端を使って全力尽くさないとこれはまずいというので、全力を尽くして、その貴重なサンプルでどういうものが作れるかチャレンジしてくれたと。
我々あれを見たときに、いわゆるニーズというか、ベンチャーのところで、みんなペインという言い方しますけど、これがペインなんだなということを実感して、そのときにちょうど背中を押してくれる方がいたので、これだけのペインだったら真剣にやろうというので、それをきっかけに始めたと。あのとき思ったのは、やっぱり本当に価値あるものは価格の問題じゃないんだなというのを心底実感したというのがあります。これが、本当に価値がある考え方かなというふうに思っています。
あとは大学との関係性みたいなところがNanoTerasuにも活用されるかなと思っていまして、今、大学に結構いろいろなベンチャーの知財というのが、もともと研究開発やっているので、あるんですけども、そういうものの独占実施の計画等には、名古屋大学は結構ここら辺は頑張っていただいていて、ストックオプションとかを今活用しています。結局これは何かというと、大学の価値のマネタイズみたいなことを、我々のベンチャーを使って大学としてもやってくれていると。これは次のページにも関連するので、先に行きます。
あと、大学というのは公共なので、物を作っていいのか、物を売っていいのかというのは常に、文部科学省の皆さんにもいろいろ手伝ってもらいながら、議論されているところなんですけども、現時点我々どうしているかというと、実は大学で作ったものを売るということはやっていないです。売るときには、自分たちの工場で作るか、もしくは外部に製造委託して、それで売ると、あくまで大学の中は研究開発に近いところだけを今進めているというやり方をしています。
あと、我々は何で3つもやっているんだと、これもよく言われて。先生、1つで十分じゃないですかとよく言われるんですけど、全くおっしゃるとおりで、こんなしんどい思い3回もするのはあんまりいいことじゃないと思っています。ですが、何で3つあるかというと、それは簡単で、1回、僕はこの2つを1つでやろうとしたんですね。2つで1つをやろうとすると、どっちかをやって、どっちかはやらなくなるということを身をもって知って、やっぱりベンチャーみたいなところは、大きな企業はもちろんいろんな事業が同時にできるんですけども、我々何かをやるときには必ず1つに集中しないと。必ず1つをやると、1つは、やらないことはないんだけど、スピードが落ちるし、競争力どんどんどんどん失っていくと。そういうのも一つ、我々経験したことかなと思っています。
次がさっきのストックオプションとすごい関係するところなんですけども、ベンチャーというのは、やっぱりNanoTerasuでも、例えばそういうスタートアップを対象にするというのをターゲットに一部入れられていると思うんですが、考え方ですけど、我々ベンチャー側からしてみると、例えばベンチャーに優先枠を与えようとか、ベンチャーにはもっと気軽に使ってもらえるようにしようとか、ベンチャーの皆さんはきっと人も少ないだろうから技術的支援をしましょうとか、そういう話というのはよく出てくると思うんです。ですけど、先ほども言いましたけど、ベンチャーといえども、すごいハイレベルの人間はいて、実はもしかしたら僕ら、物すごいユーザーなのかもしれない、必ずしもそうじゃないですけど、かもしれないし、お金がないから安くしてくださいというのも実はあんまり思っていないです。お金というのは、やっぱりベンチャーの場合は、投資してもらいながら進めていくので、正直、使用料を安くしてもらう以上に、もっと違う価値を生んで、早く大型の投資を受けるというほうがよっぽど僕らにとっては開発が進んでいくので、支援としては何かというと、そのスタートアップがいかに大きな価値を持つようになるかという視点で支援していただくのが本当は一番いいです。
大学も今は、ベンチャーからお金を取ろうなんていうことはほとんど考えてなくて、むしろベンチャーが大きくなることで、どうやって大学がその利益を得るかというか、利を得るか、価値を得るかということをやっぱり考えている。これはもう、一番下にも書いていますけど、今の場合は、一つは寄附であり、一つは持ち株、株を持つということなんですけども、むしろそういう観点で考えていただくとありがたいかなというふうに思っています。
特にNanoTerasu自身も、これから、ずっと今の状態で続けるんじゃなくて、恐らくどんどん改良して、常に世界最先端を走る、なおかつ自立するという、物すごい難しいことをやっていかなければいけないと思うんですけど、自立だけだったら多分、使用料だけで十分賄えると思うんですが、例えば更新しようと、もう大改造しようみたいなときに、そのお金どこから持ってくるんだというときに、多分使用料で幾ら稼いでいても、もう全然足りない話になっていて、そうすると、やっぱりこういうベンチャーみたいなものをうまくつかまえて、そこからの収入で大きな改造をするとか、大きなブラッシュアップをしていく、それで世界最先端を常に歩くと。ベンチャーというのは多分、そういうファンクションとして捉えていただけるといいのかなというふうに思っています。
一番下は今説明したので、最後にコンソーシアム。これは、前にエコシステムの説明をいただいたときに、僕がオープンイノベーションってコンソーシアムですかと言ったら、違いますと言われたんですけど、あれは物すごく僕、後から考えて、全くそのとおりだというのをよく理解しました。というのは、我々やっぱり、特にSiCは今、経産省のグリーンイノベーションのプロジェクトで開発進めているんですけども、当然ベンチャー一つではそんなことできるわけないので、複数の中小企業とか、あんまり大きいところは入っていないんですけど、そこでやっているんですけども、やっぱりそのコンソーシアムにおいて物すごく重要なのは、先生おっしゃられたとおりに、それぞれのベネフィットをダイレクトに考えることが一番重要だというのは今、身をもって思っています。
ベネフィットがあまりに多様だということがよく分かっていて、お金のところもあれば、権利のところもあれば、それこそダイレクトに技術のところもあれば、もしかしたら広報みたいな、自分たちの存在価値を上げるみたいなところに価値を感じている方もいらっしゃって、そこをうまく設計していかないと、変な話、そこでやるべきことをやるんじゃなくて、自分たちがやりたいことだけをやり始めてしまったり、うまく全ての機能がコンソーシアムで、要はどこか、誰もやらないところというのが出てきてしまって、そこをやってもらおうとすると、決してそれは簡単には分からないようなベネフィットをうまく設計していかないといけないということを、今、我々身をもって知っている。これもすごく、1年ぐらいかけて僕らも今議論しているところなんですけども、恐らくNanoTerasuのコンソーシアムにもこういうことが起きてくるのかなというふうに思っています。
以上になります。
【古田課長】 どうもありがとうございました。もうNanoTerasuに限らずに、我々文科省としては本当に非常に参考になる、多岐にわたって参考になるお話をいただいたというふうに思っております。ぜひ、御質問でもコメントでも何でも結構ですので、どなたかお願いしたいと思いますけど、いかがでしょうか。
平井委員、どうでしょうか。
【平井座長代理】 大学のほうでベンチャー育成のため、スタートアップのためにファンドを形成しているケースがすごく増えていますが、こちらはそういうことも想定して、実際にそういうところは使われているんですか。
【宇治原委員】 はい。何年か前に文科省が大きくお金を出してファンドを4つつくった中には、実は残念ながら名古屋大学は入っていないんですけど、それを受けて一応、名古屋大学は、周辺の大学と協力してファンドをつくっています。一番最初の会社はそこからお金を受けていたりもします。
【平井座長代理】 お金だけではなく、やはりVCの機能として、経営指南というところがすごく。
【宇治原委員】 いや、これはちょっと、YouTubeで公開されているから言いにくいと思うんですけど、経営指南をしてもらった記憶はないですね。そこはやっぱり自分たちで見つけてくる、仲間を見つけてくるしかないです。
【平井座長代理】 そういった部分は今後、重要な部分になりますし、アメリカのVCとの違いというのは、やはりそのようなこともあるのでしょう。
【宇治原委員】 あります。ありますし、もう一つあるのは、我々どっちかというと理系の、いわゆる日本で言うところの理系のベンチャーなんですけど、これは全然NanoTerasuと関係ない話なんですけど、理系のドクター人材がMBAを取るというのが一番いいなと思っています。日本はそのパターンがすごく少なくて、やっぱり理系文系問題というのは根深くて、どれだけ優秀な経営者だったとしても、本当に文系しか知らない人と一緒になかなか技術系ベンチャーできないです。大きい会社みたいにいろんな人材が集まっているところはいいと思うんですけど、我々少人数で始めなければいけないので、だからぜひとも本当に。どこかから経営者を連れてくるというよりも、ハイレベルな理系人材にMBAを教えてほしいとは思いますね。それに近いような人とやっていると、すごくうまくいきます。
【平井座長代理】 全く賛成で、これはNanoTerasuとは全く関係ありませんが、私もPh.Dを持った経営者を増やそうということを考えておりますので、ぜひ文科省の方にも応援をお願いしたいです。
【柿田局長】 今、平井先生おっしゃっていただいた、日本の会社で本当に役員クラスはじめ、やっぱりドクターを持っている人が少ない、国際的に比較して。それは霞が関、永田町含めて、今、議論のイシューになっていまして、そこを国際水準に合わせようじゃないかと。出口の一つとしてそこが一つになり、それに向かってドクターコースの学生もちゃんとドクターを取る学生が増えていくといういい流れを日本でもつくっていこうと、そんな議論を役所のほうでもやっていますので、ぜひ。
【平井座長代理】 ちょっと話がそれてしまいましたが、ぜひ。
【千葉座長】 千葉ですけども、大変パワフルなお話をお聞かせいただいてありがとうございます。私も全く同じ気持ちで、そのとおりだなと思って伺っていたんですけど、今、平井委員から聞かれた御質問はかなり本質的なところだと思っていまして、ちょっと間違えると、教育をすればそうなる、だから教育をしなければという発想になりがちなんですけど、私の経験では、そういう素養を持った人がそこに出会ったときには力を発揮する。だけどそうでない場合は、力をまず発揮することはないという、これ、学部の学生さんに言うとがっかりしちゃうんですけども、現実としてできる人とできない人というのは、かなり明確に分かれているなと思います。それが、チャンスがないために発掘できていない場合がある、だからそれを発掘する努力は必要なんですけど、みんな教育すればできるようになりますというほど甘いものではないと思っているんですけども、いかがでしょうか。
【宇治原委員】 全くおっしゃるとおりです。今、我々大学のほうでも全く同じような議論をしていて、ただやっぱり、別のアントレプレナーの調査をしたときに、文科省の資料を見ただけですけど、25%の大学でアントレプレナーシップ教育をやっているんだけど、個人ベースになると、アントレプレナーシップ教育を受けた子は1%だという資料があったんですね。だから100人に1人しかアントレプレナーシップ教育を受けていないということが分かって、だからまさに、100人教えても100人そうならないんですけど、何せ100人に1人しか受けていないので、発掘すらできていないというのが事実で、だから今回NanoTerasu云々、サイエンスパークみたいなところをつくるといいと思うんですけど、まずはやっぱりチャンスを与えておかないと増えないかなという気はします。今ちょっと、そういう意味では全然、日本の大学生はアントレプレナーシップを知らない状況です。
【千葉座長】 そうですね。やっぱりあえてもっと初等教育とか、そういうところの、あるいは家庭教育とか、そういうところの影響が最後に、その少ない数字に来ているのかなとか、もんもんと私も悩むんですけども。
【平井座長代理】 私もよろしいですか。
【千葉座長】 どうぞ。
【平井座長代理】 私もPh.Dを持ちながら、いろんな新しい事業を、起業家としてやってきました。そういうひとは、日本では圧倒的に少ないですが、それをやっていて感じるのは、やはりちゃんとしたものを学ぶということのスキルも要るし、当然経験も要りますが、結構性格的な要素というのは大きく、経験とスキルと性格の3つ全てが求められると考えています。要するにアントレプレナーシップに合った人材を探し出すためには、場がないといけないし、場があって、そこからまさに発掘することになります、人を。NanoTerasuは、だからその有効な場になり得ると思います。
【古田課長】 ありがとうございます。ようやくNanoTerasuに戻ってきたという感じだったんですけど。どうぞ、小松委員。
【小松委員】 最初のところの御指摘で、ちょっと確認させていただきたいんですけど、確かに前回、ベンチャーであるとか中小のほうにも使ってもらうという話あったと思うんですけど、確かにコアリションで5,000万、1億というのはなかなか出ないと思うので、先生おっしゃられた最初のところは、例えばNanoTerasu、もしくは東北大学、どこか分からないですけど、それが、今、大企業はコアリションメンバーのためにお金を拠出して、メンバーになるというのがあるんですけど、逆にベンチャーとかそういうところには、NanoTerasuか東北大か、どこか分からないですけど、いわゆるベンチャーキャピタル的な役割で、かえってお金を拠出するというか。
【宇治原委員】 そうですね、それは一番いいと思います。
【小松委員】 そういう機能があるべきじゃないかと、そういう理解でいいんですか。
【宇治原委員】 ベンチャーはやっぱり金をもらうお客さんじゃなくて、さっきも言いましたけど、自分たちが価値をマネタイズするためのファンクションだという位置づけで。だから一つは、今、小松先生の言われたようなやり方だと思います。
【小松委員】 それはすごく面白いなと思って、今、先生おっしゃられたように、確かにディープテックのそういうベンチャーとかというのは技術レベルもすごく高くて、恐らくNanoTerasuみたいなやつを使って、もう自分たちでどんどんやっていけると。さらには、大企業が使うとなかなかその成果が、先ほど柿田局長もおっしゃられたんですが、成果が表に出てこないというか、事業と、どれだけもうかったんですかというあれになると思うんですけど、ベンチャーの場合、やっぱり意思決定は速いし、目的が非常に明確で、最短距離でそういう成果を出せるという意味では、非常に、そういうシステムというのはきっと必要なんだろうなというふうには思いました。だからそうしないと、恐らくなかなかそういう人たちというのは、このNanoTerasuのところには距離を、すごく遠くなってというのはあるのかなと思います。
【宇治原委員】 そうですね、スピードに関しては全くおっしゃるとおりで、我々も開発の現場と社長が同時にいますから、開発の報告会みたいなやつは社長もいるんだけど、その場で、次これやろうと言ったら、もう次の週どうやるかやっぱり考えるので、そのスピード感じゃないと、半年後なんていったら、おっしゃるとおり、我々二、三年置きに資金調達しなければいけなくて、資金調達するためには、我々が今どういうレベルなのかというのを見せる必要があって、だから本当に広報も速いです。あっという間に広報しますし、二、三年で見せたいものを半年後に測定するなんて言われると、全然間に合わなくなってしまって、だからそのスピード感も一部つくっておいてほしいなと思います。
【小松委員】 そうですね。
【古田課長】 ありがとうございます。この議題、ほかに特に何かございますか。どうぞ。
【辻本委員】 経験に根差した話で、すごい説得力があって勉強になりまして、私も実はGreater Tokyo Innovation Ecosystemというプラットフォームの運営をしていまして、立ち上げをしていて、先生がおっしゃっていることを実際にやっているほうなんですね。その仕組みを今一生懸命つくっていて、東大と早稲田と東工大でリードして、16大学、グレーター東京圏の大学全部入って、農工大にも入っていただいて、スタートアップエコシステムをつくっていっているんですけど、さらに言うとビジネススクールもやっていますし、東工大としては、先生がおっしゃるようなビジネススクールをこれからつくろうとしていますし、インキュベーション施設も今つくっていますし、アントレ教育もやっていて、これから私たちのプロジェクトで、かなり前段階の人たちに、小中高生とかに教育をしていこうというので、1%という数字はすごい胸に刺さっていまして、我々がもっと頑張らなきゃ駄目だということでやっているところで、非常にそのとおりだなと思って聞いていました。
その中で特に、うまく設計しなきゃいけないというのは日々すごく感じていまして、プラットフォームをつくって、この機能とかVCを入れてとかいろいろやるんですけど、なかなかうまくいかない機能とかあるんですよ。この機能は必要だと思っているんですけど、早過ぎたとか、これは要らないなとか、この部分まではこの人がやらなきゃとか、結構詳細な、組立てによってうまく回ったり回らなかったり結構するので、ただ集めただけとか、関係者が集まっただけだと機能しないというところが非常に日々実感しているので、そういうところをNanoTerasuでも詳細設計を。いきなり動くわけじゃなくて、動きながら修正していかないといけないと思うんですけど、そういうシステム設計がすごく大事だなと、今ないというか、ちゃんと動いていないシステムなので、これからつくっていかないといけないなというのは非常に思いました。ありがとうございます。
【古田課長】 ありがとうございます。ちょっと次の話題につながるようなイントロしていただいて、ありがとうございます。
横山委員が途中からオンラインで入られました。QSTの茅野理事も途中から参加されています。この議題に関してはこの程度で終わらせていただきたいと思います。宇治原先生、本当にどうもありがとうございました。
【宇治原委員】 ありがとうございました。
【古田課長】 それでは、次の議題に参りたいと思います。続きまして、次世代放射光施設の運営会議の茅野議長から、NanoTerasuのエコシステムについて、資料3に基づいて御説明をお願いしたいと思います。茅野議長、よろしくお願いします。
【茅野理事】 NanoTerasuのエコシステムについてということで御説明いたします。
1枚めくっていただいて1ページですけれども、本日御説明させていただく内容ですが、これからNanoTerasuのエコシステムを考えていく上で、3つフェーズあるうちの第1フェーズの部分、エコシステムの設計フェーズ、この部分の御説明をさせていただくということで、右にありますように、主にビジョンとか提供価値、機能、対象、仕様、それからアクター、こういった辺りについて御説明させていただきたいと思っています。
まず、この辺りの概観のところから説明させていただきますが、最初の3ページのところです。NanoTerasuが目指すものということで、ビジョンというか、キャッチフレーズ的なものとして「新たな科学技術の創出で豊かな実りをもたらす光を」、ちょっと言い方変えますと、放射光で新たな科学技術を創出して、それを基に社会に豊かな実りをもたらすということで、その下に、これに参加しているいろいろな機関のそれぞれ思いを書いているわけですけれども、こういったことを踏まえまして、一番下にありますように、官民地域パートナーシップの下で、創出した成果を多様な形で社会に還元して、我が国の科学技術・イノベーションの向上に貢献する。そのことでNanoTerasuの価値を見いだしていきたいということでございます。
次の4ページは、放射光利用の対象者のマップです。縦横に矢印がついておりまして、横の矢印、左側が学術のほうに寄ったところ、それから右側がイノベーション創出に寄ったところになっておりまして、縦の矢印、真ん中にありますが、これは下が成果公開型の、いわゆる研究者個人が物事を探求していくというところから、成果占有型で、組織のニーズプル型のほうに移行していくという矢印です。それから、緑の部分が共用の部分、オレンジの部分のところが、いわゆるコアリションと呼んでいる部分になります。
まず緑の共用部分といいますのは、真ん中よりちょっと上まで上がっていますけれども、一番多いのはやはり、左下にありますような、本当にサイエンスレベルから国プロレベルまでの学術研究を行う研究者とか学生、そういったところが主な対象者になるようなエリアをカバーしております。それから、オレンジとグリーンの中間辺りのところに、スタートアップとか大企業、中小企業と書いてありますけれども、企業の方も成果占有型で入ってこれるような形でございます。そういった方たちはイノベーションに近い方なんだろうなというふうに思っているところです。
それから、コアリションですけれども、右上のほうです。主にスタートアップ、中小企業、大企業と書いてありますけれども、産業界の方々が中心になって、この右上の部分を形成していて、コアリションには大学とか国研も加盟しておりますので、そういった方々は学術の分野から広くおやりになるんだろうということで、細長い丸になっております。大体こういった方々が対象になって、目的はこういうことなんだろうなというふうに理解しております。
それから次のページは、NanoTerasuの主要な機能についてです。NanoTerasuができますと、官のほうでQST、それから民のほうでPhoSICさんが一体となって、このNanoTerasuを運用するわけですけれども、官民地域の地域ということで、宮城県さんとか仙台市さん、東北大学さん、東北経済連合会さんが様々な形で関与されてくると。NanoTerasuから、右上にあるように科学技術・イノベーションに貢献していくというような絵姿ですが、主な機能として考えている部分を丸1、丸2、丸3で示しております。
丸1は、いわゆる放射光を提供するということです。それから、NanoTerasuの先端性の維持、新たな開拓、人材育成、こういったものを主な第1番目の機能として、研究開発・技術開発による成果の創出と人材育成をやっていく、これが1つ目です。2つ目は、イノベーションの創出とか、こういった加速器とか放射光関連の産業の振興です。得られた成果の社会的な価値、経済的な価値への転換を図る部分。3番目が広報・アウトリーチということで、成果や価値の伝達を行うことによって、新たなユーザーも集めますし、それからNanoTerasuの存在価値といいますか、そういったものをきちんと見せていくという、この3つが機能だというふうに考えております。
6ページ目が現在の推進体制ですけれども、左側にQSTと書いてありまして、QSTは、共用法ですとか規制の関係での施設設置者ということになっております。それで加速器共用利用の運用、ビームラインの運用、これを登録機関と一緒に行いますけれども、それから、QST自体、研究開発機関でもありますので、ビームラインですとか、そういったものの高度化ですとか、それを利用した先端研究開発、こういったものをやってまいります。それから、右側がPhoSICさんで、パートナーの代表機関、基本建屋の所有者でもあり、コアリションの利用の運用もされます。それから共用利用へのビームタイム提供も行うということで、それと東北大学さんは、パートナーの一員なんですけれども、用地を整備していただいておりますし、あと、イノベーションにつながるようなリサーチコンプレックスの形成の支援、コアリションビームライン技術の研究開発、こういったところを担当しております。
それで、全体として一体的にやっていく必要がありますので、こういったところが集まりまして、NanoTerasuの運営会議というのを持っておりまして、私が議長をさせていただきまして、副議長がPhoSICの高田理事長ということで、あとQST、PhoSIC、東北大学の幹部の皆さんが集まって議論をしております。具体的に取り扱っているものは、政策的とか実務的・技術的な、一体として考えるべき共通課題、こういったものの審議、調整ですとか情報共有をやるわけですけれども、現状の主な検討事項としては、運用体制とか財務、安全管理、情報ネットワーク、情報セキュリティー、広報、それからビームラインの立ち上げなど、こういったものが今、議題になっているところです。そのほかに、一番下にありますように、宮城県さんや仙台市さんは、資金上の参画ですとか、リサーチコンプレックスの形成加速に資する環境形成、地域での利活用の促進ですとか、コアリション加入拡大支援をされておりまして、東北経済連合会さんも、PhoSICの設立、地域企業の利用促進、財界・産業界との接続、コアリション加入促進等、御支援をいただいているところでございます。
ここからは、5ページに書きました機能3つ、①、②、③で、放射光の提供、先端性の維持・開拓、それから2番目、イノベーションの創出、関連産業の振興、それから広報・アウトリーチそれぞれについて、もう少し詳しく説明いたします。最初は放射光の提供、先端性の維持・開拓、人材育成です。
8ページを御覧ください。価値とか対象、アクターということで、まずNanoTerasuが何を提供するかというところを、「得られる価値」の下に書いております。それは共用法に基づく放射光の利用ですとか、コアリションにおける放射光の利用、それから先端的な放射光利用技術や、設備の持続的な開発・増強・アップグレード、こういったものでございます。それで、そこから得られる価値というのは、先端の学術研究成果ですとか、イノベーションにつながるような研究開発・技術開発の成果、それから若手研究者や学生の成長・育成、高度技術者の育成、こういったものが考えられます。
共用とコアリションを分けて見てみますと、下にありますように、共用については、担当機関がQSTと登録機関、コアリションについてはPhoSICさん。対象者につきましては、共用の場合は、先ほど御説明しましたように、主には学術研究や国のイノベーション戦略を担う研究者、それから先端の学術研究成果を活用するスタートアップですとか企業研究者、海外研究者。コアリションのほうは、恒常的に放射光を利用したい企業やスタートアップ、大学、国研など。それから、ものづくりフレンドバンクといいまして、下に注釈がありますけれども、東北6県・新潟県の中小企業によるNanoTerasuの利活用を目的に東経連ビジネスセンターが設立した任意団体ですが、これに加入している中小企業の方々、こういった方が対象です。
特徴としましては、共用のほうは研究者探求型で、国内外誰でも利用申請が可能であり、世界最高水準の測定・実験環境が得られる。利用機会は年に2回程度ということです。コアリションのほうは、組織ニーズプル型で、コアリションメンバーに利用は限定されております。ただ、学術的課題審査が不要で、成果は占有される。原則1か月前に予約が確定でき、利用機会の自由度が高いという特徴を持っております。
次は、共用による放射光提供と人材育成に関する部分を、もう少し掘り下げて説明しております。共用につきましては、前回も御説明しましたように、成果公開型の一般課題と成果占有課題に分かれております。生み出す価値としては、成果公開型は、先端の学術的研究成果や、若手研究者・学生の成長・育成、成果占有型はイノベーションにつながるような研究開発・技術開発の成果ということで、例えば知財戦略上、表に出したくないとか、そういったものなんかが入るんだろうと思います。
対象は、成果公開型は学術研究を行う研究者ですとか、若手、学生、海外研究者、それから成果占有型のほうは、先端の学術研究成果を活用したいスタートアップですとか、単発的に放射光を利用したい企業研究者が対象。
価値を生み出すのに必要な仕様の詳細につきましては、成果公開と成果占有課題と共通の部分が多いんですけれども、放射光利用を支援する高度技術者、この人たちがそばについて支援すると。それから、世界最高水準の測定・実験装置の提供、成果を生み出せるビームラインナップ・ビームタイプの提供、スムーズかつ安全なデータ取扱い・解析環境の提供といったことが挙げられます。それから、公開型と占有型で分かれるものの仕様としては、公開型のほうでは若手研究者、学生への十分な利用機会の提供、成果占有型では、前回御説明したビジネスモデルが成り立つような合理的なビーム利用料、こういったものの設定ということになります。
次のページですけれども、今後、共用のほうで検討しなくてはいけない主な課題について記載しております。
1つ目は、成果を生み出せるビームラインナップ・ビームタイムの提供という観点から、共用ビームライン3本とコアリションビームライン共用枠で十分であるかどうかということの検討。それから、NanoTerasuのビジネスモデルを前提に考えたときに、合理的なビーム利用料の設定などの利用制度の設計です。3番目は、国の量子技術イノベーション戦略の一端を担うQSTとして、QSTの量子科学技術プラットフォームと融合した戦略推進をどう進めるかという点。それから、若手研究者や学生への利用機会の提供、最先端の放射光利用を支援する高度技術者の確保とキャリアアップ、あとはデータ取扱い・解析環境の提供に向けたコアリション、サイエンスパークとの連携、こういったものが挙げられます。
次のページは、コアリションによる放射光提供に関してですが、今、コアリションのほうは、社会課題解決や広範な分野の研究開発に資する7本のビームラインが左のように整備されておるところです。具体的な利用ルールにつきましては、予約システムについては、ユーザーが参画する利用推進委員会、マシンタイム運用委員会等で議論して設計しておるところでありまして、これについては第3回の有識者会議の資料5で説明がされているものと思います。それから、情報管理・知財保護を徹底した分野融合、利活用拡大の仕組みということで、コアリションコンセプトでは、産学双方のステークホルダーが強力な1対1のチームを結成して、厳格な情報管理の下に共同で課題解決を図るユニークなシステムを考案しているところでございます。それから、スタートアップと関連して、東北大学ではいろいろな可能性を検討しているところでございます。これはまた後で出てくるところです。
次は2番目です。1つ目は利用に関するものですけども、2つ目は、そこからのイノベーションの創出と、加速器等の関連産業の育成という部分でございます。
ここにつきましても同じように、NanoTerasuとして提供するものと得られる価値を最初に示しております。13ページですが、NanoTerasuとして提供するものは、科学的な知見の提供と、研究開発・技術開発成果の経済的価値への転換に向けた支援ということで、具体的に言いますと、QSTの量子科学技術研究開発プラットフォーム、それからコアリションコンセプトに基づくコアリションの形成、これはPhoSICさんです。それから、東北大学などのリサーチコンプレックスとの連携、あとはQST、PhoSIC、東北大学で一緒になってやる計測・計算融合による研究DX、こういったものが仕様として入ってまいります。
それで、こういったものから得られる価値として、上にあるように、社会課題の解決や競争力のある技術の創出、スタートアップの創出と成長、それから加速器・放射光関連産業の成長・発展、我が国の国際競争力の強化、地域の経済・雇用の拡大、こういったものにつながっていくというふうに考えているところです。
今御説明した内容が下の絵になっているわけですけれども、ここから先、提供するもののうち矢印で書いてあるもの、4つ書いてありますけれども、これについてもう少し詳しく御説明します。
まず、最初は、QSTによるイノベーション貢献ということで、量子科学技術研究開発プラットフォームです。14ページですけれども、まず、図の下の段です。QSTは7年前に発足した新しい研究開発法人なんですけども、その前身のところは、いろいろな加速器を利用した量子ビーム科学ですとか、重粒子線を用いたがん治療ですとか放射線防護ですとか、そういったことをやっていたJAEAと放医研が一緒になってできております。それで、新しく量子科学技術研究開発機構という立派な名前をいただきまして、これからは量子技術を発展させるためのプラットフォームをQST全体でつくっていこうということで、第1期スタートしております。
その後、量子という言葉が非常にあちこちで用いられるようになりまして、国の量子技術イノベーション戦略というのがありますが、その研究拠点の機関として認定されております。御存じのように、放射光というのは量子を照らすということで、非常に相性がいいわけですけれども、今QSTは、国の量子技術イノベーション戦略の量子未来社会ビジョン、この中で量子生命拠点と量子機能創製拠点に指定されております。ここではイノベーションということが非常に重要視されておりまして、NanoTerasu以外にもいろいろな新たな材料をつくり出すような量子ビーム、いろいろ持っているわけですけれども、そういったものと複合させながら量子技術の発展に貢献したいということでございます。
具体的には、NanoTerasuを使って得られたデータ、そういったものがイノベーション萌芽への支援になるわけですけれども、枠の上にありますように、共用の研究チーム形成への支援ですとか、共用の新規利用者の開拓、これは東北大学さんともマッチングファンドをつくって、やっております。それから測定・実験に関する科学的知見の提供、こういったもの、つまり研究成果をできるだけ多く生み出すような支援と、その次にある産業界などとの共創ということで、各拠点に産業界との協創ラボなどをつくることによってイノベーションを創出していく、その中核にNanoTerasuがいて、そこに参画してくるいろいろなところの研究者の皆さんと一緒にこれをやっていくということを考えております。
次、15ページ、地域パートナーによるコアリションを使ったイノベーションへの貢献ということでございます。これは精力的にPhoSICさんのほうで加入を進めておりまして、課題解決を目的として産官学の多彩なアクターが既に参画をしております。産業界130社、学術・研究機関、それから地域中小企業60社ということで、もう既に相当な企業さんたちもお集まりになっている。
これに東北大学さんがいろいろなサポートをやっていくということで、高度専門人材、ここは約3,000人の研究者や外部研究者のネットワーク、国際ネットワーク等ございます。それから専門組織としてSRISですとか、いっぱい書いてありますけれども、未踏スケールデータアナリティクスセンターですとか、18大学院、6附置研等々、こういったものです。それから、高度な研究設備、これはすぐ近くにあって、NanoTerasuと一緒に使えるということだろうと思います。それから、各種の産学連携メニューですとか、スタートアップ創出のための支援メニュー、こういったものを多彩にそろえておりまして、こういったことと連携してイノベーションを創出していくということでございます。
16ページにリサーチコンプレックスの形成ということが書かれておりますけれども、これも東北大学さん中心になっておやりになっている。第2回の有識者会議で青木理事から御説明があったものですけれども、一番下から見ていきますと、東北大学が技術及び人材を、東北大学の子会社と提携サービスとして循環させていく。それから、金融機関が資金循環させていくということで、専門コンサルとか試作品製作とか拠点提供、高度IT環境等々、こういったものをサービスすると。技術、人材、資金をインテグレーションして、また新たな価値を生み出すということで、一番上にありますように、大学子会社が技術と人材と資金の結節点となって、事業創出にとどまらず、その先の成長・拡大促進につなげていくということです。
それから、最後4つ目の矢印が計測・計算融合による研究DXですけれども、これはここに書いてありますように、計測・計算融合で課題解決につなげるということで、精密な可視化データをデータ分析AIやシミュレーションと連動させることで、ただ見るということだけではなくて、発見とか検証、予測も併せてデジタルトランスフォーメーションして、研究開発過程を革新するということが可能になるだろうと、可能にしたいということで、左にありますように、東北大学さん、PhoSICさん、QST、それぞれ役割を分担して、これに取り組むということでございます。
東北大学さんの一部、計算環境の既存インフラ、こういったものも利用させていただいて、新たな研究スタイルを構築していきたいということで、次の18ページに例として、次期SIPのサーキュラーエコノミーシステムの構築というのを御紹介しております。これはグローバルリーディング企業とアカデミアが連携して、燃やさない・埋めないポリマー開発を行うということで、その計測・計算融合の研究開発でNanoTerasuを活用する予定になっております。下に赤い枠で示しておりますように、「富岳」とNanoTerasuの連携活用によって、放射光による最先端の可視化計測と、「富岳」による大規模数値解析、こういったものを組み合わせて新たなポリマーの開発を進めるということでございます。
それから次、機能の3番目、広報・アウトリーチについてです。これにつきましても同じように書いてありますけれども、NanoTerasuとして提供するものは、論文ですとか学会発表、プレスリリース、それからセミナー、シンポジウム、ウェビナー等の開催、あとは報告書、パンフレット、国際評価、ホームページ等々書いております。得られる価値としては、産業の国際競争力の強化とか、社会実装を通じた成果の還元の促進、それから国民・地域の理解促進、教育への貢献、新規利用者の開拓ですとか、既存利用者との関係構築、優秀な海外研究者との関係構築、世界的なネットワークの構築と先導、こういったものがあるだろうというふうに思っております。
それで、広報をする対象ですけれども、大まかに4つに分類して考えております。1つ目は国民、地域、児童生徒、学生でありまして、これはQSTですとか地域パートナーが一緒になってやっていくと。連携していただくところとしては、登録機関とか宮城県、仙台市があるだろうと思っています。ここで提供する情報は、NanoTerasuの意義ですとか、NanoTerasuから生み出された成果や、我が国の国際競争力強化への貢献等々です。
2番目の対象としては、施設利用者、潜在的利用者でありまして、これもQST、登録機関、PhoSICさんで一緒になってやっていくということで、あとは東北大学さんや学協会、東経連さん、それから仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会等々に連携していただくということで、ここでは利用制度ですとか、研究成果の創出事例ですとか異分野融合に関する情報、あとは光源性能、測定装置等々、利用者に分かるような情報を出すと。
それから3番目は、政策関係者、経営層等で、この辺りも担当機関や連携アクターはこういったところでございまして、提供する情報としては、NanoTerasuの意義ですとか、生み出された成果、それから国際競争力強化への貢献、こういったところが提供する情報になるだろうと。
最後は海外ということで、ここも海外の利用者を共用で想定しておりますので、利用制度ですとか性能、それから、これまで生み出された成果等々を出していくというふうに考えております。
次のページが広報・アウトリーチにおける主な課題ということですが、ポイント1として、広報・アウトリーチの連携調整体制の整備です。広報・アウトリーチに用いられる手段や媒体、提供する情報などに共通項が多く存在すると。各機関でばらばらに対応すると効果が最大化されずに伝わらないということで、これについて連携調整体制を整備して、効果的・効率的に行っていきたいということです。
それからポイント2は、地域の力を活用した広報・アウトリーチ活動ということで、国民、地域、児童生徒への広報・アウトリーチ、これはNanoTerasuへの投資に対する理解を得る点からも非常に重要と思っております。なかなか難しい部分ではあるんですけれども、官民地域パートナーシップですとか、仙台市内、東北大キャンパス内という立地を生かして地域の活動も進めたいと。それから、県や市の観光政策、教育政策などに基づく活動・事業ですとか、東北大学のアウトリーチ活動などとの連携も進めていきたいというふうに思っております。
最後まとめになりますけれども、かなりいろいろ御説明しましたが、ここに、機能、対象、価値、仕様、担当機関・アクターを、ざっと機能ごとにまとめております。目指すものというのは、最初に御説明した「新たな科学技術の創出で豊かな実りをもたらす光」ということでございまして、機能につきましては、放射光の提供、先端性の維持・開拓、それから人材育成、これが一固まり、それからもう1個が、イノベーションの創出と関連産業の育成という、これがもう一つの固まり。
最初の放射光の提供等々では、対象は学術研究や国のイノベーション戦略を担う研究者、海外研究者、これは共用のほうになりますけれども、それから、先端の学術研究成果を活用するスタートアップ、時々放射光を利用したい企業研究者、これは共用の成果占有型です。それから、恒常的な利用を行う企業やスタートアップ、大学、国研などということで、これはコアリションをお使いになる、それぞれ共用、コアリション、こういったものに合わせて仕様を決めておるということです。
価値についても御説明したとおりで、本当に先端のサイエンス的成果を出す、それから人材育成を行うというところが1つ目。2つ目が、イノベーションにつながる研究開発・技術開発の成果を出していくという、こういったところが価値だということです。
それから、イノベーションの創出と関連産業につきましても、御説明したとおりですけれども、イノベーションを創出するのは大企業、中小企業、大学、国研、スタートアップ、こういったところでありまして、あとは加速器・放射光関連企業や、参入したい企業、こういったところに対しても価値をもたらすというふうに考えております。
それから、広報・アウトリーチ、これは今説明したとおりですけれども、4つのカテゴリーに分けて、それぞれに合ったような説明をしていくことで、NanoTerasuの価値を分かっていただくということをやっていきたいというふうに思っております。
最後、24ページです。この後いろいろ御意見をいただいて、それを反映しながら詳細設計のフェーズ、実装フェーズの検討に入るつもりですけれども、詳細設計のフェーズでは、資金とか情報、知財などの権利の流れと帰属のチェックですとか、オーケストレーターを含むアクターへのインセンティブ配分構造の検討、これもQST、PhoSICさん、東北大学さん、それぞれにモチベーションを維持するということが大事ですので、こういうことも検討していく。あとはガバナンス体制とルールの設定と合意ということで、どうやって連携、調整をやっていくか、特に安全管理とか情報ネットワーク、情報セキュリティー、広報・アウトリーチ、こういうところを考えていきたいと思っております。
それから、実装フェーズですけれども、短期・中期・長期のシナリオとポートフォリオの検討、それからエコシステム設計の見直しとかフィードバック、こういったところが今後重要になってくるというふうに考えております。
以上、長くなりましたが、御説明を終わらせていただきます。
【古田課長】 どうも御説明ありがとうございました。これから40分ほど議論の時間に充てたいと思います。
こういったエコシステムに、こういった国プロを当てはめて考えるというのは、恐らく文科省の関係で初めての取組でして、本当に非常に難しい課題を、QST、あと茅野理事、リーダーでまとめていただいたというふうに思っております。例えば3ページ目のところに、NanoTerasuが目指すもの、イメージというのを書いていただきまして、通常の文科省系の大型プロジェクトですと、1つ目か2つ目のポツぐらいまでしか普通は書けないんですけど、やはりこの3つ目、4つ目という観点があるというのが、このプロジェクトの官民地域パートナーシップと言われるゆえんだなというふうに思ってございます。たしか第2回の会議のときにどなたかから、このプロジェクトは何を目指しているんですかという御質問があって、皆さん多分ちょっと疑問に思われたと思うんですが、恐らくこの4つというのがやはり目指すべきものだというふうに思っております。
また、4ページ目のところに対象マッピングということで、これも皆さん、ぼやっとしていたんだと思うんですけど、こういった形で図示していただいたというのも非常に感謝をしておりまして、このイメージでそれぞれ共用、あとコアリション、どのような仕組みにしていくべきなのか、どのように取り組んでいくのか、そういったことが分かってくるのではないかというふうに思ってございます。
それでは、本当にざっくばらんな議論をしていただきたいと思っております。どなたからでも結構ですし、疑問点などあれば質問でも結構ですし、どうでしょうか。オンラインで御参加の方でも結構です。
はい、横山先生。
【横山委員】 横山です。お話ありがとうございます。非常にきれいにまとめられて、非常に理解が深まりました。特に3つに分けて機能を御説明いただいたところで、非常に全体像が見えて、大変ありがたく思いました。
私からは、少し細かいことなんですが、3点目に挙げておられました広報・アウトリーチについて少し思うところがありましたので、コメントさせていただきます。
従来型の大型加速器における広報・アウトリーチというのは、お示しいただいたようなものだというふうに理解しております。一方で、御議論いただいているようなエコシステム、新しい価値を創出するイノベーションの母体としての機能として考えたときには、恐らく広報・アウトリーチというよりも、戦略企画広報というふうに銘打ったほうが、より機能が明確化できるのではないかと思いました。
広報というのは、よく御存じのような機能でございますが、実はアウトリーチという言葉は、手を差し伸べるという上からの目線のもので、あまり好まれません。災害時のときにアウトリーチという言葉はよく使われますけれども、現在あまり使わないようにというようなことも言われております。あと、昨今の大学など、6年ほど前からでしょうか、広報というのは、ただの窓口というよりは、企画戦略を執行部と練って、それを各部署とどういうふうに共有して、いち早く周知していくかという、戦略を企画するという機能にシフトしてきていると思います。
恐らく東北大学さんもそういう機能をお持ちなのではないかなというふうに思うのですが、やはりここではエコシステムの中でのコミュニケーション部隊ということで、この広報・アウトリーチの位置づけを、最初から3つに完全に分岐させるのではなく、どういうふうにほかの2つの機能と交わらせて発展させるのかという観点から、人員配置などをお考えいただくとよろしいのかなというふうに思っております。大学では割と上層部の、室長レベルの人間が、そうしたところとのやり取りをしてネットワーキングをしていくというような、そういうことが既に現在行われているかというふうに思っております。
以上でございます。
【古田課長】 どうもありがとうございました。アウトリーチは多分、私が結構使っているので残ってしまっていますが、大変、御指導ありがとうございました。
ほかの方。どうぞ、岸本委員、お願いします。
【岸本委員】 御説明ありがとうございました。よく整理されていて、全体像がつかめるようになってきているのかなと思ったところですけども、その反面、国プロでNanoTerasuを使っていこうとしたときに、4ページに書いてあるようなマッピングに入らないんじゃないかなと。というのは、産学連携など多様な連携体制でやると、その使い方も、大企業が単独で使う場合ではなくて、大学との共同で使うとかいったことが出てくると思います。ここで示されているのはボトムアップ型かなと思うんですけれども、個々の研究者の方が使いたいから、企業が使いたいからと使うような状況だと、当てはまりますが、そうではなくて、大きな国プロの中での利用を想定すると、この図のようなマッピングにならないように思いますそういったところにどういうふうに対応していくかというのをきちんとつくっていくことが、大きな国プロを動かすときに必要じゃないかなということです。その辺りを考えていく必要があるのかなと思いました。
あともう一つ、国プロを策定するといったときに、NanoTerasuの関係者が中心になってつくる場合と、大きなプロジェクトの中で、最後のSIPなんかの例もそうですけども、一部としてNanoTerasuが入ってきている、そういったプロジェクトを誰がどうつくっていくか。それをつくっていかないと、またNanoTerasuの活用というのが出てこないので、もう一つの問題は、そういった国プロをどういう形でつくっていって、NanoTerasuの活用をうまく好循環させていくのかという、そのオーケストレーションでしょうか、そういったところを誰がやるのかというのも考えていったほうがいいのかなと思いました。
2点、気がついたところですけども、御指摘させていただきました。
【古田課長】 分かりました。ありがとうございます。今の2点は恐らく文科省の課題だなというふうに思っていまして、文科省がやはり少しリードをして、そういったところは検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。
ほかにどうでしょうか。石川委員、お願いします。
【石川委員】 理研の石川でございます。今のお話にもありましたが、国プロをつくっていく、あと大きな国プロの一部としてやっていくというときに、コアリションという仕組みと、あと共用という2つの仕組みだけでいくのかどうかというのは多分検討の余地がありまして、例えばSPring-8では専用施設ビームラインという形で、国プロが独自のビームラインを造ってしまうというようなことが行われています。ですから、サイズによってはそういう道があるのかどうか、あとはコアリションとして何かそういう道を考えるのかどうかみたいなところは検討されるといいのかなと思いました。
もう一つ、ずっと宇治原先生のお話、あと茅野先生のお話を聞いて、多分イノベーションをつくっていく主体はやはりユーザーかなという感じがしてしまったんですが、施設としては、ユーザーがイノベーションを進めていくときのお手伝いをする。SPring-8の場合も基本的にはそういう考え方ですが、そのときに、イノベーションがもっと進むような仕組みも施設として何か考えていけないかというのは、これからの課題になるのではないかと思いました。
イノベーションのつくり方は、ある意味、ドイツのシステムなんかだとマックス・プランクとか、あともう一つの産業のほうをやっているところ、フラウンホーファーとかがやっているところだと思いますが、NanoTerasu、あとSPring-8もそうですが、これはヘルムホルツ的な機能を持つところでございまして、そういうところがどうやってイノベーションを実質的に進めるところを助けていくかというのは、これからかなり大切と申しますか、今までのやり方とは違う、もっとイノベーションをエンハンスするようなやり方というのをつくっていかなければいけないのかなと思いました。
以上でございます。
【古田課長】 ありがとうございます。これも本当に全くおっしゃるとおりで、ただ、簡単に手をつけられる話ではないので、また文科省中心に、考えさせていただきたいと思います。御指導ありがとうございました。
ほかに。荒井委員、お願いします。
【荒井委員】 先ほどの横山委員のお話に関連するんですけれども、アウトリーチ、広報のところ、まさに名称としては戦略広報ですとか戦略PRみたいな、名称のみならず、そこに込められた、戦略的にどういうふうにアウトプット、アウトリーチしていくかということの意味としては、やはりその言葉はすごく大事なことかなと思います。
あと、今これ、いろいろなアウトリーチが分類というか、カテゴリー分けされていると思うんですけれども、これがパラレルに実行されていくのか。あと、いわゆる我々の、例えばブランドをつくっていくみたいな観点でいうと、ブランドマネジャーではないですけど、1人の人間にそこの価値の判断とか集約していくことはやはり必ず必要になってくることじゃないかなと思うので、その辺の体制づくりは結構慎重にやっていったほうがいいのではないかなというふうに思いました。
あとは、すみません、感想めいたことになっちゃうんですけれども、3ページの目指すもの、すごいここにいろんな思いが集約されている言葉だと思いますので、「豊かな実り」というところがやっぱりすごく気になりまして、当然、NanoTerasuを利用した研究成果ですとかアウトプットみたいなものが豊かな実りを指していると思うんですけれども、最初の宇治原先生の議論のところにもありましたけれども、やっぱりNanoTerasuが――これはかなり理想的なことを含めて、先々の課題ということで、感想なんですけれども、恐らくNanoTerasuが負う責任は、アウトプットのサポートとか、アウトプットをリードしていくこともあるんですけれども、先ほどの議論にあったように、やっぱりどう人材を輩出していくか、エコシステムをつくっていくということも、すごく重要だなと。NanoTerasuが、これだけのすばらしい施設、立ち位置の施設なので、例えば、先ほどの話に近いんですけれども、せっかく東北大学も近くにあるというか、東北大学との連携というのを考えると、ただ単に放射光で、技術でイノベーションの前に、やっぱりそれをどう産業とかスタートアップにしていくかみたいなところの、大きな意味での人材育成のエコシステムという考え方は、非常に難しい問題だとは思うんですけど、ぜひチャレンジしていただきたいなというふうに思った次第です。
以上でございます。
【古田課長】 ありがとうございます。2点目のブランドイメージをつくっていくというのは、資料のほうでは少ししか書いてありませんでしたが、本当にやはり広報の要になると思いますので、また引き続き御指導お願いしたいと思っております。
3点目も本当に、確かに人材をいかにというところも、このNanoTerasuの大きな、将来的な課題だというふうに思っております。放射光の分野、やはりまだまだ人材が足りておらんというふうに思っておりますし、日本として必要な技術だと思いますので、ぜひNanoTerasuでそういった人材育成も牽引していきたいというふうに思っております。
ほか、どなたか。小松委員、お願いします。
【小松委員】 先ほど石川先生が言われたことと若干関連するんですけど、最初の横山先生もあれなんですけど、広報・アウトリーチというのは、ここに書かれていますように、きっと一義的には、例えば成果価値の伝達ということになるのかも分からないですが、こういうエコシステムを考えるときに、やはりユーザーのニーズというか、ユーザーの困り事は果たして何なんだろうかという、それにアンテナを張ってちゃんと引き入れてシステムに組み入れていくという、相互的に。横山先生はアウトリーチは上から目線と言っておられましたけど、そうではなくて、要するに相互的な話がないと、恐らくエコシステムというのは回らなくなると思いますし、我々企業も、一方的な我々の価値提供みたいなことが、結局はカスタマーにとってあまりうれしくなかったみたいなことも往々にしてありますので、広報というのかどうか分からないですが、やっぱりカスタマーとの接点、それの問題点、課題の吸い上げ、それをどうやって体制として次のエコシステムに生かしていくのか、やっぱりその仕組みがちゃんと回らないと、本来と何か違った方向に行ってしまうんじゃないかなというふうには思います。
【古田課長】 そうですね、分かりました。エコシステムの話になってきましたので、辻本先生から少し全体的な、御指導というか、お願いしたいと思います。
【辻本委員】 今、小松先生がおっしゃったとおりのことを本当に思っていまして、まず第一が、誰のためかというのがすごく大事だと思うんですよね。23ページに図を描いていただいて、非常に検討を深めていただいていると思っているんですけど、私のイメージでは、この機能と対象が逆かなと思っていまして、対象が先じゃないかと思うんですよ、誰のためのものか。
誰のためのものかで、中間的に企業がいるわけですけど、その先にやっぱりユーザーがいないと企業も立ち行かなくなりますし、ユーザーにとっても価値があって、企業にとっても価値がないと、そもそもNanoTerasuの役割が求められないということになるので、原理的には。対象というのが大事で、しかもその対象は、企業というだけではなくて、厳密に言うとですけど、大企業、中小企業、それからスタートアップと、少なくともその3類型はあると思うんですね。それぞれごとに異なる、エコシステムというとあれなので、もっと平たく言ってしまうと座組でもいいかもしれませんが、誰がどう集まって、その大企業のために、中小企業のために、さらには大企業の先のユーザーのためにどういう価値をみんなでつくり出していけるのかの、その組合せ、それを考えていく必要があって、それは本当にエンドユーザーにとって価値を生み出し得るのかというところが非常に一番大事なところで、そこがないと基本的に、エコシステムに入ってくるものがなくて、出ていくだけになるので、短期的には。
だからそこがすごく大事で、その観点がやっぱりもうちょっとあるといいなと思っていまして、図でいいますと、一番小さい図かもしれないですけど、11ページの右下のコアリションの形成の図はすごく、申し上げたいことに近いなと思っていまして。この成果というところに絵が描いてあるじゃないですか、車とか。こういうところの価値というのが一番大事だなと思っていまして、そこで価値をつくり出すためには、じゃあどういう人たちがどういう役割を持てばいいのかというところが大事で、先ほどお話ありましたけど、エコシステムの全体像があったとして、NanoTerasuが全部やれるわけでもないし、やらなきゃいけないわけでもなくて、どこまでをやって、どこまでは誰にやってもらうのがいいのかという判断をしないといけないと思うんですけど、そのためには全体があって、これは価値をつくり出すエコシステムだよねというふうに思ったときに、NanoTerasuが役割を果たすというところだと思うんですよね。
ちょっと細かいですけど、ここで言うと、先ほど石川先生からコメントあったと思うんですけど、1対1のチームというのは理由があると思うんですけれども、それはそれで価値をつくり出せると思うんですが、成果に向かったときに、1対1が本当にいいのかという場合もあると思うんです。組み立てて、それこそコンソーシアムとおっしゃっていましたけど、組み合わせるというのも大事だし、その中で役割分担をするというのも大事だと思いますし、ものづくり系以外にもサービスとかアプリケーションとか、そういうのを提供するプレーヤーも必要かもしれなかったり、それの一つ一つが、もう一つ下の階層のエコシステムになると思うんです。そういうものが見えていて、そこにNanoTerasuがどういう役割を果たすかというのが大事だと私は思います。
そう考えると、4つぐらい類型があると思うんです。類型というのは中間的ターゲットの類型で、研究者・学生と、スタートアップと、中小企業と大企業というのがあって、少なくともこの4つに別々の設計が必要だと思います。研究者・学生は多分一番力が入れやすいし、ちょっと言い方が難しいんですけど、分かりやすいと思うんですよ。とにかくここはお金を使えばいいという観点だと、極端なことを言うと思っていまして、どんどん投資して、ただ、ここからの知的価値がどうやって出てきているか、そこは、何か嫌なことを言うようですけど、評価というのも併せて考えないといけないと思うんですね。ゴール、ターゲットがあって、そこに対して適切な評価がなされていく必要があると思うんです。研究者・学生に関しては、幾らの収益を出したかとか。それは中長期的な話で、このエコシステムはそうじゃない評価軸で、ただ徹底的に評価しないといけないんだろうと思うんですけど。スタートアップはまた、もう今日お話しいただいたとおりで、それが幾らもうけるかというよりは、それも大事なんですけれども、どういう機能、エコシステムが必要で、その成長にどれだけNanoTerasuが貢献し得るか、そのレバレッジがかかったところから戻してもらうものというのをどういうふうに組立てができるかというのも大事だと思います。
中小企業が一番、私の中ではまだよく分かっていないエコシステムでして、皆さんに多分集まってもらっているんだと思うんですよね。じゃあその方々が具体的に、何か非常に難しいんじゃないかなと思っていまして、集まっていただいて活動、いろいろ個別に利用していただくというのはいいと思うんですけど、60社集まっていただいた皆さんがそれぞれ価値を得られるのかなというのが、ちょっと心配というか、後そこから先は企業にお任せという考え方もあると思いますし、そうではなくて、集まっていただいた方々に何らかの支援、スタートアップとはまた違う支援が必要なのかもしれないし、その支援によって成長するところからのリターンというか、戻していただく部分というのも必要なのかもしれないなと。
一番は大企業で、今のところはコアリションで行っていて、価値を感じて入ってきている大企業たくさんあるので、十分なのかもしれないんですけれども。ここのところをもうちょっとレバレッジかけるために、やっぱりどういう価値に向かって、どういうチームでどういうふうに向かっていくのかという具体的な提案があると、入りやすい会社もあるんじゃないかなと思うんです。そういうエコシステムの構造と価値の創出の提案というのをNanoTerasuがやっていけると、より一層巻き込める力が高まるんじゃないかなというふうに思いました。
【古田課長】 ありがとうございます。エコシステムの考え方を我々誤解していたようですので、そこは次回、組立て直しをして、また御説明させていただきたいと思っています。
最後の中小企業、あと大企業への価値の提供というところは、恐らく高田理事長が一番御説明できると思いますので、お願いします。
【高田理事長】 ありがとうございます。大変に重要な御指摘、アドバイスをいただいたと思っています。我々としても、NanoTerasu、そしてNanoTerasuが存在しているサイエンスパーク、これが価値を創造する場をつくり上げる一つの実験場になるんだというふうに考えています。コアリションの真の目的というのは、社会とのバリアを下げるというふうに我々は考えています。今日、例にありましたサーキュラーエコノミーシステムの構築という、これは決して研究ではなくて、要するに経済活動の話です。これは環境課の強力な御指導の下に、何とかここまで持ってこれているんですけれども、これが一つの実験場といいますか、例としての、今、社会に我々が示しているものではないかというふうに考えています。
従来の放射光、これはやはりテクニックベースだったと、計測、解析、これが何となく課題解決だと誤解をしていた、そこで終わっていたと。そうではなくて、やっぱり課題ベースのコアリションということを考えなければいけないと。これは実は、先月ありました海外の放射光施設のディレクターを集めてやったサミットで、そこのチェアとさんざん議論いたしまして、やはりそこをしっかりと明確にしていく必要があると。そうなると、やはりスタートアップも、単に分析業務の支援であるとか、そういうことじゃなくて、戦略企画であるとか、先ほどお話が出ましたが、そういう多様性が生まれてくる。そういう多様性が生まれてこないと、このエコシステムは循環しないだろうというのは、辻本先生、そのほかの先生方も御指摘をされているとおりだというふうに考えております。
やはりスタートアップ人材とか、そういうものを育てていくためにも、そういう場を提供するというのが、先ほど言いましたサーキュラーエコノミーシステム、これを今立ち上げようとしている。その図を御覧になっていただくと分かりますように、これは1対1の組合せではなくて、このコアリションに参画している企業が、左のサイクルのところにありますマテリアルリサイクルであるとか、化学リサイクル、アップサイクル、そしてバイオマスのところ、そういうふうないろいろなプロジェクトとしての幅を持って、多様性を持ったプロジェクトを与えるということで、それがある意味、今グループを形成していると。これは一つの実験みたいな形なんですけれども、それを単に革新的な技術開発、素材開発に終わらせないで、そこのサプライチェーン全体での社会システムを構築するところをどうつないでいくか、そこまでNanoTerasuをうまくツールとして活用してやって、一緒に企業と取り組んでいけるかどうか、そこが我々としてはコアリションというものを一つの、さらにアップグレードするための実験場だというふうに考えております。そういった意味で、今日いろいろと御指摘いただいた点というのは非常に重要だったというのが私の思うところでございます。
以上でございます。
【古田課長】 どうもありがとうございます。
どうぞ、辻本先生。
【辻本委員】 すみません、私もこの18ページのところは言おうかなと思って、ちょっと省略したんですけど、エコシステムのイメージとしては一番近いかなと思っています。SIPの支援もエコシステムが入りましたし、先日ムーンショットの海洋プラスチックからも呼ばれて、エコシステムの話をしたんですけど、こういったような図があって、エコシステム、こういう図を目指していくぞというのは、抽象的なモデルがあって、この下にやっぱりアクターがいて、詳細設計があって、インセンティブの分配があってと、エコシステムだなというふうに非常に思うので、こういうところ、一個一個NanoTerasuが関わるやつを全部というわけにはいかないと思うんですけど、主たるものについてはやっぱりこういう構造まで把握して、NanoTerasuがどういう役割を果たして、その分また戻す、果たした分戻してもらわないといけないと思うので、そういう関わり方というのが必要かと思います。
その上で、例えばサーキュラーエコシステムの場合、ボトルネックがあると思うんですよ。例えばこのバイオマス由来の製品を本当に販売して買ってくれる顧客は誰なんだと、そこに価値を認めてくれるかとか、より多くのプレミアムを払ってくれるのか、くれないのかで、コスト増がカバーできるかどうかが変わってくると。それはカバーできないと、このサイクルが回らないわけですよね。そこは今現在、結構課題だと思うので、例えばそういうボトルネックみたいなものも見越した上で、可能であればNanoTerasuが貢献して、そのボトルネックを解消するなり、そうではないにしても、エコシステムメンバーみんなで集まって、そのボトルネックを潰しにいかないと、NanoTerasuもせっかく果たせる役割を果たせなくなっちゃうので、そういうエコシステム全体の活動というのも参画したり、オーケストレートするかどうかは別だと思うんですよ。NanoTerasuは一定の役割を果たせばいいわけなので。ただ、オーケストレーターを巻き込むとか、そういうような活動もしていかれると、結果的には価値が返ってくるんじゃないかなと思うので、だからまさしく戦略企画ですかね、そういうところができるといいのかなと思うんですけど、問題は、誰がどこまでやるんだというところが結構難しいところかなと思いますけど。
【古田課長】 ありがとうございます。どうですか、小松委員。少し本件に関してコメントございませんか。
【小松委員】 いや、これは次の第3次のSIPの7番目の候補課題なんですが、先ほど辻本先生おっしゃられたように、これのボトルネックは何なんだというのをいろいろ話して、結局これを回すために消費者まで巻き込んで、要するに科学技術だけではなくて、こういう消費者まで巻き込んで、例えばタウンミーティングをやるとか、そういう巻き込み方というのが、このサイクルを回すためには。プレーヤーは誰で、誰の理解が必要なんだというのをやはり明確にして、やっぱりそこに積極的に、具体的に働きかけていくということになりますので。NanoTerasuが全部できるわけではないし、これも別にいい技術ができたからといって、これが回るわけでもないので、やっぱりそれぞれのプレーヤーが誰なんだと、そこにほかの手を借りてでも手を打っていくという、やっぱりその全体像というのは必要なんだろうなというふうに、そういうことを今、ここのサーキュラーエコノミーのシステムの課題としてはやっているということです。
【古田課長】 どうぞ、茅野理事。
【茅野理事】 幾つか御指摘いただいている件がありますので、まとめて御回答させていただきたいと思うんですが、まず4ページの国プロの件ですけれども、国プロに関しましては、これ、やっぱり国プロを支えるのは大事だよなというのは思っていて、提案させていただいているんですが、そういう意味で言うと、国プロは今、イノベーションというのを非常に重視しているので、この絵の下の灰色の楕円は、もうちょっと右のほうに伸びていかないといけないよなというのは思いました。それで、伸ばせば済むというものではもちろんなくて、では具体的にどうやって国プロが参入できるかということを考えると、これはあくまでも私の私見なんですけれども、やっぱり共用枠の中に、そういう国プロに資する枠をちゃんとつくるとか、それから、石川先生からさっき話があったように、それに適応したビームラインを新たに造っていくとか、そういったことをきちんと考える必要があるんだろうなというふうに思います。
それで、イノベーションを創出するのが利用者ですみたいな説明に、ちょっと私、なっていたとしたら申し訳ないんですけれども、途中で量子イノベーション戦略のところでもちょっと申し上げましたように、我々、量子関係のイノベーション、いろんな国プロ、Q-LEAPとか、それからSIPも今度できればいいかなと思っているんですが、そういったところ、やっぱりイノベーションをどうやって産業界と創出していくかというのは非常に大事なところですので、ただ運用するだけではなくて、一緒にやっていく。それが、QSTがこれを運用することの意味でもあるし、モチベーションにもつながるものだろうというふうに思っています。
それから、アウトリーチのところもいろいろと御指摘いただいて、なるほど、そのとおりだなということ多かったんですけれども、戦略と企画と、戦略企画と広報をくっつけるという話です。この辺は戦略企画の段階で、当然ユーザーに対するリサーチとかサーベイやりますので、そういった情報と、それから広報をどう結びつけていくかというのが非常に大事だと思います。それで、運営会議というのを今つくってやっていると説明しましたけれども、共通の3機関から幹事を出してもらっていろいろやっているんですが、それをだんだん統括事務局とか、そういった形に発展させていって、割とコアメンバーできちんと戦略企画と広報、それからリサーチ、そういったものがやれるような形に、体制的にだんだん持っていければいいかなというふうには思っているところです。
以上です。
【古田課長】 ありがとうございます。どうでしょうか、あと10分弱ございますけど、ぜひ御発言ない方中心にお願いしたいんですが。
【古田課長】 はい。宇治原先生、お願いします。
【宇治原委員】 さっき小松委員の話を聞いていて、なるほど、そのとおりだと思って聞いていたんですけど、アウトリーチというか、広報のところですけど、そういうことかと僕、今気づいたんですけど、これはエコシステムのメンバーをどうやって広げるかということそのものが広報なんだなというのに今ちょっと気づいて、市民のという話まで行かないと、本当のニーズまで行かない。
JSTで今、COIとかああいうのも結構、市民まで見てやれというのがあるんですけど、我々も今度新しいCOI-NEXTというのをちょっとやらなきゃいけないんですけど、タウンミーティングみたいなやつをやっても、科学技術を活用する社会をどういうふうに市民の人が想像するかといったって、まあなかなか難しくてできないなというのがいつもの。要は、あそこで一気にギャップができちゃうというか、多分市民の人たちが本当に感じていることを技術に翻訳できる人がなかなかいないから難しいんだなと思うんですけど、そこのギャップを埋めるような広報をしなきゃいけないんだなというのを、今つくづく思いました。
我々今言っているのが、さっきのアントレプレナーシップの教育もそうなんですけど、ちょっと語弊があるかもしれないですけど、いわゆるSTEAM教育みたいなやつがあるんですけど、要は科学技術リテラシーをもうちょっと、何というか、教育としても上げたいというのはあるんですが、例えばああいうものとアントレプレナーシップを同時に教えるとか、ああいうものとタウンミーティングみたいなものを一緒にやるとか、やっぱりエコシステムのメンバーを入れるところに今ボトルネックがあるように、皆さんのお話聞いていて聞こえたので、何かそこを埋めるような新しい試みが1個入っていると、特徴的な、NanoTerasuらしい広報とエコシステムの構築法みたいなのが見つかるのかなと思って、ちょっと聞いていました。
【古田課長】 難しいこと言いますね。
【宇治原委員】 いや、でも僕すごく、そんな難しいと思っていなくて、理系文系問題、さっきちょっと出ましたけど、あれがすごくやっぱり日本って、何か邪魔していて。
【平井座長代理】 私もいいですか。
【古田課長】 どうぞ。
【平井座長代理】 例えば18ページにあるサーキュラーエコノミーシステムの話は、私は有識者会議のメンバーになって参加しているので、NanoTerasuがどうつながっているかというところに触れていますが、恐らくほとんどの大企業のビジネス側をつくっている人間に、多分届いていないと思います。結局、研究所の研究員が窓口やっていると、普通はそこから、先ほどのPh.Dの人がアントレプレナーシップとつながっていないのは日本の弱点だという話と全く一緒だと思いますが、企業においても研究者の方が窓口をやっているだけでは、実際にビジネスを構築している人間には届きません。私はたまたまここに参加させていただいたために、自分の中でつながっていますが、やはりそこをつなげないと、日本の企業って研究者だけでは動かないというところありますよね。
【小松委員】 ええ。
【平井座長代理】 まさにそこの、誰に参画してもらうことによってそこが動いていくかというところが課題かなと思い、今日聞いておりました。
【古田課長】 ありがとうございます。おっしゃるとおりです。
どうぞ、小松委員。
【小松委員】 もうまさにこのサーキュラーエコノミーのときも、最初、技術者だけが集まって、いいものをつくるぞと言っていたんですけど、やっぱりそれだと、特に最後、価値を感じてもらうのは消費者ですので、そうじゃなくて、やっぱり多様な人材の人をこのチームに入ってもらおうというので、社会行動学の先生ですかね、恐らく技術のことは全然。でも、その先生が指摘する内容というのは、非常に目からうろこみたいな感じで、今言われたように、やっぱりいろんな適材の、技術者だけ集まっていても駄目で、いろんな価値、そのファンクションをちゃんと翻訳できるというか、具体的に示せる人というのはやっぱり絶対に必要なんだろうなと思います。
【古田課長】 おっしゃるとおりです。ありがとうございます。
【岸本委員】 ほんの思いつきですけども。
【古田課長】 どうぞお願いします。
【岸本委員】 この利用対象者の中に初等中等教育の人たちが入っていないんですよね。要するにNanoTerasuからいろいろ価値をもらう人たちというのは、そういう人たちもあると思うんですね、教育という意味で。そういったところでの、この利用対象者の中、これはユーザー目線で見ているからなんですけども、エコシステムをつくって巻き込んでいく対象というのは、そういう人たちもちゃんと入って考えていく必要が、今のお話聞いていると、あるのかなと思ったところですけども。
【古田課長】 一応、20ページの資料には少し、一番左の対象に国民、地域、児童生徒、学生というところで。
【岸本委員】 はい。23ページになるとなくなってきているということ。
【古田課長】 そういうことですか。そうですね。高田理事長、何か。
【高田理事長】 おっしゃるとおりで、大学院生になって放射光どうのこうのとか、大学生に放射光どうのこうのは、それも大事なんですけれど、海外では高校生が実際に放射光を使う経験をして、高校の先生も含めて、そこでサイエンティストと交わる、そういうプログラムを積極的にアメリカなんかはやっています。やっぱりそういうふうにして、別に放射光をやるというんじゃなくて、放射光、こういう施設が、どういうふうな課題を抱えているかというのを知るということと、やっぱり科学技術に対してどういうふうに目を開くというか、面白さを、やっぱり最先端のものを一緒に科学者と話をしながら経験する、そういうところを積極的にやらせているようです。やはり日本もそういうことが、今おっしゃったように、必要なのかなというふうに考えております。御指摘はごもっともじゃないかというふうに思います。
【古田課長】 石川委員、お願いします。
【石川委員】 理研の石川でございます。もちろんいろいろ広げることは必要なことは分かっているんですが、一方で、本当にNanoTerasuを有効に使えるポテンシャルユーザーの皆さんに全部声が届いているかというと、まだそんなことはなくて、かなりたくさんの人が、使える可能性はあるけれども、まだNanoTerasuも、ある意味でSPring-8も知らないという方がたくさんいるのではないかという感じがしております。そういうところにどうやって伝えるかということも多分課題の一つであると考えています。
以上でございます。
【古田課長】 ありがとうございます。この点、すみません、ここまでにさせていただきたいと。どうもありがとうございました。
最後締める前に、辻本先生、さらにもし何かあればお願いしたいんですけど。
【辻本委員】 もう言いたいことは大体、大枠は。ただ、一番の課題は、じゃあオーケストレーターとかいっても、誰がやるのというところが、NanoTerasu自らがやるのかというと、そうじゃないという場合が多いと思うんですよね。そういう仕組みをつくったとして、じゃあそこを誰に、やってもらうようにNanoTerasu側がどこまでけしかけるかとか、そういうことの仕掛けも含めて考えていくというのと、これはあんまりよくないかもしれないですけど、NanoTerasuを主語として考えたときに、いろんなエコシステムとか大企業のエコシステムがあって、それを分析できていると、どこに対して優先的にとか、プライオリティーづけができる。このエコシステムにはフルコミットだとかということができるかもしれないし、資源には限りがあるので、ここはフルコミットで支援して、その分リターンももらおうというので、コミット代を上げて、その分バリアを下げるというのは、一律全部下げる部分と、やっぱりコミットメントを強めるところにはさらに下げていく部分とかあっていいのかなと、戦略的に。そうすることによって全体としてのリターンを最大化するという、そういう仕組みがあるといいのかなと。
そのためにも、やっぱりエコシステムのポテンシャルというか、悪いことを言うと、ここはもうぐだくだになっていて、オーケストレーターもいないし駄目だろうみたいなところに対しては、アドバイスはするけどコミットを下げるとか、極端なことでは、そういうことももしかしたらリソースの分配上は必要で、戦略的に必要なんじゃないかなというのもちょっと、施設の運営的にはそうなのかなというふうに思いました。
【古田課長】 ありがとうございます。
それでは、なければ、千葉座長に締めていただきたいんですが、お願いいたします。
【千葉座長】 どうも委員の皆様、大変活発な御議論いただいてありがとうございます。結論から言いますと、かなり大きくこの2時間でいろいろなことが明確になって、大きく次に向かって前進したというふうに思っています。
まず名古屋大学の宇治原先生から、非常にパワフルな、御自身のベンチャー、スタートアップの挑戦、あと御苦労等お話しいただきました。やはりこれは大学との連携において、ベンチャーというものの機能が非常に明確に皆さんに伝えられたと思います。ベンチャーが価値をつくって大きくしていくということが、大学にもお金が回ってくるという仕組み、これはなかなか今でも大学の人間のほとんどが理解していないと、これは後段のエコシステムとかの話とつながってくるんですけども、こういう仕組みというのは、実は日本の中での理解がまだまだ低いということで、実際それをやっておられる先生は大変な御苦労があったというふうに思います。
また、それをやるセンスとか才能のある人、これをどんどん発掘していくということが重要だということで、このアクティビティーもまだまだ低いだろうということで、これは日本全体において、そういうことが投げかけられました。これは次のNanoTerasuのためのお話でもあるということでございまして、いかにしてこういう感覚、エコシステムを本当に回す形でNanoTerasuが発展する仕組みづくりをどう考えるかという、非常に大きな投げかけであったというふうに思います。
それで、続いて茅野先生から、エコシステムについて、非常に分かりやすい資料で御説明いただきました。第1から第3フェーズまで分けて、まず第1フェーズについてということでお話しいただいておりますが、これについて忌憚のない意見を皆様からいただいております。それで重要なことは、切り口いろいろありますけれども、1つは、イノベーションという言葉がたくさん出てきておりますけれども、これが一体どの次元で、誰が主体なのかということ、この辺りをもっと明確にしましょうということでした。
大きな結論として出てきたこと、ある意味当然なんですけども、これはユーザー、顧客というもの、ここについて、もっとそこを主体的に考えるべきであろうと。要するに、NanoTerasuが何を提供できますかということ、発散型の話はたくさんできるんですけれども、そうではなくて、最終的なエンドユーザーが何を求めて、そして最終的に、はっきり言えばお金をどう払って回してくれるかという、これがエコシステムなわけで、拡散型のイメージのところから、そこから戻ってくるというところまでをトータルで捉えていくことが必要だということが一つ、今日強く投げかけられたものであります。
そのためには、一つは広報・アウトリーチという表現がありましたけども、これは戦略企画広報という形で、エコシステム全体を拡散、拡大していって、それを機能的にコントロールしていくための非常に重要なアクションとして、この戦略企画広報が大事であろうということです。これは既に進められているということでありますけれども、これについて、さらに焦点が明確になったのではないかなというふうに思います。その対象は、エコシステムを広げていくということで、それがちゃんと回るようにコントロールするという、その2点が非常に重要であるということを、いろいろな観点から御意見いただいております。
特に問題点としては、スタートアップも中小企業も大企業も、そこが見えていないと、ただNanoTerasuがいろいろやっていますというだけになるので、ここをしっかり系列に分けて、それぞれの設計が必要だろうと。1つは研究者、学生、これは教育的な目標もあるので、投資をNanoTerasuがして、長期的に見ていくという対象者。それからスタートアップ、これはどういう機能が必要なのかということをさらに考えて、NanoTerasuとしてできることを検討していく必要があるだろうということです。それから中小企業、大企業、ここには、果たしてNanoTerasuがどれだけの価値を提供して、そこからどう戻ってくるかということが重要であるということで、やはりこれはオーケストレーターがとても重要な役割を果たすであろうということで、恐らく次のステップの議論は、このオーケストレーター、どういう人がどういう部分でどう貢献していくのかというところが、かなり議論の焦点になるのかなというふうに私は思いました。
それから、とてもいい例としては、サーキュラーエコノミーシステムの構築ということで、これはこれからの社会のありようについての、一つのあるべき姿を明確に掲げたものだと思います。そこからボトルネックを見いだして、そこにNanoTerasuのテクノロジーが、あるいはサイエンスがどう貢献するか、これはまさにイノベーションが起こるところのスキームです。要するに、あるものがボトルネックなので、そこでどん詰まっていたものが、そこを解決するようなサイエンスが生まれれば、それが回り出す、それで経済効果が非常に大きくなるというようなものだと思います。
これはかなりいろいろなものにも応用できるものですので、一つこれを例にしていって、それから一般の国民、市民がここについてどう印象を持ち、どう関与しようとしているのかというようなことも捉えていく。要するに、社会行動学的な要素も含めて、それでそこに踏み込んでいくNanoTerasuの姿というのを明確にすると非常に分かりやすいですし、恐らく大きな動きが未来に出てくるだろうということで、これはこの会に御参加いただいている先生方、かなりこれは一致した形になったなというふうに私は思いました。
ということで、次回への課題も明確になりましたけども、本日は大変有意義な議論ができたと思います。どうもありがとうございます。
【古田課長】 どうもありがとうございます。
それでは、関係機関におかれましては、本日委員から出された意見を踏まえまして、引き続き、NanoTerasuの利活用の在り方について検討を進めていただきたいと思います。
次回の第5回は、11月29日火曜日の14時から、今回と同じ文部科学省とオンラインのハイブリッド形式で開催する予定です。
本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にメールにて御確認いただき、文科省のウェブサイトに掲載させていただきます。本日の配付資料につきましても、後日、文科省ウェブサイトに公開いたします。
以上でございます。
そのほか委員の皆様から御意見等ございますでしょうか。特になければ、本日の議題は以上となります。
これをもちまして、第4回NanoTerasu(次世代放射光施設)の利活用の在り方に関する有識者会議を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――
<担当>
科学技術・学術政策局
研究環境課 林、佐々木
電話:03-6734-4098(直通)
Eメール:research-env@mext.go.jp