令和4年9月22日(木曜日)15時00分~17時00分
東北大学災害科学国際研究所1階多目的ホール
オンライン
千葉一裕 座長、平井良典 座長代理、荒井雄一郎 委員、石川哲也 委員、宇治原徹 委員、岸本喜久雄 委員、小松秀樹 委員、辻本将晴 委員、横山広美 委員
大臣官房審議官 阿蘇隆之、科学技術・学術政策局 研究環境課長 古田裕志、課長補佐 林周平
東北大学 青木孝文 理事、量子科学技術研究開発機構 茅野政道 理事、光科学イノベーションセンター 高田昌樹 理事長
【林補佐】 それでは、定刻になりましたので、ただいまからNanoTerasu(次世代放射光施設)の利活用の在り方に関する有識者会議(第2回)を開催いたします。事務局を担当しております文科省研究環境課の林と申します。本日は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議システムも併用しつつ開催といたします。なお、本会議は傍聴者のためにYouTubeでライブ配信を行っておりまして、昨日までに210名を超える多数のご登録をいただいております。本日の議題は、(1)「第1回有識者会議の結果」、(2)「NanoTerasuの利活用に向けて取り組むべき方向性」となります。また、議題(3)の「前回の検討事項に係る現在の対応状況について」と議題(4)の「その他」は非公開といたします。本日は、現地参加7名、オンライン参加2名のあわせて9名、全委員の皆様にご出席いただいております。また、今回は次世代放射光施設運営会議から量子科学技術研究開発機構(QST)茅野理事及び光科学イノベーションセンター(PhoSIC)高田理事長にも、ご出席いただいております。また、議題(2)の関係で東北大学青木理事にもご出席いただいております。また、文部科学省からは、私、林と、大臣官房審議官、阿蘇、研究環境課長、古田も参加させていただいております。それでは、オンライン参加の方の留意事項について説明させていただきます。通信を安定させるため、ご発言される時以外は、可能な限りマイクをミュート(マイクOFFの状態)にしてください。ご発言される際は、ミュートを解除(マイクONの状態)にしてください。議事録作成のため、会議中は録音しておりますので、お名前を言っていただいた後に御発言をお願いいたします。会議中、不具合などトラブルが発生した場合は、事前にお知らせしている事務局の電話番号にお電話いただくか、チャット機能でお知らせいただけますと幸いでございます。オンライン参加の留意事項については以上となります。次に、配付資料の確認をさせていただきます。配付資料は資料1から4までと、参考資料1になっております。オンライン参加の方はZoom上に画面共有しておりますので御覧ください。画面が見えにくい方は、適宜、事前にお送りしている資料を御覧ください。御不明点はございますでしょうか。もし会議中に御不明点があれば、事務局までお知らせいただくか、オンライン参加の委員の方は事務局までお電話またはチャット機能でお知らせください。
それでは、議事に入りたいと思います。ここからは、研究環境課長古田より進行いたします。
【古田課長】 本日はどうぞよろしくお願いいたします。
今日、13時半からのNanoTerasuの施設見学は、誠にありがとうございました。様々なご感想をお持ちいただいたと思っておりますので、ぜひこの会議で御披露いただき、それに基づいて利活用策やアイデアを出していただきたいと思ってございます。
それでは、はじめの議事に入りますが、先般、報道でもありましたとおり、来年5月のG7科学技術大臣会合が仙台市で開催されるということが決定しております。高市早苗科学技術担当大臣は記者会見でも、仙台を選定した理由として、東北大学青葉山キャンパスに23年度中に完成する次世代放射光施設NanoTerasuを挙げておりまして、我が国の科学技術力を世界にアピールできる環境が整っていて、開催地にふさわしいと述べられているということでございます。
来年の5月ということですと、まさにオープンというか、運用を開始する直前になりますので、我々文部科学省としても、仙台市、東北大学と連携をして、G7科学技術大臣会合に貢献をしていきたいと思ってございます。
それでは、資料1に基づきまして、前回の概要の説明に参りたいと思います。1ページ目は1から9番の検討事項とその具体的内容です。これは、前回、お示ししたものと同じでございますが、本日もこれに基づいて議論していただきます。
2ページ目は、前回の概要です。全体でいきますと、SPring-8等の既存施設でうまくいっているところと課題として残っているところを整理して、NanoTerasuの利活用に生かしていくべきではないか。運営体制というところで、施設全体を統括する統括責任者の下で適切に管理していくような仕組み・組織体制も検討すべき。安全管理だけではなく、経営の観点からも責任者を検討することが必要ではないか。NanoTerasuの経済的な自立化についても検討すべき。経営の観点において海外の放射光施設の状況を参考にすべき。
施設の将来構想について、ビームラインの増設・高度化計画など将来構想が必要だということです。今日の視察の中でもビームラインの建設現場を見ていただきましたが、最大で28本を建設することができます。今はまだ10本の計画になっておりますので、増設が必要だろうということであります。二つ目は、企業の実験によって得られたデータを含めたデータの管理・提供をどうするのか。分析会社の活用やスタートアップ企業の支援も必要ではないか。企業にとって施設利用はハードルが高い。蓄積されたデータだけを企業に渡して収入を得る方法もあるのではないかということで、ここは様々なアイデアがあると思っております。
国内外のアウトリーチとして、日本といえばNanoTerasuとなるようなアウトリーチが必要だろうと。仙台の観光名所の一つとなるような戦略も必要ではないか。ホームページは最低限で、SNS、ユーチューブの方が需要が高い。ユーチューバーの活用も検討すべき。仏像などの芸術分野等、文理融合の幅広いユーザーを増やしていくことが必要。海外のユーザーコミュニティーに対しても英語で情報を発信するなどのアウトリーチが必要というようなアイデアをいただきました。今日もぜひ御議論いただきたいと思っております。
人材に関して、若手、専門人材の育成とキャリアパスを考えていく必要。広報の専門人材の配置も必要。最後に女性研究者の活躍ということで、課題採択選定委員会などに女性委員を参画させるなど、女性研究者の活躍の場を増やしてほしいというような議論がございました。
ただいまの説明について何か御質問などございましたらお願いしたいと思いますが、よろしいですか。
【古田課長】 それでは、議題2の、NanoTerasuの利活用に向けて取り組むべき方向性に移りたいと思います。
前回の概要を御説明しましたが、幾つかポイントがありまして、その中で一つ、自立化という話がありました。我々、これをエコシステムというふうに読替えをしまして、この有識者会議の委員であります東工大の辻本先生がまさにこのエコシステム専門家であり、国内第一人者と理解しておりますので、ぜひ辻本先生から、このエコシステムの基本というところを、今日御説明をいただいて、NanoTerasuにどのように組み入れていくことができるのか議論させていただきたいと思っております。
もう一つが、資料の3のほうになりますが、NanoTerasu×サイエンスパークということで、東北大学の青木理事から御説明をいただきたいと思っております。データの管理・提供、企業や外部との連携という意味で、以前から東北大学がNanoTerasuも含めた非常に大きな構想をお持ちであります。そこの中でデータの利活用も含めて青木理事から御説明をいただいて、いろいろなアイデアを皆さんとさらに積み上げていただきたいと思ってございます。よろしければ辻本委員のほうから御説明をお願いしたいと思います。
【辻本委員】 東工大の辻本と申します。よろしくお願いします。私、皆さんと恐らく専門がちょっと違っておりまして、社会科学が専門です。特に社会科学分野でエコシステムというのを研究しておりまして、後でも言いますけど、そのシステムという概念がこのNanoTerasuの構想にも使われているということで呼ばれたと理解しております。青木先生の資料の最後のところに「エコシステムをデザインしなければならない」と書いてあって、まさしく全く同じことなのでちょっと重複があるかもしれませんが、一応エコシステムを研究しているという観点から御説明させていただきたいと思います。
具体では、エコシステムはまず何かということ。それから、エコシステムの設計と実装のために、私なりの研究を踏まえて三つのフェーズ、15のステップというのを暫定ですが定義しております。そこと照らし合わせて、NanoTerasuの今の取組を、ちょっと理解が不十分なところがあるかもしれませんが、私なりに大枠でこういったところが必要なのではないかというところをお伝えしたいと思います。20分程度説明させていただきます。
最初にイントロダクションです。エコシステムという言葉はどういう意味で使っているかというところが非常に曖昧でよく分からないということがあると思うので、我々の分野でどういうふうに定義されているかというのを私自身が論文を書いていたりしますので、それをベースに定義させていただきます。その上で、先ほど申し上げたようなステップについて御説明させていただきます。
4ページ目です。先ほどNanoTerasuの施設を見学させていただきました。私は社会科学者ですので、あのような施設を見せていただくことはあまりないので、非常に感動しました。まさしくビッグサイズで、これはすごいなと。専門ではないわけですけれども、それでもすごさはよく分かりました。逆に言うと、ある意味国をかけた取組だということで、それだけの規模と知見が必要とされ、インパクトもすごく大きいだろうと。ポテンシャルもすごく大きいと思います。少しでも私なりの観点から貢献できるようなことがないかなと思っております。この資料の中でイノベーション・エコシステムという言葉が使われておりました。NanoTerasuの説明のところでもビジョンのところにも書かれておりましたので、このイノベーション・エコシステムというのがまさしく私の研究テーマですので、それについて説明させていただきます。
5ページ目です。高田先生の資料を公表のものですけれども引用させていただきました。これは恐らく少しずつ形を変えながらあちこちで開示されているものだと思うのですが、「NanoTerasuはエコシステムのエンジンである」と書かれておられます。イノベーション・エコシステムを創出して、ここに書かれている国研・大学、地域・自治体、分析会社、企業、そして東北大学のNanoTerasuが一体となってエコシステムをつくっていくということを構想されておられますし、実際に目指されていると思っております。これ自体非常にすばらしいと思いますし、ここ以外のところも、非常に難解ではあるもののすごい技術、すばらしいサービスだと思いつつ、このエコシステムというところで、具体的にどういうふうに進めていくのか、どうやって実装していくのかというところが、恐らく現実にはいろいろ進んでいることと思いますし、知られていること、知られていないこと多々あると思います。後で言いますが、エコシステムはシステムなので、人工的につくるものです。基本的には人工物。そうすると、そのシステムの振舞いを社会科学的にも理解しつつ、システムとして機能するようにつくっていく、実装していくというのが大事になってくると思います。ここに高田先生が書かれていることを実現していく中で、より効果的に実現するのに、私たちが考えていることやステップが少しでも役に立てればと思っております。
6ページ目です。私はスタートアップエコシステムなる国のプロジェクトの代表として実際に実現し、実装しようとして、日々、プロジェクトを動かしております。スタートアップエコシステムは、政府も経団連もみんな大事だと言っているわけでして、ここでもやっぱりエコシステムの実現というのがうたわれております。
7ページ目です。これも一例ですが、エーザイはエコシステムというのをトップビジョンに掲げておられる会社の一つです。分野は違えども、創薬、それから認知症に関してのトライを、社会課題の解決を会社の基本的なビジョンとして掲げておられると。彼らのエコシステムをつくっていっているということで、企業の戦略の根幹の一つの概念ともなっているということです。
8ページ目は私がつくっていこうとしているスタートアップエコシステムのプロジェクトです。ビジョンは、「世界を変える大学発スタートアップを育てる」ということで、東京大学、早稲田大学と東工大でリードさせていただいて、現在はグレーター東京エリアと言われる東京周辺を含めて14大学が参画しております。慶應、筑波、そういったところにも入ってもらいまして、農工大にも入っていただきました。さらに90機関――金融機関、VC、CVC、そういったところにも協力してもらって必要な機能を提供していってもらっているところです。それでは、次の具体的なところで、もう少しエコシステムについてお話しさせていただきます。
10ページ目はエコシステムとは何かということです。今までエコシステム、エコシステムと申し上げてきたのですが、いまいち分かるようで分からない言葉ということで、ちょっと説明させていただきます。エコシステムというのは、日本語で言うと生態系です。もう皆さん御承知のとおりで、生物学の基礎中の基礎というか、生態系という考え方そのものです。なぜここでエコシステムと言っているのか。私はマネジメントサイエンスの専門家ですので、例えに近いです。エコシステムという概念を使って社会をもう少し違うレンズで見てみようと、エコシステムという概念レンズを使って見てみようという考え方です。政策、研究、産業ですね、先ほどもおっしゃっておられた方がいらっしゃいましたが、海外で欧米の人たち――インテル、アップル、グーグルもそうですが、会議に出るとほぼ必ずエコシステムと言っています。エコシステムというのは重要な戦略で多用されているわけですけど、そもそもどういう意味で使っているのか不明瞭だねということです。その定義についてこれから御紹介させていただきたいと思います。正解、間違いとかそういうことではなく、少なくともマネジメントサイエンス分野ではそういう考え方で使われていますということです。私の分野はマネジメントサイエンスと言われる分野でして、エコシステムという概念をキーにした論文がたくさん出ています。ただ、分析は多いのですが、分析してああだこうだと後から言うのですが、前向きにこれからどうやって設計するか、どうやって実現するかというところについての検討は、社会科学全般の傾向かもしれないのですけど、何か後ろから振り返った分析が多くて前向きなものがないので、私はそこのところをぜひともどうやって設計するのか、どうやったら少しでも実現確率が上げられるのかという検討・研究をしたいと思って取り組んでいます。そのために自分でも取り組んでいて、経験から学ぶということもやっておりますので、そういう成果を、今日、暫定的ですけど御紹介したいと思います。
ちなみに、言い過ぎはよくないかもしれませんが、IT分野の企業とか、それから政府も大学もそうだと私は思うのですが、エコシステムレベルの競争に弱いという認識が私はあります。今日御紹介するようなエコシステムというレベルで設計して、そのレベルで競争するという観点があまりないので、気がつくとやられてしまっているということが多々あったのではないかな、今も起きつつあるのではと思っておりますので、観点として重要ではないかと。私なりにそのエコシステムというのを実際に構築し、実務家の人と一緒に進めていきながら具体的な提案をしたいというのが今日の発表のモチベーションになります。
11ページ目はエコシステムとは何かでして、借り物で申し訳ないのですが、私の考え方と大きくは変わらないです。非常に分かりやすいので、ちょっと英語で申し訳ないですけど、ヤコビディスというロンドンビジネススクールの先生で、ボストンコンサルティングの顧問の方の論文から引用してきました。両サイドは伝統的な考え方です。一番左がサプライヤーシステムといいまして、サプライヤーさんたちがいて、納品されて、それをアセンブル、組み合わせてお客さんに届けるというサプライチェーンシステムです。向かって右側はセラーシステム、真ん中の考え方がエコシステムベースドな考え方です。ちょっと細かいところは除きますけど、エッセンスだけ申し上げますと、この四角にComplementors、Complements AとかBとか書いてあるわけですけど、Complementorというのが日本語で言いますと補完財です。補う、補完する財、補完者、補う者たちです。ほぼエコシステムという発想はこれだけです。この補完者を考えるというのが重要になります。どういうことかといいますと、大抵製品やサービスをつくる人たち、提供する人たちというのは、自分の製品・サービスがお客さんに届くというこの真ん中の矢印を目の前にするわけです。これに価値があると言うのですけど、逆の視点のカスタマーサイドから見たときに、例えば、車を考えていただくと、車だけ渡されても困るわけです。車そのものだけでは使えないわけです。当たり前ですけど、ガソリンが必要、ガソリンスタンドが必要、道路が必要、信号機が必要と。もっと考えると何が必要かというと、道交法が必要です、警察が必要、白バイが必要、そういうふうに気づいていないだけ、あるいは当たり前になってしまうと、このエコシステムは気づかないというか、意識しないと見えなくなるのです。消費者の立場に立つと、ある財・サービスを使うためには必要最低限の補完財というのがあるのです。その必要最低限の補完剤のセットが最小限のエコシステムという定義です。それを消費できるかですね。そこから発展するエコシステムはどんどんこの補完財が増えていきます。それが根本的な考え方です。
そんな大した考えじゃない。当たり前といえば当たり前ですけど、その当たり前ができないことが結構多かったりします。例えば、EVや燃料電池自動車を取り上げてみましょう。製品としてはすばらしい、航続距離もすごい、でも、充電はどうなっているんだ、それから、水素はどうなっているんだ。そういう当たり前に思うような補完財が不十分な状態で財が出てしまう。これはエコシステムという観点が事前的に十分でないから起きてしまうと考えることもできると思います。
グーグルとかアップルが、このエコシステムというのを言いながらうまくいっているかというと、彼らは多数の失敗をしています。エコシステムをつくると言っていろんなところでいろいろやっているのですけど、うまく立ち上がらないことのほうが多いのです。それも、一旦立ち上がると非常に大きなインパクトを与えて、社会システムそのものを大きい範囲で入れ替えてしまうからという可能性があるからです。そういう概念がエコシステムという考え方です。
12ページ目で私の考え方も申し上げさせていただきます。これは私の論文でして、ちょっと我田引水ですが、社会科学の中ではグローバルで上位1%に入っています。なぜかといいますと、私の論文はエコシステムというコンセプトは何かという論文ですので、みんながすごく関心を持ってくれていると思います。
13ページに私の論文の図を示します。私が言いたいことはヤコビディスとそんなに変わらないのですが、ただ補完財といってもちょっと大ざっぱ過ぎるよなということです。補完者とは一体どういう人たちがいるのかをもう少し粒度を細かくして見ていかないと現実には使えないということです。その中には、例えば、政府、政策決定者、それからコンソーシアムであったりアントレプレナーであったりサイエンティストであったり、そういった方々がエコシステムの中に入っていると。ビジネスエコシステムという言葉と使い分けているのですが、ビジネスをしている人たちもそれぞれマルチレイヤーの構造を持ってビジネスを展開している。この全体がエコシステムという考え方です。さらに当然ながら、最も大事なところはユーザー、それからユーザーコミュニティー、ここが含まれている必要があります。
エコシステムの図を見るとき、多くの場合はサプライサイドのプレーヤーが書いてあるのですが、ユーザーがあまり書いていなかったりします。すごく単純な話ですが、このユーザーは絶対入っていなきゃいけないわけです。むしろ、ここの解像度を上げて、この人たちに何が必要なのかのセットをそろえにいかないとエコシステムというのは最低限そろってこないので消費できない。消費できないとエコシステムは成立すらしないので、そういう観点でいうとユーザーが一番大事です。それを含めてこういう全体の概念がエコシステムです。言葉として定義しますとこういうふうになります。
14ページ目です。プロダクトまたはサービスのシステムをつくり出すためには、自分で勝手につくっていく自己組織化の部分と、設計して意図的につくっていく部分の両方が含まれます。これが厄介なところで、設計図を書いて設計してつくろうとしても勝手に動いてしまうことがあります。それぞれの企業において、こっちはこれを期待しているのに期待に答えないで別のことをやるみたいなことが多々起きます。そういう自立的な行動を見ながらフィードバックをかけて、それでも成立していくように修正していかなければならないという側面を持っています。そういう社会ネットワークです。
それぞれのアクターが、ここに書かれてあるとおり、異なる属性と意思決定の原理、そして信念――これが結構大事だと私は思っていまして、それぞれのアクターの背景が違っていると。サイエンティスト、エンジニア、そして政府の人、企業の人、その人たちがそれぞれ信念を持って、しかも、それが異なっているので、何か一つのものを目指しているように見えて、実際には目指しているところが違っている。それをどうやって調整してエコシステムとしてまとめていくのかというところがマネジメント上、非常に難しいところで、NanoTerasuはまさにその対象というか、そういうところが問題になるところが大きいのではないかなと思います。
14ページ目に少し書き下しますと、エコシステムというのは設計することができる人工物です。ただし、自律的なアクターの行動とそれが連鎖していくので非常に予測が難しいので、私もそうですが、つくりながらアクターの行動原理を深く理解して、その動作を見ながらフィードバックをかけて修正していくというマネジメントが必要になります。これは極めて高度なマネジメントです。こういうことは言うはやすしで、やってみると本当に難しいです。自分でちょっとやるだけでも、ちょっと私の能力を超えてきたなみたいなことは非常に多々あります。ありますけれども、やっぱりこれを諦めずにやり続けていくしかないのと、これができる人を育てる、探してくる、やってもらう、そういうことが必要なぐらいに高度な専門職だと私は思います。
その上で、私ができるのかと言われると、こういうことを言っておきながらできる範囲は極めて限られています。自分の専門領域で、特にNanoTerasuの場合ですと、非常に深い技術に対する理解というのがまず前提で、その上で視野が広い、産業界に関するネットワークもある、そういった経験がある、そういったようなスーパーマンの人でないとこのエコシステムのマネジメントはできないと思いますけれども、それでもそういう人がいないとエコシステムというのは、特に新しくつくるときはなかなか立ち上がってこないかなと思います。
15ページ目です。3番目に、エコシステムの設計・実装のためのということで、私なりに経験と先行研究を踏まえながら、三つのフェーズと15のステップというのを定義しております。詳細は省かせていただきますけど、それらと照らし合わせたときに、私なりに今のNanoTerasuの状況というのをちゃんと理解できないままに言うんですけれども、かなり大ざっぱなところでざっと拝見して、比較して、どの部分がもうちょっとあったほうがいいんじゃないかなと思うかというのを御説明させていただきたいと思います。
16ページ目です。15ステップなんですけれども、まず、これは1個1個でやっていくというよりは、ある意味フェーズ内をパラレルに進んでいく、フェーズ間もそうかもしれませんけど、ある程度パラレルに進んでいく必要があると思います。
その上で、まず第1フェーズは設計フェーズで、まず、ビジョンを定義するということが必要だと思っています。この色を変えているところがちょっとNanoTerasuで明確に見えづらいなと思っているところです。誰のためにどういう価値を提供するのか。ユーザーと書いてあるんですけど、ユーザーとは誰なんだろうとか、具体的にはユーザーのユーザーという人たちもいるので、BtoBとかBtoCとかそういう中で、誰が一体最後に支払いをするんだろうと。それは本当に顧客にとって価値になっているのかというところはとても見えづらいです。こちら側から見ていると、サプライサイドから見ているととても見えづらいので、よほど意図しないと見えないですし、お客さんが買うと言っているのに、実際に支払いになると払わないということも多々あるので、本当に価値なのかというところをずっと問い続けなきゃいけないところかなと思います。
それ以外のところはターゲットとか必要な機能――どこまでをというのはエコシステムに必要な機能という意味では詳細な検討が必要かもしれませんが、どういう機能が必要かと。補完的な機能ですね。
それから、それを実現するための仕様を定義する。
そして、より大事なところが、後で言いますけど、オーケストレータという、全体を見渡して設計をして、実装しながら調整をかけていく、そういうマネジメントする人ですね。そういう人であったり組織であったり、そのオーケストレータを含む各機能のアクター。誰がこの機能を担うのか。ここはかなり計画されて実装されているのかなと思うんですけれども、不足している部分はないかなというのが気になるところです。
17ページ目は私なりの設計モデルです。すごく単純ではあるんですけれども、カスタマーがどういう価値を感じるかというのを、あくまで例ですが、様々な観点――ハードウエアとかインフラとかネットワーク、アプリケーションだけではなくて、コンテンツ、サービス、見えないようなところも、可視化できないようなところも含めて機能として定義しないと、プロダクト/サービスが消費されることはないということがエコシステムの設計モデルです。
18ページは第2フェーズの詳細設計です。これはちょっと細かな話になってくるので、オーケストレータとそのマネジメントチームがこういうのをつくっていく必要があると思うんですけど、非常に大事なところとして権利の流れと帰属です。そこがインセンティブになりますので、誰がどこまでのIPを持ち得るのか、どういうケースだとどうなのかという、ここは、多分、相当やられているとは思うんですけれども、あくまで詳細設計という意味で必要ではないかと。特に企業とかそれ以外を巻き込んでいくときにどういったような権利が設定されるのかというのは、戦略的に設定することがむしろポジティブに、巻き込みにつながるということもあると思います。後で言いますけど、IMECというコンソーシアムがありますけれども、あそこの知財の管理システムというのは非常に戦略的だと思いますので、そういったようなことも参考になるのではないかと思います。
それから、本当に支払ってくれるのかというところで、コストに対して収益を出さなきゃいけないというときに、ここには明確に書いていないんですけども、コストセンターとしてコストを使うべきところはしっかり使わないといけないと思うんですね。中途半端にコスト削減とかやるのではなくて、徹底的に使うと。突き詰めるところはですね。
一方で、そこから収益を上げていくというところはまた別のパーツとしてプロフィットセンターを持たなきゃいけない。その間にバリューシステム、バリューセンターというのが必要だと思うんですけれども、本当に収益が上がるのか、それは支払ってくれるのかというところまで視野に入れて見ておかないと、そのコストとプロフィットの間のバランシングというのが本当になされるかどうかのリアルなところというのは、事前にはどこまでいっても分からないところだと思うんですけれども、そこまでを見てモニタリングする必要性が一般的にはあるかなと思います。
それをどういうふうに、誰に分配するんですかということで、やっぱりアクターたちはみんな広い意味でのインセンティブがないと動けない、動かないわけですので、それを誰にどのように配分されるのかというところが次の大事なところです。
19ページは最後の実装フェーズです。実装フェーズということで言いますと、シナリオとポートフォリオですね。バランスが必要で、コストをかけるべきところはしっかりコストをかけつつ、この部分は収益化に近づいていっているところだからということで、全体のポートフォリオをバランシングしながら、いずれにせよライフサイクルはあるので、どうしたってあるアプリケーションはサチっていくので、それを切り替えていきながら、全体として維持可能な持続的なエコシステムをつくらなきゃいけないということになります。
リスク検討、プロトタイプ、この辺りはもはやNanoTerasuにはあまり関係ない部分かもしれないなと思いつつ、もう既に出来上がっているからですね。ですけど、15番のエコシステムの設計の見直し、フィードバック、これは必要かなと思います。実際に動かすといろいろ不具合が見えると思いますので、その点についてのフィードバックを誰がどういうふうにやるのかというのは決めておいたほうがいいのではないかなと。
今申し上げたことをまとめると20ページの図のようになります。
もう既に申し上げたとおりですので、ポリシーとサイエンスとテクノロジーとビジネスという各レイヤーがあって、オーケストレータは基本的にはビジネスレイヤーの人間だと思いますが、テクノロジーとサイエンスに対しても当然ながらネットワークと知見がないとオーケストレーションはできないので、ポリシーもそうですけど、そういう人がいて、全体を構成しながらエコシステムのモデルを設計して、実装していきながら、実際にカスタマーが支払うというところまでをマネジメントするという、それがオーケストレーションと言われるものですが、それが必要であり、そういう考え方というのが、多くの場合、あまり強く意識されずに進んでいっているかなと思います。
NanoTerasuにおいては既にビジネスが巻き込まれていっているので結構進んでいる部分もあるのかなと思いつつも、カスタマーの顔とか、そこがどこまで支払われるのかというところも明確化していくといいのかなと思います。
21ページ目にまとめますと、私がこの15ステップと照らし合わせてNanoTerasuでさらに検討するといいのかなと思うところは、まず、ビジョンのところで、顧客は誰なのかと。そこを具体的に定義して、本当に支払ってくれるのかというところですね。それから、オーケストレータが誰なのか。これも私が分かっていないだけかもしれないんですが、申し上げたようなオーケストレーションを一体誰がどのように担っているのか、いくのかということですね。それから、支払い意欲のチェック、そして、インセンティブ。ここも参加する企業にとってのインセンティブは当然だと思うんですけど、エコシステム全体でそういうインセンティブがどういうふうに分配されるのかというところも明確化するとよりよいのかなと思っています。あと、ポートフォリオという意味では、別のポートフォリオの区分もあるかなと。ビッグサイエンスで人類の最先端に行くというのは当然のこととして、新産業の創出を目指される中ではそのバランスも大事かなと思いますので、そういう意味でのポートフォリオも必要かと思いますし、短期・中期・長期でどういうふうに持続可能性を高めていくのかということも重要だと思いますし、そのためにはフィードバックをどういうふうにかけていくのか、その体制も明確化するといいのではないかと思います。
すみません、よく分からずに勝手なことばっかり言って申し訳ないんですけど、私の領域と、あと、経験から見させていただいたときにこういう意見を最初持ちましたということで御参考いただければと思います。以上です。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
実は私も、7月に先生と初めてお会いしたときに、NanoTerasuの基本だけを御説明した後、資料はなかったんですが、まさに今言われたことをざっと言われて、私がNanoTerasuに欠けていたのがこれだなと思って、その場でこの会議の参加をお願いしたという経緯がございます。今、改めてお話を聞いて、やはり私の直感は正しかったなと思っていまして、ビジョンの定義、オーケストレータ、顧客の支払い、アクター、インセンティブ、まさに我々NanoTerasuが考えなきゃいけない、考えていないわけではないんですけど、やはりこういった項目を示して取り組んでいかなきゃいけない課題であると思ってございます。
まさにコアリションの形成に関しては高田理事長が本当に尽力されて、このエコシステムに取り組んできていらっしゃいます。ですので、まず、高田理事長のほうから、この先生の御提案に対してどのようにお感じになったのか、御発言をお願いしたいと思います。
【高田理事長】 古田課長、ありがとうございます。辻本先生、どうもありがとうございます。大変に勉強になりましたといいますか、今進めているのでどの部分が足りないかというところを的確に示していただいたと思っております。
このページに出ておりますビジョンの定義も、しっかりと決めているようでまだ定まっていない部分は確かにございます。そういったところをぜひ皆様からいろいろなサジェスチョン、そういったものを出していただけたらと。
我々も、今、ここにおられます青木先生ともいろいろ議論を重ねておりますけれども、足りない部分はまだまだあると。紙の上でエコシステムを書いてはいるものの、具体的にそれが動き始める、そして、それが動いてどんどん進化をしていく、その進化をしていくところもちゃんと考えていかないといけないと。それは先ほど言いました自発的に進んでいく。一方で、勝手な動きをして崩れることも出てくる。実地でそういうことも少しずつ出てきておりますけれども、そこをどううまくコントロールしていくか、本当にいろいろとお話を聞いていてよく見ておられると感じました。
私からは以上でございます。
【古田課長】 ありがとうございます。
続きまして、NanoTerasu全体という意味で、運営会議の議長を務めていらっしゃいます量研の茅野理事から御発言いただけないでしょうか。
【茅野理事】 茅野でございます。今日はどうもありがとうございます。
こういったことは何となく考えながらやっているような気はしているんですけれども、やっぱりきちんとこういうふうに書いていただくと、改めてちゃんとこれから考えてやっていかないといけないなというのは感じるわけで、そういった点でも今日はお話いただいて大変ありがたかったなと思います。
私、お聞きしたいことがあるんですけれども、17ページなんですが、この絵をNanoTerasuに当てはめたときに、アクターと呼ばれているところ、ここは直接的に維持管理運用をやる人たちがもちろん入るんだと思うんですけれども、そのほかにこれに関わる行政の方とかそういう人たちが全部含まれてアクターになっていると考えればいいんですか。
【辻本委員】 ありがとうございます。
このモデルが相当抽象的といいますか、個別具体的にこのまま使えるかと言われると、概念を示しているだけかなと思うんですけれども、必要なのは、まず、カスタマーのところですね。右上のカスタマーのエヴァリュエーション。カスタマーは誰なんだと、誰のために何を提供しているのか、プロダクト/サービスシステム、そこの定義がまず必要です。その上で、そのプロダクト/サービスシステムのパフォーマンスを発揮するために、この縦に並んでいる箱というのはそれごとに話が変わってくるわけですね。何が必要なのか。そもそもカスタマーが何を求めているか次第でこの絵の範囲も変わってきますしレイヤーも変わってきますので、これはあくまでそういう考え方をするというだけであって、そのときごとに必要なものがあると思っています。
ただ、エコシステムの境界というのは非常に難しいわけで、一つはカスタマーを起点にすることによってある程度境界を定めることができると思います。ですので、言うほど大きなエコシステムじゃない話もあるかもしれないんですね。ごく明確なカスタマーに対して何かを提供しようというコアリションの一つのプロジェクトがあったとしたら、それはエコシステムが必要なものだと思っています。
NanoTerasu全体に関してもエコシステムは必要だと思うんですが、ただ、NanoTerasu全体においてカスタマーというのは定義できるかどうかというのは結構難易度が高いなあと思っていまして、発案範囲が広過ぎるということかなと思います。抽象度を上げればある程度はできるんですけど、あんまり抽象度が高過ぎても現実的な意味を持たなくなってきちゃうわけですね。誰のためにやっているのか分からなくなってきちゃうので。ですので、やっぱり誰のためにをまず最初にしっかり定義されること――この絵の中ですとITシステムみたいなのを念頭に置いちゃっているのでインフラ、ハード、ネットワーク、アプリ、コンテンツ、サービスと書いてありますけど、この中身というのはケース・バイ・ケースで変わります。ただ、人工物があり、それを誰が提供し、どういう構造で提供するのかというところは基本変わらないと思うんですけど。という考え方みたいなものだと捉えていただけるといいかなと思っています。
【茅野理事】 ありがとうございます。
あと、オーケストレータ、これが非常に大事だなというのはよく分かったんですけれども、これは、例えば、前回の検討のところの資料にもあった統括責任者というお話があったと思うんですか、このオーケストレータはこれに位置するような感じだと思えばいいんですか。
【辻本委員】 それはガバナンスの執り方次第かなと、選択肢だと思っています。そう決めることもできるとは思うんですけれども、そこはどこまでの範囲、どういう責任をその人に持ってもらうのか次第で話は変わってくると思います。統括責任者という方がどこまでの何の責任を負うのかによるとは思うんですが、ただ、基本的には近い存在だと私は思っています。そういう方が全体――つまりは、顧客に対してどういう企業を集めてエコシステムをつくって実装していくのかということを考える人なのであれば、その人はオーケストレーション機能を持っていないといけないというか、オーケストレータでないと、若干トートロジーですけど、そういう役割を担っている人だと定義するのであればオーケストレータになり得ると思いますし、そうではなくて、単に、決まっているプロジェクトを管理するプロマネとかそういうことを期待するのであればオーケストレーションというほどでもないかなということで、期待役割によるかなと思います。
【茅野理事】 オーケストレータというのは、エコシステムをカスタマーに合わせて設計する人というような感じ。
【辻本委員】 設計して実装する人。
【茅野理事】 実装する人。
【辻本委員】 そうです。
【茅野理事】 分かりました。どうもありがとうございます。
【古田課長】 ありがとうございました。
ほかの委員の方からぜひ。千葉座長、お願いします。
【千葉座長】 どうも辻本先生、ありがとうございました。非常に分かりやすくおまとめいただいて、皆様の理解も深まったと思います。
一番分かりやすいのは、スタートアップ等で資金投入して、どういう経済効果かを見て、資金的に回収して、また次のものを生み出すかという、それがモデルとしては分かりやすいんですけれども、あえてそうではないところをちょっと今、私、考えてみました。
NanoTerasuの場合、巨額の国のお金が投入されて、それから目指すものは、例えば、感染症対策とか、今、この建物が災害に関する研究所とかですよね、NanoTerasuによって災害がどれだけ防げるようになるだとか、次の感染症の発症率をどれだけ抑えられるかというのは、単純に、いわゆる経済効果として企業的な考えでいうと算出しにくい。ところが社会的なメリットというのは物すごく大きいわけですよね。こういう観点での、要するに安心度とか幸せ度というところでのエコシステムというのもすごく大事になるのではないかなと私は思っているんですけど、特に日本はそういう観点で世界が羨ましがるような国になっていくということも私はとても大事だと思っているので、そういうところにその新たなエコシステムのものの考え方――これは国も考え方を変えなければいけないんじゃないかなと私は思うんですけど、そういうものが導入されるともっともっと日本が強くなるんじゃないかなと思うんですけど、いかがでしょうか。
【辻本委員】 ありがとうございます。まさしくおっしゃるとおりだと思います。
何を目指すかというところが非常に大事だと思っていまして、最初にビジョンが来るというのはそういうことだと思うんですね。集まってきて、みんなで努力して、何を達成しようとするか。NanoTerasuが目指すものに共感して集まってこられる。もちろん、生きていくために収益は必要なわけですけど、それを超えた新しい社会をつくるとか、社会の価値をつくり出すとか、困っている人、未来に困る人たちの助けになるとか、そういうことにモチベーションをすごく高く維持して頑張る人たちを集めるからこそエコシステムが成立して、みんながモチベーション高く頑張れるということもあると思うので、まさしくそこのビジョンのところがすごく大事だと思います。
ただ、一方で、それだけだとみんな生きてはいけないわけですよ。やっぱり企業であれば収益は必要ですし、政府であれば予算は投下するけれどもその成果は必要になりますし、それは短期・中期・長期でそういった何らかの価値のループが起きないと、それぞれの属性ごとに必要な価値をつくり出してそこから収穫していかないと存在自体ができなくなってくるので、その同時達成というのが必要かなと思っています。
最近ですと、そういうところのギャップを埋めるようなエコシステム的な取組としては、インパクト投資というのはあるかなと思います。投資家たちがそういう動きをすることによって、普通であれば成立しないようなエコシステムの成立可能性が高まっていると思うので、社会全体がそういうものを求めているのかなという気もします。
【古田課長】 岸本先生、お願いします。
【岸本委員】 辻本先生、ありがとうございました。
質問は、先生の書かれたエコシステムは、サービスをする人とサービスを受ける人――カスタマーとが別々のグループと考えていらっしゃるのかどうかということなんですけれども。今日、施設拝見させていただいて、放射光施設をつくる人たちも新しい技術をそこで生み出したいという、ある種それを推進するためにカスタマーでもある。そのカスタマーがまたサービスをするというので、誰がサービスをするほうで誰がカスタマーかというのが明確に分かれていないような中でシステムをつくっていくというのがこの放射光施設の中にあるのかなと思ったところなんですけれども、その辺りについてコメントいただければと思います。
【辻本委員】 ありがとうございます。まさしくおっしゃるとおりで、非常に大事なポイントだと思います。
私の図の中でいうと、ユーザーとかユーザーコミュニティーとかそういうのが書いてあるんですけど、ユーザージェネレイテッドコンテンツというのは――私はちょっとIT寄りのところがあるので、ユーザー自身がコンテンツをつくるということがあって、それが逆にまた利益を生み出すということもあると思うので、ユーザーがエコシステムの一員だというのは単なる消費者だという位置づけだけではなくて、ユーザー自身が価値をつくり出すこともあると、フレームの中ではそういうふうに位置づけています。
その上で、NanoTerasuがどういうふうに捉えられるかというところで、おっしゃるとおりだなと今気づいたところがあって、サプライサイドと言いましたけれども、同時に自分たちが利用者、デマンドサイドというか需要者でもあって、その両方が行ったり来たりしながら必要なものをつくっていっているという側面があると思うんです。研究者もまさしくそうかなと思いますし、その人たちが使いながら新しい価値をつくり出していくということだと思いますので、そういう構造だと理解しなきゃいけないと思います。
ただ、そうすると、ユーザーとしての研究者が何を求めていて、それに対してNanoTerasuが答えられているのかというところはやっぱり考えなきゃいけないことかなと思いますし、では、そのユーザーとしての研究者はどのように、支払いという言い方がよくないですけど、使用した分を戻すのかというんですかね、価値として支払うのか。それは別にお金じゃなくてもいいと思うんですよ。研究成果でもいいと思いますし、新しい何らかの発見でもいいと思うんですけど、そういうところがうまくバランシングするとエコシステムが成立してくるかなと思います。
ただ、しつこいんですけど、それが生きていけるような系が出来上がっていないと、ちょっと極端な言い方をすると、コストセンターだけだともたないだろうというのはあります。よほどの特殊な構造でない限りは。やっぱりコストセンター、プロフィットセンター、それをつなぐバリューセンターというセットを持つべきかなと思いますので、そういう観点を合わせて全体設計する必要があるんじゃないかなと思います。
【岸本委員】 ありがとうございました。
【古田課長】 ほかの委員、どうでしょうか。小松委員、お願いします。
【小松委員】 ありがとうございました。非常によく分かりました。
先ほどおっしゃられたように、我々の会社も基本的に研究室、研究所というのはコストセンターで、「おまえら金使ってるばっかり」とよく言われて困ったりするんですけど、ただ、それにはやはりそれをプロフィットに変える、それに対して活動する、そういういわゆる本社機能であるとかバリュープロポジションみたいな、バリューとは何だというところがあるので、まさに今、我々がいつの頃からか会社でやっている、いわゆる物売りだけではなくて、本当のカスタマー、お客様の困り事とは何だったよというのをちゃんと把握しないと単なる物の押しつけみたいな形になってしまうという意味では非常によく分かりました。
確かに先生おっしゃるように、こういうビッグサイエンスみたいなやつというのは基本的にはコストセンターだと思うんですが、それをどうやってバリューに変えていくのか。それともう一つは、使う側、カスタマー――使う側だけではないと思うんですが、どう困り事を知って、それに寄り添って成果につなげていくのかと、結局、ここの機能の、最初にありましたビジョン、ミッションみたいなところもしっかりつくって、それがみんなの信念、行動を変えていくみたいな形にしていくというのが非常に重要だなと。
そういう面では非常にいいきっかけの問題提起というか、ディスカッションポイントを与えていただいたなとは思いました。
【辻本委員】 私もおっしゃるとおりだと思います。
例えば、感染症のところを一つ取っても結構刺さるじゃないですか。これは絶対必要だなと。そこのところを突き詰めていって具体像を結んでいくとより説得力が出てくるのかなと思うんです。これは必要だと。長い期間必要だと。そういうところが求められていると思うし、必要だと思うし、その中でも長い目標ともうちょっと短めの目標でここまで達成していくべきだということを積み重ねていく必要があるかなと思います。
【古田課長】 ありがとうございました。
オンラインで参加の横山先生、平井先生、いかがですか。何かございますか。
【横山委員】 横山です。すばらしい御講演だったと思います。大変勉強になりました。
コメントのみですが、ユーザーサイドから見ることの重要さというのを改めて感じまして、本当にありがとうございます。
【古田課長】 ありがとうございます。
平井委員は、いかがでしょうか。
【平井座長代理】 平井です。ご講演ありがとうございました。
私どもも社内で新規事業を生み出すための仕組みについて、まさに同様のことを考えて色々な取組をしています。NanoTerasuの場合にはガバナンスの形をどうするかによってこの実態が変わることが想定されるので、例えば、オーケストレータは決して統括責任者と同一である必要はなく、むしろ異なる前提で設計したほうがやりやすいんだろうと考えました。
また、アクターに対してのインセンティブと関連しますが、前回も話題になった知財などの権利関係の設計も、先々ありたい姿というところにつながっていくと考えています。NanoTerasu自体がそのオーナーになる可能性もあります。そのあたりが最初の設計のポイントだと思います。どうもありがとうございました。
【辻本委員】 ありがとうございます。
【古田課長】 よろしいですか。ありがとうございました。
そのほかいかがですか。宇治原先生。
【宇治原委員】 今日の話はすごくよく分かってありがとうございました。
僕の非常に率直な印象は、オープン・イノベーションをやるためのコンソーシアムをつくるみたいな発想とすごく似ているような気がしていて、今、僕自身も自分の研究でそれを生かす、最後のプロダクトに持っていくためにいろんなステークホルダーを入れて、ただ、このコンソーシアムの運営というのが極めて難しい。さっき先生がおっしゃったように、それぞれの都合を持った会社をどうやって同じビジョンで、しかもみんなにプロフィットを与えながらというのは本当に難しいなと思っていたので、逆に言うと、このNanoTerasuの運営みたいなところもそういうオープン・イノベーションをやってきた人たちみたいなところに似たような形の――エコシステムというと今の状態では急に検索の範囲がもしかしたら狭まるなという気もしたので、そういう言い方でもいいのかなと思って聞いていました。ありがとうございます。
【辻本委員】 ありがとうございます。オープン・イノベーションに近い考え方だと思います。ただ、先生、学術的には明確に分けていまして、チェスブロウたちの考え方は不十分であるというのが我々の意見なので。
オープン・イノベーションという言葉はとても大事な言葉なんですけど、不十分だというのは、オープンでインバウンド、アウトバウンドといろいろありますけれども、オープンであることが大事なのではなくて、クローズであることも併せて大事であったり、オープンとクローズを組み合わせながらその設計をするということが大事で、ここは守っておかないといけない、絶対出しちゃいけないところとかもあるわけで、何かちょっとミスリードしているよねというのと、やっぱりオープンであることを強調し過ぎるがゆえにつくり込みが甘いというか、どこかとつながればうまくいくだろうみたいな観点が多いと思うんですよね。その段階はもう抜けたほうがいいんじゃないかなと思っています。すみません、雑駁ですけど。
【宇治原委員】 ありがとうございました。より意味が分かりました。
【古田課長】 どうもありがとうございました。
この議題について何か特になければ次に移りたいと思いますが、多分、皆さん、自分の持っている仕事でもこの話は適用できるだろうなと思って、NanoTerasuだけじゃなくて、いろんなプロジェクトとか企業の新規施策とかそういったものにも本当に生かせる非常に汎用性のある貴重なお話をいただいたと思ってございます。
この後、どういうような形で報告書にまとめていくのかまた考えさせていただきたいと思います。本当に大変参考になりましたし、させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【辻本委員】 ありがとうございます。
【古田課長】 それでは、続きまして、東北大学の青木理事から、NanoTerasuとサイエンスパークについて御説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【青木理事】 青木でございます。
辻本先生のお話を聴いてたいへん勉強になりました。現場で、高田理事長、あるいは茅野理事と悩みながら走り続けて、つくり上げているということで、今回のNanoTerasuを中心とした、あえて「イノベーション・エコシステム」と申し上げた方がよいと思いますけれども、これをつくる作業というのは、ぜひ今後、皆さんのお知恵を借りながらやっていかなければいけないということを痛感している次第でございます。
私の立場といたしましては、NanoTerasuを物理的にも場所という意味でもホストをしている大学という立場から、大学のアセットをどのように使っていくと辻本先生がおっしゃっていたイノベーション・エコシステムがうまく回るような形になるんだろうか。私たちのアセットをどのようにお使いいただくとそういうものができるんだろうかと考えていました。その際、大学の現状から限界があったり、規制緩和が必要だったり、そういったことがございます。現場の検討状況を含めて、未解決の問題もたくさんあるわけですが、お話しさせていただきます。
2ページ目を御覧ください。すみません、今日の資料はちょっと長いので部分的にカットいたしまして、少し飛ばしながらご説明さしあげたいと思います。画面のほうが正しいページ番号です。
東日本大震災以来、東北大学は、社会課題解決あるいはイノベーションのプラットフォーマーとなって発展していきたいと考えておりまして、キャンパスの設計もそのような考えに沿って、特に、新キャンパスをつくってきております。青葉山新キャンパスと下のほうに書いてございますが、自己財源で東京ドーム17個分、81万平米の土地を調達いたしまして、ここを課題解決型キャンパスという意味合いの場所にしていくということを、先代総長の時代からずっと思いを込めて設計をしてきたということでございます。
次のページが青葉山の全体像になっております。まず、先ほど申し上げた新キャンパスに先立って、以前より、工学研究科、理学研究科、薬学研究科が既に立地しておりまして、大きく展開しているということ。新キャンパスのほうに行きますと、地下鉄より左のほうですが、情報科学研究科はじめ環境科学研究科、災害科学国際研究所――今おられるこの場所です、それから農学研究科、また、半導体の国際集積エレクトロニクス研究開発センター――これは民間出資のセンターでございます。材料科学の民間出資のセンターもございます。このように非常に重要なイシュー(地球規模課題・社会課題)に関する大学院ですとか研究所群が立地しておりまして、2018年より産学連携機構の全体をアンダーワンルーフ型拠点として青葉山に移しまして、産学連携を強化しているところでございます。
NanoTerasuが上空から円く見えておりますが、それに隣接して4万平米の場所をユーザーの方々と一緒に共創していく場所(サイエンスパーク)ということで確保しています。
次のページにありますように、NanoTerasuは、分野を問わない適用が可能だということで、無色透明な技術といいますか、汎用性の高い技術です。応用先は、例えば、半導体ですとか、電子デバイス、材料、医療、環境、食品、畜産、農業、漁業ということでかなり多様です。大変多様な業種に適用できて、産業の観点でいうと、マーケット規模も多様で全く異なるところが入ってくるというところがポイントかと思います。
次のページ。この計画は官民地域パートナーシップという形でステークホルダーが複雑なのですが、日本初の整備手法ということで、我々も力を入れて取りかかっているところです。まず、国の主体として量子科学技術研究開発機構(QST)がおられまして、整備費用の半分強を負担しているということでございます。本学のキャンパスでも2か所に拠点を設けていただいて連携を深めております。当然、官の立場からは従来型の共用ユーザーがおられますので、共用法にのっとって先端技術の研究開発を行います。
それに対して、地域パートナーという形で、高田理事長の光科学イノベーションセンターをトップといたしまして、県、市、それから東経連(東北経済連合会)、さらには、東北大学が入るパートナーが残り半分弱を負担していくという格好になっています。パートナー側では、コアリションメンバーといいまして、民間企業を中心として――大学、国研等も入りますが――出資金という形で建設費を拠出していただきます。私は高田先生と一緒に、営業に伺うんですけども、このユーザーさんが私たちにとってのカスタマーになっています。この方々に繰延資産として一口5,500万円の出資をいただくということは極めて大事です。逆に言いますと、こういう仕組みになっているので、ある意味で、ユーザー(出資者)とのエンゲージメントができているわけです。この方々が、将来にわたって我々が一緒にやっていくメンバーとなってまいります。ここが非常に大きなポイントかと思います。
次のページです。私自身、今日は地域パートナーの一員としてのお話になります。パートナー側のミッションということで、2018年に林文科大臣の会見の中でもおっしゃっておられますのは、民間企業からの資金拠出ということで、これについてはしっかりコアリションメンバーにお願いしていくということです。さらに、これと同時に、リサーチコンプレックスの形成を加速してほしいということでございます。
特にリサーチコンプレックスについては、海外では名立たる放射光施設を中心に大きく展開をしておりまして、先ほど辻本先生のお話があったエコシステムをうまく回していく仕組みがあります。うまく回っているところも、回っていないところもあるようですけれども、国や場所によっても違います。例えばフランスなどは、国が大きく投資をしていますので、そういった意味では、非常に重要な事例になっています。
次のページは省略させていただきますが、国際ネットワークも、私ども地域パートナー側、大学としての強みでございまして、今までほとんど行われていませんでした世界の主要放射光施設(SR)のディレクターのサミットを4回ほど企画・開催しておりまして、毎回、国際連携に関するコミュニケをとりまとめております。今回も10月にございまして、そこでしっかりとした連携のコミュニケをまとめて、世界との連携(頭脳循環など)を強化していくということでございます。
次のページは先ほどから出ておりますコアリションのコンセプトです。いわゆる有志連合ということで、メンバーとして出資をして入ってくる方々、産業界、あるいは学術機関も入ってまいります。それが一対一のチームを形成しまして、企業側は、当然、競争領域で動いておられますので、アカデミア側も厳格な情報管理の下、共同で課題解決を図ります。そういったスキーム(戦略的連携)をつくっていくということがコアリションのコンセプトです。その際に、専門家をあてながらしっかり協働していくこと、これをいかに回すかということが非常に重要でございます。下の方に、コンプリメンタリー(補完的)な役割といいますか、サービス事業群がございます。逆に言いますと、アカデミアと企業だけが組んでも、なかなかそれだけでは解決できないことがありますので、それを補完する様々なサービス事業が必要になってくるということでございます。
次のページがコアリションの実際の意向表明を現在いただいている各社さんでございます。100を超える多様な企業や機関等の皆さん、地域パートナーから言いますとカスタマーの皆さんですが、そういった方々、それから学術機関も続々と参加中ということでございます。後で高田理事長から言えるところはおっしゃっていただくとよいと思います。
例えば、大手企業の産業界の皆さんは、当然、自分たちのR&D投資の中で放射光を使って、産学連携も含めて取り組んでいこうという方々も多いです。また、逆に学術のほうは、大型の産学連携を担いたいという気持ちと同時に、国プロをしっかり取っていってプレゼンスを発揮していきたい。自分たちの研究の社会実装を図っていきたい。こういったところに意向があるメンバーさんも非常に多いということです。
それ以外にも、当然、日常使いの中で、企業さんが、いやいやR&Dだけではない、例えば、クレーム対応案件等の分析も含めて、研究というわけではないんだけれど、日常使いしていきたいというご意向もありますので、それはどうやって支えていくんでしょうか。そういった多様なカスタマーの意向も含めてどういうふうにニーズを満たしていくかということ。今、3点ぐらい申し上げましたが、いろいろな意図を持って参加されておられます。
ですから、次のページのように、当然、大学、企業、それ以外に分析会社ですとかいろいろな機能を持ったスタートアップ等を加えていって、イノベーション・エコシステムをつくっていかないといけないんですが、そこをこれから、今申し上げたような多体問題の中でしっかり考えていく必要があります。
それでは、大学は何ができるんでしょうか。これは資料が1ページ飛んでおりますが、次のページです。大学は何ができるんだろうか、ホストをしている側として、地域側としてどんなサポートができるかということを考えますと、まず高度専門人材が3,000名いるとか、学術的なネットワークがあるとか、放射光を動かすための卓越した研究開発ができる研究者がいる組織・センターを設置しているとか、データアナリティクスをしっかり担当できる教員を増やしていくとか、こういうところは、今、急ピッチで動いて、概算要求等を含めて取り組み、一部で人も雇用して動かしているところです。その他には、NanoTerasuを補完するような、クライオ電子顕微鏡やNMR装置ですとか、当然、世界の放射光施設はそういったものを補完的に稼働させて結果を出しておりますので、そういった高度研究設備群、また、これからちょっと考えていかないといけないのは、サーバー等を含めた計算・情報インフラということになります。
また、大学はどのような産学連携メニューを持っているんだろうかというと、技術相談・学術指導ですとか、受託研究、共同研究、共同研究講座、あるいは、最近、本学で産業界のリクエストに応じる形でつくったんですが、共創研究所といいまして、大学に企業の方々が入ってきていただく、そういう場をつくっています。この共創研究所のリーダーは企業の方にトップになっていただいて、大学と価値を創造していただくというような拠点を形成するような仕組みをつくりました。そうしますと、放射光が稼働するという理由もあいまって、2021年度に新設して以降、すでに10社程度が設置をしていただいているということでございます。そのほかここにありますように、ベンチャーキャピタルのファンドを含めてスタートアップ創出支援の各種のメニューがございます。さらに、SIPなどのような国プロ、ほかからのファンディングを獲得する機能とか、こういったところがあるんではないか。
一方、最も重要な課題は、先ほどの隙間サービスのところも含めて企業が本格的な事業を回していくときに、それを支援する機能が不足している。企業との連携のすべてが大学との共同研究契約で進むような話でもございませんので、やはり社会実装、事業開発を行うために大学の機能を強化していく必要があると考えています。
次のページです。サイエンスパークは今後、整備を行って、QST、PhoSICと一体でやっていくわけですが、物理的に見ますと、サイエンスパークに企業さんがお越しになってオフィスを設けていただく、あるいは実験ラボを設けていただくスペースとして、現在、2棟ほどの建設を予定しています。トータル8,000平米でございます。こういったところを使っていただくような仕組みを整えていきます。
あと、これは言い過ぎると何なんですが、クリックしていただきますと、NanoTerasuが生成するデータのことが出てまいります。理研の石川先生にご指導いただいてSACLAの例でも大量のデータが出てくるということでしたので、ざっくり見積もりますとNanoTerasuおよびその他の計測装置群で年間60ペタバイト級のデータ生成量となります。このデータの所有ですとかデータガバナンスの設計も含めてしっかりとご理解いただくとともに、我々のアセット(情報インフラ)を使っていただくケースもかなりあると思います。そういったところを整備していくことが非常に重要になってくるのではないか。
次のページ、高田理事長はいつもおっしゃっていますけど、我々、共同研究等を進めますと、企業さんは見て(可視化して)終わりということはなくて、そこからAIで分析を行って計算モデルを立てて仮説を立ててシミュレーションも回して、そこでまた新たな探索に入って実験していくと、こういったサイクルが必要であり、計測・計算融合によるR&D全体のDXが必要だと考えております。
次のページは、循環をスタートさせるために何が必要か、現場的な視点で考えました。まさに先ほどおっしゃっていただいた、「人材」ということで、事業のオーケストレータを含む多様な専門人材の参画とチーム編成、これが非常に重要になってきていると。それから、一つは、大学のアセットを使っていただくということも含めて、特に「インフラ」ですね、こういったところに対する整備については、整備手法も含めて検討していく必要があります。それから、やはり企業さんの多様なニーズを満たすような事業開発、社会実装を推進して、エコシステムの中で持続的に成長していく仕組みを構築していく、こういったことが必要であろうと思っております。
次のページ、東北大学は、NanoTerasuのみというわけではないんですが、大学は、今、いわゆる共同研究、その後の事業化というところに一歩進み出せていないということがございまして、その支援機能を強化する「サイエンスパーク構想」ということで、現在、検討している構想がございます。
次のページ、これが基本コンセプトで、あくまでコンセプトなんですが、従来、サイエンスをベースとしてビジネスに結びつける形で、大手の研究開発型企業はイノベーションを起こしてきているわけですが、そういったものをデジタルで汎用化しまして、広い分野に波及させていきたいという考え方です。R&Dのデジタル化というところに対して大学がエコシステムをつくりまして、しっかりとサポートできるのではないか。
これはNanoTerasuのデータで言いますと非常に分かりやすいんですが、当然、NanoTerasuが生み出すデータに対してその分析等、ある業界で、例えば、農業でも創薬でもよろしいですが、そういったところで分析手法を開発していくと、それはその業界に波及することはもちろんですし、当然、他の分野に大きく波及して可能性があります。デジタルの力を活用し、ソフトウエアの開発も含めてそういったことを実現していきたいということが一つの考えでございます。
次のページ。課題がありまして、当然、左側から入ってくるわけですが、それに対していろいろなプロバイダーがいます。この結節点には当然、学術もいますし、データ分析の専門家もいることになります。それから、デジタルソリューションの提供者、これは企業でよろしいのですが、こういったテック企業が入って課題解決を行います。その結節点にサービス事業体をつくりまして、ここでプロジェクトを次々と生み出していきたい。こういう考え方が非常に重要ではないかと考えています。
ちょっと飛ばしまして、このスライドです。大学の機能を活用して左側2つの「共創研究所(あるいは共同研究)」、「プロジェクト方式」について、当然、現在でも我々はやるわけですが、右側の、より社会実装に近づけていくという意味では、「ジョイント・ベンチャー方式」で事業化に結びつけていく、あるいはデータ分析技術の開発やサービス提供のためのベンチャー創出も含めた「スタートアップ等」を生み出していく、こういったところはある種リスクマネーをしっかり充てながらやっていく仕組みが必要だろうと思います。今まで特に大学の産学連携というと、左側が非常に多かったわけです。右側のところは今後非常に重要になってくると考えております。
次のページは、そういう意味で、スタートアップですとか金融の皆さんとのいろいろな知見を共有しながら進めていくことが非常に大事ではないかと考えているということでございます。ちょっと飛ばします。申し訳ございません。お時間もありませんので。
これらをコーディネートしていくプラットフォームをつくっていきたい。まず、第1弾として、大学の子会社をつくりまして、これで先ほど申し上げたいろいろなサービスを提供していくところを担っていきたいということでございます。コンサルですとか、拠点提供ですとか、当然、アセットのマネジメント、IT環境の提供、人材育成、あるいは大学が出資する案件もあると思いますし、ファンドから投資をいただくこともあるでしょう。こういったある種のインテグレーターをつくって、研究開発、事業開発、あるいは社会普及を複数の企業と連携でやっていくような、そういった仕組みを生み出していく必要があるのではないかという具体的な検討に入っております。あくまでエコシステムの中の一員でしかございませんが、今の大学の機能だけでは足りない部分があるということで、こういったことを想定しています。
次のページにちょっと具体的に書いていますが、例えば、事業会社あるいは金融に我々のパートナーとして入っていただいて大学子会社を創設し、サイエンスパーク関連事業を推進していくシステムができないかということを考えています。
次のページは具体的に計測データ活用のサービスの例ということで、NanoTerasuのデータで我々がお手伝いするとすると、こういう格好があり得るのではないかと考えています。左下の真ん中のところに多数の事業系の、我々がいつもカスタマーと思っている企業さんがおられますけれども、ここに対して、当然、大学が先端的な知見を協力することはもちろんですが、当然、ソフトウエアのソリューションなどを含めて、いわゆるITコンサル、テック系のところは情報サービスも含めてプロに入っていただいて、サービス事業化したい。右側のほうですが、計測データを活用するアプリケーションやコンサルティングの提供、こういったことを事業化していく。さらには、スタートアップも含めて新規事業を生み出す。例えば、幅広い業界がございますし、また、それぞれの業界のマーケット規模に応じてどのような事業体が適するのか全く事情が異なると思いますが、そういったところに価値を提供するスタートアップを目指していく。こういったところが一つあるのではないかと。ここも走りながら考えていきたい。NanoTerasuユーザーにいろんなお話を伺いながらやっていく必要があると思っております。
最後の総括スライドですが、まとめの1つ目は、大学の強みは人材と研究力とネットワークなんですけれども、ビジネスの創出のところでなかなか十分なサービスの提供ができていない部分がございまして、こういったところは課題となってくると。そのような支援機能を大学本体で担うということもないわけではないんですが、異なる事業体としてしっかり民間的な発想でつくり上げて、エコシステムの一員に入って、そこでサービスを提供するというのがいいのではないかというのが第1点。
2点目は辻本先生がおっしゃっていたお話で、エコシステムのデザインが重要であろうということ。
3点目は、これはちょっと言い過ぎなんですが、官民の持続的な投資というところで、インフラ等、あるいは国プロ等について官からのご協力をいただけると本当にこういったものが回ってくるのではないかということと、さらに、制度革新、あるいは規制緩和ですね。国立大学では幾つかできないことがございます。例えば、私どもが法人をつくっても、ご存じの方もおられると思いますが、行えることに制約がかかっております。資金調達(大学債などの発行)を大学でやるという場合もその使途についても制約がかかっておりまして、こういったところを緩和いただきながら考えていく必要があるのではないか。
NanoTerasuを中心としたイノベーション・エコシステムをつくっていくために大学がどのような貢献ができるかということで、少し背伸びをしている部分はございますが、こういったものをしっかりつくっていって、貢献してまいりたいと考えております。
以上です。
【古田課長】 どうもありがとうございました。非常に圧倒的な構想力とパワーを感じるような御説明で、どうもありがとうございました。
いろいろな観点で、皆さん、アイデアというか、御議論いただきたいと思っているんですけど、どなたからでも結構です。ぜひ御発言をお願いしたいと思います。
横山先生、お願いします。
【横山委員】 恐れ入ります。すばらしい御発表で、非常に期待を持って応援したいと拝見しました。
質問が二つほどございます。
まず初めに、大学側のアセットを御提供いただくということ、本当に心強い話だと思っております。そのときに、もちろん官からの御支援が必要になるかとは思うんですが、例えば、大学にあります供給拠点などと規模的にかなり異なって、大学共同利用レベルの様々なサポートをユーザー側が必要とすると思います。そうしたときに、例えば、計算機センター一つにしても、どの程度東北大様のほうでしっかりとお支えいただくことが可能なのかどうか。従来の大学の支援という枠組みを超えた、大学共同利用レベルの大きな参画をどのように実現していくのかというのを一つお伺いできたらと思います。
続けて失礼いたします。二つ目は、コアリションの話なんですが、大変期待を持ってすばらしいお声がけをされているんだなと拝見いたしました。そのときに、従来のビッグサイエンスと違って先行投資をしていただくということで、ユーザー側が期待している成果に対してかなり遠い時点の現代において投資をいただいているということで、ギャップが出てくるおそれがないのかどうか。それは先生が回っている中で先方とお話しする中で、そうしたずれがないような調整はきっとされていると思うんですが、その辺りの御参画いただいている企業さん等の感触をお伺いできたらと思いました。
以上2点、よろしくお願いいたします。
【青木理事】 1点目は私のほうから、ちょっと泣き言を言ってあまりよろしくないかもしれませんが、いろいろ悩みながらやっているところがございまして、1点目をお答えします。2点目のコアリションにつきましては理事長のほうからお話しいただくのがよいかと思っております。
特に大学としては、こういう最先端の設備を間近においていただいて、日本全体の大学と連携しながら、産学連携の価値創造の中の非常に大きなトライアルになっていくのではないか、そういう意味ではウィン・ウィンの形で日本の産業界、あるいは学術も含めて、共共拠点(共同利用・共同研究拠点)とおっしゃっていただきましたけども、そういった大きな取組にしていく必要があるということが、まず、理念的には第1点あるかと思います。そのために我々もいろんなホストをしますし、お願いもしたいとは思っております。
もう1点は、とはいえ、例えば、最先端の研究テーマじゃない部分についても日常でいろいろなユーザーのニーズがあり、お話を伺っていると、先ほどクレーム案件対応等、日常使いの話題が出ましたけれども、いろんなことに使いたいということがございます。そういった部分を全て大学の教員がやるかといいますと、やはりそういうことはあり得ないと思います。そうすると、魅力がお互いなくなっていく。そういう部分はやはり民間的な発想で、そういうことができる能力がある方々を集めて、そこで一定のビジネス化を行ってサービスを提供していくと。そういう意味でいうと、もはや大学を超えたところにおきたい。共共拠点の場合は、例えば、計算機(スパコン)の利用要求に対応するとかそういうことはやっているわけですが、ただ、その規模を超えるところで価値を生み出していく必要がありますので、やはり民間的な発想で事業体を幾つかつくっていくということが大事ではないか、その設計が極めて重要ではないかと思っています。全部を大学がホストするというわけではなく、そういった民間的な発想でやっていく必要があるというのが第1点でございます。
2点目、コアリションのところはいかがでしょうか。
【高田理事長】 2点目につきまして、理事長高田のほうから、少し今までの経緯を含めて御説明いたします。
このコアリションの形成は2017年から始めました。やはりずれというものは当然出てくると。そのために、これまで大体1,300回を超える対話を企業とずっとしてまいりました。
その対話は、企業のそれぞれのニーズがどこにあるのか、そして、課題はどこにあるのかということをいろいろとお聞きをして、お困り事をお聞きする形でアカデミアとのマッチングを含めてフィージビリティースタディーを実行するという形で、そのフィージビリティースタディーの結果をさらにフィードバックして、どういったところを求められているのか、それをずっと、今、続けております。
先ほど130社が意向を示していると、そのうちの60社はフィージビリティースタディーを既に始めておられますし、実は、我々の知り得ない場所で、もう既に分析会社が加入をしておりまして、分析会社がもう既にここの部分のフィージビリティースタディーの役割を担って、独自にビジネスを先行で始めているという部分もあります。
ですので、それはいろいろと皆さんの中でコアリションが進化を、今、してきているということで、辻本先生のお話の中で、プレーヤーがどういうふうに動いていくかというのをどううまく整理をしているかというところにも課題は出てくるだろうとおっしゃった、そういった部分も出てまいっておりますけれども、そういうことで、我々はフィージビリティースタディーをしっかりと、今、進めながら、この設計、コアリションの形成にフィードバックをかけているというところでございます。
【横山委員】 ありがとうございます。フィージビリティースタディーでそうしたずれが起きないような、むしろその先を行くような議論が進んでいるという様子が分かりまして、大変ありがたく思いました。
あと、供給拠点ではないというような規模のときの在り方についてもなるべく子会社としていくということで理解しました。
ぜひそれを手にする人たちが納得するような事業化というのができるといいなと思って、非常に先駆的な取組だと思いますので、応援している次第です。どうもありがとうございました。
【古田課長】 横山委員、大変貴重な御質問ありがとうございました。
ほかの方にぜひお願いしたいんですが、いかがでしょうか。
岸本先生、お願いします。
【岸本委員】 御説明ありがとうございました。
先生方が非常によく考えられているなというのがよく分かったところですけども、その中で、今日の話は大学側がいかにサービスするかという形で書かれていて、大学としては、今、そういう説明の仕方になると思います。
私自身は大学を退官したので割と好きなことを言えるかもしれないんですけども、この設備はあるものを企業が使っていくだけじゃなくて、やっぱり新しいものをその中につくっていかなきゃいけないと思うんですね。そういったときに、企業のほうの考えも、企業文化も変わっていってほしいなと。一緒につくるんだというような形で、サービスを受けるだけではなくて、自分たちが参加して、共創の場と書かれていましたので、そういったところをしっかり出していって、日本の科学技術の大事なものを自分たちが一緒につくっていって、その中で自分たちも価値が出るんだということで、できるだけ大学がサービスする側だけに立たないように、共創の場というところで企業のほうも積極的に関わる仕組みをつくるし、そういったところの企業の人たちをどんどん盛り上げていくというのが大切かなというときに、やはり辻本先生がおっしゃっていた価値をどこにするかというのをしっかり出していくというのが大切かなと思いました。
アメリカにブルックヘイブンという放射光施設がありまして、もう10年以上前ですかね、見学に行ったときに、最初にホールに通されて説明を受けました。説明係の人はサイエンティストなんですけども、なぜこの施設が大切なのかというのをとうとうとお話しされていて、これは自分たちの研究だけでなくてアメリカのため、世界のためにこういうことやっているんだということを、施設の価値ということを訴えられていたことが、記憶に残っています。
そういった意味で、この施設がどういうふうなものなのかというコンセプトも含めて、みんなでつくるものだということが出てくるようなものが出ていると、大学が、今、取り組まれたところとうまくマッチングするのかなと思いました。
ちょっと感想的になりましたけども、そんなように思ったところです。
【古田課長】 ありがとうございました。
この点、ぜひ私も企業の方から御意見をいただきたくて、小松委員、よろしいですか。お願いします。
【小松委員】 私も今のいわゆるサイエンスパーク構想を聞いて非常に驚いた部分がありました。すなわち、今、委員の方からおっしゃられたように、恐らく企業側も変わらないと駄目なんじゃないかというのはまさにおっしゃるとおりで、今、青木先生からお伺いした内容、最後事業化まで持っていくんだ、そこまでちゃんと寄り添って面倒を見ていくんだという見方では、恐らく企業側は大学との共研というのはまだそこまで気持ちがいっていないんではないかなという気はします。
そういう意味では、サイエンスパーク構想をきっかけに、いろんな企業、もうやられているかも分からないんですが、ここまで考えているんですが、ここまで一緒にやっていきましょうみたいな、そういういわゆる広報活動というんですかね、そういうのも含めて企業のマインドもどんどん変えていくんだという努力は必要なんだろうなと。
ですから、私からしますと、大学側の方がもう既に先のことを考えて構想されているんだというのは非常に印象深かったです。企業側からするとちょっとお願いみたいな感じです。
【古田課長】 ありがとうございました。平井委員、いかがでしょうか。
【平井座長代理】 前回訪問させていただいた際にも非常に面白い計画と申し上げましたが、このNanoTerasuは東北大の理工学系のキャンパスと隣接して同じエリアにあり、さらにそこでオープン・イノベーションの取組ができるような仕組みになっています。産学の関係を通じて共同研究まではスムーズに事が進むと思いますが、そこで止まってしまっているのがこれまでの日本の課題であると思います。要するに、事業化や社会実装は企業側の仕事であると考えて、産学の連携が共同研究までで切れてしまっているというのがこれまでの問題点であると認識しています。アメリカの、特にシリコンバレーではベンチャー企業が起こり、そして事業化して社会実装まで発展しています。その結果新たなお金を生み出して、どんどんとそのお金が次のものに投入されていくという仕組みになっていることに対して、日本は30年ぐらい遅れている印象があります。ようやくここ数年で日本の国内にもその機運が出てきていると感じますが、今回のこのNanoTerasuを中心としたサイエンスパークの構想はまさにその流れに合致すると思うので、積極的に参加していきたいと感じるとともに、共同研究で終わらせずに事業化を一緒にやるところまで目指すということを参加企業がある程度意識することが大事だと思います。
そこで、この場で人材のことも書かれていますが、日本でスタートアップがなかなか大きく成長せず数もが少ない理由としては、まず、圧倒的にアントレプレナーがいないことが挙げられます。起業できる人、それから起業家の能力のある人、そしてその精神を持っている人がまだ圧倒的に少ない。それは多くの人が起業を経験していないために潜在的には能力のある人が出てきていないことが一つの理由であり、また、そこを育成して事業化につなげるためには、当然、起業家だけでは駄目で、ベンチャーキャピタルリストが非常にそこを支援していくわけですけど、そこも、今、増えてはきているし優秀な方もいっぱいいらっしゃるんですけどまだまだ足りないので、今回のこのNanoTerasuを中心としたプラットフォームで人材育成というところもできたらいいなと思っております。それも、今回の今日の御説明の中で狙いの中に入っていますので、そこをやるためには、大学側からの働きかけと、NanoTerasuに参加する企業側の意識を、最初にそちらの方角などにつくっていくということが結構大事かなと。
私は、今、たまたま会社の経営者としてここに参加しているわけですけど、恐らくこれからのNanoTerasuのほうに参加される企業の人は、多くの方が事業家ではなくて研究者じゃないかと思っておりますが、その辺はどうなんでしょうね。やっぱり事業家サイドの人が入ってくると結構活性化されるんじゃないかと思っておりますし、それが今回の取組に対する私の期待値でもあります。
【古田課長】 大変貴重な御意見ありがとうございました。
どうですか、お答えできますか。青木理事。
【青木理事】 実は最近は、我々トップセールスというと何ですけど、企業の皆さんとお話しするときに、トップからお願いをしていくケースが多くございます。現場(研究開発現場)ではなかなか判断できないとことも多いです。そういう意味でいうと、我々が歩き回って、企業のトップの方と触れ合うことで、そこでいろいろな可能性を議論できるのです。それが、非常によい「エンゲージメント」のチャネルになっています。高田先生もそういうふうに思っておられると思いますけど、そういう意味合いも非常にあると思います。
今後、そのようなコミュニケーションを極めて大事に維持していく必要はあると思っています。以上です。
【古田課長】 ありがとうございました。
大体予定の時刻が近づいてきてしまっておりますが、荒井委員、何かございますでしょうか。お願いします。
【荒井委員】 まさに今、平井委員がおっしゃったお話を私はちょっと頭の中で考えていたんですけれども、サイエンスパーク構想というものの一つの最大のアウトプットをスタートアップ創出に置くというふうに一回決めるということが大事なのではないかなと。それによって、先ほどのエコシステムの話ではないですけど、どういうエコシステムをつくっていくかという発想につながると思うので、勝手を申し上げますけど、そういうお考えをもしお持ちになれるようでしたらお願いできればなと思います。
それによってもしかしたら東北大学自体が、ここに東北大学が育てた起業家と理系の人間とそして企業という意味で、それが三位一体になれば、より一つの太いシステムが出来上がるような気がしております。
あと、ちょっと頭がこんがらがってきちゃった部分もあるんですけれども、私自身も、今回、NanoTerasu自身の有識者会議ということで参加させていただいていて、青木先生の熱い最初のほうのお話を聞かせていただいて、NanoTerasuから派生したエコシステムの一つというふうに最初捉えていたんですけど、逆なのかという頭も出てきて、その辺を俯瞰したところで一回頭を整理してみる必要もあるのかなという新たな疑問も生まれてまいりました。もしそういうお考えも含めて可能であるのであれば、多分、ビジョンの設計みたいなものも大分変わってくるかなと思いますので、その辺が私から気になったところということでお話しさせていただきました。
【古田課長】 ありがとうございました。
今の件は、私の理解は両方ともであって、東北大学としてはサイエンスパークとしてNanoTerasuを使ってくるんだと。ただ、国としてはまた違う面というのもあるかと。あと、コアリションに参加している企業というのもあるので、逆のパターンも否定はしませんが、そこは両方ともあるし、いろんな見方がある。要は、たまたまと言っては失礼なんですけど、東北大学からの見方というのを御説明差し上げただけであって、企業はそれぞれ体面があるし、我々としてはまた我々の思いもありますので、そこは皆さんの宝としてどう育てていくのかということかなと思っております。
どうぞ、小松さん。
【小松委員】 今のでちょっと1点だけ。ただ、もし先ほどおっしゃられたようなビジョンとかステートメントのところでそういうのも例えば含めるということであれば、恐らくコアリションメンバーの企業側が設定する課題というのもおのずと変わってくると思うんですね。NanoTerasuに対して、そういう面では、それを出すのか出さないのかというのは、我々からすると、もうばりばりベーシックなことを、ちょっとビジネス程遠いよというようなだけではなくて、こういうところを取ったら何かビジネスにより近いところのテーマ設定もきっとできるんじゃないかなという部分もあるかとは思いました。
【古田課長】 分かりました。了解しました。ちょっとまた勉強させていただきたいと思います。
石川先生、いかがですかね。
【石川委員】 今日はいろいろなお話を聞かせていただいて、ふだんぼやっと考えていることがかなり言語化されたという感じがして、とても勉強になりました。
辻本先生のお話、エコシステムのところ、いろいろとはっきりと分かってきたところがあるんですが、1点、NanoTerasuのエコシステムというものを考えるときには、多分、マルチレイヤーで考えると同時に、それをまたマルチファセットに並べてあげないといけないのかなという感じがして、そこのところはこれから研究していくところかなと思います。
もう一つは、国がお金を出したときの最終的なものは何ですよというのは、やはり国民の幸せじゃないですかと。最終的にはそこに行くんだけれども、その途中の段階でいろいろなものがあるにせよ、やはりみんなが幸せになることというのが一番最後に来てほしいなと思いました。
以上です。
【古田課長】 分かりました。どうもありがとうございます。
どうでしょう。あと一つ二つぐらい御発言いただけるとと思いますので。
茅野理事、大丈夫ですか。よろしいですか。よろしいですかね。
千葉座長、よろしいですか。この議題から。よろしいですかね。
〔「なし」の声あり〕
【古田課長】 それでは、この2つ目の議題については終了させていただきたいと思います。
続いて議題3になりますが、この後、非公開の議事となりますので、ユーチューブの方はここで終了とさせていただきますが、最後に、ユーチューブにて聞かれている方向けにちょっとアナウンスをさせていただきたいと思います。
次回第3回の会議は10月21日金曜日10時から開始をしますので、その数日前に同様に文科省のホームページに公表させていただきますので、ぜひ登録参加をお願いしたいと思っております。
あと、今日のこの会議に先立ちまして、我々、NanoTerasuの中に入りまして、視察をしました。皆さん非常に興奮というか、関心を持たれまして、一言「すごい」というような感じで感想を述べられていた委員の方もいらっしゃいます。
ぜひ我々もこういった施設を多くの方に御覧いただきたいと思っていまして、全く日時もまだ決まっておりませんが、何らかの形でオープンデーというのを開催させていただきたいと思っています。半日とか時間を決めて公開の日時を設定しますので、仙台まで来ていただく必要はありますが、ぜひその機会に中を見ていただいて、私たちと同じような興奮を味わっていただきたいと思ってございます。また日時とかやり方とか決まりましたらこの有識者会議でも御報告をさせていただきたいと思っておりますので、ぜひ引き続き御関心を持っていただきたいと思ってございます。それでは、ユーチューブでの配信はここで終了させていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
―― 了 ――
<担当>
科学技術・学術政策局
研究環境課 林、佐々木
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