令和4年度 日本学術振興会の評価等に関する有識者会合(第3回) 議事録

1.日時

令和4年11月30日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 日本学術振興会(JSPS)の第5期中期目標・中期計画の方向性について
  2. その他

4.出席者

委員

植田座長、秋元委員、岡村委員、加藤委員、東嶋委員

文部科学省

森研究振興局長、木村研究振興局審議官、永田学術研究推進課長、高橋学術研究推進課課長補佐、吉田学術研究推進課企画室室長補佐、二瓶振興企画課学術企画室室長補佐、福島参事官(国際戦略担当)付参事官補佐、齊藤産業連携・地域振興課拠点形成・地域振興室室長補佐、對崎人材政策課課長補佐 ほか

5.議事録

【植田座長】
皆さん、こんにちは。それでは、定刻となりましたので、ただいまから、令和4年度第3回独立行政法人日本学術振興会の評価等に関する有識者会合を開催いたします。
本日は御多忙の中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
まず、本日の出席者及び留意事項等について、事務局より確認をお願いいたします。

【高橋課長補佐】
ありがとうございます。本日、委員の皆様におかれましては、全員御出席をいただいております。
それから、事務局に人事異動がございましたので、御紹介させていただきます。9月1日付で研究振興局長に森晃憲、大臣官房審議官に木村直人が着任しております。このほか、事務局については、永田学術研究推進課長ほか、各事業所管課の担当官がリモートにより参加しております。
また、本日は、次期の中期目標・中期計画の方向性に関する議論を予定しておりますので、振興会から中期計画の方向性の説明、それから委員の皆様からの御質問に対応いただけますように、杉野理事長を筆頭に役職員の皆様に御出席いただいております。
そのほか、一般傍聴者の登録が本日3名ございますので、よろしくお願いいたします。
続いて留意事項でございます。本日、ウェブ会議による開催となってございます。委員の先生方におかれましては、議事において御発言される際には、挙手ボタンを用いてお知らせいただければと思います。御発言される際には、マイクをオン、ミュートを解除の状態にして、お名前の後に、聞き取りやすいようにはっきり、ゆっくりと御発言いただければと存じます。発言終了後には、再度マイクをオフにしていただきますとともに、挙手ボタンを解除してください。
会議資料につきましては、議事次第にある配付資料一覧のとおりとなってございます。委員の先生方には事前に送付してございますが、Zoomの画面上にも共有いたしますので、適宜御覧いただければと存じます。
以上でございます。

【植田座長】
それでは、本日の議題に入る前に、これまでの関連の審議状況等について、事務局より説明をお願いいたします。

【高橋課長補佐】
ありがとうございます。
前回7月28日に第2回の有識者会合を開催いただいて、その後いろいろな動きがございましたので、関連動向としまして御説明させていただきたいと思います。
まず、参考資料1を御用意いただければと存じます。15ページになります。こちらの資料は、7月の有識者会合で先生方に御議論いただきまして、8月末に文科省で策定いたしました振興会の今期、第4期中期目標期間の終了時に見込まれる業務の実績に関する評価、いわゆる見込評価と言われている評価の結果でございます。先生方には既に御覧いただいておりますので、ポイントのみ御説明させていただきたいと思います。
まず、全体の評定ということで、上に総合評定の記載がございますが、A評定でございます。その下の理由のとおり、全体として中期目標に定められた以上の業務の達成が認められたということで、A評定としてございます。
それから、下段のほうに法人全体に対する評価ということで、幾つか文章の記載がございます。簡単に御説明させていただきます。一番上の丸の2行目中段辺りから、学術研究における多様な特性・ニーズに応じた支援を行う我が国唯一のファンディングエージェンシーとしての役割を十分に果たしている。2つ目の丸、3行目の冒頭辺りから、新型コロナウイルス感染症による制限下においても事業運営の質的な向上にも取り組んでいる点は高く評価できる。それから、状況の変化に応じて様々な特例措置を設定し、柔軟に対応したことは高く評価できる。それ以降の丸にはそれぞれの主な事業別に特筆すべき点を記載してございますので、説明は省略させていただきます。
続きまして、次のページでございます。3. 課題、改善事項などとございます。こちらは、委員会の先生方からの御意見も踏まえまして、2点ほど指摘させていただいております。
1つ目の丸でございます。外国人研究者招聘事業については、ノーベル賞級の著名研究者を招聘して教えを請うスタイルから、競争相手でもある海外有望株を招待して、長期の研究ネットワーク形成につなげることに変わって久しい。成果は、どれだけ国際的ネットワークが形成できたか、ということに依存する。そのためにはこれから成長するであろう海外研究者の質の評価も必要となる。これまでの活動の分析に取り入れる必要があるという御指摘が、1点目でございます。
2点目、振興会が保有する研究者データベースは、日本の研究者の大半をカバーする最大のデータベースである。研究業績データベースとリンクされれば極めて有用な研究データベースになる。自分たちが日本の中核研究者の最大データを保有しているという自覚の下に、より有益な運営を考案する努力をしてほしい。このような指摘を提示させていただきました。
以上が総括的な評価になってございまして、次の17ページ以降に項目別の評定が並んでございます。こちらは説明を割愛させていただきたいと思います。
続きまして、参考資料2でございます。19ページを御用意ください。こちらは、今御説明させていただきました見込評価の結果、それから7月28日のこちらの有識者会合での論点を提示させていただいて御意見いただいたかと存じますが、そういった内容を踏まえまして、文科省で作成した資料になってございます。本日、この後、御議論いただきます中期目標・中期計画にダイレクトに反映していく内容になりますので、要点のみ説明させていただきたいと思います。
1番、政策上の要請及び現状の課題としまして、(1)に政策上の要請がございます。こちらの2パラグラフ目、「本法人が担う「学術研究」は」と続きまして、科学技術・イノベーション基本計画において、独創的な新技術の創出等をもたらす知を創出するものと位置づけられており、ますます重要性が高まっている。「また」とありまして、その次の行です。本法人には、引き続き我が国の学術振興の中核機関として、研究者の活動を安定的・継続的に支援する役割が求められるとまとめております。
(2)現状の課題でございます。冒頭から、「我が国の研究力については」とありまして、相対的・長期的に地位が低下するという課題。それから、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大は国際的活動を変容させ、研究者や学術の中心を担う大学等にも大きな影響を及ぼしておりまして、そういった変化に適切に対応することも必要であるという課題を呈してございます。
また、その次のパラグラフの前半部分に具体的な強みを幾つか並べてございます。こういった強みを有する一方でということで、下から3行目のところです。それらの強みが十分に生かし切れていないという課題を有する。さらに、増大する事務・事業を適切に遂行するために、業務のさらなる効率化と戦略的な人材育成・確保に取り組むことも必要である。このように課題を指摘しております。
それらを踏まえまして、2ポツの講ずるべき措置といたしまして、(1)中期目標期間は5年とする。(2)中期目標の方向性としまして、「本法人には」ということで、3行目です。自らも変革し、事業を展開する役割を期待する。「また」以下で次の行です。学術の中心を担う大学等との密接な連携協力の下で、それら大学等の変革促進をも見据えて、戦略的に事業の見直し・改善に取り組むということと、さらに新しい取組にも果敢に挑戦することが望まれる。こうした役割の実現に向けて、次の中期目標においては、まず、今期の目標の中で行ってきた事務・事業を継続して実施することを基本としまして、さらに以下の内容を重点事項として位置づけるということで、5点ほど記載させていただきました。
1つ目です。企画提案機能の強化ということで、膨大な研究課題情報等のリソースを保有するという強みがございますので、そういったものを活用しながら、戦略的に事業の見直し・改善を行い、新たな企画にも積極的に取り組む。最後になりますが、我が国全体の学術振興に資する提言も行ってほしいといった課題でございます。
2つ目の丸が人材育成の観点でございます。トップ研究者の登竜門である特別研究員制度の一層の充実を図ってほしいということです。
3点目といたしまして、国際関係事業の推進ということで、次のページに移ります。国際関係事業の今後の在り方を示す総合指針を策定し、戦略的な事業運営を行ってほしいということです。
4点目、広報機能の強化といたしまして、広報戦略を策定し、これに基づき法人の広報機能の強化を図ると。
最後の5点目は、法人運営・マネジメントのさらなる改善ということで、科研費等の審査プロセスのDX化を推進するとともに、戦略的な人材育成・確保等によって体制強化を行うことで、機動的かつ戦略的な法人運営を可能とする組織整備を行うと。
こういった点を見直し内容として示させていただきました。
次の資料も紹介させていただきたいと思います。参考資料3、22ページとなります。こちらは、文科省ではなくて総務省の動きになってございます。総務省としては、独立行政法人制度全体を取りまとめるという役割を担っておりまして、総務省の委員会で、10月17日に開催された際の資料の抜粋版がこちらの参考資料3になります。
経緯としましては、総務省の委員会でも法人ごとの論点を見いだすために主務省、つまり我々学術研究推進課になりますが、我々に対するヒアリングですとか、あと総務省の委員が実際に法人本部に出向かれて、理事長ほか役員の皆様にヒアリングを実施したという経緯がございまして、そういった内容を踏まえまして今回論点を作成されているというものでございます。タイトルにありますように、令和4年度に中期目標期間が終了する法人ということで、振興会を含めまして24法人ありますが、各法人の中期目標を作っていくに当たっての論点を整理しているという位置づけのものでございます。
2点ほど指摘を頂いております。1つ目の丸、法人の諸事業を効果的・効率的に実施するために、例えば諸外国の学術振興機関等との活動内容の比較を行い、優れた取組を取り入れることですとか、あと事業の在り方について不断の改善を行うことによって、法人全体の事務・事業の改善等に取り組んでいくことを目標に盛り込んではどうかという指摘を頂いています。2点目については、法人が実施する諸事業における活動・成果について積極的に情報発信をして、学術研究の社会的評価を一層高めていくことを目標に盛り込んではどうかと。こういった指摘がなされています。
これらについては、12月5日にまた同じ委員会が開催されまして、こういった論点をベースに、留意事項というものが決定されます。それが各省庁に伝達されて、各省庁では、こういった内容を次の中期目標に盛り込んでいくといったことが期待されているところでございます。
ここまでが中期目標・中期計画関連の動きの御紹介でした。
さらに次の参考資料4を用いて、次の中期目標に向けた一連の流れとは少し異なりますが、新しい動きとして御報告させていただきたいと思います。
こちらは、表示しておりますのが予算の概要資料になってございます。地域中核・特色ある研究大学の振興です。右肩に令和4年度第2次補正予算額ということで2,000億円という表示がございます。こちらは今、国会で審議中でございまして、成立すれば振興会に基金が造成されることが予定されております。
資料で簡単に概要を御報告させていただきます。上段の左側、背景・課題としまして、我が国全体の研究力の発展を牽引する研究大学群の形成のためには、大学ファンド支援対象大学と地域中核・特色ある研究大学とが相乗的・相補的な連携を行い、共に発展するスキームの構築が必要不可欠であると。こういった背景がありまして、言わば世界トップレベルの大学ファンドと両輪として位置づけられるような事業と御理解いただければと存じます。
その下、事業内容としまして具体的な中身の記載がございます。特にこの黄色の部分です。黄色の四角の部分で1,498億円とありますが、こちらが振興会に造成を予定している基金という内容になります。事業実施期間としましては、令和4年度から5年間。基金による継続的な支援で支援件数は最大25件、支援対象につきましては、強みや特色ある研究、社会実装の拠点ということで、WPIですとか共創の場、そういったポテンシャルを有する国公私立大学を対象に、研究力強化に有効な他大学との連携といったような形をつくった構想を、全学としてリソースを投下するような取組に対して支援を行うと。米印にありますけれども、進捗に応じて最長10年をめどに支援を延ばすといったような長期的な事業でもございます。
さらに参考になりますが、下段のブルーのところ、こちら502億円とありますのが、本省からの直接支援を予定しておりますが、関係する産学連携、それから共同研究のための施設整備の予算が計上されているといった状況でございます。
右側に支援のスキームということで、基金のスキームの記載がございます。文科省からの補助金で振興会に基金が創成されるということで記載されてございます。
振興会に関して、基金管理団体として適切な執行管理ですとか、あと対象大学の公募選定、それから資料上にも伴走支援という記載がございますけれども、進捗管理等のサポートを行うことが期待されております。基本的には国の方針に基づいて実施していくといった内容となってございます。
あと基金に関しては、既に科研費の一部の種目で基金化がなされていまして、実際に基金の執行管理を行っています。また、平成21年度にこちらも補正予算ですが、先端研究助成基金ということで時限の基金が創成されて執行してきたといった実績もございます。そういった経験も生かして、新しい基金も執行いただくことが期待されているところでございます。
長くなりましたが、私からは以上となります。

【植田座長】
どうもありがとうございました。言わば中期目標・中期計画を立てるに当たっての周辺状況と境界条件を、今説明していただきました。もし質問がなければ次に進みたいのですが、質問ございますか。
これを踏まえて中期計画の議論に進みたいと思います。
それでは、次に中期目標・中期計画策定に当たっての指針等について、事務局より説明をお願いいたします。

【高橋課長補佐】
引き続き事務局から失礼いたします。
今回御議論いただきます中期目標・中期計画の策定に当たっての言わば大枠のルールとなる指針等について、御説明させていただきたいと思います。
以降の資料はかなり大部になってございますし、基本的には文科省、我々事務局とあと振興会の関係者が内容をちゃんと熟読して、実際の本文作成の際に留意すべきものが中心となってございますので、基本的には資料の位置づけ等を中心に要点のみ説明させていただきたいと思います。
初めに出ている参考資料5ということで、こちらは目標作成に当たってのマニュアルとなる資料でございます。表紙に記載のとおり何度かの改定が行われてきていますけれども、現行の目標を策定する際にも本指針に則って作成してきたという経緯がございます。具体的には中盤の32ページぐらいから、振興会が類型として当てはまっている中期目標管理法人の目標策定に当たっての記載事項等が整理されてございます。この辺は適宜参照しながらという扱いにさせていただければと思います。
次の資料に移らせていただきます。参考資料6、58ページです。こちらは指針の内容をさらに具体的にマニュアル化したような総務省の行政管理局長からの事務連絡となってございます。
次の59ページから、目標策定の際に考慮すべき視点ということで、全法人の共通の視点であるとか、さらにその後には業務類型別に詳しい記載が続いているといったようなものでございます。
68ページ以降にはさらに目標及び指標の記載例ということで、中期目標はこういうふうに構成してほしいというようなマニュアルが記載されております。また、こちらも適宜参照しながらとさせていただきます。
続きまして、参考資料7です。87ページを御用意いただければと思います。
こちらは少し新しい動きでございます。今年4月に総務省の委員会、先ほどから出ている総務省の独立行政法人評価制度委員会というところで取りまとめられた最新の考え方になっております。今ほど飛ばしてきました指針に関して、特に近年の委員会の議論を踏まえて補足するような位置づけの文書ということになってございます。
文書の位置づけがより詳しく書かれているのが89ページです。「はじめに」とありますが、ここに文書の位置づけが見えてきています。委員会は、設立以来7年間にわたって、独立行政法人の目標策定・評価等に係る調査審議を行い、意見を述べてこられましたが、こちらの文章は、そうした委員会の活動における考え方を3つの視点で整理されてございます。1つ目、丸1といたしまして、法人内でどのようなマネジメント、内部統制が行われることを期待しているかということ。2番目といたしまして、今度は主務大臣に、法人に対してどのようなガバナンスを及ぼすことを期待しているか。3番目といたしまして、上の2つを確保するために、何を念頭に置いて委員会として調査審議を行っているかといったことがまとめられているという状況でございます。
こちらもできれば全部説明したいのですが、時間の関係もありますので、1ページ戻っていただきまして、目次です。目次のタイトルである程度のメッセージ性を把握いただけるかと思いますので、こちらを御紹介させていただきます。
第1章です。「はじめに」の後に第1章がありまして、こちらは法人に対する期待ということで3つほど記載がございます。1点目が、将来像を明確にしてほしい。2点目が、環境変化への機動的対応を可能とするマネジメントをしてほしい。3番目は、パフォーマンスの向上等ということで、特にトップマネジメントに関する内容が記載されているところでございます。
第2章は、今度は主務大臣によるガバナンスの在り方に対する期待ということです。1つ目が、PDCAの促進と法人の活性化を図るガバナンス。2つ目としまして、独立行政法人とのコミュニケーションを重視したガバナンスをしてほしいということが盛り込まれております。
第3章といたしまして、委員会自らの調査審議の在り方ということで記載がございます。1つ目に基本的視座というものがまとめられております。2点目、今後の取組の方向性といたしまして、(1)ではヒアリングを今後一層活用していくということ。(2)では、評価及び目標策定に対する点検の重点化ということです。少し分かりづらいかと思いますが、評価なり目標策定の主体はあくまでも所管の大臣になりますので、委員会としては、大局的な視点から点検等を行うというスタンスがこちらに記載されてございます。3番目、業務管理及び内部管理の共通的な方向性を示す基本的な文書の発信ということで、これが次の参考資料8に出てきますので、後ほど紹介させていただきます。4番目で、目標設定・評価手法の技術的向上でありますとか、5番目で、改善に資する取組事例の収集・展開。6番目で、制度及び運用の改善への貢献ということで、基本的には総務省の委員会のスタンスがまとめられてございます。
資料をまた飛ばさせていただきまして、参考資料8になります。今、紹介した基本的考え方の中に、業務管理と内部管理について全ての法人に共通的な内容を具体化した文書を発信するとありましたけれども、これがまさにその文書となってございます。委員会として、主務大臣に対して、特にここに記載されている4つの点に留意して目標策定をしてほしいということで示されている文書でございます。
このページの一番下のところで、1番、業務の効率化ですとかデジタル対応といったことが記載されています。次のページでございます。2番といたしましては、法人の人材の確保・育成といったことが書かれています。3ポツといたしましては、法人以外、関係機関との有機的な連携を促してほしいという期待です。最後の4ポツとしましては、限られた資源を最大限活用するための資源配分の重点化を期待しているといったメッセージが総務省から示されております。こういった内容にも留意しながら、事務局として中期目標の策定等に取り組んでいきたいと考えております。
大変駆け足になってしまいましたが、説明は以上でございます。

【植田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、次に今後のスケジュールについて、事務局より説明をお願いできますでしょうか。

【高橋課長補佐】
ありがとうございます。本体資料に入ってきますが、資料1ということで、2ページ目でございます。今まで御説明させていただいたような背景の下で、今後のスケジュールを構成してございますので、簡単に御説明させていただきます。
一番上、8月26日ということで、先ほどの参考資料で御説明差し上げました見込評価と見直し内容を策定いたしまして、10月17日に参考資料3で示した論点が総務省で会議にかけられたと。その下、本日の有識者会合で先生方に御意見をいただき、点線以降が今後のスケジュールになってきます。まず、12月5日に総務省の委員会で、先ほど申し上げた論点を踏まえた留意事項が決定されますので、それをまず横目に見ておく必要があると。そういったものも踏まえながら、12月中に事務局案、中期目標・中期計画いずれも案をまとめますので、それを委員の先生方にメールにてお伺いさせていただきたいと考えております。大変恐縮ですが、1週間程度、先生方に御覧いただきまして、御意見や御助言を賜れればと考えてございます。
その後、先生方の御意見も踏まえて事務局案をブラッシュアップしていくと同時に、あとは総務省、財務省との事前調整が予定されております。この調整を経て、2月下旬に中期目標が決定し、それから、3月下旬に振興会が策定する中期計画の文部科学大臣認可が予定されているという状況です。
それから、一番下の米印にございますが、先ほど参考資料4で補正予算の基金の御説明をさせていただきましたが、基金造成のためには、その前提として中期目標の変更が必要になります。今年度中に今期の中期目標・中期計画の変更も併せて進めていきたいと考えております。また、その辺りの情報につきましては、情報共有、御報告させていただきたいと思います。
スケジュールに関しては以上でございます。

【植田座長】
ありがとうございました。
それでは、これまでの説明内容について御質問等ありましたら、御発言をいただきたいと思います。この有識者会議は、これまでは、現在行われている振興会の運営についてのある意味ではチェックを行ってきたわけですけれども、今回は今後どうやっていくかという方向を議論します。そういう点では、皆さんの見解として、こんなことができたらいいなということを自由に言っていただければ、それを事務局の側で取り入れるものは取り入れ、計画を変更していくことも可能だと思いますので、ここでは自由な議論をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【高橋課長補佐】
植田先生、どうもありがとうございました。
今、植田先生におっしゃっていただいたように、次の中期目標・中期計画、次の取組について、先生方にいろいろ御意見をいただきたいと考えております。資料2です。こちら、事務局で次の中期目標の方向性について、議論のたたき台として御用意をさせていただきました。中期目標ということですので、建付けとしては、文科省が法人に対して指示をするという文書になるんですけれども、やはり受け手側の御意向も非常に重要になりますので、これまで振興会と密にコミュニケーションを取りながら、要望なりお考えを十分取り入れた形でまとめた内容になってございます。あくまでも方向性として御説明させていただきたいと思います。
次の資料、4ページ目でございます。こちらは構成案ということになってございます。まず重要となってくるのが、全体の構成案です。中期目標の目次になってくる部分ですが、特にローマ数字3の業務の編成です。これがいわゆるセグメントになる部分でございます。左側に現行の中期目標、右側に次期の中期目標(案)ということで変遷をまとめてございます。中心的な部分だけ御説明させていただきます。
まず、現行の中期目標です。こちら1の総合的事項ということで、中身としては、多様な意見を取り入れながら業務運営を行うということで、振興会の前提理念的なものを掲げてございます。その下2以降、具体的な事業のまとまりということで、2が研究助成の柱、3が特別研究員等の研究者養成の柱、4が大学支援ということで、WPI等が含まれますが、そういった柱になってございます。さらに5番目が国際研究基盤ということで、上3つ、2、3、4の柱を横断的に横串を刺すような形で国際的な取組を行っていくことが位置づけられています。6番の学術情報分析基盤ということで、こちらも基盤という文字が示すように、横串的な位置づけで構築されているというものでございます。7番が横断的事項ということで、情報発信や社会との連携が盛り込まれているといったセグメントになります。
これを、右側のように見直しを考えているというものでございます。2、3、4の科研費等の研究助成、研究者の養成、さらに大学支援という柱については、そのまま右側にスライドさせていただいております。一部政策動向を踏まえたワーディングの変更等を行っておりますが、基本的に事業のまとまりとしてはそのままのスライドということです。
さらに4番です。国際研究ネットワークの強化ということで紫の矢印が示されておりますが、こちらは先ほど御説明させていただいた見直し内容の中でも、コロナ禍を踏まえた国際的活動の変容ということを御紹介させていただきましたけれども、これまで行ってきた国際的な基盤に加えて、ほかの各セグメントに散らばっている国際的な取組をここで一元化いたしまして、国際関係事業を一括りにして戦略的に進めていこうといったメッセージの構成になってございます。
さらに水色の矢印の部分です。こちらも集約をしてございますが、これまでの委員会等で岡村先生からも、総合ですとか横断といった用語が少し分かりづらいといった御指摘を頂いてきましたので、今回5番といたしまして、上4つの事業の柱を貫くような形で、学術振興のための支援基盤の強化という形で整理させていただいた次第でございます。
次のページでございます。具体的な骨子案ということで、整理させていただきました。ローマ数字の1に、政策体系における法人の位置づけ及び役割ということで、基本的には先ほど見直し内容の中でも紹介させていただいたような文書を踏まえて作成しております。1ポツ目では、学術研究が重要になってきているといったことを記載しています。2ポツ目では、研究力が低下するという課題と、若手をはじめとした研究者の環境の改善が課題であると記載しています。さらにコロナの影響にも適切に対応することが重要であるといったことをまとめています。3ポツ目、振興会では、強みを生かして課題を克服するための取組を進めることが必要である。そういった内容を前文として記載しているということでございます。
2つ目、中期目標期間につきましては、5年間として設定してございます。
ローマ数字の3が具体的なセグメントごとの目標、それから具体的な取組例ということで整理させていただきました。
この資料の右上に注記させていただいていますが、見直し内容に対応した部分ということで、今回特に重点化して取り組んでほしい箇所にアンダーラインを引いてございます。それ以外のところは、基本的に現行の中期目標をベースに記載してございますが、簡単に具体的な取組だけ紹介させていただきたいと思います。
1つ目のセグメントの多様で厚みのある知の創造ということで、学術研究への支援ということですが、具体的な取組例といたしましては、1つ目が科研費を想定した取組。2つ目のポツ、社会的課題の解決につながるような学術研究等ということで、今、人文学・社会科学を対象とした支援を行ってございますので、その辺りを想定した記載になってございます。
2つ目のセグメントで研究者養成があります。具体的な取組としまして、1ポツ目です。こちらで今実施しているような特別研究員事業ですとか若手を対象としたシンポジウム、それから振興会賞のような顕彰事業が該当します。2つ目のポツでアンダーラインを引いている部分が、特にということで、特別研究員事業のさらなる充実・改善を図ることで、優れた若手研究者を安定的・効率的に育成するための環境整備を一層促進してほしいということで記載してございます。
さらに次のページで3番目のセグメント、大学等における研究基盤等の強化ということで、大学支援の部分になります。具体的な取組例としまして、1つ目が、優れた研究環境と高い研究水準ということで、WPIの記載になってございます。2つ目の丸が、先ほど御説明させていただきました新しい基金事業ということで、成立を前提に記載してございます。地域中核・特色ある研究大学強化促進事業をここで位置づけております。3つ目のポツといたしまして、特に高等教育関係の大学改革事業です。卓越大学院プログラムですとか大学の世界展開力強化事業のような事業の審査・評価を受託してございますので、引き続き取り組めるように記載しているというところでございます。
4番目、国際研究ネットワークの強化ということで、こちらは国際関係事業を集約した部分でございます。まず1つ目のポツといたしまして、前提として、このセグメント全体を戦略的に進めていってほしいという考えから、下線を引いてございますが、国内外の関連する政策動向を踏まえながら、法人が取り組む事業全体を俯瞰し、国際関係事業の戦略的な事業展開を行うということを記載してございます。その下のポツ2つについては、これまでの取組である国際ネットワークの形成という基盤的な部分ですとか、あと国際共同研究事業ですとか二国間交流事業、外国人特別研究員といった取組が位置づけられております。
次のページに移らせていただきまして、5つ目のセグメントです。こちらは全ての事業を横断的に貫くということで、学術振興のための支援基盤の強化というセグメントになります。具体的な取組例として記載がございますのが、一番上、下線を引いていますが、振興会が有するリソースを生かして、これらの分析から得られる学術動向等を捉え、戦略的な事業の企画運営と我が国の学術振興に資する提言等を行うということで、今、振興会にあります学術システム研究センターでありますとか学術情報分析センターといったシンクタンク機能を活用しながら、政策提言まで行ってほしいという取組になります。
2つ目の丸が情報発信ということで、積極的に情報発信を行うことで学術研究の社会的評価を一層高めるということです。広報機能の強化というところで下線を引かせていただきました。3つ目が、男女共同参画への配慮など多様性の確保に努めるということで、ダイバーシティの観点を記載してございます。4つ目が研究公正の部分です。こちらも引き続き適正に取り組んでほしいということで記載してございます。
次のページに移らせていただきます。ローマ数字4、業務運営の効率化に関する事項といたしまして、1ポツ目、アンダーラインを引いてございますが、見直し内容にもありましたDXを推進するなど、業務の効率化・高度化を図るということ。2点目については、随意契約の見直しや積極的な業務委託の取組を行う。3つ目としては、情報システムの整備・管理です。
続いてローマ数字5の財務内容の改善に関する事項ということです。こちらについては、引き続き予算の効率的な執行に努め、適正な財務管理の実現を図る。それから、運営費交付金の債務残高の発生状況にも留意するということを記載してございます。
最後のローマ数字6番、その他業務運営に関する重要事項といたしまして、1ポツ目がコンプライアンスの徹底。2ポツ目が下線を引いてございますが、人材の部分です。職員の計画的な育成・確保と機動的かつ戦略的な組織整備を行うと。3つ目といたしまして、情報セキュリティをはじめとするリスク対策を適切に講じるといった点を整理してございます。
私からの中期目標の方向性については、説明は以上でございます。よろしくお願いします。

【植田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、次に日本学術振興会から、中期計画の方向性について御説明をお願いいたします。

【杉野理事長】
理事長の杉野でございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
後ほど中期計画の方向性について、担当部長の伊藤から御説明申し上げますが、それに先立ちまして、理事長としての考え方、今、文部科学省のほうで御説明いただきました柱立てとは少しずれるところがありますけれども、私の意識の上での重点事項、こういったことを重点に考えておりますというものを1枚にまとめましたので、お聞き取りいただければと存じます。
全体的に6本の柱でまとめております。
まず最初の柱が、多様で厚みのある知の創造のための基盤の整備ということで、これはもちろん私どもの一番大きな事業であります科研費事業のことを指しております。科研費事業を中心に、我が国に多様で厚みのある知の基盤といったものをこれからも継続的に安定的に作っていきたい。そのためには、科研費事業そのものの不断の見直し・充実を図っていきたいという点でございます。あわせて、あえて申し上げれば、我が国の研究力のウイークポイントの一つというふうにも言われる人文・社会科学の振興。これは、日本学術振興会の力だけで全てを変えることはとてもできませんが、業務を進める上で、人文・社会科学への支援、それを通じた総合知の創出ということについても意を用いていきたいと考えております。
2つ目の柱は、優れた若手研究者の育成事業の見直し・強化でございます。御案内のように、この20年間で博士課程に進学する学生の数が低迷しております。30年前に比べればはるかに多いわけでございますけれども、ここ20年はじりじりと減少しているという状況です。若手研究者というのは日本の研究力の未来そのものでございますので、日本の研究力の未来を描くためにも、若手研究者が安心して研究に専念できる環境を整えていくということが大切だと思っております。
先ほど来、御説明いただいております特別研究員は、現在PD、DC合わせて5,000人あまりを支援しておりますけれども、その処遇の改善、そして育成方法の適切な見直しといったことに挑戦していきたいと思っております。以前からこれは改善が必要だと言われてきましたけれども、なかなか実現がかなっておりません。ぜひともこの部分で一歩でも二歩でも前に進みたいと思っております。
3つ目の柱が、大学の研究力強化のための基盤的支援の強化。これは、運営費交付金がなかなか増えない、あるいは私学で言えば、私学助成が増えない、そういった基盤的な支援、国からの支援がなかなか伸び悩む中で、別の観点から各大学そのものの研究力の基盤を支えるような支援が必要ではないかと考えているところでございます。
振興会は、科研費を代表といたしまして、研究者個人に対する支援がメインの事業でございましたけれども、これからは、研究者に対する支援と同時に大学本体に対しても、その研究力の基盤部分を支援していく取組を展開していきたいと強く願っております。これまでのWPI事業に加えまして、先ほど来、御紹介いただいております新しい地域中核研究拠点の支援事業。これも今国会で成立いたしますと、私どもの担当となります。5年間で1,500億円でございますので、単年度に直しますと年300億円。これは、私どもの運交金の額を上回る超大型の新規事業となりますけれども、こういった事業を中心にいたしまして、大学本体に対する支援事業にぜひ取り組んでいきたいと思っております。
4番目は、研究者の国際交流・共同研究の推進と書きました。これも先ほど来、御説明がありますけれども、よく言われておりますように、論文の国際共著率あるいは研究者の海外派遣といった点でも、日本の研究の現状は低迷と言ってもいい状況が続いております。一方でウクライナ紛争あるいはコロナ問題あるいは国家経済安全保障の観点などから、ロシア・中国を含めて、様々な形で研究面での国際協力の枠組みが今大きく変容しつつあると実感しております。言い換えますと、新しい国際研究交流の枠組みをつくる大きなチャンスが目の前に広がっているというふうにも理解しておりますので、これを機に我が国の研究の国際交流あるいは共同研究をさらに大きく前進させる、回復させていくといった取組を進めていきたいと思っております。これも幸いなことに昨年度の補正予算でいただきました110億円の国際先導研究の事業について現在、審査をしておりますけれども、15件採択のところに百三十数件の大変な応募をいただいております。国際交流・国際共同研究の意欲は大変大きいというふうにも理解しております。こういった新しい事業を中心に、国際的な枠組みを前に進めていきたいと思っているところです。
5番目にあえて女性研究者のことを書きました。中期目標・中期計画の中ではなかなかこれを5本柱の一つに数えるわけにはいきませんが、私どもの意識の中では非常に大きな柱だと思っております。御案内のように日本の女性研究者の割合というのは、依然として諸外国に比べて低い水準にあります。研究の世界だけではなくて、例えばメディカルドクターの世界でも法曹の世界でもまだ女性の比率は低いわけでございますけれども、研究力を高めるためのダイバーシティという観点からも、また日本の研究力の最大のポテンシャルという意味でも、女性研究者が活躍できるような環境整備が必要だと考えております。振興会としてできることは限られますけれども、少なくとも大学あるいは社会に対して振興会から明確なメッセージを送っていく必要があると考えております。その手立てをこれからいろいろ考えていきたいと思っております。
最後に6番目でございますけれども、口幅ったい言い方をいたしますと、振興会は日本を代表するファンディングエージェンシーの一つであることは間違いございません。そのファンディングエージェンシーにふさわしい機能・体制づくりに努めていきたいと思っております。人事の戦略の問題、あるいはシンクタンク機能の強化、あるいはアウトリーチ・広報などの充実といった点など、機能・体制の強化に努めたいと思います。財政的支援をするだけではなく、それにプラスアルファという様々な機能を発揮することが期待されていると考えておりますので、こういった点を重点的な課題と受け止めて取り組んでいきたいと思っております。
私からの御説明は以上でございまして、中期計画の方向性につきましては、担当部長の伊藤から御説明申し上げます。

【伊藤副理事(兼)総務部長(兼)経営企画部長】
経営企画部長の伊藤と申します。
資料4を御覧ください。こちらにつきましては、文部科学省で今お話のあった中期目標を踏まえまして、これまで文部科学大臣の独法評価あるいは総務省の委員会での御指摘といったものも踏まえまして、さらに今、理事長から示された重点事項を整理したものでございます。
11ページを御覧いただければと思います。まずは、国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する目標を達成するために取るべき措置ということで、セグメントは、先ほどの中期目標で書かれているものに沿っていろいろと書かせていただいております。
まず、1番の多様で厚みのある知の創造でございます。こちらにつきましては、小セグメントとして2つ設定させていただきました。こちらも文部科学省と意見を交わしながら記載しているものでございます。
1つ目につきましては主として科研費でございます。充実・強化に関する取組の推進ということで、事業例も科研費のことについて書いております。成果確認の観点というのを右側に書かせていただいておりますけれども、例えばファンディグエージェンシーといたしまして、公正性、透明性を確保した適切な審査・評価を実施して、迅速な交付処理を行うということができたか。また、多様な研究成果の創出に貢献したかといった観点から、今後、指標などを検討していきたいと思っているところでございます。
2つ目は、総合知の創出等に向けた研究活動等の推進でございます。こちらは、人文学・社会科学の振興・推進を図るということを念頭に置いております。現在におきましても、人社に固有の本質的・根源的な問いを追究する共同研究を推進するという事業として、課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業というのを行っております。また、データ共有や利活用を促進するデータプラットフォームを作成して支援していくという、データインフラストラクチャー事業といったものも行っていくところでございます。こういった事業につきまして、学術的・社会的要請に応えた研究活動等を推進するため、課題の設定を踏まえた適切な取組ができたかといったことを成果確認として取り上げていきたいと思っております。
続いて2つ目です。こちらは研究者養成でございます。3つの小セグメントに整理しております。
1つ目は、自立して研究に専念できる環境の確保ということです。自由な発想の下に研究に専念する機会を与えるということで、特別研究員事業のことをここでは記載しております。成果確認の観点といたしましては、優秀な若手研究者に対しまして研究に専念できる機会を適切に与えることができたかということでございます。
2つ目は、国際舞台で活躍する研究者の養成ということです。こちらは海外の大学などにおきまして、長期間、研究に専念できるよう支援する海外特別研究員事業でございます。こちらにおきましても、海外での研究に専念できる機会を適切に与えることができたかということを、今後、成果として確認していきたいと思っております。
3つ目は、研究者の顕彰・研さん機会の提供ということでございます。こちらは、日本学術振興会賞などの若手研究者等を顕彰する各種顕彰事業。また、若手の研究者の集中的な討議の機会を提供するなどのネットワーク形成を促すFoSと言われている先端科学シンポジウムといったものをここでは整理しております。こちらにつきましても、顕彰等を適切に実施して研究意欲を高めることができたかといった観点を述べさせていただいております。
続きまして12ページを御覧ください。3つ目です。大学の改革等の支援などを行っていく研究基盤等の強化でございます。こちらは4つに整理させていただいております。
1つ目の小セグメントについては、世界最高水準の研究拠点の形成促進ということで、いわゆるWPI事業でございます。こちらの研究拠点形成の事業に対する成果確認の観点といたしましては、事業の趣旨や国の方針等を踏まえまして、世界最高水準の研究拠点形成に資する審査・評価等が公正・透明に適切に行われたか。また、アウトリーチ活動についても適切に取り組むことができたかといった観点を挙げさせていただいております。
2つ目につきましては、地域中核・特色ある研究大学の強化促進ということで、先ほど来申し上げております、今、補正予算を国会で御議論いただいている事業でございます。こちらは、成立したら学術振興会で取り組ませていただくということでございます。こちらにつきましても、成果確認の観点といたしましては、審査・評価等が公正・透明に適切に行われたか。また、迅速な交付処理といったものを行うことができたかといった観点を記載しております。
3つ目、4つ目でございます。これまでも行っているものでございますけれども、大学の教育研究改革の支援ということです。こちらは、学部や大学院の教育研究改革を支援するということで、SPARCと言われている地域活性化人材育成事業について記載しております。4つ目は大学のグローバル化の支援です。世界展開力強化事業という事業などを行っております。こちらも審査・評価の実施を担当しているところでございます。こういった審査・評価などが適切に行われたかというのを、成果確認としていきたいと思っております。
続いて13ページでございます。国際研究ネットワークの強化ということで、3つの小セグメントに整理させていただきました。こちらは今の中期目標期間のところではほかのセグメントに入っているものを、今回は1つにまとめたものでございます。
まず、1つ目の戦略的な国際研究基盤の構築でございます。こちらにつきましては、振興会の事業全体を俯瞰して、国際関係事業の今後の在り方を示していくよう、総合指針をまず策定していくことを予定しております。また、海外の学術振興機関、FAとの意見交換を行ったり、海外の同窓会の研究者コミュニティーや海外研究連絡センターなどを活用して、海外の情報収集・発信に努めていくということも予定しております。成果確認の観点といたしましては、総合指針を今後策定する予定でございますけれども、その指針を踏まえて、適切な事業運営等がなされたか。また、研究者ネットワークの形成・拡大などに適切に取り組むことができたかといったことを考えております。
2つ目は、国際的な研究交流等の促進でございます。こちらにつきましては、相手国の研究者との共同研究やセミナーの実施の支援。また、国際研究交流拠点の形成の推進ということを行っていく予定でございます。成果確認の観点といたしましては、そういった国際的な交流事業について、効率的に審査などが適切に行われたか。また、ネットワークの形成・強化につなげることができたかといったことを記載しております。
3つ目は、国際頭脳循環の活性化でございます。諸外国の研究者を我が国の大学等に受け入れて、研究の進展と日本の研究環境の国際化を支援するフェローシッププログラムなどに取り組んでまいります。こういった事業につきまして、透明性を確保しつつ、効率的・国際的な審査等が適切になされたか。また、国際性の向上につなげることができたかといったことを成果確認の観点として取り上げております。
5つ目でございます。学術振興のための支援基盤の強化でございます。これまで第4期におきましては3つに分かれていた取組を、1つに今回は整理させていただきました。小セグメントとしては5つございます。
1つ目は、研究現場の意見を踏まえた業務運営ということです。こちらにつきましては、多様な意見を踏まえて、いろいろと事業改善や活用をしていけたかということでございます。
2つ目は、先ほど理事長からもお話がありましたけれども、女性研究者の活躍等の学術研究の多様性の確保でございます。振興会におきましても、男女共同参画等の多様性の確保に向けて、シンポジウムの開催等にまたさらに積極的に取り組んでいく所存でございます。そういった取組が適切になされていったかどうかをチェックしていきたいと思っております。
3つ目は、学術の振興に資する情報分析等の強化でございます。こちらにつきましても重要な事項だと認識しております。振興会の事業に関する情報を横断的に活用した調査・研究を実施して、業務の改善・高度化に向けた取組の実施に取り組んでいきたいと思っております。また、それが適切に行われていくかということをチェックしていこうとも思っております。
4つ目は、情報の発信と成果の普及でございます。こちらにつきましては、振興会の諸事業における成果や活動について情報発信を行っていく。こちらについても強化しなければいけない事業だと認識しております。諸事業における成果などについて、有効な情報発信が行われているかなどを確認してまいります。
5つ目は、研究公正の推進ということです。研究機関における研究倫理教育の高度化などを支援してまいります。それが適切に実施されたかということを確認していく所存であります。
最後、14ページでございます。こちらにつきましては、業務運営の効率化とか主務省令で定める業務運営に関する事項といったものでございます。
まず、業務運営の効率化につきましては、組織の編成や業務運営の中で、組織編成や資金配分について、機動的・弾力的に運営していくこと。また、経費等の効率化についても図っていくこと。それから、デジタル化です。そういったものを活用して、業務の効率化・高度化を図っていくということを記載しております。
最後の主務省令のところにつきまして、内部統制の充実・強化ということで、法令遵守の徹底などを図っていくこと。また、情報セキュリティポリシーの見直しなどをして情報セキュリティへの対応に努めていくということでございます。施設・設備に関する計画というのは、今のところ予定はございません。4つ目が、人材確保・育成の方針でございます。こちらも重要性を非常に認識しているところでございます。専門性を高めるための研修の実施や関係機関との人事交流などを進めていく予定です。最後は、自己点検評価・外部評価の実施に適切に取り組んでいくということでございます。
以上です。

【植田座長】
ありがとうございました。
それでは、これから日本学術振興会の第5期中期目標・中期計画の方向性について議論していただきたいと思います。自由に議論していただきたいのですが、その上で、議論のポイントについて簡単に説明いたします。
議論のポイントとして、まず目標について。これは主に文部科学省より回答していただく問題ですが、学術研究を取り巻く現下の状況に適切に対応した目標となっているか、そういう取組になっているかということですね。取り組むべき事項はほかにはないのかということです。計画については、主に日本学術振興会より回答を頂きますが、それぞれの事業の取組の方向性が目標の達成に寄与するものであるか。または、事業成果の確認の観点は適切であるか、こういう観点をポイントにして評価をしていくことになりますので、以上のポイントを踏まえて御議論をお願いしたいと思います。
それでは、挙手をして質問からでもいいですし御意見でもいいですから、どうぞお願いいたします。
東嶋先生、お願いします。

【東嶋委員】
御説明ありがとうございました。東嶋です。
今、座長がおっしゃってくださった観点からの質問と言われると、まだ整理ができませんが、お話を聞きながら感じた点で、これを補足していただけたらいいなと感じたことを申し上げたいと思います。
振興会の理事長がおっしゃった計画の方向性について、文部科学省の目標の中でも言及されていましたが、第1点目の知の創造のところで、人分学・社会科学にこれから少し力を入れていくということでした。そこにもう少し踏み込んで、人文学・社会科学と自然科学の分野の連携によるシナジー効果を創出していくということまで踏み込んでいただけると、昨今の様々な諸課題に対応するには人文学・社会科学等の、いわゆる文化系と理科系の連携というのがぜひとも求められていると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
それから、もう2点ございますが、よろしいですか。

【植田座長】
はい、どうぞ。

【東嶋委員】
理事長がおっしゃった5点目の女性研究者の活躍できる環境整備についてです。今、女性研究者が17.5%ということで世界的にも非常に少ないのですが、これを日本全体として何%ぐらいにするという数値を目標として挙げられるのであるか。振興会が挙げて達成しなければいけないということではないと思いますが、マインドとして、このぐらいまで上げたいということが提示されるとさらによいなと思います。振興会から大学や社会へ明確なメッセージを送る必要があるということでしたけれども、やはり社会に対しても、女性の研究者を増やすことで社会全体に貢献できるのだというメッセージをぜひ送っていただきたいと思います。
3つ目です。理事長がおっしゃった計画の6番目で、日本を代表するファンディングエージェンシーとしての機能・体制の強化について、その中でも特にシンクタンク機能の強化と国民に対するアウトリーチ広報活動というのはぜひ強化していただきたいと思います。特にここでアウトリーチ広報活動として目標でも計画でも言及されていますが、それにさらに双方向のコミュニケーションというのが必要だと思います。こちらから研究活動を様々広報するというのも大切ですけれども、国民や特に若者のニーズをすくい取るような機能というのをぜひ設けていただき、社会全体、それから若者のニーズに応えるような研究を応援するという活動につなげていっていただきたいと思います。
以上です。

【植田座長】
ありがとうございます。これについて文部科学省と振興会どちらか答えていただけますでしょうか。

【杉野理事長】
座長、私からまずはお答えさせてもらってよろしいでしょうか。

【植田座長】
はい。

【杉野理事長】
東嶋先生、ありがとうございました。御指摘、一つ一つごもっともな点だと思っております。
最初の人文学・社会科学に力を入れる場合にあっても、自然科学とのシナジー効果といったものも大切ではないかという御指摘は、全くそのとおりだと思っております。私のメモでも、ちょっと言葉不足ではありますが、一応、「総合知創出に向けた」というのは、要するに先生の御指摘の御趣旨をそのような表現で書いてみたところでございます。中期計画に当たりましても、そういった観点からの内容にしていく必要があるのではないかなと思っております。それを前提といたしましても、日本の場合はやはり人文学・社会科学をちょっと強化しないといけないなというので、人文学・社会科学が前に出た表現になっているという状況でございます。
それから、女性研究者について日本としての目標値を挙げられるかと。挙げたいところではありますが、参考までに私が手元のペーパーで見ると、例えば日本が17.5%のところがイギリスですと39.5%、アメリカですと33.9%といった数字が手元にあります。大体、日本の数値の倍あるいはそれ以上が、いわゆる研究先進国における実態かなと思っております。それで本当に目標としていいのかということもありますけれども、相当差があるかなと思っております。
一方で、これを中期目標として、文部科学省からこれが目標だというふうに示されてしまいますと、私どもとして、それを達成できるかと言われると、甚だ手段が限られてしまうかなと。実際に女性研究者を雇用するのは大学の現場ですので、その大学が女性研究者をしっかりと雇用できる。あるいは女性研究者を生み出していくためのそれまでの学校教育の仕組みも含めて、いろいろ改革をしていかなければいけませんので、言わば皆こぞって頑張らないといけない大テーマです。数値を目標に掲げてしまうというのは少し難しいというのが、理事長としての正直な気持ちでございます。御指摘の御趣旨は十分私も理解いたしますし、そういう気迫でもって大学や社会に対するメッセージを何とかして作りたいと思っております。
東嶋先生からの最後の点について、少しお尋ねしたかったのですが、アウトリーチをする場合に、国民や若者側のニーズをすくい取るという御指摘だったかと思いますが、具体的には例えばどういった類いのニーズというふうに受け止めればよろしいのでしょうか。その辺りがちょっと理解しづらかったので、もし差し支えなければ御教示いただければと思います。

【東嶋委員】
データベースを検索するなど、今、日本でどういう研究者がどんな研究を行っているか、どんなプロジェクトがあるかなどは分かるかと思いますし、また、その研究成果についても広報活動をされていますので、それについて分かるんですが、ただ、様々な大学の現場ですとか、あるいは社会の、卑近な例ですが老人介護施設であったり、あるいは企業であったり、いろんなところでこんな研究があったらいいなとか、それからこんなことを応援してほしいなと思うことがあるかと思います。それは一義的にはそれぞれの企業なり機関なりでやればいいのですが、ただ、こんなことがあったらいいなというものをすくい取るような機能があったら、何か振興会として研究を企画していくに当たって種にはなるのかなと思います。
ただ発信するだけでなく、今、世の中がどんなことを考え、どんなことを求めているのかというのを、ざっくばらんにいつでもすくい取れるようなホームページなども作っていただきたいし、また、そういう機会をつくっていただければと、漠然としていますがそんなふうに考えました。

【杉野理事長】
ありがとうございます。よく分かりました。社会に対して一方的に広報やアウトリーチをするだけではなく、意思疎通、情報交換といいましょうか。意思疎通を図りながら事業を展開していくということの必要性の御指摘かと思います。どういうやり方ができるのかというのはいろいろ工夫してみたいと思っておりますけれども、御指摘ありがとうございました。

【東嶋委員】
ありがとうございます。

【植田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、ほかに御質問、御意見をお願いいたします。

【永田課長】
文部科学省学術研究推進課長、永田でございます。1点だけ付け加えさせていただきます。
ただいま杉野理事長から、振興会で計画を実行するに当たってというところで御発言いただいたわけですけれども、私どもは、文部科学大臣が目標を定めるといったところから、今、杉野理事長がおっしゃっていただいたように、目標を立てるなかであまり細かく記載してしまいますと、計画で実施するにはなかなか難しい面があろうかと思います。そういう意味ではかなり漠然とした指摘になると思ってございますけれども、参考資料2のところでもありましたとおり、文科省からは、見直しの内容といたしまして、企画提案機能の強化として、振興会には膨大な情報資源がございますので、しっかり分析するなど、そういった役割を果たしていただきたい。
先ほど先生のほうからお話がありました、そのほかのところでどうなっているのかというのを吸い上げながらという点に関しましては、科学技術・学術政策研究所でもいろいろな分析をなされておりますので、そうしたところと連携を図りながら、振興会でも必要な情報を収集しながら対応していくことが考えられると思ってございます。
それに加えて先ほどの見直しの内容のところで、広報機能の強化として、情報発信すべきターゲットというところは触れさせていただいておりますけれども、先生から御意見がありましたように、発信するだけでなく、振興会の外でどのように考えられているかも踏まえながら、広報戦略ということを検討していっていただくことが必要かと思ってございます。
以上でございます。

【植田座長】
どうもありがとうございます。
それでは、秋元先生、お願いいたします。

【秋元委員】
漠とした質問で恐縮ですが、この間、日本の学術研究で、基礎研究が大切で考えていかなくちゃいけないということを言われてきたところがあったかと思いますが、今回の計画でそういう意味での基礎研究を考えていこうというのは、どういう形で反映されているのでしょうか。内部で何かそういう議論があったら教えていただきたい。それに関連して、例えば科研費の審査において、どういう成果が得られるかはなかなか明確には言えないけれど重要なんだというのもあろうかと思います。そういったところを何とか救い出す、評価に入れるということも、難しいとは思うのですが、そうした点も含めて何か議論がありましたら御紹介ください。

【永田課長】
文部科学省の永田でございます。先ほどの基礎研究のところにつきましては、従来、日本学術振興会で学術研究を推進するという観点から、非常に重要な役割を担っていただいているかと思います。そういった意味では、ある面他ではできない下支えを振興会が担っており、今回の大きなセグメントの柱でも多様で厚みのある知の創造というところで、人文学・社会科学から自然科学全ての分野を網羅し、カバーしていくことを目標としているわけでございます。そういう意味では、引き続き重要な部分を振興会で役割を担っていただきたいと私どもは考えているところでございます。
それと、先生が今おっしゃっていた科研費の成果につきましても、なかなか長期的にすぐ結果が見えるものばかりではないところがございますので、そういった点で科研費の重要性はなかなか外から見えにくい面があり、今回の広報への強化という点を入れさせていただいているわけでございます。
成果ばかりに目を向けてしまうと、何も出ない研究はやらなくていいといったように、結果が全てということになってしまいます。結果がどうなるか分からないところをやっていって、そこから新たな発見が生まれる、そういった研究を支えるのが科研費の役割じゃないかと思ってございます。
評価の指標としてそれを加えていくというのは、なかなか難しい面があるかと思ってございます。その点はまた振興会とも御相談させていただきながら、必要な評価ができるようなものがあれば、観点として加えていくということを検討してまいりたいと思います。

【秋元委員】
ありがとうございます。

【先﨑理事】
総務担当の理事の先﨑と申します。
今、永田課長から行政のサイドから御説明いただきました。現場サイドからも一言言わせていただきますと、まさに今、課長が御指摘いただきましたように、学術というのはボトムアップで、しかもキュリオシティードリブンであるということが大前提でございます。そこで科研費というのがあって、学術の振興を目的とする唯一のファンディングエージェンシーという位置づけをいただいているわけでございます。
成果、評価、どういうふうに実装化したかとか、そういうところを急いで指標化するということは、かえって学術研究のよさといいますか、科研費のよさ、WPIのよさみたいなものも、ともすると、というところがございます。私どもとしては、文部科学省と連携しながら科研費の充実というものを図ることによって、そのために文科省と共に汗をかくことによって学術研究の重要性というものを世間に理解していただくということになるのではと思います。
以上です。

【植田座長】
それでは、ほかに御意見ありますか。
加藤先生。

【加藤委員】
加藤でございます。御説明ありがとうございます。
今、大学院の博士課程への進学者数が非常に低くなっているというのは、日本の学術にとって非常によくないことであると思います。そこで特別研究員制度があり、特別研究員もDC1、DC2といろいろありますが、DC1のところで拡大をしないと、裾野の研究者に、博士後期課程まで行こうという人材が確保できないのではないかと私は思います。特別研究員制度の中でのDC1の位置づけについて、次の期では、振興会はどう考えているのかということをちょっと伺いたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【水本理事】
研究担当の理事を務めている水本と申します。御質問どうもありがとうございました。
学術振興会としても、特に研究者の一番スタートとなる博士課程の若い世代であるDC1、それからDC2。この人たちの力をきちんと認めて、その人たちの研究力を育てるということは非常に重要であると。会の中でももう長い年月、そういう議論をしてまいりました。
具体的には、一昨年程前からですが、他の色々なリソースを使って、経済的な支援という意味で、国を挙げていろいろなプログラムが立ち上がってございます。その中でこの学術振興会の特別研究員というのは、非常にステータスがあると。ステータスという意味は、研究力という意味でのステータスがあるということで、長い間、続けてきた事業を高く評価していただいているところです。
さらに、そのステータスを名目だけではなくて、経済的な支援を強化するということも含めて強化しようということで、人数を少し増やす。それから、より研究の遂行力のある人を高く評価して、それなりの処遇をさせていただくと。そういう計画で今、準備を進めているところでございます。今日の段階ではそこまでしか申し上げられませんけれど、学術振興会としてもきちんとそういう対応を考えているということを御理解いただきたいと思います。
以上です。

【加藤委員】
ありがとうございます。もちろん修士課程の学生さんを評価するのはなかなか難しいことであると思うんですが、ぜひよろしくお願いします。
あともう一点、海外研究連絡センターというのが振興会にはありますが、私がストラスブール大学にいたときに、ストラスブール研究連絡センターなどによく出入りさせていただきました。そのときには、非常に効果的に活用されていたような印象がありまして、非常に有効な拠点となっていたように思います。
次の中期計画では、海外研究連絡センターをどのように活用するのかということについて、質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

【先﨑理事】
総務担当の先﨑でございます。海外研究連絡センターを御評価いただきまして、ありがとうございます。
私どもは11の事務所等がございますけれども、実はここについては一定の課題を感じております。と申しますのは、学術振興会全体の人数が十分でないということもあって、センターに十分な人員が送れていないということも課題としてございます。確かに一つ一つは、同窓会でございますとか、あるいは各種日本の事業の紹介、マッチングといったような機能を果たしてはいるんですけれども、まだまだセンターとしての可能性は、あると思っております。
現在私どもとしては、新規採用にかなり力を入れております。日本学術振興会は、御案内のようにプロパーの職員と大学の職員と国の出向者の3つによって構成されておりますけれども、今プロパーの職員の比率を増やしてきているということがあります。
人事ですので今すぐというわけではありませんけれども、ここ数年来、その前の大体2倍、3倍ぐらいの採用を進めているということもありまして、できればこういう職員を行く行くはセンターに派遣して、海外の機関やまた日本の大学の方々と一緒になって、センターを拠点としていろいろな活動ができるようにしていくといったことを進めている。先ほど理事長から人事戦略というお話がございましたけれども、こういったことも含んだお話というふうに御理解いただければと思います。
以上です。

【加藤委員】
どうもありがとうございました。分かりました。

【植田座長】
それでは、岡村先生、お願いします。

【岡村委員】
岡村です。個別のことというのではないのですが、来期の中期計画を立てる上で、ぜひ御検討いただければという観点で申し上げたいと思います。
まず、組織についてです。これも前々から申し上げていますけれど、研究者レベルでは、海外との連携、外国人の研究者、いろいろな委員会に参加と良く実施していると伺っていますが、要するにこの振興会の運営ですね。経営といいますか。このレベルにやはり日本人とは異なる感性とか考えとか感覚を持った方を入れるというのは、こういう組織の運営にもかなりインパクトあるいは場合によっていい効果が出るのではないかというふうに考えています。ほかの組織を見ているとそう思いますので、独立行政法人でもそういうことを考えたらいいんじゃないかと思っています。
それから、これも以前申し上げましたが、外部評価委員会に作業チームをつくっていただいて、これは非常に効果があると思いますが、できれば次の中期計画では、実際に作業をするチームとして、振興会のいろんな分野について評価・調査できる、あるいはそれを外部評価委員会に上げられる中堅どころの方たちの拡充というのも、できたらお願いしたいと思います。
あと、今回も経費の効率的運営と入っていて、また、一般管理費とか事業費の経費の削減が記載されていますが、これはまた、毎年何%とか削る目標を立てるのでしょうか。経費削減もあまり行き過ぎると、正常な運営というか適正な運営に害が及びますので、無駄な経費は削減すればいいのでしょうが、その点をお聞かせいただければと思います。
以上です。

【杉野理事長】
理事長、杉野です。最後の点は文部科学省にお譲りしたいと思いますけれども、最初の件につきまして御指摘ありがとうございました。
私どもは日常的に海外のファンディングエージェンシーの関係者といろんな会議の場でありますとか、日常的に行き来しておりますので、いつもいろいろ情報交換なり、問題点の共有等の意見交換をしております。それぞれの国の事情に応じて、またそれぞれのファンディングエージェンシーによって、何か強みもあれば特徴もあって、必ずしも全部が全部、同じようなマネジメントをやっているわけではないですが、そういう接触を持って日常的に情報交換するということは大変有意義だなと思っているところでございます。御指摘の趣旨が生かせるような方向で考えたいと思います。
もう一つは、評価に当たりまして、岡村先生には本当に会計処理に当たりまして御指導いただきまして、ありがとうございました。これからの評価に当たりましても、御指摘の趣旨を生かす方向で色々な取組を考えていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【永田課長】
文部科学省の永田でございます。最後にありました経費の効率化について、やり過ぎはどうなのかという御指摘をいただいたわけでございます。我々も当然必要な経費を十分確保しながら、JSPSの運営に支障を来さないようにやっていきたいというのが担当部局としての思いでございます。
その一方、国の予算の仕組みといたしまして、振興会の運営経費も国立大学の運営費交付金と同じように、義務的経費で毎年10%削減というのがまずシーリングとして出されます。その上で、削った分の3割増し、全体で120%ぐらいまで要求できるというのが、大体ここ数年の予算の仕組みになってございます。
そういったところで、予算要求の際は、前年より増額で要求させていただいているところなんですが、何とか財務省と折衝しながら、前年度並みを確保しているといったところになります。本当は必要な経費をどんと確保して、増やしていきたい、拡充していきたいという思いではありますが、国としてもしっかり努力していきたいと思います。

【岡村委員】
ありがとうございます。

【植田座長】
私からも少し意見を言っていいでしょうか。
今回の中期計画は、やはり色々な意味で時代認識を反映する必要があるような気がしています。もちろん世界が非常に変わっていっていることもあります。それから、学術活動そのものも、いわゆる20世紀の科学から21世紀の科学ってどういうものだというのは、あまりよく見えていないところがあります。ここのところずっと、ある意味では技術ディペンドでいろんなことが進んできたところがありましたが、やはりもっと大きな根本的に変えるようなことをしないと、学術がうんと進まないという時代が来ているのかもしれない。みんな、そういう意識はどこかで持っているわけです。
だからそういう意味では、やっぱりこういうファンディングエージェンシーがどういうふうに動いていくかということも含めて、世界の流れやそういう学術の流れにどういうふうにそれを反映していくかというのは非常に難しいと思いますが、意識をしていただきたいと思っています。
確かに難しいなと思うのは、例えば世界レベルの多様な知の創造から、今度は多様で厚みのある知の創造にちょっと言葉を変えられましたよね。もちろんそれは、変化していくことに対してそういうものを反映しようということはいいのですが、本当はどうも感じとしてぴったりした言葉がないわけです。
だから、逆にこういうことをやることによって、この言葉に拘束されたらまずい。学術活動をやっているというのは、先ほどどなたかおっしゃいましたが、ないものをつくる、今までなかった知識を生み出すということをやりますので、こうやったらできるということが分かっていないことをやっているわけです。
だからそういう意味では、どうしても漠然としたことしか出てこないということもあり得ると思います。そういうことがバックグラウンドで、昔だったら多分学術の特性に応じてなど、何かそういうものを必ず枕言葉に入れていたような気がします。何か若干余裕を持たないと、自分たちが決めたことに拘束されるとまずいことが起こるかもしれないなという気がいたしました。
もう一つ基盤について、日本の中で最大の研究者を集めたデータベースを持っているため、それを活用しようというのは確かにそうだと思うので、それは是非やっていただきたいと思っております。その一方、時代認識から言うと、今、小さな大学とか小さくなくても大きな大学でも、学術論文が読めないという時代に入ってきました。図書館経費が上がってしまい、論文が読めないということを様々なところから聞きます。それは研究活動に関して非常にマイナス点に働いているわけです。
見方によっては、日本ではあまり認められていませんが、アメリカには学術論文とかそういうものを利用する際のフェアユースという考えがあります。だから教育に使う時は別に著作権は関係ないのです。教育目的であれば300人にプリントを配ったところで、それは別に著作権違反でも何でもないわけです。教育だから。
そういう点で言うと、JSPSというのは、研究者、アカデミアを対象にしていて、その中でこういうことをコントロールできる窓口になっているわけです。日本の図書館で何とかナショナルサイトライセンスを導入し、日本全体でみんなが論文を読めるようにしましょうという議論はありますけれども、個別の大学がやっている限りは不可能ですから、準アカデミア、それに対するファンディングエージェンシーというJSPSが窓口となることはあり得るかもしれないと少し思いました。
トリエステにそういうところがありまして、開発途上国に対しては無料で論文を公開しています。それはそこがちゃんと管理をして、これが商業利用でないとか、これはちゃんとしたアカデミアの研究をやっているんだということを認めれば、どの国にも全部無料で配るということをやるところがあります。日本でそのようなことができるのはJSPSだけのような気はいたしました。
そういう意味で、色々なことができる。だけど、それは同時にこれから何十年かかけてやっていくことも含めて、色々なことをこの中に盛り込んでいただければと思います。もしくはその頭出しをしていただければ非常にありがたいと思います。

【永田課長】
文科省の永田でございます。植田先生、ありがとうございました。
多様で厚みのある知の創造というところで、決して我々、狭めるということは全く考えてございません。世界の学術研究を我が国が先導していくために、研究者の自由な発想に基づく独創的で先駆的な研究を支えていくということはしっかり目標の中で言っていますので、そういう意味で広く学術研究を支えるのが振興会の役割というところで、しっかり位置づけていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【植田座長】
はい、分かりました。
それでは、ほかに御意見ございませんでしょうか。中期計画はともかく多岐にわたっておりますし、これについては、個別のところでどうこうという意見をすぐにまとめて出すのは難しいと思いますので、これから時間は短いですけれども、皆さんの言いたいことを出していただいて、あとまとめるのは担当部局にお願いをするということにすれば、あまり後先考えないで感じたことを書いていただいていいのではないかと思っています。それでよろしいでしょうか。

【高橋課長補佐】
ありがとうございました。
先生方から非常に貴重な御意見をたくさんいただきましたので、これから早速、振興会の皆さんとも議論をしながら、中期目標、それから中期計画の文章のほうに反映させていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

【植田座長】
皆さん一応意見を言っていただいて、もしこれでいいということであれば、おおむね意見が出そろったというふうに思って、本日の議論を参考にしつつ、事務局と日本学術振興会によって、第5期の中期目標・中期計画の文案が作成されます。12月中に、メールにて委員の皆さんに文案を事務局から送ってもらいますので、御確認をいただくようにお願いいたします。それまでに1週間かけて皆さんの意見を送っていただければ、事務局にてまとめていただくことになると思います。
これでよろしいでしょうか。

【高橋課長補佐】
はい。よろしくお願いいたします。

【植田座長】
本日の主な議題は以上です。
最後に事務局から何か連絡事項があればお願いいたします。

【高橋課長補佐】
先生方、本日はどうもありがとうございました。今日の会議は、今期の有識者会合の最終回となりますので、最後に森研究振興局長から一言御挨拶をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【森局長】
委員の先生におかれましては、お忙しいところ御出席いただきまして、そして非常に活発、御熱心な御議論いただきまして、誠にありがとうございます。今期最後の有識者会合ということでございますので、一言お礼を申し上げたいと思います。
今年度は、日本学術振興会の現中期目標期間の最終年度ということもございまして、通常の年度評価に加えて、中期目標期間全体にわたっての評価、それから次期の中期目標に関する御議論をいただいて、多岐にわたり御協力を賜りまして、誠にありがとうございます。改めて感謝申し上げたいと思います。
私どもといたしましては、本日もいただきました、先生方からの貴重な御意見を受け止めまして、日本学術振興会と共に学術の発展に努めてまいりたいと考えておりますので、今後とも御指導賜れればと思っております。誠にありがとうございました。

【植田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、皆様、御多忙の中、活発な意見交換に御協力いただきありがとうございました。それでは、本日の有識者会合を終了させていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

 

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