平成30年度光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)採択課題の決定にあたっての所見

平成30年8月28日(火曜日)
科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

  本日、ガバニングボードメンバー及びプログラムディレクター(PD)による第2次審査を経て、平成30年度光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)の採択課題を決定した。

デジタル革命の進行は長年人類が築き上げてきた社会・産業の基本的な構造そのものを大きく転換させつつある。その変化は不連続なパラダイムシフトを伴うもので、ゲームチェンジは不可避なものとなっている。政府は、第5期科学技術基本計画(平成28年1月閣議決定)において、転換後の未来社会の姿は「超スマート社会」(Society 5.0)であるとした。デジタル化のメリットを最大限に活用した超スマート社会又はデータ駆動型社会は人々の多様性を活かし「インクルーシブな社会」となりうる。そこでは、20世紀の資本集約型の社会とは異なり、価値の主体は物から知識や情報にシフトし、知とそれを担う人材が新しい社会を支えることになる。

  光・量子技術は、このような来るべき未来社会を実現させ、支えるためのコアとなる極めて重要な基盤技術領域である。特に、革新的なフィジカル空間基盤技術の中核となる。同時に我が国が20世紀後半に世界に対し圧倒的な優位性を誇った分野であり、現在も知技人材面で大きなストックを有している。近年、海外では、米欧中を中心に光・量子技術に係る研究開発に対し、産学官を通じて積極的な先行投資を進め、産業への応用展開も急速に拡大している。この分野の重要な技術をいち早く確立し、「プラットフォーマ―」としての地位を奪取するための競争は一段と激化している。しかし、我が国の産業界は短期的な収益力強化に対応せざるを得ない経営環境に晒され、中長期的な視点での投資が不可欠な領域への積極的投資は難しい状況にある。その結果、産業界に蓄積されている光・量子技術の知と技と人材が十分に活用できていない。そのような状況で、次代の事業の柱となり得る可能性を秘める技術の開発と蓄積、人材育成を進める力が弱体化しつつある。我が国においては、世界トップレベルの学術研究と産業界の光・量子のコア技術において、産学官がこれまで培ってきた強み(知識、人材、ネットワーク等)をベースに強く連携させ、中長期の戦略のもとで、簡単にコモディティ化できない知識集約度の高い技術体系とそれを担う人材基盤を世界に先駆けて構築していくことが重要である。

  Q-LEAPは、以上の認識を踏まえて、今後10年間にわたるネットワーク型拠点形成事業として、これまで我が国が蓄積してきた光・量子技術の強みを最大限に活かして、次世代の優秀な人材の輩出、光・量子技術の研究基盤の強化、急速に変化する社会・産業活動への貢献を目指し、創設された事業である。採択を決定したFlagshipプロジェクトは、爆発的に増加するデータ処理を可能とする量子情報処理(主に量子シミュレータ・量子コンピュータ)、次世代の材料・デバイス開発等を支える量子計測・センシング、サイバー空間とフィジカル空間をつなぐデバイスを微細化・高機能化するための次世代レーザーの3領域である。これら3領域は、それぞれの技術領域において、十分な研究の蓄積を有している。本事業の創設趣旨を踏まえて、産学連携による最適な研究拠点体制のもと、我が国の新たな競争力のある技術体系とそれを支える人材育成基盤を創っていくことを強く期待している。また、基礎基盤研究については、Flagshipプロジェクトと適切に連携し、相補的に、かつ研究の進展に応じた柔軟な展開を図り、新たな技術シーズの創出を期待している。

  PD、採択課題の関係者においては、今後、これらを十分念頭におき、研究開発課題を実施してもらいたい。ガバニングボードは、研究開発課題の実施状況を今後定期的に聴取しつつ、社会・産業構造の変化の流れを見据えて、本プログラムの事業運営を行っていく所存である。

以上

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