スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議(第18回) 議事要旨

1.日時

令和2年8月5日(水曜日)15時30分~18時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

1.  SSH事業の目指すべき方向性について
2.SSHにおける評価について
3.SSH成果の普及・啓発の在り方について(国・管理機関・指定校の役割の考え方)
4.経費支援の在り方について
5. その他

4.出席者

委員

荒瀬委員(途中退出)、菊池委員、重松委員、末冨委員、隅田委員、千葉委員、西岡委員

文部科学省

名子教育課程課課長補佐、小田人材政策課課長補佐、萩尾教育課程課係長、伊藤人材政策課係長、榊原教育課程課係員、中島人材政策課行政調査員

科学技術振興機構

大槻部長、大山課長、石黒調査役

5.議事要旨

○運営規則に従い、会議を非公開とすることとなった。
○事務局より、資料について説明が行われた。
それに関連して以下のとおり意見交換が行われた。

【主な議論】

(SSH事業の目指すべき方向性について)
・「『普通科等も含めた』科学リテラシーの育成」という部分は、文系を意識しているということであれば、それが分かるように記述を修正した方がよい。

・「質の高い課題研究」という言葉が、課題研究のやり方の質が高いのか、生徒が研究した中身などの質が高いのか、何を指しているのかわかりにくい。
→単なる調べ学習ではないというのがまず前提としてあって、その上で、客観性・定量性や、しっかりした論証など、一定の質が担保されているということをイメージしているので、表現ぶりを少し正確にしたいと思う。

・普及・啓発の取組として「『課題研究』における優れた先進事例の提供」とあるが、「優れた」としてしまうと、優良モデルとして推奨していると受け止められる恐れがあるので、違う表現に修正した方がよいのではないか。
→「先進的な実践事例」などに修正したいと思う。

・SSHが開始された際には、先進的な理数系教育ということが理念としてあったが、単に「理数系教育を中心とした教育課程の開発」という記述だと、その理念が入っていない印象を受けた。
→先進的理数系教育を実施していることが明確に伝わるような表現に修正する。

・「『課題研究』における優れた先進事例の提供」の部分が、「分析手法の習得」から始まるが、分析は調査の一部であり、また、順序として、テーマ設定、調査手法の習得、主体的な活動を引き出す支援の在り方という流れで並べた方がよいと思う。

・「学校運営や探究の指導法に関するノウハウの発信」とあるが、指導法と言ってしまうと個々の授業のみを指している印象を受ける。学校全体のカリキュラムの開発などもあると思うので、表現を検討いただけるとありがたい。

・「各指定校における有効かつ客観的な評価基準の設定」とあるが、客観的な評価基準を設定することは簡単ではないと思われるので、「有効な」のみにとどめておいたほうが現実的ではないか。

・指定校の教材やノウハウが他校に活用された際に、成果が引用されたという情報を収集して、指定校が発信すれば、客観的な成果にもつながるのではないか。このような、他校の優れた教育的手法等を活用する文化をSSHには率先して作っていってもらいたい。

・まずSSHの成果のアピールが大事だろうと思っている。科学技術人材の輩出や、少子化にも関わらず人口当たりの研究者数を維持していることは、おそらくSSHの働きによる部分もあるだろうし、学習指導要領に対するSSHの貢献も非常に大きい。これまでSSH事業全体でしっかりと成果を収めてきた上で、1期から5期以降までの扱いを戦略化していく、という書き方にする方がよいと思う。

・女性研究者あるいは女子の科学技術人材が非常に少ないという日本の構造的課題に対して、SSHがどのような貢献を果たすのかについて言及をしてもよいのではないか。

・中高連携した取組で非常にうまく成果を上げている高校がたくさんあるので、例として挙げて検討していただきたいと思う。

(SSHにおける評価について)
・運営指導委員会は、現在、学校に対する助言機関であったり、応援団であったりしているが、客観的な評価ということも大きな役割として果たしていくべきではないか。

・SSHにおける評価に期待されることとして、新規に指定を受けようとしている学校についての記載がないが、そうした学校にとっても非常に参考になるものだと思う。

・高校にとっては、学校運営の中からSSHだけを切り分けるのではなくて、その高校としてどういう学校運営にするのか、あるいは具体的に管理機関がどのように高校に対して指導をしていくのかという点では、一体のものだと思う。スクール・ミッション、スクール・ポリシーという言葉を使いながら、全体の高等学校教育改革の中でもSSHが位置づけられているということが明確になるようにしていただいたほうが良いと思う。

・SSHは、採択した事業が計画どおりに執行されているかという形で評価されているので、その分、執行のゆとりを関係者から奪いやすい構造になっていると思われる。SSHが、先進的な理数系教育を切り拓くための事業であり、そのために成果を上げてきたとすれば、学校側にイノベーティブな部分を残し、学校裁量を意識して確立していかないと、これ以上の進化は望めないと思う。特に4期目以降の評価においては、そのような部分を意識する必要があると思う。

・分散型リーダーシップが機能しているほうが、学校全体がうまく回るというのが近年の教育経営学の定説の一つとなっている。現在の中間評価等では校長のリーダーシップが意識されているが、トップリーダーシップ、ミドルリーダーシップ、またそれぞれのセクションでの分散型リーダーシップが機能しているかどうかといった視点をもった表現に少し改めていただくと、SSHを育てるという方向につながると思う。

・スクール・ポリシー、スクール・ミッションを、形骸化せずに全高校に広げていく際には、SSHのような蓄積がある学校からの発信を行ったほうが良いと思う。教育活動とマネジメント全体を一元化しながら、評価し、改善し、支援につなげていくというモデルの確立を、SSH指定校から意識して発信することが大事だと思う。

・教育活動に関して言うと、探究的なものを主軸としながら、教科教育や特別活動など学校カリキュラム全体の改善と、科学技術人材の育成というミッションをどう整理すればいいのか方向性を示していただくとよいと思う。

・管理機関が指導・助言する形よりは、むしろSSHのエッセンスを都道府県レベルに普及する取組の推進や、SSHが成立するような条件整備の部分での管理機関の支援というような形を重視していただいたほうが現実的であるように思う。

・評価ガイドラインの策定に当たっては、中間評価の章立てを活かしながら、その中に要素をどう織り込んでいくかという整理を改めて行うとよいのではないか。一方で、単に評価というと結果のみに着目されるように思われるが、むしろ改善するための指針にしてほしいので、評価ガイドラインという名称については検討が必要ではないか。

・学校を評価する際に、その学校がもつ夢や可能性も含めて考えるということも必要ではないか。

・管理機関には、指導行政的なことだけではなくて、人事も含めた全体としてどういうふうにSSHを応援していくのかという観点をもちながら関わっていただくと非常にありがたいと思う。

・学校のネットワーク化とも関連するが、そのネットワークの中で経験や知識がどれぐらい他校で有用なものとして活用されているかは、ネットワークの評価としては非常に大事である。イギリスではよくツールキット開発と言われるが、定量的・定性的なエビデンスによって教授法の実践を積み重ねていき、これを他校に共有していくことで、全ての学校の科学教育のベースが上がっていく。この開発の最初の段階は先導的な学校の蓄積であり、その中から何が参照されて、どのような効果があったか、フィードバックが蓄積される仕組みがあるとよいのではないかと思う。

・オンライン化することによってログが残せるので、相談体制や評価など各校のプロファイリングをオンライン化していき、高校のプロファイルや文科省、管理機関、JSTからの指導やアドバイスのログが残る形で各高校のデータがあると良いと思う。

・学校が、どこまでは達成できていて、どこからうまくいっていないということをちゃんと自覚できていれば、そのことをプラスに評価し、それをどう乗り越えているかという、その進化のプロセスのほうを評価していただきたいと思う。

・県を越えた交流等については、SSHの先生方がありがたいとおっしゃっているので、論点の中に位置付ける必要があるのではないか。

・国が主導的に引っ張っていくのではなくて、管理機関も含めて、各地域あるいは都道府県単位へ分散型の国全体のマネジメントの形で波及していくのかということが、この事業全体として問われていると思う。それをうまく回すために、PDCAのモデルとしてのガイドラインを作っていく必要があると思う。

・指定校から独自の評価指標の提案があると良いと思う。こちらが枠組みをつくって、それに対してではなく、こういう観点で評価してほしいという提案をうまく受け止められるような仕組みも必要ではないか。

・評価が人材育成にどうフィードバックされているのかということがなかなか見えない。評価のガイドラインを通して人材育成というものにうまくつなげていけるような具体性があるものにしていければと思う。

・ノウハウがどんどん蓄積されるような仕組みをつくるべきだと思う。それが事業を続けていく価値を高めていくことになると思う。各指定校が同じようにつまずいたり、疑問に思うようなことについてSSHのwebページにQ&Aがあると良いと思う。

(SSH成果の普及・啓発の在り方について(国・管理機関・指定校の役割の考え方))
・成果普及に関して、管理機関、教育委員会ではどういうシステムができてきているか知りたい。

・普及に関して、コンテンツを出すだけではなく、SSHの評価にも利用できるよう、論文の引用数のように、そのコンテンツがどこで使われたというエビデンスがホームページに記録されるような文化が必要。また、それが可能となるような仕組みづくりが必要。

・大学教員が県を超えた交流のつなぎ役になっている側面もあるので、県を越えた学校間連携を大学が仲介しながら行うというイメージを出すと良いと思う。

・規模が大きい事例を集めている感じがするが、規模は非常に小さいけれども、うまくやっている高校もあるので、規模感で分けると、初めての高校や、小規模校の参考になると思う。

・コンテクストが似ている高校の取組を参照するというのが基本になると思うので、所在地や専門高校、男子校、女子校という観点で探せる仕組みがあると、より取組が進化しやすく、新規の応募もしやすくなるのではないかと思う。

・SSHの成果を、SSHの中で閉じたものではなくて、他の普通科高校や専門高校も含めてできるだけ全国的に成果普及するような仕組みになると良いと思う。

(経費支援の在り方について)
・理振法による補助をもっと積極的に活用してもらう必要があると思うが、教育委員会が半額を負担する必要があること、帳簿の整理を行う必要があること等が障壁になっている。

・理振にも関わるが、資産台帳の適正管理ができていないことについて、SSHの場合、学校会計の中で恐らく別会計扱いにされていて、予算執行や消耗品費・備品の台帳が別のファイルになっている高校が多いと思う。会計管理の一元化や可視化、見える化について、特に高校内のミドルリーダー級以上で共有していく体制が無ければ解決が難しいと思う。
→理振については、学習指導要領改訂に伴い、まず義務教育の方で、補助金交付要綱を改正したところ。今までは、国費で買ったものについては、県の方で持っている資産台帳と別に作られていて、それを提出させる形になっていたが、今後は、県で持っているものと共有してよいと説明しており、今後、高校についても同じようにできないかと考えている。また、地方財政措置の中で措置するものと理振補助で購入するものを整理したところ。

・オンラインによる連携強化のボトルネックとして、ハード面で公立学校の通信回線の整備が遅れている。また、高校からの発信に関して教育委員会が二重三重に規制をかけているところもあるので、ソフト面の整備に関してもSSHの予算が割けるかどうかについて、方針があると良いと思う。

・生徒のパフォーマンスや作品、実演などをデータベース化する上で、生徒たちの個人情報の扱いについてまだあまり共通理解されていないと思うので、議論していただく必要があると思う。

・エンブレムを与える認定校に対して予算は出さないということだが、せめて旅費等の支援がないと、負担ばかり大きく名誉だけということになるので申請が出されないのではないかという印象を受ける。

・予算執行の具体例を見ると、旅費、交通費、印刷費が大きいが、ポストコロナ、ウィズコロナを考えると、旅費の部分は減ることが前提になると思われるし、ペーパーレス化していくと思うので、予算について新しい使い方を議論しておいたほうが良いと思う。

・オンラインの時代に直接会議に出席しないと謝金を出せない組織もある。SSHではオンライン参加を前提として謝金を出せるようにするなど、事務手続をアップデートしていくことも考えられると思う。

・旅費については、留意点のリストがある程度示されると、安易な使い方が避けられると思う。

・生徒の研究テーマが分かってから機器を購入するという高校があるが、そうではなくて、高校や国の方で、どのような機器があって、どのように使うことができるのかということに関してしっかり生徒に教えていくことも必要だと思う。課題研究に最低限必要な機器・設備もあると思うので、それは生徒に言われて購入するのではなく、学校があらかじめ購入することも必要だと思う。

・高校のSSHのwebページの中に、機器の使用方法などの説明が書かれた、生徒向けの機器リストのようなページを設けることを高校に求めると良いのではないかと思う。

・適正な扱い方を指定してしまうと、そこからはみ出せなくなってしまうので、機器に関しても、目的と条件を満たしていれば、こちらが予定していないものでも使える可能性があるという余地を残しておいていただきたいと思う。

○最後に、事務局より今後の開催スケジュールについて説明があり、閉会した。

以上
 

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科学技術・学術政策局人材政策課

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