スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議(第17回) 議事要旨

1.日時

令和2年7月20日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

1.  SSHにおける評価について
2.SSH事業の目指すべき方向性について
3.実践事例集(案)について
4.その他

4.出席者

委員

荒瀬委員、菊池委員、重松委員、末冨委員、隅田委員、千葉委員、西岡委員

文部科学省

奥野人材政策課長、名子教育課程課課長補佐、小田人材政策課課長補佐、萩尾教育課程課係長、伊藤人材政策課係長、榊原教育課程課係員、中島人材政策課行政調査員

科学技術振興機構

大槻部長、大山課長、石黒調査役

5.議事要旨

○運営規則に従い、会議を非公開とすることとなった。
○事務局より、資料について説明が行われた。
それに関連して以下のとおり意見交換が行われた。

【主な議論】

(SSHにおける評価について)西岡委員よりご説明
・SSHの取組が学校全体に広がり、人文科学や社会科学系の課題研究もたくさん行われているが、理数系に関わる課題研究とそうではない課題研究をSSHとしてどう評価するのが良いのか悩ましいと思う。

・今まではSGHとSSHのように文系、理系で分けていたが、境界領域が増えてきており、文理融合が問われていることからも、SSHにおいても人文社会系の探究もぜひ応援してほしいと思う。

・評価コストがかさみ過ぎて、学校教育活動自体が阻害されているというのが、高校だけではなく日本の学校現場の実情だと思う。SSHは文科行政においてのモデル事業的な意味合いもあるので、この説明責任を果たしながら、いかに評価を合理化・軽量化していくかということを意識しなければならないと思う。

・パフォーマンス評価のような直接評価の能力は日本の中等教育ではかなり弱く、直接評価を客観テストの評価結果と適合させながら、教師の評価能力自体を成長させていくようなモデルがほとんどない。また、パフォーマンス評価や教育評価が学校評価と結びついていないためにPDCAが回ってない。SSHは恐らくそれらを先導的に試行できる政策領域の一つだということも意識しなければならないと思う。

・個々の生徒のパフォーマンス評価を事業評価の中で使うというのは、確かに非現実的だとは思う。ただ、報告書に載っている膨大なアンケート・データよりは、教員が実際に生徒たちに与えているワークシートを報告書で見せてもらったほうが、わざわざ報告書用の原稿を作る手間が省けるだろう。また、専門家による学校訪問など、学校の評価活動を支援する体制が事業としてあってもよいのではないかと思う。

・設置形態を超えた成果の共有やネットワークの展開の取組を、特にミドルリーダー層以上の教員がしていくことが、公立、私立の双方にとって学び合いになると思う。

・審査の観点の中に成果公開を入れることにより成果の共有が進むと思う。

・SSH事業の検証・改善について、例えば近隣の中学校も調査の対象にして、広域でその地域の中学校にもいい影響を与えているかなどのデータが出てくると良いと思う。また、大学の追跡調査において、生徒だけでなく大学からも何かフィードバックが欲しい。それらがうまくつながることにより、長期的に効果があるという結果が出ると思う。

・本来、何のためのSSHだったのかということの整理を改めてする必要があるような気がしている。現場ではSSHという権威を取れるか、取れないかのような話になってしまっている。スクール・ミッションとかスクール・ポリシーというのをどのように打ち立てて再定義するのか、何のためにSSHの指定を受けようとするのか、あるいは、SSHのみならず日本の高等学校教育を質的に向上させていくためにどういう意味があるのかという、根本に返って何のためにこういうことをやっているかということを、教育委員会と学校自体に対して問うことで、相当問題が解消できるような気がする。

(SSH事業の目指すべき方向性について)
・高度な学習や先端的な研究の先取り的な取組や、多様な課題解決学習や研究における大学や地域との連携による広がり、あるいは国際的な協働など、才能教育で行われてきた特徴的な取組について、ある程度方法論としてもう少し一般化した形で学校教育に広めることができると思う。

・SSHは女子生徒が非常に活躍しているというのが大きな特色だと思う。女子生徒が活躍しているのをどんどん生かして伸ばしていくという点も強調してもよいのではないか。

・個別最適化の議論の中で、ややもすれば、ドリル学習と探究だけやって、教科を深く学ぶことやパフォーマンス課題のような学習が抜けてしまうのではないかという危惧を感じるので、その点もきちんと柱に位置づけていただけるとありがたい。

・AIによるドリル学習や企業が売っているパッケージ化されたPBLをやらせておくといった、企業が学校を市場化していくという流れにはあまり乗らない形で、SSHをデザインいただけるとありがたい。

・個別最適化されなければ受け止められないということでは、これからの社会、生きていく上で非常に困る。広く賢い市民を育てようというのが一番大事だと思うので、そうした視点を忘れないように個別最適化については議論する必要がある。

・文系のみに係る取組への経費支援をSSHの枠組みにどう落とし込むかということについては、なお一層の丁寧な議論が必要である。

・SSH生徒研究発表会において、これまで発表者と審査委員の間で非常にクオリティーの高いやり取りができていたが、今回のオンライン開催では、それが非常に実現しにくくなっているのではないかなと思うので、何らかの方法で実現できると良いと思う。

・高大接続に関して、実際に高校で課題研究に取り組んだ生徒たちが大学に入ったときにも課題研究ができるような仕組みがあると良いと思う。

・ポストコロナにおいて、県や地域によって様々な施策が違っており、評価を一律にできる部分が思ったより少ないと思う。SSHにおいても審査あるいは指定を受けた後で、学校の独自性をどれぐらい担保するかを議論する時期にきているのではないかと思う。

・オンラインコミュニケーションについて、画面の中で自分の意見を堂々と言う高校生もいるように、リアルにできないことで阻害される面ばかりではなく、リアルとは違ったよさも出てきていると感じているので、このような状況でできる方法を考えるのが良いと思う。

・社会から認知されるということについてどのようにSSHが社会に浸透しているのか、方向性として何か具体的なアクションが必要ではないのか、何よりも国民に対してSSHの成果がちゃんと還元できているのかというような問題も含めて、さらに今後、議論できればと思う。

(実践事例集(案)について)
・長期的に取り組んできた高校は多くの蓄積があり、これから応募しようとする高校にはとても手が届かないイメージになってしまっているかもしれないので、理想形とミニマムを区分けして御紹介いただく必要があると思う。

・先生方や生徒たちにとって、こういう発表をするのがいい、こういう質疑応答が期待されている、といったことがわかる教材として使いやすい動画などを載せた、オンライン上で情報共有できるサイトづくりなども視野に入れてもいいかなと思う。

○最後に、事務局より今後の開催スケジュールについて説明があり、閉会した。

以上
 

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