令和5年度「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」調査項目等に関する検討会(第1回) 議事要旨

1.日時

令和4年11月10日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議により開催

3.議題

   (1)令和5年度「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」調査項目等に関する検討会の開催について
   (2)「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」の概要について
   (3)調査票の検討について
   (4)分析手法の検討について
   (5)その他

4.出席者

委員

嶌田座長,富澤座長代理,川上委員、両角委員,山本委員

文部科学省

小野山研究開発戦略課企画官、中込研究開発戦略課専門職、中島研究開発戦略課係員

5.議事要旨

議題1

  
   事務局から委員および事務局の紹介が行われ、運営要領につき了承された。
   審議を公開とするか否かについては、議題の内容に応じて都度判断することとした。
   また、運営要領に基づき、委員の互選により嶌田委員が座長に選出された。
   加えて、嶌田座長の指名により、富澤委員が座長代理に決定した。

 

議題2


事務局から資料に基づき説明が行われた。議論のやりとりは以下の通り。
 
嶌田座長:
研究や教育等の業務の定義について、教員評価の際にも同様なのだが、またがるような活動をどちらに含めるかといった議論がある。また、入試業務はどこに含まれるか。大学院入試も学部入試も、意外と時間を取っているようにも思われる。
 
小野山企画官:
入試自体は明確には示しておらず、学内事務のところに入っており、聞かれた場合にはそのように答えている。本調査は日常的な活動を聞くもので、入試については大学によって違うところもあるが、季節的な業務であることもあり、明示的に書く業務ではないと考えて記載していない。聞かれれば、学内事務のところに入っていると思うが、記載される方の判断で書いていただくことに今はなっている。これまでも同様の問い合わせがあったりもしたので、今後明示的に記載することも検討したい。
 
嶌田座長:
入試の他には、FD (Faculty Development)、教員研修もしっかりと業務であると言っている大学もある。定義には自己点検評価という項目もあるが、FDが校務なのか、教育(改善)なのかという点もある。教務委員会などで教学マネジメントを行っているが、これが校務なのか教育なのかということは議論が分かれる。
 
両角委員:
その他に入れたい感じもするが、「教育方法に関する研修の受講」は教育活動に含まれているので、教育を改善するためのものも教育活動にいれるという考え方になるのだと思う。
 
 
川上先生:
1つ目、大規模な大学には附置研も数多くあり、それを考えると、学生を直接持っているところと持っていないところがあり、持っていないところでは教育の責務が少ない。その場合、そもそもの分母も変わる。
2つ目、大学院大学の扱いも一緒でいいのかという点もある。
 
富澤座長代理:
1つ目については、研究所や研究センター、そういったところは実態を答えてもらうだけなので、教育活動が少ないところは回答としてゼロという回答もあり、そこは想定内。
2つ目は、昔からこれでいいのかと考えていた部分もあった。博士課程の学生への研究指導は研究活動という整理だが、この理由は「アウトプットが何か」という観点から考えている。博士課程学生への指導は論文というアウトプットにつながるという考えから、これを研究と捉えているが曖昧かもしれない。大学院生相手であってもそれが講義であれば教育活動。この分類表を20年前に作るときに携わったが、先行研究もあり、それを踏まえて作っている。このような区分を変えるのも怖いという面もある。
 
小野山企画官:
医学部は特に様々な形態もあり、また分析的にも特殊な割合の構成があったりもするので、検討事項2で分析も含めてご議論いただければと考えている。
 
嶌田座長:
昔から博士への指導は研究であるが、修士・学部生への講義は教育という仕切りでやってきている。分かるような、分からないようなという印象もある。
 
山本委員:
研究活動と研究に関わる社会サービス活動は、両方とも研究であるということでよいか。研究に関わる社会サービス活動は教育に関わる社会サービス活動との境界線が難しい。
例えば、研究に関して講演してくださいと言われた場合などはどちらかになるか。明示的に書くのも一つの手かもしれない。
 
 
嶌田座長:
社会サービス活動は、研究や教育の一部であったりすることもあり、教員評価の観点からも難しい。社会サービス活動を教育と研究に分けるところにどのような意味があるのか。
 
富澤座長代理:
研究に関連する社会サービス活動については割と明示的であり、調査が始まった段階ではこれが良かったと思う。URAや教員の評価をやっている方の意見は重要。
 
嶌田座長:
短期的にどうするかというより、今後どうしていくかという観点だろう。
社会サービス活動自体がやや漠然としているので、このように切り出すしかないが、どこかの時点で考えていく必要もあるかもしれない。調査の連続性などの関係もあり、しばらくはQ&Aなどで対応ということになるのかもしれない。
 
両角委員:
FTE研究者数を出す時には、「研究活動」だけとの理解でよいか。
 
嶌田座長:
最終的な純粋な目的はOECDへの数値の提供のためにそのような計算をするが、現在はそれだけではなく様々な使われ方をしている。
 
両角委員:
報道などで、研究時間が減っているという文脈もそのような狭義の「研究活動」でよいか。
 
神谷課長:
OECDに報告するFTE係数という意味では、純粋に研究活動のみを研究としているところだが、国内における統計において、社会サービス活動をそれぞれ、研究活動と教育活動に含めている場合もある。
 
小野山企画官:
データの使い方として様々なものがあるが、Q&Aなどで対応していくこととしたい。
 
議題3
事務局から資料に基づき説明が行われた。議論のやりとりは以下の通り。
 
両角委員:
調査可能なものというところで研究時間を考えるとき、授業期間中であれば授業や学内業務に集中しているため、そこで研究時間が減ってしまうのはある程度は仕方のないようにも思う。最近の状況はメリハリがなく、長期休暇中であっても様々な学内業務があり、入試もそうであるし、サービス活動などがますます増えている状況。例えば、米国の大学であれば9か月は専念するけど3か月は自分で自由に使えることなどがある。日本では本来であればもっと研究を集中してやるような期間・時間さえも浸食されてしまっている。
研究時間について論じる際に、時期による濃淡も考慮して聞けたらいい。長期休暇中や、サバティカルの話など、集中できるかどうかが分かるように聞くのもありだと思う。
 
会議削減も大事だが、議論すべきことは減らないため、一定の管理職や役割を担うべき職員の方が担いつつ、一般教員については減らすといったメリハリが大事。立場によっては増えることもありうるし、普通の教員は減ってもいい。全体として減らせばいいといった話でもないと思うので、そういったことが把握できると良い。
 
URAやサポートについては、各個別の研究室で雇うというよりも大学として雇うケースが多いので、自分の研究室を補佐する人の話と全学的に配置されている人の話は違うため、研究室の効率性みたいな話とは次元の違う話のように感じる。それら両方に課題があるのではと思っているが、現在の聞き方だと一緒になっている。
 
授業負担について聞くのも良いと思った。私たちは教員調査するときに聞くのだが、ここは珍回答が続出するところであるため、しっかりとした定義を書いておかないと適切な回答が出てこない危険性がある。講義数と書いてあったが、日本の大学教員は講義というよりゼミが講義と同じくらいの数あるため、ゼミが教員の負担になっているという話が我々の調査でも出ている。それを含めた上で、授業時間を聞くと良いのではないか。
 
学内会議も、私自身が当たり年になっていて多いためか、月に何時間かと言われても分からない状況。週当たりくらいで聞くのが現実的かもしれない。
 
コロナの影響についても色々あり、それを把握したいという意図は理解するが、かなり時間も経ってきてなかなか把握するのは難しいという印象。
何がコロナの影響なのか、時間の制約だけではなく、活動の制約もかかっている。むしろ最近の電子ジャーナルの高騰であったり、海外渡航費の高騰であったり、様々なことが絡み合って研究活動に影響を与えているのが実態。
コロナだけの影響をどこまで捉えられるかが分からない。むしろ現在様々な影響が出てきているが、それがコロナの影響なのか、電子ジャーナルや海外渡航費などによるものか、そうした様々な影響の原因の一つの選択肢として、コロナという一要因があるのではないかと考える。
 
嶌田座長:
オンとオフが不明瞭なのは、どこの大学も同じような状況で、サバティカルなども取れない。
会議も同じで、メリハリが大事。学部執行部に入ったら学部執行部で会議をやるなどして、それ以外の方は研究をしっかり、といった形が良いのかもしれない。できる先生ほど、そうした執行部に集まってしまう。そうした悪循環が発生している。
URAをどのように使うか、大学院生にどれだけ動いてもらえるか。昔と違い、彼らの動いてもらう時間的な状況も様変わりしており、そうした影響も大きい。
コロナの影響も同じ。研究時間が減ったとなった時に、それがコロナの影響かどうかを判断するのは難しい。世界自体が変わってしまっていて、我々が欲しいのは、次にどうしたらいいかということ。それを考える知見が欲しい。聞き方を上手くしないと、当たり前の回答しか得られない。
 
富澤座長代理:
研究時間が集中できるかという観点だが、かつて政策レベルで議論されていたことがあった。研究時間の質という言い方をしていた。調査で時間を測ることも重要だが、質を知ることも大事。そのことについて調査する方法を検討していたこともあったが、結局、そうした「質」を測ることは難しかった。ただ、「意識」の方で聞くというのはある。「集中できない」であるとか、「分断されてしまう」などの聞き方はあるかもしれない。
学会に関する事務作業については、他に多くの調査項目がある中で、相対的にこの項目を外してもいいかなと思っている。年間で聞く案になっているが、答えるのが難しい。自分で実際に考えてみたら難しかった。月に何時間なら答えられるし、学内会議のところも月で聞くなら、これをそろえて聞くのが良いかも。人によって違うのかもしれないが。
学会は忙しい人もいるが、ほとんどの人は1年に少しだけということだろう。1か月で聞いてもらってもその時間がかなり少ない人は、「ない」と回答してもらってもいいのではないか。
 
嶌田座長:
前回調査の際の検討会の時にもあったが、国立大学法人化以降、労働三法が適用されてから、不夜城のように実験するといったことが減り、健全な方向にきている。しかし、実は夜は集中して実験ができたりする時間帯でもあったりした。最近は働き方改革のこともあり、馬車馬の様に研究をする姿も減ってきている。そのため、いつ集中して研究をしたらいいのかといったこともある。
文献が以前より直ぐに手に入るようになったり、設備が良いものを使えるようになったりして、純粋に時間が減った分の中に「いい意味で減った」分もあると思う。ネガティブな部分だけではなく、効率化されて減った分もある。
週単位・月単位での質問項目、これは難しい面もある。大学の会議は月サイクルでやっているような気もするので、週だとやる週とやらない週があったりするかもしれない。
 
川上委員:
URAの件は、いい聞き方だと思った。私は自分の教室で秘書室のうちの一人をURA職として育てようとしている。事務作業や調査など、色々やってもらっていて、大変助かっている。そうした人たちが、今回の項目だと分かれて聞かれていて良い。
コロナの影響は、本当に難しい。理系の実験系の分野は実験室に行かないとできない一方、人文社会系や情報系などのデータ分析系は在宅でもVPNをつないでできたりもする。
研究に与える影響を測定することに意味があるのかどうか、というかそれをどのように解消・解決するかが難しい。
また、現在は、密を避けるために実験をやりませんという大学もないと思うので、今後どのような示唆を与えるのかをもう少し意識しても良いのでは。
 
山本委員:
研究論文を増やす目的、分析のためにということで、もちろん時間も大事だが、研究費という観点は大きな要素なのではと考えている。大型の研究費は取るのに時間がかかって、報告書やマネジメントにも時間がかかるため、取ったはいいものの研究が進められないということになったりする。こうしたことも浮き彫りにできたらと思う。
URAのところと同じく、6番の事務スタッフのところは、大学組織として雇っているところをどう含めるかという意見があったが、研究支援課などの人数は、確かに何人かと問われると難しい面もあるので上手く拾えるように聞いてほしい。
教育業務について、やはり文系だとゼミの時間が多くあり、その他の分野でも研究室や個別での学生への論文指導などの指導がある。コマ数以外でも時間がかかっており、それも含めた方が良い。米国の大学とも比較すると、教員がやらなければいけない教育の時間が多く、TAの活用をどの程度出来ているか、博士課程の学生とかも、今は研究の方で時間を聞いているが、教育の方でもどれだけ活用されているかというところも聞きたい。
非常勤講師を雇えているのかということも聞きたい。あとはDX、試験問題を作らなくてもランダムで出てきて、採点の負担が減るなど、そういったものをどれだけ活用しているかということも、時間確保のためには影響のある要素。
月で時間を聞くのか、年で時間を聞くのかについては、もともとの時間を聞く部分が一日あたりの時間数を聞くような状況で、分析の際もその中で占める割合を計算しているものと思うので、一日当たりの時間に換算しやすい聞き方、あるいは一日あたりでダイレクトに聞いてしまってもよいのではとも思っている。
コロナについて皆さんおっしゃる通りかと思うが、コロナによって制約を受けた部分を知りたいのか、あるいはコロナの研究をしなければならなくなった方もいると思う。そこで研究時間が増えた場合もあったりするので、そこの識別をするのは難しいように感じる。
 
嶌田座長:
前回の調査で、研究費獲得にかかる時間の調査があったように思うが、結果はどのようであったか。
 
事務局:
前回の15, 16 という項目で聞いていたが、結果としては、職務時間の1.7%という数値だった。思ったより少なかったという印象。
 
富澤座長代理:
全体の1.7%、研究活動時間の5.0%とかだったと思うが、私はこの数値は非常に妥当だったと考えている。日本の教員全員を対象母集団として聞いている訳であり、その中には競争的資金を一度も取ったことない人も含まれている。日本の教員全ての中で考えれば、取っていない人の方が多い。
この調査項目を入れるときに、このような聞き方でいいのか不安だったが、今では上手くいった聞き方だったと考えている。今回の他の項目の聞き方にも参考になると思う。
 
小野山企画官:
研究費の項目については、15, 16の2項目で前回も聞いていて結果も出ているところではあるが、その結果と、実際に研究者の方が感じられる負担感との間に差がある。
そこが一体何であるかは分析しきれていない。公表資料にはデータを載せてはいるものの、政策的な議論としてはどう使ったらいいものなのかと悩んでいるところ。
競争的資金を取っている人のうち、どれくらい時間を取っているかなど、そういう聞き方なら見えてくるものもあるかもしれない。
 
嶌田座長:
URAを入れる際の議論も似た話があって、まず研究費獲得の部分にURAを充てたところ、URAを投入したところから外部資金獲得が増え、他の大学もURAを同様に投入しようという機運が高まった。その結果、皆同じになるとパイの食い合いが起こって、元と同様の割合に戻る。今度は入った研究費をどのように使うかという研究者の支援にURAを投入していくことになる。獲得資金であれば成果も見えやすかったが、研究費をどのように使うかの支援は成果が見えにくい。お金がたくさんあり、知見もあるURAがいるところは助かるが、例えば地方大学などであれば、そうしたところにURAを配置できないこともあったりして、困っている先生が実際に助けてほしいところ、研究時間を確保できるようなところに配置できない状況なのでは。平均してしまうと、書類作成もそうなのかもしれないけれど、もらっている人とそうでない人を分けたりして分析してみると、政策的な議論がしやすいのではと考える。
DXに関してはどうか。コロナとDXは親戚の様にも個人的には思う。コロナがなければあそこまでオンラインの授業は皆やる様にはならなかったかと思う。資料のデジタル化などもあったと思うが、研究にDXは有効か。
 
山本委員:
研究にDXはもちろん使われていると思うし、コロナでオンライン会議がやりやすくなった面もあるが、以前から行われていたところもある。むしろDXの効果があったのは教育の方かと思う。大学教育の方でDXが普及して、最初はデジタルの資料を作らなければいけないので時間が増えたけれども、それ以降はかなり減ってくる可能性がある。
 
嶌田座長:
顔見知りの研究者とはオンラインでミーティングができるという意味で便利になったが、対面の学会などがないので新しい知り合いが増えないという印象。同じ釜の飯感がない。人間関係の深さのようなものを構築できないところが、オンラインにはあると思う。学生たちの生活実態について解析などもしているが、2020年のコロナ以降に入学してきた、オンラインがメインだった学生は友達関係の構築にとても苦労していて、未だに交友関係に不安を抱えている子が多い。人間関係が構築できていれば、オンラインでもそれを維持することができるが新たな人間関係は作りにくいと思う。DXにも良い面悪い面がある。研究にもそれは影響しているように感じる。
 
川上委員:
DXの話だが、例えば、ORCID ID、research map、Web of Scienceなど、入力やチェックに時間を取られている。客観的な評価には役に立っているのだとは思うが、論文が多い研究者は対応が大変だが、全くやっていない人もいて、DX関連のことに貢献している時間には大きな差がある。
 
嶌田座長:
学内の人からも、頑張った人ほど時間を取られるのはおかしくないか、と言われている。教員評価の関係では、そうしたデータを使って行うので、入力していただかないと評価はできない。大学全体のパフォーマンスもそれで測っている。そういう意味では入力をしていただくしかないのだが、これだけAIなど流行っているので上手く活用できないのかなとは思う。リサーチマップはそうだったのかもしれないが、教員がかけなければいけない時間も多大にある。時間的には短いかもしれないが、そうした作業は面倒くさいと感じる作業。
 
富澤座長代理:
そのような観点は重要。調査で聞くときにはどのように聞くかだが、DXに関しては別の調査に任せられる部分はそちらへと任せても良いとは思う。この調査で聞くのであれば、今の基本的な考え方は、研究に関する部分を詳しく聞くということなので、まずはDXの影響があったかと聞いた後に、それが(教育活動に影響はあったが)研究活動にも影響があったかという聞き方になるのだと思う。この調査でどこまでやるのかという観点はあるので、あまり欲張らなくてもいいかもしれない。
 
嶌田座長:
研究者からは見えない可能性がある。研究室事務や学科事務の方がいるが、どこを想定しているか。
 
小野山企画官:
基本的には研究室で仕事をしていただいている人々のことを想定していて、横断的な本部部局の方々は、日常的にかかわる範囲でどれほどサポートを受けているかという考え方。現在の案の聞き方で適切に回答が得られるか、分かりづらいので検討したい。
 
富澤座長代理:
この項目については考え方を整理しないといけない。現在の聞き方はまだ曖昧。特に下の方の「研究者を補助した時間」の部分が何を意味しているか、はっきりしない。
 
小野山企画官:
まず人数について聞きたいことがあって、次に様々な政策を考えている時に、サポートの人員が充実していくと思うが、地方大学等でそういった人員を確保することが、なかなか難しい事情もあったりする。研究を支えているのが博士、修士、学部生みたいなところも含めて議論されており、今後の政策的議論の役に立つかなと思い、こういった項目を盛り込んだ。もう一度整理したい。
 
嶌田座長:
8ページのコマについて、最近16週の授業週を確保しにくくなってきていて、13週105分の授業の大学もあったりして、一概に90分1コマでなくなっているところもある。とある大学で実測データをみると、教育時間のうち半分くらいが研究指導というのも見たことがある。コマを聞くだけでは半分くらいしか抑えられない。
 
富澤座長代理:
学校教員統計調査をみると、週当たりの時間で聞いている。それを参考にしてみるといいかもしれない。ゼミの時間をどう扱うかという観点はあるが、ゼミを合わせて週当たりの時間はどれくらいかという聞き方もあるかもしれない。
 
嶌田座長:
コマ数・授業時間がさまざまな種類がありながら、そうした計算を調査でさせるのは困難かもしれない。
 
小野山企画官:
これについても整理したい。
 
嶌田座長:
TAによる削減効果もあるかどうか。ドクターの一部に授業をさせてみたいな話もあるが、その分楽になったというより、指導もその分するため、減ってはいないという印象。
学会事務、これもなかなかつらい印象はある。学会直後だとその印象に引きずられて回答されるかもしれない。
コロナについては、このデータを得て、その次にどうするのかという点。何を仕掛けたいのかという考えに基づいて設問を考えた方がよいと思う。また単独にコロナの影響だけを聞くことは不可能。複雑に絡みすぎてしまっており、ピュアなコロナの効果・影響だけを抜けない。どういう政策を打ちたいかという考えに従って考えた方がよい。こうあるべきという状態からバックキャストして考えた方がよいのでは。検討いただければと思う。
 
議題4
事務局から資料に基づき説明が行われた。議論のやりとりは以下の通り。
 
嶌田座長:
話を聞いていて、結局最終的に国・政府として論文を増やしたい、いい成果を出して世界の役に立ちたいみたいなところがあって、でも論文数が減っている。
おそらく絶対的な人数と、フルタイム換算の人数(研究の絶対的な時間のうちどの程度を占めているか)、いわば「人・全体的な時間・そのうちの濃密な時間(研究の質)」といったパラメータがいくつかあって、最大化したいのは研究時間。研究時間を増やせば、もしかすると良い論文もいっぱいできるかもしれない。これは他の分野でもそうなのだろうか。良い研究時間がないと論文も増えないものなのだろうか。一般的にはどうか。
 
富澤座長代理:
この調査でも論文数については聞いていて、それと研究時間の相関を分析すると緩い(正の)相関がある、研究時間の長い人が論文数も多いという、いわば当然の結果がでてくる。ただこのような分析、保健分野の話があったが、説明のあったように一見矛盾するような結果がでたという話だが、まだ分析が足りていないような部分もかなりあると思っていて、それは何かというと、保健分野はひとかたまりのように言われているが、その分野中にはいろんな人がいる。さきほど「基礎系・社会系」と「臨床系」に分けられる話もあったが、そもそも医学部だと「教員」といってもいろんなタイプがいて、そもそも教員だけで見ていることも少しおかしくて、論文は教員だけが書くわけでもなく、この調査で別途調べている「大学院博士課程」とか「医局員」が論文を書いていることもあるはず。
マクロで調べると一見矛盾するような結果にも見えるが、例えば、教員の中でも臨床をやっている人が増えたから、全体の傾向と分けて考えると違うということはいくらでもあると思う。そうした部分までわかる分析をいろんな人ができるようになったらいいが、このデータは統計データなので二次利用申請をする必要があり、分析に入るまでのデータ処理が厄介。データを入手した研究者の方はこのデータ処理のパズルを解かなければならず、分析に中々入れない。分析をいろんな人ができる仕組みを作ることが重要と思う。
 
川上委員:
臨床系の人が忙しくなっているはずで、研究時間は減っているのに論文数が増加しているというのはなぜか、というお話を聞いたときに、知り合いの教授等にも実情を聞いてみたことがある。皆、その話を聞いて「そうなの?」という反応であった。実感もなさそうで理由も想像できないという回答だった。これだと仮説が立てられないということになる。
富澤先生もおっしゃったように、そこには何らかの交絡が存在していて、このように解釈されているのかなと思う。その交絡として考えなければいけないことが、籍が臨床系の、たとえば内科系の教授や講師といったポストがありながら、その人たちがやっている研究にはいくつかのパターンがあって、6~7割の先生は基礎医学の研究(動物実験や遺伝子の解析など)をしている。1割くらいは症例報告的な、患者さんの状況を臨床系の雑誌に投稿する。残りの2~3割は、この10年ほどで明らかに増えた、データを使う研究。そうした論文を臨床系の雑誌や社会医学系の雑誌に出す。こういうことなので、臨床系の先生がやっている研究が基礎なのか臨床なのかということが、考えられる一つ目の観点。
 
二つ目の観点は、私は社会医学だが社会医学でも臨床医が学生の7割くらい。臨床から預けられているか、そもそも社会医学の大学院に入学しているか。そうした方もいるので、そのような方の扱いがどうなんだろうという疑問はある。
皆明らかに忙しくて、この2年間はコロナにより実験を伴う基礎医学研究は進まなかった研究者も多いと思う。そもそも診療で忙しい。たとえばICUや無菌状態が必要な血液内科、人工透析などの多くの内科医、外科医は、コロナを防ぐために研究室への立ち入りを禁止している大学病院もあったと聞く。その辺のことが次回のFTE調査でどのように出てくるのか、またどのように解釈すればいいのか。
簡単に聞いても解釈が難しくなるが、かといって、どのような聞き方ができるかといったアイデアが私にはあまりない。
 
嶌田座長:
医療現場を抱えているところは、かなり他分野の研究者とは世界があまりにも違う状態になっている。臨床の先生などからは、すごい時間にメールがくるので、年々働く時間が物理的に増えていっているのかと思い、そのような状態だから、研究時間割合が減っていながらも論文が増えているのだろうと思っていた。
 
川上委員:
それもあると思う。私の知り合いも、朝3時に起きて仕事している者もいる。少々異常だとも感じる。その辺の実態も知りたいところ。
 
嶌田座長:
絶対時間と割合の問題がどうなのかという点。働き方改革によれば、減らなければいけないのかもしれないが、総時間についても考える必要がある。つまりは、教員の数を増やす方向へもっていかなければいけないかもしれない。そうしたことを考えるための基礎的なデータをこの調査でとるということ。割合だけじゃない話のように思える。
 
両角委員:
同じく割合だけの話ではないように思う。二次利用申請については、以前やったことがあるが、かなりハードルが高く大変だった。
本来は多くの人がこのデータを分析できたら、今ある疑問も解消されそうな気もしている。それも含めて変えていければいいと考えていた。
 
山本委員:
もう少々分析してから検討しないと、まだつかめないような気はする。
 
嶌田座長:
社会科学系の方々的には、研究時間は減っている印象か。
 
山本委員:
減っていると思う。
 
嶌田座長:
私立大学だと、半期何コマやってくださいということが決まっている。国立大学は標準のコマ数ということがなくて、前任者によるところが大きい。
国立大学でデータを取ると、学内での担当コマ数の不均一を何とかしなければいけない事情があるということもよく聞く。研究時間をどう増やしたらいいのかといった議論については、カリキュラムのスリム化をしよう、などといったことも実施している大学もあるが、他の大学の方と話をしてみるとそれはあまり考えていないといった話が返ってくることもある。
そのため、あまりカリキュラムのスリム化、つまり教育の中でも授業の部分については、あまり障害になっていないのかもしれない。院生がたくさんいるから指導などをしないといけないし、そういう点は比較的大変なんだろうなと思う。地方大学には余りドクターも数多くいないため、院生比率が少なく、研究指導の時間は少ないのかもしれない。
研究型の大学なのか、研究所なのか、地方大学なのかみたいなところでみてみるべきで、一緒に議論してしまうと話が見えてこなくなってしまう。
かといってこのデータを皆で分析しようとすると、データの取り扱いがなかなか難しい。どうやって二次利用しやすいデータとして出すかの工夫がないと厳しいと思う。
 
富澤座長代理:
その点に関しては、思いつきではあるが、今でも研究者個人が二次利用申請をして使える場合もあるが、統計法上の縛りもある。たとえば文科省が分析する委託を大学の研究者に出すなど、そういうプロジェクトを立てるとか、そういうことをしてみてもいいかも。
これだけの調査を行って、報告書をまとめて、ほぼそれで終わりとなってしまっている。それ以上の分析ができていない。報告書ができたあとに、こういう分析をしてもいいかもと考えるもの。分析できる体制を作っていかないといけない。でないと、この調査の活用はうまくいかないのでは。
 
嶌田座長:
いいデータはあるけれど、宝の山がまだ残っている状況。もっといろんな研究者がアクセスできるようにして、皆でいろんなことをやっていくと、もっといろんなことが分かってくるのでは。また、使えるということも知らないのでは。若干の敷居はあると思うので、簡単に使えるというわけでもないが。研究者の力をもっと借りていって、知見を増やしていかないと今のままでは宝の持ち腐れとなってしまう。
 
小野山企画官:
分析の内容についても、データを使ってもらう部分についても、検討していきたい。
研究時間が増えれば論文が増えるかという点については、緩い相関はある。研究時間を通じて研究者が研究に専念できる、そのような質を上げていくことも、エビデンスベースで議論できるような参考材料としていくことが重要。
文科省も様々な施策を打ってきている中、最終的には研究の質(いいアイデア・発想)を上げていけることが目指すべきところだが、なかなかそこまで届いていない。検討材料となるように調査項目を整理していきたい。

その他、閉会
事務局より、今回の議事の概要の公表について説明。
次回の開催について連絡し、閉会。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発戦略課

(科学技術・学術政策局 研究開発戦略課)