資料5 卓越研究員制度について(骨子案)

卓越研究員制度について(骨子案)

1.背景

  • 近年、大学における本務教員に占める若手教員の比率は年々減少しており、また、若手研究者については、研究資金によって雇用される任期付きポストが増加するなど、若手研究者を取り巻く状況は、以前にも増して厳しくなっている。
  • 特に、国立大学法人については、「骨太方針2006」等に基づき、法人化後10年間で約12%の運営費交付金の削減がなされる中、各大学においては、法人化前の考え方に従って、定員削減、人事システムの運用がなされてきた。
  • 今後、各大学・研究機関において、若手教員・研究者の安定的雇用の拡大・年俸制導入等に積極的に取り組むことを前提として、国は、厳しい財政状況だからこそ、行政改革-人件費の削減が最優先という考え方を超え、我が国の国際競争力の確保という観点に立って、大学・研究機関の研究者の研究環境を維持、整備することが極めて重要である。

2.卓越研究員制度について

(1)前提条件

  • 博士号取得者が独立した研究者に至るキャリアパスの在り方は、1ポストドクター(研究資金雇用等の任期付き研究員)、2若手研究責任者(再任可の任期付き教員やテニュアトラック教員)、3研究責任者(テニュア)の3段階に分類される。
  • 卓越研究員制度の主目的は、特に2段階の若手研究者の安定的雇用と流動性の両立を担保する年俸制(無期)を導入することで、我が国を牽引する優秀な研究者の新たなキャリアパスを提示し、若手を研究職に惹きつけること。
  • このため、卓越研究員制度は、モデル事業ではなく、以下の目的を達成する人事システム改革のための制度とする。
    1 退職金しばりによる任期なしポストや単なる任期付きポストとは異なる「第3のポスト」としての年俸制(無期)を導入することで、安定的雇用と流動性の両立を担保。
    2 ピアレビュー審査と中間評価によって卓越研究員を厳選し質を担保。ホスト機関は魅力的な研究環境・処遇等の提示により卓越研究員を獲得。
  • 本制度の主要機関は国立大学法人であることが想定されることから、本制度の趣旨・仕組み等について、国立大学法人を中心としたコミュニティーにおける共通理解・共通認識の構築が前提である。
  • 今後、大学改革及び競争的資金制度改革など関連する議論の状況を踏まえつつ、詳細設計を進める必要がある。

(2)概念設計

・上記(1)の前提条件を踏まえると、卓越研究員制度としては、以下のような仕組みが一案として考えられる。

1  ホスト希望機関は、受け入れポスト・処遇等について事前公表。国又は中立的な公的機関が一覧化公開。
2  研究者は国又は中立的な公的機関に直接申請。その際、希望機関として3機関程度を申請。国又は中立的な公的機関によるピアレビューの後に、ホスト機関と調整。
3  研究者(申請者)に対するインセンティブは、テニュア相当の無期雇用が可能となるポスト獲得と、ホスト機関による魅力的な研究環境等の提示。
4 ホスト機関に対するインセンティブは、卓越研究員の受け入れによる卓越した研究の進展と、卓越研究員に選ばれることによるステータス向上。
5 卓越研究員は、ホスト機関による雇用開始時又は開始後6年程度までの適切な時期に、ホスト機関の審査を経て、年俸制(無期)に移行。

(3)詳細設計に残された論点

・今後、大学改革及び競争的資金制度改革など関連する議論の状況を踏まえつつ、詳細設計を進める上で、以下について更に検討する必要がある。

1 国による関与の在り方(スタートアップ研究費や制度導入のためのインセンティブ経費の在り方、国立大学法人運営費交付金との関係等)
2 卓越研究員の規模(産学官を含む我が国全体の人事システム改革に必要な規模)
3 卓越研究員が特定の機関に偏らないための方策(希望機関として一つ以上国立大学法人以外を記載させる、自校出身者の制限等)
4 卓越研究員の「質の担保」を実現するためのピアレビュー・中間評価の実施に必要な措置
5 中間評価における評価軸(雇用機関によるテニュア審査との関係等)、中間評価後の「質の担保」の在り方(国及び雇用機関による評価結果の処遇への反映、評価結果に基づく退出の在り方等)
6 研究分野に卓越研究員をどう割り合てるかの制度設計と中長期的に分野間の競争を促すインセンティブ付与の方法

(以上)

お問合せ先

科学技術・学術政策局 人材政策課

人材政策推進室
電話番号:03-6734-4021
ファクシミリ番号:03-6734-4022
メールアドレス:kiban@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局 人材政策課)