【資料2-3】次世代放射光施設検討ワーキンググループ(第4回)プレゼン項目3

所属:大阪大学基礎工学研究科
氏名:北岡 良雄

1.今後取り組むべき研究課題について

・想定される社会的・科学的課題及び各課題の解決にあたり、取り組むべき研究課題は何か。

 科学的課題:現状の勘とセレンディピティによる物質開発から一歩先へ
 取り組むべき課題:そのためには電子(スピン)構造・状態の「実空間」と「運動量空間」の両面からの解明と両者の結果を現実の系において学理で繋ぐことが不可欠

 社会課題:未来の安定したエネルギー保証、環境持続性の実現、新たな経済機会の創出、エネルギーイノベーション・イニシアティブ
 取り組むべき課題:1.材料プロセスの電子レベル制御
              2.特性発現構造を設計し最適方法で形成
              3.原子・電子等の複雑な相互作用がもたらす特性・機能の制御
              4.生物・植物のナノスケールでのエネルギーや情報の操作の実現、5.関係事象の非平衡化における評価と制御

2.次世代放射光施設に期待する貢献について

・今後取り組むべき研究課題に関して、次世代放射光施設に対してどのような貢献を期待するか。

 1.ナノスケール(nm)・エンジニアリングサイエンス
 ・10nm領域の精密組織構造の制御が可能にする新規高性能・高機能材料の創成
 ・構造材料、機能性材料などの材料組織複合化、アモルファス化、ガラス化による組織構造(ドメイン・テクスチャー・粒界面)と電子状態(結合形式)の10nm評価
 ・焼結体表面近傍の結晶粒を覆う粒界物質の微量元素のnm分析
 ・局所的な表面・界面の電子状態計測
  10nmX線回折:局所的歪みの評価、10nm角度分解光電子分光(ARPES)、局所的有効質量(バンド分散)の評価

 2.新機能性物質の探索(既存の手法を新しい対象に)
 ・新物質の理解のために、結晶・薄膜・表面の構造解析、欠陥など、周期性を持たない構造の観測
 ・低温・高温・強磁場・高圧などの極端条件下での測定
 ・共鳴X線散乱の利用による「原子配置」以外の周期構造の検出

 3.非平衡状態の理解へ向けて(先端光源を用いた新手法の挑戦)
 ・化学反応や生体内での機能性発現は非平衡、非平衡系の統計力学は完成から程遠い
 ・空間ゆらぎ・時間ゆらぎの観測による、不均一・非平衡系の研究
  (例)触媒表面での反応を実時間計測、光合成光触媒のMn電子状態の動的変化の観測 (関連:新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏:非平衡系における普遍法則の確立」H25-29)

3.次世代放射光施設に期待する運営の在り方について

・次世代放射光施設に対して、どのような運営のあり方を期待するか。

 ・我が国の国力となる学術・科学技術の卓越性・挑戦性・総合性・融合性・国際性を牽引する次世代放射光施設が我が国の研究力・人材力強化の拠点として必要な役割を果たすことができるように、セクターを超えた人材の活用と流動化を促進し、異分野の協奏・融合の推進、効率的なソフト・ハード両面での施設の建設と運用、および国内外に開かれた施設の共用等を検討することが必要。

 ・大型共用施設「建設と運営(経営)」のシステムイノベーション:大学等と他の機関の双方に身分を置いて、エフォート管理のもとそれぞれの機関の業務を行うことができるクロスアポイントメント制度、およびコストパフォーマンスを基本として、行政側、施設側、運用側、ユーザー側が協働して「コト」にあたる必要性。

 ・次世代放射光利活用施設:コストパフォーマンスを基本として放射光施設の階層的ネットワーク化と組織を超えた「人」のネットワーク化(クロスアポイント人事制度活用)による運営体制イノベーションの必要性。

 ・放射光施設は既存のコミュニティに固定化したものではなく、幅広い利活用分野にとって重要なツールでなければならない。ユーザーコミュニティが、既存のコミュニティの枠を超えて、未踏分野を自立して開拓していくコミュニティ提案型重点課題を提案できるように運用方法刷新の必要性。

 ・科学技術・学術の進歩と社会ニーズの変化に即応した放射光活用を促進するため、これまで、トップダウンによる様々な重点課題の設定が行われてきた。一方で、サイエンスコミュニティ側から、研究領域全般を俯瞰し、将来のイノベーションの研究シーズを、科学者の視点から発掘し新分野を創成することは、中長期的な観点から放射光の有効なり活用の開拓と高度化を進める上で、必要。

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科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室

(科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子放射線研究推進室)