「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」の見直し・運用改善等に関する協力者会議(第6回) 議事要旨

1.日時

平成26年6月20日(金曜日) 9時半~12時

2.場所

文部科学省東館13階 13F1、2会議室

3.議題

  1. 「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

委員:小林主査代理、市川委員、大島委員、中村委員、三木委員、南委員
協力者:安藤科学技術振興機構参事役、笹川日本学術振興会参事
新構造材料技術研究組合:岸理事長
理化学研究所:坪井理事

文部科学省

文部科学省:冨岡大臣政務官、川上科学技術・学術政策局長、德久総括審議官、岩瀬政策評価審議官、伊藤科学技術・学術政策局次長、村田科学技術・学術総括官、松尾人材政策課長 他

5.議事要旨

○資料1に基づき、研究不正再発防止のための改革委員会の岸委員長より、「研究不正再発防止のための提言書」について説明が行われた後、質疑応答が行われた。

【主な質疑応答】
・「理化学研究所調査・改革監視委員会」を設置して、論文検証を行うとあるが、どのタイミングで検証を行うのか。
・今回のSTAP事案のような問題が出てきたときは、その都度調査委員会を作って検証しないといけない。また、同時に、「告発対応の窓口を含む研究公正推進本部の業務」、および「研究不正再発防止のための改革委員会の提言実行」を常時モニタリングする外部委員による監視委員会が必要となる。この監視委員会は直近では、「理研の再現実験の監督」および、「2つのNature論文検証を監視」することが求められる。この監視委員会は日本学術会議の推薦による外部委員により構成されることが推奨される。
・学術会議は、第三者委員会の委員等推薦することができるので、必要な際には是非依頼いただきたい。
・理化学研究所では、本提言を、高い規範を再生するための糧として受け止め、その内容をしっかりと吟味した上で、理事長を本部長とする研究不正再発防止改革推進本部において、研究不正を抑止するための実効性あるアクションプランを策定し、早急に具体的な実行に移していきたいという理事長からのコメントを発表させていただいている。また、細胞株の保存試料の分析や、公開データに基づく解析など科学的な部分については、今、理研内外の有識者の意見を伺いながら進めているということも併せて発表させていただいている。

○岸理事長、坪井理事御退席。
○事務局より、研究活動の不正行為への対応のガイドラインの見直し案について説明が行われた後、意見交換が行われた。

【主な意見】
(「はじめに」について)
・「国費により研究を行っている研究者」が本ガイドラインの対象ということだが、例えば、国立大学等の研究者で、民間の受託研究を行っている者が研究不正を起こした場合、この対象に入るのか。
・本ガイドラインの適用対象は、文部科学省の予算等で行っている研究活動である。民間からの受託研究も対象に含めると、対抗措置との対応関係が取れなくなる部分が出てくる。
・民間からの受託研究で不正が続発し、その後機関に改善が見られなかった場合、その研究費を文部科学省あるいは配分機関に返すことまでは要求できないにしても、例えば、競争的資金の間接経費の割合を変えるということはできないのか。
・そのような機関は、文部科学省が行う履行状況調査により、研究倫理教育等が不十分あるいは規程等の体制整備ができていないとみなされ、管理条件の付与の対象になる。
・民間資金で研究をやっているとしても、その研究者が所属している機関が、文部科学省からの運営費交付金で運営されている場合、その施設や人員を使っており、国費の寄与がある。これは「国費により研究を行っている」というガイドラインの対象に入るのではないか。
・現行のガイドラインでは対象にならないが、何らかの制限はかけた方がよいため、その扱いについて検討したい。
・「はじめに」という大前提の部分と、実際のペナルティに関わる部分で、対象を変えてはどうか。ペナルティに関わる部分では、国費を使った研究活動を対象とするが、全体としては、研究倫理教育プログラムの内容にも関わるので、広めに捉えておくとよいのではないか。
・競争的資金の審査において、公的資金を使ったわけではなかったものの、不正行為を行った研究者に対して、低い点数がついたことがあった。時間的なギャップはあるかもしれないが、こういうプロセスの中でも是正されていくと思う。
・不正行為について、国が積極的に関与して、機関への義務付けを進めると、研究の自由が失われ、独創性が阻害されてしまう。そのため、なるべく研究機関の自主的な取組に委ね、国が直接関与する部分は抑制的にする必要がある。その観点から、国費が出ない研究については、研究機関及び科学界における自主的な自浄作用を優先し、それによって解決する方向で進めるべきである。国としては、案件についての公開、データベース化など公開性・透明性を高める点において関わっていきたいと考えている。
・日本が一丸となって研究不正の根絶に向けて取り組まないと、社会からの信頼を失うだけでなく、海外からの信頼も失いかねない。「はじめに」の部分は、余り対象を絞らず、一丸となって改善していくという趣旨を示すとよい。

・経済産業省や厚生労働省の出している研究費は本ガイドラインの対象にならないのか。
・本ガイドライン自体は文部科学省の所掌の範囲に限られる。他方で、政府全体の取組も重要であることから、現在、競争的資金においては、例えば、厚労科研費で不正があった場合も、総合科学技術会議がとりまとめ、不正を起こした者の各府省の競争的資金への申請制限を水平展開している。また、今回、文部科学省の新しいガイドラインでは、運営費交付金で不正があった場合についても対象にしており、今後各省庁へ展開していく必要があると考えている。

・「平成27年3月31日までを本ガイドラインの適用のための集中改革期間とし、関係機関において導入に向けた準備を集中的に進める」というところを、例えば、「導入を実効性のある運用に向けて進める」とし、4月まで何もしなくてよいと思われないようにした方がよい。

・社会の中に科学があり、社会の信頼を得て研究を行うことが何よりも大切だという一般概念をもう少し打ち出すとよい。

・不正行為の具体例として、「既発表の論文又は他の学術誌に投稿中の論文と同じ論文を投稿する二重投稿」が挙がっているが、学会の報告論文も既発表とみなすのか。理系では報告論文を学術誌の論文に使うこともあるので、「他の学術誌等に既発表あるいは投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿する二重投稿」とした方がよいのではないか。
・学会の報告論文を使用する場合であっても、問題になるのは、既発表のものを未発表として発表することであり、そこを明確化すればよいのではないか。

(「不正行為の事前防止のための取組」について) 
・研究倫理は意識の問題であると同時に、データや実験・観察ノート等の保存などテクニックの問題でもある。それを適切に表現するために、例えば、「研究倫理教育の実施に当たっては、研究活動において守るべき作法やその実現のためのノウハウ等を習熟させることが必要である」ということや、「専攻分野の特性に応じて、研究者倫理に関する知識及び技術を身に付ける必要がある」ということを付け加えてはどうか。
・研究倫理教育は、博士課程だけではなく、修士課程の学生も学ぶべきである。特に工学系では、その後企業に出て研究者として活躍する方も多いため、重要である。また、対象から公務員や会計士志望の専門職大学院の学生を除く必要はなく、飽くまで「専攻分野の特性に応じて」学ぶとよい。

(「研究活動における不正行為への対応」について)
・対象とする不正行為の定義について、審議のまとめでは、ガイドラインの見直しに当たって、捏造(ねつぞう)、改ざん、盗用のそれぞれの定義をより明確にするとともに、具体的な事例についても併せて示すことが望ましいとあったが、反映しないのか。
・本ガイドラインは、アウトラインであり、具体的な事例など分野によって異なることは、例えば、学術会議に依頼し、アカデミアの中で分野ごとに検討していただくことを考えている。

・調査結果を配分機関及び文部科学省に報告する際の報告書に盛り込むべき事項の中で、「動機」を入れるのは、告発を受けた者は不正を認めていない場合が多いことから難しいのではないか。その後の対策につなげるために、例えば、特定不正行為が発生した「要因」とすると、より客観的で対応しやすいと思う。

・研究機関が、特定不正行為以外の告発を、定義外だから受理しないということのないように、「研究・配分機関における規程・体制の整備及び公表」の部分に、特定不正行為以外についても対応していくことが望ましいと入れた方がよい。

・内部告発した者に不利にならないよう、「解雇や配置転換、懲戒処分、降格、減給等」を禁じるのはよいが、実際内部告発が少ないのは、時限付きで雇用されている研究員は、解雇というより更新しないというプロセスになるからと考えられる。そのため、禁止事項に「更新を避ける行為」も入れた方がよい。
・内部告発したら自動的に更新されると受け取られても困るので、「正当な理由のない更新の拒否」などのように書くとよい。
・雇主側に法律上更新義務があるわけでもなく、更新を拒絶するときに、正当な理由が必要だという法律もないはずなので、労働法制上の問題を踏まえて慎重に検討していただきたい。

・取引業者からの当該研究機関に対する情報提供が来た場合は、内部告発として取り扱うのか、公益通報として取り扱うのか。
・告発については「当該機関の職員による告発のみならず、外部の者によるものも含む」という形で定義している。
・なぜ「告発等」と「等」をつけた項目があるのか。
・「告発等」には、告発という形でなく、学会等の科学コミュニティや報道により疑いが指摘された場合なども含めている。
・インターネット上に掲載されている指摘についても、告発に準じて取り扱うことができるとしているが、報道や学会等の科学コミュニティでの指摘とは別の扱いになっているのはなぜか。
・機関が受け身の状態であっても外部からの指摘により気付くものであるか、能動的に確認しないと気付かないものなのかで項目を分けている。ただし、これは整理上の問題であり、今後カテゴリーの仕方は変わる可能性がある。例えば、告発によるものかそれ以外かという分け方もあるため、検討したい。
・欧米には、科学専門のブロガーによるブログや、捏造などの不正を専門にしたホームページもあるため、よく整理していただきたい。

(「特定不正行為等の違反に対する措置」について)
・迅速な調査がなされなかったとき、翌年度以降1年間、間接経費を一定割合削減するとあり、具体的な割合は10%を上限として配分機関が決めるとあるが、配分機関によってばらばらにならないのか。また10%の上限まで何年かかけて段階的に上げていくということでよいのか。
・間接経費の削減の割合は、基本的に、研究費のガイドラインと並びを取っているが、迅速な調査の確保については、研究費のガイドラインは、報告書の提出までに210日と国が一律的な期間を定めているため、文部科学省が共通的に削減割合を定めている。他方、今回定める新しいガイドラインでは、いつまでに調査をするかについては目安しか示しておらず、研究機関ごとに調査能力や研究分野の特性に応じて、いつまでに提出するか、あらかじめ規程で定めるという形をとっているため、共通した基準を定めることが難しい。実際の運用の仕方については文部科学省とJST、JSPSで相談したい。

(その他)
・「不正行為の防止を可能とする公正な研究環境の確立」は研究機関の責任ではないか。ただし、ラボ内で自由に議論できる環境の整備や、適切なメンタリングの実施などに対し、PIが一定の責任を担うことは非常に重要であるため、こうした記述も入れていただきたい。
・米国の研究不正には、留学生によるものが多いということから、ガイドラインは英文にする必要がある。

○最後に、事務局より今後の予定について説明がなされ、閉会。

(了)

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