「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」の見直し・運用改善等に関する協力者会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成26年5月23日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館15階 15F1会議室

3.議題

  1. 「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

委員:小林主査代理、一井委員、市川委員、小林委員、中村委員、三木委員、南委員
協力者:安藤科学技術振興機構参事役、笹川日本学術振興会参事
理化学研究所:米倉理事、坪井理事

文部科学省

文部科学省:川上科学技術・学術政策局長、岩瀬政策評価審議官、松尾人材政策課長 他

5.議事要旨

○事務局より、資料1について説明が行われ、運営規程の改正について了承された。
○本協力者会議の主査代理に小林委員が選任された。
○事務局より、資料2-1及び2-2に基づき「公正な研究活動の推進に向けた『研究活動の不正行為への対応のガイドライン』の見直し・運用改善について(審議のまとめ)」及び今後の審議について説明が行われた。
○資料3-1及び3-2に基づき、理化学研究所の米倉理事から、STAP細胞研究論文の疑義に関する調査委員会の調査報告について、坪井理事から、研究不正再発防止のための改革委員会における論点について説明が行われた後、質疑応答が行われた。

【主な意見】
(調査委員会について)
・当該研究機関で調査をすることに限界はあるのか。特に、調査結果に不服申立てが出た場合、当該研究機関で審査をすることは可能なのか。それとも第三者機関が必要になるのか。
・例えば、通報窓口を法律事務所などの第三者機関にお願いすることは、現実的にあり得る。ただし、特に今回のように研究内容が先進的な場合、検証する施設・人員等を有しない第三者委員会が詳細な研究内容について調査し、議論するのは難しいと思う。また、不服申立ての審査も、別の第三者機関にお願いするのは、関連機関やコミュニティの体制が十分準備された状況でなければ現実的に難しいと思う。
・最初の調査委員会のメンバーと、不服申立て後にその審査したメンバーは、違うのか。
・規程において「特段の理由がない限り、調査を行った委員会で再調査するかどうかの審査を行わせる」とされていたため、基本的にメンバーの変更はない。最初の調査結果を覆す可能性が高い内容の不服申立書が出てきた場合は、委員会のメンバーの追加等を議論することになると思う。

(悪意について)
・「悪意」という言葉の定義は何か。「研究リーダーのためのコンプライアンスブック」には、「意図的」に画像に修正を加える行為等がいけないと書いてあるが、「悪意」とは書かれていない。
・研究不正の「悪意」かどうかについては、今回、不服申立ての審査の中でも出てきたように、知っていたかどうか、故意かどうかで判断している。ただ、「悪意」という用語は、故意と害意の2つの意味があり、規程の中でも混在している。今後、規程の改正等を通じて、誤解を招かないようにしていきたい。
・規程の言葉は、話が司法に移ったとき、非常に重要になる。言葉の意味を明確にした、標準的なガイドラインを作った方がよい。

○坪井理事、米倉理事御退席。
○事務局より、「研究活動の不正行為への対応のガイドライン」に盛り込むべき事項の案について説明が行われた後、意見交換が行われた。

【主な意見】
(責任の明確化)
・第1節の「共同研究における個々の研究者等の責任の明確化」という部分に関して、複数の大学で共同研究をやっているところも多いと思うが、大学をまたがるときはどうしたらよいのか。
・複数の機関の研究者が共同研究を行っている場合、1つの機関が全ての内容について責任を持つことは実質難しい。例えば、規程において、共同研究については、研究者同士で役割を明確化するよう求めるところまでを研究機関の責任とすることが考えられる。
・「共同研究における個々の研究者等の責任の明確化」の部分は、大学等研究機関の管理責任のところにこのまま残すとともに、オーサーシップの問題とも関連するので、「研究者、研究者コミュニティ等の自律・自己規律」の方にも入れるとよい。共著者として名前を出すということは、成果を得ると同時に責任の一端も負うということになる。

(言葉の定義 不正行為)
・基本的用語を厳密にしておく必要がある。「不正行為」という言葉については、措置の対象になる不正行為がFFP(捏造(ねつぞう)、盗用、改ざん)に限られることは認識しているが、ガイドラインでFFPに限らないものも不正行為と呼ぶと紛らわしい。例えば、研究者倫理違反と不正行為、というように使い分けてはどうか。
・FFPは故意であることを含んだ概念である。しかし、研究者が本来払うべき注意を漫然と怠って、結果的に捏造や改ざんかに当たることが生じた場合、FFPそのものではないにしても望ましくないことである。こうした措置の対象にならない重過失も倫理教育に入れるとした場合、何か違う概念を入れる必要がある。
・「不正行為」を表す言葉は、故意であるFFPと、故意であるFFP以外の行為と、故意ではない倫理違反の3点必要になると思う。問題は、今まで学会誌の規程に従うという形になっていた、「故意であるFFP以外の行為」をどう扱うかである。
・場合によっては、重過失のような概念をガイドラインに入れるべきである。

(言葉の定義 告発と通報)
・「告発」と「通報」、そしてインターネット上の匿名の「指摘」という、調査を開始する義務の発生に関わる3つの概念についても、今回のガイドラインでは厳密に使い分けておくことが望ましい。
・「告発」は内部から、「通報」は外部からという使い分けになると思う。
・日本では、告発すると自分も被害に遭うと考える人が多く、内部告発がほとんどない。しかし、欧米では、研究の質を上げるためにも、告発は研究者の義務だと言われている。そこで、告発を奨励するような組織が必要だと盛り込む必要があるのではないか。
・「告発」という言葉は、一般に内部告発の意味で使われているが、法律の世界では「告訴・告発」と外部も含んだ概念となっている。ガイドライン上の「告発」が、内部のみを指すのか、外部も含むのか、明確にした方がよい。
・大学等の研究機関によっては、内部告発は受け付けているが、外部からの告発を受け付ける規程がないところもある。外部からの通報も受け付けることを明記する必要があるのではないか。

(研究倫理教育の徹底について)
・第2節の「不正防止のための教育」について、米国では、どれぐらいやればよいのか具体的に示されなかったため、研究倫理教育の徹底が図られなかった。そこで、研究機関の自主性に任せるのではなく、どれくらいの時間、どのような内容を、どれくらいの費用をかけてやればよいのか徹底する必要があるのではないか。
・海外のように間接経費を使って行うのがよいと思うが、その場合、公的助成をもらっている研究者がいない大学ではやれない。そもそも、研究倫理教育は義務化とするのか、それとも限りなく義務化に近いが研究機関の最終的な判断によるものと捉えるのか。
・2月の審議のまとめでは、「広く研究活動に関わる者に対して、研究倫理教育を実施する」とした。ガイドラインは法律ではないため、義務化することはできないが、どのような形でこれを担保できるか検討していきたいと考えている。
・学部教育あるいは大学院教育の中身まで変えることはできないので、研究倫理教育は、義務化ではないけれど、やらなければいけないものというラインになると思う。また、資金配分機関において、研究倫理教育を義務付けるという話があったと思うが、どのタイミングで受けさせるのか。
・JSPSでは、応募時か資金配分時かどちらで履修させるかについて、今ちょうど検討中である。
・JSTでは、現在、採用された後にeラーニングの受講を求めているが、来年度以降、履修を応募に際しての要件にするか検討している。
・研究倫理教育の実施に当たり、義務化は必要かもしれないが、研究者の自由な発想や意欲を失わせないか、研究者への縛りとならないかが心配である。
・そのため、研究倫理教育は、「義務化」ではなく、「徹底」くらいにすべきである。また、今回、第5節のタイトルが「国による監視」から、「文部科学省による調査と支援」となっていたのは非常によい。
・不正をなくすためは、罰則よりも教育が重要である。そこで、学部初年度など早い段階から研究倫理教育を始めるべきではないか。
・2月の審議のまとめの中でも、学生などに対する研究倫理教育を打ち出しており、その方向で検討したい。
・分野によっては学部学生も研究活動に関わっているため、その前提として研究倫理教育の実施を広く推進しいく必要がある。一方で、学士課程における教育内容として、研究倫理教育をどう盛り込んでいくかという点に関しては、大学全体の議論が必要である。
・今、研究者向けの研究倫理教育プログラムを作った後、学部生向けのものを作るかどうか議論しているところである。研究者向けは「周知徹底を図る」、学部生向けは、「望まれる、求められる」というように、表現は変える必要があると思うが、やはり学部生も研究倫理を学んでおいた方がよい。
・研究倫理教育について、米国では、リサーチインテグリティーとアカデミックインテグリティー、研究者になるための教育と、なるかどうかに関わらず必要な教育と分けて論じている。少なくともアカデミックインテグリティーは学部段階で求める必要があるのではないか。

(ペナルティーについて)
・第4節に関連して、米国では、外部に研究公正局のようなところを作っても処置が追いつかなかったため、各機関で処理し、何か問題が起きたときはペナルティーが機関全体にかかるようにしている。ただし、日本は機関によって国立、私立という違いもあるため、同じようにはやれないかもしれない。
・国立大学は国立大学法人評価委員会があるため、そこでの評価と連動すれば、ペナルティーへの対応は可能ではないか。ただし、私立大学の場合、国立大学法人評価委員会に相当するものがなく、難しい。
・国立大学であれば、中期計画の項目に入れることが、強制ではないけれども確実に行き渡る、現実的な方法ではないか。

(第三者機関について)
・不服申立てがあった場合、第三者機関のような研究機関外の組織が必要ではないか。理研は難しいということであったが、そうであれば、例えば調査委員会のメンバーを全員、あるいは委員長含めて半数以上入れ替えて再審査することが必要になるのではないか。
・第三者機関を構成するに当たって、本当の第三者というのはどこにいるのか。学術会議も研究者の集まりであるため、例えば学会の偉い人が不正を起こした場合、学術会議構成員は第三者と言えなくなるのではないか。
・人的資源の問題はあると思うが、不服申立て後の審査メンバーについては、今後、会議等で検討することも必要ではないか。
・不服申立てがあった場合、委員を替えて審査するほか、裁判で言うところの二審のような上級審で、調査委員会の調査を、違った角度から徹底的に再調査することもあり得るが、そのような上級審をどう考えるか。
・メンバー入替えは良いと思う。ただし、そのメンバーの氏名の公表をいつの段階で行うかよく検討すべきである。委員に対しての攻撃があると、なり手がいなくなってしまうのではないか。
・メンバーの公表は、必要に応じてという形でよいのではないか。委員長名は報告書を出す際などに公表されると思うが。

(データの保存について)
・特許を取る上でも、不正の疑惑がかけられたときに自分を守るためにも、研究者がノートを正確に付けることは非常に重要である。数年という保管期間を設けるのは、研究者のためでもある。

(再現実験について)
・再現実験の機会の確保は、疑義を受けた者の権利なのか、あるいは理研の規程のように、必要に応じて許可するものなのか。様々な制約の中で再現実験の機会を確保することは本当に必要なのか。
・ガイドライン上では、不正行為を認定するに当たって必要であれば、再現実験を認めるということになる。不正であるということが分かった場合には、再現実験を認める必要はないが、実験をしてみなければ不正であるか分からない場合には、例えば調査委員会の指導、監督の下で再現実験を認める。
・再現実験のための資金はどこから出すかという問題がある。また、再現実験自体、意味がある場合となかなか難しい場合があるので、適切かどうか少し考えるプロセスを設けた方が良い。
・その必要性も含めて調査委員会が判断し、それに対して不服があれば、別途新しい調査委員会が再度必要性も含めて判断する形をとればよいのではないか。そこで必要と判断された場合は、調査委員会の指導、監督の下に行うということにすればよい。
・データの公開やノートのとり方、再現実験をどういうときに認めるかということは、分野によって随分異なると思う。このガイドラインは、文系も含めた全体を統括したような形になるので、分野によって違う部分については、学術会議等アカデミアの方である程度審議を頂いてアウトラインを作ることも検討させていただきたい。これと連動したコンメンタールにするのか、あるいは各分野で御審議を頂くのかは、これから考えていきたい。

○最後に、事務局より今後の予定について説明がなされ、閉会。

(了)

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