放射線量等分布マップの作成等に係る検討会(第12回) 議事要旨

1.日時

平成23年10月31日(月曜日) 14時30分~17時15分

2.場所

文部科学省 東館3階講堂

3.議題

  1. テルル129m、銀110mの土壌マップについて
  2. 放射線量等分布マップデータベースについて
  3. 今後の放射線量等分布マップの作成に向けた継続調査の方向性の検討について
  4. その他

4.配付資料

  • 資料第12-1号 :ガンマ線放出希少核種(Te-129m、Ag-110m)データの処理について
  • 資料第12-1-1号 :文部科学省による放射線量等分布マップ(テルル129m、銀110m)の作成について
  • 資料第12-2号 :放射線量等分布マップにおける測定・分析結果データベースの構築
  • 資料第12-3号 :2011年度第2次土壌採取等調査について(案)
  • 資料第12-4号 :冬季土壌調査の留意事項について
  • 参考資料1 :第11回放射線量等分布マップの作成等に係る検討会議事要旨(案)
  • 参考資料2 :放射線量等分布マップの作成等に係る検討会委員名簿
  • 参考資料3 :最近の放射線量等分布マップの公表資料について

5.出席者

委員

中村主査、池内委員、遠藤(小山委員代理)、斎藤委員、柴田委員、高橋(浩)委員、高橋(知)委員、茅野委員、長岡委員、長谷部委員、吉田委員

文部科学省

渡辺次長・原子力安全監、伊藤EOC環境モニタリング班、斉藤EOC環境モニタリング班、佐々木(原子力安全委員会)、小平(農林水産省)、茶山(原子力被災者生活支援チーム)

オブザーバー

恩田(筑波大学)、武宮(日本原子力研究開発機構)

6.議事

  1. 斎藤委員、事務局より、資料第12-1号及び資料第12-1-1号について、テルル129m及び銀110mの土壌濃度マップついて、説明が行われた。
  2. 武宮氏より、資料第12-2号について、放射線量等分布マップにおける測定・分析結果データベースの構築について、説明が行われた。
  3. 斎藤委員より、資料第12-3号について、今後の放射線量等分布マップの作成に向けた継続調査の方向性の検討について、説明が行われた。
  4. 事務局より、資料第12-4号について、冬季土壌調査の留意事項について、説明が行われた。

7.主要な質疑応答

○  資料第12-1号、資料第12-1-1号について

【長岡委員】  資料第12-1-1号の参考3のTe-129mの沈着量とCs-137の沈着量との関係図について、マル2とマル4については比が0.2であるが、マル3については、長く伸びているものの比が0.2で、下側の分布の傾向のものと、成分が2つ混ざっていると思う。そうすると、マル3で平均値として0.88という数字が出ているが、この平均値というのは各々の成分をいくつとったかで変わってしまう。これはマル1の図でも同じことが言える。少し表現を考えた方が望ましい。
【斎藤委員】  マル3では、比率が高い部分と低い部分の両方の要素を含む図になっている。
 その高い部分を抜き出したのが資料第12-1号の11ページとなる。これは特に比率の高い部分を資料第12-1号の10ページの(c)から抜き出した図である。本当は残りの部分も図示して定量的に示せるとよかったが、今回そこまではしていない。この部分だけは明らかに南方の内陸部だけ、非常に比率の高い1.4というものがある。これを除いて平均すると、0.2ぐらいの値になると考える。
【事務局】  資料第12-1号の11ページ(e)で書いてあるものも少し加え、南方においては特にこういうところについて顕著に比率が高いところが確認されたという形で追記させてもらおうと思う。
【長岡委員】  それで良いと思う。今、(e)の図についての御発言があったが、(e)の図の下の方にあるものに0.2程度の比になる他のものを違う色で描いて、この地域は2つの成分があることを示せば良い。
【斎藤委員】  最終報告書ではそのようにして表したい。
【髙橋(知)委員】  同じ意見である。これはリニアでグラフが描かれているが、両対数グラフで描いた方が、その関係が綺麗に見えてくると思う。最終報告書の際には、両対数グラフで描いていただきたい。
【斎藤委員】  了解。

【池内委員】  資料第12-1号について、3ページの下から8行目のところにある「セシウムとテルルは」という記述について、その下にある「他の元素に比べて」とあるが、ここで他の元素と比べる必要はあまりない。 
 その上に「揮発性の元素」と記述されているが、何度までが揮発性の元素かということもある。ここには、セシウムとテルルはそれぞれ沸点が671℃と988℃で揮発しやすい元素であり、似た挙動を示すことが予想されるというふうに簡潔に書いた方が望ましい。
【斎藤委員】  そのようにしたい。
 揮発性としたのは、チェルノブイリ事故の報告書などで核種が何種類かに別れており、揮発性、不揮発性、中間のものの中で、ヨウ素、テルル、セシウムは全て揮発性として分類されている。
【池内委員】  何度の温度が揮発性の元素として定義されているのか。
【斎藤委員】  定義というのは確認していないが、コメントを参考に表現を考えることとしたい。
【池内委員】  「揮発性の元素であり」でも結構だと思う。

【吉田委員】  資料第12-1号の2ページの上のところの、Te-129mとAg-110mによる線量率への寄与の記述がある。この1パーセント以内というところについて、例えばTe-129mの場合で、セシウムに対する比が1を超え、2とか3となっているところでも、この範囲内に入っているということか。
【斎藤委員】  これは代表的な50地点を選んで、その平均線量を計算し、空間線量が0.1から5マイクロの範囲で50地点を適当に選び、その地点で平均的にどの核種が何パーセント線量に寄与しているかということを計算している。
【吉田委員】  そうすると、この1パーセント以内は平均値の議論であるということ。
【斎藤委員】  そういうことである。
【吉田委員】  ここのところ、読んで混乱すると思うのは、放射能として、テルルがセシウムを超えている場所があり、そのときに実際の線量値への寄与が1パーセント以内だと言われたときに、おそらく理解されない。もう少し詳しく記述するべき。
【斎藤委員】  了解。1つは線量換算係数が小さいということ、平均値で比較していることから、こういう結果になったと明確に記述したい。

【吉田委員】  資料第12-1-1号の3ページの真ん中の「○」について、テルルに関してはテルルの最高値が出たところの値をとって、セシウムに関してはセシウムの最高値が出たところの値を使って比較したということであるが、違和感があるのは、同じ場所の比較のデータを示さなくて良いのかというところ。
【事務局】  最高値の場所で構成された土地がもし仮に存在したとして、そこに50年間住んでもこのレベルであることが理解されるため、最高値で示している。
【吉田委員】  しかし、テルルとか銀がセシウムに比べて十分に小さいということを述べるための比較である。
 それぞれ独立に線量を評価して、個別に議論するならこれで良いと思う。しかし、比較でテルルと銀の寄与が少ないというときに、違う場所のデータで比較して分かるものなのか。
【髙橋(知)委員】  これはストロンチウムの時の議論と全く同じである。その際にも、その比率として見るというよりは、テルルあるいは銀に関する線量が低いということを確認し、実際にはセシウムのほうが重要だという区分けをするための寄与度を示している。
【吉田委員】  了解。

【茅野委員】  資料第12-1号の8ページのところのAg-110mとCs-137の沈着量の比率を見てみると、北側の海岸地域、南側の海岸地域、真ん中のところと、綺麗に3つに分かれている。この北側の海岸地域というのは3月12日から13日にかけてF1から出たプルームの沈着であろう。青いところが3月15日、南に下がっているところがそれより後あるいは3月14日の夜などで、放射性物質を放出している原子炉も全部違うと思う。この本文中に書かれているように、初期の放出状況であったり、沈着のプロセスであったり、放出量推定を出すためには、非常にいいデータである。

【髙橋(知)委員】  テルルと銀の挙動について、銀は異なる挙動で沈着しているという風な記述になっているが、核種組成の違いも当然ここに反映されていて、プルームがいくつかあった場合に、これそのものが大きくばらついていることが直接この挙動で沈着していることとの原因とまでは言い切れないと思う。そうすると、資料第12-1-1号の沈着の比率を見ると大きくばらついていることから、異なる挙動で沈着していることがわかるとなっているが、これは書きすぎである。距離によってある程度の関数で、この比率が変わっていくということであれば、それは直接言えるかと思うが、初期のプルームの差異が大きいことから、それの原因によるばらつきの可能性もある。そのため、もう少し柔らかい表現にした方が良い。
【事務局】  了解。

【渡辺(次長・原子力安全監)】  Te-129mは崩壊によりI-129に変わる。今後長期的にモニタリングを実施していく上で、I-129は半減期が長く放射能は低くなるとは思うが、今後、例えばI-129を着目するべき等のご提案があれば頂きたい。
【斎藤委員】  銀110mは半減期が長いため、今後も観測がされる可能性がある。今後、in situでの測定を中心に銀110mも注目しながらモニタリングする必要がある。in situはかなり多くのガンマ線を検出できるので、割合量が少なくても検出できる可能性がある。

【吉田委員】  前回の検討会の資料第11-3号(参考)で、テルルがヨウ素に変わるところの寄与の計算が出されたと思う。その結果から言うと、テルルがヨウ素に変わることの寄与は、もともとI-129として放出されたものに比べると無視できるという結果だったと思う。そのため、I-131との兼ね合いも考えてもI-129を測定することは重要。

【池内委員】  既に日本分析センターにおいて、今回のマップの試料、20試料について、I-129を計測した。しかし、I-131が検出されていたものが5試料しかなく、検出されたものでも、4シグマ程度であった。I-131は誤差をもち、I-129は加速器質量分析器(AMS)を用いていることから、正確な値が出ている。5試料の比率をとると1桁程度違う。今後はI-129からI-131を推測するに当たって、福島県の採取したI-131が多く検出された資料についてI-129を分析し、I-131とI-129の比率が一定になるかどうかを調べる。比が一定になるようであればI-129の計測を多く実施すればI-131の推測が可能になると思う。

【渡辺(次長・原子力安全監)】  Pu-241の関連でよく言われているが、放出後に崩壊して別の核種になって、今はほとんど寄与していが、数年後に寄与が増大する核種はないかという心配がされている。Pu-241の場合は、崩壊によりAm-241に変わり、それはガンマ線を出す。今の場合、Te-129mはI-129に変わるわけである。放出時ではなく、地表に残存し続けることにより、それが崩壊し、別な核種になることで、悪さ(線量への寄与の増大等)しないかと心配をされている方が多い。そのような現象にも着目して、長期的なモニタリングに関するご提案を頂ければと思う。
【池内委員】  I-129は半減期が非常に長く、線量的には効いてこない。この核種は再処理すると生成されるものであり、事故以前に、蓄積傾向を確認するということで実施している核種である。それは線量には効いてこないということであるが、計測した経過があることから、それで線量計算もできる。
 Pu-241は検討する必要があるかと思う。

【髙橋(知)委員】  I-129については、線量に対する寄与は非常に小さいと考えられる。ただし、食品の観点では、そのような核種が少ないというエビデンスをそろえていくことが安心につながる。移行係数との絡みもあることから、実際に寄与が低いことを実測として示す。すなわち、I-129、Tc-99、U等についても、線量が低いことは明らかであるけれども、それを証拠としてそろえていくことが重要。
【斎藤委員】  その意味では、前回の検討会で、どの程度ビルドアップされていくかということを計算しているため、それを少し拡張して説明資料としていくことが望ましいかと思う。
【中村主査】  マッピングするということではなく、そのエビデンスをとるため、少し実施するようにすると良い。

【中村主査】  このマッピングに関しては、委員からのご意見を反映、修正し、文部科学省から公表させていただきたい。修正に関して、私と事務局にお任せいただきたい。

○  資料第12-2号について

【事務局】  このデータベースについて、英語版とか、各国の方利用できるようにするためにはどのようにすれば良いか。
【武宮(オブザーバ)】  図2-2について、こちらに属性名が記述されているが、この属性名を英語に変えることで対応できる。
【事務局】  これは、簡単な作業か。
【武宮(オブザーバ)】  項目が多いため、それなりに大変ではある。
【事務局】  これまでの大量のデータをそれぞれアップしていけるような形なっているが、そのための作業も大変なのか。
【武宮(オブザーバ)】  文部科学省から送付されるデータの形式に依存する。例えば、PDFで送付されると、それを変換してデータベースに入力することは大変であるが、CSVであれば作業労力は軽減される。
【武宮(オブザーバ)】  英語版については、3次補正で実施する。
【中村主査】  了解。

【渡辺(次長・原子力安全監)】  データベースについて、チェルノブイリ事故の経験も踏まえると、それが後々まで適切に管理がなされ、様々な研究者に利用できるようにするということが極めて重要。
 このデータベース化プロジェクト自体、将来的にわたって非常に重要なものであるというふうに認識している。

【柴田委員】  今後、色々な測定が含まれてくる。そういうときに項目を足し算等の計算を行うことができるなど、柔軟に対応可能か。
【武宮(オブザーバ)】  中核となる線量率、土壌中の核種濃度などは共通化されている。計算は、比較的簡単に実現できると思う。
【柴田委員】  例えば、新たな情報を入れ込むことも簡単にできるのか。
【武宮(オブザーバ)】  それは、「はい」とは簡単には言えない。入れ込む情報の性質による。

【長岡委員】  パソコンのOSが画期的な変化を遂げるようなことがあった場合、データを使えなくなってしまうことがあるかもしれない。これだけあればいいというデータだけを切り出して、例えばCD-ROMに焼いておくことは可能か。
【武宮(オブザーバ)】  可能である。

【高橋(浩)委員】  一般公開のメニューで、データが直接ダウンロードできないように見えたが、その理由は如何。
【武宮(オブザーバ)】  14ページを見ていただきたい。最初に同意した後に遷移する画面の5番、6番でダウンロードできる。すべてのデータをダウンロードする場合は7番でダウンロードできる。

【斎藤委員】  現在、バックアップをとっているのか。
【武宮(オブザーバ)】  定期的にバックアップをとるようにしている。
【斎藤委員】  定期的に、CD-ROM等の媒体へ落としていくということも可能であるということで良いか。
【武宮(オブザーバ)】  十分可能である。

【柴田委員】  波高分布は取れるのか。
【武宮(オブザーバ)】  難しい。
【池内委員】  波高分布は、膨大な量であるし、それだけ見てもこれは何の意味もない。4096チャンネルに何カウント入ったということが、1試料で出てくる、データベースに入れるのは大変である。
【池内委員】  波高分布に興味ある方があれば、分析機関に確認してもらう。データを出すのはいいが、一気に全部出せと言われても、これは難しい。また、それほど需要もないと思う。
【柴田委員】  日本分析センターで持っているデータを残しておいてほしいとか、大学の何処がデータを所有しているのはどこかとか把握しておけば良い。
【斎藤委員】  大学側は、東京大学でまとめて持っていると思う。日本分析センターと大学でどういう波高分布を持っているかというデータを整理し、需要に応じて振り分け、直接データをとってもらうという形がよい。

【吉田委員】  これシステムは、基本的にデータの数値を見てダウンロードする機能であり、例えば地図情報とリンクして加工できるとか、地図に落とせるとかいう機能までは入っていないのか。
【武宮(オブザーバ)】  そのような機能は実装されていない。

【斎藤委員】  行政、市町村でここのデータが欲しいというのは得られる。ある程度地図とリンクした情報は得られるかと思う。

【中村主査】 この議論を踏まえて報告書の取りまとめをお願いしたい。他にコメントがあれば、11月4日金曜日の夕方までに事務局に連絡いただきたい。

○ 資料第12-3号及び資料第12-4号について

【茅野委員】  資料第12-3号と12-4の関係はどうなっているのか。
【事務局】  資料第12-3号については、代表的な実施機関としてJAEAに確認してもらっており、その具体的な提案である。資料第12-4号は、斎藤委員にもご連絡はしているものの、資料第12-3号にまとめきれなかった部分であり、事務局で作成したもの。
【茅野委員】  資料第12-4号は、資料第12-3号を補強するものか。
【事務局】  資料第12-4号で、追加している事項もあり、そういうところも意識してもらいたい。資料第12-4号で反映できるものについては、資料第12-3号に反映してもらいたい。

【茅野委員】  「ホットスポット」の定義について、前回の検討会では、航空機サーベイで確認されるような大きなホットスポットについて、地上で詳細に計測して確認するという方向だったと思う。今回の資料では、「いわゆるマイクロスポット」に焦点が移っている。そこまで含めるのはちょっとどうかなという感じがする。
【事務局】  測定については、基本的には地元で測っていくことになると思う。KURAMA-Ⅱで、より小型でバイクサーベイができるものが開発されている。そのような手法によって、ある程度こういうものまで見つけられるという技術を提案することまでは、こちらの方でできればと思っている。

【長岡委員】  今後は、実際はどの程度の大学に協力してもらうことが可能なのか。
【斎藤委員】  大阪大学の先生方にはご協力いただけることは了解いただいている。ある程度のご協力はいただけるかと思う。
【中村主査】  それを補う意味で、業者、自治体に手伝っていただくということが記述されている。

【長岡委員】  深度分布の測定をするときのスクレイパープレートのサイズはどの程度か。
【斎藤委員】  この程度のものである。(10cm角くらいの)
【長岡委員】  深度分布の測定について、この時期に100地点までやる必要があるのか。もっと測定数を少なくして、むしろ(高頻度に)長期にやっていくことの方が大事ではないか。
【斎藤委員】  前回の深度分布は30㎝のパイプでとっている。それなりに結果は出てくるが、問題点も指摘されている。今回、スクレイパープレートで深さ方向の初期値をとるということで、測定数を多くしている。

【長岡委員】  色々な所で除染が始められており、線量率分布が変化しつつある。その変化は航空機モニタリングで検出できない程度だと思う。その辺をどのように位置づけ、マップを作成していくのか議論が必要。事故直後はこうだったというのは一つあるが、今後は除染地域のところを少し詳細に測定して、ここは線量が下がるという表現にするのか、従来どおりのパターンでやるのか。
【斎藤委員】  空間分布はどんどん変わってくる。そういう意味からもKURAMA-Ⅱで経時的に広い範囲のデータをとり、その変化を見ていくことは非常に重要になってくる。
【事務局】  除染の場所の把握については、我々の方で手が回らない状況。福島県の遠藤氏(小山委員代理)が来られているが、よく協力して、除染場所の把握をしたうえで、線量の変化について確認していったら良いかと思う。
 空間線量率については、1500点も必要かどうか気になるところ。
 例えば100地点を、U8容器で土壌採取するのであれば、その地点だけ採取し、残りの場所は走行サーベイで代用できないか。
【池内委員】  資料第12-4号の1ページ目について、土壌調査数というのが下の方にあり、6月期と同程度で2200とある。今の御発言にあった空間線量率1500箇所を減らしてしまうと、今は土壌調査の150箇所とin-situ測定の600箇所とサーベイメータの1500箇所で2200箇所を数の上ではカバーしているが、それを走行サーベイでやると、この1500箇所というのがなくなってしまう。その点についてはどのようにお考えか。
【中村主査】  最初は減らそうとしていたが、福島県からの要望により、土壌試料採取の数が少ないところを空間線量率でカバーするといったことが反映されている。
【池内委員】  今回は2200箇所やった場所があり、その場所については、U8、in-situ測定でやるか、サーベイメータでやるか、そうすれば2200箇所は全部カバーできる。次回はそういう風にした方が良い。また、福島県の意見もあると思う。

【中村主査】  今回測定した場所は除染活動が始まっていないということか。
【斎藤委員】  除染活動はそんなに始まってはいないと思う。基本的には、将来的にも状態が変わらないような場所を選定している。
【遠藤(小山委員代理)】  全てを把握しているわけではないが、福島県内の除染活動は、学校の校庭を除染しているということが一つ。一部の地域で、一般住宅を試験的にやり始めたというところ。学校の通学路も一部含まれている状況。
【事務局】  基本的に前回の未撹乱土壌について扱っているところ。基本的に前回の場所を採用するのであれば、除染対策の影響はあまりないと考える。

【長谷部委員】  この検討会の位置づけは、5月に決めたところ。「放射線量等分布マップの作成等に係る検討会」という名称ということで、今後の作業が検討会のミッションに即したものなのか。それが大幅に変わっているようであれば、検討会そのものから変えていくべきかと思う。
 これまで、線量測定マップ、土壌濃度マップ、農地土壌マップを作成し、追加的に移行状況調査もやるという観点で来たので、今回議論している内容がどれにあてはまるのか、あるいは検討事項を追加するのか決めないといけない気がする。
 資料第12-3号、資料第12-4号ともに土壌調査となっているが、土壌調査以外の部分が結構出てきている。マイクロスポット、ホットスポットを個別に見つけていくというのは趣旨と合わない。
 土壌調査についても8月30日に公開した土壌濃度マップの改訂版が今年度中にできるのか。この検討会自体が変質化している感じを受ける。
 深度分布について、初期値をとるということでは了解できる。空間線量については、航空機モニタリングを補強・補完する意味合いで土壌調査や線量率調査を実施していると思う。土壌については分かるが、走行サーベイは果てして意味があるのか。現在、一般市民が線量計を持っているような時代で、こういうものがどこまで意味があるのか。
 要約すると、検討会の趣旨に沿って、それぞれの項目をどう発展させるのかという視点が大事ということ。
 これまでに2200点の箇所で採取した土壌試料が今どうなっているのかというのが、大事なところ。それらをきちんと保管することを考えることが大事。
【斎藤委員】  検討会の趣旨に沿って、計画が立てられているかという点について、今回もその土壌調査、in-situ測定がこれに代わる手段である。
 土壌の核種濃度という意味では、U8容器による採取試料の測定とin-situ測定でカバーする。線量率については、in-situ測定、(サーベイメータによる)空間線量測定を行う。走行サーベイについては、前回よりも広範囲実施するといった状況である。検討会の趣旨に沿った調査と考える。
 関連研究について、恩田先生の核種移行の研究等は、長期的に継続するということで、発展性のあ研究ができると考える。
 (マイクロ)ホットスポットに関しては、 長谷部委員のご発言の通り、それに力を注ぐべきではないというのが私の意見である。割合広い地域の、本来のホットスポットについてはサーベイで見つけていく必要があるが、「いわゆるマイクロスポット」は、この委員会ではカバーすべきではない。ただし、部分的に、技術的に提案していくということは可能かと思う。
 土壌試料の問題について、非常に重要な財産である。現在、日本分析センターと、大学とで分けて保管するような形になっている。将来的には、一カ所に統一して保管し、それを使いたい人が自由に使えるような体制にする必要があると考える。
【吉田委員】  前回の調査で把握し切れなかった重要なところを、今のうちにやっておいて、初期値として、ワンセットで残すことが大事。そのためにより効率的な方法を使って、例えば場所についても、これまで測れてなかった場所を行うなどの事項を考慮して、全体を検討していくと、今回の調査の目的が明確になる。
【斎藤委員】  私の意図するところはまさに吉田委員のご発言の通りである。前回得られなかった重要なデータも含めて、今回得てしまおうというのが主なねらい。

【吉田委員】  本日公表予定の文書の中のテルルと銀のところで、テルルと銀に関しては精緻化に向けてさらなる調査を実施すると書き込んでいる。これに対してどう答える形になるのか。
【事務局】  斎藤委員からのご提案は、in-situ測定を用いながら、他の部分もとって補完していく。今回は全部の試料について遡って、テルルと銀について調査できなかった。そこはin-situ測定で、担保していくということで書いている。
【吉田委員】  これは実際にin-situ測定で補完できるものか。
【斎藤委員】  多分テルルは半減期が短いため難しいと思う。銀については可能性としてはある。

【髙橋(知)委員】  プルトニウムとストロンチウムの件について、先ほどの銀の考察のところで、銀は子状で飛んでいる可能性があるということであった。そうすると、銀の比率が高いところで、このストロンチウム、プルトニウム、セシウムに対する比率も高い可能性があるかと思う。
 そうすると、今回、銀の比率が高いところがマップで分かるため、そういった場所を中心に、ストロンチウム、プルトニウムを計測して、セシウムとの比を見るという方法も一つある。
 また、是非ウランを測定していただきたい。食品安全委員会のほうで、ウランのみ特出しでTDIを設定しているという事情がある。これを超える濃度は当然出ていないとは思う。環境中に関するエビデンスがこちらのほうの観点からも必要である。

【池内委員】  今回プルトニウムも極僅かな量しか出ていないため、当然ウランも出ている。もともとウランは自然に存在するため、ウラン234とウラン238は、自然なものは放射能が同じである。僅かにウラン234、235が見られるが、これはもう影響がわかる量じゃない。ウランの場合はいくら分析しても、食品値のものを分析しても、もう既にもともとあるものしか分からない。
【髙橋(知)委員】  是非そのバックグラウンドと変わっていないという部分が、出ていると非常に安心。
【池内委員】  分析することは可能である。日本分析センターでは、東京電力の敷地の土壌の分析もして、それらは東京電力から公開されている。ウランについては、事故の影響の可能性については全く言えない。食品の中のウランを分析することはできるが、今回の事故による追加被ばく量の計算はできない。
【中村主査】  「ない」ということを出してほしいのか。
【髙橋(知)委員】  そういうこと。
【髙橋(知)委員】  今回の事故の上乗せが見えない程度ということか。
【池内委員】  いくらやっても見えない。東電の敷地の土壌でもわからないので、無理である。

【遠藤(小山委員代理)】  例えばこの検討会の中で、物質の移行がどのように移行するのかを確認するためには、土壌に溜まったものがどういう風になっていくかということがある。雨等で、河川等に流れたりとか、海に流れ出たりすると。河川について、公共用水域の結果では、河川の底質で検出されている事例がある。河川の底質なども含めて考えていただくべき。
 例えば、山側から雨によって少しずつ下に落ちてきて、線量が高くなったんじゃないかという、住民からの話もあった。そういった意味で、ミクロまでにはできないにしても、大ざっぱな移行について検討会の中でできるのであれば、やっていただければと思う。
 今後の調査機関の中で、地元の自治体に参画してもらうという点について、実態を申し上げると、例えば福島県の場合であれば、県の職員だけでは全然対応ができなくて、日本原子力研究開発機構、電気事業連合会、日本分析センター等の機関に協力していただき、他の自治体からも派遣していただくことで対応しているという状況。引き続き参画する方向になるとしても、引き続き関係機関のご協力いただいた中での参画という形になると思う。
【斎藤委員】  核種の移行に関しては、関連詳細調査研究の最初に記述している核種移行調査で、森林から河川への流出とか、野原から河川の流出、巻き上げによって核種が再浮遊で移動する過程について、筑波大学の恩田先生が取りまとめて研究をされていく予定。
 自治体の協力は可能な範囲で結構である。よろしくお願いしますということです。
 河川の底質について、測定はされていると思う。

【長谷部委員】  調査の継続性について、今年1年で終わりにするのではなく、予算的な確保は大事。
 土壌採取者の組織体制について、前回はボランティア的に大学の先生方にお願いして実施したわけであるが、きちんとした組織というのは、人材育成というか、キャパシティビルディングが必要。
 (土壌採取者が)毎回違っても困る。継続的に5年、10年にわたりこの調査を実施することは必要。今年は緊急事態の中で実施しているので、様々な方の協力を得て実施しているところであるが、いずれは専門職化していく体制に持って行くことになるかと思う。

【事務局】  長谷部先生からの、先ほどマップの検討会の目的に合っているかといったご発言に対して少し述べたい。事務局で考えているのが、事故状況の全体像の把握という部分でどこまでとらえるのかということが考えとしてある。その中で代表的な核種として、プルトニウム、ストロンチウムの測定を実施した。これで全体像の把握たできたかどうかを考えると、どうかという点はある。
 髙橋委員からのご指摘のとおり、本当に検出されないことを確認することが重要であるという話もある。事故状況の全体像の把握の観点で、例えばウラン等を調査することは必要かと思う。31核種以外の核種も調査をすることも必要かと思う。
 そういう意味だと、この目的からは基本的には逸脱していないと考えている。
 「ホットスポット」について、提案させてもらったのは、移行のメカニズムとかにも触れながら議論ができればと思っている。
 除染について言えば、森林内の除染については、恩田先生からの森林内の移行の研究が使えたように、ここでやっていく研究テーマの研究課題が活用できたらという期待もあり、挙げさせて頂いている。ホットスポットというふうに注目するわけではなく、全体像の把握の中で、そこで何で起きるのかという科学的な面からの検証、もしくはそれに対する結果の何らかの一般化、フォローができればと期待して挙げさせてもらっている。
 そういう意味では、今回挙げた事項はマップの検討会の目的から逸脱したものではなく、優先順位をつけた上で具体的にどういうものをやっていくのか、どういうふうにリソースを分担していくかだと思う
【長谷部委員】  ホットスポットを否定するわけではない。軒下、雨どいの下などではなく、放射性物質が移行して、濃縮する大規模な環境中でのメカニズムの解明というのであれば、それはわかる。恩田先生の研究内容はそういうものの一つのケーススタディかと思うので、それは是非やるべきかと思う。

【渡辺(次長・原子力安全監)】  「ホットスポット」について、先日の柏市で見つかったスポットの例は、深さ30㎝のところでCs-134、137の合計値が27万6000Bq/㎏であった。これは側溝が破れており、また側溝がL字型に曲がっていて、溜まるところで破けていたもの。それで、放射性セシウムが土に吸着していったというものであった。土質によっては繰り返し水が吸収されることによってそれなりに高くなることもあるかと思う。そのメカニズムがうまくわかるようなことが調査できればという趣旨でやらせていただいている。

【池内委員】  資料第12-4号の4ページにコバルト58をin-situ測定できればと書いている。コバルト58は固定型のゲルマでも計測できない。化学分離して、コバルトだけにして、ガンマ線を計測する方法がある。In-situ測定では無理である。
【斎藤委員】  チェルノブイリ事故では、コバルト60が出ていたような気がするが。
【池内委員】  それは多分量が多かったからだと思う。実際は出ていると思うが、セシウムのピークが強過ぎて、その下に隠れてしまっている。
【中村主査】  inーsitu測定で計測することをメインにするので、これを化学分離して様々な核種を出す必要はないと考える。

以上

お問合せ先

文部科学省 原子力災害対策支援本部

(文部科学省 原子力災害対策支援本部)