科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成23年8月9日(火曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省15F科学技術・学術政策局会議室1
住所:東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 基盤的研究・人材育成拠点について
  2. 「大震災対応」に係る取組の進捗状況について
  3. 公募型研究開発プログラムについて
  4. 国際フォーラム開催報告
  5. その他

4.出席者

委員

有信委員、有本委員、笠木委員、黒田主査、郷委員、合田委員、森田委員

文部科学省

常盤 科学技術・学術総括官、阿蘇 科学技術・学術政策局計画官、山下 科学技術・学術政策局政策科学推進室長、斉藤 大臣官房会計課予算企画調整官(前 政策科学推進室長)

5.議事録

【黒田主査】 
 それでは、時間でございますので、第3回科学技術イノベーション政策のための科学推進委員会を開催させていただきます。御多忙中、そして非常に暑い中お集まりいただきましてありがとうございます。
 最初に、事務局に異動がありましたので、それを含めて新しい室長の山下さんから。

【山下室長】 
 御紹介賜りました、先日付けで斉藤の後任で政策科学推進室長になりました山下でございます。よろしくお願いいたします。着席して御説明申し上げたいと思います。
 本日は、机上に配付資料として、前回の推進委員会の議事録の案をお配りさせていただいております。後日、メールでも電子版で御送付させていただきたいと思っておりますので、もしお間違え等ございましたら、事務局まで御連絡を賜れればと思っております。
 また、資料につきましては、クリップどめで机に置かせていただいておりますけれども、1枚目の議事次第の後ろに配付資料の資料番号等が載ってございまして、資料1から資料11まであると思いますので、もしお手元の資料、過不足ございましたら、途中でも構いませんので、事務局までおっしゃっていただければと思います。以上でございます。

【黒田主査】 
 よろしゅうございますか。
 それでは、早速ですけれども、今日の議題に入らせていただきたいと思います。今日の議題は、前回からの続きでございますけれども、前回、基盤的研究と人材育成の拠点についていろいろ御議論いただきまして、先生方からいただいたコメントを含めて、事務局と精査をいたしまして、改めまして整備方針と公募要領、構想調書と、それから、審査に当たっての考え方ということも、一応案をつくってみました。それについて、まず御説明いただいた上で御審議をいただきたいと思います。それでは、斉藤さん、よろしくお願いいたします。

【斉藤調整官】 
 御説明させていただきます。前回、第2回の推進委員会で、公募に関しまして様々な意見をいただきました。事務局のほうで議事録も含め確認させていただいて、全部で17項目につきまして様々な御指摘をいただきまして、それぞれの項目について、主査の黒田先生とも御相談させていただきながらまとめたものが、今日お配りしている資料でございます。
 資料1は、前回いただいた御指摘の項目のうち、全体を取りまとめて幾つかの大きなグループに分けると、主にこういう3点について御指摘をいただいたと認識しておりまして、それについてどのように対応するのかを検討した結果でございます。それを含めて、後ろの整備方針、調書などを書き直しているような形になっております。では、資料の1に沿って、まず御説明させていただきたいと思います。
 いただいた御指摘の一つ目につきまして、人材育成拠点を公募するということに当たりまして、その研究とか教育の方向性というのはどのぐらい定まっているかという御指摘があったかと思います。これに関して、まず、この拠点の公募に関しましては、第1回のこの推進委員会のときにもお配りさせていただきました基本構想、拠点だけではなくて、この事業全体に関する基本構想に定められました意義ですとか、目的ですとか、推進の方向を踏まえて、当然ながらこの一部として、拠点の構想も進められていくものであると認識をしております。
 1ページめくっていただきますと、第1回の資料が添付されておりますけれども、それの3ページあたりを御覧いただきますと、2.設計理念と推進の指針の中で、3ページの一番上に、設計理念に基づいて、6項目の推進の指針を置くということで、具体的に人材も含めた全体の事業について、この六つの指針で進めていくというようなことが記述されております。この中には、「科学技術イノベーション政策のための科学」の深化というものと、それに伴った「政策形成プロセス」の進化が車の両輪として必要であるということですとか、学際的学問分野の発展ですとか、「開かれた場」の構築ですとか、科学的方法論の開発や提示で終わるものではなく、その成果が政策形成の場で活用できるものを目指すものであること。4ですと、政府と研究コミュニティが双方の信頼関係のもとで、それぞれの役割や責任を果たすということ。6では、人材拠点に関しましては、科学的基盤を開拓し、研究を担う人材、政策と研究をつなぐ人材の育成を通じて、広範なコミュニティを育成するというような指針が書いてございまして、今回の人材育成拠点の公募に関しましても、このような事業全体の大きい指針に沿った拠点を構築するというようなことだと認識をしております。
 そのような方向性に沿いまして、海外の人材拠点などにおける先進的な取組の調査や分析をずっと行ってまいりましたけれども、そこで実施されています修士・博士のコースのカリキュラムなども、個々に分析などもしております。
 それを踏まえて概略をまとめましたものが、資料1の一番最後のポンチ絵でございます。これも以前御紹介させていただいた資料の一部でございますけれども、特に欧米の大学において、この手の人材育成拠点を考えたときに、どのようなところに学問のベースがあって、どのようなアプローチで拠点が構築されているかというのを、我々なりに分析をしたものでございます。これをもとに、この次の文章ですけれども、分析した結果によりますと、大きく三つに、海外の人材育成拠点というのは分類されているのではないかと思っております。
 一つは、法学、公共政策学、科学技術社会論等々、人文社会科学の学問をベースに置いて、それぞれの学問分野を背景に、自然科学の各分野を分析していこうというアプローチが一つ目。二つ目は、工学、生物学、環境学などの自然科学の分野にベースを置きまして、それぞれの分野の中を、人文社会科学の各分野の視点で分析していくというアプローチでございます。それはこの最後の図でいいますと、回りにある様々な学問分野のところに書いてある拠点がそういうふうになります。3番目は、1、2、自然科学的なベース、人文社会のベース、その両方の視点を包含して、科学技術イノベーション政策というそのものを中心に分析をするアプローチでございまして、それは先ほどの図でいいますと、真ん中のところに書いてある科学技術イノベーション政策研究そのものを対象にしているものでございます。
 これら大きく分けて三つの分類がございまして、海外におきましては、これらの1から3がどのような方向性をとるかということについては、各大学がそれを定めまして、それに即したカリキュラムの重点化が行われているというのが実態でございます。それの分析資料は、前回もお配りしておりましたけれども。全ての大学に共通するようなカリキュラムなどは存在しておりません。また、学問として専門分野が明確に確立していないということもありまして、各大学におけるカリキュラムも適宜見直しが行われながら、まさに学問分野が構築されつつあるというような状況であるというふうに認識しております。
 というような観点から、今回の我々の公募のほうも、事前に明確な方針を固めた後に、その枠内で公募をかけるというような従来型のものではなくて、今回、推進委員会と拠点大学の相互協力、意見交換などを行いながら、あるべき姿を議論しながら目指していくというようなことが必要であろうということで、今回、現段階で公募を行うこととしまして、大学側からの積極的な提案を踏まえて、議論を深めていくということが必要ではないかと思っております。
 このような人材が必要であるということに関しましては、世界的な潮流になっておりまして、人類の科学的な発展に向けた科学技術の期待の高まりですとか、科学技術の知見が社会のイノベーションに結びつけることの重要性の認識ということがあって、このような人材が必要であるということは、コンセンサスが得られているのであろうということで、それのアプローチとしては、今申し上げたようなやり方で進めていくというふうに認識をしております。
 2ページでございます。二つ目の大きな前回御指摘いただきました中身は、推進委員会と、申請をしてくる大学との関係についてです。こちらについては、拠点における人材養成は、大学ごとに行われますので、大学側の判断と責任のもとで実施されるのが基本的な姿だと認識しておりますが、一方で先ほども出ていました学問分野自体が確立されたものではなく、まさに議論しながらつくっていくものであるということ。さらに我が国においては、この分野の人材の層も薄いということもありまして、日本全体として、この分野の人材層の拡大と、科学領域や行政分野を超えた人材のネットワークをつくっていこうというような目的がございまして、戦略的に制度設計をしていく必要もあると認識しています。
 という観点から、推進委員会では、日本全体としての戦略性というような観点で、拠点の選考やその後の運営について助言を行っていく。さらに拠点となる大学は、推進委員会も参加した形で「運営協議会」などを構成しまして、学問的に深めていくということと、人材育成プログラムの開発も、皆で手がけていくというようなことを考えております。
 3番目でございます。今後の選考スケジュールも、大きく3番目として御意見いただいております。こちらについては、資料2の横長の1枚紙が別途ついておりますので、そちらも一緒に御覧いただければと思います。前回、複数の先生方から、フィージビリティスタディのような枠組みを考えたらよいのではないかという御指摘をいただきまして、それを受けた修正でございます。今回、公募を行って議論していくということに関しましては、現段階で、今申し上げましたような我が国の現状ですとか、海外の状況を踏まえて、基本的な方向性を推進委員会のほうで示しつつ、公募による提案を受けて、全体の制度設計を深めていきたいと思っております。
 そこで前回からの修正点ですけれども、前回は第6回、7回あたりの推進委員会のところで、拠点を完全に決定してしまうという形になっておりましたが、今回の修正点は、拠点の候補は決めるんですけれども、拠点以外に、その拠点となったところと一緒に組んだほうがいい。そのほうが日本全体として、よりよい戦略的な動きができるようなところも同時に選びまして、それらの当事者と推進委員会との協力のもとで、拠点整備委員会というものを設置いたしまして、主査が指名する者と拠点大学の方に入っていただいて、3か月間、4か月間ぐらいかけて議論をしていただく場をつくりたいと思っております。前回も御指摘を受けました、大学間で協力するには、単位の互換の問題ですとか、大学間の制度の問題ですとか、そういうものの調整の時間が必要だということもございました。この拠点整備委員会のほうで具体的な御議論をしていただいて、あるべき姿といいますか、役割分担ですとか各拠点の機能まで含めた詳細な構造については、ここで推進委員会とやりとりしながら御議論をいただき、年度末ぐらいの段階で、拠点の構造ということで、推進委員会で最終的に決定をいただくというようなことを考えております。
 来年度、正式に決定しました枠組みで予算執行が行うとともに、運営協議会という形で、拠点にする大学の主導でプログラムの内容等を検討する委員会を、また別途立ち上げて、引き続きこちらのほうで、実際教育を始めた後のフィードバックなどを受けまして、よりよいものにしていくための大学主導の委員会を設置していただいて、そこと推進委員会も適宜やりとりをしながら、常に制度自体を高めていくというような枠組みを進めていけたらなと思っております。
 予算につきましては、年度内については、拠点は決まりましたけれども、その後の詳細な構造が決まっていないという状況になりますので、それに適切に対応した予算について、今年度中は執行していくというような形になるかと思っております。
 以上が、大きくいただいた御指摘の点への対応でございまして、資料3-1、3-2、資料4、5に関しましては、今御説明申し上げた内容をそれぞれの資料の適切な場所に反映するとともに、整備方針につきましては、今取り上げた三つの大きいグループ以外のいただいた御指摘17項目のうち、それ以外の御指摘についても反映した資料という形になっております。
 例えば、3-1を御覧いただきますと、具体的に修正させていただいたのは、1ページの1.の第2パラグラフの3行目、4行目ぐらいですけれども、前回、野間口先生から指摘をいただきました国際競争力ですとか、日本の戦略とかという観点を書き込むということで入れさせていただいておりますし、例えば、2ページの1パラ、2パラ目のところで、個々の大学等での分野特性を生かした人材養成システムの構築というようなところで、相澤先生のほうから御指摘をいただきました、カリキュラムをつくるというよりは、カリキュラムを運営していくような、拠点としてのシステムをつくっていくというような御指摘をいただいておりました。
 さらに2.のタイトルも、担い手として求められる人材というふうに、我々が求められる人材を明確に規定して、それに沿ってやっていただくという形ではなくて、社会のニーズはこうなっていますというのをお伝えして、それに沿って必要な人材養成の道筋については、大学のほうで御提案いただくというような形に書き直しております。
 さらに3ページの3.の下あたりですと、「科学技術イノベーション政策の科学」を深化させ、より科学的な根拠の抽出等を行う能力であるということで、これは特に有信先生のほうから、ここに書いてある能力というのが一般的な能力に限定され過ぎているのではないかというような御指摘もいただきましたので、「科学技術イノベーション政策の科学」について、それの構造化を行って実装していくという面についての能力だということを書き加えさせていただいております。
 さらにいきますと7ページのあたりですと、6.基盤的研究について。これは桑原先生のほうからの御指摘ですけれども、このような新しい分野をつくるに当たっては、学生が積極的に政府の調査研究プロジェクトに加わるような場ですとか、論文発表の場などが必要ではないかというようなお話をいただきまして、こちらのほうには、基盤的研究の一部として、そのような実際的な調査研究をする機会を設けるというようなことも記述しておりますし、8ページの1パラ、2パラのところですけれども、会議や雑誌等の成果発表や研鑽の場が重要であるので、そういうものをつくっていくことが期待されるというような記述も書かせていただいております。
 以上を踏まえて直したものが、資料3-2、資料4、資料5でございます。細かいところですので、全ての御説明は省略いたしますけれども、基本的に今申し上げたような方向性に沿って、書きかえを行っているものでございます。
 最後に、資料6についてです。こちらは審査において、どのような観点で見るべきなのかというのを具体的に示すべきではないかというような御指摘もいただきまして、事務局のほうで案をつくらさせていただいたものでございます。どのような観点で審査をするかということで、大きく人材育成の内容についてというのと、実施体制・経費・その他の資源についてという大きく二つの柱かと思っております。
 人材育成の内容については、提案されたプログラムが、先ほども御紹介しました基本構想ですとか、今までいろいろ議論されてきました「政策のための科学」に必要な研究、必要な方向性、人材というものに沿って、趣旨に沿った整合性のあるものになっているかどうか。さらにプログラムなどが適切な内容となっているかどうか。さらにプログラム終了の要件ですとか、「共同プログラム」の構想などについて、人材育成内容そのものについても、このような観点が重要かと思っております。
 実施体制・経費・その他の資源につきましては、人材育成拠点として、持続的に維持していただく。今回、テンポラリーな形でカリキュラムだけができる、コースだけができるというものではなくて、持続的な体制ができ上がって、拠点として成立できるかどうか、つながっていくかどうか。提案された人材育成内容を実施するための体制として適切かどうか。全学的な支援が得られているかどうか。今後、関係機関や他拠点と調整がいろいろ必要になりますが、調整などに必要な体制なども整っているかどうか。経費が適切かどうかなどなどの観点があるかと思っています。
 それに加えて、審査に当たって留意する点ということで、日本全体で目指すべき姿というものの提案なり体制も、一緒に見させていただきますという話。さらに、院修了後のキャリアパスの確保ですとか、持続的な人材育成という観点で、どのような工夫がされているか。さらに特色のある意欲的な取組の提案かどうかというようなことも、同時に見させていただくのかなと思っております。長くなりましたけれども、御説明は以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございます。前回御議論いただきました点を、事務局と相当議論をいたしまして、少しずつ反映をさせていただきました。幾つか補足を私のほうからさせていただきたいと思いますけれども、1点目は、我々が今考えている政策のための科学というのが、既にでき上がったある種のディシプリンに根ざした科学にはまだまだなっていないという認識を持っていまして、諸外国のいろいろなプログラムを検討してみましても、そういうことで鍛えられる人材というのは、政策的な意味からも、政策を運用する戦略的な意味からも、非常に喫緊の課題として大きな課題になっているけれども、いかに自然科学と人文社会科学を融合した領域の中で、そういう人材を教育プログラムとしてつくっていくことに関して、はっきりしたシングルなディシプリンがそこにあって、そこからスタートできるかという点では、諸外国も試行錯誤を繰り返すよりしようがないというか、繰り返しながら、徐々にそういうものを時間をかけてつくっていかなければいけないということを考えているようでございます。後からコモで開かれた会議の話も少し御紹介させていただきますけれども。
 ただ、そういうシングルディシプリンにはなっていないものの、人材を育成すること自身に関しては、どの国も喫緊の課題で、早急に対処しなければいけないということが、今、動いている状況のように思います。そうした中で、日本が今まで本当に科学技術イノベーション政策に対して、科学的にやってきたのかということも改めて考えて見てみますと、やはりそこに科学性を必要とするということであるとすれば、どういう科学性を必要とするのかということ自身を、このプログラムの中でブラッシュアップを重ねていかないと、なかなか一足飛びにはできないだろうというのが、私の今思っている思いでございます。
 お手元の資料3-2に幾つかのポンチ絵がありますので、それを御覧いただきながら少し御説明させていただきますと、3-2の1ページ目の下の段ですけれども、そこに育成拠点の幾つかの考え方が記されています。客観的な根拠に基づく「科学技術イノベーション政策」を実現するという、一体どういうエビデンスがどういう形で得られるかということも、これから考えなきゃいけない一つの大きな要素で、この科学を実現するエビデンスとは何かということも重要な課題ですけれども、そういうことを実現するためには、それを担う研究者、そして政策立案の専門家が必要であるということは間違いないことだろうということでございます。そういう科学を実現するときに、自然科学と人文社会科学が、ある種縦割りではなくて、融合した形の分野がどうしても必要で、政策を形成する、そして政策を戦略的に実践するというところまで含めた人材の育成がどうしても必要だろうということ。
 それから3番目には、そういったことを実現しようとすると、いろいろなステークホルダーが社会の中にいて、その中での合意形成、そしてその実装という形が、社会システムの変革まで含めて必要になってくるだろうということ。それから、4番目には、それを実現するための大学院レベルの学融合的――安易に学融合と言うのは、私はあまり好きではないんですけれども、学融合的なカリキュラムをどうやってつくっていくかということが、今回議論いただく基盤的研究と人材育成拠点の方向付けをやることになるんだろうと考えております。
 最後にありますように、それらが学を超えて、かつ産官学の垣根を超えて、また行政の垣根を超えたある種のネットワークをつくることにもつながらなければいけない。そういうことを目指した、大学を中心とした人材育成の拠点形成をいかにやっていくかというのが、この整備事業の大きな課題になるんだろうと考えております。
 次をめくっていただきますと、ポンチ絵の5ページでしょうか、3ページ目の上の段ですけれども、そこで担い手となる人材に必要な能力というのは、自然、そして社会が大きく変動する中で、それを分析し、評価し、課題を発見し、そしてその政策を策定し、政策を動かしていくと。このある種のスパイラルがうまく循環をして、徐々に社会、自然がよくなっていくということが、政策の大きな課題になるということですけれども、そういうことを担っていく育成人材、人材の能力というのは、その上の段に書いてありますように、客観的根拠を抽出して、理論化して、モデル化する。課題を発見して、何にチャレンジすればいいかをはっきり設定する。そこから政策を立案し、その政策の決定をした後、あるリーダーシップをもって合意形成を行い、それを実行していく。そして、その評価をまた行って、次の政策につなげていくという能力が必要になってくるのだろうということで、それをもう少し一般的に書いたのが、一番縁側にある人材育成の内容ということです。こういったものを大学、そして学問分野間の連携とネットワークの中で若者を育てていくような、そういうプログラムが、これから必要になってくるのだろうということでございます。
 あと、そのプログラムの推進のイメージは、先ほどの整備方針にもありますように、総合拠点と言っている拠点と、それから、領域を中心にした領域拠点、それは複数選ばれる可能性があるわけですけれども、そういうものとの全体ネットワークで、全体を教育のシステムとして動かしていくことが重要だろうということでございます。それを考えたときに、当然整備される拠点としては、一つはアドミッションポリシーをどういうふうにきちっとした形で据えるかということ。それから、運用していった上ででき上がってくる人材、そして人材の持つべきディプロマのポリシーをどういうふうに置くかということが、多分拠点のイメージの中で、それぞれ提案していただく大学で考えられる一番重要なことだと思っておりまして、そういうことを柱に置いて、推進委員会としては、そのプログラムの提案が的確かどうかということを判断する審査を、これから行っていくのだろうと考えています。
 また、ディプロマのイメージですけれども、ポンチ絵の10ページ目になりますが、総合拠点と書かれているところですけれども、体制のイメージということです。ここについては、例えば、総合拠点は既に政策科学の科学といったものにふさわしい、ある種のディプロマポリシーを既に持っているような形の大学を考えておりまして、そこに「科学技術イノベーション政策のための科学」という総合プログラムをもう一つつけ加えていただくと。したがって、総合拠点を通過して、学位としてはそこででき上がってくる学位記として、科学技術イノベーション政策のための科学としての修士、博士が出てくるという形になります。
 もう一方の役割として、この総合拠点は、もう一つの領域開拓拠点と言われている幾つかの領域に特化した拠点との連携プログラム。共同プログラムと呼んでおりますけれども、共同プログラムを提案して、それぞれの領域開拓拠点の学生諸君と交流ができるような体系を、共同プログラムの中に実現していくと。その共同プログラムの中には、インターンシップがあるとか、海外への留学拠点、経験があったりという、いろいろなプログラムを実現することができるだろうと。その中心的な役割を、総合拠点が担っていただいて運用すると。ただ、共同プログラムの運用に関しては、総合拠点に任せておくだけではなくて、領域開拓拠点がそれぞれ参加して、運営協議会(仮称)と言われている組織の中で動かしていただくということを考えています。
 次をめくっていただきますと、今度は領域開拓拠点のほうのディプロマのイメージでございますけれども、幾つか可能性があると思いますが、例1、例2とポンチ絵で書いておりますけれども、例1のほうは、ある領域に特化した形で、既にある博士号の学位までを持っている大学で、そこにある領域を中心にしたScience of Science Policyのプログラムを追加していただくと。したがって、そこでは博士の学位が取れると。それと同時に、他大学でもいいですし、その大学の中でもいいんですけれども、領域の外にあるいろいろな学部、学科、研究科等々に対して、その領域開拓拠点のプログラムのほうからプログラムを提供して、例えば、その図でいきますと、学生AとかBというのは、そういったScience of Science Policyのプログラムを学ぶことによって、ある種のサーティフィケート、もしくは副専攻的なディグリーを得るという可能性もあるのではないかというのが、例1でございます。
 例2は、そういった形の領域開拓拠点として、はっきりした形の学位を持っていないケースの場合には、各学科、各研究科が共通のセンター方式でもって、あるプログラムを提供して、そのプログラムをそれぞれの学科領域の学生諸君が学ぶことによって、それぞれの専門を持ちながら、Science of Science Policyについての科学プログラムを習得することによって、サーティフィケートを受けるというケースもあり得るかもしれないということで、これは単に一つのイメージでございますけれども、考えてみました。
 その次のページを御覧いただきますと、下の段、14ページに、全体の総合拠点と、幾つか選ばれる領域開拓拠点との関係をポンチ絵で書いてございます。先ほど申しましたように、それらが運営協議会(仮称)を形成して、共同プログラムを動かしていく。なおかつ単位の互換であるとか、それぞれ補い合うような形で、カリキュラムの中の構成も議論をしていくという形のものが、一つ全体としてはイメージされるのではないだろうかということでございます。
 最後のページに、これはCRDSで吉川センター長が提示された一つの「科学技術イノベーション政策のための科学」というものを考えたときに、エビデンスに基づく政策形成ということをやろうとしたときに、先ほど一度お話しいたしましたけれども、現実社会視点の動きの中から、観察型科学者と呼ばれている科学者が、問題を摘出し、その問題に対してどう解決すべきかということを提案していくと。それに対して、構成型科学者がいて、成果を政策提言にまで結びつけていって、政策メニューを提言する。その中から、合意形成のプロセスを経ながら、行動者と言われている部分で政策の行動、実際のマネジメントがなされて、政策が実施される。このサイクルを常にスパイラルを情報に上るような形で非常に進化させていくというのが、科学技術イノベーション政策の科学ということの動かし方ではないだろうかと。これ前回を幾つかの拠点がマネージしながら、この全体の動きを推進委員会がルッキングしながら、全体をつくっていくということになろうかと考えています。
 最後に1点だけ、資料3-1を御覧いただきたいのですが、8ページから9ページにかけまして、今度は8.のところでございますけれども、拠点の整備に向けた検討の進め方。先ほどのスケジュール案にのっとっているわけですが、スケジュール案の中身を文言で書けばこういうことになるかということで、8ページの一番下2行からですが、各大学から寄せられた拠点構想の提案に基づいて、推進委員会が書面審査を行います。その中で、ヒアリング対象となる大学を決定します。その時点で、何らかのこちらからのお願いで、提案を修正していただくこともあり得るかもしれないということを一つ考えておりますけれども、そのヒアリングの後、推進委員会が拠点の構成大学をまず決定をさせていただいて、実施の体制に移るわけですけれども、その中で、拠点を構成する大学以外についても、推進委員会がその構想から見て、ぜひこの全体構想から生かしたいというふうに見込まれる場合には、それをここでは参加候補大学と呼んでおりますけれども、全体構想の中でそれを生かすために、来年の1月から3月の期間、議論に参加していただいて、拠点構成大学と参加候補の大学と、それから推進委員会のもとでつくられた拠点整備委員会というものを構成させていただきます。そこで全体構想の中に、可能な限り日本全体的な拠点の構成に資するような構造をつくっていったらどうかと。その部分では議論を尽くして、新しい年度、24年度からスタートする構成大学及びそこに参加する参加大学あわせて全体構想をまとめていくというフレームを議論する場を、3か月間でございますけれども、提供しながらやっていくと。
 その後、拠点の構成を推進委員会で認めていただいた上で、24年度から実際に運営を始めるのは、各大学が構成する合同の運営委員会(仮称)でございますけれども、そこで運営をしていただくという形で、スケジュールを組ませていただいてはどうかというのが、今回の提案でございます。
 まだ足りない部分があるかもしれませんが、少し御議論いただいて、また御質問に答えていきたいと思いますが、いかがでしょうか。

【笠木委員】 
 それでは、ひとつ。私、前回お休みをしたのでちょっと理解が不十分なところがあるかもしれないのですが、前回同様、政策の科学の深化ということと、政策決定プロセスが進むほうの進化ですね、その二つが柱になっていて、それを実際に担う人材を育てていきましょうということだと思うんですが、これが進展していったときに、それ自体をある形で測る必要が出てくると思うんです。つまり、科学がどのぐらい進んだのですかと。それから、政策プロセスの進化というのはどういうふうに進んだのですか、あるいは人がどう育ったのか。そのときに、おそらく政策プロセスのほうは、具体的な政策形成、政策立案の結果をよく分析すれば、ある程度測れると思うんですが、まず現状を教えていただきたいと思います。
 この「政策のための科学」を深化させたといえるためには、自然科学の分野でいうと、やはりピアレビューが必要なんだと思います。それはある種の学会であるとか、国際会議であるとか、ジャーナルであるとか、その分野の科学と、科学のプラットフォームがあって、そこに成果が出されて、ピアレビューを経て、科学としての知識として固まっていくというプロセスをとります。一方で、そこで研究者がいるわけですから、研究者自身の業績もそこで形づくられるし、それによってさらに学位などにもつながっていくんだと思うんですが。この政策の科学という分野の、そもそもプラットフォームは、多分ないのかと思いますが、それをつくっていく努力を相当しないといけないような気がするんです。
 そこで、私が関係している例で、エネルギー経済という分野があって、最近関係者にいろいろヒアリングをしたんですけれども、例えばエネルギー経済モデルを一生懸命やっておられる方は、現代的に言うと非常に重要な課題なんですけれども、経済学の分野では端っこのほうにいるし、それから、エネルギーの分野でも主流じゃないんですね、端っこのほうに追われて。結果としては、研究者がなかなか増えていかないという悩みを抱えておられるんです。
 今回の場合も、分野が横断的で広がっているので、元々の根になっている学術分野での論文とか業績は見えていくんでしょうけれども、じゃあそれをかき集めたときに、政策の科学として進んだといえるのかどうか、それを測れるかどうか。政策の科学として、そういうプラットフォームをつくっていかなくてはいけない、そういう努力をしなくてはいけないと思うんですが、それをどうやってやるのか、現状を知りたいと同時に、それをどのようにしようとされるのかをお伺いしたいと思ったんですけれども。

【黒田主査】 
 なかなか難しいんだと思うんですよね。僕も経済学の中では、環境とかエネルギーとかをやっているほうで、端っこにいるほうなんですけれども、ただ経済でエネルギーの問題というのは、ある意味ではエネルギーというのは、一つの生産の要素です。そういう意味では、生産要素としての労働とか、生産要素の資本とかというものと同じようなレベルできちっとエネルギーをとらえれば、端っこではなくて、かなり経済を動かすベースになる根幹のところですから、それ自身は非常に重要な学問だと、僕は思っているんです。
 ただ難しいのは、エネルギーというのは、科学技術と密接に結び付いている部分があって、その科学技術との接点というのは、今までの経済学とかエネルギーのエンジニアなり科学者との接点が非常に希薄だった上に、経済学で考えている領域は一歩超えられない。本当に深化させられないというところが一番問題だったのだと思うんです。そういう意味では、もし政策科学の科学というものが、もう少しディシプリナリに一つの体系になってきたときに、この科学の一番重要なところは、やっぱり自然科学と人文社会科学の一つの接点として、何か評価できるという枠組みをつくっていかなければいけないので、そういうことが接点になるような学問領域もなかったし、残念ながら学会領域もなかったし、そういうところが全部縦割りできた、日本だけではないと思いますけれども、この分野の一つの大きな課題なんじゃないかと思っていまして、そういうものをどうやってつくっていくかというのを、拠点形成の中でやっていくことが一つの目標になるんじゃないでしょうか。
 そういう意味で、ネットワークの重要性とか、そういうものがおそらくあって、ピアレビューができるようなジャーナルをつくるとか、学会をつくるとかいう形でも、多分今までの縦割りを学会をつくったのでは、何の意味もないので、まさに自然科学と人文科学、それも自然科学のいろいろな領域、人文科学のいろいろな領域が一緒になって、その成果を評価できるようなことが必要なんじゃないか。
 この間も申し上げたのですけれども、政策科学の科学というのは、やっぱり従来の科学として終わってしまったのでは意味がなくて、その科学の知見を使って、政策がインプリメントできて、イノベーションに結び付くところまで評価できないといけないので、そういうことで最終的には科学の意味が評価できるものじゃないかなと、今のところ漠然と思っていて。それは簡単にできるものだとは思っていないですけれども、そういうふうにできないかなというのが、ある一つの夢です。
 これは後からお話ししようかなと思ったのですが、この間のコモのコンファレンスで、アメリカははっきりScience of Science Policyの核をやるんだと。今のステージは、科学のデータをぴしっとつくって、科学を進化させるんだというふうに言い切っていまして、その科学を使って、どういう政策を動かして、どういう戦略をやるかというのは当然視野に入れているけれども、まずまだ科学がどんなものかがわかっていないんだということを盛んに言っています。そういう意味で、STARMETRICSというようなデータベースをつくることも、そういうことの一環ではないかと考えております。

【笠木委員】 
 STARMETRICSの断片的な記事などが『science』とかに出てきますよね。だけど、この分野でこれから若い人が研究して、研究成果を出していくときに、当面どういうプラットフォーム、ジャーナルとか何かがあるんでしょうね。

【有信委員】 
 ちょっと違うかもしれないんだけれども、今のお話は、前回桑原さんも指摘していました。ちょっと違うんだけれども、企業サイドで80年代から研究費が経常利益を超えるようになって、実際に研究開発への研究費の投入をするに当たって、どういう基準で投入するか、何をはかりながら、あるいはどういう事実をベースにしてやるかということが散々議論されてきて、一つの流れとしてMOTという流れが出てきて、それの発表の場として、例えば日本だと、研究・技術計画学会という平澤先生がずっとやっていた学会が一つの発表の場になっています。ただ、学会として、なかなか公に十分認知されているとは言いにくいんだけれども、やっぱりそういう努力をしていく必要がある、研究・技術計画学会では、具体的な様々な手法の研究結果だとか、各企業における事例だとか、あるいは大学サイドでは、いろいろな方法論だとか、研究結果だとか、かなりブロードな範囲での発表をやっています。そういうプラットフォームをつくる努力を、やっぱりすべきでしょう。

【笠木委員】 
 やらないといけない。

【有信委員】 
 だからそのときに、やっぱりサイエンスという点のディシプリンをきちんとやるときに、ベースになるディシプリンをどういうふうに決めていくか、文理融合というのは、言葉で言いながら、全然なかなかうまくいかないのは、基本的にサイエンスの方法論が違うから。片方は細分化するし、片方では、ある意味では統合化していくというような方法でやっていくところもあって、根底のディシプリンがなかなかできないんですよね。

【笠木委員】 
 だから、そういうところに少し具体的な道筋というか、方針を持っておかないと。特にこの中で研究者を育てる部分があるので、その人たちが研究者コミュニティの中で肩身の狭い思いをするようなことになると、非常にまずいと思うんですね。本来、これから一番活躍してほしい人たちですね。そこを何かしっかりやっていける道筋があるといいですけれどもね。

【黒田主査】 
 僕は、肩身の狭い領域にならないようにするかしないかは、周りの今までディシプリンベースだと言われた科学が、これをどう理解するかにかかってくるので、おそらくシングルディシプリンの科学だけでは、社会のいろいろな問題は解決できないから、そういう要請が片方で出てきているわけですよね。そこは交流して、もちろんシングルディシプリンの知恵を借りなきゃいけないことはあるんでしょうけれども、だけどそれだけでは、社会のいろいろな課題が解決できないというところからスタートしている重要さみたいなものを、どこまで科学者自身がきちっと自覚をするか。それ自身が、科学者のキュリオシティでなければいけないと思っているんですけれども。そういう関心を持たないと、科学はもう一歩伸びないんじゃないかと思っているんですけれども。

【有本委員】 
 今のお話は大変大事です。早い時期からいろいろな活動を促進する、個々の活動に橋をかけるような活動をサポートする予算とか制度をつくっておかないといけない。ファンドしたら後は大学でやって、学会でやってよだけではだめだと思います。だから、今年の予算には、私は欠点があると思っています。それぞれの四つのプログラムについては、一生懸命サポートするようなものにしているんだけれども、その間をブリッジをかけるような仕組み、たとえばフェローシップとか、学会活動をサポートするようなプログラムがまだない。
 来年度はしっかりこういうものを概算要求に入れることが、文部科学省の責任だと思っています。ハードだけやりましょうと。今のものは公共事業みたいな感じがしています。ソフトのところをきちっとやるということを、ぜひ考えていただきたい。

【有信委員】 
 公共事業のところは非常によくできているんですよ、実際にはね。だけど、今の話でちょっと気になるのは、例えば、会社で物をつくるときは、そこで使われるディシプリンがどうであるか、どのディシプリンであるかって関係ないんですよね。要するに、あるものができて、それが例えば、売るものをつくるのであれば、できたものが世の中に受け入れられて売れる、これが重要であって、そこに使われているサイエンスが、本当に単一のディシプリンであるか、複数のディシプリンであるかは関係ない。
 だから、逆に言うと、例えば、アメリカでサイエンスと言っているんだったらあまり心配しないんだけど、日本でサイエンスというと、やっぱりまたもとに戻っちゃうんですよね。例えば業績を評価するときに、ソフトウェアであれば、でき上がったソフトウェアがすばらしいソフトウェアであれば、それは業績として評価されるかというと、日本の学会では中々評価されない。だけど、そういうものをきちんと評価するようにしなきゃいけない。例えば、ロボットを一つつくったときに、このロボットが非常にすばらしいものであれば、それが評価されるようでないといけない。例えば、そこに使われている技術はもちろんすばらしいんだけれども、ただそれを事細かに分解していくと、それぞれの技術というのは、例えば、ある意味で目新しいものでない場合もある。そういうものを組み合わせることによって、すばらしい技術ができたりする。ソフトウェアも典型的な例だけれども、そこで使われているもので、何か新しいものがあるかというと、基本的にはないわけですよね。
 つまり、そういう構成的につくり出されたものを評価するという、そういう新しいディシプリンというかな、学術会議で言っている、いわゆる設計科学的な物の見方、それをやっぱりどこかで明確にしていかないといけない。今言われた活動の中に、そういうものもぜひ含めていっていく。これはむしろ、人文社会科学系の方法論には近いところが多分あると思うんです。

【黒田主査】 
 どうですか、森田先生。

【森田委員】 
 済みません、前回欠席したもので、ちょっと話が理解しにくいところがあるんですけれども、ここの人材育成のための拠点で、育てるというのは、あくまでも研究者を育てる大学院をつくるという発想ですか。といいますのは、海外の参考にした最後のページのところについているのですが、ハーバードのケネディスクールにしても、ビジネススクールにしてもそうですし、ロースクールというのもありますけれども、ほとんどのところは研究者養成の大学院ではないわけです。高度な能力を持ったポリシーメーカーなり、実務家を育てる大学院なのであって、そのためには、共通したしっかりしたディシプリンというよりも、いろんなディシプリンを合成して教育する、それ自体を一つのディシプリンといいましょうか、方法として考えているわけです。それは少なくとも人文科学系といいますか、私たちの社会科学のほうでやっている政策学、政策科学というのはそういうものであって、その意味ではサイエンスという意味は、いわゆる純粋なサイエンスとはかなり違っていると思います。
 だから、この大学院が、本当のそういうまだ生まれるかもしれないディシプリンの研究者を育てるとしますと、これはやっぱり相当絞り込まなければならず大変な話になると思います。むしろここで狙っているのは、そういう科学的な知見を、文系もあわせて、政策の中にまさに実装するための教育だとしますと、実装の技法ももちろん重要ですけれども、実装の担い手になる実務家を育てるとしますと、やっぱりディシプリンのとらえ方と教育の仕方というのはかなり違うんじゃないかという気がします。そこのところが、今の御議論を聞いていると、非常に高度なディシプリンを想定されているのではないのかというのが、私は違和感を持ったところなんですけれども。その辺はどうなんでしょうか。

【黒田主査】 
 育成すべき人材像としては、おっしゃるように2通り多分あると思います。おそらく両方が非常に科学技術イノベーションの中では重要で。イノベーションまで、科学なり技術なりを結びつけていく、インプリメンテーションをやる人材というものも、当然政策を立案したり、政策担当者であったり、それを評価したりする人間の中で必要ですし、片方で、それをある種の科学ということを確立しようとすると、その中身はやっぱりどういうディシプリンベースで考えるかという科学者もいてもいいし、いなきゃいけないという感じで。多分両方欲張って狙っているという感じです。

【森田委員】 
 ただ、正直言って、純然たる研究者だけを育てるとしたら、大学院の規模というのは相当小さくてもいいと思います。あんまり小さいと今度は育たないんですけれども、たくさん育てると、マーケットがどうなるかという話になりますね。アメリカもそうですけれども、基本的なプロフェッショナルスクールの場合には、実務家を育てるという形で、そのためにインターンやったり、いろいろな教育をして、そして戻ってきた人が、一部の人は研究者としてそれを進めると同時に、またその人が実務の世界へ出ていくと。そこで両方が高め合うという構造になっているわけで、そのベースとなるような形での、一つの能力を持った集団をつくるというふうに私は理解したのですが。

【黒田主査】
 全くそのとおり。

【森田委員】 
 そういう意味で言うと、あまりリジッドなディシプリンとかサイエンスというよりは、むしろお医者さんで言うと、それぞれの専門家の脳外科とか心臓外科でなしに、いわゆる総合医のような、全体的な診断と、全体がわかるような、そして実際に臨床としてきちっと病気を治せるような、そうした人材を育てるということではないかと思います。そうしたら、大学院のつくり方のイメージも、ちょっと違ってくるのではないかという気がしますけれども。

【笠木委員】 
 私はそれを認めた上で、そのプラットフォームはあるのかということが心配。

【森田委員】 
 それはこれからつくるかどうかということだと思います。現在でも、日本でも公共政策学会という学会はあるんですけれどもね。あれはいろいろなディシプリンの人が、いろんなことをやっているところです。

【有信委員】 
 そうなっちゃうんだよね、きっと。

【森田委員】 
 それはしようがない。ただし、現実の問題で、実務家の方もいますけれども、例えば、今回の震災もそうですけれども、防災問題は何かというときに、いろいろな人が共同で入ってきて、一つの問題について研究して答えを出す。それはそれで実践的に非常に意味があることであって、それを従来のピュアなサイエンスの基準で見て、学術水準として純度が高いか低いか、これは別な評価だと思いますけれども。ただ、ある観点からだけ、要するに、高度な脳外科だけではいろいろな病気は治せないわけであって。

【笠木委員】 
 お医者さんの場合は、やっぱりそれなりの臨床系の学協会もたくさんあるし、ジャーナルもあるし、そういう意味ではプラットフォームができている。だから、そういうところで研究したり、実践的なことをやっておられる方々というのは、別にそんな肩身の狭い思いは決してしていないわけですよね。そういうふうな形にならなくちゃいけないわけですよね。

【黒田主査】 
 そうならないとならないんですね。

【有信委員】 
 日本の自然科学系の学会が問題なのだから、そういうところもあわせて変わっていくようにしないといけないんだけれども。

【黒田主査】 
 そうなんでしょうね。科学そのものにしても、多分森田先生のおっしゃった両輪で、例えば、ひところ前までは、僕は医学というのは、ものすごく経済学と似ていて、実験のできない学問だと思ったんですけれども、最近は医学のほうはどんどん進んで、実験ができるし、その実験の治験をまた臨床にも生かしていくという領域にいっていると思うんですけれども。まだ経済学はそこまでいっていないですね、経済の社会は。そういうところを一歩進めるには、そういう知見がやっぱり生きていかないといけないとは思いますけれども。

【有本委員】 
 例えば、去年の分子生物学会でも、こういう議論をするのは、一番端っこの場所で、1万人ぐらいが集まった学会なのに、数十人が集まって、それも夜の一番人の集まり難い時間帯でやるというのが、至るところで学会で繰り返されているわけです。経済学会もしかりだと思うんです。

【黒田主査】 
 経済学でもそうなんですよ。

【有本委員】 
 いろいろ学会でそういう状況。それをどうやって変えていくか。従来型の学会、研究者だけに任せていたのでは、変えることができないと思う。

【黒田主査】 
 そう、できないんです。

【有本委員】 
 何かそういう活動をサポートするような、プログラムがあるといい。

【黒田主査】 
 そうですね。おっしゃるとおりだと思います。やっぱり本当にアメリカのほうは、そういう意味ではプラグマティックですよね。ものすごく思い切ってやっている。
 ほかにいかがでしょうか。郷先生、何かありますか。

【郷委員】 
 前回いろいろ申し上げたんですけれども、助走期間と申し上げたのが、今回それをよく考えてくださっています。専攻をつくるというのは、とても大変だと申し上げたのですが、今回、それはなくなったわけですね。

【黒田主査】 
 専攻はなくしました。

【郷委員】 
 やり方はそういう枠組みじゃなくて、この目的のためにやっていただく、 しかも推進委員会と共同で、行政と大学が一緒になってつくり上げていくという、この考え方は今までになかったんじゃないかと思って、ここは大変すばらしい、いい例になるのではないかと思いました。

【黒田主査】 
 そうですね。専攻というのは、設置指針の問題もありますし、将来もうちょっとこの分野が成熟した段階で、多分出てくることだろうと思います。そういうふうに考えています。

【有信委員】 
 さっき笠木先生言われたことの中で一つ、やっぱり重要な話がまだ議論されなかったんだと思うんだけど、やっぱり政策評価みたいな視点がちゃんと確立していかないと、ここの結果の評価、成果というのがわからない部分があるんですよね。だけど、日本の中で政策評価って本当にやれるんだろうかというのが、またちょっと問題と言えば問題。ここに役所の方がたくさんおられるので、政策評価というのを、正しい形で本当にやるかどうかというのが。
 イギリスだとかアメリカは、わりと平気でやりますよね。ここに何年間かお金を投入した結果がどうであったかというのを、投入の、政策にかかわった人たちと全く別のグループがそれを評価するというようなこともやったりしますけど。

【笠木委員】 
 これは当然入っているんですよね、政策の科学の中に。

【黒田主査】 
 そうですね。それをやらないと、次がいきませんから。

【笠木委員】 
 評価の方法をきちんと、科学的な方法を。

【有信委員】 
 いや、いいんだけど、それがちゃんとできるような体制にならないと、なかなかね。

【笠木委員】 
 そうですね。

【有信委員】 
 せっかくつくっても、活躍する場がなかなかないなという気が。

【森田委員】 
 一応政策評価というのは私もやっていますし、総務省の政策評価独立行政法人評価委員会の委員もずっとやっていますけれども、やはり方法論的にまだ確立されていないところは十分あると思いますのと、政策評価に対する過剰期待があるものですから、あれでみんな評価できると思っているところがあって。ところが、なかなかできないものですから、現実に何が起こっているかというと、膨大な量のペーパーワーク。つくるほうも大変ですし、読むほうも大変だというので、その結果、ほとんどがほどほどにいいではないかという評価になっていて、そのデータを使って予算の査定とか、そういう意味での有効な情報になっていないんですね。だから、それは問題であって。むしろアメリカのGAOとかああいうのがやっているのは、もちろん方法論をきちっとやっていますけれども、手法としては事業仕分けに近いようなことはないかと思います。それでいいのかどうかって、それ自体も研究対象になると思います。評価ができるところはある程度あると思いますけれども、方法とか何とかの合意がなければなかなかうまくいかない。
 文科省の会議で言っていいのかどうか知りませんけれども、大学の評価もものすごい徒労があるものですから、私はなるべく意味のないのは、普通の評価をしてやめたらという説なんですけれども。だから、評価書そのものの作成も大変ですけれども、そんなに評価に期待をすると、かえって悪い結果になると。だから、できるところを着実にやる。その手法をむしろ開発するのは、こういう政策のための科学の課題だと思います。

【黒田主査】 
 経済に係るいろいろな形の政策評価は、やっぱりアメリカを見ていても、完全にターゲットは国際競争力と雇用なんです。その点に絞って、ある一つのポリシーが効果があったかということの評価は、日本でも今、多分やっているでしょうし、やりようはあるんだろうと思うんですよね。

【森田委員】 
 経済学的な場合、事後的にどういう評価があったというのはありますけれども、一つは事前的に、例えば投資効果の分析であるとか、レギュラトリー・インパクト・アナリシスとか……。

【黒田主査】 
 はい、そういうことも必要ですね。

【森田委員】 
 それは手法として、全く勘でやるよりは、はるかに精度の高い情報が得られると思いますけれども、それ自体もかなり多くの仮定に基づいてできているものですから、完璧にそれが当たるとか、評価が適切であるとはなかなか言い切れない。仮定を置くかどうかということについては、むしろ評価の手法とは別のところでの政治的合意の話になると思います。そのプロセスをどう設計して、どういう形での合意できる評価方法をつくっていくかというのは、まさにこの「政策のための科学」の課題だと思います。

【黒田主査】 
 そうですね。おっしゃるとおりだと思います。そういうところまで入らないと、サイクルが一巡しないんですね。

【有本委員】 
 心配なのは、郷先生が指摘されたことです。先だっての2回目の推進委員会で、相澤先生、郷先生も、このあたりのプロセスをきちっと、丁寧にやるようにとの指摘があったと思います。

【黒田主査】 
 そうですね。

【有本委員】 
 11月ぐらいに決めて、その後、拠点整備委員会というものができ、推進委員会が中心となって各提案を再構成するという過程の中で、大学側からそれぞれどれぐらい変更するのか、やりすぎると大学のほうから不満も出かねない。きちっと透明度を高くやらないといけない。

【黒田主査】 
 今、議論していて頭にあるのは、12月の時点で推進委員会が、総合拠点と領域の拠点について、それは選ぶと。ただ、それぞれのプログラムの提案の中で、拠点としては、今のところ12月の時点では選ばれなかったけれども、かなりいいアイデアを持っているところがいっぱいありそうだというケースを、その時点でピックアップしておきたい。その方々も含めて、FSというんですかね、そのプロセスの中に入っていただいて、どうやって生かすかということを考えていくという程度のアイデアなんですけれども。それをやらないと、多分ネットワークがなかなかつくれないんじゃないかということを考えていまして、そういうことを繰り返しながら、ネットワークを拡大していくというのが重要なんだろうと思います。

【有本委員】 
 1回しか公募しないというので、上手にやらないと。もう一遍来年やろうとか改良してやろうということは出来ないのですから。

【黒田主査】 
 それはなかなか難しいですからね。
 いかがでしょうか。ほかに何かございませんか。もしよろしければ、今日いただいた御意見、もう少し精査をさせていただきますが、整備方針と公募要領という形でまとめさせていただいて、審査の基準に関しましては、お手元の資料は非常に大ざっぱな書き方をしていますので、一応公募の段階では、審査をこういう観点からやるということを出さなきゃいけないので、大まかな審査の方法だけははっきりさせておいて、内容的にはどういう提案で、その大学の提案の中で、アドミッションポリシーをどう考えているか、ディプロマポリシーをどういうふうに考えているかということと、我々が考えている拠点形成にどういう形で参画をして、そのプログラムが実効性があるかどうかというあたりが中心になるだろうと思います。あと、費用の使い方とか、実施の体制の問題とか幾つかポイントがありますが、そういうことでやらせていただいて、実際に第4回になりますかね、公募した後に審査に入りますときに、この委員会でもう少し精査して、点数のつけ方とか何とかということは当然考えないといけないと思いますので、その辺はもう一度議論をいただく機会があるだろうと思います。どうぞ。

【森田委員】 
 それで特に異論はないんですけれども、少しお願いといいましょうか、私自身がこうしたほうがいいのではないかと思いますのは、どうしてもこれまでの大学の政策もそうなんですけれども、育成した人材が、キャリアパスという言葉があるんですけれども、どういうマーケットでニーズがあるのかということを、ある意味で言いますとマーケットの規模として想定すべきということと、政策科学の場合には、前に議論で出たかもしれませんけれども、それこそインターンとかそういうのもありましたけれども、マーケットのほうの買い手に合わせたカスタマイズではありませんけれども、そういう仕組みもあり得ると思っています。一方的にサプライサイドだけでいい製品をつくってもなかなか売れないというので、それについてそれぞれの大学で、配慮をいただきたいということはお願いしておきます。

【黒田主査】 
 一応基準の中で、最後のページの一番下から2番目ですけれども、非行政のキャリアパスを担保して、学生募集において持続的な人材育成をする工夫がなされているかということも、一応大学の提案の中から考えるということかと思います。

【有信委員】 
 ただ、デマンドサイドも開拓しないと出てこない部分が。

【黒田主査】 
 出てこないでしょうね。

【森田委員】 
 まだ日本の場合は、デマンドのほうもポテンシャルだと思うんですね。だから、そこのところは開拓してつくって、ニーズをつかんでいかなきゃいけないと思うんですけれども。つくれば売れるだろうというのでは、難しいと思います。

【黒田主査】 
 そうですね。そうだと思います。ありがとうございました。
 それでは、よろしければ、若干もう一度検討して、修正すべき点を修正した上でまとめさせていただくという点を、私に一任させていただいてよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【黒田主査】 
 ありがとうございます。公募の開始がいつごろになるかというのは、スケジュールではお盆明けぐらいという感じで考えておりますけれども、今日のお話を受けてまとめさせていただいたものを、もう一度メールなり、ある場合には御訪問して了解をいただくというプロセスをとりたいと思いますので、それが終わってから公募にかかるという形になると思います。では、ありがとうございました。
 それでは、二つ目の議題ですが、大震災対応に係る取組の進捗の状況につきまして、これはCRDSのほうから御報告いただきます。

【長野(CRDS)】 
 それでは、資料7に基づきまして御説明申し上げます。私どもCRDSにおきまして、東日本大震災を受けて、各種の取組をしてまいりました。それについて御説明申し上げたいと思います。
 これは4点挙げさせていただいておりますけれども、まず一つ目としましては、私ども独自で早期から検討を開始しまして、戦略提言として、「東日本大震災からの復興に関する提言」を、我が国の復興に関して、主として科学技術の観点からどのような寄与が可能かといった観点で提言を取りまとめて、本年5月に発表しております。
 それから、2点目としては、これは戦略提言ということではないんですけれども、センター長からのメッセージ発出ということで、4月には、「福島原発事故の対応における科学者の役割」という形でメッセージを発出し、また6月の終わりには、「緊急に必要な科学者の助言」としまして、同じくセンター長からのメッセージを発出しております。
 次に3点目でございますけれども、これは私ども、ちょっと検討している途上のものでございますけれども、科学的助言の在り方に関する検討ということで、これにつきましては震災の前から私どもは問題意識を持っておりまして、検討を進めておったものでございます。政策形成における科学と政府の行動規範を定めるといったことが、各国で相当動きが加速しています。この中でCRDSとしましては、昨年度よりアメリカ、イギリス、ドイツなどにおける動向を調査して、我が国においてもそうした行動規範を定める必要性について指摘したところでございます。
 本年の3月以降の状況で、さらにつけ加えて検討を進めている状況でございます。この大震災の中では、緊急時において、科学者と政府が果たすべき役割に関する問題というのを改めて定義されたというふうに認識しております。政府が各種の対応をしていく中で、科学的知見に基づく意思決定が求められてきました。その中で、プロセスには、ある種混乱も見られたのではないかといった認識も踏まえて、私どもとしては、我が国における科学的助言の在り方に関する行動規範の案を提示するということを目標としまして、諸外国における動向を、さらに詳細に調査し、関係機関とも調整しつつ、検討を進めたいと思ってございます。その際、特に緊急時における科学的助言の在り方、それから、特に科学技術コミュニティの様々な意見を集約した、合意された声の在り方ということを一つの重要なテーマとして位置付けて、検討を進めているところでございます。
 今後の予定としましては、10月ごろの行動規範の取りまとめを目指しまして、現在海外の行動規範の分析、往訪調査といったものを進めているところでございます。
 ここまでが一つの検討状況でございまして、最後に4.としまして、3ページになりますけれども、これはまだ暫定的なものでございますけれども、私ども、政策提言を行っている機関でございますけれども、それ以外にも学協会等、各種団体等から、東日本大震災からの復興などに関して提言等がなされております。そういったものについての調査・整理をしているというものを御紹介したいと思います。
 私どもが見る限り、学協会、学術団体、経済団体、シンクタンク、NPO法人という、非常に多様な団体からの提言や声明が発出されております。この中で、科学技術に関係するものに、まず私どもなりに着目してみますと、それぞれ独自の視点に基づいた、多様な内容になっていると見受けられております。そこで、これらの提言の内容には、具体的にどんな内容が含まれているのか。また、国で現在検討されているような復興に関する方針の内容と照らし合わせたときに、どういった内容が提言の内容と関係性があるのかといったことについて、状況把握をしようということで整理しております。
 対象としておりますのは、(2)調査方法にありますけれども、6月末までに出されている各種組織を主体として取りまとめて公表された、提言や声明を見てございます。その中で、科学や技術に関係する内容が含まれるものを抽出して見ております。そこで見てみましたけれども、科学技術に関係するような内容が、ある程度含まれるような提言・声明類というのが35件ございまして、科学技術全般にかかわるような提言類は19件ございました。それらにつきまして、把握、整理をしてみてございますけれども、ここでは、東日本大震災の復興対策本部が取りまとめました基本方針の構成に従って、対象とする提言類の内容を分類しております。それが後ろにつけてございますA3の大きな表になってございます。その項目での整理というのと、参考としまして、表の右側のほうにあります、地方自治体、すなわち岩手県、宮城県、福島県の復興の計画の、現在まだ案でございますけれども、それらの記述について、国の基本方針等の関係で、どういった内容が含まれているのかというのを整理して見ております。
 そこで見ましたところ、ここではまだ提言類につきましては、科学技術に関係する、ある部分の内容が含まれるような提言類35件に限って暫定的に整理をしておりますけれども、ここで見ますように、この基本方針の各項目、ここの中で、さらにこの項目は多いんですけれども、科学技術に関係しそうな項目だけをここで整理しておりますが、その項目に沿ったような内容が、各提言に含まれているかどうかといったことで整備して見ております。これで見てわかりますように、かなり多岐にわたって項目に当てはまっておりますけれども、提言の内容が当てはまっていないような空欄になって、全く抜けているような部分が複数見られるということがわかります。
 それから、参考として整理しました3県の分の復興計画では、地域に関係する部分で限って見ますと、ほとんど全ての項目で、関係する計画の内容が含まれていたということが見られるかと思います。これはまだ暫定的な整理でございますけれども、さらにその関係全般にかかわるような提言についても、国の政策との関係ということをもう少し精査してみたいと思いますのと、それから、一部含まれているものも、今現在暫定的な整理でございますので、もう少し精緻に整備・把握してみたいと思ってございます。以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。何か御質問、コメントございますでしょうか。

【有本委員】
 補足をしておきたいと思います。今、長野さんから話があったとおりなんですけれども、科学的助言の在り方という課題は、「科学技術政策のための科学」について2年がかりで研究開発戦略センターで海外調査したり、分析、あるいは政策提言にまとめていく過程で、クライアントの多くが政治家とか、あるいは中央政府、地方政府ということになるので、科学が政治、行政と接近していく。そのときに、両者の間で行動規範、関係性のルールがないと、危ういことになるんじゃないかという問題意識です。内外調査を詳細に行っています。吉川センター長の「科学者の役割」とか「緊急に必要な科学者の助言」というのは、そういうものをベースにした上で、まとめられた訳です。
 その後も、民主党の前の文科大臣の川端先生が今委員長ですけれども、科学技術イノベーション推進調査会でも、政治と科学の関係が3.11に関して大きな議論になりました。政治家は、科学、あるいは学術会議とか各学会との関係をどう距離感を持つべきか。これはいい意味でもありますし、注意すべきなところもある。政治家がここまで関心を持ってくるということはですね。
 そういう意味で、科学の側も、早く議論のたたき台みたいなものをつくらないといけない。海外から直輸入ではダメだし、政治の意思決定のメカニズムとか、社会のものの考え方も違う。JST研究開発戦略センターでは、ことしの秋にかけて行動規範の案をつくろうということにしています。

【黒田主査】 
 どうぞ。

【有信委員】 
 これで言っている科学者の行動規範というのは、今、有本さんの説明にあったように、従来あるものを調査しているということになるわけですね。だから、今回の震災云々ということではなくて。

【有本委員】 
 いや、二つあるんです。従来、アメリカのホルドレン補佐官のところでガイドラインをつくって、各省の、例えばNOAAとか内務省とかがみんなつくり出しています。それからイギリスは、BSEを踏まえてまとめたのですけれども、それ以外に緊急助言システムみたいなのがあるようです。イギリスは。

【有信委員】 
 いや、私が思っているのは、例えば、科学者の団体とか技術者の団体というのは、もともとこういう行動規範というのをそれぞれつくって持っているはずなんですよね。だから、それに対して、こちらはどちらかというと新たにまた政治側からつくって……。

【有本委員】 
 政治の側からはこういうメッセージが出ているだけであって、政治がつくろうという意思はまだない。今大事なことをおっしゃったのは、研究倫理規範は学術会議が2、3年前つくられた立派なものがある。しかし、科学とか研究者のコミュニティ内部活動でなく、科学と政治とか行政とか社会とか科学の外とどうつき合うかという倫理規定、あるいは行動規範は、まだ日本は十分整備されていないということです。

【有信委員】 
 もともとアメリカなんかだと、1900年代の半ばというか、もともといろいろなことがあるたびにそういうことがやられていて、それぞれの団体でつくっていて、日本も笠木先生が会長のときも機械学会でつくったりとか、各学会が倫理規定というのはつくっていますけれども、そういうものが、今言ったように、政治とのかかわりみたいなところまで、具体的にあまり意識はしていないのかな。

【有本委員】 
 私が調べた限りでは、そこら辺はまだ十分カバーされていないですね。

【有信委員】 
 カバーしてないかもしれないですね。

【笠木委員】 
 ちょっと学術会議の側の話を御紹介しますけれども、有本さんたちがいち早くこういうことをお調べになって、レポートも出していただいていたので、これは大いに役に立ったんですが、今回の大震災、あるいは福島の原発事故の後、今、有本さんからも御指摘があったように、政府、行政と科学者の関係とか、メディアと科学者の関係、もう少し広い意味での社会と科学者の関係について、この3.11以降、不具合がたくさん出てきたんです。
 例えば、科学者の知識が事故収拾に生かされないとか、科学者がいろいろな場面で違ったことを言っていて、かえって不安をあおってしまったとか、あるいは、SPEEDIをはじめとする科学的なツールが十分生かされなかったとか、様々なことが出てきて、これは学術会議としても、ちゃんと主体的に取り組むべきだということを、私、ずっと申し上げていて。ちょうど昨日今日、第3部で理学・工学の夏の部会があったものですから、そこで正式に議題で取り上げられて、前に進めましょうということになりました。
 それで、たまたま今回のような緊急時の中で、いろいろな科学と行政の関係、特に政府との関係が浮き彫りになったんですけれども。実はこれ、平時においても全く同じことなんですね。平時のものがちゃんとできていて、その上で緊急時のものができている必要があって。有本さんたちが調べていただいた米国の例とか、それから、この間ベディントンさんが来たときのいろいろな英国の状況とか、きちっとした科学者の役割とか、科学者と行政、社会との関係というのを、日本としても整備をしておく必要があると。
 だから、学術会議としては、科学者が主体となってそういうことをちゃんと考えてつくろうとしているんですけれども、その際に、まさしくここで進めている「政策のための科学」に、科学がどう関与していくかという、一番いい入り口になっているんです。それでこういうことに対する期待があるのと、もう一方で、緊急時の対応については、やはり法的な整備がされないとだめだろうというのは、我々科学者の側のひとつの理解なんですね。つまり、精神論だけではとても動けないので。
 今回の原子炉事故の状況を見ていても、保安院があったり、安全委員会があったりして、その人たちがどのぐらいの話ができたかできなかったか、あるいは、官邸に参与として入った科学者もいましたけれども、その人たちがどうしたかということも含めて、やっぱり法的な整備が必要だろうということもありました。そんなことも含めて、この政策の科学の中で、まさしくエビデンスを持って議論をしていただくと、大変ありがたいと思います。学術会議の側も動き始めたということです。

【黒田主査】 
 ものすごくその課題も重要で、統計委員会のときの話で、カナダというのは、統計局の局長というのは国会指名です。統計の中身について、国会に報告しなきゃいけないという権威を持っていまして、キャビネットがかわっても、その人は変わらない。国会で指名するという形。だから、ものすごく権威があるんですね。だから、そういう形の権威付けというのは、やっぱり組織的にやらないと、なかなか統計のインディペンデンシーとか、そこの中身の精査というのは、大なたを振るえないですよね。そういうのはおっしゃるとおり、やっぱり組織だと思いますけれどもね。法令も含めてやるんだと思いますけれども。
 よろしいでしょうか。それでは、ちょっと時間が押していますので、三つ目の議題で、公募型の研究開発プログラムについて、進捗をRISTEXのほうから。

【斎藤(RISTEX)】 
 それでは、公募型研究開発プログラムの進捗状況につきまして、資料8に基づいて、社会技術研究開発センターの斎藤より説明を申し上げます。
 公募型の研究プログラムにつきましては、この推進委員会で決定された方針、基本構想及び基本方針を踏まえ、6月3日付けで文科省から方針の通知をいただきました。これを受けて、JSTの側でプログラムの内容を固めた上で、「社会技術研究開発主監会議」というガバナンスのための会議、及び理事会で審議をいただいた上で、社会技術研究開発の新しいプログラムの一つといたしまして、名称を「科学技術イノベーション政策のための科学の研究開発プログラム」とし、プログラム総括として、この推進委員会の委員も務めておられる森田先生にお願いすることを含めて審議をいただき、決定をしたところです。これについては、対外発表もいたしました。
 これに続きまして、森田総括の御指名を踏まえて参集いただきましたプログラムアドバイザーの方々、それから、この推進委員会の黒田主査と笠木委員にもお声をおかけして、プログラム会議を6月20日に開催いたしまして、具体的な提案公募のための募集方針、募集要項の検討、議論をいただきました。これにより決定された募集要項を踏まえて、7月5日から、この公募型の研究開発プログラムの提案募集を開始いたしました。プレス発表、ウェブ等での公募に加えまして、7月25日に東京で募集説明会を開催いたしまして、説明会自体は出席者40名強でしたが、あわせてU-STREAMによる動画配信を実施いたしまして、数十名の方に御試聴いただいたところです。
 この説明会の場では、特にいろいろな御質問がありましたけれども、この「政策のための科学」の事業の中で、データ・情報基盤についての事業も含まれておりました関係で、研究を進める上で必要なデータについても、いろいろな材料として使えないかという御質問がございまして、初年度からは難しいかもしれないけれども、2年度目以降、データ、情報基盤の整備に伴って、適宜政策研をはじめとした関係機関との連携も期待されるということをお答えしたところです。
 あわせて、「政策のための科学」事業の全体方針の中で、特にこの公募プログラムのねらいの一つとして、研究者の裾野を広げるといいますか、新しく参入する方の幅を広げるという、いわゆるネットワーク形成・拡大の観点もお示しいただいたところですので、募集要項の中の留意事項の一つとして、研究開発プロジェクトの公募やネットワーク構築のための取組により、幅広い分野と関連する学際的分野において、研究者の裾野を広げていくことが重要と指摘した上で、若手の登用ですとか、他分野からの参入等を積極的に進める、さらにはプロジェクトの実施に当たっても、人材育成や将来のキャリアパス展開の観点に留意するといった事項を明示したところです。
 あわせて、選考に当たっての基準の中にも、加点要素の一つとして、コミュニティの拡大や人材育成を考慮した提案となっているかどうかという点も明示をしたところです。
 今後の予定ですが、8月末に提案募集を締め切りまして、9月にプログラム会議を交えた書類選考を進める予定にしております。10月17日の面接選考会を経て、10月末から11月初旬ごろには採択課題を決定したいと考えております。この時期の推進委員会の開催のタイミングにもよりますけれども、適宜この推進委員会の場でも、採択課題については御報告、説明を申し上げたいと考えております。これを受けて実際の研究計画を固め、契約を結んだ上で、11月以降、研究開発プロジェクトを開始したいと考えておりまして、これによって、初年度の研究実施期間は4か月強ということになりますけれども、できる限り効果的に研究が進めばと考えております。
 裏面以降、公募に当たりまして、これも公表しております、森田プログラム総括からのメッセージを添付させていただいております。文部科学省から示された方針の中に、大震災を踏まえたいろいろな研究課題についても配慮するようにという御通知がございましたので、これを受けまして、総括のメッセージとして、その最後のほうのパラグラフに、東日本大震災の経済的・社会的影響を受けて、科学技術やそれにかかわる意思決定の在り方が問われていることから、震災後の政府、科学コミュニティの対応等にかかわる検証、反省等も踏まえながら、大震災後の社会的ニーズ、重要課題、科学技術イノベーション政策上の課題を的確にとらえることが重要な視点になるというメッセージを盛り込んでいただいております。
 私のほうからは以上ですけれども、このプログラムの総括をお願いしております森田委員のほうから、何か補足、コメントがございましたらお願いいたします。

【森田委員】 
 特につけ加えることはございませんが、もう募集がスタートしましたので、できるだけいい提案がくることを期待しているところでございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。何か御質問、コメントございますか。

【有信委員】 
 森田先生のこの文章を読むと、やっぱりダブるんですよね、MOTが出てきたときの議論と。あの当時も、やっぱり研究開発費を投入したにもかかわらず、イノベーションに結び付いていないという議論が散々やられて、その原因は何かということを議論した結果、やっぱりマネジメントに問題があるのではないかというところに至って、もっとマネジメント力を強化しなきゃいけないということで、MOTのプログラムをいろいろな大学につくって、その結果、何年かたって、それで今の産業の状況が、効果があったかどうかという状況になっているわけです。一応MOTという考え方そのものは大分定着はしてきましたけれども、そういう時期になっている。今回、次は政策というもっと大きな次元での話になりますから、それがうまく回れば。

【黒田主査】 
 そうですね。それは非常に重要です。

【森田委員】 
 応募がどういう方からくるかわかりませんけれども、大学関係の方も多いと思いますけれども、その場合に、やっぱり大学のマネジメントも次にイノベートしていただきたいと。

【黒田主査】 
 だんだん自分の首を自分で締めるような。

【有本委員】 
 この公募は、4回あるんですか。

【斎藤(RISTEX)】 
 はい。

【有本委員】 
 初年度どういったテーマが選ばれたかというのは、研究者コミュニティーに強いメッセージになると思いますので、大事だと思います。森田先生、よろしくお願いします。

【黒田主査】 
 それでは、どうもありがとうございました。
 4番目の議題ですが、この間開かれました、国際フォーラムについての結果報告を、事務局のほうからお願いします。

【斉藤調整官】 
 資料9に基づきまして、御報告させていただきます。ここにいらっしゃる先生方の多くにも御出席いただきましたので、本当に簡単に御報告だけさせていただきます。
 6月22日に、本事業の開始にあたりということで、このプロジェクトの御紹介と、今後の展望に向けて広く御議論いただくということを目的に、文科省、文科省の政策研、科学技術振興機構の研究開発戦略センター(CRDS)とRISTEXの共催によりまして、国際フォーラムを開催させていただいております。文科省の一番大きい講堂で開催しまして、来場者が342人ということです。加えてインターネットの動画配信ということで、生中継及び、後からも動画の録画したものを見られるような状態で、今現在も公開されている形になっていますが、合計で1万7,000件もアクセスをいただいておりまして、非常に高い関心を持って見ていただいたという状況になっております。
 内容的には、次のページにスケジュール、プログラムが書いてございますけれども、鈴木副大臣にも来ていただきましたし、ここにいらっしゃる先生方にもいろいろ御協力をいただきまして進めております。海外からということで、アメリカの国立科学財団(NSF)のSciSIPプログラムのディレクターであるジュリア・レーンさんと、OECDに行っていらっしゃいます原山先生にも来ていただきまして、国際的な視点でもいろいろ情報提供をしていただきまして、やりとりしました。
 パネルディスカッションも行われ、会場からもかなり活発な意見も出まして、盛り上がったディスカッションになりました。結論といいますか、パネルディスカッションの結果、やりとりについては、別紙2のほうに箇条書きで書かせていただいております。先ほど御紹介しましたとおり、この動画もまだ見られる形になっておりますので、それぞれについてどのような背景で、議論でというところは、動画も御覧いただけるかと思っております。以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。何か御質問、コメントございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、その次の議題にいきます。私のほうから、資料10ですけれども、先ほど御報告いただいた国際フォーラムのすぐ後でございますけれども、6月27日から6月30日の間、イタリアのコモの近くで、ロックフェラー財団のベラッジオ・センターで、EUとアメリカの間のScience of Science Policyの、特にデータベース、それからリサーチャーズIDみたいなものの共通化ということを議論の課題としたワークショップがございました。急遽招待されて行ってまいりましたが。
 そこにありますように、アメリカのほうは、再投資法を含めて、科学技術がいかに成果をもたらしているかということをきちっと測定としていくということに関して、2005年ぐらいからでしょうか、スタートをしていまして、いろいろなプログラムを開始しております。アメリカのいいところは、一つの役所だけがやるのではなくて、役所間のインターエージェンシーのプログラムにすぐ乗っかって、それを指導しているのがホワイトハウスのOSTPなんですけれども、そこにOMBがくっついて予算の配分もして、13省庁、インターエージェンシーのプログラムが展開されていくと。
 先ほど、国際シンポジウムに出席いただいたジュリア・レーン氏がNSFの代表として、そこにありますように、STARMETRICSというデータベースをアメリカでかなり強力に進めておりまして、STARMETRICSの国際版を国際協調でつくっていきたいというのがアメリカの意図のようでした。EUに対して、それを一緒にやらないかというプロポーザルをして、EUと相当議論がなされたということでございます。
 EUのほうは、EUコミッション、EUパーラメントのメンバー、それから、コミッショナー、カウンセルメンバー、それぞれ出席しておりまして、それぞれ立場が違っているというのもあって、相当議論が紛糾して、そう簡単にアメリカの提案に乗らないという感じの議論が延々と続きましたけれども、結果的には、パーラメントのメンバーの指導力もあって、ぜひアメリカ並みのScience of Science Policyをやりたい、やらねばいけないという方向に徐々にまとまっていきまして、アメリカの作戦勝ちということでしょうか。最終的にはアグリーメントのファイナルドラフトが数日前に送られてまいりましたけれども、そういう方向に徐々にいこうという機運になっております。
 アメリカのSTARMETRICSというのは、1ページ目にもありますように、STARMETRICSという名前だけを見るとものすごく国際的な感じがしますけれども、Science and Technology in America’s Reinvestmentなんですね。Measuring the Effect of Research on Innovation, Competitiveness and Scienceということで、アメリカの国際競争力、そしてイノベーションを進化して、どういうやっていくかということを中心にやっている、データベースを今つくることをやっている。
 ケミストリーの分野を中心につくり出しまして、どういうグラントをやろうとか、どういう研究者にいったか、その研究者が、どういうジャーナル等々にペーパーを出して成果を得たか。それがどういうパテントに結び付いたか。なおかつそのパテントがどういう企業でつくられたか。その企業からどれだけの雇用が創出されたかというところまでを、全米について、全米の大学を中心に最初やり出したんですが、徐々に大学の研究者も、それから、企業家も、それに自分たちのデータベースが乗っからないと損をするという機運が出てきたと。それでオープンイノベーションのエンジンになりつつあるということを、盛んにジュリア・レーンは強調しておりまして、そういうものをケミストの分野だけではなくて、アメリカでは広げていきたい。それをScience of Science Policyの基幹になるデータベースとしてやっていくんだということを主張していました。
 ジュリア・レーンはその前の国際フォーラムにも来まして、彼女も1週間ぐらい日本にいたと思うんですけれども、NISTEP、CRDS等々との議論、それから、国立情報研究所との議論も踏まえて、日本のデータベースがかなり思ったより進んでいるということに感心して帰っていきまして、EU側に対して、日本はこんなに進んでいるんだよということを、国際会議のときのパワーポイントを使って彼女は説明をしていました。そういう意味では、日本と一緒にぜひやりたいという気持ちが強くて、我々――向こうのほうですけれども、自分たちにできることは何でもやるよというふうには言ってくれています。これから、国際化に向けての対応としては、非常に重要な関心事になるんだろうと考えています。
 よろしいでしょうか。何か御質問があれば。

【有信委員】 
 やっぱりこういうのは重要ですよね。

【黒田主査】 
 そうですね。

【有信委員】 
 ただ、精緻にやろうとするといっぱい問題があるものだから、そこでつかえちゃうんだけれども。だけど、アメリカ流に、こういうものを多少問題があるとしても、関連性をとりながらやっていって、データベースにしてということは。

【黒田主査】 
 すごい馬力ですよね。

【有信委員】 
 ええ。この馬力はすごいですよね。

【黒田主査】 
 やっぱり感心したのは、プログラムをつくっているのはNIHなんです。全然関係ない。それでDOEも関係しているんですよ。それでNSFが音頭をとって、そこらが全部連携をとってやる。参加者の30人のうちの3分の1まではいかないですけれども、IT関係者、インフォメーションテクノロジーの研究者でしたね。そういう意味では、ちょっとうらやましいという感じでしたね。

【笠木委員】 
 この間、原山さんも言っておられたけれども、OECDの中で、今後の大きな活動の軸の一つにこれはなってきているんですけれども、やっぱりアメリカは一番進んでいるものですから。特にSTARMETRICSは上流側にかなりフォーカスしているんですよね。OECDのCSTPの中の議論も、従来はかなり下流も含めてということだったんだけど、ややそっちに傾いているんですね。ただ、ヨーロッパの国々は、若干アメリカとは違うスタンスを持っていて。日本の活動と諸外国と、何かうまく連携をする仕掛けが必要かと思いますけれども。

【黒田主査】 
 CSTPに笠木先生もいらっしゃるし、グローバルフォーラムのほうは永野先生もいらっしゃるし、原山さんもいらっしゃる。連携するチャンスだと思うんですね。

【笠木委員】 
 日本としてうまく利用する……。

【黒田主査】 
 ええ、そういうスタンスが絶対必要だと思いますね。アメリカはほんとものすごい戦略的ですよね。だから、America’s Reinvestmentというのが入っているというのにだれも気がついていない感じなんです。びっくりしたんですけれどもね。

【有本委員】 
 今のお話は大変大事で、最初からこのプログラムは積極的に国際的に協力していくということ。中国とか韓国も、関心を高めているようです。

【黒田主査】 
 そうですね。中国、韓国はものすごく関心あると思いますよね。ぜひよろしくお願いします。

【斉藤調整官】 
 済みません、本件に関連しての動きなんですけれども、「政策のための科学」の情報、データ基盤に関しましては、科学技術政策研究所を中心にやっていただくということで、4本の大きい柱のうちの一つということになっています。日本でこの手の活動で関連してきますJSTの科学技術情報提供、先ほどお話がありました国立情報学研究所で科研費のデータの提供ですとか、大学とのネットワークづくりというのをやられている。その3者に特に集まっていただいて、これの受け皿という意味もそうですし、日本国内の関連のデータ、研究者のデータベースや論文のデータベースや特許のデータベースをいかにひも付けして、「政策のための科学」で使いやすいようなインフラにしていくかという活動を、このプログラムの開始当初からずっとやっております。
 当初、あまり密接にやりとりがあったわけではなかったような感じはあったんですけれども、最近はしょっちゅう一緒に集まっていただいて、どういうふうにやるかというのを一緒に御議論いただけるような環境が整ってまいりまして、まさにこういう方向で、日本国内も関係機関の調整が進みつつあるというような、このプログラムをきっかけに進みつつあるというような情報もございますので、またもう少し具体的に進みましたら、ここにも正式に御報告なりをさせていただきたいと思っております。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、最後ですが、「科学技術イノベーション政策のための科学」ということをこれから推進していくことについて、そこから得られた知見や成果をどう集約し、どう構造化していくか。これは非常に大きな課題なんですけれども、そのやり方につきまして、事務局のほうから御説明をお願いしたいと思います。

【斉藤調整官】 
 はい。御説明させていただきます。
 本日、前半で御議論いただきました人材拠点ですとか、公募のプログラムですとか、後半に出てきましたデータの基盤の話もそうですけれども、この事業は、様々な観点でいろいろな活動が行われております。そこから得られてきます様々な成果、知識ですとか手法ですとか論文や提言やいろいろなものが出てくるかと思うんですけれども、そういうものを政策形成や社会における共有の資産として広く活用していくことが重要であろうというふうに思っております。客観的根拠、エビデンスを扱う際には、政策上の課題を抽出して構造化して、さらにそれを踏まえて研究において明らかにすべきことや、得られた客観的根拠を構造化して理解することなどを進めていく必要があるというふうに思っております。
 第1回のときに議題になりました基本構想の中にも、成果を集約・構造化する機能を構築することが重要であるというふうにされておりまして、同じくその日に掲げました基本方針の中にも、文部科学省が中心となりまして、科学技術政策研究所、科学技術振興機構等の関係機関と協力して、この事業で出てくる成果を集約・構造化するための方法論、体制を検討することというふうにされている状況でございます。
 これまでの状況としまして、科学技術振興機構のCRDSのほうで、今まで本事業に関する政策プロポーザルなどをいろいろやっておりますけれども、関係機関との協力をしつつ、検討の準備をしていただいておりまして、つい先日8月5日にも、我々政策科学推進室ほか有識者の方が集まり、準備会合ということで問題意識の共有などが行われたというような状況になっております。
 以上のようなことを踏まえまして、本事業全体から出てくる知見を集約・構造化するというような取組のうち、特に専門的な検討が必要であるもの。よく御指摘されますのは、この分野の知見を集約・構造化するということ自身が研究テーマになる程であって、非常に難しい問題であるというような御指摘をいただいておりますけれども、まさに専門的な検討の部分に関しましては、先ほど出ていました科学技術戦略センター(CRDS)のほうで、関係機関との協力の上、取りまとめて進めていただくのがよろしいのかなと思っております。
 また、御議論いただきました人材拠点が整備されました暁には、人材育成拠点の皆様にも入っていただいて密接に連携をとりながら、いかにその成果を体系的に整理、分析していくか。そのような成果をいかに社会に活用するための効果的な手法を考えていくか。さらにはコミュニティをはじめとした、多様なステークホルダーの幅広いネットワークをいかにつくっていくかというようなことが重要かと思っております。
 ということで、23年度中は予備的な検討ということで、引き続きCRDSのほうでそのような取組をしていただきますとともに、24年度以降、本格的に体制面も含めまして、しっかり進めていければというふうに思っております。御説明は以上でございます。

【黒田主査】 
 ありがとうございました。何か御質問ございますでしょうか。知見・成果の集約・構造化、まだまだ議論をしていかなきゃいけない部分がいっぱいありまして、この間の準備会合でも、まだ最初のきっかけがつかめたという段階ですけれども、議論を重ねていただきたいと思います。よろしゅうございますか。

【有本委員】 
 さっき話題になりましたが、研究計画学会とか公共政策学会とか、科学技術社会論学会とか、いろいろな関連の研究者コミュニティーが動いている。さらに広げるためには、理工系の学会ですね、機械学会、応用物理学会、化学会とか、あるいは経済学会もそうなんですけれども、そういうところにもこの活動を広げていくということが重要。ネットワーク、プラットフォームを広げていくことが大切です。

【黒田主査】 
 ありがとうございます。ほかに何かコメントはございますか。
 では、この件に関しましては、引き続き進捗を御報告いただくということで進めていただきたいと思います。
 最後に、局長がお見えですので、一言何か。

【合田局長】 
 本日は、誠にありがとうございました。回を追うごとに着実に議論を深めていただいているなということを、今日も実感をさせていただきました。私自身は大変残念なことに、今日も遅刻してきて申しわけなかったんですけれども、なかなか議論に実はキャッチアップできていなくて、私の頭の中はまだ星雲状態なので、もう少しどこかできちんと勉強して追いつきたいなと思っています。
 事柄の性格上、非常に多面的な観察が必要なような気がしていて、さっきのお話でも、インターナショナルなセッティングで、共通の話題として議論できる部分と、日本の特殊な文脈の中で議論しなきゃいけない部分とがあって、多分そういう意味である種のバイリンガルな人材であることも必要なんでしょう。その人材養成拠点といっても、以前から議論に出ていますように、総合的な拠点というものもあり得るのかもしれませんが、いろいろな部分、分野分野で特色があるような、そういう拠点があちこちにある状況の全体が、ある種の拠点をネットワークとして形成するといったような発想が必要なんだと思います。人材を育てるというと、その人材を育てる人材を育てるところから議論しなきゃいけないということもあるし、いろいろな問題があるなといったようなことが、頭の中でぐるぐるぐるぐるしているということなんですけれども。
 先生方のお知恵をお借りしながら、我々としても、我々として何をやっていかなきゃいけないかということを一生懸命考えていきたいと思いますので、今後とも引き続きよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、今後のスケジュールについて、事務局のほうから。山下さん。

【山下室長】 
 本日、御議論ありがとうございました。いただいた御意見、もう一度我々のほうでも精査いたしまして、主査とも御相談の上、必要に応じて先生方ともう一度御報告、あるいは、メール等々で御相談させていただきながら着実に進めていく観点から、人材拠点の公募については、できれば8月に公募をきちんと行って、説明会もやると。無理にということではありませんけれども、きちっと進めていく形をとりたいと思ってございます。
 先ほど、主査のほうからもお話かございましたように、資料2にもありますとおり、次回の委員会につきましては、公募がスタートとして申請が出揃うであろうという時期を見はからって10月あたりということで考えたいと、予定させていただきたいと思ってございます。以上でございます。

【黒田主査】 
 どうもありがとうございました。それでは、第3回の委員会をこれで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 

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