国立研究開発法人(仮称)制度の在り方に関する懇談会における主な指摘事項

平成22年3月
国立研究開発法人(仮称)制度の在り方に関する懇談会

1.国立研究開発法人の位置づけ

研究開発法人は国家戦略に基づく基礎研究や国家基幹技術等の研究開発に取り組む主体であり、我が国の国際的な知的優位性を確保する拠点である必要がある。

 ■研究開発法人は、我が国が国際競争に打ち勝つため、世界トップレベルの研究拠点となって科学技術・イノベーションを創出する。

○研究開発法人は、世界的なブレイン・サーキュレーション(頭脳循環)の中で優秀な研究人材を引き付けるような拠点とならなければならない。(鈴木文部科学副大臣)

○現行独法の課題を解決しながら、「国の期待」を実現していくための切り札となるとともに、世界経済における日本の競争力を高め、日本の製造業のグローバル競争力向上に貢献する活動や、先端性が高く、不確定要素が多いため、リスクの検討と解決に期間を要するような研究開発を推進して欲しい。(児玉 三菱重工業技術本部副本部長)

○科学技術の領域における研究開発法人の使命の一つには、“尖った”科学的優位性と人材の育成による、急成長分野における国際競争力の強化があり、高度な機動力を要する。(笹井 理化学研究所グループディレクタ)

 ■研究開発法人は、民間や大学等では実施が困難であるような国家戦略に基づく研究開発や基礎・基盤的研究能力を維持、推進する主体である。

○国の研究開発法人は、国の研究戦略について、組織としてトップダウンで研究開発を実施できる体制を持つ。世界水準の研究開発システムを構築することを目指すべきであり、科学技術創造立国実現の中核を担う機関となるべきもの。(野依 理化学研究所理事長)

○宇宙開発のような国家基幹技術や太陽光発電は国策なくして民間だけはできない。推進主体が必要。この事例が示すように、国立研究開発法人の位置づけの議論は、我が国のイノベーション牽引エンジンの全体像を明確化し、その上に立った議論をすることが大切である。すなわち、産業と大学と国立研究開発法人の三位一体的な視座に立った日本のイノベーション牽引エンジンの枠組みにおいて、制度設計と各論を具体化するべきである。(柘植 芝浦工業大学学長)

○深海地球ドリリング計画のような、国際的な大型プロジェクトは、大学のような個人研究主体では成し得ず、国としての推進が必要。(平 海洋研究開発機構理事)

○民間ではできない、時間や資金を要する基礎的研究、実証試験、海外を含め広く英知を集める必要があるような研究開発については、研究開発法人で担うべき。(鈴木副大臣、児玉副本部長)

○国として必要な任務を着実に遂行するためには、長期的なビジョンに基づく研究基盤の維持と確保が極めて重要である。また、国際的要請に基づく研究協力などの活動については、国の全面的な支援の下に着実に推進すべき。(米倉 放射線医学総合研究所理事長)

○研究開発法人の使命には、例えば、海洋開発、宇宙開発、スーパーコンピュータといった大規模研究開発や、民間や大学等では実施が困難な国力を高めるために必須の持続的基盤整備といった国家レベルでのインフラ整備もある。(笹井ディレクタ)

○民間企業における研究開発は、利益にならないことは手がけづらく、大学等における基礎研究はピアレビューが基本であるため、特定課題が細切れになり長期的に取り組みづらい。波及効果の高い、幅広い研究開発のシーズとなるような汎用基盤技術の発展には、ロードマップやデザインを持った形での研究開発プロジェクトとして推進することが重要である。(長岡 一橋大学教授)

■研究開発法人には、研究開発の実施又はその支援、基盤の整備を多様な手段で行うことによって、成果を社会に展開し、民間のイノベーションを促進するという重要な役割がある。

○基本的な独法の役割は「橋渡し」である。大学等のシーズをくみ上げ、それを最終的な出口である民間企業や社会の現場へつなげるための非常に重要な役割を持つ。(米倉理事長)

○研究費配分機関による競争的資金を原資とする研究は「国の戦略に基づいた国家的研究」であることが再認識されるべき。そのような競争的資金は多様性に富む必要がある。(中村 東京大学大学院理学系研究科教授)

○民間企業は自前による基礎研究投資から実用化という流れが厳しくなっており、第三者に頼る状況になっている。このため、大学等が基礎科学の研究成果を生み出し、民間企業がそれをイノベーションとしての成果を創出するようにして事業競争力を高めていくためには、大学、各研究開発法人が連携し出口を見据えてその間の技術の成熟、応用化等を担っていくようなオープンイノベーションの流れを(法的環境も含め)国全体の戦略として進めていくことが重要。(丸島 金沢工業大学大学院教授)

○研究開発法人は、国全体のイノベーションサイクルを視野に入れ、大学等の基礎的研究のシーズを民間企業、ベンチャー企業によるイノベーションのニーズに適合させていていく、バトンゾーンとしての役割がある。(中村 日立製作所取締役)

○研究開発法人は、日本の研究開発システムにおけるネットワークのハブとして、イノベーション創出に向けて主導的な役割を発揮することが重要(相澤 総合科学技術会議議員)

○研究開発法人の機能には、研究開発そのものの推進と研究開発の基盤の整備と支援がある。基盤の整備と支援には、プログラムの管理・運営を含む研究資金の配分、標準化等による国の知的基盤強化、科学技術を国民につないでいくこと等の重要な機能がある。(相澤議員)

○研究開発法人が行うプロジェクトの実用化の際の技術の移転やそれに伴う人の移動については国全体を見渡した整合性ある計画を立てるべき(岡﨑 日本原子力研究開発機構理事長)

■研究開発法人は、国際的に卓越した優秀な研究者、若手研究者の育成、供給の場となり、また、彼らにとって魅力的な研究拠点となるとともに広く科学技術に対する国民の理解を得、説明責任を果たすものとなるべき。

○国家として必ず維持しなければならない技術を明確に定義し、それを長期的に維持していくため、その基盤となる技術者、研究者を運用組織が抱えていかないと長期的な研究開発は実施できない。(平理事)

○研究開発法人には、大学のみでは供給困難であるような政策的、長期的に国に必要な研究人材等の育成・供給という役割がある。(米倉理事長)

○研究所というのは、プロ野球のチームと同じであり、選手個人の成績は研究者個人の評価となる。しかし、個人の成績だけでなく、チームへの貢献度も当然考えなければいけない。これで選手が良くなる。強いチームで競争に勝ち残ることで人が育成される。いつも負けているところからはいい人は出てこない。理想的な「研究好循環」というのは、個人の研究が向上すると個人が利を得、研究機関が利を得、そして社会が利を得るようにあるべき。(中村教授)

○若手研究者がいきたがるような、輝くような研究開発法人が必要。輝いているところには資金も集まる。いい人材を引っ張り合うような競争、売りを作り出すようにすることが必要。(中村教授)

○大学にはないような独創性、国際性、自由度を強く保障する研究体制を構築し、人材の厳格な評価、国際公募の実施を行うべき。一方、若手人材に対する助言機能の充実、また彼らに雑務をさせないことなど、研究開発法人には優秀な次世代エリート研究者を育成するシステムが科学技術振興国との差別化の観点で必要。(笹井ディレクタ)

○研究開発法人は、民間企業の研修員を受け入れることなどにより、研究開発関係者の育成に対して積極的に貢献するべき。(笹井ディレクタ)

○研究開発法人には、人材育成、国民への説明責任といった役割が非常に重要。(中村取締役)

○研究開発法人には、科学技術を国民につないでいくこと等の重要な機能がある。(相澤議員)

○5月に米国の研究所を訪問して実感したが、日本も「独立行政法人」ではなく「国立研究所」という名称の方が良い。(野間口 産業技術総合研究所理事長)

 ■研究開発法人は、それぞれのミッションが明確化されなければならない。

○それぞれの法人が持つべきミッションを明確化すべき。(児玉副本部長)

○世界最先端の知のフロンティアを築くような(知的)開拓型研究所、産業技術の研究を中心とするミッション型研究所といったミッションの明確化による差別化が必要。(角南 政策研究大学院大学准教授)

○Plan-Do-Check-Act(PDCA)サイクルの実効性を高めるには、ミッション、機能を明確にすることが極めて重要。(相澤議員)

 2.研究開発法人の業務の特性

研究開発法人の業務は、国家的に重要な研究開発や、基礎・基盤的研究能力の確保、それらを担う人材の育成・維持といったものであるため、人材、予算、組織に関して長期にわたる強固な安定性が必要である。

 ■国家的に重要な研究開発には、長期性、予見不可能性や分野融合といった特性があり、営利的業務とは異なり、国家的視点での安定的かつ柔軟な実施が必要である。

○深海地球ドリリング計画は、長期にわたる科学計画であり、プロジェクトの目的達成までの予算の確保や中期目標・中期計画における明確な位置付け等、安定的実施を確保することが必要。(平理事)

○国家戦略で進める高速増殖炉サイクルや国際約束に基づくITER計画等は長期の研究開発期間と多額の資金投入が必要。(岡﨑理事長)

○10年、20年を超えるような長期性が求められる研究活動を配慮すべき。5年経過すれば組織がどうなるかわからない現行制度は、巨大科学技術を扱う組織では取り組みづらい。(岡﨑理事長)

○新興国の優秀な研究者にはまだ促成栽培的な要素がある。日本の強みは明治時代以来、応用だけでなく基礎的な分野を非常に幅広く研究をしてきたことにある。それらの分野をリンクさせ産業につなげていくことで新興国との差別化が生み出される。(笹井ディレクタ)

○研究開発には、不確実性に挑み、リスクを採るといった特性とともに、最初に優位性を確立させることが重要であり、論文や特許で二番手となっては意義が喪失するように、他と競争し、先行しなければならない特性がある。(長岡教授)

○研究開発には、予見不可能性、不確実性がその源泉にあるため、重複の排除は重要であるが、良い競争を起こす意味では重複していた方がよい面もある。(長岡教授)

○国際的な視点に立てば、様々な領域が相互に関連し、融合しているため、研究開発には、自然科学だけでなく、社会科学、人文科学が含まれ、そういった研究開発を担う法人もあるべき。(青木 スタンフォード大学名誉教授)

○研究開発は、厳密なPDCAサイクルを適用できるような、無機的なものではなく、有機的な競争と共生の中で新しいものが生まれてくるものであり、研究開発やイノベーションというのは事前に計画しきれないところに特長がある。(鈴木副大臣)

○研究開発を定型的な業務として行うのはイノベーション創出の観点からは非常にマイナスである。(長岡教授)

■政策課題への対応やイノベーション創出のためには、基礎・基盤的な研究能力を維持しておくことが重要である。

○科学技術の基礎的な試料提供等は収益性がない。企業的コスト管理手法を導入すると、そのような事業として成立しないものはやめることになる。このように、企業的な業務と国の研究機関が実施すべき業務を混在して議論してはいけない。科学技術や環境研究の基礎的データ集積などの重要性が高まっており、国として基盤的業務を実施していくためには予算的制約が生じているのではないかと感じている。(大垣 国立環境研究所理事長)

○課題解決型の研究課題の場合は、イノベーションとして基礎から社会への具体的な適用までつながっており、長期的に基礎とイノベーションを常に一緒に動かしていかなければならない。(大垣理事長)

○世界水準をしのぐ基礎科学力なくして、我が国の未来はない。各府省がSTI(サイエンス・テクノロジー・イノベーション)のSとTをより積極的に担い、基礎研究の重要性を認識すべき。(野依理事長)

○国として必要な任務を研究開発法人が着実に遂行するため、長期的なビジョンの下に、基盤(研究者、技術者、予算等)を維持・確保しておくことが必要。(米倉理事長)

○科学技術文献に基づく成果の方がその質が高く、内容に広がりがあることがわかっているが、日本においては、サイエンスとの相関が非常に弱く、サイエンスの競争力がまだ十分にない。(長岡教授)

○大型の研究基盤を支えるには、その開発をしていくために研究力が必要。それは大変な負担であるが、研究基盤を開発、改良し続け、アップデートすることで、最高の研究水準を維持できるため、それには研究者が関わっていかなければならない。さらに、最高の基盤には多くの優れた研究者が集結する。(野依理事長)

 ■国家的に重要な研究開発に係る研究者・技術者の育成・維持を研究開発とともに一体的に行う必要がある。

○国家的に重要な研究開発を通じ、人材の育成に資することは研究開発の重要な任務である。(平理事、岡﨑理事長)

○研究開発法人には、大学のみでは供給困難であるような政策的、長期的に国に必要なより高度な人材等を現場での経験を通じて育成・供給するという役割がある。(米倉理事長)

○研究開発と人材育成の一体化が必要。(中村教授)

 ■研究開発法人には、国家の知の総力を結集して戦略的な分野に取り組み、先端的な優位性を形成するという役割があり、新たな知の創生、継承といった役割を有する大学等と違いがある。

○研究開発法人については、重点分野を定め、出口を見据えて研究開発等を進め、大学等については、新しい知識を創生していくといった観点で役割を整理することが必要。国による意思と適切な課題設定を行い、国としての総力を結集できるような組織的な特性があることを明確にすべき。(佐々木 学習院大学教授)

○大学等は日本の学問の土台であり、その役割は持続力・包括力を特長とした知の創生と継承であり、人材育成においては平均値の底上げがある。一方、研究開発法人の役割は、機動力・専門力を特長とした戦略分野に特化した知の創生であり、日本の国際競争力、優位性に資する特定領域の頂点(ピーク)を形成するとともに、国力の基盤整備を行うことである。(笹井ディレクタ)

 3.研究開発法人の業務運営

研究開発法人には、国家的な研究開発だけでなく、基礎・基盤研究や不確実性を許容できるような柔軟かつ弾力的なマネジメント構造、ガバナンスが必要。

 ■研究開発法人の業務運営には、その時々の国家的な研究開発課題に対応できるトップ・マネジメントや基礎・基盤研究、科学の不確実性を許容できるような、機動性と柔軟性を併せもつガバナンスが必要である。

○現行独法制度には、トップ・マネジメントをできることに意義がある。(野依理事長)

○柔軟な研究開発システムを持つべきもの。(野依理事長)

○研究開発独法は、それぞれの研究開発独法によって様々な目的を持っているため、多様な目的それぞれを達成する上で最適な運営形態を可能とする制度にすることが必要。(野間口理事長)

○国家的に重要なプロジェクトを着実に推進すると同時に、そのプロジェクトと基礎・基盤研究や廃棄物処分が共存できる、多額の資金・人材を安定的に確保するためのスキームが不可欠。(岡﨑理事長)

○将来起こるリスクに対し、弾力的に対応ができるような、例えば長期の借入金制度の運用等のスキームが必要。(岡﨑理事長)

○研究開発法人は、(通常の独法と)ガバナンス構造が異なる。(鈴木副大臣)

○研究開発法人はミッションが明確に違うため、柔軟に業務のマネジメントできるようにすべき。(角南准教授)

○製品の実用化、事業化のための技術開発で国の経済発展に資するのは民間企業が主体的に担うべきもの。不確実性の高いサイエンスと確実性を要求されるテクノロジーでは、(研究開発法人で)研究開発の取組手法、マネジメントを変えていくべきではないか。テクノロジーに近いところは、きめ細かくカテゴリーを分けていろいろなマネジメントをしていくべきではないか。(児玉副本部長)

○研究開発法人は、政府が設定する研究開発テーマに伴い、マネジメントの仕組みも相当異なるような、組織的特性のある研究体制を整備できるようにあるべき。(佐々木教授)

○研究開発法人の特徴として、機動力を生かした拠点化が迅速に行えること、優れた人材を確保し、研究開発を強力に実施できること、国家ミッションを担うため、オープン型のプラットフォームを形成できること等がある。そのような特徴を生かし、我が国独自の費用対効果の高い研究体制を確立するためには、インフラ整備による拠点化を進めるとともに、そのインフラの共同利用のためのオープン型のプラットフォームを中核拠点に整備し、大学等とのネットワーク化を進めて、双方向の共同開発の促進を行うことが重要。(笹井ディレクタ)

○研究開発法人の機動力を生かすには、次世代の研究開発に対する提案力強化が必要。そのとき自らの整理再編を前提にして新しい提案が積極的に採用される仕組みにより、新陳代謝が活発となる組織とすべき。(笹井ディレクタ)

○歴史学的に、法人制度というものが教育や科学に対して重要な役割を果たしてきたことを踏まえれば、研究開発法人を検討する上でそのガバナンスの仕組みをどうするかは非常に重要。(青木教授)

○研究開発部門、管理部門等の法人における各機能をしっかり切り分け、研究開発部門が行政による支配に陥らないようなガバナンスが必要。担当各省の政務三役、外国人学者、専門家等の外部人材が多数を占める取締役会が評価を含めて法人の業務執行を監視し、法人の長の指名、解任をおこなう。総務部門の担当者は役所から複数指名し,法人の長が選抜し、出身役所には5年はノーリターンとするなど役所のローテーション人事からは外し、研究者、専門家が自立的に研究を組織、イノベーション創出に長けた業務運営になるようすべき。(青木教授)

○これまでの重点8分野のような分野で管理するのではなく、グリーンイノベーション等のようなイノベーション課題ごとに研究開発を推進するためには、研究開発法人が研究開発の実施や助成を担当するといったことだけではなく、重要課題プロジェクトの企画立案、施策の推進、人材育成、成果の展開までを先導する役割を担うことが重要。(中村取締役)

○研究開発は、無機的なものではなく、有機的な競争と共生の中で新しいものが生まれてくる世界であるため、研究開発法人は、他の業務型の独立行政法人とは異なるガバナンスを適用しなければならない。(鈴木副大臣)

 ■研究開発法人は国際化することが重要である。

○世界の共通認識として、研究環境の国際化により「知の回流」への参画を志向しており、研究機関の国際化が重要。(角南准教授)

○頭脳循環が起きている世界において、優秀な人材を獲得するためには、海外の卓越した研究機関や研究者との協力関係を構築することが重要。(野依理事長)

 4.研究人材政策

将来のキャリアパスを保障しつつ、人材の流動性を確保する必要がある。

 ■ポスドクなど研究開発に関する職業には任期付雇用など不安定な印象があるため、研究者、技術者の生活やキャリアパスを確保する仕組みが必要である。

○研究開発法人と大学は、大学院生の教育・研究活動の相互乗り入れ強化等に向けた一層の連携強化を図り、同時にそれを阻害する制度・構造的障害を打破する改革を推進するべき。(柘植学長)

○グローバルCOEプログラムで理工系大学院の学生の生活支援のために、リサーチアシスタント(RA)を導入した。一般に外国人学生への支援が手厚いので、外国から研究人材が引き寄せられている。一方で予算逼迫のため日本人学生への支援が手薄なのが不公平感を生む傾向。(中村教授)

○ポスドクの現状は派遣労働者のようなもの。その後の行き場がないということだと研究者のなり手がいなくなる。キャリアアップの一歩がポスドク修行だ、と言うコンセンサスが必要。(中村教授)

○現状は、任期付雇用の導入による研究者の地位の不安定化や専門的、高度技能を有する研究支援者を処遇する制度的余裕の喪失等危機的状況にある。(大垣理事長)

○日本には米国のような人材の流動性がないため、任期付き雇用による研究という職業が不安定になる構造がある。これを本質的に変えるには、例えば、研究人材流動性支援機構のようなものを創設し、研究人材の雇用を一定程度保証し、そこで研究者のキャリアアップをどうするか、任期が終了した人材をどのように移動させるのかということを考える機構を作るべきではないか。(北澤 科学技術振興機構理事長)

 ■政府、研究者コミュニティ、研究機関間において人材の流動、循環が必要である。

○研究費配分機関と、政府、研究者コミュニティ、社会との間の人材循環の確立、研究開発と人材育成の一体化が必要。(中村教授)

○国立大学等からの人材交流に当たって、在籍期間の通算等退職金等の問題について解決して欲しいし、私立大学にもできるだけ枠組を広げていただきたい。(岡﨑理事長)

○イノベーション創出における制度上の隘路として、研究人材の流動を阻む障壁を打破しなければならない。(相澤議員)

○公設研との間でも人材の流動が必要。(野間口理事長)

5.研究開発法人の人材の維持・確保

安定した雇用や最高レベルの研究環境などの実現を通して優秀な研究人材、専門的人材や研究支援人材を引き付け、確保するための研究環境、仕組みが必要である。

 ■国にとって重要な業務を実施していくために国内外の優秀な研究人材や特殊な専門人材を確保するためには、彼らの生活を保証できるような安定的、継続的な雇用システムが必要である。

○各研究開発法人は単独では持続可能なイノベーション実現が不可能なため、研究開発のPDCAサイクルマネージメントには、大学及び産業との間の「科学技術的知と社会経済的価値の創造成果のフロ-とインターフェース重視」を明確にして、「人事考課」にもその活動に関する成果を反映させるべき。(柘植学長)

○法律に基づく業務を実施するには、その基盤を維持していく必要がある。放医研は国の防災計画により、原子力災害発生時、国の第3次医療機関として対応することを求められているが、専門医師や緊急モニタリングを行う技師などの人材不足が非常に重大な問題となっている。高度な専門性を持つ人材を育成するには、現場経験を含む研究機関での継続的な取組が重要。(米倉理事長)

○真に優秀な研究者を獲得するためには、キャリアとして安定している国家雇用の公的研究員制度があると良い。その源となる博士人材を、戦略的に日本に確保するためには、まず外国の優秀な学生をきちんと引き付ける仕組みをつくる必要がある。(五神 東京大学大学院工学系研究科教授)

○任期付研究員であることは、職場として魅力を感じさせない。人件費抑制の問題は深刻。(大垣理事長)

○競争的資金になじまない研究もあるため、そのような研究に関する人件費については、長期的に取り組まなければならない。5年、10年かかるような長期の実験に取り組んだとき、研究者の生活を保障しないと彼らを引きとめることができない。(米倉理事長)

○環境モニタリング、生物の育成、生物資料や細胞断片の作製など、長期的・基礎的で特殊技能が必要なものを担う人材を支援し、確保する体制を維持していくことが重要。(大垣理事長)

○研究のサポートシステムを充実し、効果的な組織とするためには、従来のような役所型ではなく、民間から大胆に人材を登用できるような人事制度や給与体系を設計すべき。(青木教授)

 ■優秀な研究人材が引き付けられるような魅力ある最高レベルの研究環境の実現や、人材の流動化のための社会保障制度、思い切った給与水準の設定などの取組が必要である。

○知のフロンティア型研究施設では、優秀な人材が集まるような研究環境が必要。年俸制や任期制は解釈によって、一定の期間、最高レベルの研究ができる研究環境であれば、優秀な研究者はそのような環境を選択する。逆に自由度の低い、研究の時間が限られている研究環境を選ぶかは選好の問題。日本では、インドとか中国のように高いインセンティブを与えて研究者を招へいするだけではなく、むしろ真に知的刺激のある研究環境を与えられるかが一つのポイントになる。(角南准教授)

○国立大学等からの人材交流に当たって、在籍期間の通算等退職金等の問題について解決して欲しいし、私立大学にもできるだけ枠組を広げていただきたい。(再掲)(岡﨑理事長)

○公務員の給与水準を準用するのではなく、意欲的な人材、評価の高い人材がマネージャとして集結できるような組織とし、給与面で差別化すべき。(佐々木教授)

6.様々な機関の壁を超えた研究開発力の結集

省を超えた研究協力や地球規模課題の解決に向けた国際協力等、研究開発力の結集が必要。

 ■府省横断的な枠組みや海外を含む外部機関との連携など、研究成果を展開していく有効な仕組みが必要である。このためには、国が一層のリーダーシップを発揮することも重要である。

 ○研究開発法人を中核とした大学・研究開発法人・産業の三位一体的連携強化により、イノベーションを持続的にかつ効率的に生み出すネットワークを構築すべき。(柘植学長)

○研究人材は府省の枠を超えて流動すべき。人材流動は研究を推進すると共に、研究の室を向上させ、幅を拡大する。(野依理事長)

○研究資金システムが錯綜しているところがあるため、体系化するとともに、その透明化・効率化やプログラムの運営の充実が必要である。(相澤議員)

○研究費配分については、マルチファンドによる研究支援体制が主流であり、機関連携による、切れ目なく基礎研究から実用化へとつなぐ仕組みを確立すべき。(北澤理事長)

○今後、引き続き、中国が世界の成長力の牽引となるが、環境エネルギー問題の負荷が膨大なものになる。このため、日本と中国の補完関係が非常に重要となり、中国は都市化、公害、高齢化等、日本に学ぶところが多い。我が国が国際競争力を強化するためには、そのような課題における科学技術における国際協力が非常に重要性な要素となる。(青木教授)

○海外の研究機関への円滑な資金投入が実務上困難である。海外との協力や国際イニシアチブを取って研究を展開し、世界からの情報を取ろうとするとき、相手国の研究機関への資金提供や施設整備の協力というときの会計実務上の様々な問題がある。(大垣理事長)

○持続可能なイノベーション創出能力の強化には、科学技術・イノベーション政策に教育政策も一体化した政策策定・推進の司令塔が必要であり、現在の総合科学技術会議を発展的に改組し、「教育・科学技術・イノベーション推進会議」を創設すべき。(柘植学長)

○人、予算、施設について、個々の研究機関が内部努力を重ねているのが現状であり、持続的な制度設計になっていない。科学の推進と技術開発の世界化がますます強くなる状況の中、知のデータ蓄積に関する持続性、継続性について劣化が起きれば、科学の国際協力や環境政策、貿易政策等の我が国の国際的発言力の低下は免れない。(大垣理事長)

○国には、人・資金・プロセス等の科学技術戦略の長期的な計画の立案、それに基づき各省庁、大学、企業の横断型なリーダーシップを発揮し、予算確保、関連インフラの整備、更に、連携強化、国際標準作り等を牽引し、最後に人材育成・教育を強化していただきたい。(児玉副本部長)

7.研究開発法人における評価

・研究開発法人の評価には、長期的な評価、専門家による国際的評価やピアレビューが重要。

・評価の集中、過大さが問題。

 ■研究開発法人の評価においては、国家的な研究開発や基礎・基盤的研究それぞれに対応した研究開発の長期性や国際的視点の必要性を踏まえた、ピアレビュー等研究活動にとって建設的なものとなる適切な評価システムが必要である。

○プロジェクトの着実な推進、プロジェクトと基礎・基盤研究等が共存できるスキームのためには、長期にわたる事業運営に対応した評価システムが必要。(岡﨑理事長)

○研究の実績評価については、3年程度ごとで十分ではないか。ただし、研究評価については、国際的な専門家による厳しい評価を受けるべきで、国の法人評価は、その結果を尊重するものとすべき。(米倉理事長)

○英語の「エバリュエーション」と、日本語の「評価」の意味が異なっているのではないかと感じる。英語の「エバリュエーション」は、良いところと悪いところと区別し、それが改善につながるようにしているが、日本の「評価」は、言い掛かりをつけているような印象であり、評価が忌避される要因になっているのではないか。次のミッションを達成するための建設的な仕組み、ピアレビューを更に導入していくことが必要。(鈴木副大臣)

○PDCAサイクルの制度設計については、研究開発法人の評価と研究者個人の評価といったバランスを検討する必要がある。(相澤議員)

○現行の評価制度は、法人の自己評価、各省の評価委員会、総務省の評価委員会と段階を経るごとに専門性が喪失している。研究開発法人の評価は、専門性のある法人機関(外部役員が過半を占める取締役会/理事会など)に信託し、総務省等の役割は、その構成の是非を評価をするにとどめるべき。(青木教授)

 ■現行の評価システムは研究者にとって重複、過重となっているため、質の高い研究活動のインセンティブになるようにすべき。

○評価が同時期に集中するなど負担が重く、他の事業系独法と同じ尺度で評価するのではなく、質の高い研究を行えるような評価システムが必要。(大垣理事長)

○現行の独立行政法人制度にあるような毎年度行われる評価に追われるような体質は改善し、もっとシリアスな評価をしっかり行うようなことをルール化すべき。(佐々木教授)

8.研究開発法人の予算・会計

研究開発法人における事業費や人件費の抑制は改善されるべき。

・現行独法制度は、運営費交付金の中期目標期間を超える繰越や自己収入の取扱い、外部資金受入れなど、経営努力、現場の努力のインセンティブが機能していない。

 ■現行制度下では、良い研究開発を実施する場合でも、運営費交付金に係る予算の一律削減、積立金の中期目標期間間の繰越しが困難、自己収入の増額が予算削減につながるといった点や総人件費が抑制されている点といった問題が深刻で、経営や現場の努力が報われず、国際競争力の観点でも厳しい状況にある。

○現に課されている、運営費交付金の一律削減、総人件費の抑制は、早急に是正されるべき。(野間口理事長)

○会計基準が業務実態に合っていないこと、目的積立金等を中期目標期間を跨いで繰り越すことが事実上困難になっていること、研究機器調達において国と同様の随意契約基準が適用されること等、財務的制度面で改善の余地がある。(野間口理事長)

○一律に予算が減少しており、独立行政法人評価委員会において最高のS評価をもらっても、予算が増えず、これは大変困ったことである。(野依理事長)

○長期の研究開発については、複数年度にわたる予算措置を確保するとともに、中期計画期間を超えるような繰越しを認めて欲しい。(米倉理事長)

○自己収入について努力して増加させても、研究開発現場への還元が見えづらいため、自己収入を伸ばそうという現場のインセンティブにはつながっていない。(平理事、米倉理事長)

○研究開発の推進にはその進捗に沿った柔軟な資金配分が望ましい。当該年度に予定していた予算執行を、翌年度へと繰り越す必要がある場合、中期目標終了時には、研究開発が継続しているにもかかわらず、現在の仕組みでは資金の繰越しが認められない。中期目標期間を越えての繰越しを独法の裁量で可能とするなど、柔軟性を確保してほしい。(北澤理事長)

○予算では、競争的資金が拡大する一方、継続的な予算の削減(定率による、長期的な運営費交付金の一律削減等)による弱体化が進み、施設の多くが老朽化している。人、予算、施設のすべての面から、科学と技術を支えるデータの蓄積への投資が実質的に減少している状況を認識し、別途、定率で運営費交付金を付加するような制度改善が必要。(大垣理事長)

○研究型の独法もあれば、そうでない独法もあるにもかかわらず、また、科学技術立国、知的財産立国といっておきながら予算が一律削減はおかしいと指摘してきた。そのとき、国に戻せないならば、区別をすべきと主張してきた。(丸島教授)

○成果の高い研究開発は容易に予算を削減してはならない。独法改革の名の下、成果の評価に基づかずに運営費交付金の一律削減が行われたため、研究室の閉鎖、若手の活躍の場の縮小等、国際競争力の面で厳しい状況になっている。(笹井ディレクタ)

○複数年度会計処理の弾力化、次世代の研究者育成、次世代領域開拓のための自由度をもった交付金の在り方などを検討すべき。(笹井ディレクタ)

○コンクリートと人は対立する概念ではない。人が集まる研究施設というのは非常に重要。融合研究、人材育成、共同利用、産学連携などは研究開発法人だけでなく、研究振興の開放拠点となるため、新規施設であっても積極的に整備すべき。それは、「人のためのコンクリート」ということ。(笹井ディレクタ)

■民間資金の受入れや成果の帰属等利益配分に関するルールがない。

○研究開発活動に民間資金の活用や、金融マーケットを組み込んでいけないか。(中川文部科学副大臣)

○特許については、外国企業が獲得に熱心で日本企業が大人しいことに懸念している。このため、大学、企業、府省の壁を超えた連携、橋渡しが行えるプラットフォームの構築が重要。(北澤理事長)

○産学官連携において、民間企業には生み出された技術を独占し、そこから利益をあげたいという欲求もある。そのとき、研究開発法人が自らの収益に活用しようとすると齟齬が生じる。大学も含め研究開発法人は短期の成果を求めるのではなく産業振興に結びつく研究開発等を行い、民間企業が事業化し易い産学官連携の仕組み造りが重要で民間企業の事業の成功からは、税収として国全体として収益を回収すべきではないか。安心して事業化するためには早期の連携と知財戦略活動の主体は企業に任せてほしい。(丸島教授)

○日本の産学官連携において知的財産の共有や協力の在り方に問題があり、日本国内で開発の協力ができないため、海外の研究機関と組むような状況になっているが、国内外の民間企業から研究開発法人が尊敬され、活用されるような状況にする必要がある。(野依理事長)

9.研究開発法人による調達等

研究開発の特殊性に踏まえた契約の在り方を整理する必要があり、画一的な競争入札の導入は研究開発法人になじまない。

■高度な技術や技能やその継続性が求められるような研究開発の特性、事情を踏まえれば、画一的な一般競争入札の導入は研究活動への影響ともなり適切ではない。

○研究機器の調達では、国と同様の随意契約の限度額が設定されてしまっている。(野間口理事長)

○先進的な船舶の運用や技術開発にあたり、国として高度な能力の蓄積が必須。海洋分野は、国内の業界規模が小さいため、継続的な発注が伴わなければ、技術の継承・蓄積ができない。研究開発水準の維持、民間企業への技術移転等を鑑みれば、一律の一般競争入札の導入は、研究開発法人に馴染まない。(平理事)

■透明性の確保は必要であるが、研究開発の特性として、技術の高度性、機微性等から随意契約とせざるを得ないものがある。

○科学技術や原子力分野の特殊性として、例えば核不拡散、核物質防護の問題、あるいは原子力災害の防止といったことがある。これらは随意契約に頼らざるを得ない部分であり、そういった事情があることについて理解してほしい。(岡﨑理事長)

○国の資金を使う以上、契約・入札の適正化を図ることは当然であるが、入札業務の増大は事務を圧迫している。全独法一律ではなく、透明性を確保しつつ、研究開発法人の特性に合った契約方法の実現が必要。(米倉理事長)

○契約における競争性確保についてよく指摘されているが、画一的な競争性確保だけを要求されると、特殊な技術や技能を持った民間企業との契約等が非常に難しくなり、その継続性も難しくなるという問題がある。もちろん透明性の確保は必要である。独法化は、自立的運営を可能にするためだったが、原資が国費ということで、会計検査院のチェックを受け、独立行政法人であるということで、外部監査を実施し、更に今般、契約監視委員会を設置することとなり、チェック制度が重複していると感じている。(大垣理事長)

■研究開発法人による調達は、イノベーション創出につなげるようなシステムとして考える必要がある。

○調達で研究開発を促進し、ベンチャーから技術を購入し、伸ばしていくシステムを考える必要があるが、その場合、契約等の運営そのものをしっかり考える必要がある(角南准教授)

10.科学技術政策全般

■国の研究開発投資の拡充、研究開発基盤及び人的資本の整備、国家戦略の策定、国際標準の確立等を通じ、イノベーション創出のための総合的取組が重要である。

○そもそも日本の研究開発予算は貧弱である。(野依理事長)

○欧米のみならず中国韓国における研究資金の増加を見ても科学技術(イノベーション)重視は世界の潮流。(角南准教授)

○国際標準について、これまで米国はデファクトやフォーラムスタンダードを取っていく方策であったが、中国が国家戦略として国際標準化を狙い始めたため、国際標準化の方策にシフトしており、我が国もせっかくのイノベーションの成果が別の技術で国際標準化されないよう、研究開発には適時に国家戦略として国際標準化の戦略的活動といった視座が必要。(丸島教授)

○日本の国際競争力を高めるため「研究開発法人」の研究開発成果(知的財産を含め)が日本に蓄積される仕組みづくりが重要。外国の企業の方が日本の基礎的な技術を熱心に獲得しようというのは、それを押さえつけてしまおうという意図もありうる。日本の企業は、基礎的な技術を育てようとする意図があるためどうしても慎重になりがちではあるが短期の成果を求めるのではなく日本企業の事業化について重点を置いてほしい。(丸島教授)

○イノベーション創出における制度上の隘路について検証し、解消するようにしなければならない。(相澤議員)

○特許文献よりも科学技術文献に基づく研究開発の質の方が高いこと、バイオテクノロジー等科学との関連性(サイエンス・リンケージ)が高い分野での我が国の競争力が弱いことを踏まえれば、我が国の科学政策として、人材育成、先端的な知識の創出が優先されるべきではないか。(長岡教授)

○イノベーションは一連の幅広い活動から生まれてくる。革新的な技術開発、実証試験、企画立案や制度の見直し、政府調達、国際標準化等を通じてイノベーションは加速され、国全体の競争力が強まり、そこから得られた国富を基礎研究や人材育成に還元できる。(中村取締役)

○競争的資金の間接経費を組織運営のインセンティブとしていくためには、我が国の競争的資金では少なすぎるため相当増額するとともに、人件費を措置できるようにするような制度改革の必要がある。(長岡教授)

■研究開発法人に係る予算の配分や執行については、制約が多く、画一的な扱いになりがちであるため、改善が必要である。

○外部資金については、応募形式や会計処理等についての共通したスキームをつくり、使いやすい、受け入れやすい制度にしてほしい。(岡﨑理事長)

○独法は、「独立」という名前を付した割に制約が多すぎる。国家プロジェクトを優先すると、基礎・基盤的な部分の資源を削減せざるを得なくなり、そういった部分がおろそかになってしまう。これは、長期的観点から非常に憂慮すべき。(岡﨑理事長)

○国の研究資金で遂行される研究の場合、先端性と多様性の両方が必要。(中村教授)

11.子どもや若者の能力を伸ばす施策

■世界トップレベルの優秀な人材を育成するため、優秀な学生に対する思い切った支援の拡充や大学等への進学システムの改革が必要である。

○国際競争力ある優秀な博士人材を育成するためには、世界のトップ学生を確実に捉え、米国の大学と同等な入り口を用意する必要がある。そのためには学生の選抜方式を変え、日本で学ぶことの付加価値を高め、厚みのある奨学金等による支援や教員による密接な指導を行う必要がある。(五神教授)

○日本の生徒は科学技術に関係する職業に就くことへの関心が低いため、優秀な人材の確保のためには、若い時期から科学技術にチャレンジする精神を養うことが重要である。(小倉 国立教育政策研究所総括研究官)

○ベスト・ドクター論文・オブ・ザ・イヤー等を獲得した30歳の博士に対し、3年から5年間、研究活動奨励金に生活費を加えて支援し、世界中の研究機関から自由に選択してよいことにすれば活性化につながるのではないか。日本だと学生から授業料を取るが、海外では奨学金を給付して優秀な人材を獲得しており、そこに競争が起きている。(鈴木副大臣)

○能力・意欲の高い高校生や大学の1,2年生は、早期に第一線の研究者の研究開発現場で高度な研究への挑戦機会を与えるべきである。しかし、高校生が先進的研究に没頭してしまうとハイレベルな大学に合格できなくなるため、なかなか挑戦できない。大学入試において、先進的研究に挑戦した生徒は別の待遇で選考するという道も作るべきである。(小倉総括研究官)

■学生の個性や能力に着目し、一人ひとりが先進的なことに挑戦できるような指導体制や能力を更に伸ばすための取組が必要である。

○形式的平等を重視する教育から、個性や能力に応じた教育へと「平等」の考え方が変化してきている。個の能力・適性に応じて、特定の領域で早期に高度な学習ができるようにする公的な教育サービスをどのように提供していくかということを考えれば、一人ひとりの子どもの能力を最大限に伸ばすことにつながる。能力・意欲の高い生徒がさらに高度な科学技術の学習にチャレンジできる学校とカリキュラムを整備するなど科学の領域がまず先導して実施すべきである。(小倉総括研究官)

○メンターという存在、特別に指導する存在は、スポーツや芸術の世界では必ず存在する。素晴らしい指導者のもとで力のある若者が現れる。科学技術の領域では、クラブ活動においても、専門の研究者がメンターとして若者を導く文化が日本で今まで育ってない。今後は、長期間、大学の研究室に高校生を招き入れ、研究指導をするなどの取組を導入していくことが必要である。(小倉総括研究官) 

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