サービス科学・工学の推進に関する検討会(第3回) 配付資料

1.日時

平成20年10月9日(木曜日) 16時~18時

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 産業界からのプレゼンテーション
  2. サービス・サイエンスに関する海外動向について
  3. 各論についての検討
  4. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

 生駒座長、安部委員、大澤委員、太田委員、儀我委員、北川委員、妹尾委員、高安委員、友田委員、長井委員、中島委員、丹羽委員

文部科学省

(科学技術・学術政策局)
 泉科学技術・学術政策局長、岩瀬科学技術・学術総括官、近藤調査調整課長、川端基盤政策課長、柿田計画官、坪田政策課企画官、堀田調査調整課課長補佐、渡邉計画官補佐

オブザーバー

(説明者)
 フューチャーアーキテクト株式会社碓井副社長、科学技術振興機構研究開発戦略センター金子フェロー

6.議事録

【生駒座長】
 どうもお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。第3回のサービス科学・工学に関する検討会を始めさせていただきます。
 お手元の資料を事務局よりご確認ください。

【渡邉計画官補佐】
 それでは資料の確認をいたします。上から順番に、本日の座席表、議事次第となっております。議事次第に沿って配付資料の確認をさせていただきたいと思います。
 一番上、右肩に資料番号はございません。机上配付となっております資料1「小売業の変化対応とサービス・イノベーション」。その後、クリップ止めのものにつきましては、資料1の附属の資料となってございます。資料2「サービスサイエンスに対する海外でのファンディング等の状況」。資料3「サービス科学・工学の推進に関する検討の方向について(案)」。その次が、横紙、机上配付となっております「研究領域―研究プログラムのイメージ」、その次が参考資料1「検討会メンバー一覧」、参考資料2「サービス科学・工学の推進に関する検討会の進め方」、参考資料3「『産学連携による実践型人材育成事業―サービス・イノベーション人材育成―』概要」となってございます。資料については以上でございますが、もし落丁、不足等ございましたら、お手数ですが事務局のほうまでお知らせください。以上でございます。

【生駒座長】
 それでは本日は2件ご説明をいただきまして、その後ご討論をいただきたいと思います。最初は議題1「小売業の変化対応とサービス・イノベーション」、2番目の議題が、「サービスサイエンスに関する海外動向について」でございます。
 それでは早速産業界からのプレゼンテーションといたしまして、碓井フューチャーアーキテクト取締役副社長にお越しいただいておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

【碓井副社長】
 よろしくお願いいたします。

【生駒座長】
 まず30分お話しいただきまして、続いて海外動向のお話をいただいて、後でまとめてご質疑をお願いしたいと思います。

【碓井副社長】
 私は実は1978年から25年間、セブン‐イレブンに在籍しておりまして、システムをやってまいりましたけど、500店ぐらいのころからでございますので、実際には業務の組み立て、それとそのシステム化、この両方を手がけるというような仕事をさせていただいてきております。
 そういう中で、今日は非常に短時間にたくさん資料があるので詳細なお話ができないと思うんですけど、セブン‐イレブンの、この小売業の、手前みそになりますけど、イノベーションという、いわゆる新しいコンビニの業態確立ということを進めてまいったわけですけど、この流れについてお話しできればと思っております。
 今日、お話しさせていただきますのは、まず1つはサービス・イノベーションを考えるとき、非常に重要なのは、何のためにサービス・イノベーションをするか。これは私見もございますけど、やはり世の中の大きな変化をとらえて、いわゆるサービス・イノベーション、サービスは生産性の問題だけじゃなくて、クオリティーの問題としてとらえる必要があると。そういう中で、世の中がどう変化し、その変化、ここでは価値共創社会というような、これからの社会のイメージを、少し私なりに整理しております。これに向けてサービス・イノベーションというのは進んでいけばなという期待も含めて、最初にお話しさせていただきます。
 そして大手コンビニの事業戦略、ここではセブン‐イレブンのとった戦略。そしてその戦略の内容になります、(ギリシャ数字)3・4・5ですね。オリジナル商品開発が55%の商品、店扱いのですね、これが既にセブン‐イレブンだけにしかない、メーカーと共同して開発している、セブン‐イレブン側がイニシアチブをとっているオリジナルの商品になっている。こういうメーカーとの関係になっているわけですね。2つ目は新規事業。この業態、あるいはITをうまく使って、子会社の銀行をつくったり、サービス事業というものを非常に幅広く展開している。3つ目はそのためにシステムのインフラ基盤を整備して、いわゆるディマンド側、お客様の側と、それからサプライチェーンを、これを一気通貫で連動する。こういう枠組みを超えた連携の中で、やはりイノベーションが進んだだろうということで、この3つをお話しさせていただいた上で、ちょっと時間がないと思うんですけど、その他の事例、これを少しお話ししたい。
 最後に添付のところで、サービス・イノベーションを進めるに当たってのフレームワーク。これを製造業と比較いたしますと、やはりサービス業というのはフレームワークが整備されていない。プロセスの流れも、きちんとルール化とか、手順どおりやらなくても、サービス業は流れていってしまうわけですね。要するにねじをとめなきゃ、次に行って、問題がある、検査工程でアウトになるということがない部分がサービス業の領域には多いと。したがってフレームワークの整理が、役割分担とか、領域、そこにおけるルールとか、基準。これがなかなか整備されてこなかったというのが、これまでの状況かと思います。ですからここをどういうふうに整理をしていくかということを、私自身も課題に思っておりまして、そんなお話を少しさせていただければと思っております。
 最初の絵でございますけど、簡単にお話しさせていただきますが、これはセブン‐イレブンの1店舗の1978年から2008年までの、このオレンジが売り上げの数字です。1店舗の1日の売り上げですね、約40万からスタートしまして、68万ぐらいになりまして、現在61万ぐらいになっております。2つめはグリーン、在庫ですね。これは850万、900万ぐらいからスタートして、約550万ぐらいのところに今は来ている。このブルーは、荒利益率でございます。26%ぐらいからスタートして31%という流れになってございます。
 なぜ、これを出しているかというと、実はこれが世の中の動きをそのまま、かなりストレートと言っていいぐらいに反映していると私は思っておりまして、この数字の動きを見ていただきますと、下にありますように、売り手社会。高度成長の時代というのは、在庫のコントロールがうまくできれば、つまり在庫が下がっていけば売り上げが上がるという時代でございます。
 これは何かといいますと、在庫がコントロールできるということは、なぜ売れる・売れないがわかっている。しかもこの変動要因を主導的に売り手側がコントロール可能だという時代でございます。完全にこういった数字の動きが出てくると。だから在庫の減り方の低減が止まったときには、売り上げも止まっているんですね。ここでPOSを入れまして、そこを突破したというような経緯がございます。
 そして大きな数字の変化は、ここからを買い手社会としておりますけど、いわゆるバブルの、91年、92年、崩壊以降、やはり消費が低迷する。あるいはそこそこの充足感がある。インターネット等で商品情報が消費者側に十分に渡っていく時代になってきますと、売り手がコントロールできない。買い手がイニシアチブを持つ時代に入りつつあるという認識をしております。
 実はこの約16、7年間、この間に小売業というのは大変な試練に、あるいは製造業もそうだったわけですけど、直面いたしました。数字で申し上げますと、実はこれはチェーンストア、GMS、大型スーパーとか、スーパーマーケット等の数字ですが、端的な数字で申しますと、91年に1平米当たりの年間売り上げが120万あったものが、これが60万に落ちている。半分に落ちているんですね。セブン‐イレブンはこの間に売り上げを13%落としています。これからお話しするのは、セブン‐イレブンは13%に何とか済んだのはなぜかというお話をさせていただく。これが先ほどお話しした3つの施策だったわけですね。ここに数字がございますので、また後で、お時間があったらご覧ください。
 それからここには日本の小売業と卸売の数字をちょっとまとめておりますけど、後でご覧いただければと思いますけど、サービスを語るときに、日本は非常に生産性が低いから高くしなきゃいけない。これはあくまで労働生産性でありまして、日本はこれから要するに労働生産性だけで勝負するのかと。私はクオリティーというものをキープしていかに生産性も上げていくか。生産性のとらえ方を変えなきゃいけないと思います。それがこの下の表にございますけど、日本・アメリカ・イギリスの1万人当たりの店舗数と、商品の回転率。どれだけフレッシュかということですね。日本は非常にフレッシュ。セブン‐イレブンは年間42回転しています。ところが労働生産性は52しかありませんという数字が出てきてしまうわけですね。ですからやはりこれらを含めてクオリティーと生産性で考えるべきだろうと。
 それからいろいろな特徴がございますけど、真ん中にございますのは、小売上位5社の占有率。非常に日本は集中していない。非常に中小の130万軒の小売業がある。パパママストアを含めてですね。だから労働生産性でとらえると低くなるのは、ある意味では当然なわけですね。こういった数字を見ましても、ドイツなどはメトロ中心に上位5社で66.5%、こういう違いがある。
 ここでは簡単に一言申し上げさせていただきますと、小売業あるいはサービス業というのは、非常にドメスティックな産業だと。製造業とかなり違う要素があるんですね。ですからカルフールとかウォルマートは本国と中国では成功しております。日本では失敗、撤退をしたりしている。あるいはイトーヨーカドーも中国では非常に成功していますね。日本では経常利益率1%。カルフールとか、テスコは世界的にグローバル展開をして経常利益率5%ぐらいあるんですけど、セブン‐イレブンは6.5%ぐらいの数字ですね。こういった大きな違いがある。
 しかし、ちょっと手前みそで勝手に言わせていただくと、私ども92年からアメリカのセブン‐イレブンの買収、再建に8年間、部下を送ったりして取り組みまして、基本的に日本流の考え方、単品をきちっと追いかけて商品管理をして、お客様にフレンドリーに接して、お店を明るくきれいに運営していくという、これは中国でもそうですけど、世界共通で受け入れられるクオリティーかと思います。セブン‐イレブンも見事におかげさまで再建ができた。その背景には3割ぐらいは日本のシステムを入れました。ですから、やはりグローバルな企業の小売業は違うんですけど、クオリティーという要素、あるいは生産性という、効率という要素、この要素自身にはそんなにカルチャーとか国民性の違いというのは大きく影響しない部分もあるんじゃないかと、そういうような感触を持っている次第でございます。
 こちらのページ、売り手社会、買い手社会、価値共創社会と、これからの世の中というのは、一方的にものを流す、サービスを提供するということじゃなくて、共創していく、ともに創っていく世の中になればなというふうに思っております。
 世の中の構造、この絵はこの一番上に質と価値観、この変化で世の中は動くと。そして具体的にそれが実行レベルになるとチャネルとプロセスですね。業務のプロセス、チャネル。こういうものが変動していく。そしてさらに制度や資源の配分というリソースの変化、こういうもの。そしてそれを技術が支えていくと。この4つの構造でとらえて絵にまとめておりますけど、価値共創社会というものは、一口で言うと、生活者主権、生活者起点の世の中。そしてその視点でビジネスを組み立て直す。あるいはその視点であるから、プッシュ型じゃなくて、共創という領域が開けるんじゃないかというような希望も含めて考え方を持っている次第でございます。
 ここからちょっとセブン‐イレブンの例になりますけど、一口で申し上げますと、セブン‐イレブンというのは、95%のフランチャイズのお店が商売に集中していただけるように、徹底的に商品やシステムや、あるいは物流や会計業務というものは本部側が集約して7店舗に1人のアドバイザー、コンサルタントをつけて徹底サポートしていくと。こういう運命共同体を構成しております。
 目的は荒利益を上げるということ。売り上げではない。荒利益を分配すると。総平均で申しますと、お店が荒利益の53%。本部は荒利益の47%をいただく。そのかわりに徹底的にサービスしていく。これはものすごい率をいただいているわけですね。ですから非常に、逆に言いますと密な関係のフランチャイズ関係と。ローソンさんなんかとは10%ぐらい違うわけですね。ローソンさんのほうがロイヤルティーが低い。こういうビジネスをやっている。プロフィールはこちらにありますので、後でちょっとご覧いただきたい。
 戦略のお話をさせていただくと、セブン‐イレブンの中でも戦略は紙に書かれて、こういうふうに整理されているわけではございません。そういう会社というのは非常に少ないわけですけど、私どもはシステムをつくるに当たって、戦略を定義して、そしてそれを機能に落として、そしてそれを業務フローにして、それを実現するITを組み込むと、こういう仕事をしてまいりましたので、そういう視点で整理をしてみますと、戦略を、経営理念と戦略、戦略を戦略たらしめるための一番下のイノベーション、この3階層、これはマイケル・ポーター流の分け方になりますけど、これで整理をしております。
 先ほどの買い手市場に入ったときに、ここで購買代理型小売業というスタンスに大きくかじを切ったんですね。小売業というものは大体メーカーのつくったものを販売代理するビジネスなんですね。ところが購買代理ということは、お客様の側に立ってサービス商品を組み立てようと。
 そしてもう1つ大きな違いが、小売業の業態というのは、何をどういう売り方でするか。100万アイテムを対面で売るのが百貨店であり、あるいは食品を中心にセルフサービスで売るのは食品スーパーマーケット。ところがセブン‐イレブンはそうじゃありません。コンビニエンスは、朝起きてからお客様が寝るまでにちょっと必要な商品やサービスを提供しようと。つまり利便性を提供する小売業というコンセプトでつくっています。ですからその下にございますように、商品・サービスの開発、そしてそのためには小売の枠に限らず、サプライチェーン、あるいはお客様の最終、買った後のフォローまで含めて一気通貫のサービスをITを使って組み立てようとしてきたわけでございます。同じようなものを少し戦略的に整理したのが下でございまして、これを実現するために、やはり業務プロセスの革新とIT活用。これを基本に据えてきたと。
 そういったものが進んできますと、1つはバリューチェーンが形成されてくるんですね。この絵は簡単に言いますと、一番下がバリューチェーンの主活動領域。原材料からお店まで、その先にお客様がいます。上の支援領域というところを見ていただくと、この色のついたところはセブン‐イレブンがやっている部分です。ですからセブン‐イレブンはこちらのサプライチェーンサイドに対するシステムの提供であるとか、あるいは配送の4、5千台ある車両のトヨタ――いすゞさんとの共同開発をして、またガソリンやメンテナンスも全国契約で安く提供できる。こういう全領域をカバーしてサポートをしてきた。
 そしてこのサプライチェーンがどんどん整備されてくると、この下の部分、白抜きの部分はパートナーと組んでいるわけですけど、ここに新たなサービスが乗ってくる。この発展形を私はプラットフォーム経営と。お客様の日常生活をサポートするプラットフォームにセブン‐イレブンを持っていこう、また、そういう形で動いてきたわけですね。
 ここにも大きな特徴がございまして、ここにございますように、365日24時間あいていて、家のすぐそばにあって、ちょっと欲しいものがそろうということは、冷蔵庫がわりにもなりますし、そこに日常的なサービスを集中して展開すれば、お客様の利便性は高いだろうということで、ほかの小売業と違うプラットフォーム、そこを物流やシステムで固めて、ここにあるようなサービスをいろいろ展開できるようにして。
 まずは商品に関するパートナー連携を張り、次に日常性のある金融、特に決済サービスです。今、ATMは1日110人ご利用いただいています。それから公共料金という、バーコードでお金を、電話とかガス代、電気代を収納する。これは66件。ですから1日950人来るお客様のうちの180人ぐらいが金融サービスのお客様なんですね。
 ですから先ほど言ったこの15年で、よそは半分に売り上げを落としたわけですけど、セブン‐イレブンは13%ダウンで済んだ。ここにもやはりサービスというものを物販とあわせて組み立てて、これをあくまで生活者側の視点で、要するに供給者側の縄張り、ジャンルじゃなくて、生活者側の視点でくくり直したと。これが非常に支持を受けたと。それをITが固めているという姿でございます。
 これは後でご覧いただきたいんですけど、とはいえ、セブン、ローソン、ファミリーでは相当な差がございます。しかしながらコンビニエンスは今、7兆円、百貨店の売り上げを超えました。これは非常にコンビニエンスストアが同じやり方をとってきたんですね。ですからここにある3つの施策、オリジナル商品をどんどん開発しましょう。今の例で言えば、オリジナル商品が55、ローソンさんは35、ファミリーさんは40%ぐらいですね。こういうことをやったり、同じようなシステム、共同配送をやるとか、非常に他の小売業のようにばらばらじゃなくて、これまではセブンを追っかけろと。これからは違います。それぞれが独自性を出していく時代になってきました。こういう形だったので、非常にコンビニエンスはすそ野が広がって、底上げがきいたと、こういうことも現実的にあったと言えようかと思います。
 ここにオリジナル商品、あるいはサービス開発、システムインフラというようなことで時系列で書いてございます。後はもうちょっと時間がなくなって大変恐縮なんですけど、商品の開発の仕方も、ここにございますのはチームを組んでやっていくということです。製造メーカーとだけやるんじゃなくて、ラーメンの例ですが有名店、山頭火とか一風堂、すみれ、こういうところのオーナーを口説いて、この味を実現しようと。いろんな包材、こういったメーカーとも、物流メーカーとも組んで。物流のクオリティーが上がると、リードタイムは短くなります。加工食品、雑貨、大体1センターは5日の在庫量で10万分の5の欠品率というクオリティーで物流を遂行しています。温度管理もきちっとやる。
 そうすると何ができるかというと、従来の乾麺タイプのラーメンから倍ぐらいの値段の、生麺タイプの味のいいラーメン。売り切るまでの期間を圧縮して専用の商品をつくりますから、いい商品が提供できる。ですからこの商品を通したサービスは、この総合力から生まれているということが言えるかと思います。そういう意味で、ここでは商品だけじゃございませんと。やはりディマンド・サプライ・サイドの総合力というものがサービスを生み出していくんだと、こういう視点のとらえ方が非常に重要だろうというように思っている次第でございます。
 あと、いろいろございますけど、銀行の話とか、公共料金の話とかございます。こういった部分はぜひ、雑誌に書いた記事がございますので、お時間のあるときにお目通しいただければと思っております。
 銀行の例だけちょっと触れさせていただきますと、銀行がうまくいったのは、これはITによるものだということが言えると思います。それはなぜかというと、実は銀行のATM――郊外ATM、月間のシステムあるいは運用費、家賃等を含めて総コストが大体85万かかるんですね。イーネットというIBM中心にやっているATMネットサービスは50万。セブン‐イレブンは27万円で実現ができました。ですから3分の1のコストでATMの開発。ATMは650万ぐらいするものを230万。これはウィンドウズのOSでつくったんですね。もうとても心配で、そんなものは使えないだろうと言われていたのを、当時、店舗技術でマイクロソフトにもOS開示を95年に求めて、これは今だから言えますけど、当時は大変な話ですよ。開示をしてもらって、ミドルウエアを徹底的につくりこんで、ITをローコストで使う技術をものにして実現してきた。ここで強調させていただいたのは、ITによって相当、やはり改革が図れると。今の例もそうですが、物流の効率化もそうです。
 その辺のまとめがずっと行きまして、ずっと先のページにございます。ここでいろんな例がございますけど、ちょっとこれだけ紹介させていただきます。この事例は、実はお店の業務を全部バーコードスキャンでやるようにしたんですね。このベージュの部分、仕入・検品、販売、これはレジですね。それから商品の廃棄とか、返品、全部バーコードスキャンで、棚卸しもバーコードスキャンでやると。そうすると操作が簡単になって、正確にデータがとれる。こういうことが可能になりましたから、98年の電子帳簿保存法を受けて、現在伝票もなくしました。お店の会計業務をなくしてしまいました。
 大昔、紙でやっていたころは、大体1日のワークロードの7%が会計関係業務だったんですけど、今は1.5%にまで落ちています。1.5%は何かというと、レジの現金あり高を照合する作業、これは抜きにできません。つまり年間110万円の店舗のコストセービングを伝票レス、会計業務を無くすことで実現できる。これはもうどこの小売業が使ってもいい、そういう仕上がりになっているんですね。
 ですからこういうところに非常にイノベーションの効果が、そして何よりもそういうことをやることによって正確なデータがきちんと自動的にとれて、単品のリアルタイムの在庫管理ができる。ですから何時何分に何が売り切れたまで全部情報がわかる。そしてその情報をうまく使っていくと。こういうサイクルで業務が回るようなシステムのバックアップが完成して、そして先ほどお話ししたように、そういうことを通して、なおかつここにございますようなコストセービング。この会計業務をなくすとともに、物流の改革、検品の仕方を変えて、ドライバーは荷物をおろしたらすぐ次の店に行くと。店と一緒に商品のチェックはしない。そういうことを通しますと、ここにあるように、年間にトータルで170億円のコストセービング。伝票レスだけで14億円、これが日本の中堅小売業以上が全部実行したとすると300億円の年間のコストセーブが生まれる。これはもう可能なんですね。ですから、やっぱりこういうものをどう広げていくかというのは非常に重要だと。
 ATM、これは3分の1で実現できた。行政サービス、これは規制がございますけど、足立区の前の区長さんがコンビニ行政ということで、足立区と一緒にやりまして、施設予約等、テニスコートとか教室の予約、駐車場の予約、こういうものをやりました。これは1件あたり住民票等は、1,000円のコストがかかっているわけですね。これをセブン‐イレブンでは300円で、これは利益も入っています。実現できます。
 ですから結論だけで、非常に強い口調で言っていて恐縮なんですけど、ITをうまく使うというだけでも、相当なコストダウンができる。コストダウンができるということは、業務がなくなるということもありますから、よりサービスにその人手を傾けると、こういうことが可能な世の中になっている。しかしながらそれがうまくいかない。特に日本はうまくいっていないよと。企業のITが危ないということで、私もいろいろ書いておるんですけど、非常に心配をしておるということでございます。
 時間になってしまいましたけど、1つだけちょっと言わせていただきたい部分として、サービス・イノベーションに向けた視座の転換が必要だということで、いくつか挙げております。この1、2、3は、やっぱり産業の分類、あるいは行政の分類、あるいは企業、これは全部縦割りですね。ところが生活者は縦割りの中では生きていない。ですからその縦割りのものをやはり横串を刺して見ていくという、当たり前のことですけど、これをもう本気でやって、そのためには生活者の視点で組み立て直す。それはすぐには多分できないわけですね。じゃあどうするかというと、縦割りでもいいので、さっき言ったような検品のシステムとか、あるいは公共料金のシステムみたいなモジュールをどんどんいろんな産業の中の成功事例を整理して標準化して、生活者視点でそれを自由に組み立てられるようにする。縦で割れていても、そこからできてきたものを横串で組み立て直すというイノベーションが可能だろうということで、私はサービスソリューションバンクという、銀行としてそういうサービスを提供できるようなものが、もしできればと期待を持っております。
 大変僭越ですけど、文部科学省の今の教育、学校教育だけではない、企業教育、家庭教育、社会教育、これが教育としてつながるような、そうした実務的なものとつながるような世界が必要だろうと。経験と勘、これに対して科学と工学と言っていますけど、経験と勘も科学すべきだというように思っております。
 そして6、7、ここが1つのポイントかと思います。サービス産業、7業あって、7割あって、生産性が低いからと言われておりますけど、だからイノベーションが必要だ、生産性を上げるのが必要だということでは、もう、少しインパクトがないというか、推進できないんじゃないか。むしろこの少子高齢化とか、地域活性化というものをサービス産業を通して――サービス産業とは言わないですね、サービスを通して組み立て直す。このキーは生活者起点と共創、ともに創ると。いわゆる高齢層、これから元気な高齢層が、65歳以上のうちの8割は元気なんですね。8割の人が、高齢者はやはり1,500兆円のうちの何割、大半を持つようになる。ですからそのお金が動くように活性化して、少子高齢化対策をとるとか、ここにあるように、生活に密着した無理のないワークライフバランスを新たにデザインするということが非常に重要だと思います。製造業ではこれはできないわけですね。製造業は外に出ていく。製造業で働くにはちょっとつら過ぎると。立地の場も限られる。でも生活は全国にあります。ですからこういうアプローチがぜひともとれるかなと。
 あとどういう資料が入れてあるかだけ、ちょっと触れさせていただくと、サービスというものをやはり、領域を、対面・対人中心のところとサービス産業のところ、サービス産業間の連携と製造業との連携の領域、そして新サービスの領域、これを生活者起点で組み立て直すと。医療や介護も統合的に運営されるような構造ですね。それから細かいですけど、サービスの対象を、人とものとお金、情報、こういう対象で特徴を出して、それをフレームワーク化して組み立てていくというアプローチが重要じゃないかと。バリューチェーンのようなサービスを織り込んで、機能定義をしていくようなアプローチ。顧客接点のところも、商品・サービス、そのものの品質、それからサービスを提供するプロセスのクオリティー。それから事前に提供される情報とか、期待感。そしてアフターフォローとか、満足度と、こういうセグメントして整理をしていくと、先ほどお話ししたソリューションのモジュールがわかりやすくなってくる。これをどう組み合わせるか、そんなアプローチが非常に重要だろうというように思っております。
 大変中途半端で時間も超えてしまって申しわけございませんでしたが、こういうことでまずはご報告を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

【生駒座長】
 碓井さん、どうもありがとうございました。引き続き、サービスサイエンスにおける海外動向について、JST研究開発戦略センターの金子フェローからお話をいただきまして、その後でまとめてご質疑をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【金子フェロー】
 金子でございます。お手元の資料2をご覧いただきながら引き続きご報告させていただきます。私の報告内容は、サービスの科学・工学に対して、ファンディングを中心に海外で何が起こっているかということをご説明させていただきます。
 まず、めくっていただきまして1ページですが、全体の動向をまとめました。サービス分野のイノベーションを支援する政策や資金が強化されている動きが確認できます。具体的には2つの取り組みが見られます。
 1つは専門の研究機関を設立する動き。これはEU全体。それから英国。英国の場合には公共サービスを対象とした研究機関の設立が議論・提言されております。これが1点目です。
 2つ目は研究資金を拡充しようという検討・提言がなされておりまして、例えば米国・ドイツ・フィンランドなどが調査の結果抽出できました。この中で特にご報告したい内容は、米国科学財団の動きであります。というのは、この場合はまさにこの検討会で議論されております、数学などの自然科学を応用してサービスの質・効率向上を図る、いわゆるサービスサイエンスへのファンディングが行われておることが確認できました。したがって、この後の報告は、このファンディングの内容を中心に申し上げたいと思います。ただ、その前に機関・人材でどう動きが見られるかについてもご報告させていただきます。
 機関・人材については、今、申し上げたNSFのファンディングに関連して、これは137のプロジェクトが、少なくとも今までに採択されておりますが、この採択プロジェクトにかかわる大学、研究機関、人材が動いております。それからもう1つ、イギリスで、工学・物理科学会議が資金を出しまして、これは最近の動きですけれども、サービスサイエンス関連の研究者のネットワークができました。現段階で約70名が参画したネットワークになっております。
 さらにもう1点報告できますのは、この数カ月前から、英国王立協会がサービス・イノベーションにおいて、科学、技術、工学、特に数学が果たす役割について検討を開始しております。おもしろいのは、具体的に産業界、学術界への事例のベンチマークを行っている。アンケート等を行っているんです。この結果をもとに、サービスサイエンスにおいて数学はどんな役割を果たせるのかという提言が来年の2009年度中に出されると、このあたりの動きも注目すべき動きとしてご報告できます。
 それでは先ほど申しました、NSFのファンディング、どういうものなのかということを2ページ以降でまとめさせていただきます。まず規模ですけれども、直近3年間で申し上げますと、2006年は約570万ドル。2007年が450万ドル。2008年は440万ドル、ただしこれは、本年8月現在の数字ですが、の研究資金が投じられております。先ほど申し上げましたように、2000年から2008年7月までの間に少なくとも137件のプロジェクトが採択されている。分野はどうかということで、調べてみましたところ、一番多い、一番力を入れている分野が流通・販売で28%の予算。次に医療21%。3番目が防災・安全13%という順番となりました。ご参考として図表を下に示しております。
 続きまして、内容はどうかということで、ポイントをまとめています。まず目的なんですが、サービスの効率化・コスト削減などを図りたいと。キーワードとしては、そのための戦略的意思決定を行うための技術・手法というところが、プログラムのあらゆるところに出てまいります。戦略的意思決定、設計、計画に関する研究を支援することであります。
 研究課題としては、モデリングと解析を重視するという記載がありまして、分野はここに示しましたように、大変多様なテーマを対象としております。ただ、最近の記載としまして、医療、公共的サービスを重視するんだということがうたわれております。
 一方内容を見てみますと、労働集約型と書きましたが、人がたくさん関わるようなサービス業務、具体的にはコールセンターなどを効率化・高度化しようというケースがかなり見られました。そこで具体的な内容を次のページにまとめております。
 本日は時間の関係で137件のプロジェクト全てをご紹介できませんが、私どもの調査では、プロジェクトの名前、サービス対象分野、予算・期間、それから研究中核者、プリンシパル・インベスティゲーター、研究の概要、こういった形で137件まとめてございます。
 その中の流通・販売、今、申し上げたようにコールセンターなどが注目されているという事例なんですが、この青で網かけをしたところがそれに当たります。2008年、2007年、直近のものを抽出しますと、例えば上から2番目は、顧客からの問い合わせ件数ですとか、キャンセル件数などにどう対応していくかという、いわゆる外部環境の変化に対してコールセンターとしてどうしたらいいんだと、そのための数学の役割というようなところが検討されております。上から2番目は逆でして、各担当者にどういうサービス時間を与えたらいいのかと。照会頻度がどのくらいなのかと、内部のマネジメントに対して、サービスサイエンスを使おうと。3番目は、コールセンターのコンセプトを少し大きくしまして、カスタマーコンタクトセンター、顧客とコンタクトする組織を全て対象に、その規模に応じてどうしたらいいのかというような検討がなされております。
 次に医療分野を見てみます。医療分野につきましても、上から3番目はがんの治療に放射線を使う場合の制御に関する検討、それから人工臓器移植――臓器移植等のものがありますけど、典型的なものはこの緑色の2つです。上から2番目は大きな話で、国としてインフルエンザワクチンの備蓄をどうしたらいいかと。翌年度の流行を控えて、どんな組成のものをいつごろ準備したら適切な対応ができるのか、そのための意思決定ですね。それから一番下はもう少し小さな、我々の身の回りの話で、診療所ですけれども、電話予約ですとか、予約のキャンセルですとか、予約なしの患者さんにどう対応するのが最も効率的なんだろうと、医療の質が上がるんだろうというような議論がなされております。
 次に防災・安全。これについては最近非常に注目度が上がっているように、調べて感じましたけれども、このような内容が書かれています。やはり特徴のある事例を2つ赤で書きましたが、1つはハリケーン発生時のように、多くの人が避難しなければいけないと。そのときに人がどう動くべきかと。人の流れを対象に検討した例です。それからもう1つは、下から2番目ですけれども、感染症が発生して、その対策の薬を配ると。ものの流れですね。人の流れとものの流れを対象にした検討がなされていることがわかりました。
 その次のページは、今、申し上げた3つの分野に比べて、相対的に事例は少ないんですが、交通につきましてもいくつか特徴ある検討が行われています。1つは空港の運営計画ですし、もう1つは例えば高速道路の料金をどう設定するのが最も経済的かつ運行が容易になるのかというような、そういったところなどの検討もなされているという例でございます。
 以上が具体的な検討例ですが、次のページからは、一体このNSFの例の場合、どんな分野に関心を高めているのか、どういう分野を重点的に検討していこうとしているのかということを可能な方法で分析してみました。
 この8ページ目のところは、分野別の研究資金額を経年で見たものであります。137件の採択プロジェクトの合計で見ておりますけれども、例えば流通・販売の場合には、これまで900万ドルが投資されていることになります。下の棒グラフを見ていただくとわかるんですが、でこぼこはありますけれども、流通・販売、医療、防災・安全等は全体的に減っていませんが、このグラフの比較では、例えば金融については最近少し減っているような流れが見てとれると。まだ分析は途中ですけれども、こういった見方もできようかなと思います。
 それからもう1つ申し上げられるのは、9ページですけれども、これはSESプログラムの研究の内容を紹介してきましたが、今まで申し上げた――ご紹介した研究プロジェクト以外に、ワークショップ等を通じて、サービス分野の数学・工学の運用をどうしたらいいかということを研究し、提言が行われています。具体的には、2007年にサービスサイエンスをテーマとするワークショップが開かれて、方向性の提言がなされました。その後2008年には医療。これは今分析しているところですが、ワークショップが機会を持たれていまして、この後、防災・安全をテーマとしたカンファレンスが行われる予定です。
 その流れを下の表に示してみました。採択されたプロジェクトの名前と、実施された機関、それからワークショップの内容であります。今、申し上げたような流れが左の下の青い網かけになるんですけれど、右の枠の方を簡単に申し上げますと、まずは2005年の段階で、医療システムなどにかかわる研究に、ORの研究者の参画促進の提言がなされました。その後医療分野へのシステム工学研究者の参画の呼びかけ、3番目はサービスセクターにマネジメントテクノロジーをどんどん入れていこうという提案がなされています。2007年6月の段階で、サービスサイエンスに関する本格的な議論が行われた後、どんな分野のサービスなのかという流れですが、2007年8月に人道分野、ヒューマニタリアン・サービスサイエンス、その後医療というところが検討されました。この2008年9月からは、防災・安全の検討が始まります。ですからこの事例だけを考えると、人道、医療、防災・安全などが検討を強めているという推定になろうかと思います。
 最後に10ページですが、今、申し上げたようなSESのプログラムが米国の場合、全体的にどんな位置づけなのかと。ファンディングシステムにおける位置づけを可能な範囲で分析してみました。結果が今から申し上げる内容であります。
 今日、ご紹介しているプログラムは、もともと米国科学財団の土木・機械・産業・製造工学及び材料設計部門が所轄しています。この中の幾つかのクラスターがあるんですけれども、システム工学及び設計クラスターに入っています。申し上げたいことは次の2件ですけれども、このクラスターのプログラムは6つあります。今日、ご紹介したService  Enterprise Systemsに加えて、今からご紹介する5つと組み合わさっていると。この6つの組み合わせで成果を求めているように見えます。
 目的は何かということですけれども、対象は事業システム全体と、個々の事業要素です。それを対象に、設計、制御、最適化を含む工学を用いて意思決定を支援しようと。そのための基礎研究を高めていこうというキーワードが書かれています。
 それをまとめて整理しますと、次の表になります。今、申し上げる6つのプログラムが左の下に書いてありまして、Operations  Researchから始まりまして、一番新しいのはDynamical Systemsですが、上のほうにプログラムの概要を書いたんですが、まず1971年の段階で、いわゆるOR、大規模システムの操作、最適化に適用可能なモデル及びアルゴリズムのプログラムがスタートします。その後、要素技術に分解されまして、1983年に設計、1994年にsensing――検知、それからcontrol――制御のプログラムが入ってきます。この4つのプログラムでしばらく走った後、2000年からService  Enterprise Systems、サービスに関する事業システム及びその要素に、今、申し上げた要素を入れていこうという流れになっているかと思います。その後、2002年から動的システムが個別要素に入っていると。
 以上が報告ですけれども、前半に申し上げた分野と、それから技術的な組み合わせとしてORから始まって今、申し上げたような融合という流れが現時点までの検討でわかりました。以上です。

【生駒座長】
 どうもありがとうございました。それではご質問がありましたら、どうぞ。手を挙げてご質問ください。

【高安委員】
 碓井さんにお尋ねしたいんですけど、アメリカのセブン‐イレブンを助けられたというようなお話があったかと思うんですけども、アメリカで、後の話を聞くとかなりこういう科学研究にお金を出していたようなんですけども、それはアメリカのセブン‐イレブンには全然反映していなかったのか。つまりアメリカのセブン‐イレブンはどこが問題で、それでどういうところを助けて、そのときこういう科学的なアプローチというのが何か役に立っていたのか、立っていないのか。

【碓井副社長】
 ちょっと長い話になります。アメリカにおいて、ウォルマートとか、あるいはKマートとか、いわゆるディスカウントの業態が80年代――70年代後半から80年代に台頭してきたんですね。セブン‐イレブンがそれに対してとった対策がまず1つは間違っていた。ディスカウンターに対してディスカウントで対抗しようとしたんですね。ですから非常に大型の効率的にディスカウントができる店にあんな小さなお店が、日本の1.5倍から倍ぐらいのスペースですからちょっと大き目ですけど、同じディスカウント路線で行った。これは日本と対比しますと、日本はどうしたかというと、独自の弁当とか、総菜とか、おにぎりとか、こういうファストフード、この売り上げシェアを、私が入った78年には多分2%ぐらいしかなかったですけど、これを今、30%ぐらいまで高めてきて、特徴を出したわけですね。それで利便性をうたった。ですからまず倒産した原因は、そういった戦略上の誤りというのが1つでございます。
 それから不動産投資でもう1つ誤りまして、そしてブラックマンデーで最後につぶれたということで、92年にアメリカのセブン‐イレブンを吸収いたしまして、その後はトップの鈴木さんを含めて、トップ層が年に4回ぐらい経営会議ということで指導して、そこでとった手法というのは、単品管理と申しますか、一品一品の商品をきちんと見て、お客の立場で商品をそろえてご提案していくと。全く日本と同じやり方でございます。ですから購買代理型に時代が変わって、買い手市場にアメリカもなっているわけですから、購買代理型にならなきゃいけないと、この基本は同じでございます。
 そして私どもは実行部隊として、まず「おまえ、行ってシステムを見てこい」ということで92年に行きまして。ところが実際にはシステムの問題に手をつける前の業務改革が先だということで、プロジェクトチームをつくりまして、2年間業務改革プロジェクト。そこからシステム化に入って、最終的にトータルシステムが終わったのが8年かかりました。
 私は出張ベースですけど、パートナーのNRIとか、あるいはNECには、後に現地で会社もつくってもらったこともございますけど、やはり日本のノウハウを生かしながらやっていこうということで、システム的にも大体同じ構造のシステムを支援して。UNIXのオープン系のシステム、このマスター関係とか、発注処理、物流、こういうシステムは日本のものを移植しました。その他の部分は現地で組み立てましたけど。POSとか、情報系です。日本のシステムレベルを今、5とすれば、大体そこで3のレベルのシステムを実行して、何とか一番隆盛期には全米小売業で8位だったんですけど、今は20番台の頭のほうに来ていると思います。再建されたと。
 その間にシステムの話だけじゃなくて、物流なんかの組み立ても、物流子会社を自分でつくって、自分で物流運営をしていたわけですけど、これはどうしてもプロフィットセンターになっているんですね。利益を上げるために集中購買をしたり、そういうことでセンター側が客のニーズと違う仕入れをしている。これはやめなさいと。これは鈴木さんの判断で後にウォルマートに吸収された、マクレーンというところに卸業務の4割をゆだねて、そして卸を切り離して、物流も切り離して。ただし、物流の考え方、先ほどはあんまりご説明できなかったですけど、やっぱり共同配送というようなこととか、あるいは温度対応との物流を組み立てる。いわゆるデイリー品を柱に育てなきゃいけないということで、デイリーの向上。これはプリマさんとかにも向こうに会社を、工場をつくってもらったりして、そういうものを育ててきたということでございます。
 ですから、基本的にはさっき触れたように、やったこと、やっている手法は、客の立場という視点では同じだと言っていいと思います。ただ、その落とし込み方については、そのときに、私どもも非常に勉強しまして、やっぱり先生として日本のやり方のよさとか、それからやっぱりメソドロジーで話をしていかないと、単発で事例だけを言ってもしょうがないので、やはり業務改革、システム構築のメソドロジーを整理し直して。ですから非常に単品管理とか、フレンドリーサービスは日本的要素なんですけど、こういうものをわりにロジックに乗せて、メソドロジーを踏まえて落としていったと。こういうやり方をしたということが8年間続いたということです。こんなことでございます。

【生駒座長】
 今のお話から見ると、サービスサイエンスなんてやっても全然企業には役に立たないみたいですね。日本のセブン‐イレブンさんを見たほうが一番いいっていう話になる。その点はどうなんですか。本当に一生懸命大学でこういう研究をやって役に立つんですか。そういう質問ですよね。

【高安委員】
 そうです。

【碓井副社長】
 論理的に武装して整理するという、1つのメソドロジーがやっぱりないと、広がらないと思うんですね。ですからセブン‐イレブンとか、トヨタにしても、マニュアルはないわけですね。でもこれを広げるときには、やっぱり標準化して、モジュール化して広げるという、ここに1つの科学的アプローチの方法論というのも大事だという。それからやっぱりモジュールの精度を高めるためには、よく成功事例も分析して、科学的・工学的にあるいはシステム的にデザインをして、部品化して、いい部品があればいい製品につながる、いいサービスにつながると思いますので、部品精度を上げて提供していくと、こういうところにはやはり科学的な要素は非常に重要だなと。ですからやっている人を解析して、そこからやっぱり抽象化、標準化して、採用できるようにしていくというところに科学をどう使うかというのは大きなポイントだと思います。

【高安委員】
 関連して少しいいでしょうか。そのセブン‐イレブンの中で、そういう理系の研究者のような人が何か寄与したようなことはあるのか、それとも違うのかというのは。

【碓井副社長】
 極論かもしれませんけど、はっきり申し上げて、理系・文系は全く関係ありません。彼らに理系か文系かなんていうことは聞いたこともない。ですからそのくらいもう一緒なんですね、ビジネスの世界に入ったら。今、フューチャーアーキテクトっていう私の会社は、ITコンサルティングとSIをやっていますが、約6割は文系です。徹底的に3カ月教育して、その後のOJTでやっぱり伸びる人は伸びて、だめな人はだめだと。

【生駒座長】
 しかしITを実際に開発するのは外に出して、どこかITの会社に頼むわけですよね。

【碓井副社長】
 そうですね。

【生駒座長】
 企画の部分を本社でやるというか、考えて、実際のITのエンプロイメントをするのは、どこか外にやっているんですよね。

【碓井副社長】
 そうですね。それから非常に大事なのは、共創というわかりにくい言葉を使いましたけど、やっぱりパートナーシップで成り立ってきた会社です。セブン‐イレブンというのは、フランチャイズで、1万2千店の95%はフランチャイズですね。外部です。それからパートナーも全部、物流、製造、全部外でやってもらっているわけですね。それで本体は5、6千人しかいないわけですね。それで2兆6千億のビジネスをやっている。だからここのパートナーと連携する、共創するためにはやっぱりお互いの役割分担を整理しなきゃいけないと、こういう環境にあったことが1つには比較的科学的といいますか、論理的に物事を進めたと、そういう環境があった。これがそうじゃないと、要するに自前で全部やっていると売れないのは商品部が悪いとか、売っているお店が悪いとか、こういう議論になりがちなんですね。

【儀我委員】
 金子フェローにご質問したいと思います。このアメリカのSESのファンディングのお話なんですけど。これは、分野は何か決めて、そこに募集をかけて選んだというものですか。その分野はどうやってあらかじめ決めたのでしょうか。

【金子フェロー】
 分野について特定して公募はしていません。先ほど言ったように、いろんな分野を公募していると。今回分野を特定したのは、私どもが内容から判断しまして区分しております。

【儀我委員】
 そうすると公募するときの分野はサービスサイエンスというふうに公募したんですか。

【金子フェロー】
 そうです。サービスサイエンスといいますか、サービスサイエンスという言葉だけではないですけども、先ほど言ったプログラムの内容で公募しています。

【儀我委員】
 わかりました。たまたま結果がこうなったということですね。

【金子フェロー】
 はい、そうです。

【安部委員】
 金子さんにお伺いします。今と関連するんですけども、分野というときに、こういう流通とか、交通とか、そういった分野と、サービスのプロセスの上での分野、要するにお客様のニーズがどこにあるかとか、そういったところをどういうふうにちゃんと聞くかとか、競争するときにどういうふうにするかとか、そういった分野の切り口もあるかと思うんですけども、そういった視点というのはないんですか、アメリカの場合。

【金子フェロー】
 本日ご報告した内容は、公開情報でできるだけ分析しておりますので、今、申し上げたような視点で分析も可能だと思いますけれども、追加の情報収集が必要です。私どもとしては次のステップとして、NSFとの方との現地会合等も含めて、できる限りのことはしたいと考えています。

【中島委員】
 今の分野の話に続けて質問なんですけども、一番上がSES、要するにService  Enterprise Systemsっていうことでなっていると思うので、ということはService Enterpriseって、多分我々がサービスサイエンスとしてここで議論しているよりは少し狭い、どちらかというとサービス産業が対象ということだろうと思うんですけども、その下でサービスサイエンスっていっても、やっぱり大括りがそういう形になっているとすると、少し狭い分野の話かなというのが思うんですが、そのわりには中身を見ますと、交通システムとかサービス産業をはるかに超えたことがテーマとしては挙がっていますよね。それでお伺いしたいのは、このService  Enterprise Systemsっていう語感を、どの辺にとらえておけばいいんだろうかということなんですけども。

【金子フェロー】
 今から申し上げるのははっきりした根拠に基づいたご報告にはならないんですが、調べていますと、次のような感触があります。
 このプログラムはどんどん変容していると思います。例えば対象とする機関として、ノンプロフィット・オーガニゼーションとか、それからパブリックセクターズという言葉が最近出てきたように見えます。それからプログラムの名前そのものも変わってきていると。全体として、ですからおっしゃったように、もともとはある範囲のものだったのが、社会的ニーズなのかもしれませんが、防災・安全ですとか、先ほどの人道とか、広がってきているように思います。傍証として、この8月ぐらいは、私どもずっと毎日ウエブで見ていたんですが、日に日に内容が少し変わっているということなので、その辺もトレースしてみたいなと思っています。

【生駒座長】
 これ、2000年にスタートしたしたときのプログラムの名前ってわかりますか。もっと最近だと思ったんだけど、2000年だと、IBMの仕掛けの前なんですよね。

【金子フェロー】
 そのころのことかどうかわかりませんけど、その前はService  Enterprise Engineeringというプログラムであったときはあります。それがService  Enterprise Systemsに変わっていると。そこから先は今のところウエブで確認できないので、過去からさかのぼってチェックすることも重要だと思っています。もっと言うと2000年前はどうだったんだということですね。ただ、全体の流れとしてはどうも2005年ぐらいから何か動きがあったような気はします。

【生駒座長】
 それならわかるんだよね。それは多分わかるんだけど。はい、どうぞ。

【丹羽委員】
 それに関しては、多分パルミサーノ・レポートが出たのは2005年ぐらいですけれども、それより前にパルミサーノ・レポートの下部組織として、ワーキンググループが幾つか走っていますね。それから多分2年以上かけてやっていると思うんですよ。だからそういう中でサービスっていうキーワードが出てきていて、それを意識してかどうかわかりませんけれども、NSFも多分、それよりもっと前から、なんか底流は流れているんじゃないかというふうに私は思っているんですけどね。
 それからちょっと別の質問をよろしいですか。碓井さんにちょっとお聞きしたいんですけれども、先ほどの碓井さんのご発表と金子さんの発表というのはちょっとワールドが違うようなふうに見えているんですが、金子さんの発表の中の4ページにファンディング事例として、流通・販売っていうのがございますね。それでこれ、コールセンターの例が多いんですけれども、例えば一番上の小売業なんかの研究内容、こういうのをご覧になって、なんかセブン‐イレブンさんのオペレーションと何らかのこういう研究が接点というところはございますでしょうか。

【碓井副社長】
 ちょっとストレートにコールセンターばかりが目に入りますから、そういう意味では、Eコマースとか、そういう世界では非常にコールセンター等の運営はしておりますけど、日常の業務というのは基本的にはリアルの小売業というのはお店が接点だと考えておりますので、お店で解決できないものを残さないようにするということのほうがまずは重要だということで、このコールセンターというジャンルについてはあまり関心は、私自身はあまりないですね。

【丹羽委員】
 一番上の例はいかがですか。

【碓井副社長】
 本流ではないですね。いわゆるこれ、リバースオークションとか、商品そのものじゃなくて、資材関係の調達マーケットというのは、これは一時、2000年代頭にはやりましたね。ですからそういう領域でコスト削減をするということでは効果を出しましたけど、やっぱりそれは今までの無駄をなくして、ネットで調達するということは、1回やるとどんと下がるんですね。やっぱりそういうのが出てくると、相当リアルなプロセスでも下げようということで、そういう動きが出てきますから、継続的にずっとリバースオークション型の間接な調達が伸びているという環境にはない。むしろネットを通したいわゆるEDI取引というものが標準として広がったというのが実情だと思いますので、今、現在はそんなにインパクトは感じません。

【大澤委員】
 碓井さんに質問なんですけども、このすり合わせっておっしゃった――あ、ごめんなさい、それは僕の言葉か。モジュール化とおっしゃったんですが、これは具体的にどういうことをモジュール化というふうにおっしゃっているんですか。

【碓井副社長】
 非常にモジュール、あるいはすり合わせというのは、わかりにくい面もあるんですけども、私は1つ言っているのは、例えば伝票をなくします。そのためにはシステムとしてはこういうシステムがあります。そしてそのリスクとかあるいは運用ということを考えた場合には、運用ノウハウとしては、あるいは業務プロセスとしてはこういうものがありますと。
 こういうものをセットしたものをモジュールというか、その頭にサービスソリューションという言葉をつけてモジュール。だからシステムだけぽんと出しても使えないんですね。そういうものがつくれればと。

【大澤委員】
 ちょっと今、私、大きな間違いをしたのは、すり合わせって自分のメモをうっかり読んでしまってそのまま言ってしまったんですが、モジュール化したそれをうまいことすり合わせして、全体としてシステムをつくっていくっていうところも、もしかしたらこれもサイエンスのメスが入るべきところなのかなと思うんですけども。

【碓井副社長】
 と、思います。

【大澤委員】
 それは、どうやらこの、今、既に数学的にアプローチされているような問題群とは大分異質なものがあって、おそらくこれは、アメリカがやっていることに日本がついていってもあんまり意味がないと思うんですよね。後を追いかけても、彼らのスピードには多分取り残されるばっかりだと思うので、日本はまた独自の道を進みながら、アメリカに対して碓井さんがやってこられたようにそのノウハウをあげていくというふうな、ある意味ちょっと日本のほうが上に立ったようなやり方がいいと思うんですけれども、そういう意味では日本独自のよさみたいなものが、私的にはモジュールのすり合わせノウハウみたいなものをサイエンティフィックに系統化していくのがいいのかなと思って碓井さんのお話を聞いていたんですけども、そういうのって、何か可能性があると思いますか。

【碓井副社長】
 先ほど商品開発のラーメンのお話をして、いろんなパートナー、みんな並んで一緒になってノウハウを出したと。あれはまさにすり合わせなわけなんですね。ですから、やっぱりすり合わせということは、日本のクオリティー、競争力を増すために非常に有効な力を入れるべきところだと思います。ただ、そのすり合わせ――同じことを、サウスランド・アメリカを再建したときに、そのままやれと言ってもできないですね。ですからすり合わせノウハウをうまくモジュール化したような形で標準的に落とし込む。さっき落とし込みのところに工夫が要ると言ったのは、そんなイメージを感じております。

【高安委員】
 今のことにも関係するんですけれども、科学的方法ということになると、自社だけで内緒にしておくことじゃなくて、他社にも公開していくような視点が必要になると思うんですけども、そういう点で過去に他社との協力関係を持って、何かうまくいったようなこととかはあるんですか。それで、それは公開されるような形の。

【碓井副社長】
 先ほどコンビニエンスは非常に順調な成長をしたというお話をしましたけど、これはよその小売業と違って、同じやり方をしてきたという面があるんですね。つい、数年前まで。今は大分違ってきています。システムの使い方が違ってきていますけど。
 これは何かというと、セブン‐イレンブン、右へ倣えでみんなやったんです。システムもそうです。共同配送もそうです。商品開発もそうです。店舗運営もそうです。ですからほかの小売業以上にコンビニエンスはどの店に入ってもほとんど同じという感じを皆さん受けられると思うんですね。
 ですから、このある種の標準で来たということは、オープンにしていたということですね。ですから87年に東京電力と公共料金の収納業務をやりました。これは全部すぐに手法をオープンにして。要するにすそ野を形成しないで新しい業態は育たないだろうということで、やっぱりやってきた。それからシステムに関しても私が所管していて、1年間でハードウエア、あるいはミドルウエア、アプリケーションはだめだけど、その考え方は使っていいよということで、事実上オープンにしたんですね。ですからもう、セブンがやって、次のチェーンがやりたいと言ってつくるまでに1年かかりますから、実質的には全く制限しない。やっぱりこれがある意味で、こういったすそ野ができたから頂上も高くなれたということではあるかなと思う。これはある意味じゃ、非常に後発だったという、コンビニの事業そのものが。こういう面がいろいろと幸いしたというのはあるかと思います。

【生駒座長】
 ちょっと時間が迫ってきたので、1つだけ碓井さんへお聞きしたいんですが、文部科学省がこういうプログラムをやったときに、大学の先生が応募してくるんですけれども、現場のデータがないとこれはなかなか研究ができないですね。アメリカの例を見ますと、すごくプラクティカルなことを大学の先生はやっておられて。例えば小売業における利益最大化の最適モデルをつくれなんていうことを出したときに、そういう大学が研究をやろうと思ったら、セブン‐イレブンさんはどのくらい協力してもらえそうですか。

【碓井副社長】
 今までは協力してこなかったです。私は4年半ぐらい、やめてからなりますけど。これはなぜかというと、1つはこういうことを言っているんですね。情報を経財産業省のほうに出してくれという話が来たんですけど、情報だけ出したら間違いますよ。仮説があって、どういう行為をしたかに基づいて情報というのは分析しないと意味がないんだ。どういう意図のもとに出た結果だ。結果だけ見ていると間違いますということが1つあるんですね。ですから、もしやるとなれば、仮説のところから入って、かなり一体となってやっていただくという形にならないと多分うんと言わないと思います。

【生駒座長】
 共同研究のような格好なら可能性があると。

【碓井副社長】
 そうですね。

【高安委員】
 ちょっとそれに関してですけど、セブン‐イレブンさんじゃないところで、あるチェーン店の全部の丸ごとのデータ3カ月分ぐらいをある大学の研究室に渡して、共同研究をやっているような事例は、既に日本でもあります。

【碓井副社長】
 たくさんありますね。

【生駒座長】
 ああ、そうですか。大分時間も押してまいりました。どうもありがとうございました。それで、ちょっとご提案がございますけれども、3回目を迎えまして、報告書の作成を今年度内にやるわけでございますけれども、この小売業の問題も1つ、大きな分野でございまして、今日お話しいただいた碓井さんはこの分野の実際のご経験と、その後で理論的な研究をなさっておりますので、この検討会の委員に加わっていただいたらいかがかということで、議長提案をさせていただきますが、よろしゅうございますかね。(拍手)
 じゃあ、事務局のほうでどうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。それでは引き続きまして、各論の検討について、皆さんのご意見を賜りたいと思いますので、まず事務局からご説明をお願いいたします。

【柿田計画官】
 資料3に基づきましてご説明いたします。前回並びに前々回、これまで2回のこの検討会でのご議論等をもとにしまして、本検討会で検討を進めていただいておりますサービス科学・工学の推進、これについての検討の方向の案という形でまとめさせていただきましたので、ご説明申し上げます。
 1ページ目です。サービスを取り巻く状況です。サービスに関する現状認識でございますが、先ほどのお話にもございましたけれども、我が国をはじめ、主要先進国における産業構造が変化する中で、第3次産業は我が国のGDPの7割、雇用の約3分の2を占めるというようなことで、経済に占める第3次産業の割合が増加しているという事実がございます。
 それからこのような状況の中で、サービスが製造業とも多様な関係を持つと。サービスが、ものと代替あるいは補完、それから相乗的な関係、そういった多様な関係を持つようになるなど、他の業種にも大きく影響してきているということです。
 それから例えば製造業においては、製品設計等へのIT技術の導入、製造業を営む上での業務、例えば受付・事務等の業務の外注であるとか、製造・販売等に関する各種のデータが、新たな製品サポートサービス、例えば保守といったようなサービスを生むといったことと、サービスへの依存、あるいはサービスへの寄与ということが増えてきていると。
 それから少子高齢化社会への対応、生活の質向上等のための医療・福祉、防災等の公共サービスにおいても、新たなサービスの創出やサービスに係る生産性の向上ということが求められております。
 それからさらに低炭素とか、持続可能な社会といった今後の社会のあるべき姿に対応して、これまでのサービスにかわって、今後ふさわしいサービスについてイノベーティブなモデルを創出し、社会に実装していくというようなことが大事ではないかという現状認識でございます。
 次、2ページです。サービスにおいて科学技術政策が果たすべき役割と、求められる施策ということで、サービスに関する今後の施策の視点ということですが、経済はもとより、社会に対して大きな影響を与え得るサービスについては、これまで必ずしも十分に科学的あるいは工学的な取り組みの対象とはされてこなかったと考えられますが、今後はそれらの対象として捉えていく意義があるのではないかということです。
 それからサービスにおいて、経験と勘、科学的・工学的な手法、これらを多様な関係で効果的に生かすための知を創出していく。サービスに科学的・工学的な手法を導入することにより新たなサービスを創出すること及び既存のサービスの高度化、・広範囲化、広範囲化といいますのは、このサービスの、言ってみればテリトリーを広げていくという意味でございます。高度化・広範囲化の双方に大きく貢献する。この新たなサービス創出、それから既存のサービスの高度化・広範囲化、これらをサービスにおけるイノベーション創出と称しております。
 また、ものとサービスが多様な関係を有するようになるなど、製造業に占めるサービスの割合が増大してきている現状に対応して、我が国が誇る、ものづくりにおけるサービスの高度化を図り、製造業のさらなる強化にもつなげていくという視点。
 それからサービスにおけるイノベーションは社会のイノベーションにもつながるものであるということで、これらを踏まえて、サービスにおけるイノベーションを起こし、経済的、社会的、公共的価値を創出することは大きな意義を有することから、科学技術政策として、サービス科学・工学というものを推進していくということであります。
 3ページに参ります。サービス科学・工学についての概念ですが、科学的・工学的な手法を用いて、サービスにおけるイノベーションを創出するための知識や方法論を構築し、活用していくこと、としてはどうかということでございます。
 そして具体的な施策の例でございますけれども、研究機関――大学等が該当します、サービス実施主体、これは企業、自治体、NPO等でございますが、それらとの協働を促進し、サービスにおけるイノベーションに関する課題を達成するための研究システムを創設する。この研究システムといいますのは、研究資金を配分し、研究を推進していくための1つの施策という意味でございます。
 それからサービス科学・工学を推進する研究拠点を形成する。サービス科学・工学の推進・普及に向けたコミュニティーの形成や啓蒙活動を支援する。研究の推進に必要なデータをサービス実施主体等が提供し、研究機関が利用できる仕組みの整備を支援する。サービス科学・工学の推進に寄与する人材、例えば自然科学と社会科学等、幅広い知識や専門性を有する、いわゆるT型、あるいはΠ型と呼ばれる人材、こういった人材を育成していくということであります。それとサービス実施主体等を対象としたサービス科学・工学の推進・普及を目的とした社会人教育を支援するということもあるのではないかということでございます。
 それから4ページです。今度はサービス科学・工学研究を推進するための施策のあり方でございます。サービス科学・工学研究の意義です。サービスにおけるイノベーションに関して、数学、IT、認知科学等の自然科学の活用をベースとしつつ、社会科学や経営管理方法等との知の連携による科学的・工学的手法の導入を伴う研究を推進するということは、1つは、社会における課題に適用可能な研究成果を経済・社会へ実装していくことを通じた経済的・社会的意義がまずあると。もう1つは、新たな研究分野、あるいは研究手法の創出という科学的な意義があるのではないかということでございます。
 それからサービス科学・工学研究のアプローチですが、サービス科学・工学の実践に係る全体像を俯瞰して、イノベーティブなサービスを設計するというアプローチが必要ではないかということで、2方向のアプローチがあると考えられます。
 1つは社会におけるサービス・イノベーションに関する課題を設定し、これを達成するために必要な手法やモデルの開発及び要素技術の開発・発展・統合を行うという、社会から技術の開発・発展・統合へのアプローチ。それからもう1つはその逆でありますが、要素技術群を起点とし、社会における課題に対処するための手法やモデルを開発し、社会におけるサービス・イノベーションを起こすという、2方向のアプローチがあるのではないか。こういった上から、あるいは下からというアプローチと、それから全体像を俯瞰していくことが必要ではないかということであります。
 それから5ページですが、対象となる研究領域・研究プログラムですが、まず研究領域、あるいは研究プログラムですけれども、ここで言っておりますのは、机上配付の1枚紙をご覧いただきながらと思いますけれども、まず研究領域といいますのは、この机上配付の1枚紙で言いますところの一番左側の医療――例えばの例でございますけれども、医療・生活でありますとか、防災・緊急時対応、運輸・交通、観光といった、大きな括りのレベルを研究領域と言っております。真ん中の欄が研究プログラムとなっておりますけれども、それらの領域の中でその社会におけるサービスの高度化が求められるような課題に対応するものでございます。それを研究プログラムと称しています。その下にさらに幾つかの、研究プログラムで書いております課題を達成するために必要となる個々の研究プロジェクトがぶら下がるというようなイメージでございます。
 それで本体の資料5ページに戻りますが、研究領域・研究プログラムですけども、科学的・工学的手法の導入により、新たなサービスの創出、既存サービスの高度化・広範囲化が可能となり、課題の達成が期待されるものであるという、条件というまとめで書いてあります。それから産学官公民が連携して取り組むべきテーマであるものということです。それから当面取り組むべき研究領域としてということで、これもまだたたき台でございます。今日、いろいろご意見をいただきたいと思います。医療、防災、運輸、流通、観光、教育等に対応するものが考えられるということで、この研究を推進する――この施策を実施するに当たっては、やはり一定の対象とすべき領域というものをまず定めていく必要があるのではないかということでございます。それから研究の推進に当たっては、領域ごとに研究プログラムを設定し、これに対応する研究プロジェクトを実施するということです。
 それから4、その目指すべき目標です。社会の課題に適用可能な手法やモデルを開発し、サービスの実施主体等による活用を通じ、さらなるサービスの高度化・広範囲化を目指していくという活動をしていく必要があるということ。それから研究の実施を通じて、サービス科学・工学に関する知識を蓄積し、これらをもとにサービス・イノベーションに資する一種の共通基盤的なものを創出するということも1つ目指すべき目標としていいのではないかということです。それから我が国がサービス科学・工学研究を推進し、サービスのイノベーションに関する取り組みを実施していくことにより、サービスの分野において常に世界を先導していくことを目指すべきではないかということです。
 それから6ページに参りますが、当面着手すべき施策としての研究システムのあり方ということでございまして、内容としては、最初のほうはもう繰り返しの文章になりますが、社会の課題に適用可能な手法やモデルの開発及び社会への適用を行うため、研究テーマの選定及び研究資金の配分等を行う研究システム、これを創設する。
 研究体制としては、サービスのイノベーションに関する課題を明らかにし、その達成のための手法やモデルを開発するため、研究機関及びサービス実施主体等との協働により研究を推進するものであると。
 研究テーマの設定の仕方としては、研究対象となる研究領域において、関係者の広範な参画を得て十分な調査検討を実施することにより、達成すべき具体的な研究プログラムを設定する。具体的には、関係者へのインタビュー等による研究プログラム候補の抽出、抽出された研究プログラム候補をもとに、ワークショップ等による開かれた議論等を経て設定するということで、やはり研究の成果がしっかり社会の役に立つものであるということを前提として、このようなプロセスによって研究テーマを設定する必要があるのではないかと考えます。
 それから7ページですが、(4)で研究のマネジメント、研究領域ごとに研究運営の責任者及び専門的な助言を行うアドバイザーを設置する。責任者及びアドバイザーが研究プログラムごとに研究プロジェクトを公募する。責任者は研究プロジェクトの採択当初より担当する研究領域全体の統括を行う。我が国や世界における社会的・経済的情勢やサービスの動向等を考慮し、事前評価及び中間評価を適切に実施し、研究の方向、予算配分等を適切かつ柔軟に変更していくと。
 それから(5)研究ごとの研究期間・研究予算ですが、研究プロジェクトごとに必要研究期間・予算規模は異なることが想定されますが、当面、1つのテーマについて3年~5年の研究期間として、年間2,500万円~5,000万円程度の幅を持たせて、個々の課題を実施していくというイメージではないかと考えております。
 それから8ページが、最後6番ですが、関係者の連携とおのおのの役割ということで、まず1つ目は、サービス科学・工学の推進に当たっては、大学等の研究機関とサービスの実施主体である企業、自治体、地域、NPOなどの関係者等が協働し、具体的な課題達成のための明確な目的と意思を持ち、新しい知識・技術を創出するとともに、これらと既存の知識・技術・経験などを組み合わせていくことが肝要であると。それから関係者等は、人々や社会の多様なニーズをより的確かつタイムリーに把握し、経済的・社会的価値の高いサービスを効果的・効率的に社会へ実装するために連携することが求められる。研究機関はサービス実施主体等と協働し、状況の分析、データの活用等とともに、サービス科学・工学に係る要素技術、数学、IT等の発展・統合による課題達成に向けた新しい方法論の創出に取り組むとともに、研究対象である具体的な課題に適用可能な手法・モデルを開発する。サービス実施主体等は、サービスの創出あるいは提供の現場における明確な課題の抽出とともに、サービスの実施に伴う各種のデータを可能な限り提供することが、さらなるサービスの向上に役立つことに留意する。
 9ページですが、研究機関及びサービス実施主体等は、研究の結果を活用したサービスを実際の現場に実装するとともに、成果の確認を通じたモデルの磨き上げと普及活動に努める。サービスの研究、実施に当たっては、サービス実施側と享受側だけではなく、これを取り巻くもの、例えば環境等、これを1つのシステムとしてとらえることが重要である。関係者はサービスが、そのあり方によっては社会や地球環境等にも影響を与え得るということも認識し、持続可能な社会のために有用なサービスの創出や実施に努めるというようなことで整理をしています。
 また、本日も貴重なプレゼンテーション、ご説明をいただいておりますので、そういった事柄もさらに盛り込んでいきたいというように思っておりますが、前回、前々回までの議論等をもとにして検討の方向としてまとめたものが以上でございます。
 それから先ほど、今後の施策の例として、人材育成の話を出しましたが、参考資料の3に文部科学省高等教育局でやっております、産学連携による実践型人材育成事業として、サービス・イノベーション人材育成事業というのがございまして、19年度から始まりまして、これまで2カ年間にわたりまして、大学・大学院におけるサービス分野の人材育成、これを文部科学省が大学に委託するという事業でございますが、19年度は6課題、20年度は7課題の採択がされておりまして、この参考資料の3に要約を記しておりますけれども、こちらも、こういう事業も既に進んでいるということもあわせて参照していただければと思います。以上でございます。

【生駒座長】
 はい、ありがとうございました。それではこの各論についての中身について、ご意見、ご質問をどうぞ。はい。

【中島委員】
 大きい点だけ1つ申し上げます。聞いていて、画竜点睛を欠くという感じがちょっとしているんですけども、何かと申しますと、研究の方法論というか、枠組みが従来の枠を出ていないように思うんですよね。例えば先ほど碓井さんからもありましたけれども、セブン‐イレブンのデータを提供していただけますかというときに、後からちょうだいではだめだというのがありましたよね。だから最初から一緒になって取り組んでいくなら、そのデータも出しましょうということだと思うんですけれども、サービスサイエンスを研究していく上で一番大事なのは、そういう現場と一緒にやっていくということだと思うんですね。だから研究室で企業と協働してやりましょうという枠組みじゃないような気がするんですけど、そのあたり、もし誤解しているんであれば訂正していただきたいと思います。

【柿田計画官】
 産学といいましょうか――産と学に限らないのかもしれませんけど、そことの協働というのは、やっぱり1つの欠かせない重要点だと思っております。

【中島委員】
 すいません、協働という形じゃ足りないと申し上げています。従来からそういう協働というのはあったと思うんです。共同研究という枠組みで。そうじゃなくて、むしろ例えば、セブン‐イレブンの例で言うと、研究者がセブン‐イレブンに行って、多分大澤さんなんかがよくやっていらっしゃると思うんですけど、そこで研究してくるという形をとらないとだめなんだろうと思うんですよ。研究室と企業の協働って書いてありましたけど、どうも足りない気が。だから本質的に昔の枠にとらわれているというか、出ていない。

【生駒座長】
 具体的にどうしたらいいですか。どういう募集要項にすれば、その答えを言ってくれますか。

【妹尾委員】
 おそらくここには、アクション・リサーチとアクション・ラーニングという研究方法、つまり経験学習的なものを方法論として入れるっていうのがかなり、今、中島先生が言われたものに対応するんだと思うんですね。すなわち、仮説検証型だけではなくて、一緒に現場でやりながら、そこから学習する、気づく、何とかする。ただし場所的な問題とかそういうのはあるんだけども、方法論的に言えば、アクション・ラーニングないしはアクション・リサーチのスタイルだろうというふうに思います。それが1つの答えだと思います。

【生駒座長】
 難し過ぎてわからない。

【妹尾委員】
 多分、方法論的に、社会系の方法論に近い話ですから、科学――いわゆるサイエンスの方はあまりなじみがないと思うんですけど。

【生駒座長】
 募集要項にどう書けばいいんですか。

【妹尾委員】
 アクション・リサーチと。

【生駒座長】
 ヨーロッパが、これを打開するには企業にお金を預けて大学をまとめてこいと言うんですよ。

【妹尾委員】
 そういう手法的な話ですね。

【生駒座長】
 そう。そういう、具体的に言ってもらわないと。

【妹尾委員】
 なるほど。

【生駒座長】
 FP7で成功しているのはそれなんですよ。大学につけちゃうと、今言ったことになるから、企業を中心にして、大学の先生を下に従えて複数やってこいって、こういうプログラムは日本はやったことはないんです。経財産業省もなにも、大学は一部はいるのだけど、ほんのちょっとだけ、形だけ入れてやるので、そういう案を言ってるのですよ、アクション・リサーチですか、難しいので、ちょっと易しく。

【儀我委員】
 ちょっと補足していいですか。私どもはちょっと言葉は違うんですけど、企業さんとの双方向発展的研究といっていると思います。数学の場合でもいけないのは、企業からこういう問題があるから、はい、やりなさいと言って、ブラックボックスのままで研究することです。これですともちろん大きな成果は上がりません。。そこで、企業に結果を持っていって、これでどうかと、企業のほうがまたこれを見て、いや、もうちょっとこういうことを検討してほしいといって、要するに双方向であって、しかも発展的でやっていくということがないとお互いによくないのではないかと思います。だからそういうことを募集要項に書かれればいいのではないでしょうか。

【大澤委員】
 それ、まさにアクション・リサーチということになるかと思うんですけれども、実際それをやってみるとアクション・リサーチって本当になかなか大変かなと思うんです。というのは、まずデータから統計的に何か有意な仮説を導くほどデータが集まらないという問題も、例えばあると思うんですよね。
 例えば、大学院の学内の審査みたいなところでさえもちょっとそんなんじゃ、全然仮説検証になっていないと言われたりするぐらいのことをやっていくということになると思うんですけども、そういうのは、従来の科学の土台に最初から最後まで乗らないような研究体制というのがたくさん出てくると思うんですよね。アメリカのやっているような、こういうやり方だったら多分ちゃんとデータがあって、科学らしくてやりやすいんですけども、要は何が言いたいかというと、アメリカのこういう例をいろいろ引き合いに出されている中で、全く新しい、おそらく科学の世界においては最初全く相手にされないようなことを、文部科学省として支援するご覚悟というのはどれぐらいお持ちなんですか。

【岩瀬総括官】
 まさにここで議論していただいたような、本当にサービスのイノベーションにつながるような、それであってかつ科学・工学の研究と言えるようなものとして何ができるのかという議論を深めていただいて、今までのやり方ではこういうところは限界があるので、ここまでやるべきだという議論をまさにここではしていただければと思います。

【大澤委員】
 少しだけニュアンスが違うと思うんですね。科学技術の研究と呼べるようなものというのじゃなくて、科学技術の研究と呼べないようなものを日本が先導して、科学技術と呼ぶかどうか、その覚悟がありますかという質問です。

【生駒座長】
 実際にフィールドに入っていって、一生懸命データをとって、いろいろ解析したけれども、科学と言えるものまで到達しなかったと。そういうこと?

【大澤委員】
 そうですね。はい。

【生駒座長】
 そういう場合も許容しますかということね。

【大澤委員】
 それでもやはり、これは科学だと思うんですよね。

【妹尾委員】
 科学に到達しなかったではなくて、従来の仮説検証型のアプローチと違うアプローチをするということを、科学技術という名前で、要するに枠を広げる覚悟があるかって、こういうことですよね、大澤委員がおっしゃったの。

【大澤委員】
 はい。そうです。

【岩瀬総括官】
 1つ例を挙げてみますと、役所の直轄ではなくて、こういうファンディングは、ファンディングエージェンシーを使って普通はやっています。こういう政策的に何か新しいことをやる必要があるという場合に、JSTを使って普通やっていますけど、私も前職で社会技術をやったことがありますけど、これはもう社会の問題を解決するというのが大前提にあって、そのときに現場の人の実践だけで今までやっているけど、そうじゃなくて、科学的なもの、工学的なものをそういう社会の問題の開発の現場に実際に使っていくと。それがどこまでできるのかと、そういうファンディングは今、つくってやり始めています。そこでは実施主体がNPOだったりします。そういうことは既に文部科学省と関係法人ではやっています。

【生駒座長】
 今、言ったようなものだったら問題がないと思うの。要するに、今はある仮説検証じゃなくて、広げるためにある手法を用いてやろうとする。それ自身はもう既に社会技術でも似たようなことをやっているから。何せ新しい手法が科学技術かどうかってだれも判断できないからいいわけですよ。だけど、僕が心配なのは、フィールドに入っていったときに、一生懸命プラクティスやったけど、結局モデルができなかったよというのがすごくあり得るわけですよ、これ。挑戦的にやろうとすると。そういうのでも評価でよしとするかどうかになるんだよ。

【岩瀬総括官】
 そこはまさに悩みながらやっていく世界に入っていて、まさに今、申し上げたようなプログラムをやっていくときに、実際に現場の人が中心に出してきたプログラム、それが科学、あるいは技術として、どこまで評価できるものかと、そういうようなことをぎりぎりやりながら、個別の評価を実際に悩みながらやり始めているというようなことがありますので、まさにおっしゃっているようなことは今、一部悩みながらやっている、ちょうどそこのことをおっしゃっているような気がします。

【生駒座長】
 多分、このプログラムの、ミッションみたいなものに、はっきりとそこを書いて、結論がこうであっても、それは評価しますというようなことまで気をつけた募集要項にすれば、役所としては全然問題ない。

【岩瀬総括官】
 そこはもう、私よりも局長の責任の範囲に入りますけども、難しいことですね。
 1つ手前の段階で、ワンクッション置いてですけども。それはまさにここで議論していただいて、本当に何が必要だし、こういうことを方法論として、こういうことをやればこういうことが期待できると議論をしていただければ、政策担当者としては、それをもとに判断ができるということだと思います。

【泉局長】
 今、岩瀬総括官が言ったことに大体尽きると思いますけども、やっぱりただ、生駒座長がやや危惧されましたように、単に調査しましたと。その結果、こうこうでしたねということがあったということだけではなくて、やはりそこから一定の何か、ここでいろいろ言われているような、ある種の知見と、汎用性とまではいかないかもしれませんけども、知見が形成されることが、あるいは得られることが期待される。おそらく今、アクション・リサーチなどについても、何か、よくわからないけど現場に行ってやってみたら、こうなったことはわかりましただけじゃ、おそらく済まないと思うんですよね。ですからおそらくそういう意味でのアウトプットなり、アウトカムというものを期待するということでなくては、なかなか公的な研究としてサポートするというのは難しいんじゃないかというふうに思います。

【高安委員】
 ちょっと今の議論を聞いていてがっかりしちゃったんですけれども、経済産業省じゃなくて、文部科学省なので、私はもっと科学を追求する方向性があるのかなと思っていて、ほんとうにちょっとがっかりしています。
 どういうことかというと、私自身は物理学者でこういう経済現象をやっているんですけど、ここ十数年ぐらいにものすごいデータが増えて、それでそこから科学的な普遍的なものが大分見えてきているわけなんですよね。そういう意味で合うのかなと思っていたんですけれども、結局そういう現場の産業を、何かこう、そこに入ってやっていくというのだと、それだったら経済産業省かなという気がしています。
 例えばノーベル物理学賞を3人もらったわけですけど、あれは四、五十年前に素粒子の実験をいっぱいやって、新しいデータが膨大に入ったんですね。その膨大なデータを解析して、その中から普遍的な性質が見つかって、それを説明する理論ができて、ノーベル賞になったわけですよ。
 科学が発展するときにはそういう膨大なデータがあって、それを解析して、そこから普遍性を出すというのが基本で、それはもう欧米でも随分やり始めているんですけれども、だからどうしてその膨大なデータを、従来の科学的な手法でいいんですよ。コンピューターももうしっかりあるし、数理科学的方法もたくさんあって、特に理系のほうだとポスドクで余った人材も結構いっぱいあるので、そういう人たちをまとめて持ってくれば、既存の方法でデータとコンピューターと人さえあれば、どんどん解析が進むんですよ。そういう視点がすっぽり抜けて、なんか現場が喜ぶようなものを一緒につくりましょうというのはちょっとなんかがっかり。

【岩瀬総括官】
 ちょっとがっかりしたという話まで出ましたので、1つ、我々として持っている問題意識の話もさせていただきたいと思うんですけれども、まさにこういう研究の議論をするときに、サービスというような、世の中の価値を創造すると。そしてまた研究と、2つの議論をしていて、当然2つの流れがあるわけですね。今、おっしゃったように新しい科学の流れ、新しい手法で可能になったものを使って、それで何ができるかという視点をおっしゃったと思うんですけど、そういう視点も当然あると思います。
 もう1つは、我々行政として、いろんなことをやってきた経験から頻繁によく学んでいることは、何か問題を解決する、価値を創造するというような研究をやるときに、こちらのスタンスで、もちろん文部科学省としてはこちらのスタンスで通常やるわけですね。しかしこういうスタンスでやっていくだけで本当に使えるものが出てこない。サイエンスの方法論としてはおもしろいけれども、本当にここに必要なものにつながった研究にならないということは間々あることですので、まさにその2つの方向性の議論をここで徹底的にしていただくというのをまさに期待しているということです。

【高安委員】
 ほんとうに使えるものは30年後でいいというぐらいの視点が欲しいなと思います。

【友田委員】
 今までどうしても、中小の、どちらかというと零細企業なものですから、議論についていけなかったんですね。多分に共創という言葉を使われて、ともに創るというお話の中で、我々としては、社会変化にどう対応していこうかというのが一番の、会社自身も、あるいは我々が物流のサービスを行う上においても、どんなことをやればいいのかというのが一番の興味の点なんですね。
 ここの中で多分に具体的なものがないと、私はぴんと来ないものですから、そういうものを逐一聞いていただけたものと、今までどうしてこの中に溶け込めなかったのかなというのは、やっぱり基礎的なこととか、我々からちょっと間がある。その中で何か歯車が、幾つか回って我々のところに来るようなことだったので、結果、議論としては2つに分けてお話をされたほうがいいのではないかなというふうに思っております。

【生駒座長】
 基礎的なことと、それから現場のことですね。

【友田委員】
 現場のことと、それとそれをつなぐようなもの。それが共創とか、そういうふうなことではないのかなというふうな気がするのですが。

【碓井副社長】
 今、おっしゃられた点というのは、非常に抽象的ですが、やっぱりフレームワークという、どういう領域でサービスをとらえてものを言うかという、これを整理しておかないと、ある人は対人サービスだけを言っている。だけど、私が今日お話ししたように、インフラ的な要素の領域まで全部絡むわけですから、やっぱりこのフレームワークの整理をぜひ織り込んで、進めていくということが大事だろうと思います。
 それからちょっと3点ございますがよろしいですか。

【生駒座長】
 はい。簡単に。時間が迫っておりますので。

【碓井副社長】
 簡単にいきます。2つ目はこの生産性とか、品質の評価の基準といいますか、やっぱり労働生産性で評価してちゃ、もう誤りなわけで、やはり生産性、クオリティーというのをどう評価するか。そのときの起点というのがやっぱりサービスを提供する側だけの話に今までなっていますけど、受ける側が入ってきて初めて共創になるわけで、やっぱりそういう基準が必要だろうと。
 それから3つ目は、ここに世界を先導という言葉が入っていたんですけど、何をもって先導するかと。先ほどの話でも言ったように、日本はやはりクオリティー、新しいクオリティーというものと効率、この両方で進むべきだと思うので、もしできればそういう要素を入れていただけると。
 4つ目は、このイノベーションとかいうことを語るときに、常に新しいものをつくる。技術で新しいものをつくる。環境を分析して新しいものを生み出そうということなんですけど、やはりそれと並行して非常に大事なことは、展開するということだと思います。日本が製造業においても苦手な部分ですけど。だからセブン‐イレブンでさっき、伝票をなくしましたと。でもそれは、まだ13年、15年かけてやったんですけど、どこでも使えるんだけど展開されていないんですね。ですから展開する方法論というもの、展開自身はほかの省庁の役割かもしれませんけど、この4つをぜひお願いしたい。

【北川委員】
 高安委員が言われたことと非常に近いんですけど、やはり我々としては、サイエンティフィック、科学的というところを捨ててはいけないと思うですね。ただ問題は、その科学的ということ自体が変わりつつあると思うんですね。仮説検証型だけではないということで、これは従来の認識科学に対応したロジックだと思うんですけども、やはりこの21世紀になって、大量データが使える、あるいはITが非常に発展したという段階で、やはり科学的方法論自体が変わりつつある。それによって可能になったところを我々はターゲットとしてねらっていくと、やっぱりおもしろいことができるんじゃないか。
 先ほど高安委員も言われたように、大量データを使うことによって可能になること、あるいは例えば、前回も言ったかと思うんですけど、やはり従来の、1つの知識、固定的なものの知識だけではなくて、個別的な情報を使って、よりきめ細かな対応をすると、そういうことが可能になってきていると思いますので、やはり多くの方が言われた部分にかなり同意はするけれども、やはり科学的というところは捨てずにやっていくことが必要じゃないかなと思っております。

【生駒座長】
 仮説検証型じゃない新しいタイプのサイエンスっていうのは、大量のデータから何か、あんまり考えないでコンピューターを使い回すと、ある普遍法則が出てくるというような、そのたぐいのことをおっしゃっていますか。

【北川委員】
 1つは、帰納的方法と、演繹的方法というものがありますね。それぞれがITの発達によって新しいフェーズに来ていて、計算科学だとか、大量データ化。そこでまた変わっているし、さらにもう1つ先は、この演繹と帰納の方法を統合するというふうに私は行くと思うんですね。従来は、そこはむしろ意識的に分けて、それを仮説を立てて、後ほどデータで検証すると。だけどその特定の目的が設定される場合には、それを両方統合していくということが可能で、サービスサイエンスの場合は、それができるんではないか。それが許される領域ではないかなと思っております。

【生駒座長】
 仮説演繹を超えるようなサイエンスの新しいメソドロジーじゃないんですね。僕はなんかそういうようなものがあるような気がすごくしているんだけど。要するにデータが大量にあって、その中からコンピューターを使うと仮説が逆に出てくると。頭で考えなくて。

【北川委員】
 そういう動きももちろんあります。

【生駒座長】
 それがデータベース・サイエンスとか、変な名前で呼んでいる人がいますよね。そういう話かなと思ったんですけど、そうではなくて、やっぱり仮説検証のプロセスは要素として認める。

【北川委員】
 むしろ両方を統合していくという。そのデータセントリックサイエンスと。

【妹尾委員】
 3点ありまして、今の話は要するに科学技術っていう、学術領域の拡充というふうに考えると、むしろ科学よりももう少し広い話で考えましょうということの議論なのかと。だからAというものをもっと大きくとりましょうかということか、Aに加えてBも入れましょうよという話なのか、ここのところを整理しないといけないだろうと思うんですね。
 そうすると今の、論理実証型じゃなくて、非論理実証型もトライアルで入れましょうよという話は、僕らは入れている。だからAを否定しているわけでは全然ないので、例えば大量のデータ処理だとか、論理実証型で突き詰めるところまで行きましょうよと、それはそれで結構です。だけどそれだけでいいんですかという話をして、超えるためには例えば今のお話でいくと、ディダクションとインダクションでやっています。じゃあアブダクションはどうするんですかという話が入ってくるだろうと。
 そうすると、ラボラトリーワークだけじゃなくて、フィールドワークも入れましょうよという学術領域の拡充をするのに、今回これがサービスということだから取り組むのかどうか、ここの議論だと思うんですね。だからいわゆる論理実証的なことを否定しているのではないけれどもというところは、ぜひ確認したいということだと思うんですね。
 第2点は、ちょっと誤解があると思うのは、基礎と現場っていう対比をしたときに、それがそのまま論理実証と、現場の何とかだというふうにイコールにされているのは違うんだろうと思うんですね。それはなぜかというと、現場をやる学は何も論理実証だけじゃなくて、ほかもあるでしょうという話だから、産業界に与する経済産業省的な話をしているというふうに、僕はあまりとらない。むしろ現場でやる、そこがインキュベーターとなるような新しい学術領域の展開をするのに文部科学省が取り組むのは、学術領域の拡大、それは当然のことだろうと僕は思うわけですね。
 3番目に、じゃあそういうようなアクション・リサーチみたいに、これは社会系の人間だったらみんな知っている方法論だけども、おそらく科学技術の関係にはなじみがないだろう。ここは論理実証的な話とは別だから、じゃあそこからどういうふうに、ちゃんと研究が進んだかというのは、これはちゃんとやり方があるんです。
 それは何かと言ったら、方法論の明示と、それにおける学習知見が全部入ってくるという形があれば、これはその研究は成果を出したという言い方になるんですね。それはただ単に現場でやってみてできませんでした、できましたっていうものとは全然違うんですね。やっぱり方法論的に仮説領域にそれはあるわけですから。それをやるかどうかっていう話です。ただしこれは、論理実証に慣れている方から見ると、なんかよくわからないっていう話になるかもしれないけれども、これは社会系でアクション・リサーチをやっている人は当たり前の話じゃないかって、こういう話になります。そこのところを切り分けないと、今の話はかなり平行線で行っちゃうんじゃないかなという気があったんです。
 最後に1点だけ申し上げると、先ほど生駒座長がおっしゃられた、企業にお金をつけてもいいよねっていう話は、あっ、そういうアプローチで来られたなと思ってにこにこしながら聞いていたんですが、ただ、その時にヘッジをかませないといけないのは、そういう見てくれにすべてするようにやるという方式がかなりまかり通りますから、ほんとうに企業がやっといて何とかっていうんだったら、そこのところのヘッジのかけ方を、どうやってコントロールするかっていう話だろうなと思いました。

【長井委員】
 このサービス科学・工学に関して、どのくらいのタイムスパンで施策を考えておられようとしてるのか、1つそれが私、気になっているところがあります。
 というのは、例えばものづくりでこれまで来たものからサービス科学・工学という方向に1つの転換をされようとしていると思うんですけども、ものづくりというときにも、もちろん実際にものをつくっていかなきゃいけないわけだけど、その基盤になっているような科学技術というときに、例えば最近のナノサイエンス、ナノテクノロジーというように、物理学の非常に基本的なところの科学というものがやっぱり役に立ってきているということがあって、それはやはりそういうものは一朝一夕にはでき上がらないと思うんですね。そのときに一歩でも、もちろん現場からの声に対応していく方向を追求するのも1つ非常に大事な方向ではありますけれども、そのサービス科学・工学に関して、基礎となる科学は何かということを見きわめるということも1つ大事な方向だと思うわけです。
 それが長い目で見て、結局大きな革新というか、イノベーションをもたらすようなものになり得るはずだと思うので、そのことをやはり現場の人から声を聞かないといけないと思いますけれども、それがどういう科学技術が本当にサービス科学・工学に生かされ得るのかという、そこをやはり見るときにはある程度のタイムスパンが必要なのではないかなというふうに思います。

【中島委員】
 先ほど一番大きいことだけ言って、2番目を言わなかったんですけど、先ほどからの高安委員の議論、私はやっぱりこれが原因だと思っているんですけど、最初の第1文に、第3次産業というのが出てくるんですよね。あれが冒頭にあるものだから、産業というか、現場という、そのイメージに皆さん、なっているんじゃないかと思うんですね。あれは私はとりたい。
 もし現場という言葉を使うのであれば、それは現場はあらゆる社会の仕組みのことだと思いますし、企業じゃなくて、JSTがやっていることだって現場なわけですよね。そういう意味で、例えば我々がJSTの現場に入っていって、新しいサイエンスをやるっていうことだってありなんだというふうにとらえていただくと、先ほどの高安委員の意見はあんまり出てこないように思うんですね。だから多分ドメインをちょっと――というか、サービスというのをもうちょっと定義しておかないと、皆さん勝手に誤解している気がします。

【儀我委員】
 先ほど、だから現場にあまり寄り過ぎると、科学的なものが出てこないのではないかとか、そういうふうなご指摘があったかと思うのです。数学の場合で想定するとしたら、いろいろ数学モデルをつくって研究する、現場と研究するときその数学モデルでは現場は全然役に立たないという話になりやすいと思います。それは非常に困るのですが、現場には。
 これはどうやって評価するかというと、これは文部科学省のイノベーション創出のための数学振興についての報告書にある、フランスのダニエル・ヒルホルストさんというのがおっしゃっていたんですけど、数学と企業との、こういう現場との共同研究だと、何をもって成果とするかというと、よく言われていることは、つくったモデルがたとえ役に立たなくても、それが数学として優れているかというようなことが1点。もう1つ、現場の人を満足させられたか、その2点、どっちかできれば、数学としてはいいのではないかというふうなことをおっしゃっていて、私も全くそれは同感であります。よくあることは、モデルをつくって何かやってみたが、結局はそれは使えなかった。しかし、それは何らかの数学的な寄与になるので、数学としてはそれである程度領域が広がるということでしょうか。
 もう1点全然違うんですけど、ここのいろいろ文章を読んでいると、なんか数学といろんなものが並列で書いてあるんだけど、どっちかというと数学が基盤の要素技術だと思うんですけど、その辺は若干問題が、気になっております。
 それからあと、拠点の問題でしたか。拠点のことをちょっと書かれていましたけど、私ども、これ、研究拠点をというようにおっしゃっていましたけど、それについてなのですが。3ページ目ですか。巨大な拠点をどこかにつくるより、これは非常にローカライズした問題が多いはずなので、それをおのおのローカルなニーズに、必要性に関して、オーダーメードのことをやっていかないといけないと思うんです。したがって、拠点を東京にどかんとつくってということは避けたほうがいいのではないかというふうに感じております。以上です。

【岩瀬総括官】
 そもそもどういうふうなことをこのレポートでお願いしたいかという、こちらのイメージについてもう少し申し上げないと、おそらく何を議論していただきたいと言っているかわからないということになってしまっているんじゃないかなと思うんですけども、これ、まずサービスについてのイノベーションにつながるような研究というようなことを言っているわけです。今、まさにご指摘いただいたとおりなんですけども、そういったときに、何年か先に実際にイノベーションにつながるような、出口にしっかりつながるようなことをまずどうやるかという話が、当然1つあると思います。このレポート、今の、ご説明したたたき台は、どちらかというとそこについて書いてある。出口につながるようなファンディングプログラムをつくるとしたら、こうじゃないですかということが基本的に書いてあるというふうに思います。
 もう1つご指摘がありましたように、それとは別の次元で、本当に日本の経済が、あるいは社会全体がサービスというような面でより高度な、質の高いものになっていくためには、5年間で出口があるような話だけじゃなくて、サイエンス自体、こういう方向に行く必要があるんだという議論は別の議論として当然あって、ただそこの出口は、今、とりあえず狭い範囲で考えている、例えば5年なら5年の出口志向のプログラムとは別に、もっと広い意味でいろんな分野の研究をやるときに、例えばITについても、数学についても、いろんなところにある話だと思うんです。経済学についてもあるかもしれませんけど。こんな分野の研究が、こういうふうに強くなっていかないとだめですよねという2つの時間軸の話がまじっていて、どちらかというと、短いほうの話を今日のたたき台には書いてあって、長いほうの話もご指摘いただければ、それをどうやるかは難しいんですけど、それ全体のファンディングというと、そう簡単にそのもの自体プログラムにはならないかもしれませんけれども、そういう2つの話がまじっているのかなと思って聞いておりました。以上です。

【大澤委員】
 最初のほうに、Service Enterprise Systemsっていうのがあって、それからサービスサイエンスっていう2つの語があるわけですけど、このシステムっていうのをちょっと大事にしていただきたいなと思っていて、普通サービスっていうと、プロバイダーと受益者がいますけども、この1対1だけを見ているとやっぱり、例えばこの2人のことばっかり考えて環境がどんどん悪くなっていくとか、そういうことで社会が悪化していく部分もあるので、やっぱり我々はサービス科学、サービス工学といったときには、目の前の今、現在生きているお客さんだけじゃなくて、20年後の、今の子供たち、今、生まれた子供たちもお客さんだと思うような、そういうサービスの供出までちょっと行くことを、せっかく文部科学省でされるならばお考えいただきたいというふうにお願いしたいと思います。

【妹尾委員】
 ここのワーディングのところで、中島委員がご指摘になったように、確かにミスリードがあるんですよね。もう1つあるのが、サービスは製造業とともにという書き方をしている。サービス業は製造業とともにということと、サービスはマニュファクチャリングという対比とかずれているんですよね。だから我々はサービスと言っているときに、マニュファクチャリングっていう対応する概念で見ているのか、サービス業と製造業という話で見ているのか、みたいなのがすごくごちゃごちゃになっている。
 もう1点は、先ほどの研究拠点の話は、多分研究拠点網の話だろうというふうに思いまして、もう1つ最後に、岩瀬総括官がさっきおっしゃったこと自体を考えるのも今回のやっぱりテーマだと思うんですね。つまりサービスだとか、今言った論理実証だとか、学術的な拡充だとかっていうことを、サービスということを起点にして考えること自体も、1回目のファンディングの中では、やっぱり範囲に入れて説明をやろうと。そうでなきゃここの議論だけでは、その話はらちが明かんじゃないかと、そういうサービスサイエンス俯瞰図みたいなものをつくる研究もこの中にぜひ組み入れたい。そうすると多分それがすっきりするんじゃないかな。
 一方で、動き、真相や論理実証もあろう。あるいは経験主義も、現象学的還元主義もありましょう。それはやりましょうと。でもその俯瞰像を描かないことにはどうしようもないですよね。それ自身を研究することも今回の役目ではないかなっていうふうにちょっと思います。

【生駒座長】
 最後にちょっと私、私見で、事前には事務局に言ったんですけど、確かに今、おっしゃった視点はまさにそうでして、サービス科学・工学が何であるかというのはまだわからない状態の場合に、こういう研究をやって、研究は非常に現場に近い、プラグマチックなものからスタートして、5年たって終わった後に、ああ、サービス科学・工学はこういうものだったっていうのがわかるようにしたいと。ですからこれを共通に切るような、共通な科学技術チームをやっぱりつくっておいて、そしてプラクティカルなものと常にやりとりをしながらまとめていくという格好がいいのではないかと思っていまして。まさにせっかく文部科学省がやるんだから、現場どまりじゃなくて、そこから抽出された普遍的なものができて、このプログラム全体が成功したという評価じゃないかと思っていまして、それが1つ。
 それからもう1つ、金子さんに戦略センターとしても申し上げればいいんだけれども、なかなか会えないから今、言っとくと、海外、アメリカの調査をするときに、今の問題を見てきてほしいんですよ。これは大学で極めてプラグマチックなことをやって、どれだけ現場に入って、データをとってやっていますかってぜひ現場を見てきてほしいよね。NSFだけじゃなくてね。

【金子フェロー】
 わかりました。

【生駒座長】
 そうすると一体アメリカの企業はそれに対してデータをどこまで出してもらえますかって、ちょっとその調査を加えてやってきてくださいよ。

【金子委員】
 わかりました。

【高安委員】
 アウトプットも調べてほしい。どういう形のアウトプットがあり得るのか。

【生駒座長】
 そうですね。はい。それでは一応討議、時間がちょっと経過しましたので、まだぜひコメントが足りない部分は、事務局までメールでお願いいたします。10月20日、1週間ちょっとですね。10月20日までに事務局でメールでお願いたします。それを踏まえて、この問題、再度討議が次回、もう1回討議する機会がございますので、それを踏まえて次回の検討会で、今日の論点を整理していただいた後、もう1回議論していただくというスケジュールになっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 今日は非常に含蓄のある発言がありましたので、内容を正確に理解した上でまとめていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは事務局にお返しいたします。

【渡邉計画官補佐】
 次回の第4回検討会は、10月30日木曜日、16時から18時、場所はここと同じでございます。議題と詳細につきましては、後日ご連絡させていただきます。以上でございます。

【生駒座長】
 どうもありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

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(科学技術・学術政策局計画官付)