研究機関における公的研究費の管理・監査に関する検討会(第4回)議事録

1.日時

平成19年12月6日(木曜日)10時〜12時

2.場所

コンフェレンススクエアMプラス

3.議題

  1. 研究機関におけるガイドラインに基づく体制整備等の実施状況報告書の提出状況について(速報データ)
  2. 実施状況報告書の分析の進め方について
  3. 検討会の今後の進め方について(論点整理)

4.資料

資料4−1
 研究機関におけるガイドラインに基づく体制整備等の実施状況報告書の提出状況について
資料4−2
 報告書における各研究機関のコメント等について
資料4−3
 実施状況報告書の分析の進め方について
資料4−4
 最終的な分析結果のイメージ(案)
資料4−5
 各研究機関における公的研究費の管理・監査の実態把握のための現地調査の実施について(案)
資料4−6
 研究費の不正使用問題発生後の対応フロー図
資料4−7
 今後の進め方について(論点整理について)
参考資料4−1
 文部科学省の競争的資金に関する研究活動の不正及び研究費の不正使用及び不正受給に関する告発窓口について

5.出席者

葦名 弘 KDDI株式会社 リスク管理本部 業務・コンプライアンス監査部長
石井 紫郎 東京大学名誉教授
石渡 朝男 学校法人 二松學舎 監事
大久保 和孝 公認会計士 新日本監査法人役員
佐藤 慎一 東京大学大学院人文社会系研究科 教授
佐野 慶子 佐野公認会計士事務所長
末松 誠 慶應義塾大学 医学部長
知野 恵子 読売新聞東京本社編集局 編集委員
長谷川 正文 茨城大学理事・学長補佐・事務局長
中村 栄一 東京大学大学院理学系研究科教授
○配分機関
小間 篤 独立行政法人科学技術振興機構 研究主監
渡邊 淳平 独立行政法人日本学術振興会 研究事業部長
○事務局
森口 泰孝 科学技術・学術政策局長
川原田 信市 科学技術・学術政策局次長
戸渡 速志 科学技術・学術政策局政策課長
嶋倉 剛 科学技術・学術政策局調査調整課長
清浦 隆 科学技術・学術政策局調査調整課競争的資金調整準備室長

6.議事内容

【石井主査】

 本日は去る11月15日の締め切りで各研究機関にお願いした当該機関におけるガイドラインに基づく体制整備等の実施状況の報告と提出状況を中心にご議論をいただきたい。

 清浦競争的資金調整室長より、11月1日付で事務局に人事異動があり、これまで本検討会に出席していた吉川前科学技術・学術総括官が東京工業大学事務局長に異動し、研究費の不正対策等競争的資金に係る業務について、科学技術・学術政策局の川原田次長が担当することになった旨の報告があった。
 引き続き、資料4−1〜資料4−7、参考資料4−1、そして席上配付資料に第3回議事録について、資料確認があった。

【石井主査】

 それでははじめに事務局のほうから、研究機関におけるガイドラインに基づく体制整備状況報告書の提出状況について、速報の説明をお願いしたい。

【清浦競争的資金調整室長】

 それでは資料の4−1、と資料の4−2に基づいて、実施状況報告書の提出状況についてご説明する。石井先生からご紹介があったが、11月15日締めで研究機関から報告書を提出いただいている。提出研究機関数としては1,632機関。紙媒体と電子媒体と両方でいただいており、正本のほうの数で1,632である。今回資料4−1の中でまとめたデータについては、電子媒体で送っていただいた中の別紙様式2というところで、取り組みの状況整理票というものが様式の後ろのほうにありまして、この数値を機械的に拾ったものである。この電子ファイル上で入力した機関数は1,567件である。現在出ているこの数字の差については電子データの不備等の関係である。機関種別については数字は以下のとおりである。
 それでは中身について、あくまで速報データであるが、今回拾った項目は必須事項としていた項目を中心に挙げさせていただいた。まず項目1、「機関内の責任体系」ということでございます。この図の見方は、以下同じになるが、機関全体として見たとき、この表の中に1、2、3とある。これは問いの番号であり、それからその横の数字、こちらがその実数である。実際の設問がここの中に、表の左上に書いてあるが、「機関内の責任体系を明確にしている」「機関内の責任体系について検討している」「機関内の責任体系を明確にできていない」と、こういう聞き方で、チェックしていただいたものを集計しているところである。その割合についてはその下の円グラフになる。
 それから右のほう、機関種別が、国立大学、公立大学というふうに機関種別に並んでいる。下のほうの計のところがその左側の円グラフの総数に対応したパーセンテージ、例えばその88パーセントというのが青い部分、11パーセントが赤い部分というふうに対比されている。
 次のページで、項目5としては事務処理手続きに関する相談窓口の設置状況である。こちらは項目のところの下に括弧書きで「必須事項」と書いてあるのが、11月15日の提出までに体制を最低限ここは整えてくださいとしているものである。
 次に項目の11、これは不正防止計画である。不正防止計画については、これは必須事項ではないということで、取り組みに多少の差が出ていると、取り組み状況については前の2つに比べるとやや低いというところである。その下の不正防止計画推進部署、こちらについては必須事項ということにしている。もちろん整理票上、検討している、あるいは設置できていないとしているものについても、例えば実際の報告の中を読み解いくと、そこはつくっていないが機能としては代替されているという機関もあるということを申し添えたい。
 そしてその次のページ、項目の16の最初のほうは発注に関するチェックシステムについての設問である。それからその次のページは検収についての体制についての問いである。こちらについても必須事項になっている。
 続いて、項目の18、こちらも必須事項である。不正な取引に関与した業者への対応状況についてという問いであり、これは処分方針を機関として定めているかどうかという聞き方をしている。項目の20に関しては使用ルールに関する相談受付窓口ということで、こちらも必須事項になっている。
 それから項目の21、こちらは通報、いわゆる告発の受付窓口であるが、こちらのほうも必須事項になっている。それから項目の22は、必須事項とはしていないが、参考でつけているが、不正への取り組みに関する機関の方針と意思決定手続きの外部への公表についてということで、問いとしては公表しているかどうかということで聞いている。
 それから項目の24はモニタリング体制の整備状況であるが、こちらについては聞き方としては、「モニタリング体制を見直し・整備した」「見直しについて検討している」「見直しは特に行わない」としている。こちらのほうは「特に行わない」という中で、行わなくてもできると判断されているところもあるというところである。
 項目の25の内部監査体制の整備状況であるが、こちらも答えとしては「監査体制を整備した」「検討中である」「従来どおりの監査体制としている」となっており、黄色い部分についても従来どおりで問題ないと判断をしている機関もあるということであった。
 以上が整理票に各機関が記載した項目を機械的に集計した値の状況である。今現在、事務局のほうでも提出いただいた報告書の中身を精査して読み解いているところである。その次の資料の4−2であるが、こちらのほうは報告いただいた中で、報告書の最後に特記事項として「特色ある取り組みについて記載してください」という項目と、それから「ガイドライン全般に関するコメントを書いてください」という2つの特記事項の欄を設けた。ここについて全体で提出があった国立大学、公立大学のすべて、それからそのほか私大、短大、研究所等、こちらのほうは一部についてランダムに抽出した200程度の機関のコメントをピックアップしてここに記させていただいているところである。
 資料の4−2であるが、まず最初がそれぞれの機関で特色のある取り組みとして記載していただいた例である。こちらについては、まずは研究費の使用等に係る運用に関する取り組みの例として、まず体制の整備に関して、競争的資金に限らず、ほかの経費等も含めて検討を進めたというふうなことを書かれた大学が複数あった。それから実際の運用の問題については、科研費の繰り越しの促進を進めたという話ですとか、大学による立て替え制度を導入したという話、あるいは人事異動等の時期を移行して管理の安定化を図ったという答えもあった。
 そのほか使用状況の把握の適正性の確保に向けた動きとしては、例えば競争的資金による雇用職員にかかる出勤簿というものをつくったという答えや、専門分野の教員等を含む特別チームによる特別監査というものを導入したというケース、それから非常に外国人が多い機関においては、ガイドラインや関係の諸規定について英訳をして、公平性を確保しているというような回答もあった。
 それからその次のページ、組織の整備に関する取り組みであるが、まず多く寄せられたのは学内にワーキンググループ等を設置して検討を行ったという体制の話である。ここに学外の有識者を含めたというような事例もあった。それから人員配置については間接経費などを活用して、検収要員を増員したり、監査の人を増員というのが多方面の機関で見られた。
 それから多くの大学で監査室というのが設置されつつあり、コンプライアンス室というふうな全体を見る室を設ける大学なども見られてきているというところである。告発窓口に関しては必須事項であるが、中には受付窓口を学内複数、あるいは学外にもう1カ所というふうに3カ所を設置したような機関もあった。
 それからその次のページの、学内の意識向上、あるいは職員の資質向上等に関連する取り組みの事例としてはマニュアル、ガイドブック、ハンドブックというものを作成したという回答、それから学内からの意見の取り入れという観点においては、学内のアンケート、学内のパブリックコメントというものを実施した例も多数回答があった。また全教職員を対象としたアンケートなどという答えもあった。それから研修や説明会などで競争的資金交付対象者の参加を義務づけという例も複数見られた。
 それから、その他として、さまざまあるが、例えば説明責任という観点で複数の大学等でガイドラインの対応というのをホームページに公表しているとしているところもあった。こういった対応も非常に重要だと考えているところである。
 それから、次に文科省に対する意見、要望、感想として、総論としては、さまざまな指摘があったところであるが、ガイドライン自体が啓発の重要な契機となったという認識だとか、大学の内部統制のあり方の視点から常に検討していきたいという意見があったほか、規模の大きい大学では大学本部がすべきことは各部局の実情にあったルール策定のための最低限のルールと方針を示すべきではないかという答えもあった。また報告書の申請時期についての配慮、それから小規模の組織への負担感を訴える意見というのが、特に民間等の機関から見られているところである。
 それから研究費のルール、制度改善に関することも多数意見をいただいた。一番多い意見は、研究機関にとっての負担を軽減するという観点で、競争的資金にかかわるルールの統一化の問題、制度上のルール、関連する用語の統一の問題、連絡方法の簡略化、執行ルールの統一化などが指摘された。またばらばらになっている小さな研究費制度については統合してはどうかという意見もあった。それから経費の拡充等に関しては、複数の大学から間接経費の拡充の期待が書かれていた。その他研究費の使いやすさ等の関係で、交付時期の早期化、繰り越し等に関する希望が寄せられているところである。
 それから次に報告書の取り扱いに関することでは、これも多数の機関から寄せられたのは、今回の報告書の、いわゆるグッドプラクティスを機関の規模、あるいは状況に応じた形で情報提供して欲しいという声が寄せられた。その中で例えば不正対策を講じながら、経済性、効率性を両立しているような好事例などがあったら、ぜひ公開して欲しい、公表して欲しいという意見があった。
 それからガイドラインに関することで、先ほど紹介したところと一部重複するが、ガイドラインによって内部統制が機能する体制整備が図られたというような、ガイドライン自体の意義を評価する指摘がある一方で、小規模な研究機関ではガイドラインに示されたような体制整備は非常に困難だという意見も相当数見られる。あのガイドライン自体の見直しについても希望する回答も見られた。
 そのほか、ガイドラインによる締めつけが研究に対する萎縮につながってしまうのではないかということを危惧する声、ガイドラインそのものがそもそも大学等の大規模機関を想定しているのではないかという指摘等も、特に小規模な機関からは指摘されている。
 以上、4−1と4−2の状況でございます。

【石井主査】

 ただいま全体的なことについて事務局から報告があったが、この間、委員の先生方には事務局のほうからそれぞれの委員の方々に実際の報告書のサンプルをお送りし、お読みいただいているので、そういうことで、先生方のご感想、あるいは問題点というようなものがあれば、ぜひご発言をいただきたい。ただいまの事務局からの説明に対する質問も含めて、どうぞご遠慮なくご発言、ご質問等お願いする。それでは、佐野委員。

【佐野委員】

 ただいまの説明について確認をさせていただきたい。資料4−1の集計単位の件ですが、機関ということなので法人単位かなというイメージを持っていたのですが、例えば高等専門学校については、多分これ、独立行政法人内の学校数をカウントされていると思う。私立の場合は、私立大学と短期大学を1法人内で設定している場合、どのように集計値に、数として集計されているのか、法人単位なのか、学校種単位なのかを確認させていただきたい。
 もう一点は、資料4−2の3ページの「その他」の上のポツのところで「監査室員に日本公認会計士協会の内部監査士の資格を取得」というくだりがあるんですが、私ども日本公認会計士協会として内部監査士という資格の付与の認定であるとか、資格試験等の実施はしていないのですが。この辺は先方の記載したままということかと思うが、もしこれを、公表等を前提とすると事実確認をしていただいた上での記載が必要かと思うので、この2点、お願いしたい。

【清浦競争的資金調整室長】

 まず最初の機関の単位については基本的に学校単位ということで処理している。例えば高専機構は、機構として法人は国立の場合1つであるが、各学校それぞれからご提出をいただいているという状況である。
 それから2番目の点については、ここに記させていただいたそのままが機関の報告書に載っている。

【石井主査】

 それでは、これは後で当該の機関にちょっと質問ないし確認をお願いする。それでは、大久保委員。

【大久保委員】

 先のコメントについては、完全に誤解したものであり、内部監査士の資格を付与している任意団体は別にある。それだけ補足をさせていただく。

【石井主査】

 大学共同利用機関も機関単位なのか。

【清浦競争的資金調整室長】

 はい。機関単位である。

【石井主査】

 ほかに。それでは、中村委員。

【中村委員】

 感想だが、私が読ませていただいた大学のサンプルは、あまりに意見がないのでがっかりした。通り一遍の回答ばかりだった。でも、まとめた意見、ここにまとめて4−2に書いてあるのを見ると、いろいろな意見がさまざまな大学から出ているようで、安心した。
 この大学の意見の中に研究が萎縮するというようなことが書いてある.こういう規定ができると研究者の自主規制みたいなのが起きて、自分のやっている研究を研究費の性格に応じて切り分けなきゃいけない、というような本末転倒なことが実際に起きているという実感があるので、今後研究そのものに対する影響が出るということは常に考えていかなければならないと思っている。

【石井主査】

 ただいまの最後のご指摘はいわゆる合算使用の問題か。

【中村委員】

 というよりも、紙に書いて申請した内容が逆に実際の研究を制限するということです。科研費の規則では、書いた内容と研究内容が一致していないといけないというようなことが書いてあるので、研究の途中に研究の方向が変わってはいけないとか、この研究とあの研究はそれぞれ資金の出所が違うので内容も切り分けなければいけないのではないかというふうに研究者側で思ってしまうというような傾向があると思う。ここ、4−2に書いてある「萎縮する」、さらに6ページの下のほう、下から7行目の「締め付けることが優先されるとなると、結果として研究に対する萎縮につながってしまうこともあり得るのではないか」というような、大学からの意見もあるが、実際にそういう傾向がすでに出ているのではないかと思っている。

【石井主査】

 はい、小間委員。

【小間主監】

 お送りいただいたもののほかにお願いしてほかの大学のものも見せていただいたのだが、多くの大学でこういうことによって意識が新たになされたという点で、プラスになっていると思う。また負担がひどく増えることに対して、各大学ともいろいろ工夫をしているように思う。例えば発注・検収についても小額の50万とか100万以下のものは教員に任せることを機関として決めているとかしている。そういう状況が各大学でかなり今のところばらばらであって、ここの5ページの報告書の取り扱いのところにも書いてあるが、ぜひほかの大学のいい例をオープンにしてもらって、それぞれ参考にして適切なところにおさまるということがプラスになるのではないかという感想を持った。

【石井主査】

 今、最後にご指摘いただいたことは今後のどうやってこの仕事を進め、かつ有益なものにするかという点で集中的にご議論いただきたい。そういった問題点の指摘は今からでもどんどんお受けしたい。何か。末松委員。

【末松委員】

 私がいただいたものは、コンプライアンスのお手本みたいな、体制ができあがっていて実施もしっかりとチェックが入っていて、ファカルティーディベロプメントまでしっかりやっているという超大型の研究機関と、それから、国立の旧帝大系のところでも、よくよく読んでみると最後のルビのところに全部「を検討している」って書いてあるところがあって、少し安心しているやつと、それから小さくて、やりたくてもとてもそこまで手が回らない、管理・監査の人員の配分もできない、というところがあった。
 それで各機関でどういう競争的資金を取っているかというのを見てみると、研究費の、今日のこの4−2にも書いてあるが、間接経費がしっかりついているやつと、ついていないやつが当然あるので、こういうのを見ていくとガイドライン化してルールをつくっていくと、ここから先は私見だが、やはりすべてのものに同等の間接経費をしっかりつけないと、こういうガイドラインの実施とか、実のあるちゃんとしたチェックのあり方というのを現実のものにしていくのは相当大変だと思う。そこをきちっとそろえてあげないと、小さな研究機関でも非常に効果的にやっているところも1カ所、小さいからうまくいくというようなコメントが書いてあるところもあったが、それが私の印象だった。
 なので文章には書いていないが、この今日配られた4−2の資料の「ガイドライン第3部の提言が実現されることを望む」というのが5ページのところに書いてあるが、私のバイアスかもしれないが、いただいたこの資料の中で、1つの超大型の機関を除いたほかの研究機関からの文章の文脈の間を見てみると、やはり悲鳴が聞こえてきていて、この第3部の提言、つまりフレキシビリティーのところをしっかりやることが、結局は不正の予防につながるのではないかというのが見て取れた。

【石井主査】

 分かりました。この第3部の提言が実現されることを望むという、今の制度の中でも可能な繰越明許費の申請については、私自身もいろいろ考えた。まずどこかの大学から頑張ってやってもらうのがいいだろうということで、昨年の今ごろから某大学にお願いをした。全体として、無論、その大学だけではない。ほかでも多少増えただろうが、一昨年に比べて約11倍の申請数があったということであり、今回、今度の年度末に向けては、さらにこれを1けた伸ばせるように、これは少し具体的にお願い申し上げる大学の範囲を広げ、拡大をしていこうということであった。申すまでもなく年度末のお金が多少余った場合、あるいは逆に新年度に入ってお金がすぐ使えるかどうかというような問題等々、制度上のさまざまな制約があるので、これを打開する1つの方法が実際に繰り越しをして、そして使えるようにするという、これは合法的な手段であるから、これについてぜひいろいろなところで活用してもらいたいということを申し上げているところである。
 ただ、従来非常に面倒な処理、あるいは1件1件財務省の主計局の某課において、はしの上げ下ろしというか、重箱の隅をつつくというか、酷しいチェックが入って、ケースによると10回ぐらい財務省、文部科学省、そしてその申請をした大学という、その3者の間を書類が往復するというようなことで、部分的には、もう2度とやりたくないというような反応も出てきたと聞いている。私はこれは非常に危機的な状況だと思う。やって懲りたからもうやらないというのでは、すべてがぶち壊しなので、そう言わずにということで。
 もう一つはやはり書類はこういうふうにやれば通った実績があるというサンプルを幾つか、固有名詞とか具体的な名称等あれは消してあるが、そういうもののサンプルを文科省の担当課で準備しているが、それを拝見すると研究者にとってはちょっとなじみの薄い文章の書き方である。役人がやり取りすると文章が役人口調になってくるのはいたし方ないところだが、それをサンプルとして示して、これでいいんですよと、こういう書類を出せば繰越ができます、簡単でしょと言っても、読んだ人はそう思うとは限らないので、そういうところを、3件か4件かは私自身の言葉で書き直したものをつくる等、できる限りのことをして、今、各大学にぜひ繰越明許費申請をやってくださいという、「檄文」とあだ名されているが、そういう文章も私の名においてつくってお願いをしているところである。
 制度的な改善が一気に進むということはなかなか難しい。こういう、今できること、それをどんどん大きくしていって、使い勝手のいいものにしていく努力を、これは各大学、あるいは研究者のレベルでご努力いただく。そのご努力をサポートするというのが行政のほうの仕事だろうと思っている。そんなようなことも片方で進行中であるということをご紹介申し上げておく。ほかに何か。はい、長谷川委員。

【長谷川委員】

 事前にお送りいただいた資料を見て感じたのが、同じような状況であっても機関の受けとめ方によって回答振りが相当変わったものになっているというふうな印象を持った。例えると不正発生要因の把握についてしているかしていないかという問いに対して、私が見させていただいた機関は「していない」ということだが、それはガイドラインを受けて大学としての体制を整備し、そういった中で内部監査室とか、不正の防止計画の推進部署と連携をしながら今後把握をしていくという考え方のもとに、「把握していない」という回答をしている大学だったわけである。
 また違う大学は不正の発生要因というのはもう既に資金の交付機関からいろいろな情報をいただいている、ないしは検査院の決算報告の中で幾つか事例が挙がっている、また新聞報道等でわかっているということから、当然もう不正発生要因は把握しているのだという前提で回答している。恐らくその両大学は同じような状況で、要因としては把握できているのだろうと思うが、回答としては、「している」と「していない」と別の答えになってきているということが見受けられる。
 今後はこういった資料を分析とか利用する場合には、先ほどの説明の中でも、していないけれども実質的にはそれに近いようなことをしているのだというご説明もあったが、そういった点まで踏み込まないと正確な分析にはならないのかなという印象を持った。

【石井主査】

 確かにそのとおりだと思う。している、していないという単純な腑分けで数字を並べてみても、私は意味がないと思うし、要するに問題の難しさ、あるいは深刻さというものをきちんと把握し、悪戦苦闘していますという苦悩がにじみ出ている報告書と、「やってますよー」という感じの報告書と、非常に大きな違いがあるし、その辺もこれをどういうふうにこれから集計し、あるいは整理していくのがいいか、大きな問題だろうというふうに思う。では、大久保委員。

【大久保委員】

 お送りいただいたもの、及び先ほどの集計結果から見て1つ感じたのは、やはり体制整備となると皆、早い。この短期間に、これだけの結果が出てくると、そもそも、いつから研究機関に相談窓口なんかあったのかなと、つい思ってしまうが、圧倒的多数の研究機関からでできている。そういう意味ではこれを機会に体制が整備できたということは非常に評価すべきことではないのかと感じた。ただ個別の研究機関を見ていくと、ほかの委員からも出ているように、取り組みに対する意気込みの違いというのはかなり明確に出ている。例えば何かルールをつくりましたと、さらっと書いて終わっている大学もあれば、内容について一生懸命書いていて、最後には嫌味まで書いて、「困難極めるけれども継続的に頑張っていく」という大学もあり、かなり意識差が出ているのかなと感じた。
 少し細かいことを何点か申し上げるが、実は当初から懸念をしていたというか、わかっていた回答ではあるのだが、担当の統括管理責任者で、研究担当理事がなられているケースが、ほとんどであり、ほんとうにこれでうまく機能するのか疑問に思う。実は総務とか財務を担当しているのは別の理事であることが一般的なのだが、そこのコミュニケーションというのがとれるのかどうかが疑問である。特に例えば発注・検収だとか、不正防止対応計画というのは単に研究費だけの問題ではないところまでガイドラインは踏み込んでいるので、そういったあたりを実際上どうなのかなというのをやや気になった。
 それから2点目として行動規範に関しては添付されていなかったので、よくわからないが、ガイドラインの趣旨どおりになっているかどうか、やや気になる。3点目としては個別の内容をみていくと、従来の内容を繰り返し書いてるとしか見えないような回答も散見される。冒頭に申し上げたとおりだが、これはすばらしいなという取り組みもあって、例えば某帝大の国立大学は行動規範を作成するために、研究者との間ですり合わせをしているとか、これからこういうことを計画しているとか、極めて具体的に書いてあった。ガイドラインの趣旨をくみ取られているなということを見受けられるところもある。またいろいろな取り組みについても、アンケートをとろうということで現場の意識を吸い上げようとしたりしている。すでに、幾つかの大学でも出ている。
 そうはいえども、たとえば、予算システムの話については、「法人時にシステムを導入しました」と書いてあり、予算執行はしっかりと把握できているとしているが、現実的にそれらのシステム運用がうまくいっているのか甚だ疑問がある。実際に入力がうまくいっていないケースのほうが圧倒的に多いのではないか。私のこれまでの経験上で、あまりそういう具体的な問題が顕在化していないというのが率直な感想である。
 ぜひ成功事例を率先して拾い上げていって、こういう取り組み方が非常に参考になるんだということになれば、またその趣旨を伝えていくという意味においてもいいと思う。少々大変かもしれないが、事務局のほうでいろいろピックアップしていただいて、委員会等で討議を経ながら、参考事例をみていくのがいいと考える。1つの大学ですべてのモデルにするのではなく、テーマごとに、いい取り組み事例を紹介していくほうが具体的でわかりやすいのではないかと思う。

【石井主査】

 貴重なご意見、感謝申し上げる。ほかに何か。それでは、渡邊委員。

【渡邊部長】

 ファンディングエージェンシーとして大学に制度改正の説明や要望を聞いて回ったりしているが、そこで気づくのは、特に大きい大学になると、本部と部局で制度改革の理解などの点において意識の差があるということである。したがって、今回のようなガイドラインについても、部局や研究者までの浸透という点で考えると、少し時間がかかると思われる。
 また、こうした際に大学では部局を集めて研修会のようなものを行い、大学が準備した簡単な概要と文科省からの通知やガイドラインをそのままつけて説明するのが一般的だが、どうしてもわかりにくいところがある。したがって、部局や研究者レベルへの浸透を促進するためには、国の側でそのまま部局や研究者の研修レベルでも使ってもらえるようなPR資料を作成して提供するぐらいのサービスをしないといけない。
 また、とかく国の作成した文章は、堅くてわかりにくい面がある。先ほど石井主査から繰り越しの話があったが、例えば繰り越しの事例においても、通知によれば「原則としてできません」とあっても、本当にできないのかというと実際にはできるというようなわかりにくい実態がある。通知の引用ではわかりにくいようなところを、実際のレベルにまで落として分かりやすい表現にしていくことが重要である。

【石井主査】

 繰り越しの申請をしたものはすべて、さっき言ったように10回ぐらい突き返されたということはあったにしても、最終的には全部承認されている。そういう実績が昨年あるということをご参考までに申し上げる。知野委員。

【知野委員】

 たまたま私が送っていただいたのはかなり大きな大学で、「やっている」「できている」という記述が多く、最後の意見のところでは研究者のやりやすいような仕組みにしてくれというものだった。ただ「やっている」とか「つくった」といっても、それだけでは形式的であり、中身はどうなのだろうかとか、実際どういうふうに機能しているのか、たまたま送っていただいたところが不正と無縁の大学でもなかっただけに、ちょっとそういう点で疑問を感じていた。
 国立大学の場合には今までの経緯もあって、多分形式をつくることは、先ほども指摘があったが、得意だろうなと思っていたのだが、その意味で今日、全部の速報を見せていただくと、例えば機関内の責任体系の明確化のような、当然、みんな取り組んでいるのだろうと思っていたことについて、「なお検討している」というところがある。「ない」ところはなくても「検討している」というのは非常に奇異な感じというか、不思議な感じもした。窓口の設置状況でも「検討」という答えが少しあったが、この辺の事情をどう受けとめているのだろうか。

【清浦競争的資金調整室長】

 今のご指摘の点、まだ全部詳細に読んでいる状況ではないが、例えばケースとして最高管理責任者をどの役職にするのか決めているのだが、規定の整備自体が期限内に間に合わないので、整理票上の答えとしては「検討」にしているというケースなどもある。もちろん、そもそもこういうやり方自体が適切でないと考えるのは、小規模な機関とかではもちろんそのような答えもあるが、その辺は今後中身をチェックしていきたいと思っている。特にご指摘のように大きい機関で最終的に最高管理責任者を決められないという話はあり得ないと思っているので、それも確認をしていきたい。

【石井主査】

 ほかには。はい、中村委員。

【中村委員】

 管理・監査の検討会での実務が着々と進んでいるのは結構なのだが、研究現場にいる私たちの状況、最後に少しだけお話をしたい。法人化以後、法人化と関係して、研究費の管理、労働安全管理、それから労務管理、それから化学品の管理、PRTRの管理、また教育改革、ともかく管理業務がものすごく増えた。それはそれで必要なことなのだが、それに対して事務、教員、大勢も意識もすべて同じでやっている。仕事が増えたからといって教育と研究のペースを落とす訳には行かないので教員のほうも負担が出てくる。また、実際に実験を行っている学生も、例えば化学品管理、実験するごとに全部何ミリグラム使った、何グラム使ったと本人が登録しているわけで、負担が増えた。

【石井主査】

 特定の何か毒物とか、そういう……。

【中村委員】

 いや、全部です。全薬品、すべて使うごとに秤量してデータベースに入れないといけないことになっていて、何グラム購入して、今日何グラム使って、明日何グラム使って、それをどう廃棄したかというのは実験をやっている人がやります。ですから学生も博士研究員も、全部自分でやるということになっている。これはそういう実験をしているので当然だといえば当然だが、それに対する手当てが行なわれていない。そういうような負担がさまざま増え、各事務レベルではそれぞれ完璧に行おうとする訳だが、それおを実際に行うのは教員や研究者や学生が行う。研究管理だけでも随分負担が増えたが、さらにほかの負担もますます増えている。労働安全、環境、広報その他。そういう現状、文部科学省でもよく理解していただいて、パラダイムが変わったということに対する全体の仕組みの変革を、大学任せではなく考えていただく必要があると思う。
 もう今、教員も休む時間が全くないし、学生も今言ったような管理が負担になっている。この委員会が担当する部分の管理強化、他の部門での管理強化、規制強化は真に結構なのだが、全体像も考えて頂かないと現場は破綻すると思う。現場の声を直截聞いて欲しい。その分だけ教育と研究、それから学生で言うと勉強と研究、その大切な分が磨耗してきているということだけは述べたい。

【石井主査】

 ただいまの問題は間接経費で解決できるような問題でもなのか。間接経費を文部科学省関係でどういう措置がなされているか、もし可能なら説明していただきたい。

【清浦競争的資金調整室長】

 競争的資金、今、文部科学省で15制度あるが、少なくとも競争的資金についてはすべて間接経費をつけるべきという全体的な方針に沿って要求をしているところである。科研費について一部まだ規模の小さい種目についてカバーしていないところについて、まだ間接経費がついていないという状況はあるが、そちらのほうの概算要求を今しているという段階だと認識している。もし補足があればよろしくお願いしたい。

【石井主査】

 渡邊委員、何か補足は……。今、科研費は基盤研究B.Cを概算要求中だったろうか。

【渡邊部長】

 はい。

【佐藤主査代理】

 報告書を読んでの感想だが、この不正防止体制づくりで一番難しいのは唯一の正解がないということだと思う。研究機関の性格によって、あるいは研究機関の部局の性格によって、不正防止体制の具体的なあり方というのは当然違ってくるわけで、各研究機関が自らの特性に最も適した不正防止体制をつくるのは容易なことではない。各機関がいちばん知恵をしぼるべきところと思う。ところが、報告書を見ると、通り一遍の規則を作っただけという印象が強く、研究機関の特性を踏まえた不正防止体制を作るという難問に迷った形跡が感じられない。
 報告書を読むときに、以下の2点に注目した。ひとつは、不正防止体制が研究者と事務職員の協力体制のもとに作られているかという点。研究機関における不正防止体制作りは、研究者と事務職員の協働が不可欠だ。事務職員だけでつくったら取締り優先となり、がんじがらめの規則をつくって研究者を殺してしまうし、逆に研究者だけに任せておくと、研究の便宜を最優先してしまうから、不正防止の実効性のないルールを作る可能性がある。研究者と事務職員の協力体制がこの報告書にどこまで反映しているのかというのが、報告書評価のひとつのポイント。
 もうひとつのポイントは、膨大な数の研究者や研究補助員によって成り立つ研究現場に、どこまで不正防止体制が徹底できるのかという問題。大学というのは、研究現場が強く、ある意味非常にルーズな組織で、大学本部が規則をつくりましたというだけでは何も動かない。不正防止の規則を作るだけでなく、その規則を研究現場に徹底できる仕組みを考える必要がある。
 以上の2つのポイントを中心に報告書を読んだが、第1のポイントについては、例えば、資料の4−2「特色のある取り組みに関する記載例」、1ページのところに、「研究費の使用等にかかる運用に関する取り組み例」というのがある。そこに、「全ての研究費の管理を事務局で行い、教員発注を全面的に禁止した」とか、「出張に関し、事前に計画を事務に申請させ、必要性を事務が判断の上」とか出ている。明らかに統制過剰で、こんなことをやっていいのかなという気がする。これは多分事務が暴走している例だと思う。研究者サイドからチェックが入っていない。
 第2のポイントについては、研究現場への徹底を考えると、教授会ごとにみずからの研究のあり方に即して行動規範や倫理規範を研究者自身でつくるというのが一番望ましいと思う。それに近いことをしている大学もあったが、ほとんどがしていない。大規模大学ほど、本部が規則をつくりました、これが出来ることの全てですという感じの回答が多い。それでは今までやってきたものの繰り返しになるのというのが私の実感である。
 なお、読んでみてでおもしろかったのはガイドライン第2節、(3)「関係者の意識向上」の自由回答のところ。これが一番各大学の姿勢がよくわかるところで、生回答を全部並べていただくと、それぞれの大学の取り組みのが、一目瞭然でわかるような気がした。

【石井主査】

 ほんとうに、要するに規則をつくりました、仕組みをつくりましたというだけでは、あるいはそういう記述だけで済ませているということ自体が問題だと考えてこれから取り組んでいかないといけない。本検討会がいつまでも続くというようなことがいいのかどうか、もうちょっと別の仕組みを考えるべきか、いろいろご議論あると思うが、とにかく問題は決してそう簡単によい方向に向かって動いているというふうには、どうも感じざるを得ない。ほかに何か。それでは、大久保委員。

【大久保委員】

 先ほどのご指摘の中で、大学の現場では、いろいろな守らなければいけないルールがあるということをおっしゃっていたかと思うが、私も非常にそれ感じる。ただこれは民間でも同じで、最近何かあるとすぐ法律ができて、それを遵守しなきゃいけないということで、従業員も現場もみんな疲弊をしているというのが日本の社会全体ではないか。だからこそ今回のガイドラインというのは重要だと思っていて、実際に大変だと考えることを全部書き出してみて、それらに優先順位をつけていくことで、問題点を明らかにし、その取り組みの強弱をつけて、現実的に対応可能なものから順番にすすめていくのが、「不正防止対応計画」を作成する一番の目的である。そして、行動規範の策定というのは佐藤副主査がおっしゃったとおりであるが、さらに、あまりにも守らなければいけないルールが多過ぎて、最終的に何を守らなければいけないのかわからなくなってくる現実もあり、最後はもう経験と勘で対応をしようとしているのが実態ではないか。
 そこで、大切なことは、大学の研究者、あるいは事務職員として、自分たちの組織にむけられた社会からの期待や要請を理解し、今、何を一番大切にし、何を率先的に守っていくべきなのか、組織としての方向性を明確な形で具体的に示すべきものと考える。たとえば、慶応と早稲田でも、それぞれの大学に対する社会からの期待やミッションは異なっているはずである。ところが、その一方で、建学の精神をとする、これまた雲の上の話でなかなか日常業務にはついてこられない。そこで、まさに建学の精神と、日々のあまりにも膨大にあるルールの中との、はしご役としての行動規範を設定していく。そのためには、繰り返し申し上げているが、教員と職員がコラボレーションしながら、今、自分たちが何を大切にしていくのかということをはっきりさせてることが必要である。残念ながら、今回の私の見た中では、そういったことが出てこなかった。
 逆に、文科省がいろいろな説明会を行っているが、それらの説明会等で、そういった趣旨に基づき実施していただき、むしろ、このガイドラインは職場を締めつけるのではなく、自分たちの自助努力でよくしていくための1つのきっかけだということを意識していただくとよいのではないか。さきほど申し上げた帝大は、むしろ逆に、これをきっかけにととらえてやっていこうという意識が私には見えたわけだが、その一方で、受け身でやっている大学は、とにかく形式的な体制だけを整備して、そして、研修だけして、形作りにいそしんでいるようにしか見えないところも多々ある。これを、これだけやればコストがかかるだけで効果はほとんどないのは当然のことである。
 それからもう一点、最終的に守ればいいということではない。守るための仕組みがどうできるかどうかで、会社法の内部統制も法令遵守という結果を求めてはいないので、如何に法令を守るための仕組みをつくれるかが目的であって、結果として違反行為が起きるかどうかは、体制の構築の有無が大きく影響してくる。例えば警察や防衛省でも何十万人も職員がいれば1人や2人ぐらい悪いことをする人がいる。問題は、それがたまたま一人の人間の個人的な理由なのか、組織としての対応ができていなかったことなのかなのである。今の食品業界も全く同じ。問題は賞味期限切れの商品を出すことが問題ではなくて、隠ぺい体質だといわれることが問題で、隠ぺい体質だといわれるときに、一番大きいのは隠そうと思っていなくても説明ができなかったということも同じなのです。
 今後、大学の中でもいろいろな問題が起きると思う。でも起きたことよりも、組織として、起きることをどう防止していたかということを社会に説明することで、組織としての社会からの信頼をきちっと取っておくことが大切である。それが結果としてたまたまそういう先生がいたということだけなのか、もともと管理がずさんで大学全体がおかしかったのか、そこをきちっと説明ができるようにしていかなければいけないのではないか。
 その最たる例が私は防衛省だと思っていて、結局法令遵守ということにこだわり続けたために、トップが法令を守らなかったときにはその組織全体が地に落ちていく。ところが民間企業というのはそうではなくて、法は守るためにどういう仕組みをつくっていたか。ただ起きた問題がたまたまその人だったのか、組織だったのか、こんなことで少しインセンティブを強調していただきたい。意見を見ていると締めつけられるだけでとんでもないというような、やはり後半のほうをみていると結構多かったのでそこは強調しておきたい。

【石井主査】

 大変大事なことをご指摘いただき感謝申し上げる。無論これからの議題の中でも今までご指摘、あるいはご議論いただいたことが繰り返し問題になると思うので、そのときには遠慮なく元に戻るような形で、ご指摘もご遠慮なくお願いしたい。
 では次に議論すべきことは実施状況報告書の分析の進め方である。清浦室長、ご説明を。

【清浦競争的資金調整室長】

 それでは資料の4−3、それから4−4に基づき、今後、出された報告書をいかに分析して、その結果をどう取りまとめて、どう公表していくべきかといったことについて、ぜひ先生方のご意見をいただきたい。
 資料の4−3であるが、実施状況報告書の分析の進め方、基本認識、背景状況として、ここは今まで述べられてきたことで、大綱的な性格であること。そしで初年度における取り組みであるというところ。それから現実的かつ実効性のあるものに見直していくべきものであるという視点である。
 それから分析の基本的な視点であるが、今もご議論のあった、全機関に実施を要請している事項等に各機関どこまで対応していけば十分かという点については、その機関の規模、あるいは性格によって異なるという中で、どのような事項について問題があるととらえるのか、どのようなものがその特色のある取り組みで参考になるのではないかということで抽出できるのかという視点で確認するというところである。
 具体的な進め方だが、報告書の分析については「必須事項」というふうにして先ほどの資料の4−1のマクロのところで何点か述べさせていただいたが、まず最低限形式的なところにおいてもどう着実に実施されているかというところについては確認をして、問題があると考える物について抽出していく。それからそれ以外のものについてはどのような進捗であるかという把握をしっかりして、問題があるものについては抽出していく。それからすべての事項について特色のある取り組みと考えられるものは抽出するというところである。
 これは分析の考え方としてその次の資料の4−4で書いたが、最終的に今回の状況報告の総括を取りまとめてから、公表していくという作業をしていきたいと考えているが、取りまとめの報告書を策定することを今、検討している。
 取りまとめの趣旨であるが、ここに書いてある特色のある取り組み、それからその改善・検討を求めることが必要な取り組み、これの具体的な事例についてもわかりやすく紹介し、各機関がそれを参照して取り組むということに資するということとともに、こちらの報告書については当然この検討会でもご議論いただき、結果はホームページ等を通じて広く周知することにより、広く国民への説明責任を果たすというところかと思っている。
 報告書の時期は、もちろん検討会の審議の状況も鑑み、今年度末を目途に作成していきたいと思っている。
 この3ポツ目は報告書のありようと関連するが、お出しいただいた千六百余りの機関に対して、どうフィードバックをしていくかという問題である。当然物理的な問題もあるので、1つ1つをオーダーメードのご回答ということには難しいと考えている。(1)については実際に取り組み、個別に改善・検討を求めるような事項があるものについては、ここは各機関にお知らせするということだと考えている。それからその他の機関については、最終的な報告をまとめるときに、それぞれその自分の機関の状況に照らしていただいて、自律的な取り組みを促すということでいかがだろうかと考えている。
 それから4ポツにまとめたのが、分析結果の報告書をどのようなものにするかというところ。その、標題の、課題としてはその分析の結果報告を、はじめに趣旨を述べさせていただき、実際にどういうふうな分析手法を行っていったかという(2)があり、それから(3)については全体で見たマクロの状況を少し分析するというところ。(4)のところでは、中身の話はどういう軸でまとめていくべきかというところについて、ぜひご意見いただきたい。こちらの案は節ごとに例えば研究機関の責任体系の明確化という点で、1)であるが、マクロで見たときの全体的な傾向としてはどのようなもので、2)として、その全体の分析としてはどういうふうに見るべきかという点をまとめる。それから3)と4)については、それぞれについての具体的な事例としてほかの機関の参考となるようなものについては特色のある取り組み、あるいは改善・検討を求めるべきところはこういうところなのではないかというものを、具体的な事例と、なぜそうかという分析を記していくということではいかがかと思っており、これを1から6節まで整理するというところである。
 それから最後に当然、全体の総括としてまとめた上で、一般的提言というようなもの、それからもちろん今回の一部取り出した中にもいろいろな指摘があったが、今後の運用全般についての検討課題等についてもまとめるというふうなものを、こういう作業を通じて浸透を図っていくということをしてはどうかと現段階では考えている。

【石井主査】

 分かりました。4−3と4−4、2つを素材にしてご説明をいただいたが、何かご意見、末松委員。

【末松委員】

 先ほどの議論の繰り返しになるかもしれないが、分析結果を公表する場合に、この資料4−3の基本認識とか、この辺で、先ほどの議論にあった研究活動を適正に行うための管理の多様化とか負担の増大が、明確な事実なので、先ほど中村委員がおっしゃったもののほかに情報管理というのがまた入るわけだが、こういった現状認識のもとに限られた公的研究費を効果的に使うための柔軟性のある制度改革が必須であるというような文章、こういったものを資料の4−4、いきなり第1節で、「責任体系の明確化」といきなりドカンときているが、この前にやはり前にあった研究の不正行為なんかでもそこを非常に配慮され石井主査がまとめられたのを覚えているが、前文に当たるところで。なので「基本認識」と書くのか、どう書くのか。第1節に入る前に基本的な認識としてここの4−3の1、2、3と、こういう認識のもとに以下の分析結果を公表するというようなところに、その一番最初のところに先ほどの管理の多様化とか負担増とか、こういうガイドラインを守る一方で限られた研究費を柔軟性をもって使うような制度の改革が必要であるというようなことを、しっかりと入れていただく。
 ともすればこういうようなことというのは、まとめの一番最後の「検討課題」のところに入るのが通例だと思う。こういうところに検討課題といって埋もれてしまうと絶対にそこが制度化されない、明文化されないということがある。ぜひそこは一番最初にも書き、一番最後にも、「検討」というよりも、要するに実施施策をいつまでにこうやる、ガイドラインがここでこういうふうに動くのであれば、それと同時にそういうことをやるという不可分の関係にあるということを明確に書いていただきたい。

【石井主査】

 これは4−4に書かれていることですね。

【末松委員】

 はい、第1節の手前に。この委員会でしかこういう議論ができないので。現状認識、基本認識に当たる部分の前文が必要で、そこに資料の4−3の1、2、3以外に、今、申し上げたようなことが、しっかり明文化されていて、ガイドラインの実施と、そういったフレキシビリティーの制度改革というのが同時に行われないといけないということを明確に書くのはいかがかという提案である。

【石井主査】

 これはおそらくその4−3のほうの分析の進め方における基本認識の問題のところにまず頭を出す必要があるのかもしれない。ガイドラインは大綱的な性格を有しているものでという、これは確かにそうだが、もう一つ先ほどからのご議論で重要なポイントとして指摘された、これは大久保委員もおっしゃったが、各大学なり各部局自身がこの問題をどういうふうに考えていくのかという、そのためのいわば問題提起としての性格をガイドラインは持っている。必ずしもこの枠の中で何か具体的な文章を書きなさいということではないと思う。やはりそれを実際に自分の問題としてやっていかなければ、絶対に意味のあるものはできない。これはたしか大久保委員もそのご趣旨でおっしゃったと思うが、この基本認識の1の書き方自身も、これをいじるべきだという趣旨で言っているわけではなく、気持ちはそういうところにあるだろうということ。それから研究機関の判断というのも、研究機関一つ、全体で1種類のものではない、あり得ないというか、ある必要はないということを、多少におわせる。各機関、あるいはその部局ごとの判断、考え方、それこそその多様性、研究の分野の、あるいはその分野におけるさまざまな法的規制、安全管理等を含めた、その辺の実態の多様性に合わせた各部局、各分野における判断というものもやはり必要なのではないか。
 ここはなんか、ガイドライン対研究機関という、そういう1対1の関係として書かれているが、もう少しここは多角的な問題なのだということを、やはり各大学に対して、研究機関に対して、どんどんこちらが発信していく必要があろうかと思う。

【中村委員】

 今の資料2つ拝見していて、この報告書の趣旨、性格づけがよくわからない。報告書、分析報告だから、調べたらこうなっていたということを述べるということなのかもしれないが、それだけでは足りないと思う。今の状態では、現状がもともとのガイドラインに対してどういうふうになっているか、ということの分析が行われるということにはなっていない。つまり、今回いろいろなところで管理強化が行われた、しかし、実はそれがガイドラインの精神と少し外れているのかもしれない、などという指摘もいるのではないか。その時に、これはこういうふうにしたほうがいいという、その提言の部分が欲しい。最後のほうに少し、一般的提言をすると書いてあるが、現状に対してコメントをするつもりでしょうか。一歩踏み込んで、もう一回ガイドラインに戻ってこういう方向性は望ましいとか、さらにこういう方向に持っていったほうがいいとか、そういうそこまで踏み込んで書いてはどうか。文科省はどういうふうに考えておられるのか。

【清浦競争的資金調整室長】

 最後のほうに書いてある「一般的」という趣旨は、各個別の機関の評価をしないという意味で言葉を使ったが、そこでおそらく書かれるべきことはまさに今日ご議論いただいたような話だと思っている。例えば実際に課題を分析して、きっかけだと思って積極的にやっていくという点では思ったほど反応がなかったと、あるいはただこういうところは参考になると、それを機関の種別に応じてレコメンデーション、こういう方向に全体としては行くべきかというふうなものを書き込むべきかなと考えている。

【石井主査】

 ガイドラインというものを、先ほど私が申し上げたようなものとして理解した場合に、それを読んで、このとおりにやっていますという答えでそれがきちんとした回答なのかということが片方にあるし、こんなこと小規模、小さな我々のところに押しつけられても困るのだというのも、これも答えになっていない。小さいところは小さいところなりに、ここに書かれている問題提起をどう受けとめるのか、不正が起きないようなまさに仕組みをどうやってつくるのかと、こういうことについてやはり真剣に考えていただくということが最後の提言というのか何か、問題点の指摘という形で出てくる必要があろうかなと思う。ほかに何か。どうぞ。

【小間主監】

 ガイドラインをつくったときの経緯も考えると、ここで規則としてこういう1から5までのものを制定して、それに対しての対応をきちんと求めるという姿勢ではなくて、「大綱的な性格」と書いてあるところもそういうことを意味していると思う。おそらく非常に厳しく、そして研究者への不必要な負担を強いるような形の制度の導入は、ここの委員も決して望んでいるところではない。そうするとこのガイドラインの実施状況の報告書というのは、こちらで書いたものに対してどう対応していますかということに答えることを求めるだけではなくて、その中でこういう形では適切に進まないだろうという事例もくみ取って、制度そのものに反映していくという、その姿勢が基本的に大事だと思う。したがって基本認識の中にガイドラインの実施の状況報告が、単に実施の状況が、対応がどうだったかということを見るのではなくて、そこから適切な、より必要な対応をするためのデータとして抽出していくという姿勢もこのガイドラインの実施状況の報告を求めた理由であるということを第1に書くべきではないかと思う。第3部への対応ということもおそらくそれが端的に表した言葉だと思う。

【石井主査】

 試験の答案を書くというのとは全く違うわけで、それぞれのところで自分たちの実情を踏まえ、研究の活動を阻害しないような形でどうやって不正を防ぐかという仕組みを考えることを求めているわけなので、当然そうなるべきだというふうに、今、小間委員がおっしゃったようなことを、こちらからあらかじめメッセージとして発する必要があるだろう。おそらく末松委員がおっしゃったことも1つの問題だと思う。

【末松委員】

 阻害しないどころか、研究を活性化させる仕組みになる可能性もあるので、ガイドラインをしっかりつくって、ここはさすがに守らないとまずいだろうとの共通認識の部分は、今回のこの情報収集でかなりのことができると思う。今、おっしゃったように。そこもしっかりやるけれども、フレキシビリティーのところもしっかりやるということによって、研究を阻害しないというよりももう少しポジティブに活性化すらできる、そういう判断がこの資料からできる可能性があるので、そこの可能性を排除してはいけないと思う。

【石井主査】

 要するに今、何となくよくわからないで網だけがどんどんかぶってくる、あるいは個別にいろいろな法令だの、何だのという形でかぶってきている、多分先ほどのそのミリ単位で薬品の使用状況の記録を書くなんていうのは、おそらくそれは法律か何かで、そういうのがたくさんかぶってきているものを、無論それに違反することはできないだろうが、どうきちんと不正行為の防止体制という形でうまく受けとめられるか。個別の研究室、あるいは研究者がばらばらに苦労しているというのを、もう、ひとついわばシステムとして合理化するということか。

【末松委員】

 はい。

【中村委員】

 今のはほんとうによいご指摘だ。私の属している大学では、一部の補助金を学部で直接管理していただけるようになって、いろいろな事務的判断が即決で出るようになった。今までいろいろなところの伝達ゲームだったために何が正しく何が正しくないのか分からず、これは使えないのかな、とかいろいろ考えて自粛していたようなところがあった。いまは、即決していただくようになり、これは使えますよどんどんやってくださいというふうに言われると、仕事もどんどん進む。そういうことを最近実は実感しています。事務体制がしっかりすれば研究はかえって活性化される可能性があると思う。

【石井主査】

 それは研究科単位ということか。

【中村委員】

 そうですね、研究科の事務と直接やり取りを行うとすぐに結論が出る。今まではいろいろな中間事務が介在して、誰も本当のところは判らない。この書類は上まで通らないから研究室で何とかしてくれ、などというつまらないやり取りしていて、お互い元気がなくなる。また、これが不適切執行の温床となっていた。研究科事務に有能な方が来てしっかりやっていただけるようになったことで、そういう余分な手間や自主規制がなくなって現場が活性化されたという印象をもっている。

【石井主査】

 そういうふうに変わった背景とか、原因というのはどういうものなのか。大学全体が下へおろしていく工夫をしたということなのだろうが。

【中村委員】

 大学本部がシステム改革したのだと思う。具体的にどなたがどういうビジョンを持ってものを動かした結果よくなったのか、その経緯はよくわからない。

【石井主査】

 それでは、末松委員。

【末松委員】

 身内の恥をさらすようなことだが、先ほど大久保先生から、これは雑談ではなくて、大学のフィロソフィーを入れられると困るという話があったが、うちの場合は独立自尊と言っていて、事務がもう独立自尊ではない。つまり先ほどの中村委員がおっしゃったような大学が自主的に考えて、国民からいただいたお金をどう適正に効果的に使うかというところで現場主義というのをしっかり入れて、そこでつくったガイドラインを文科省がちゃんと認めていただければ、そこから先は現場できちっと判断するという仕掛けに持っていける可能性があるのだ。ところがそれを、うちの場合は百何年だが、その間、ヤギの郵便屋さん状態で文科省へ行き、財務省へ行く。これをやらなければいけないという刷り込みが行われていて、なかなか大学の改革の部分にいかないというのが正直あった。
 ところがこのガイドラインで全国の情報が集まると、今、中村委員もおっしゃったような事例が実際にあるということがわかるのはいいチャンスだ。ガイドラインをしっかりつくって、研究の活性化に行くようなことがこれからどんどんできるという発想になってくる。なのでそこをぜひ、このガイドライン解析の情報の開示のときに、そういう視点も入れていただきたい。

【石井主査】

 大変重要なご指摘、感謝申し上げる。大久保委員。

【大久保委員】

 そもそもこの報告書を何のために、だれのためにつくるのかという、その趣旨を詰められて、その上でその分析的な視点を強調したほうがいいと思った。なぜなら各大学がこれから取り組むときの1つの背中を押すような結果が出てくるといいのではないか。事実は事実で、集計した結果出されればいいと思うが、ネガティブなことよりはポジティブなことを中心に書くべき。ネガティブなことを書くとみんな同じだと、それではうちもこの程度でいいのではないかと、こういう話になってくると、そもそもこのガイドラインをわざわざやっている意味があまりない。むしろこんな取り組みがある、今のまさにご指摘もそのとおりなのだが、少しそういったところにアクセントがわかりやすく、見たときに客観性も重要だと思うが、そういう配慮をされたらどうか。

【石井主査】

 はい、長谷川委員。

【長谷川委員】

 報告書の構成案のところで、各節ごとに「改善・検討を求めることが必要な取り組み事例」ということで記載するという案になっているが、ガイドラインの基本的な考え方からすれば、具体的な制度設計は個々の研究機関の判断にゆだねるということであるので、その取り組み事例について改善・改革というのを現時点の中で言うということは、かなり中身について言及をするというふうな形になるわけだが、そうするとそこはどういう方向性が望ましいとか、一定の考え方を持っていないといけないだろうし、現時点でそこまで踏み込んだ形で求めていくのはどうかという気がする。むしろここは、各大学の取り組み状況を報告していただいて、まだ検討中であるとか、予定がないとか、必須事項についてまだ対応できていないところについてのフォローアップのほうを中心に行って、今後調査をする中で取り組み事例について改善を有するような点があれば、それを求めていくことにした方が良いのではないか。

【石井主査】

 資料の4−4の3のフィードバックというのはこれは報告書の中に書くわけではない。分析結果、何か個別に言うべきことがあれば言うという、そういう趣旨であろう。

【清浦競争的資金調整室長】

 今、長谷川先生からあったような、例えば必須事項のようなところで対応がとられていないというような機関があれば、そこは個別にご指摘するほかないと思っている。それではなくてその他のところにお伝えするツールとして報告という格好で、その中でほかの機関についても周知するべきような取り組み例とか、考え方があればまとめて書くという、この3の(2)のところはそういう趣旨である。

【石井主査】

 要するに個別に対応を求めるときも、「何でやっていないんだ」、「白紙の答案だめだよ」というのではなくて、今、こちらの研究者のサイドのほうからも出てきた趣旨を踏まえて、自分のところで考えてくださいと、研究現場をしっかり踏まえたもの、そういうことだと思う。
 そのいい例というか、参考の例として、こういうものがあるということで報告書ができればいいのだろうと思うし、報告書にはなかなか固有名詞まで書きにくいかもしれないが、個別の対応を求めるときには例えばこういう報告書の例もあるようなことを、参考として見せることは、個別には大学の名前が入っているものを見せることは必ずしも悪いことではないだろうと思っている。一般的に公表するのと、個別的な対応を求めるというよりも、お勧めするのだと思う。今の活性化に向けてこうやってください、こういう例もありますよと、ガイドラインに照らして何点かという、こういうものの見方、あるいはものの言い方はできるだけ避けて、研究の活性化に向けてどういう取り組みがなされるべきか、望ましいかということが我々の関心事であるということである。それをできる限りメッセージの中に取り込んでいかなければならないと思う。
 ほかに何か。はい、葦名委員。

【葦名委員】

 この実施状況報告書の分析の位置づけだが、私どもに送られてきたものを拝見すると、最近整備を始めたばかりだというのが大半。随分立派なことが書いてあるなと思うと、「ということを検討しようと思っている」とある。基本認識のところに書かれているようにガイドラインを踏まえた取り組みが始まったばかりであるということを考えると、この分析をいかに精緻にしても、大変失礼な言い方だが、仕組みをこういうふうに構築しました、あるいはこういうふうに構築しようと思っていますという各機関からの申告を分析するにすぎないので、先ほどの何人かの委員の方からのご発言もあったが、仕組みをつくる側と、その仕組みを運用する側、あるいはその仕組みを適用される側との葛藤がまだないわけで、仕組み自体を分析して、その次にどうするのだというところが欠けているから、そこを認識しないと。ただ報告書の分析だけだと、仕組みをこういうふうにつくりますということの分析だけに終わってしまう。仕組みを実際に運用してみたらどうなのかとか、適応された側はどうだったのかと、その仕組みを変える必要はあるのかとか、もう少し柔軟性が必要だとか、その組織に、機関に合ったものに直していく必要があるのかとか、そういう検証がされてない。仕組みをこういうふうにつくりますということを分析すること自体は意味がないわけではないと思うが。
 先ほどからずっと委員の先生方のご発言を拝聴していて、また私自身も思うことだが、この仕組みを運用するところと今回こういうふうに仕組みをつくりましょうといったところの乖離をなくしていくということが一番のポイントなので、そこの視点をここの分析結果を公表する際にそのこともぜひ触れないと、締めつけを優先するとか、形式的な制度化につながるというような意見が、いつまでたっても消えないのではないかという気がする。

【石井主査】

 全くそのとおり。まさに仕組みをつくるときのその姿勢をきっちりさせるというところから、今の葦名委員のご指摘の精神をきちんと踏まえるということが必要である。要するに監督者的発想の仕組みをつくっておいて、現場とうまくやりましょうというのでは構造的に無理になるから、そこが諸委員からのご指摘があったところだろうと思う。
 それでは次の議題に。本検討会の今後の進め方について。では室長、説明を。

【清浦競争的資金調整室長】

 それでは今後の話について資料の4−5、4−6、4−7を紹介させていただく。資料の4−5については、前回お出ししているもので、今回この報告書が出てきたので、ガイドラインに基づいてその現地調査もすることになっている。100機関ほどということであるが、今年度は30機関ほど。1月、2月の間に訪問するということを考えている。
 それから資料の4−6であるが、もともとガイドラインに書いているのを改めてフロー図にしたものである。これは仮に実際に不正の事案がガイドライン策定後に発生したときに、どういうふうな対応をとるかというところで、先ほど大久保委員からお話があったが、その体制整備上の問題というのがどうだったかという検証を、実際の事象が発生した場合はしっかりやるというプロセスが必要になってくるというところを図示している。
 それから資料の4−7であるが、こちら先ほどの4−3、4−4と少し重なるところがあるが、今後また検討会の中で少し議論していただく話として、今般の報告書の分析の周知方法等についての考え方をどうするかという問題であるし、続いてその次のサイクルのガイドライン・報告書のあり方に関する議論も始めないといけないのかなと考えている。それから今、ご指摘あった、この報告書の中でも指摘された公的研究費、資金制度全般に関しての改善方策のことについても引き続きご議論いただくということを考えている。

【石井主査】

 何か、ただいまの説明について、ご意見は。
 この4−7の次年度以降のガイドライン・報告書のあり方というのは、来年度に繰り返しやるという……。

【清浦競争的資金調整室長】

 はい。ガイドライン上は年に一回程度、状況の報告を求めるというふうになっているが、それのとり方、時期等を含めてどうしていくかと、それは今回の議論を経た上でと。その議論が必要になってくるのではないかと思っている。

【石井主査】

 これは仕組みをつくりましたかとか、そういう形で今まではクエスチョネアはできているわけか。「やりました」という答えのところに同じ質問を出しても意味がないので、これはやっぱり当然ククエスチョネアの見直しをしなければならないね。あるいはしてなかったところ、あるいは検討中と言ったところに対してはどういうふうにするかとか。報告書の内容の書き方が多様化する可能性があるのだろうとは思うが、その辺はゆるゆると検討しようと、そういうご趣旨なのか。

【大久保委員】

 現地調査に当たって、主査、先生が同行されるという話はまだあるのか。前回そういう話が……。

【石井主査】

 そう思っている。

【大久保委員】

 わかりました。

【石井主査】

 各委員にもしかるべく、お忙しいところ恐縮だが、もし日程が合えば行っていただくと、ここの議論を豊かにするためにも大変有益だと思うので、ぜひお願いをしたい……。

【清浦競争的資金調整室長】

 今月中に、1月、2月に行くところというのをピックアップ作業をして、改めて先生方にそのご意向、ご予定も含めてご照会させていただきたい。

【石井主査】

 最後に第3回の本検討会の議事録について、室長から説明を。

【清浦競争的資金調整室長】

 前回の議事録についてはご確認いただいて、もしご意見があれば1週間後の12月13日までに事務局までご連絡いただきたい。その上でホームページの掲載等させていただきたい。

【石井主査】

 それでは今後の予定等について。

【清浦競争的資金調整室長】

 その前に1点だけご紹介で、参考資料の4−1というふうにしているが、文科省のほうで研究活動の不正の告発窓口と、研究費の不正の告発窓口を一本化しているので、それのご紹介を参考資料の4−1に掲載させていただいた。
 それから今後の予定は、次回の会議は2月上旬ごろを予定している。

【石井主査】

 それでは特に改めてご発言、もしあれば。どうぞ。

【末松委員】

 非常にしつこい指摘になるが、この今後の進め方、資料4−7であるが、結局このガイドラインを最終的に見直しをする、それを公表していくプロセスで、必須事項というのがこれとこれというのが当然しっかりと決めていかないといけないというのが、先ほど申し上げたとおりだと私は考えているが、言葉が適当かどうかわからない。容認事項、あるいは自治事項、大学自治に係る部分。何というか、そういった部分も、これは表裏一体だというのが今日お話しした論点、あるいは研究推進のための何とか事項とか、そういったものを同時にきちっと明文化してガイドラインの見直し案とともに出していくというようなお考えがあるのかどうか。今日の時点でなくてもいいのだが、コメントがあればいただきたい。

【清浦競争的資金調整室長】

 当然そういったことも視野に入れて検討していきたいと考えている。

【石井主査】

 今のご指摘は必須事項とか何とかというのと少し軸がクロスするだろう。

【末松委員】

 はい。

【石井主査】

 必須だけどそれをどういうふうに具体的にするかというのは、まさにこの実質的にというか、分野の多様性を踏まえてきちんと自分たちで考えてもらうということだという、そんな感じでうまく、今のご指摘を生かしていければいいなと感じた。

―了―

(科学技術・学術政策局調査調整課競争的資金調達準備室)