研究機関における公的研究費の管理・監査に関する検討会(第2回)議事録

1.日時

平成19年9月7日(金曜日)15時30分〜18時

2.場所

コンフェレンススクエアMプラス

3.議題

  1. 研究費の制度改革の進捗状況について
  2. 大学の取組状況
  3. 研究機関の体制整備状況の確認について(報告書様式(案))
  4. その他

4.資料

資料2−1−1
 研究費の不正対策検討会第3部の指摘事項に対応した文部科学省の全体的な取組
資料2−1−2
 科学研究費補助金の制度改善状況
資料2−1−3
 科学技術振興機構における研究費制度改善状況の進捗状況
資料2−2−1
 慶応義塾大学における研究費の不正使用等防止の取組状況
資料2−2−2
 広島大学における研究費の不正使用等防止の取組状況
資料2−3−1
 「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」に基づく体制整備等の実施状況報告書について(案)
資料2−3−2
 報告書についての主なコメント
資料2−3−3
 「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」に基づく体制整備等の実施状況報告書の様式について
資料2−4
 検討会の今後の予定について(案)

5.出席者

葦名 弘 KDDI株式会社 リスク管理本部 業務・コンプライアンス監査部長
石井 紫郎 東京大学名誉教授
石渡 朝男 学校法人 二松學舎 監事
大久保 和孝 公認会計士 新日本監査法人役員
佐藤 慎一 東京大学大学院人文社会系研究科 教授
佐野 慶子 佐野公認会計士事務所長
末松 誠 慶應義塾大学 医学部医科学教室教授
知野 恵子 読売新聞東京本社編集局 編集委員
中村 栄一 東京大学大学院理学系研究科 教授
長谷川 正文 茨城大学理事・学長補佐・事務局長
○配分機関
小間 篤 独立行政法人科学技術振興機構 研究主監
渡邊 淳平 独立行政法人日本学術振興会 研究事業部長
○説明者
大堀 洋 慶應義塾 総合研究推進機構 事務長補佐
上原 正宜 広島大学 財務部財務課長
○事務局
森口 泰孝 科学技術・学術政策局長
吉川 晃 科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官
戸渡 速志 科学技術・学術政策局政策課長
磯谷 桂介 研究振興局 学術研究助成課長
嶋倉 剛 科学技術・学術政策局調査調整課長
清浦 隆 科学技術・学術政策局調査調整課競争的資金調整準備室長

6.議事内容

【石井主査】

 それでは、研究機関における公的研究費の管理・監査に関する検討会の第2回目を開催する。
 本日は、かなり重い議題もあるので、よろしくお願い申し上げたい。
 議事次第にあるように、まず本日は、研究費の管理・監査に関する制度的な改善の進捗状況、それから、大学における取り組みの状況に関する関係者からのご報告を受けたまわり、その後、体制整備状況報告書の案についてご議論をいただきたい。
 特に、最後のこの案の問題は、下手をすると趣旨を誤解されて、何か点検をしている、あるいは、大学のほうから見れば点検をされている、採点されている、されるのではないかというような誤解を招くおそれもあるので、内容はもちろん表現の点でも慎重を期したものを用意する必要があるかと思うので、よろしくご審議をいただきたい。

 清浦競争的資金調整準備室長より、資料2−1−1〜資料2−4の配付資料の確認があった。また、大久保委員からご提供いただいた配付資料「ガイドラインに関するコメント」の紹介があった。

【石井主査】

 それでは、初めに、資料2−1−1にあるように、「第3部」の指摘事項に対応した文部科学省の全体的な取組について説明を願いたい。

【清浦競争的資金調整準備室長】

 それでは、資料2−1−1をごらんいただきたい。
 第1回の議論においても、制度改善の議論を活発に行っていただいたが、文部科学省が行っている取組の状況の全体像について、研究費の不正対策検討会の報告書の第3部のほうで指摘されている指摘事項に沿って現状のおさらいをさせていただきたい。本日は、総括的な説明をさせていただいた後に、科学研究費補助金に関する改善の話、それから、小間先生からJSTの取り組みの話についてもご紹介をいただく予定になっている。
 それでは、表の説明であるが、一番左側のほうが指摘事項となっている。ここのコラムが第3部における指摘事項である。主に3点からなっていて、単年度会計主義に起因する問題の改善というところであり、繰越の問題、研究機関の弾力化の問題といったもの。
 それから、2番目として、資金制度運用の弾力化の問題。交付の早期化の話や、費目間の流用の話等である。
 それから、3ぽつ目が各資金制度間の制度の統一的な取り扱いの問題である。ルールの統一・共通化の問題や、合算使用の問題等である。
 それから、その他として、間接経費の拡充等が指摘されているところである。
 指摘の詳しい内容については、報告書にまさに記載されているとおりであるが、一言で言うと、世界的に見てほかの国でなし得ているその制度の改善、そこと同程度に日本もするべきではないかということで、そのさまざまな観点からの改善の要望、改善の必要性というものが指摘されていると考えている。
 この指摘事項に対応して、その右のほうにこれまでの改善状況、現状を書かさせていただいている。右のほうに今後の課題としてまとめている。案件によって、その制度を改善する場合に、改善しなくてはいけないハードルがあるわけだが、それが例えば法令の改正を要するようなものかどうか、あるいは、その協議をする先がある問題かどうかということを大まかに整理しているところである。
 まず、単年度主義に起因する問題の改善であるが、もちろんこちらのほうは、我が国の会計そのもの、財政法に基づく会計法は単年度会計主義というものが根底にある。後ほど詳しくご説明をいただくが、この中で科学研究費補助金では、繰越明許を活用した、繰越事由の具体的な明示などによる明確化、周知徹底というのが図られているところである。
 それから、JSTについては、こちらのほうは、国からの補助金等ではないので、JSTからの運営交付金ということで、いわゆる繰越明許制度とは異なっているが、法人の中で繰り越しの円滑化というものを実現されているので、この件については、小間委員から後ほどご説明をいただきたいと考えている。
 繰越については、繰越明許の制度については、法令に基づく、一緒であるので、この運用について改善する場合は、当然財務省等との協議が必要になってくるというところである。
 それから、次の(2)であるが、研究期間の弾力化の話である。研究期間の弾力化の中に、報告書に書かれているものとしては、特段の手続なしに年度をまたいだ研究費の使用、研究期間の延長、研究期間の起点を年度当初ではなく資金の交付時点とするやり方等々の指摘がある。これは、先ほど(1)で申した単年度主義のものと深くかかわっている問題であるが、個々の制度の中でも、科研費における実績報告書の提出時期等の改善の話、それから、JSTにおける戦略的創造研究事業における繰越の話がある。
 右のほうに今後の課題と書いてある。「競争的資金配分事務の独立法人への移管」と書いてあるけれども、JSTが行っているスムーズなやり方というものの、JSTの仕組みとして、国から直接ではなくて独立行政法人からの資金というものがある。ただ、その独立行政法人のほうも独立行政法人の予算、定員の制約の問題があるというところである。こちらのほうも、国から支出するものに関しては、年度またぎの問題については、法令の問題を解決する必要があるということになっている。
 それから、その次のページであるが、資金制度の運用の弾力化の問題として、資金の交付時期の早期化の問題が言われている。こちらについても、それぞれの制度において、交付の時期、実際の送金の時期を早める努力をこのようにしているというところである。
 それから、費目間流用の一層の弾力化等の問題についても、それぞれの種目の中で努力をしているわけである。特に本省から委託費という形で出している科学技術振興調整費等の資金については、その下のほうとも関連があるけれども、費目の簡素化による費目間の流用の大幅な拡大を図っているところである。
 次の3ぽつである。各種競争的資金等の制度の統一的取り扱いである。これは、大学等で受けている、大学等で必要となるその取り扱いというのが資金によってそれぞれルールが違うと、それをできるだけ統一化、標準化できないかというところである。これまでの取り組み状況として、今、ご紹介したが、振興調整費等、本省委託費については、30事業ぐらい、これは競争的資金以外のものだが、それぞれの局のルールで行っていたものを統一的な要領というのを19年度から実施しており、それと同時に、その手続の合理化、簡略化というのをやっているというところである。
 しかしながら、その競争的資金、右側の今後の課題であるけれども、国からの委託費の場合、それから科研費のように国からの補助金の場合、あるいはJSTからのように、運営費交付金という格好でその独立行政法人からお金が出る場合というところについては、例えば、購入した機器の所有権の問題等をこれは例示的に挙げているわけだが、この取り扱いの問題等がその資金の性格によって違うという、特に国から直接出るものというのは縛りが大きいわけだけれども、このあたりを改善する必要があるというところである。
 それから、その3枚目である。異なる競争的資金等の合算使用の問題である。これは、先日、末松先生や中村先生からもご指摘をいただいているが、研究の現場で、ややもすると非常に非合理な処理をしないと使えないという事態がある。これらの改善ができないかというところである。
 これまでの改善状況のところにあるが、科研費、それからその戦略事業等々、これまでの運用の範囲でも、もちろんすべてができないということではなく、一定の要件のもとでできるというものもある。しかしながら、先日お話のあったような、試薬のまとめ買い等々に関して現行の制度でできるかというと、現行のルールではそれはできないというふうなルールになっている部分もある。ここについては、今後の課題のところにあるが、例えば、その科研費のそのルールの問題、それから、その戦略事業のルールの問題、こちらについては、いわゆる法令事項、あるいは協議先がある問題ではなくて、運用上の整理の問題である。こちらについては、今、その明確な結論をここには書いていないが、現行よりも使い勝手がよりよくなる方向に具体的に改善しようということで、検討課題のほうにこのような書き方をさせていただいている。
 それから、4ぽつ目である。間接経費の大幅拡充とあるが、これは、競争的資金を取り扱う管理的な経費の確保をせよというところだと思うが、こちらについても、全制度30パーセントを目指した概算要求をまさに今しているところである。

【石井主査】

 何かいまの説明について、質問等があれば受けたまりたい。

【佐藤主査代理】

 指摘事項1「単年度会計主義に起因する問題の改善」の(1)で、「繰越明許費制度の活用促進と一層の弾力化」が挙げられている。単年度会計主義に由来する問題を解決するうえで、多分当分は繰越明許費制度の活用が切り札になると思うので、平成19年度にはこの仕組みをさらに使いやすくする必要がある。過去の実績を見ると、平成17年度に繰越明許が全国で55件認められていて、平成18年度には641件と、ほぼ10倍に増えている。私の所属する東京大学では、平成17年度が2件、平成18年度は248件と、ほぼ100倍に増えており、しかも申請したものがすべて認められている。この繰越明許制度が広まっていけば、単年度主義に起因する問題の多くは解消していくと思われる。
 ただ、これも問題がないわけではない。東京大学では248件すべて認められたのだが、かなりの件数で、書類が財務省と大学を往復して、中には4回ぐらい書き直しを命じられたというのもあった。何がその原因かというと、財務省と現場の研究者の考え方の相違が根底にある。財務省サイドからすると、予算の単年度主義の原則というのがまずあって、繰越明許というのはあくまで例外としてしか認められない。他方で研究者は、本来繰越明許が大幅に認められてしかるべきだと考え、極端にいえば、自分の権利として主張したがるところがある。だから研究者の中には、今年度の研究費をこれだけ節約したのだからこれを来年度に繰り越してくれという理由で申請する人もいる。その理由では、やはり単年度主義の原則からいって通らない。財務省からいえば、情報公開法でその書類が開示されても、これは財政法に照らして問題ないという、そういう書類でないといけないわけで、その立場も了解できる。
 何を申し上げたいかというと、平成18年度に繰越明許の数が前年度比でほぼ10倍になったわけだが、申請数の最も多い東京大学でも、この繰越明許の制度をいまだに知らない教員はたくさんいる。平成18年度の実績が情報として伝わると、平成19年度には、東京大学でも全国の大学でも、繰越明許の申請数が大幅に増える可能性がある。申請数が大幅に増えて、しかも平成18年度のように申請書類の書き直しが求められると、大混乱が起こる恐れがある。混乱を避けるためには、あらかじめ研究者に対して、単年度主義の会計原則に照らしてこういう理由は不適切である、こういう書き方ではだめだということを、なるべく具体的事例の形で示しておくことが必要である。繰越明許の活用推進を図るうえで、平成19年度の申請手続きが円滑に進むことがきわめて重要なので、是非とも平成18年度の経験を踏まえた運用の改善をお願いしたい。

【石井主査】

 ご指摘があったところは、大変重要な問題で、こう書けば認められるという、サンプルのようなものが昨年度の末ごろに流れたのだが、これがさらに極端に簡略化された形で現場から提出されてくるというような形で、今、佐藤委員がおっしゃったような現象が起きたかのように私も理解している。
 だから、ちょうどその逆の悪い例も、ぜひ文部科学省あるいはエージェンシーのほうからしかるべく流していただくということが、これはやはりトラブルを防ぎ、あるいはお互いにむだな労力を防ぐために必要なのだろうと思うので、よろしくお願いする。
 そして、こちらから出すものがほぼ100パーセント問題なく財務省として認められるようなものであるような状況がつくられれば、おそらく繰越明許制度というものも、いわば1つの安定したルールの上に乗った1つの運用形態として定着していくのではないか。
 今は全くの過渡期であるし、本当に組織的に、大々的にこれを使おうと、我々も提言したわけだし、大学がそれを使い始めた最初の年であるから、ある意味でトラブルが起きても仕方がない状況だったのかもしれない。これをなるべく早く、水平飛行に持っていく努力というものを、大学サイド、大学の事務当局も含め、研究者や文部科学省、そしてさらに財務省のほうの理解も求めていかなければならない。こういう幾層にもわたるところで努力が行われることによって水平飛行が可能になるだろうと思っている。今は、本当に大事な時期である。関係者一同、皆様が努力していただけるように、ぜひお願いをしたい。
 ほかに何か。

【小間主監】

 繰越明許制度は、大変プラスの方向だと私も思うが、実際に出してお金が使えるようになるのが、4月に間に合うように制度が運用できるのか、あるいは、認められるのがもうちょっとおくれて、結局は7月ぐらいまで使えないのか。

【石井主査】

 文部科学省のほうから何か。

【袖山企画室長】

 繰越について佐藤委員から詳しく紹介があったが、資料で今年の繰越の状況について若干整理をしているので、ご説明をさせていただきたい。
 まず、その前提として、科研費としての不正使用防止への取組についてだが、資料2−1−2の1枚目で、これまでもさまざまな措置を講じてきている。今検討会の前身の昨年度の検討会における検討等も踏まえて、19年度からの実施措置として、納品検査の徹底等の機関管理体制の強化、あるいは、研究機関における経費管理責任者、それから、各事業ごとの経費管理担当者の登録の義務づけや不正を行わないなどの誓約文書の徴収、実地検査の協力といったようなことを義務づけている。さらに機関管理体制の不備がある場合には、将来的には、ペナルティーとしての間接経費の減額等の導入もあり得るということも周知をしたところである。これは、今検討をいただいている報告等の内容を踏まえた形で実施するものである。
 一方、科研費における経費執行の弾力化に関するこれまでの制度改正についてだが、先ほどの総括的な説明の中にある内容について時系列的に整理したものが2ページにある。

【石井主査】

 失礼、今の質問は、繰越明許の結果、一体いつ実際にお金が使えるようになるのかということについての、小間委員の質問についてお答えをお願いしている。

【袖山企画室長】

 本年度の繰越については、本年度の3月2日に手続の締め切りということで出していただき、その後、財務省との折衝等を重ねてまいり、最終的に財務省との協議が整ったのが5月の中旬で、4月の当初からその繰越経費が使える状況ではなかった。
 そういう意味で、今年度においては、実質的にこの繰越制度の弾力化が図られた最初の年度であるということで、若干その手続に時間がかかったので、早期化を図っていくということは1つの課題だと考えている。

【石井主査】

 1つ質問なのだが、その財務省との協議は、年度が形式上明けてから実際に行われ、そして協議が整うのはどうしても4月1日を超えてしまうというのが制度的な原則というか、制度の論理からするとそうなるのか、それとも、年度内にそれを済ましてしまう可能性があるのかどうかを伺いたい。

【袖山企画室長】

 最終的な承認手続が整うのは、翌年度の4月1日にならざるを得ないかもしれないが、実質的な協議については、年度内に実施をしたいということで、18年度は、19年3月2日を繰越し申請の締め切りとした。

【森口科学技術・学術政策局長】

 1月中旬からやっているのだろう。今の資料の3ページの上のところにそのことが全部書いてあるので、ここを説明してほしい。

【袖山企画室長】

 繰越の手続については、19年3月2日までに機関を通じて研究者から繰越し申請を提出をいただくということで取り組んできた。実質的に非常に早い段階から事前相談という形で受け付けており、その事前相談が整ったものから随時財務省と協議を行っており、その最終的な締め切りが3月2日であった。
 これは、先ほども申したが、年度内に協議を終えて、できるだけ年度当初から繰越費用を使えるような日程をセットしたものであるが、実際には、今年度は前年度比で10倍の申請等があったことと、さまざまな研究機関及び研究者とのやりとりに時間が若干かかり、手続きに5月の中旬までかかってしまったという状況である。
 したがって、さまざまな手続の効率化を図ることによってこの時期を早めることが課題であると考えている。

【石井主査】

 そうすると、私がさっき水平飛行という言葉を使ったのだが、水平飛行に移った段階では、4月のかなり早い時期から実際にお金が使えるようになるという理論的な可能性はあると理解してよろしいか。
 それでは、学術研究助成課の企画室長から資料2−1−2について、科研費の制度改善状況について説明をお願いする。

【袖山企画室長】

 科研費の状況について、まず不正使用の防止については2−1−2の1ページで先ほどご説明をしたとおりである。
 それから、制度改革の内容については、2ページ目であるが、時系列に整理をしている。費目間の弾力的な使用、あるいは海外出張等の経費の使用の緩和、それから研究支援者の雇用、あるいは間接経費の措置等々の措置を講じてきたところである。平成18年度の措置として、特に最近実施をした内容が、1つは先ほどから申し上げている繰越の内容である。従来、非常に限定的にとらえられていた内容を広く当初予定していない研究の事情の変更等に適用することとしたことである。
 もう1点が、科研費の実績報告書の提出期限を従来4月25日としていたものを5月31日までに延ばしたということである。これは、科研費の実績報告書の提出期限が4月25日までということで、提出までに経費の精算をそれぞれの機関において行っていただきこの報告書を提出するという関係上、どうしてもそれぞれの研究機関で経費の精算整理等をする必要があり、実質的に科研費が使える期間が非常に前倒しされていて、2月の下旬ぐらいまでに科研費を使用する形の機関が多いということで、3月の時期に科研費が使用できないような機関が多くあるという実態があった。
 したがって、実績報告書の提出期限を延ばし、3月31日までこの科研費を有効に活用できるよう、提出期限を5月末まで延期したところである。これによってそれぞれの研究機関において、年度末まで科研費の使用が可能となるように取り組みをお願いしているところである。
 それから、繰越しの話についてであるが、手続の日程については先ほど申し上げたとおりである。それによって、18年度は641件繰越が承認され、17年度の55件から大幅の増になったということである。最終的には、申請があったものについては、すべて繰越しが承認をされた。参考にあるように、繰越しの事由としては、計画に関する諸条件ということで、研究計画の変更に伴うといったものが非常に多くなっている。
 先ほどから申し上げて、あるいは佐藤委員のご指摘のとおり、繰越の手続そのものを行う機関が初めてということ、実質的に多くの申請があり、内容的にも我々あるいは財務省としても初めての内容であるということもあり、制度に係る事実確認、あるいは補足との必要といったようなことがあり、研究者と文科省と財務省で何度かのやりとりを経るというものも多くあった。財務省としては、繰越制度が国の会計制度の例外であるという原則のもとに、1件1件その要件に該当するかを審査した。専門的な研究内容等について、確認をしながら実態を見ていく必要もあり、研究者には分かりやすい記述をお願いし、何回かのやりとりもあった。
 また、18年度の繰越しに臨む際にいろいろ通知等を出したのだが、やはり十分実態に即したというものよりは、イメージ的な内容で書いていたものが多かったということで、やはり事例が研究の実態に十分に即していないというような側面もあり、その通知文のとおりに書いたのだけれども、どうも個別の具体的なイメージがつかみ切れないということも実際としてはあったと聞いている。
 そのような点を反省材料とし、次年度以降、さらに円滑に手続を進めていくという観点で、次のページ以降になるが、今年度のさまざまな財務省との協議を踏まえたうえでの、いわば様式の書き方、留意点といったようなものを整理したものが次の1、2ページである。
 それから、3ページ以降であるが、そういった留意点にプラスして、実際に今年度繰越の申請があった事例集ということで、最終的に財務省との協議を経て了承いただいた理由書を幾つか分類ごとに提示をさせていただき、実際の具体的な例に即して、来年度以降、その調書をつくる際のイメージがわきやすい形にするということで、このようなものをつくり、19年7月に各研究機関のほうに通知という形で示した。こういったものを踏まえ、またさらにこの繰越制度について各機関に周知を図っていくことにより、さらに円滑な繰越制度の運用というものを図るべく取り組んでまいりたいと考えている。

【石井主査】

 これが良い例というべきものである。先ほどの佐藤先生の紹介されたものは、悪い例で、修正を、つまり突き返されたようなものも、もし可能ならばそれを少し、何かその人が名前がわかってしまうとまずいから内容的にはマスキングをして流していただけると一層参考になるのではないかなと思う。
 ただいまの説明に関連して、何かご質問はあるか。

【長谷川委員】

 財政法に基づく繰越明許費であるので、法制度上は、主務大臣と財務大臣で協議をして承認を受けるということになるのは当然だろうと思うのだが、このように18年度実績が641件、また来年度以降はどんどんふえていくとなると、1件1件について、大臣間の協議を行うことが現実的に可能なのかどうかが非常に心配される。ここにあるように、一定の要件を満たしたものについては、財務大臣との協議が整ったものとして処理していいというふうな包括的な協議をした上で、文部科学省限りにおいて承認を与えて、財務省には報告をするというふうな形の手続がとれるようにすべきではないか。また、そういった検討をされているのかどうか、お考えをお知らせいただきたい。

【石井主査】

 まことにそのとおりだと思うが、これはまさにテイクオフの段階で、水平飛行の話を当局からの答えを求めるのはお気の毒かとも思うが、もし何かあれば…。

【森口科学技術・学術政策局長】

 まず、法律に財務大臣の承認を得なければならないと書いてあるので、そこを省略するには、財政法を変えないといけない。財政法を変えることは、法改正の手続きをとれば理論上あり得るわけで、例えば財務大臣の承認ではなくて、財務大臣への報告に変えれば事務処理は大幅に簡素化される。しかし、相当ハードルが高い。
 それでは、個別の承認ではなく、今おっしゃられたような包括承認も我々としてはあり得ると思うが、財務省がどこまでそれについて理解を示すかである。ハードルはやはり高い。しかし、財務省と今後話し合っていく価値はあると思う。

【石井主査】

 要するに、水平飛行に行くまでは、当分各方面でエンジンをふかして一生懸命頑張っていく以外ないということであろう。

【渡邊部長】

 私が質問をするのもおかしいのかもしれないが、さっきの小間委員からのお話と同じなのだが、要するに、5月中旬に繰越承認を通知したとすると、4月から5月中旬まではお金が使えなかったというお答えだったと思うのだが、例えば、来年度、2,000件ぐらいいった場合、その協議が整うのが6月までに長引くことが予想される。例えば、2月に予定していたシンポジウムを何らかの理由で5月に延ばしたいので繰り越したいと出したが、協議が整うのが6月となると、もうこれは使えない。だから、その協議が整うよりも後に研究計画を立ててやりなさいということに現状だとなってしまうのか。

【石井主査】

 大変興味ある質問だが、時間が押しているので、後でしかるべくお答えをいただく。そういうのは、赤紙でも張って、緊急性のものは先に協議へ回してもらうとかいろいろ工夫はあるのではないかと思うのだが、どうなのか。

【袖山企画室長】

 これは、継続の科研費などと同じ扱いであり、承認が出る前のものについて、例えば研究機関の判断で立てかえていただき、承認が出た後に、精算することは考えられる。

【石井主査】

 その協議が整った日よりも前にさかのぼって4月1日から支出可能なのか。

【袖山企画室長】

 4月からの事業として実施した分に払うことができる。

【石井主査】

 それでは、小間委員のほうから科学技術振興機構における取り組みについてご説明をお願いしたいと思う。

【小間主監】

 では、資料2−1−3に従ってご説明する。
 前半は、ちょっと聞き慣れないかと思うが、科学技術振興機構で、昨年の10月にプログラム調整室というものを設置して、研究費の効率的な使用ができるような制度をつくった。それについてご説明し、それから、後半のほうで研究期間の弾力化とか複数年度の契約についてお話ししたいと思う。
 プログラム調整室の設置をした経緯は、競争的資金の重複が多いケースがあるとか、あるいは、年度間の繰越の問題であるとか、競争的資金の途切れがある時期があるとか、会計制度上のいろいろな制約があるとかといったことで、今まで使いにくい、あるいは、そのために形式的には不正をせざるを得ないようなことがあったかと思うけれども、これの制度の問題は、むしろ研究の実態をよく知っている人がそれに対して解決策を出していくことが必要だという判断で、研究者を中心にプログラム調整室をつくり、これに対応するということで設置したものである。
 特にJSTがそういうことをやった理由は、次のページにあるように、JSTの戦略的創造研究推進プログラムというのは、ERATOは1課題毎年3億円を最大としており、CRESTは1課題1億円ということで、これがそれぞれ20課題、250課題が並行に走っていて、いずれも大変額の大きな研究費を多く扱っているということから、JSTとしても自主的に研究費の効率化、あるいは不正使用に結びつくようなところはそれを防ぐような手だてが必要だという判断でスタートしたものである。
 実際の活動は、これだけ件数が多いので、大体は書面審査、すなわち選考時及び各年次の報告をいただくときに出していただく書類によって調査をするということを基本としているが、これは言うまでもなく、正しく記載されているということが前提なので、万一不実記載ということが後にわかった場合には、厳正な措置をとることにしている。
 書面調査の結果、状況が不十分な場合には訪問調査を行う。これは、その不正を防止するということはもちろんだが、その書面・訪問調査をした結果、研究費がむしろ足りないという状況がわかって、それを出すことが適切だという場合には、増額の勧告も行うという役割を持っている。下に再度書いてあるが、監査あるいは不正摘発ということを目的とした制度ではない。
 具体的に書面調査、訪問調査はどうやるかというのが次のページにある。書面調査は、このために研究者の負担がふえることは極力避けたいということで、A4判2枚以内ぐらいの調査項目に抑えるようにしている。具体的には、費目別にどれだけその年使ったか、購入したもの、あるいは購入予定の主要設備、それから、特に高額の研究資金の重複ということを気にしているので、他制度での助成状況は前年度どうだったか、当該年度はどうだったか、次年度はどうなる予定か、これをきちんと報告してもらう。それから、この研究費が適正かどうかを見るという意味合いは、同じ1億円の重複があったとしても、大学院生を30人抱えている研究室と1人、2人しかいない研究室で、同じように形式的に1億円はだめとかという判断は適切でないので、研究代表者のグループのサイズも報告してもらうようにしている。また、このような調査結果は、採択時にも我々が行って研究総括に提供して面接選考に資するということも考えている。今年は既にそれを実施した。
 訪問調査で、どういうことを見るかというと、研究の進み具合、あるいはそのレベルを見せていただくという点で、特筆すべき研究成果を中心に簡潔にお話しいただく。成果として見せていただくのは学術上の貢献とイノベーションへの寄与といった観点である。それから、他の助成金の受領状況及びそれぞれの研究費に対する役割の仕分けといったことを重複の判断にするために説明をいただく。それから、研究室がちゃんとなっているかというのは、実際に研究室を見るとすぐにわかるので、研究室の見学をし、主要設備の利用状況であるとか、研究経費に見合う人員体制になっているかを見せていただく。それから、これは制度の不備をなるべく直したいということも同時に目的としているので、研究費の使い勝手に関するもろもろの注文、あるいは改善の提案といったものも同時に受けることにしている。
 具体的に、プログラム調整室を現在スタートしているのは5人で、私が室長、それから、プログラムオフィサーとして4名の名誉教授の先生方、この方たちは、大きな予算を大学の研究室で運営しているときに使っていた経験者なので、この実態がよくわかる人である。
 また、JSTの中におけるプログラム調整室の位置づけは、次のような形になっている。
 研究推進をするのは研究総括、それから、JSTのサポートをする部署である研究推進部以下の人たちは、研究推進のためのいろいろな意見を出す。一方、プログラム調整室は、調査し、そして必要なら予算の増減を勧告する、そういう立場が同格の立場にあって、両者の意見はしばしば異なることがあり得るということで、戦略事業の担当理事が最終的に両者の意見を調整してどちらかの意見が正しいということを決めるという、三権分立的な形で、プログラム調整室だけがすべてを決めるという形をとらないように制度設計をした。
 以上が昨年10月にスタートしたプログラム調整室の概要である。
 あと、JSTが行っている研究期間のフレキシブルな設定、あるいは予算の執行のフレキシブルな運用といったことを図で説明すると、多くの競争的資金の場合は、例えば全予算を300単位と仮定すると、各年度、年度で一応使い切るということが原則の制度設計になっているので、例えば、最初の年は9カ月しかなくてもそこで切らなくてはいけない。そして、2年と9カ月たつとたとえ3年間の研究計画であったとしても閉めなければいけない、こういう制約があったわけである。これは、単年度会計制による制約であった。
 JSTは、先ほどからお話をいただいているように、独立行政法人としての判断で、ある程度年度をまたいだ運用が可能ということで、研究期間については、10月に決定したものは半年間で第1年度が終わるが、あとは次の年、それからその次の年、丸々使い、さらに半年分、4年目に入ることを認めている。そうすると3年間の計画は実質として3年間でやれることになる。さらに、日本の会計の閉めが翌年3月になっているので、実際には、その会計の閉めまで使ってもいいということをしているので、3年の研究は最大3.5年まで使えるという形を運用している。
 それから、年度間をまたぐところだけれども、これは、5パーセントまでであれば、これだけ残したいという申し出があれば、ほぼ自動的に認めるということで、大学の中にお金を置いたまま年度をまたぐことを認めているが、同時に、5パーセント以上の繰り越しが研究推進上どうしても必要だという場合には、JSTのほうに前もって連絡をいただき、プログラム調整室が適切だと判断すれば5パーセント以上の繰越も可能な道を開いている。
 それから、複数年度契約については、平成17年度から実施していて、現実に5年間の研究計画であれば、5年間の計画を最初の年に契約をする。ただし、実際には5年間のものも2つの理由で切らざるを得ないことがある。その1つは、独立行政法人であるJSTの中期目標の期間切れ目のところでは、一たん切らなくてはならない制約のためにそこはまたげない。同時に、国立大学法人のほうは、2年半後に中期計画が終わるのでそこで切らなくてはいけないということで、5年の複数年契約を実際にやりたくてもできていない。具体的には、5年間の総額が幾らぐらいになる、また、1年目にはこれだけの額になるという契約をするが、次の年のスタート前に覚書で次の年の決定額を決め、そして、そのときに必要ならば総額の補正もするという形で運用をしている。
 合算使用については、まだ道が遠いのだが、基盤経費、あるいは委任経理金等の使途が規定されていない資金を自己負担分として加算するということは認めている。ただし、科研費と他の競争的資金との合算は現時点では不可という状況である。

【石井主査】

 いろいろご努力を重ねていらっしゃることが大変よくわかった。科学研究費のほうは補助金で、しかも補助金を受けるその事業者は研究者なので、年度をまたぐのは、今のところ難しいので、繰越明許で少しずつ穴をあけていくというところかと思う。
 それでは、本日は、慶応義塾大学と、広島大学の関係者の方々から、それぞれの大学における不正使用防止等に関する取り組み状況をご紹介いただくことをお願いしている。
 それでは、慶応大学のほうからお願いする。

【大堀慶応義塾大学総合研究推進機構事務長補佐】

 お手元の資料に沿ってご説明をさせていただくが、7月10日に科学研究費補助金の機関管理の事例を報告する機会をいただき、その場での報告内容が主である。若干データ等、また組織等、当時と変わっていて、その部分だけ変更したものである。
 慶応義塾大学も平成19年度5月31日付で、文部科学省から研究機関における公的研究費の監査・管理のガイドライン実施基準に基づく体制整備等の実施状況報告書の提出の通知をいただき、そこにある項目、全機関に実施を要請する事項ということで、第1節から第6節まであるが、これに従って今検討をしている最中であり、まだ結論が出ているところと出ていないところがある。
 7月10日の時点とあまり変わってはいないのだが、配付資料のパワーポイントの最初のほうのページだが、これは、私どもの慶応義塾大学の、最初のほうの2ページから6ページに出ているが、これは組織の解説である。3ページ目に言葉になっているが、2003年3月に慶応義塾大学の総合的な研究の創出、推進、社会への還元といった一連の動きを加速させる組織として誕生した。それまでは、慶応義塾大学の総合的な研究を1つの柱というか幹としたような体制づくりというのがなかなかできておらず、この時点で整えたということである。
 1枚戻り、図というか、絵の体制図に、総合研究推進機構があり、センターが下に、左から研究推進センター、インキュベーションセンター、知的資産センター、先導研究センターと4つある。その上に研究倫理委員会、知財調停委員会というようなことで、これは不定期であるが開催をしている。
 これと、いわゆるオペレーションの組織として研究支援センターという組織がある。慶応義塾大学の政策立案等をこの総合研究推進機構でして、一応そのもとに、その方針に従って現場で対応をする。先生方に情報を提供し、やっていただくことはやっていただく。競争的資金についても情報を流し、それを獲得していただくような現場がこの研究支援センターであり、慶応義塾大学は5キャンパスにすべてある。私は、研究支援センター本部の責任者もやっており、文部科学省にはいつもお世話になっておる次第である。そのキャンパス以外にも先端研究教育連携スクエア支援センター、一貫教育支援センター、簡単にいうと、アウトキャンパスに研究キャンパスがあるので、そちらのほうでもやっている。下のほうは、高校以下小学校まで、慶応義塾は幼稚舎といっているが、その一貫教育でも先生方は研究するので、そちらの対応もやっているというような体制図である。
 今お話した内容が、4ページもそうであり、5ページについては、今申し上げたところで、研究拠点ということで5つのキャンパス、その下にアウトキャンパスとして新川崎タウンキャンパス、鶴岡タウンキャンパス、デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構、これはいわゆるスーパーCOEということでいただいた内容である。
 下のほうは、科研費の機関管理であったので、この科研費のところを少しクローズアップする形で、合計756件、20億9,400万円ほど今回は7月1日時点でいただいているということで、あとはグローバルが3拠点と、科学技術振興調整費が先端融合がいただくことになったということである。あとは、研究のデータである。158億円ほどの総額になっている。ここまでが慶応義塾大学の話である。
 その後だが、文部科学省からのガイドラインの整備について、今のところは、慶応義塾大学ではどのようにやっているかだが、ここの機関管理に関わる者の責任体系の明確化という、パワーポイントの7ページになるが、7、8、9がその体制をあらわしている。実際、ここは、どちらかというとガバナンスの問題を例示することが目的と理解している。いただいた機関内の責任体制の明確化ということで、競争的資金を機関の長が当たるものとするというようなことから、幾つかご質問があるが、そこでは、慶応義塾大学なりの答えは用意しているが、今回は、そうではなくて、これはオペレーションのほうの責任体制というようなことで紹介をさせていただいた。
 研究者の方からいろいろなご要望をいただいたときに、窓口となるのが、先ほど組織の図でご説明した研究支援センターである。それで、研究支援センター、これは各地区の支援センターになるが、先ほど申し上げた研究支援センター、本部から資金元とのいろいろな情報交換、または、支援センターから、いろいろと問題が生じた、代表して質問をしてほしいとなると、資金元といろいろと情報交換をさせていただくということである。
 それが横の流れであるが、縦のほうになると、支援センターで受け付けた上の会計書類、提出書類、そういう書類に対して、下の管財部、人事部、経理部、いわゆる法人部門との共同作業になってくるわけだが、ご提出いただいた内容についてのチェックまでは私ども支援センターで行って、あとは、法人部門で支払い、点検して支払い、または旅費を人事部のほうから先生方の口座に振り込んで対応する、振込は経理部、そのような連携をとっていただくことになっている。それを簡単に図で書いている。
 その後の8、9ページになるが、ここについては、いわゆる謝金とか、旅費とか。それから、この9ページは今回バージョンであり、前回はなかったが、物品等請求書による支払いの場合はこういうふうにやっているということで、ちょっとローカルの例であるが、私が事務長をしている三田研究支援センター、三田地区ではこのような流れをしているということでつけ加えた。
 その次、適正な運営管理の基盤となる環境整備である。ここについては、ある程度の慶応義塾大学としては整備がされているかと思われる。というのも、ここにあった機関としてのルールの明確化、統一化ということで、これは、そこにある「特定研究資金の支出に関する規則」というのを2007年2月、今年の2月に常任理事会で正式承認をして、今年の4月1日から発行となっているが、ほぼ各キャンパスでこれに沿って仕事をしてもらっている。先生方にもこれに沿って管理をしていただいている。
 これは、ここにあるように、文部科学省からの科学研究費補助金など競争的資金を中心に18種類の公的研究資金を対象としたということで、慶応義塾のこの名称はオリジナルである。
 現物を持ってきたが、こういう冊子で、この中に後半部分はこの上にある規則が載っている。一応こういう形で配付している。
 それから、11ページになるが、関係者への意識向上への試みということで、講演会の開催で、「公的研究資金の不正使用例を踏まえたコンプライアンスの在り方」に、山ざき教授にご足労をいただき、5つのキャンパスと遠隔中継を行って、ご講演をいただいて、その後、質疑応答をしたということである。
 それから、学内広報誌に、慶応義塾大学における「研究活動のコンプライアンス体制の構築を目指して」ということで、いわゆる研究担当理事等々の方の方針をこのような「OPEN」という慶応義塾大学の広報誌であるが、載せた。こちらは、今日ご出席の慶応義塾大学の末松先生と新日本監査法人の大久保先生のコメントも写真入りで載せさせていただいているが、村井研究担当理事のメッセージ等々、このような形で慶応義塾大学の体制としては考えていると、ご協力いただきたいというような包括をしている。
 それから、事例集の発行ということで、慶応義塾大学も不適切使用をかなり大型の指摘を会計検査院から受け、補助金返還、返金をしている。それももちろん盛り込んだものであるが、同じ過ちを起こさないための「研究費の不正使用事例集」ということで、2006月10月31日にこういう形で、この内容の中にいろいろと塾内の事例と、それから、各大学で起きた新聞からとった塾外の事例を入れ、これも各研究者に配っている。こういった形で、未然に防げるところは防いでいこうという試みをしている。
 ここについては、ここまでは何とかしているが、これからが、実際にどういうふうに整備していくかというところがある。職務権限の明確化といったところをもう少し議論をして整えなければいけないというところである。
 次の、12ページになるが、3の不正を発生させる要因の把握と不正防止計画の策定・実施状況ということで、研究活動に関する内部統制検討の体制ということで2つ上げさせていただいている。研究活動に関するコンプライアンス検討委員会というのを昨年の6月27日に立ち上げた。右側の部分だけが書かれているが、右側の事務部門統括塾監局長とあるが、主に金銭的なことに関しての検討をする組織で、あとは、その右側に検討とあるが、不正は定性的な不正なもの、そういうことについては、研究担当理事を中心に、各研究会委員長になるかと思うが、それを組織し、検討するということになる。
 それと、並行して総合研究推進機構の中に、先ほどの研究倫理委員会という組織があるので、こちらも定期的に開き、改ざんとかいろいろな問題があるが、そういうことについてのガイドラインの整備を討議している。末松先生も委員でご出席していただいている。
 それから、13ページになるが、研究費の適正な運営、管理活動ということで、納品検収センターを、信濃町キャンパスに2005年5月に設置した。これは、先ほど申し上げたことだが、科学研究費補助金で不適切使用のことがあり、再発防止策ということで、いち早く、当時の信濃町キャンパスが、すぐに立ち上げた。ほかのキャンパスについては、今年の4月から納品検収センターなり、それに類する部署、コーナーをつくって対応をしている。
 私が仕事をしている三田キャンパスにおいての対応であるが、その後、14ページから17ページであるが、納品の検収、管財部による総務での検収、これは、管財とか総務とかというようなことでわかりにくいのだが、出入り業者については管財になるのだが、宅配とか郵便で来るものに関しては、総務部というところが郵便を扱っているので、そちらに来た場合は、そちらで検収印の丸印を押すということである。そのデータをとっておくため、デジカメでその捺印をしたものについてPDFで保管している。
 それから、業者から納品があった場合、下に研究者から、要するにこの組織を通らないで、実際に先生方が立てかえ払い等々でやむを得ずご購入いただいた場合には、その現品なり何なり、お持ち込みいただいて対応するということである。
 その次は、大型のものの場合は、出張検収といい、担当の事務員が出張し、これと同じような対応をしているというような事例である。
 最後に、17ページであるが、支払時の必要書類ということで、こういった1から4のものがすべて必要であるというようなことである。
 以上が、ざっくりとした説明であるが、一応、研究支援センターという先生方と一番密なる組織ではなくて、やはり管理部門、管財部門等々が対応をするというところで、非常に牽制機能の効いた体制をつくれるということで、これは、慶応義塾大学の方針としてこのような組織をつくって対応をしている。
 次に18ページになるが、情報の伝達を確保する体制は、未整備である。現在は、私どもの総合研究推進機構で研究に関する告発等についてはすべて集約している。各地区の支援センターからの、私どもの本部のほうにあえてそういう対応をしているということになっているが、それで拾い切れているかどうかというところが非常に疑問なところである。
 その他のケースについては、危機管理関係部門のほうに行く。総務部であったり、ハラスメントの組織があるので、そちらに行く場合もある。という程度である。
 次に、モニタリングの体制だが、内部監査の充実の必要性ということで、慶応義塾大学に業務監査室という組織がある。こちらを中心に、通常監査、通常の経常費監査を行っていたわけだが、それにいわゆる科研費、これは、科研費は報告が義務づけられているので科研費は行っているが、科研費以外のCOEその他等々もこちらのほうで対応をするというほうに少し幅広くしている。それから、監査法人についても、これは不定期になるかと思うが、監査のご協力を求めているということがある。あとは、啓蒙活動ということで、先ほど申し上げたような内容である。
 次に、慶応義塾における機関管理の課題ということで、これは学内では統一的な見解ではなくて、私どもの見解になるが、研究者の意識の変化の必要性ということで、やはり事務部門のほうから見ると、やはり先生方に変わっていただかないと、なかなかお話をしても実行に移していただけない。非常によくおわかりになっている方と、全くというような先生方との温度差が大分あるので、ご協力をいただくように努力していきたい。
 大学としての責任体制の整備ということで、要するに機関管理等々になって、いわゆる先生方の個人の経費であっても、何か1つ事が起きると大学の責任体制ということが問われるので、その辺を自覚をするということで、組織としても各大学の構成員すべてにおいてそれが必要だと思う。
 機関管理としてのルールの徹底、先ほど申し上げたように、ルールはできたが、これは徹底しなければ意味がないわけで、このルールの徹底をどのように行っていくか、説明会等でやっているが、日々の窓口対応等が必要かと思う。
 それから、機関内外からの通報窓口の設置がおくれているので、急がなければいけないという部分。
 「計画性」と「透明性」の励行ということで、すべての研究費においてそうだが、やはり入金が入ってから二、三カ月の出費の出ぐあいというのは、どうしても今年度についても遅く、後半に支出が出てくるというケースが今年度も予測されるので、この辺を計画どおりに励行していただくということをお願いしたい。
 それから、社会的責任というのは、先ほど申し上げたようなことだと思う。
 最後に間接経費であるが、21ページとその後の最後のページになるが、これは、慶応義塾における間接経費の使用状況で、2年間かけてルールを改正した。すべて先生方の対応にフィードバックできる研究環境を整える体制を前提にさせていただいている。ただし、金額が直接経費とは違って、雑収入で慶応義塾の口座のほうに入ってくる、より管理部門の経費して計画性を持たせて支出するという見地から、ダイレクトに先生方のほうにキャッシュとしてはね返るような仕組みではない。ただ、最終的には、枠組みとしてはそういうふうな効果があるというような整備である。おとりになった先生方の地区に配付されるのは40パーセント、これは行くが、この一番右側にある大学経常費(研究関連)20パーセントというのがあるが、これは、競争的資金が、昨年、または3年間の平均よりも多くお取りになった地区にはおつけするというようなインセンティブ形式を導入して行っている。
 最後のページであるが、これは、私どもの使用状況である。これは、各競争的資金をいただいた関係省庁には、6月末までに報告をさせていただいている。

【石井主査】

 何かご質問があればどうぞ。

【大久保委員】

 2点お伺いしたい。1点目は、行動規範を今回ガイドラインの中に入れたのだが、それをどのようにお考えになっていらっしゃるのか。それからもう1点、この機関管理に関する責任体系の明確化ということで、いわゆる理事会とか評議会とか、もう少し上位レベルでのこの責任体系についてはどういうふうに位置づけられて検討を進めていらっしゃるのか。

【大堀慶応義塾大学総合研究推進機構事務長補佐】

 行動規範については、日常の議論の中には随時出てくるが、体系的に今後どうしていくかということは、まだ全塾的には詰められていない。これからになろうかと思う。
 それから、先ほどのご指摘のとおりであって、もう一つのご質問のほうは、今回もどちらかというと事務レベルの内容を取り上げさせていただいたが、その大学の組織としての上位部分については、すべての内容について、私どもの行政の決定機関としては、代表的な常任理事会という、担当理事がすべて出席し、慶応義塾長のもとに検討をすることが最低週1回あるので、すべての案件については、こちらに上げている。そこでもちろん議論し、決定されたものは執行するということは随時行っているので、それをきちっと図式化し、または体系化しということは、公開できるような段階ではないが、実質面としては、これはきちんとやっている。

【中村委員】

 いろいろなシステムをつくると事務量もふえると思うが、研究者サイドに対する負担、大分ふえたのか。それとも今までどおりあまり変わらないのか。

【大堀慶応義塾大学総合研究推進機構事務長補佐】

 多分ルールを読んでいただいてご理解が早い先生方はあまりふえていないと思う。ただ、ルールをどのように実践したらいいかということが直感的におわかりにならない先生方に対しては、やはり私どもの研究支援センターのサポート、並びに間接経費でつけていただいたところからそれなりのサポーティングスタッフで対応していただくという形になるのかと思う。

【中村委員】

 例えば、私たちの経験だと、納品から請求までの個々の品目の突き合わせ作業が頻繁に必要になる。それが実はかなり大変なのだが、これは事務でやっていただいているわけか。納品書が研究者の手元に来て、これを研究者自身が全部突き合わせをしなければならないのか、それとも事務がすべて点検をしていただくのか。

【大堀慶応義塾大学総合研究推進機構事務長補佐】

 5キャンパスあるので多少の温度差はあるが、研究支援センターのところに、やはり先生方並びにそれを代行される方にご提出をいただく。そこまでは、やはり研究室で行っていただくことになる。ただ、そこで、例えばそのチェックし、これが足りないとかこれが必要だと。すべて書類が整ったものから先のいわゆるお支払い等、それから業者対応等は、基本的には事務系列で行うということにはなっている。当然先生方並びに研究室でそういうことの責任を司っている方にご協力はいただくが、システムとしては、事務系列のほうで対応をすることになっている。

【石井主査】

 それでは、次に、広島大学のほうからご説明をお願いしたい。

【上原広島大学財務課長】

 広島大学におけるガイドラインに基づく体制整備の状況について、配付資料に基づきご説明する。
 この資料については、慶応義塾大学と同じように、7月の科研費の機関経理に関する研修会において説明させていただいた資料と全く同じものを、表題だけを変えて使わせていただいている。
 まず、1ページだが、広島大学の検討体制である。18年12月26日に不正対策検討会報告書が公表された後に、学内において、これらの報告書をオープンにというか、配信して、また、学内会議において、検討の方向性について諮った結果、学長からの指示で、教員と本部関係の責任者を加えたワーキングを立ち上げて検討をするということになった。
 そして、その結果、ことしの3月に学長補佐3名(教員)。本部の事務部の部長4名、そして監査室長、あと、部局の代表者として支援室長の計9名でワーキングを立ち上げて検討を開始した。
 一応検討のめどとしては、これ以前に科研費補助金に係る不正使用防止のための措置への対応が、研究機関ルールを改正した上で19年度から適用ということが決まっていた関係で、それへの対応が急がれたということもあり、後で触れるように、早期に実行するものと、もう少し時間をかけて検討をするものとに分けて対応することとしており、当面物件費の支出における適正化と、旅費、謝金の支出における適正化を中心に実施する事項として対応し、検討することとした。
 4月27日の中間報告を経て、5月10日付の学長決裁をもって広島大学の対応方針、そして早期の実施する事項についての取り扱い内容を学内に配信した。そして、5月15日以降、各部局の教授会等の要請に基づき、監査室が中心になり、教授会等で説明会を実施した。一応10部局に対して行い664名の参加があり、ほぼ全学部に対して説明を行ったという形になっている。また、そのときに出た質問を中心としてQ&Aを作成し、全学に配信している。そして、6月1日から実施するという流れになっている。
 対応方針であるが、3ページをお開きいただきたいと思う。
 ワーキングにおける議論によって次のような基本方針を立てて検討を行った。
 1つは、本来このガイドラインにおいては、いわゆる競争的資金を中心とした公募型の研究資金について、配分先の機関においてそれらを適正に管理するために必要な事項を示したものであるが、本学においては、それに限定せずに法人の全経費を対象とすることにした。これは、同一機関内において経費の別によってその取り扱いが異なるということは、社会的な説明責任が果たし得ないのではないかということと、また、現実問題として、経費の使用者のみならず事務処理上においてもその取り扱いが複数あるということでは、非効率、錯誤等が生じるということが懸念されたためである。
 それと、2つ目であるが、早期に実施するということで、できるだけ既存の組織体系、そして制度を極力生かしつつそれらを確実に機能させるために必要なものを加え、また修正していくことを基本スタンスとすることとした。既に部局を会計単位としてそこに会計管理者を置き、会計事務を統括させている。また、会計単位内においては、細分単位として経理単位を設定して、そこに経理責任者を置いて予算管理、実行を行わせるという形をとっている。そして、さらには、3月から事務職員が検収に関わる第三者検収体制を実施していることがあるので、そういったことも含めて既存の組織体制、制度の機能を生かしつつ検討していくということを2つ目の方針とした。
 また、3つ目としては、この研究費の適正な管理、監査については、広くリスクマネジメントと内部統制の一環として認識するということで、単純に不正経理の防止ということではないということの認識のもとに、抜本的な規定の改正と的確な運用を図るということと、教職員がともに実行することによって、ひいては予算の合理的かつ効率的配分と実行につなげていくということを目的としたいということである。
 そして、先ほど少し触れたが、既存の組織体制や制度を生かすということから、当面ガイドラインでの要求事項のうち、検討に時間を要する事項と、周知徹底やその取り扱いを改善することで早期に実施する事項に分けて検討するということをワーキングの方針として、それに基づいて検討を行った。
 4ページ目であるが、早期に実施する事項としては、2つ主なものがあるが、1つ目はガイドラインの第1節と、2つ目は第4節ということで、機関内の責任体制の明確化、そして研究費等の適正な運営、管理活動について検討するということである。
 まず、機関内の責任体制の明確化に関しては、最高管理責任者については学長とし、経費統括管理責任者は、ここでは経費総括管理責任者となっているが、これは財務担当理事を充てるということと、それから、部局責任者については、既に内部セグメントとしての会計単位、つまりこれは部局あるいはセンターであるが、そこに会計管理者、これは支援室長を充てているが、そういった規定上の定めがあるので、会計管理者をもって部局責任者とするという形をとっている。
 また、研究費の適正な運営、管理活動については、詳細については6ページ以降で触れさせていただくが、4点あり、予算の実行状況の検証については、既存の会計支援システムというのがあり、そこで会計単位、経理単位ごとに執行状況の検証が可能な環境が整っている。実際に各事務部門においてモニタリングが行われており、執行状況について常に確認をされているが、部局責任者である会計管理者の責任と権限において、さらに今後とも研究計画と執行状況の確認を行うことの徹底を図りたいと考えている。
 そして、発注段階での支出財源の特定についても、この会計支援システムの中で、請求情報を入力する際に、必ずこの支出財源を特定しないと入力ができないという形になっているので、それについても周知徹底を図るということにしたいと考えている。
 物品等の検収体制については、これは、既に18年3月20日から事務職員による第三者検収体制が実施されているので、その強化徹底を図るということで対応したいと考えている。
 また、非常勤雇用者等の勤務状況確認等の徹底であるが、これについても部局、事務職員が確認する体制を整えるというような形をとっている。後ほど詳細はご説明する。
 また、研究者等の出張計画の実施状況の確認、把握であるが、これについては、従来の出張報告書の見直しと、領収証等の提出を義務づけることで対応するというような、これらの基本指針を立てて詳細について検討を行ってきた。
 それから、5ページ目であるが、これは管理・運営体制イメージとさせていただいているが、当初、学内会議において、こういう体制で検討をしていきたいという素案を出したときのままであり、まだ検討が必要な内容である。
 基本的なつながり、下から報告が上がっていくような形としてはこのような形がなると思うが、特に不正防止計画推進部署のあり方について、若干この体制だと責任者が3つあるということで、中心となる責任者があいまいであるということの指摘もあるので、そのあたりを、現在は、経費統括管理責任者を統括責任者としているが、これは財務担当理事である。今のところの案としては、経費統括でなくて、統括管理責任者として財務担当理事を充てるというような検討が進んでいる。その上で関係部、あるいは関係理事との連携をもって不正防止計画推進部署を構築していくという形で検討中である。
 それから、早期に実施する事項の具体的な対応の説明に入るが、6ページをごらんいただきたい。物品等の納品検収であるが、本学においては、物品の発注そのものは会計規則で定める契約担当職にその権限があるわけだが、しかし、教育研究活動を円滑に行うために、本学においては、緊急かつ必要最小限なものについて、1個または1組が50万円未満の物品購入については、教員からの仮発注を運用上認めているところである。ただし、すべての購買データは、会計支援システムに登録する運用としていることで、登録時に支出財源が特定される仕組み、先ほど申したように、財源を特定しなければ入力できない形になっているので、仮発注についても、発注後、すみやかにシステム登録をすることがなければ支払われることはないという形にしてある。これによって、発注段階で財源を特定して発注を記録するという要請にこたえることになるのではないかと考えている。
 また、納品検収については、従前は、請求者である教員、教員は経理責任者となっているが、その教員のみの検収によって行っていたが、空発注などの不正行為の発生リスクが懸念されるということから、18年3月20日から事務職員による第三者検収体制を実施している。
 これは、フロー図を見ていただきたいと思うが、発注したものについて、取引業者から納品があった場合、まず事務部門において納品確認をして、納品確認印、下のサンプルのところにある角印である。納品確認、日付と、それから大学と、それから、この管理番号がどこの部局のものか、どこの場所で検収されたかがわかるようなものであるが、この納品確認印を押して、さらに、その発注者のもとで受領書を押していただく。その受領書の押印されたものをまた事務部門のほうに戻していただいて、その2つの印があるものを確認した上で部局事務から財務部の会計センターのほうに送付した上で支払われるという流れになっている。最終的な納品書の形としては、ここにあるサンプルの形に落ち着くという形になっている。このシステムをさらに徹底するということで対応したいと考えている。
 それから、謝金であるが、7ページをごらんいただきたいと思う。
 謝金の実施状況の確認について、ここのフローに書いてあるが、基本的には、謝金の実施状況確認については、部局責任者のもとで行うこととしている。また、雇用に当たっては、事前申請を原則として、作業開始前には、必ず条件提示と本人確認を事務職員が関与した形で行うこととしている。
 また、出勤表については、従来は研究室に置いていたりしていたわけだが、今後は、部局事務室に出勤表を備えた上で、事務職員のほうで毎回その作業実施者が出勤簿に作業時間を、ここでは様式をつけていないが、出勤表の様式の中に、本人が判こを押す以外にその日の作業実施時間を書いていただいて出すような形にしている。それを事務室に出していただいて、事務職員がチェックした上で部局責任者が最終的に確認するという形をとっている。
 フローで説明すると、まず、実施確認者、アルバイトを雇いたいという先生方がいたとすると、まず会計支援システムの謝金のところで雇用計画を入力していただく。いつからいつまで、雇用者の名前、所属等々、いろいろと書いていただく。それをもって部局事務のほうで確定処理をする。確定処理をした後に実施計画書、これは入力したその事業、雇用計画が印字されたものと、それと出勤簿をつけたものであるが、その実施計画書が出力される。この実施計画書を作業従事者のほうに提示し、確認をとる同時に、また、赤字で書いてあるが、事務部門としても、作業従事者に今回の雇用計画についてはこういう条件であるということで確認すると同時に、本人を確認するということをして作業に入っていただく。作業が終わった後、先ほど申したように、毎日、日々出勤表において確認を行って、例えば、1カ月なら1カ月の一連の作業終了後、作業従事者、それから実施確認者のそれぞれの確認、そして部局の責任者の確認印を押して、財務部の会計センターに送付し、支払うという流れになっている。
 それから、出張の実施状況の確認であるが、これについても、本学は、原則旅費は精算払いにしている。出張の実施確認については、事前申請、申告を徹底し、また、出張終了後において、事実確認のための交通機関や宿泊施設の領収書等の提出を義務づけるということで対応している。これらの提出がない場合は、旅費の支給はしないというくらいの厳しい形で、これを原則としているので、この周知徹底を図りたいと考えている。
 例えば、実際領収書を紛失したり、あるいは、領収書が取れないようなケースがあるかと思う。その場合には、例えば、宿泊者カード、宿泊(利用)証明、例えば乗車券であれば乗車券の写し等もその領収書にかわるものとして認めているところである。
 それから、ただ、この領収書を徴収する目的自体が、あくまで出張の事実確認のためなので、現在、航空運賃を除いて領収書による旅費の実費支給、精算は行っていない。実際問題として、JR在来線等の領収書の入手が困難だったり、あるいは、在勤地からの出張命令になるのだが、実際は、自宅最寄りの駅からの領収書が出てきたりということで、その辺の整備が今後必要かと考えている。
 それから、もう一つ報告書の内容で、事後において事実関係が客観的に検証可能なものと資料の中に書いているが、これについては、単に出張先の機関の名前を記すだけではなくて、例えば、本人以外に知り得ない、実際に行かなければ知り得ないというか、後々その報告書に基づいて確認が可能な形での記載内容にしていただくという形で、出張報告書の記載内容をやや厳しくしておるのと、それから、ワープロでつくる先生も多いので、その辺の自署、捺印だけは必ず自分でやっていただくということを義務づけている。
 それから、モニタリングであるが、現在、監査室というものが法人化とともに設置されている。学長直属組織ということで、公正かつ客観的な立場で検討・評価、あるいは助言・勧告等をしておるところであるが、不正の発生の可能性を最小限にするということを目指したその機関全体の視点から実効性あるモニタリング体制については、この監査室を中心として、幹事、監査人との連携による監査体制を徹底してより実効性のあるものにしていきたいと考えている。
 最後であるが、6月から始めて、現在さらにワーキングで検討をしているが、いくつかの問題がある。内部統制機能の維持、確実な運用について、やはり例外を認めてしまうと、そこからいろいろなものがあいまいになってしまうということで、形骸化、形式化させないような地道な努力、あるいは積み重ねが必要であるということ、あるいは、教員の中でも、説明会はしたが、若干その辺のところの意識があいまいな方もいるので、そういったところを研修、あるいは研修会あるいは説明会を通して意識づけをしていく理解を求めていくということが必要ではないかということである。
 また現在のところ、領収書の提出は事実確認のためであり,領収書による精算はおこなっていないが,今後,実費支給という方向になっていくのではないかと考えられ,旅費法に準拠した旅費規則の見直しを含めて、そのためのいろいろな条件整備をしていかなければいけないと考えている。
 また、最後の謝金という制度の見直しということであるが、研究補助謝金、あるいは資料整理謝金というのは、どうしても長期にわたるものが多い。そうすると、いわゆる雇用とそれほど変わらないものが多くなってしまうわけだが、そういったものを謝金でやるのがいいのかどうか、謝金ということによって、本人の社会保険、労働保険と、そういったものの欠落というものが出てくるのではないかということの疑念もある。また、事故が起こった場合の労働者災害補償保険法による保護の対象という問題も出ているので、そこも含めて、継続的なものについては雇用への切りかえも検討しなければならないのではないかと今現在、検討をしているところである。

【知野委員】

 出張旅費は原則、精算払いとされたということだけれども、出張自体に関しては、何かその必要性とか、その辺を事前に確認するような方式などはとられているのだろうか。

【上原広島大学財務課長】

 その必要性自体については、事務と違って先生方のそれぞれの研究の必要性ということもあるので、事務のほうからは、出張計画を見て、なぜ3泊必要なのかということは質問するが、中身についてああだこうだということはない。入力する段階で、確定入力するまでの間にそこで確認ができるので、そういったシステムの活用によって確認というか、そういう段階を踏んでいると理解している。

【末松委員】

 先ほどの慶応義塾大学の冗長な説明のときに聞くと戦いになってしまうので、広島のときに伺って大変申しわけないのだが、間接経費のその研究費を獲得した研究者に対するインセンティブの部分は、広島大学ではどう考えておられるか、簡単に教えていただきたい。

【上原広島大学財務課長】

 間接経費については、現在のところ、30パーセントが積算されているものについて、実は、昨年までは部局に配分する率が12.5パーセント、残りは、全学的に活用することにしていたのだが、研究者に対するインセンティブを高めるということもあり、19年度から50パーセントを返している。これは、部局長裁量経費という形で返しているが、基本的には、獲得した教員を中心とした研究環境、部局の研究環境を含めて、その中で部局長と話し合いながらやっていただくというような趣旨を踏まえて部局長に返している。

【末松委員】

 それに関連して、一般管理費についてはいかがか。研究費によって、間接経費という名前でつくものと、それから、プロジェクトの研究とか、JSTのものなども一般管理費という名前のものがつく場合があると思うのだが、こちらに関してはどういう基本的な考え方で動かされているのか、例を教えていただきたい。
 つまり、部局に対するフィードバック、あるいは、それを獲得した代表者に対するインセンティブ、それはどうなっているのかということについて伺いたい。

【上原広島大学財務課長】

 戻し方というか使われ方ということか。

【末松委員】

 そうである。

【上原広島大学財務課長】

 詳細について私も十分承知していないのだが、その事業を遂行するために必要な一般管理費については基本的には、部局のほうというか、研究側のほうで使っているというふうに……。

【末松委員】

 つまり、部局にフィードバックされるという。

【上原広島大学財務課長】

 そのように理解している。

【末松委員】

 それからもう1点、旅費のことも伺いたい。研究者が特定の目的で研究の活性化のために例えばアメリカに出張する場合に、複数の研究者のところに1度の出張で回る場合があるが、研究費と研究費の切り分けを明確にする場合に、1度日本に帰ってきてまた行ってこいとかというようなことをやられた例はあるか。

【上原広島大学財務課長】

 たしか、最近、そんな質問があったような記憶がある。担当から配分機関に照会をかけたところ、それは一旦戻ってきて、という話があり、その結果がどうなったのか…。たしかそれはやっぱりそこまで求めるのはおかしいのではないかということで、何とか一連の流れの中でできる方法を支給機関に確認してほしいというふうなことを、担当には言った記憶があるのだが、失礼、ちょっとその辺がどうなったかはっきりしないのだが・・・。

【末松委員】

 つまり、国のお金を有効に使うためには、効率的に使うことを考えることが優先されるべきであって、形式的な切り分けを優先するようなふうにはコマンドが動いていないと、こういう理解だろうか。

【上原広島大学財務課長】

 実際、どうなったか確認がとれていない。ただ、そういう事例があり、資金を出す機関からはそのような原則的な話があったので、そこは先生とのやりとりの中でもう一度確認するというようなことだったかと思うが・・・。

【小間主監】

 研究室を運営していた経験から、これが動くと直ちに困るという事例が2つあるのだが、6ページの物品の検収の必ず印を押すというのを徹底すると、4月から実際に予算の執行が可能になる7月までの間は研究室から購入ができなくなる。そこをどう解消するのかということと、もう一つ、出張の記録すべてを実費払いということでやったときに、ほとんどの研究室では、大学院生にフルにサポートはできないので、2人の旅費を3人で分けるようなことをやっていると思うのだが、それに対しての対応、これのやり方でどう整合性よくやるかという、そのことを伺いたい。

【上原広島大学財務課長】

 まず、資金の交付までの間のことだと思うが、本学では、交付前の執行について、一応資金が交付されたときには返していただくということで、大学の資金をもって立て替え払いをしている。

【小間主監】

 その額は、多分全部出すとすると年間の4分の1ぐらいを大学が立てかえることをしなくてはいけないのだが、それは可能なのか。

【上原広島大学財務課長】

 限定をしている。雇用、謝金とか、人件費とか、あるいは消耗品とか、それがなければ研究に支障が生じるようなものに限って。

【小間主監】

 消耗品は相当認めているのか。

【上原広島大学財務課長】

 基本的には認めている。だから、外国旅費とかのようなものは少し額が大きくなるので。あと2つ目は何だったか。

【小間主監】

 大学院生の旅費のサポートを、フルサポートではなくてパーシャルにシェアしてやるというようなことに対して、このやり方でそれを認めるとしたら、私が考えるには、2人の人にきちんと払い3人目にはその2人から分けてもらうように言わないと動かなくなると思う。この対応は、打ち切り支給ということを制度の中に入れるべきであって、3分の2でも払っていいという形を実行すべきだというのが答えなのだが、それは、ここでは、今はやっていないのか。

【上原広島大学財務課長】

 今のところは、やっていない。

【中村委員】

 非常によくできているのだが、現場で見ると完全な実行がかなり難しいところがあると思う。別の言い方をすると完全に実行すると先生方の教育や研究に相当食い込むのではないか。これは、立案には、実際の研究をやっている先生方に参画していただいて案をつくられたものか。

【上原広島大学財務課長】

 ワーキングでは、学長補佐が教員ではあるとはいいながらも運営、企画といった事務局に関わる立場であり、いわゆる部局の例えば若い先生とかを入れるという、そういった意味での意見が反映されているかどうかは、やや疑問かもしれない。

【中村委員】

 謝金を雇用にするということだが、実際上は、これは、学生のRAなども含めて、時間管理が実はきわめて難しい。ご存じだと思うが、人数が多いし、そういうことで、本当にこの雇用に全部して、毎日2時間ずつ雇用していくようなことでうまく回るのか。

【上原広島大学財務課長】

 ご指摘のとおり、そこが今ちょっと。ほとんどこれは学生なので、実際雇用とした場合に、複数の研究室、学部の中でも複数の場所で働いていたりする。その辺の管理が実際できるのかどうか、やるにしてもそれだけの事務量がふえるということもあって、実際には、今検討を一時中断している。その辺の本当にできるのかということの疑問点が出てきたということで、ただ、継続に検討はしたいとは思っている。

【中村委員】

 学生の場合、授業との重なりや、非常勤講師の授業が突然飛び込んだりと事務が把握できないことが突発するので、それを後で修正するようなことが頻発する。だから、この雇用の問題というのは問題が大きい。別の手法を考えないと大学にとって実行がす難しいのではないかと思う。

【石井主査】

 それでは、ガイドラインに基づく体制整備が各大学等の研究機関においてどのような実施状況にあるのかということについての報告を求める、その報告書の案について審議をする。では、まず事務局から説明を。

【清浦競争的資金調整準備室長】

 大久保委員のペーパーは。

【石井主査】

 この時点でやる必要があるか。

【大久保委員】

 もしよろしければさせていただきたい。

【石井主査】

 それでは、ここで。

【大久保委員】

 初回を欠席して大変恐縮である。今日、初めての方もいるので、少し自己紹介をする。私は、これまで、国立大学の法人化では18大学の担当責任者で法人化の支援を経験してきた。この3、4年間の間にも、大学の研究現場もかなり歩き回って、実態等を直撃して見てきた。そういう意味においては、あらゆる背景とか裏の側面ということを十分に理解しているという前提で少しコメントをしたい。
 前回の議事録を拝見し思ったことと、最近、いろいろな研究機関と個別に話をしてきたなかで、このガイドラインに対する皆様の理解に対して思った点について、所感を簡単に申し上げていきたい。議論に当たっては、ガイドラインの策定に当たって議論されてきた背景というものを十分に踏まえなければならないと痛感している。
 まず、そもそも研究機関における現状が一体どうなっているのかということについて、前年度の検討会では相当出てきた。実は、私もこれまで、いろいろな議論をしてきて感じるのは、先生方の中には、色々なお叱りをする方もあると思うし、他方で、事務サイド側のご意見・主張というのもある。極端なケースを申し上げると、私は、もう教官発注を認めるべきだという立場に個人的には立っているのだが、ある事務官に言わせると、先生方に任せるとろくでもないことになるから絶対だめだとおっしゃる方も中にはいる一方で、いや、それはむしろ事務の対応がわるいからやるべきだというような、まさに感情的な対立というのも現実的にあるようなところがある。
 この間も沖縄の大学院大学で公共入札の不正問題があり、委員として、関係機関へのヒアリングなどをして感じたことがあるが、もっと研究者と事務職員の間のコミュニケーションをしっかりとるべきである。何が問題なのかということをきちっと対応していくべきなのではないのか。どうも片側の当事者の言い分だけが声高に主張され、それぞれの意見が平行線をたどっているというのが私のこれまでの感想だ。
 このガイドラインができた後でも引き続き思っているところである。そこで、今、何をやるべきなのか、何が無理なのかということを、今の経済社会の状況ととの兼ね合いの中で決めていくべきではないのかということである。
 もちろん研究機関の特殊性ということも勘案していかなければいけない。個人的に、大学が、普通の企業とは全く違う点として、一番大きいのは、その経費の取り扱いである。企業の場合には、収入と支出のバランスをとっていくが、大学はあくまでも消費経済体でしかない。いわゆる支出の構造ということになってくるのだが、それを前提にすると一番のガバナンスは、予算を厳密に立てることが、大学にとってもっとも統制の聞いた経営管理につながってくる。いわゆる支出の目的合理性と、その実効性に関する裏づけとしての支出を組み合わせれば、それは成果とつながってくるため的確に評価することができる。ただ、これは現実的にはかなり難しいことも事実である。
 このガイドラインは、最近の企業あるいは社会の現象から申し上げると、まさに大学における内部統制をつくれと言っているような内容なのではないかと思うわけです。実際、章立てもそういう仕組みになっている。
 ところが、内部統制というもの自体に多くの方々の誤解があるのではないのかという点です。前回の議論の中でも、大学は不祥事を起こすところではない、企業は不正をするからそれを抑止するために必要だという議論もあったが、果たして、必ずしもそうか。最近多発するいろいろな組織の不祥事を見ると、そのようには思えない。
 もともとその内部統制の法制化議論というのは、会社法や金融商品取引法もそうだが、現場の従業員を縛りつけるために出てきた議論ではなくて、経営者自身の透明性を高めることによって社会の信頼を得ていくというのが実は内部統制が法制化されてきた背景なのである。世の中のマスコミ報道が大変な誤解をしていて、何かあるとすぐ3点方式のマニュアルだ、職務権限を明確にしろだとか、こういうことばっかりを言っているが、内部統制の制度化の背景や趣旨は全く違う。まさに経営者自身が、自分のやっている経営がどう透明であるかどうかを説明できるかどうか。これは説明することによって社会がその企業組織に対しての不信感を払拭していくということが背景にあるのではないかと。
 それと、もう一つ大きな誤解は、内部統制の構築というのは、不正を皆無にするものではないという点である。これは、実は、会社法の条文規定を1度ぜひごらんいただくとよろしいかと思うが、例えば遵法性のところについても、法令違反をなくせとは書いていない。法令違反を起こさないような仕組みの“体制づくり”ということを言っているにすぎない。そういう意味においては、今回のガイドラインの一番の目的は、郷原先生がしばしばおっしゃっているが、ムシとカビの議論の中においては、いわゆるカビの除去の目的が最大の目的であって、細かいものをシラミつぶしにつぶしていくという発想にどうも陥るところに、この発注・検収の議論においてもその極端な議論に行く傾向が私はあるのではないのかと懸念している。
 そもそも悪意の場合は、どんなに立派な検収システムつくっても、やろうと思えば幾らでもできると思う。これは、悪意は、もうこれはムシ的現象だから別の方策でしか対応がしようがない前提である。また、研究機関の特性をかんがえれば実態から悪意への対策ばかりにお金をかけることが必ずしも求められているものではない。
 そういったことを前提にこのガイドラインについてもう少し議論を進めていかなければいけないのではないかなと思う。では、内部統制対応とは何かというと、まさに一言で言うとリスクマネジメントだということである。
 リスクマネジメントにおいて、最も重要なことは、局所最適から全体最適を目指すということである。これは企業でも大学でも同じだが、局部的には非常によくしようとする。例えば、財務課の中に契約係とか出納係とかそれぞれ係があるが、それぞれがどういうふうにコントロールしたらいいかということを日々、各担当部署は研鑽して過去の経験を積み上げていって、それぞれの課、係は一生懸命やってくる。ところが、財務部全体を見渡して見てみると、果たして本当に組織全体としての整合性がとれてしっかりとした経営管理システムができているのかというと、必ずしもそうではないというのがたくさんある。これは民間企業でも同じである。
 例えば大学で言えば、財務部の取り組み、研究協力課の取り組み、総務部の取り組み、人事部の取り組み、皆さんそれぞれはしっかりできているのが、全体では整合性がとれていない。そうすると、その整合性がとれていないすき間、その組織と組織のすき間から問題が起きてきているのではないのか。まさに今、リスクマネジメントが求めようとしているのは、そういったすき間を埋めていくことで全体としての機能を果たしていこうということになるのではないかということである。
 (ウ)であるが、今回のガイドラインの一番要件で主張したかった点は、いわゆる形式要件より実質的な取り組みというものを最重視すべきではないかということである。では、その実質的な取り組みを重視するためには何をすべきかというと、ルールを形式的に定め、それを求めていくということではなくて、なぜそのものを守らなければいけないのか、なぜやるのかという目的、背景・趣旨というものを、きちんとした議論を学内で繰り広げていただき、それに応じた対応を図っていくということではないのかと。
 というのは、建前的には、これまでも会計検査院の検査もあって、これまでも、しっかりできていたはずである。ところが実質的にできていないところが露呈してきたのが今回のこういう検討会が開かれた背景だと思う。検査院の方がいらっしゃると怒られるかもしれないが、検査院でも検査手法がここ1年半ぐらいで大きく変わってきた。でも、それは、ルールは何も変わっていないのに突然検査手法が変わって、大学側が慌てふためいているという現実もあるわけである。大学が慌てふためくのは、まさにその社会的背景の中で何をやらなければいけないのかということをきちんと整理していかなければいけない。
 2ページ目の(エ)であるが、例えば、現実的に無理なこととやらなければいけないこともはっきり明確にすべきだと思う。例えば、全品検収を会計職員がするというのは、私は不可能だと思っている。これは、大学の実務をやってきて思う。もしそういう大学が、私の担当のところでもあるのだが、これはもう形骸化していると言わざるを得ない。
 なぜなら、例えば病院での皆さんのご苦労もそうだが、業者と一生懸命いろんなシステムを開発して、全部データ化を、業者との間においてもきちんとバーコードなどですべての商品を照合していくような膨大な手間隙をかけてなんとか電算化している。また、民間企業の場合には、仕入れる商品は、大体品目が定期的に決まってきているから、それを単純に反復的にやっていくことで、品目数を減らすこともできる。しかし、大学は、そもそも納品の種類が圧倒的に多く、そんなことを一つ一つデータベース化することは、現実的ではないし、特定業者と継続した取引もできない。
 ところが、何でもかんでも先生方たちが発注していいのかというと、これも議論が行き過ぎていて、これはある大学で法学部の先生ともやりあった結果、それなりのご理解をいただいた。いわゆる無権代理とか表見代理という問題があるが、では、先生方が発注を幾らでもしていいよということになると、では、その権限を超えて、今までそういう先生はいないが、今後、例えばその権限を超えた場合に、大学側がどこまで責任を負えるのかと。例えば、業務側から見れば、先生が発注したものはすべて大学の発注行為とみなすということになって争ったときにはどうかということで、これは弁護士事務所に私は見解をとったことがあるが、訴訟においては大学側の立場は極めて弱く、争うと負ける可能性が強い。事実、過去、簿外債務においては、多くの場合、ほとんど大学が払ってきている経緯もある。そうすると、大学をその予算をコントロールするという立場から見ると、極めて危険を伴うので、こういったところのバランスをどうとっていくのかを考えなければいけないのではないか。
 この後は、細目の議論に入っていくのだが、確かに前回のチェックリストは、これを見ると、何かこれをやらなければいけないのではないかということで、非常にネガティブな印象が出るというご意見に対して、私もそう思った。ただ、全体として、ちょっとガイドラインのポイントというものをはっきりとさせていくべきではないかと。
 例えば、きょうの議論の中の行動指針というものがほとんど、失礼、2大学ともあまり主張していただけなかったが、実は、今回、ガイドラインに行動指針を一番入れたのは、規則やルールをやたらめったに、つくっても、しょせん守れるものには限界があるということで、何を守るべきなのかというもう少し大きなところ、かといって建学の精神とかそんな大きな話ではなく、もう少し現実的な話で、もう少しわかりやすいものをもっとつくっていくべきではないのかと。その上でそのルールや規則というのがどうあるのかということを、もう少し指針を示していくべきではないか。
 例えば、私ども新日本監査法人も行動指針をつくっている。「あいさつをしましょう」とかを入れてある。なぜかというと、やはりその現場の組織風土、あるいは現場における具体的な問題をどう反映させていくのか、そしてそれを解決に結びつけていくことが不可欠だ。
 それから、2点目としては、実効性のあるルールの制定ということだが、基本的に、私は統一的なルールをつくれということではないと思っている、このガイドラインは。むしろ、それぞれの部局に応じた柔軟なルールの設定をする。ただ、これまでの多くの大学の多くの問題は、ルールが硬直化しているために例外が多過ぎて、むしろ実質的には例外的な取り扱いがすべてとなっていって、野放図になっていくということも現実的にあった。そうではなくて、あるルールや観光は全部表に出して、そのかわり表に出したものから逸脱したものは、これは徹底的に処罰をすることにすべきである。表に出さなければいけないものはきちんと議論をして、そのとおりやっていくことが重要なのではないかということをうたったわけである。それは不正防止対応計画も同じである。
 高先生も前回言っておられたが、まさにリスクを認識していないことが問題であって、今日の検討会をやっているということは、みんなリスクがあることがわかっている。何か問題がある。でも、今回手をつけたリスクというのは、長年大学で懸案になっていた事項に手をつけているわけだから、短期間で直るなどということはあり得ない。むしろ、それを3年、4年かけて直すのか、あるいは1年、2年でどこまで直すのか。その直すという方向性を外に示して社会から信頼を得るためには、計画をつくって、我々はこういうふうに段階的にやっているのだということを示すということが重要なのではないのかと。
 ということで、ガイドラインというものをもう少し、何か形式的な計画をつくらなければいけないとか、そういう形式的なものではなくて、何のためにやるかという議論が必要なのではないかなということである。
 3ページであるが、行動規範についても、なかなかご理解がよく進まなかったので絵を入れてみたが、一般的に不正が起こる場合には、3つの要件がそろったときに起こりやすくなると言われている。一つ目は、前任者も隣の研究者もやっている、だから自分もいいんだという、いわゆる不正の正当化理由の存在。次に、不正を犯す動機付けをさせることであるが、例えば、事務局に今回こういう資金が入ってきてどうしたらいいかと聞いたときに、“良きにはからってください。」あるいは、「先生何とかうまくやってください」ということがあれば、これはまさに組織的な動機を与えたことになる。そして、もう最後は、具体的な仕組みがいい加減であるということである。
 ガイドライン的に3の仕組みを細かくやっていこうという話もあるのだが、ここで一番重要なのは、今の大学で一番欠如しているのは、どちらかというと12の部分であって、これを改善していくための方策としては行動規範の策定以外にはないというのが、今回のガイドラインの目玉である。
 私もいろいろな不正の絡みの企業、あるいは組織をやってきて感じたところで、まさにこの行動規範の重要性を申し上げたかったのである。
 行動規範の位置づけというのは、建学の精神に対して、やたらめったに細かいルールと、その間をまさにつなぐ位置づけとしての行動指針というものを示すことが重要なのではないか。こういったことがまだまだ大学には理解されていなくて、極めて固い形式的なものをつくってきたり、麗澤大学が作っているサンプルをまねしてみたりということになっており、こういうことはよくないのではないと思っている。
 4ページの(ウ)だが、では、発注検収の問題というのは何なのか、ちょっと具体的な例を挙げてみたい。結局、この発注検収というのは、私は、教員発注、教員検収をやってもいいと正直思っている。では、この問題の背景にあることは何かというと、業者との癒着なのである。癒着というのは、そこに債権債務の貸し借りが生まれてくる。現実的に、過去、国立大学においては、相当程度の貸し借りが業者との間にあったことも事実で、今もあるかもしれない。では、この問題の本質は、業者と先生方の距離を遠ざけることによって、そこを社会的に信頼性を透明にしていくことではないか。ただ、その個々の業者と先生とのやりとりにおいては、有る程度は柔軟にやっていってもいいのではないかも思う。問題は、特定の業者とのあまりにも継続的、長期間にわたる取引を抑止することで、一定の規律を保つことであると思う。前年度の検討会における議論でも出たが、アメリカにおけるバジェット方式、今回の実施事項の例に入っているが、そんな制度なども考えたほうがいいのではないか。
 したがって、科研費のガイドラインがたくさん文部科学省から出ているために、大学側は、とにかく全品検収しなければいけないと、そのため、形式的にだけでも検収をしようと、某国立大学などでも、「検収システム」というのを作ったりしているが、よくよく見てみると何も今までと変わらず、形だけの検収システムになっている例があった。各大学ももう少しこの趣旨に立ち返っていただきたい。
 3番。では、何をやるべきなのか。もう少しガイドラインに対して正確な理解をきちんと研究機関側に伝えていくという努力をしていかないと、どういうチェックリストが出ても、とにかく形式的にこれを守らなければいけないと誤解される。そうすると、常に対立するのは、研究者と職員の対立構造ということになるため、解決に向けて前向きな議論が出てこない。むしろ、研究者と職員が机を並べて話し合って、何が問題なのか、その問題に対してどうするのかという議論する場を提供していくことが重要なのではないか。
 それから、もう少しガイドラインに対しても柔軟な適用が重要で、単科大学、あるいは中規模大学と東京大学や京都大学のように連邦制国家のような大学では、やはり段階的な適用が違うわけなので、では、どの時期までどういうことをやるべきなのかということについても配慮した議論をすべきではないかと思う。

【石井主査】

 大変貴重なご指摘に感謝申し上げる。というのは、まさにこれから検討をしようとしているこの実施状況報告書というものが、今、大久保委員がご心配になったような態度、あるいは理解を助長するものであったり、あるいは、逆にこちらがそれを誤解して別な案をつくって、ますます事態をおかしくしてしまうようなものであっては絶対にならないと私は考えていた。つまり、このガイドラインが一種の模範解答として理解され、そして、その模範解答に最も近い答えから最も遠い答えまでが選択肢として並んでいて、1番をつけると何点で、4番につける何点というような、そういう結果になるのを最も恐れているわけであって、そういうつもりで当局とはいろいろと議論をして、本日のこの2−3−1を用意させていただいた。
 しかし、これはあくまでも案であって、今申し上げたような根本的な問題を踏まえながら、ぜひこれを実質的にご検討いただきたい。ということで、清浦室長、説明だけでもお願いする。

【清浦競争的資金調整準備室長】

 資料2−3−1の前に、資料2−3−2であるが、前回の議論の中で、その報告書に関するコメントの部分を抜粋している。それから、石渡先生、長谷川先生からは、報告書に関してコメントをいただいている。中の詳細な説明は省かせていただくが、総じて言うと、今ご指摘のように、前回お出しした報告書がチェックリストのようであって、その形式要件だけを整えればどうだというのを助長しかねないということであって、それよりも、この最初のときに報告いただくものは、実際の大学の実態をいかに把握するかという部分に重きを置くべきかという議論だったかと考えている。
 それを踏まえて、資料2−3−1においては、大きく構成を違えている。まず、2−3−1の表紙のところで、この今回の調査の位置づけについて明確に書くというところを考えている。
 これは、ガイドラインから引いてきているが、もともとこの報告書自体がそのガイドラインにおける年1回に報告するというものに基づいて行うものだという点である。
 それから、(2)の特に2のところであるが、「各研究機関に提出を求める実施状況報告書は、体制整備等の状況をより具体的に確認するとともに、各機関における特色ある取組の紹介やガイドラインの見直し等にも活用できるよう、ガイドラインの項目に沿った記述により回答いただくこととしています。なお、全体的な取組の進捗状況の把握や傾向等の分析の基礎資料となる取組状況整理票及び体制整備等に関連する規程等を提出願うこととしています」と書かせていただいている。めくって、ガイドラインの中の構成、3ページ目以降を見ていただきたい。従前、少しチェックリスト方式に並べておいたものは、その整理票ということで後ろのほうに添付していただいていて、いわゆる本体の部分は、記述していただくというものをメインに置いている。
 それから、記載いただく際に、実際ガイドラインに書かれている部分、ガイドラインの趣旨というものを見比べながらお書きいただきたいので、そのガイドラインのどこの部分についてかということをわかりやすくさせていただいた。
 それから、書いていただくところの、もうほとんどすべての項目であるが、例えば、4ページ目の1ルールの明確化・統一化に剥けた取組状況についてという、下に細かい字でぽつが並んでいるけれども、この一番最後のぽつに、「ルールの明確化・統一化に当たっての問題点や課題がある場合には、その内容と今後の取組予定」と置いてある。これは例だが、こういう最高管理責任者において、その現状の大学の問題、課題、それから今後の予定をどう考えていらっしゃるのかというのを、その記述によって示していただくというところも盛り込んでいる。
 個々の詳細な説明は省略するが、前回の議論にあったものを踏まえて、18ページにおいては、その機関における特色ある取組、それから、特記事項として、ガイドラインに関する全般的なコメントやご意見等を自由に記載いただけるようなところも書いている。
 この報告自体がいわゆるマークシート的なチェックではなくて、実際の実態をどう機関が考えているかというのを、少し記述の部分が多くて恐縮だが、書いていただくというのが一番いいのではないかという案を出している次第である。

【石井主査】

 もうこの報告書案についてご審議をいただく時間はほとんどなくなってしまったので、こういうことでいかがだろうか。次回までの間にこれをごらんになって、各委員、いろいろなご感想、ご意見をお持ちになると思うので、それを事務局のほうにどんどんメール等でお申し出をいただいて、それを整理した形で次回の会議の準備、あるいはその構成の仕方の工夫をさせていただいて、できれば、これをそのまま2回目に、次回に出すということではなくて、そういうご意見を踏まえながら、またさらにこれをブラッシュアップ、あるいは改良することが可能であれば、これに手を加えたものを次回の会議に用意させていただくと、こういうような、一歩とは言わない、半歩ぐらいでも次回までの間に前進させるという工夫をしたいなと考えているが、事務局、どうか。

【清浦競争的資金調整準備室長】

 この報告書は、実は、11月の中旬にお出しいただくという全体のスケジュールになっているということを踏まえて、事務局としては、できるだけ早く確定して大学の皆さんにお示ししたいので、その様式のほうはできるだけ早いタイミングで処理できるようなものにしたいと思っている。できれば、先生方の、今日の議論の内容、それから見られて、コメントを1週間ぐらいでいただくという格好で。

【石井主査】

 今、私が言ったのはそういう趣旨である。

【吉川科学技術・学術政策総括官】

 そうすると、二、三週間後にもう一回会を開いていただけるのか。

【石井主査】

 できれば、そうせざるを得ないのではないか。

【吉川科学技術・学術政策総括官】

 そうしていただければ。

【清浦競争的資金調整準備室長】

 大学の皆様方には、もうまさにオープンでやっている議論の中で、書くべきところは見ていただきながら、大変申しわけないが、それが終わってお出しするという格好で。

【石井主査】

 科研費の申請書を大学から出す、提出していただく申請書の束の上にこれに対する回答を乗せて出してくださいという注文が今度の申請手続にはつくことになっているようであるが、下手なものをつけて出してくださいということになると、これは科研費の申請そのものの性格にも響きかねないと私は心配している。監督者的姿勢が、もしかすると、少なくともそういうふうに誤解されるようなものが見える報告要請を申請手続とセットにするとなれば、科研費というものの本質にもかかわりかねないと思われるので、無論いろいろ事務局あるいは文部科学省の立場として、どうしてもこういうことをしてほしいと、望ましいという条件はあるかと思うが、本当に科研費のその束を持ち込むときに、これの報告書の答えを出さなければならないのかという気がする。座長として言い過ぎかもしれないが。
 しかし、他方、きちんとした形のものを出していただくという必要もあるので、できる限り所定の時期に間に合うようにこれを仕上げたいという気持ちに変わりないので、大変申しわけないが、どうか、1週間後までに。

【清浦競争的資金調整準備室長】

 コメントについては、1週間後にいただければありがたいと思う。

【石井主査】

 これは、どうするか、メールアドレスは?

【清浦競争的資金調整準備室長】

 後ほど先生方に。

【石井主査】

 それでは、メールなり、ファクスなりでご意見をお寄せいただければと思う。
 なお、最後に私なりにつけ加えると、最後についている、このさっき言った模範解答らしきものが各項目の一番上に書いてあるこの案のことだが、これは各機関の審査をするためのものではないということを強調する文書を最初に書いてもらった。少し字が小さいので、これももう少し大きくしてほしいとか、あとは、この報告書の本体の赤字や青字で書かれているところは、私が事務当局に指示して、具体的にガイドラインの文章そのまま引用して各研究機関のきちんとしたご理解を求めた上で回答、記述をしていただくというために、ガイドラインの文章をしつこくここに1つ1つの項目について引用をした形に修正したものである。これによって、多少なりともガイドラインを何回も研究機関あるいは各機関における研究者の方々が読み直していただく。先ほど、大久保委員がおっしゃったような趣旨のものであるということをもう一度再認識というか、改めて認識していただく1つの助けにしたいと思ったからであった。実は、前回配られた原案では、事務局がこのガイドラインの内容をパラフレーズした形でずっと文章が書かれていたものであるが、それよりは、やはりもっとガイドラインの原文そのものをここに引いたほうがいいだろうと思い、こういう形にしてもらった案である。
 そういういきさつが前回から今回までの間にあったことをご紹介申し上げた上で、先ほど申し上げたように、1週間内にぜひ先生方のコメント、ご意見をお寄せいただきたい。
 (引き続き、石井主査より、審議できなかった報告書案について、議論する機会を
 近日設けることのお願いがあった)。
 それでは、何か事務局のほうから。

【清浦競争的資金調整準備室長】

 資料2−3−3にあるが、本日、競争的資金に関するホームページを見やすい形で少しまとめさせていただいたので、ご紹介させていただく。報告書の様式等もここからダウンロードできるようにしたいと考えている。

【石井主査】

 それでは、今回はこれで閉めさせていただきたいと思う。
 第2回目と第3回目のこの予定の間に入るという理解でよろしいか。11月ごろは。

【清浦競争的資金調整準備室長】

 できれば、今月末ぐらいにと思っている。

―了―

(科学技術・学術政策局調査調整課)