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研究機関における公的研究費の管理・監査に関する検討会(第1回)議事録

1. 日時
平成19年8月6日(月曜日)15時〜17時

2. 場所
三菱ビル9階 964、965会議室

3. 議題
(1) 検討会の設置について
(2) 検討課題(案)について
(3) 研究機関の体制整備状況の確認について
(4) その他

4. 資料
資料1−1   検討会の設置について
資料1−2 具体的な検討課題(案)
資料1−3 検討会の予定について(案)
資料1−4 競争的資金の適正な管理と制度改善へ向けた文部科学省の取組について
資料1−5 ガイドラインに基づく研究機関の体制整備状況の確認手法(案)
資料1−6 ガイドラインに基づく体制整備等の実施状況報告書(案)

(参考資料)
参考資料1−1   研究費の不正対策検討会報告書
参考資料1−2 研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)
参考資料1−3 研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)に基づく体制整備等の実施状況報告書の提出について
参考資料1−4 「ガイドライン−よくある質問と回答−」について

5. 出席者
  葦名 弘   KDDI株式会社 リスク管理本部 業務・コンプライアンス監査部長
石井 紫郎 東京大学名誉教授
石渡 朝男 学校法人二松學舎監事
郷原 信郎 桐蔭横浜大学教授 コンプライアンス研究センター長
佐藤 慎一 東京大学大学院人文社会系研究科教授
佐野 慶子 佐野公認会計士事務所長
末松 誠 慶應義塾大学医学部医科学教室教授
高 巌 麗澤大学国際経済研究科教授 企業倫理研究センター長
知野 恵子 読売新聞社編集局 編集委員
中村 栄一 東京大学大学院理学部系研究科教授
長谷川 正文 茨城大学理事・学長補佐・事務局長
配分機関
  小間 篤   独立行政法人科学技術振興機構 研究主監
渡邊 淳平 独立行政法人日本学術振興会 研究事業部長
事務局
  森口 泰孝   科学技術・学術政策局長
吉川 晃 科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官
戸渡 速志 科学技術・学術政策局政策課長
嶋倉 剛 科学技術・学術政策局調査調整課長
清浦 隆 科学技術・学術政策局調査調整課競争的資金調整準備室長

6. 議事内容
 冒頭、清浦競争的資金調整準備室長より、この検討会の公開について説明と挨拶があり、続いて森口科学技術・学術政策局長が挨拶を行った。次に清浦競争的資金調整準備室長より各委員の紹介があった。そして、本検討会の主査である石井委員の挨拶があった。

【石井主査】 私としてはファンディングのエージェンシーとか、あるいは大学の事務あるいは理事者側の方々だけでこの委員会のポリシーの具体化策が決まっていくということについては、若干の危惧がないわけではなく、研究現場、そして具体的には現在大学の理事者側と研究現場との間にもさまざまな形で問題が生じているというふうに仄聞している。
 そういう意味では、研究資金が研究現場にとって使いにくいとか、あるいは研究そのものを阻害するようなことがあり得るような案をここで何かつくるということは、悔いを千載に残すことになるのではないかと考える。特に、実験系の専門分野においては研究費の使用に関していろいろな形で我々のうかがい知ることのできない問題があろうかと思ったので、ケミストリーと、それから生命科学の研究者の代表として、中村、末松両委員にお加わりをいただいた。これについては一つよろしくご理解をいただきたい。

 さらに、吉川科学技術・学術総括官より、資料1−1から資料1−4について、清浦競争的資金調整準備室長より、資料1−5−1、1−5−2、資料1−6について、検討会の設置・検討課題について、これまでの経緯を含め、資料の説明があった。

【石井主査】 いきさつ、問題点、我々が取り組むべき点についてご説明いただいたが、私がこの委員、あるいは主査を引き受けた背景は、一番最後のところに出てくる、制度改善の取り組みをしっかりやっていかなければならないのではと考えたところにある。例えば繰越明許の実務一つ取ってみても、実際にふたを開けてみたら、私が聞いていたときよりも大分話がやっかいだったようで、某大学の学長先生から大分おしかりを受けた。
 そういう実務上の問題もさることながら、今パワーポイントの最後のほう、7ページの下に幾つか並んでいるが、実をいうともっと大事なのは、この欄に書かれていない、この欄外にある事柄であるのではないかと考える。
 例えば、アメリカのNSFなどのやり方を見てみると、予算単年度審議の縛りというのはファンディング・エージェンシーまでにしかかからない。そこから研究者に渡ったお金を研究者が年度を越えて使うことは、これは当たり前のこととして認められているという、そういう話を聞いているし、その他、年度の開始をお金が入金されたときからにするとか、そういうことはやろうと思えばすぐにでもできそうな話である。つまり、研究の年度と会計の年度はずれて当たり前という常識が、そういうものが向こうにはあり、こっちは財政制度上の縛りがそのまま学問研究現場を縛っているという、私に言わせれば本来、非常識がまだまだ続いているというか、その問題の指摘さえほとんどなされていないという現状であり、こういう問題をしっかりやっていくチャンスでもあるのだということで、私も引き受けした次第であるので、先生方はどんどん勇気を持ってそこのところをご指摘いただきたい。
 それが結局、今の究極的な話なのだが、その前の制度的なさまざまな、繰越明許の実務のやりにくさ等々も含めてそういうことがあれば、結局それは研究者に言い訳の余地を与える。要するに、研究の為なら仕方がないじゃないかという自己弁護が働いて、事態はちっともよくならない、ということになるのだ。
 そういうことを踏まえて、しっかりフォローアップの会もやっていきたいと考えている。
 報告書の様式については、次回に最終的にお決めいただくと。

【清浦競争的資金調整準備室長】 11月の中ごろにご提出いただくので、早いタイミングで研究機関のほうには示したい。次回ぐらいに決められるようにしたいとは考えている。

【石井主査】 一般的な状況、雰囲気等を踏まえて、どのような報告をどういう形で求めるのか、また、文科省の側からどのような調査をするのかということについて、とりあえず当面は議論を集中せざるを得ない。科研費等の資金の制度の改善そのものについては、遺憾ながら少し後に回していかざるを得ないので、主として、今、清浦室長から説明のあったような事柄を中心に、ご質問あるいはご意見を承りたい。
 最初に注文を言えば、例のガイドラインが大臣決定として出され、そして各研究機関にそれが渡っていって、これは時間的には去年度の最中に渡っていったのか。

【清浦競争的資金調整準備室長】 去年度の末である。

【石井主査】 当然、年度をまたぐお金の問題については、現にそれが実務に、多かれ少なかれ影響を与えているはずであるから、あのガイドラインが一体各大学等の研究機関にどういう変化あるいは事態をもたらしたのかということについては、いろんな断片的な話は私も聞いてないわけではないのだが、そういう意味では文部科学省としてどのような現状認識、ガイドラインのインパクトというか、よきにつけ悪しきにつけあったに違いない影響についてどう把握しているか。また、各委員におかれてはいろいろな立場で大学の研究現場の方、あるいは、同じ研究者でありながらコンプライアンスとか、あるいはガバナンスという点についての問題を専門的に研究している方もおられる。それから理事者側というか、当局側の立場で関係している方もあるので、それぞれの立場でそのインパクトというものをどういうふうに感じているのかということを、もし可能ならお漏らしいただきたいが、まず最初に文部科学省のほうで何か。

【清浦競争的資金調整準備室長】 ガイドラインが出て以降、年度が明けてさまざまな科研費関係の説明会とかいろんなセミナー等でガイドラインの話を説明したり、あるいは大学に実際に赴いて話をしたりする機会があるが、必ずしもそれの浸透度というか意識という点で、今データを持っているわけではないが、もちろん事務局の方々にはこのガイドラインというものがあって、このような仕組みをつくらないといけないということはかなり十分に認識していただいていると思う。ただし、実際の研究をされている先生方のところに、実際そうなっているというものが伝わっているかというと、必ずしもそうではないのではないかと見ている。
 それから事務局のほうも、もちろんガイドラインについては十分認識いただいているが、実際に、自分の機関でどういうふうに体制をとっていこうかということについては、まだ検討の俎上というところだろうと思う。多くの大学で、体制そのものについてどういう組織をつくっていいか、どういう計画をつくっていいかどうかというところで悩んでいると、その現場の先生方、事務局の方の声を聞くと、そういう状況ではないかと考えている。

【吉川科学技術・学術統括官】 2つ補足したい。
 1つは、11月の報告までに刺激を与えることで、特に先進的な取組を浸透させていきたい。関係の専門家の方にご協力いただき、現場に近いところで、ワークショップ等を計画してはどうかと思う。
 もう1つは、管理強化のガイドラインの実施に当たって、本来の目的を勘違いすることのないようにしなければならない。不必要に研究の妨げになるようなことを現場でどう排除するか、そういう視点も非常に重要なのではないかと思う。
 したがって、現場を訪ねている担当者にも、下手な管理強化に陥らないようによく注意するよう指示している。

【石井主査】 機関経理をちゃんとやってほしいんだという趣旨というのは、各大学等にご理解いただいているのか。あるいは、先生たちがもらってきたもので、どうしてこっちが汗をかかなくてはならないんだというような認識が、一昔、二昔前にはあったとも聞いているが、どんな感じか。

【吉川科学技術・学術総括官】 正式に大臣決定したので、このガイドラインを踏まえてやらないと競争資金の獲得に支障がでることがわかっている。その辺の議論で今さら蒸し返されるということはないと思う。もちろん、個々の職員の意識の問題は、浸透に時間を要するだろう。

【石井主査】 そのやらなくてはならないということは、要するに、上からひゅっと締めるほうについてはよくわかるんだけど、例えば繰越明許の申請手続きなんていうのは、とてもじゃないけどやっていられないとか、ちょっと壁にぶつかると、何か戦意を喪失してしまうとか。つまり、やるべきことというのは公金をきちんと管理することだけでなく、研究がきちんと行われるような条件を整えるということも同時にやらなくてはならない問題なので、そのセットについての責任感というのか、自分たちもそれについてきっちり汗をかかなくてはならないんだという、それがそろっているかどうかが問題なので、これからもいろいろ文科省の方々は、調査等、あるいは説明等に行かれるだろうが、ぜひその辺に注意をお願いしたい。

【中村委員】 この資料1−6は大分勉強させて頂いたが、細かいところについて、実は気になるところがたくさんある。第一は、回答項目が1、2、3と並んでいると、すべての大学は多分、みんな1にしなくてはいけない、1の項目を選ぶべきだと思うに違いないということ。これは、私がJSPSのPOをやっているときに、JSPSとして出した情報が、大学の現場の私に向かってどう曲がって伝わってくるかというのを大分経験した経験に基づくコメント。次にもう少し大きな点を取り上げたい。
 競争的研究資金の目的は、一定の税金を投入したら、その範囲でできる限り大きな成果を挙げるということが目標であることは明らかです。今回の規制の具体的な目的としては、さっき総括官から話があったように、要は0.05パーセント、5億円の不正があり、これをゼロしたいと言うことだと思う。ゼロにするためにはそれ相当のお金がかかるが、これにはどの程度、総資金の何パーセントぐらいお金を費やす予定かをお聞きしたい。これまでの国立大学では100円の使途を解明するために1万円の人件費を費やしてもやむなしとしてきたが、これは社会常識から考えるとおかしい。今回0.05パーセント、5億円のためにいくら、例えば20億円、100億円、総資金額の何パーセントを費やしても良いという予定なのか。そういう大枠はどこにあるのか。それがまず一番気になるところだ。
 もう1つは、このところ、私大とか国公立大の研究者に聞いてみると、すでに歪みが出てきている。例えばある関西の私大では発注・検収は全部事務がやるということになったが、実際には、試薬を頼んで現物が来るまでに2〜3週間かかる。その間、研究はストップし、またはすでに違う方向に行っているので、来たころにはもう要らないこともある。けれども事務が発注したものは絶対に買わねばならない、ということになった。これを二、三年やったらしいが、全く機能しないので廃止になったと聞いた。すると、今度は、研究者が注文して研究者が検収するということになったのだが、そうなると事務は何もやらなくなって、今度は研究者の研究時間がなくなってしまった。似たようなことは私の周りでもよく起きていて、少しこのバランスを取らないと何をやっているかわからなくなる。大学の事務組織の意識の問題に関わる実例が恐らくたくさん既にあると思う。
 このアンケートを見ていて感じるのは、大学事務系統の意見だけを聞くようになっているという問題点だ。現場の研究者の状況を直接文科省で聞く、大学はちゃんと現場の研究者の意思を汲んでやっているかどうか確かめる、また税金を投入した研究が最大限うまく行われているかどうか、などを現場から大学、更に文科省にフィードバックしてもらうような仕組みについても問うべきではないか。
 私立、国立の比較的小さいところの先生に聞くと、そもそも大学事務に研究費管理に関するアイデアがない、どうすればいいのかということをぜひ教えてほしいと聞いている。

【末松委員】 研究者のニーズを聞くということは非常に重要なので、そこは中村委員の意見に私も賛成である。この制度として早く動かさなければいけないことも理解できる。こういう公のところで、記録の残るところでぜひ実態を理解していただきたい点がある。例えば某funding agencyが行う監査などで、年度末に予算がどういうふうに使われたかを厳しく追及されることがある。3月25日に買ったマウスが3月31日までに使い切られていなければいけないとか、研究実態に合わないことをどうしてそうしなくてはいけないかについて、若手研究者に対して、我々指導者には説明責任がある。「それは単年度決済だから」と我々は説明するわけだが、研究の継続性を優先し、研究費を有効に使えるようにするのとは全く逆の方向の説明であり、各論的に突き詰めるとそういう話に必ずなるわけである。
 せっかくこのような委員会ができたのであれば、単年度決済主義の根本的な考え方を大きく踏み出して、フレキシビリティーを拡大することを真剣に考えるべきだと考える。先ほどの資料説明で年度越えの件数が60何件が500何件になったというのは、それ自体大変な努力だと思うが、科研費全体の必要件数から考えると誤差範囲の改善ではないだろうか。現状では配分機関の事務のレベルで、これはやっていいのかわるいのかと問い合わせると、文部科学省がどういうかわからないということで配分機関の事務は答えられない。我々の大学でも科学研究費の説明会というのを頻繁にやるが、事務レベルでは研究者サイドからの質問にはほとんど応じられず、、研究者のニーズはこうなんだけど、これはやっていいのか悪いのか、悪いならなぜ悪いのかというのがほとんど説明できないのが現状である。研究は継続性とか競争の問題があり、それを制度的に「3月30日や31日には研究をやるな」と言っているのに等しいというのが現行の制度である。そういう矛盾をみんながわかっているのにだれも思い切った踏み込みができなかった。
 我々のところはある研究費で痛い経験があったので納品検収センターというのを設置し、100パーセント納品検収チェックは可能であるという仕掛けをしっかりつくって、もう動き始めている。国民の税金で研究ができているのでそこは国会議員と違って、1円たりとも領収書のぶれがあってはいけないというのは大多数の研究者は理解している。しかしその一方で、研究の継続性ということを考えたらこんなに矛盾に満ちた仕組みはないので、そこを文部科学省が踏み込んで、ぜひきちっとした制度で配分機関での独自ルールを決めさせてフレキシビリティーの問題現場で是非を判断できるような仕組みをやってほしいと思う。
 一方、納品検収を完璧にやった結果、今どういうハザードが起きているかを触れておきたい。結果として伝票の数が天文学的に多くなり年度末には常識を超えた処理能力を要求されるようになった。一般の会社だと、電子媒体を使って効率的な経理をやったりとかが可能である。研究者サイドからシステム改革を提案したところ、事務サイドの反応は、それはわかるが無理なのだということであった。なぜなら、会計検査院が全部アナログ情報で検査を行うからだからだということであった。すべて紙だから紙で全部残しておかないといけないという論理は判らなくもないが、制度の整備にはこのようなアナログ情報を処理する人件費も嵩むわけで大きな問題である。従って、先ほどの年度越えのフレキシビリティーの制度化と現場決定主義の導入というのは、ある一定枠は必要かと思うが、ぜひお願いしたいところである。
 最後にもう1点。大型設備を購入する。特定のプロジェクトで買ったものは特定の目的にしか使えない。東京大学とか京都や大阪のように大きな大学だったらいいと思うが、貴重な税金を使って買った設備を複数の目的に使う――これを多目的使用と糾弾される。それはかえって税金のむだ使いではないか。消耗品でも同じことである。分子生物学の実験で誰でも当たり前に使うもので制限酵素というのがある。それをプロジェクトごとに全部のセットを別々に買って、「うちはきちんと切り分けている。」つまり、混合使用をしていないという訳である。昔はみんなで消耗品を一括して購入し、ちびちび使いながら節約してやっていた。したがって現在のような規制例が増えると研究コストが大きくなる。制度を遵守する目的でむだなお金を余計に使っている部分があるということである。そういうところのフレキシビリティーもぜひお考えいただきたい。

【石井主査】 今、最後に言われたので特に印象が残っているのだが、目的外使用、これは方々で聞く話だが、これは何とかならないのか。繰越明許が一つ、少し小さいながらも風穴があいたというので、来年度に向けてまたがんばっていかなくてはいけないわけだが、これはこれにしか使えないという、それは研究というものを考えたときに相当おかしな話だと思うが。

【森口科学技術・学術政策局長】 包括的にお答えする。まず、今、お話の出た研究費の使い勝手の悪さなどについては、我々も手をこまねいているわけではなくて、相当議論している。制約にはいろいろな原因があるが、一番大きな制約というのは法律に基づくものである。具体的に言うと、予算の単年度主義である。我々も法改正について議論もしているのだがなかなか難しい。このような問題は政治主導でやる必要があり、自民党の科学技術創造立国調査会でも議論を始めている。我々としても、先ほど石井先生が言われたように海外の状況も調査している。
 また、独立法人に一旦交付したお金については、例えばJSPSとかJSTだが、これは運営費交付金で出しているから、そこはかなり自由度がある。これは繰越についても基本的には制約はない。

【石井主査】 いや。補助金はだめだろう。

【森口科学技術・学術政策局長】 例えば科研費補助金は、JSPSから直接出しているわけではなく、国が直接あるいはJSPSを通じて間接的に出しているので単年度主義の制約がでてくる。我々も、法人から出たお金はかなり自由度があるのを、それを自主的に規制しているのであれば改善の余地がある。国が直接出すもの――具体的に言うと科研費補助金あるいは科学技術振興調整費の委託費については、繰り返しだが、単年度主義の制約がある。それをどこまで変えられるか、今我々も議論をしているところである。
 それから、機器の目的外使用の問題ついては、これは詳細に調べるが、我々も改善の努力をする。費目間の流用についても、できる限り制限を取り払っていく方向でいろいろ今議論をしている。また、法律は変えなくても、財務省協議という中でかなり制約を受けているものもあるので、そういうものについては財務省にも申し入れるなりしていきたいと思っている。今後も現場の声をいろいろ伺って、解決していく必要があると思う。一応、前の報告書で改善すべき点についてまとめてはいただいているが、さらに御意見があれば聞かせいただきたい。

【小間主監】 私はJSTの代表ということで出させていただいているが、同時に、私は三十数年大学にいて、研究者でもあったので、両方の立場から意見を申し上げたい。
 まず、JSTとしては、独立行政法人であるためにある程度自由度があるということを十分有効に使って、年間5パーセントぐらいの範囲内では、次の年に渡せるようにするというふうな運用をしている。それから、フィスカルイヤーとアワードイヤー、この違いをなんとか吸収しようということで、10月に採択したものはそこから、予算としては5年間のものだったら5年間出すということで、最初の年は半年分、それから4年たって残りの6年目にまた半年分という形で実際に運用しているので、限りなく研究費がもらったときから1年ずつという予算になっているが、そうはいっても、年度の切れ目というところはいろいろな制約でまだ十分にできていない。
 もう1つ、制度をがちがちに運用するとまったく動かなくなってしまうので、できるだけフレキシブルにすべく、我々のところではプログラム調整室という新しい制度をつくった。そこには研究者の経験者が5人入っているが、そこが研究費の適正な使用のチェックと同時に、もっとフレキシブルに使えるような制度の運用ができないというようなことの提案をいろいろしている。例えば、1つの研究費で大きな物を買うために、現実には何年かに分けるとか、あるいは消耗品費で後半は払うとかというような便宜上のやり方をしているが、それは好ましくないので、きちんと理由がたつのであれば、この装置は2つの研究費で半分ずつお金を出して使うというようなことも、制度をきちんとつくればできないことではないと思うので、そういう方向を考えていきたいと思う。
 それから、だれかがそれは適切だという判断をしなくてはいけないのだが、例えば1億円の装置を各研究室がそれぞれ持って、その研究にしか使えないというのでは非常に国費のむだ使いに結局はなるので、その研究のために必要な時間フルに使っても全体の時間の7割にしかならないのであれば、残りの3割の時間は、ほかの研究者が使うことも認めることにした方が良いと思う。それを、各研究者の判断に任せてしまったら全くどうにもしようがなくなるというのであれば、JSTの研究費の場合でしたらプログラム調整室のほうに相談いただいて、実態を見せていただいた上で、私の責任で、フルに使っても7割なら残りの3割の時間は他の研究に使ってもよろしいんじゃないかという、お墨つきとまではいかないまでも、第三者が認めた形を取るというようなことをしたいと思っている。
 あと、研究者とファンディング・エージェンシーの両方で一番悩んでいるのは、昨年のガイドラインの中の、例えばこういうことが考えられるという例のうち、それを実行しようとすると直ちに大学で困ってしまうと思われる項目があります。、その1つは、納入時に日付を全部きちんと伝票に入れ、後で変更はできないようにするということがあります。これを徹底するとなると、研究費が使えない4月から7月はどうするかとういうことが、実質的に大きな問題になる。、私もそうだったが、大学院の学生を抱えて研究室を運営していると、研究をとめることはできない。そうすると、4月から7月ぐらいまでの購入が全くできないという状況をどうやってカバーしたかというと、伝票をためておいて7月にまとめて払うというようなことを、ほとんどの研究室でやって、つじつまを合わせてきた現実がある。
 それから、さきほどJSTのやり方がしかられたのだが、これは多分、JSTの戦略創造推進事業というより、国の資金である振興調整費のほうの仕掛けが厳しく、私自身も研究所にいたときに、3月30日に買ったものについて、百何十万、これは適当じゃないから返還せよということを言われて、運営費交付金からも出せないし、非常に弱った経験がある。このようなことが起きるのは、翌年の4月から何ヶ月間研究費が使えなくなるということを研究者が想定して、4月以降の分までを買っているというケースがたくさんあると思う。特に継続の研究でやっている場合に、3月の末に多少、消耗品をたくさん買ってしまうというのは、これは認めるべきじゃないかと思う。ただ、制度上、5年間の計画の最後の年の残り2日のところで買ったものをどう説明するかというのは、これはまたちょっと別の問題になるのでむずかしいかもしれないが、少なくとも継続の間は、3月末に買ったものはけしからんということを非難すべきことじゃないというふうに思う。

【高委員】 たしか前の委員会では、ほんとうにこんなのを本気でやるのかという意見を述べさせてもらった。それは、そもそもここにできているガイドラインのいろんな項目というのは、企業を想定した内部統制の仕組みを大学にそのまま適用してやろうということだったと思う。企業の場合であれば、不正を働くリスクというのはかなり高くて、だからそこに相当、数億というお金をかけてかなりの人を投入して取り組んでもそれなりにペイする。でも、それでも上場企業はみんなふうふう言っている。それで、大学でもこれと同じようなことをやるのかといったときに、少なくとも私の大学は小さな大学だから、とても実現可能だとは思えないというような発言をしたときに、いや、大きな大学ではこれは対応できるという話を聞いたので、じゃあ、それでいこうということでここに落ち着いたんだと思っている。
 ただ、ここのガイドラインを見てやはり思うのだが、これは、あくまでも理想型じゃないかと思う。それで確認をしたいのだが、これ書面でもってそれぞれの大学の取組状況を報告してくださいといって、出してもらえるとは思うが、先ほど中村先生言ったように、一番いい答えを選んで出してもらうというんじゃ全く意味はないので、とりあえず1回目は、ありのまま報告してください、実態はどうなっているんだと。それを踏まえて、すぐに是正措置命令を出すとか、そうじゃなくて、一体どの程度までだったらできるのかというところを、1回把握してみることから始めるべきじゃないか。つまり、そういう前提に立ってやらないと、出てきたものを踏まえて現地調査をやって実態は全然だめだと、正直に言ったのが余計に厳しく、こんなのじゃとんでもない、おたくにはとてもじゃないけど研究資金なんていうのは提供できないという話になると、最初から理想を書いてくださいと言っているようなものになるので、とりあえず実態がわかるようなところで1回目はやらしてもらう、こういう合意でもってこのガイドラインを活用していくことは可能なのかなと思っている。

【郷原委員】 前回の研究会の中では、そもそも問題の根本は単年度予算主義、会計主義にあるんだ、この問題を解決しない限りはほんとうの意味の問題解決はあり得ないということで、たくさんの委員からそういう意見も出て、そして報告書の中でも第1節にその点は書いてあるのだが、この問題については、一応、将来的にはと書いてあるが、この1年たって何かこの問題の解決に向けての努力が行われたのかどうか。そっちの努力を全く行わないでいて、こちらは遠い将来のことだ、とりあえず単年度予算主義の範囲内で、それを変えないでやれることだけやろうということだけでは、結局、問題の根本的な解決にならないし、今、高委員が言われるような、非常に窮屈なところに窮屈な制度をほうり込んでしまうことによる弊害ばかりが出てくると思う。
 なかなか官庁間の横断的な問題について手をつけるというのは難しいかもしれないが、今、この国をだめにしている最大の要因の一つが、私はこれだと思う、単年度予算主義。それ以外にも手法の問題とかマスコミの問題とかいろいろあるが、非常に大きな要因について、ほかの省庁の問題でもいろんな問題が、この単年度予算主義に起因して発生している。そういった問題との共通性をきちんと認識しながら、そろそろ根本的にこの問題を考えてくれということをみんなで財務省に対して言っていくというぐらいのことをやらなければ、何回も同じことをやっていたって意味がないと思う。

【森口科学技術・学術政策局長】 先ほども説明したように、まさしく問題点の一つのポイントはそこだと思っていて、いろいろな動きをしている。やはりこういう役所間の問題でもあり、なかなか行政サイドで進まないとすれば政治主導でやってもらうとか、そういうことも含めて議論はしている。
 ただ、それは相当大きな、単年度主義というのは憲法にまでさかのぼる話なので、基本的にそれを変えるとすれば法律を変えないといけないわけだから、そこの議論も含めて、もちろん視野に入れてやっているが、それは大変なことではある。なかなかそう簡単にいくことではないと思っているが、そういうものも視野に入れつつ、議論はしている。これからもまたそういう議論は進めていきたいと思うが、ただ、一筋縄ではもちろんいかない問題であると。
 もう1回繰り返しであるが、事柄が2つあって、国が直接やるものはまさしくそれにダイレクトにかかわるが、一たん法人へ出したものについて、運営費交付金で出すと、そこから先はかなり自由度があって、これについては、先ほどJSTのほうからも話があったが、もちろんJSTとしての判断である程度、無制限にというわけにいかない部分はあるが、仕組み上は運営費交付金で独法に渡ると、それはかなり自由度がある。
 だから、1つの方向として総合科学技術会議で言っているのは、そういう競争的資金はすべて運営費交付金で一たん独法に出したらどうかという議論もある。ただ、それは予算上、運営費交付金というのはそう大きく増えないので、なかなか難しい点はある。そういう議論もあるのだけど、それはいろいろ問題もある。そういう議論もしている。
 いずれにしても、科研費もそうなのだが、国が直接そういうものについて、一つはそういうふうに、大きな話としては法律の問題でやる分、あるいは法律までいかないまでも、先ほどの繰り返しだが財務省協議の中で制約を受けている部分もあるので、そういうものは、これは法律ではないから、財務省と行政的に話をしても、ある程度できないこともない部分もあるので、そういうものについては今後、議論をしていく。
 いずれにしても大きな問題なので、我々としても今後、議論を進めていきたいと思っている。

【石井主査】 科学研究費では現在は補助金だから、これをもし交付金ということにするとなると、年度の問題はいいのかもしれないが、逆に自動的にマイナス1パーセントという係数がもし掛かってくるようだったら、これは元も子もないという問題もあるし、補助金のままどうしたらいいのか。補助金を受け取って、事業をするのはJSTなりJSPSなんだという、ファンディング・エージェンシーが補助事業者として位置づけられて、そこから研究者に配分されたら、そこからは年度の縛りというのはないんだというふうになればNSF的なやり方に近くなる。そこにどんな問題があるのかは、私も細かい制度的なことはわからないが、いずれにしてもこれは、何度も言うが、セットなのだ。当面はとにかく厳しくして、将来はバラ色のいい夢を見ようというのでは、話にならない。
 要するに研究者、それから大学の――大学といったって管理者的な人と実際にその仕事をやっている研究支援部というのだろうか、何かそういうところの実務をやっている方、そしてそこになれないで来た支援職員がまごまごして先生たちに怒られているという、大学の中でも幾層もあるわけだし、その上にファンディング・エージェンシー、あるいはまたさらに国がある。国もまた文部科学省と財務省があり、文部科学省の中にも幾つかあるのかどうか、それは知らないが、とにかくさまざまなところに軋轢というか矛盾が来るばかりで、伝票が増えるばかりだと。あるいは間接経費が行っているのだから、それで人を雇ってやればいいじゃないかというのだって、もしかすると不必要なお金であればそれはむだ遣いだ。その間接経費をほかのことに大学が使えるわけだから。そういうようなことを総合的に考えていかないと、これはほんとうに絵空事で、中村委員が言われたように紙の上の模範解答だけが出来て何もならなくなると。

【中村委員】 私も科研費配分についての仕事をJSPSでは大分やりましたが、その結果、やはり細かいところが大切だと思っている。書類の一つの文言が施策の全体像をだめにしてしまうというケースを見た。
 資料1−6を拝見し、前のほうは一般論が書いてあるが、11ページあたりからが我々研究者に直接関係ある内容が来るので、どういうことが懸念されるかということだけを申し上げる。
 まず第一に、この調査は研究機関全体を一本でやることになっているのだが、学部や部署によって状況が全く違うという気がする。このような一律の質問書は多分、無意味ではないか。
 今でも、先ほどの物品研修などの事務処理が先生方に降ってくるので、こんなに面倒だったら、研究などやらないほうがいいという方向にもなってきている。研究をやっても給料が増えるわけじゃないから、もうそろそろ研究はやめようか、と言うことである。一方で、立場上研究をやめるわけにはいかないという研究者は、いたし方なく雑務を引き受けるというような、そういう状況に立ち至っている現場の昨今の状況を理解して頂きたい。
 予算執行の状況をきっちり管理するということになるが、どの程度まできっちりやるかというのは、難しいところだ。私のところは自分で秘書を雇っているが、多くの先生は自分でやっているから、先生が全部予算執行の管理をやっている。鉛筆が一本何円まで全部を出納記録するのだからすでにかなり時間を取られている。これはさらに徹底的にやるとなると、研究者時間がますますなくなる。
 次、4の2発注段階での支出財源を特定している。というのがチェックの1になっていて、いかにもこれが一番いいということになっている・現実的には発注段階で支出財源を特定するのはかなり難しい。特に最近、ある研究資金で買った試薬や備品は、ほかの研究に使ってはいけないという規制も強まっているので、発注した後に用途が変わったら、もうこれで不正使用になる。試薬は使ったときに初めて財源が決まるというのが現実である。
 それから次、12ページの4、発注業務はすべて会計職員が行っているのが一番よいというような感じだが、これは先ほど言ったように、現実的には不可能だと思う。そうなると次、2−1「研究者が発注できる場合を明確に規定し、会計職員として任命している」がより現実的。しかしながら会計職員だからその分責任が増えるわけだが、たぶん責任に見合った給与を余計に払うことを考える大学は多分ないのではないか。会計職員に任命された職員は、職責は教育と研究、さらに会計の責任を負わされて、それでも給与も増えない。もうあほらしいということになると思う。
 私は昔からあちこちで申し上げているが、もう寺田寅彦の時代は終わったと。つまり、研究特に大型研究は、趣味でやっているわけではなくて国のミッションでやっているわけだから、それに対して国がそれなりの手当をするということが、制度として必要な時代となっている。教育だけやっている教員がいる一方で、教育と研究に加えて会計責任も持たされる教員が出てくるなら、それに見合った手当が絶対に必要だろう。
 次の「検収はすべて会計職員が行っている」というのも絶対に不可能だ。
 次に2−1のところだが、研究者が検収業務を行うことを明確にして、研究者が検収しているという、これも不可能だ。研究者が出張している間は物品納入ができないことになる。更に細かいことを言えば、科研費を授業しているJSPS特別研究員や博士課程学生をも会計職員に任命するのかどうかという疑問も生じる。現実にそぐわない質問事項である。
 14ページ、不正な取引に関与した業者への対応に関して少し違った観点からコメントがある。さまざま機関で指定納入業者みたいなものをつくっているところがあるのではないかと思う。機関指定の納入業者が決まっているというようなことあるのではないか。これらの業者と研究機関の関係はどうなっているのだろうか。
 次に15ページだが、人件費の問題だ。ここにおいては、例えば15ページの1−1「すべて機関で雇用、事務職員が直接本人に対して勤務実態を確認している」というのが一番望ましいようなことが書いてある。そもそも、例えばポスドクなどの研究というのは9時から5時でおしまいになるというものでもない。現実には裁量労働が適用されるべき職種である。研究委嘱のカテゴリーであり、これこれの期間中にこれこれの研究の成果を出してくれと言って雇用しているわけだから、労働時間管理にもともとなじまない。
 学生RAや若手のポスドクの給与は実際には奨学金・フェローシップのニュアンスがすごく強いのだが、これは何らかの理由で認められない。競争的研究資金で雇う学生RAや研究者は時間管理型の雇用から外すべきではないか。何百人もいる学生全員がどこにいるかを確認しろというのはもともと不可能なので、研究全体を委嘱することにして個々の学生に対する時間管理をやめるか、更に一歩進めれば奨学金にすべきだろうし、またポスドクにおいては、例えば裁量労働にするべきである。現状の時間管理雇用は現実には破綻しており、逆に規則に従ってポスドクの勤務時間を9時から5時までに限定するようなことやるならボディーブローになって日本のサイエンスが国際競争力を失うだろう。
 日本では以前は競争的研究資金に人件費が入っていなかったが、今は科研費でさえも人件費が入っており、修士の学生からポスドク、秘書までが雇われている。人件費の管理の仕方があまりに旧態依然としているために、これが事務的には非常に大きな負担になっている。委託費の雇用と人事管理は更に現実離れしている点が多い。この現状を放置したまま、実態調査をおこなっても現実の把握は難しいだろう。
 17ページ、教職員の理解度というのは、これは教員と事務職員両方なのか。事務職員そのものが研究が何かをわかってないので、教員及び事務職員、両方の理解度をちゃんと把握しているようにしていただきたい。大学での研究費事務取り扱いの根本的な問題点は、研究のことを本当に分かっている事務職員がいないために研究事務の実務がすべて研究者に来てしまうことにつきる。今回行うような調査は多くの場合、締め切りまで時間がないということになって、研究現場におりてこないまま、現場の実態を知らない事務機構が文科省の気に入るような模範解答を作りあとでそれを現場に強制的にやらせることになるというのが普通である。この点を文科省自身でよく気をつけて自ら現場研究者からの意見聴取を行うべきだろう。次回にアンケートの内容を決定するとなると、このあたり真剣に考えていかないと、かなり大変なことになるのではないか。

【高委員】 このガイドラインそのものはまだまだ議論する余地はあるのか。

【吉川科学技術・学術総括官】 当面はないと思う。もちろん、将来は、ガイドラインを改正する可能性はある。

【高委員】 これは先回の報告書に基づいてできたものだからもう1度確認するが、これはとりあえず行ったとしても、若干、修正は可能だろうけれども、基本的にこれを尊重するような形で行ったとしても、とりあえず事実をありのままに報告してくださいということで徹底していただくのはどうか。今、中村委員のほうから話があったように、それぞれこんなものは現実的にはあり得ないというようなものがわかれば、またそれも踏まえた上で、次回、このガイドラインの修正だって考えられるだろうし、あるいは、実際に達成可能なところはどこにあるのかというところも検討できるのではないかと思う。
 例えば不正防止計画を策定しているかという問いがあるが、多分、こういう計画を立てるところというのはほとんどないと思う。もし不正があったら、再発防止計画をどうやって立てているかというのは聞けるだろうけれども。なぜなら、例えば年度を越えてお金が使えるという実態があるとするなら、それは不正が発生するリスクがあるな、だからそのリスクに対してどういう措置をとるとか、こういうことの計画を立てられると思うが、全体がまだ見えない中でどういうリスクがあるのかというのを踏まえて計画をつくりなさいと言っても、多分、ここの段階ではまだ無理だろうと思う。
 言いたいのは、とりあえず実態はどうなっているのかだから、四角で取組状況というのがそれぞれあるから、そこのところにきちんと記載していただき、次回の監査等をやるときに生かしていくというような方針で考えていただけないだろうか。
 ちなみに、年度を越えてのお金の問題だが、私も以前、利用させていただいて非常に感謝しているが、3月の時点で余ったときにお返ししたいと言ったら、なんとか使ってくださいと言われた。それは理屈はわかるが、それ以降、やっぱり使いたくないお金でも使わなくてはいけないということに対して非常に抵抗を覚えて、それ以降、もう申請しないようにした。研究はやめたいと思わないが。研究は続けたいのでどこかからお金をもらってこなくてはいけないのだが、国がかかわっているところについては非常に責任も重い部分があって、しかも税金だから、それをなんとか使えというような形で要求されることに対しては、大変抵抗を覚える。だから、単年度主義の改めというのは早めにやっていただきたい。
 それを改めるとすると、さっき言ったように逆のリスクが当然出てくる。そこで不正を働こうと思えばできないこともない。だから、それに対して計画を立ててください、合理的な計画があるのだったらそういう運用もいいだろうとか、そういう新しい循環ができあがっていくといいと思う。

【知野委員】 今の関連で、同じような意見を持っている。最初、このアンケートを見たとき、これはかなり答えるのは容易じゃないと思ったが、逆に考えると、ガイドラインをつくったときにもアンケートをされてはいるが、非常に簡略なものであったので、実態調査を兼ねて全部、このまま答えていただいたほうがいいのではないかと思う。特に実施状況等の書き込み、自由記述欄などを設け、それを文科省側にもよく目を通していただくと、今後に反映させていく貴重な材料になるのではないかと思った。

【清浦競争的資金調整準備室長】 局長からの通知で、資料1−3の3枚目だが、ガイドラインにさまざまな事項があるが、この中でこめ印をつけたものを各機関にお送りしている。これは最低限の実施事項である。今回はもちろんガイドラインに基づいた体制を整備する最初のところであるので、まず、どこまでというところの議論であって、いわば責任者をだれにするとか、そもそもどういう部局で見るという、そこぐらいは最低限決めてほしい。そこも決めらないというところが出てきたときに、20年度のお金を文科省として出すのはやっぱり厳しいかという中の議論であり、少なくとも今度の11月までにこれがないと、ファンディングをするという意味で少し確認しなくてはいけないところは、最低限の体制のところに印をつけている。
 それ以外で、1カ所だけその体制以外のところで実務的なところとしては、研究費の適正な管理・監査のところで、発注・検収の業務について1カ所こめ印がついているけれども、これ以外は基本的には仕組みの問題である。これも科研費等、機関における管理というのを求めている中で、そもそも最低限これぐらいはと、今までも求めてきたものの延長線の中で、このガイドラインを踏まえてこのタイミングでここまではというのを示しているものであり、もちろん、今ご指摘のあった例えば不正防止計画みたいなものは恐らく一番ハードルが高いというか、なかなかすぐにできるというものではないと思う。
 それ以外の事項については、もちろん、ガイドラインというのは実現していただきたいというところではあるが、タイミングの問題でいくと、それ以外のところはまさに実態が、どのような進捗でどのような問題があるかというのを、我々もこの調査で確認させていただきたい。
 ただし、最低限というふうにお知らせしているところについて、やはりそこも決められないというときには、文科省でも少し議論する必要があると考えている。

【石井主査】 文科省の側から、これは最低限必要だという線を示すというのは、それは方針としていいのだが、それをやらなかったらどうするかというペナルティーまでは何もまだ議論されてない。むしろ、できないのならどうしてできないのかという理由、あるいはつくることが不適当だと思っているからしないという答えもあり得るかもしれないし、そこを実態把握をすることが先決だという姿勢は示さないと、模範解答的選択肢にチェックするというようなことで、実態とかけ離れた括弧つきの報告書なるものが幾ら集まっても、これはあまり意味がないのかもしれない。
 皆さんの今日の発言を伺っていると、そういうスタンスというのか、こちらから報告という言葉がいいのかアンケートというのがいいのか、とにかく実態はどうなっているかということを聞くことだ。ガイドラインというのは、ある一つの原則を持って、こういう姿が望ましいという一種の規範的な要素を含めたものとして出しているわけだが、その中には、必ずその大学等の研究機関の実態に合わせて一番効果的なものをつくってくださいというお願いをしているのであって、画一的なことを要求しているわけではないのだ。
 例えば研修体制といっても、全学一律のものである必要があるのか。実験系とそうでないあれとで違っても構わないわけだし、実験系については、どういうふうにそれを現実に合わせて下へおろしていくのか、大きい大学であればあるほど複雑というか、その問題は微妙になる。恐らく同じ学部でも学科というのか、あるいは研究をしているその部門によって研修の問題というのは違ってくるだろうと思う。それから、例えば鉛筆だってプリンターのインクだってそうなのだ。この金で買ったからこのレポートにしかそのプリンターを使っちゃいけないのか。ほかのプロジェクトについてやるときには、まずコンピューターも取りかえなくてはならない、あるいはインクのカートリッジを取りかえて、Aプロジェクト用のインクをはずしてBプロジェクト用のものをセットしてやるという、厳密に言うとそういう話になりかねない。

【中村委員】 それを現実にはやっている。

【石井主査】 やっている?

【中村委員】 JST所管の委託費ではプリンターとそこで使うトナーの資金源が違うと文句を言うと聞いている

【石井主査】 だから、それがほんとうにいいのだろうかという、根本的な問題があるわけだ。
 だから、我々として当面何をしなくてはならないかということ。そして、それこそ最低限、何をしっかりきちんと守ってもらわなくてはならないかということと、実際にほんとうにこういう問題はどうしていかなくてはならないかという問題の把握だ。問題点の把握をしていくと同時、並行的にやっていかなければならないので、その辺を自由欄、あるいは実状をきっちり説明する欄を用意する必要があるのではないか。選択肢へのチェックだけでこの大学は平均がいいとか、1についているか2についているか、1が一番多いとか、そういう数量的な結果だけを並べることになるのが一番恐ろしい。表向きの情報だけでやってみてもしようがない。

【末松委員】 先ほどの高委員の発言とも関係するのだが、資料1−6の実施状況報告書(案)という、これがアンケートなのか何なのかということだが、ぜひお願いしたいのは、せっかく今までの研究費の不正対策検討会報告書にもあるように、「将来にわたって単年度会計主義に起因する問題の改善に取り組む」と書いてあるわけだから、この報告書なり何なりをほんとうに使って大学研究機関にもし報告なりをあげてもらうのであれば、単年度主義に基づくものの矛盾点について議論されて、将来こういうことが検討されている、その場合にどういう範囲で年度を越えて使えるか、あるいはその制度を入れた場合にこういうハザードが生じ得るので、それはこういうふうに防止すべきだといったようなアイデアを各研究機関に挙げてもらう欄をつくっていただくべきと考える。締め上げるばかりではなくて、お金を有効に使うためにどうしたらいいかということがより重要なので、そういう意見をくみ取れるような仕掛けはぜひアンケートに大々的に入れていただいたほうがいいのではないかと思った。

【石井主査】 少なくともそういう態度を示すということが、正直な調査結果というか事実の把握ができる、問題点の把握ができることなので、取り締まりのほうだけでやると、貝はふたを閉めてしまう、からを閉じてしまうだけだというのは、これは古今東西、どこでも同じことじゃないだろうか。

【佐野委員】 研究という場ではなくて会計監査という、実務というか監査という立場にいて、こういうアンケートだとか監査上のチェックリストを埋める作業とか相手に書いていただくということについて結構機会があるが、この1−6をめぐった発言の中でちょっと気になったのは、用語の使い方が受け手にとって違うのかなと。例えばガイドライン、検討会報告書をつくったときには、たしか研究者と事務職員という言葉の使い分けも非常に気にしていた。先ほど教職員という言葉が出てきて、それに対しては、研究者にばかりそういうことを要求されるのかと、そういった発言もあって、これには事務職員を含んでいないような書き方になっているということで、用語一つを取っても、現場にいる方の受けとめ方と、それからこの検討会報告書をつくったときの思いは、十分伝わってないのかなというようなことがあるので、こういうチェックシートなりアンケートをつくるときには、その思いが作成者側と受け取り側で齟齬が生じないような工夫を何かしていただけたらと思った。
 それからもう1点、人件費については特段、リスクとして架空人件費が多いということの裏返しで勤務実態があるかというようなことがあったわけだが、現場から見ると、ある程度奨学費的な性格もあるんだと。本音の部分かとは思う。そういったところが、国の税金を使っての研究費に対する報告責任をどう果たせるか。報告自体、正しくしないといけないわけだが、その辺の実態がいけないのか、それとも実態を容認せざるを得ない制度になっているのかというところも、少し書き方を工夫して、実態がわかるような形式でのチェック、アンケートというか、様式にしていただけたらと思った。

【高委員】 金融庁が一番最初に金融検査を始めるときに何をやったかというと、これを達成してくださいということじゃなかった。例えば頭取にインタビューしたときに、頭取が「うちの銀行には何も問題はない」と言ったら、これは大変だといって徹底的に調べた。そうじゃなくて、うちにはこういう問題とこういう問題があると。そういうことをきちんと認識しているということが重要で、それに対してうちが今持っている経営資源から考えるとこことここには今取り組めるけど、あとのものは数年先になるとか、要するに、そういう認識を持った人が上にいたときに、この金融機関は大丈夫だというふうに判断したのだ。そうやったことで、金融機関はまた監査の協力も得られるようになった。
 だから、金融庁のような検査をしてほしいとは言わないけれども、文科省としても、最初の取組としてこれはできているのかというやり方より、実態を把握して本人がちゃんとわかっているかどうか。下がみんなできていると言っているからできているというような説明をするのなら、実はそこは是正措置を講じなくてはいけないというような認識でアプローチしていただきたいと思っている。

【小間主査】 12ページの4のところは、研究の現場としては容易にはチェックできないところだと思う、本来、この不正対策をするときの基本的姿勢は、一律にこういうやり方を徹底するというのではなくて、それぞれの機関に責任を持ってもらうけれども、やり方については任せるという、そういうことであったと思う。また、最低限、実施を求めている事項というのも、ここのチェック項目以下のことを求めているのではなくて、発注・検収業務における当事者以外の者によるチェックを行われるシステムの構築に向けた取組をきちんとしているかどうかということを聞いているだけで、この中から選べという項目が決まっているわけでは全然ない。
 だからこれに4というチェック欄をつけて、上にはないけれども、自分の機関ではこういうやり方でやっているということを書くという、そういう仕掛けにしていただけると、チェックとアンケートの両方を兼ねた形になるのではないか。

【石井主査】 全くそうだ。ガイドラインというのはまさにガイドするものであって、これから一体どういう問題をどういう段取りで、どれぐらいのスパンをかけて取り組んでいくか。それが片方で、先ほどから出ている単年度主義であるとか、あるいは目的外使用というのが非常に厳しいとか、そういう問題、つまり究極的には合算使用を認めるというところまでいけば、そこの問題は自動的に解消するわけで、片方でそういう制度改善あるいは運用改善がなされていくということで、いわば不正がだんだん減っていく、制度も合理的なものになっていくという、そういう2本の線がうまくかみ合わないとだめなので、これはとりあえず上の厳しいほうだけやっておくかという感じがどうしても前に出ているという問題が、やっぱり根本にあるのではないか。
 だから、また最初に戻るが、改善していくというのは何のために改善するのか。研究はもう面倒くさい、やめようなんていう、これは全くの逆の話であるから、そこはきちんと研究の条件を保証しながら、そして国のお金をきちんと管理する、その2つのテーマは、制度を改善する、運用を改善することによって、ずいぶん矛盾なく可能になるはずだろうと思う。それを基本に据えたアンケートというか、名前は報告書でもいいが、少し練っていただきたい。

【末松委員】 今回の場合、文部科学省の競争的資金が調査対象として全部リストアップされている。小生自身が所属する厚生労働省の委員会でも厚生労働科研費を対象として、新しいファンディング・エージェンシー設置の議論が始まっている。厚労省は、今まで多くの場合、研究の不正活動などのガイドラインについては、文科省が大変な時間と労力を使って取り纏めたものを、大抵、右へ倣えで設定してきているようだ。したがって文部科学省からfunding agencyに一度渡った研究費に関して単年度会計主義の廃止が行われればそれは非常にありがたいことである。一方、逆に最悪のケースは、そのようなフレキシビリティーが考慮されないまま、各省庁ごとに個別に監査が入るという場合である。そこは省庁間で連携を取って、文部科学省のイニシアチブでこういうものをつくって、そこで1回きちっと監査ができていればOKというふうになっていくのかどうか、お聞きしたい。その辺についての考えは何かあるのか。省庁ごとの対応などは我々研究者は絶対に容認できない。1度そういうエージェンシーに落ちたものが、ある程度の自由度を持って使えるという方向に行けば、それは非常にありがたいことだ。

【吉川科学技術・学術総括官】 普通に考えると、総合科学技術会議というものがあるわけだから、そこからなんらかの指示があって、各省が整然と実施するというシナリオで展開すれば、ご指摘のような懸念は生じなかったであろう。本件に関しては非常に簡素な形で各省への指示はあったが、ガイドラインのような、各機関の体制整備を含む包括的な話は来なかった。事実上、文科省がその役割を担ったともいえる。しかし、文科省のほうでどう言おうが各省はフリーハンドを持っているので、ご懸念のようなことが起こらない保証はどこにもない。常識的には起こらないとは見ているが、委員のご懸念はそういうところに原因がある。要するに、今回のガイドラインはあくまで文科省の競争資金の範囲内にしか適用されていないのである。もしご指摘のようなことが本当に起こりそうであれば、総合科学技術会議のほうでケアしていただくように、こちらからもお願いしたいと思う。

【石井主査】 あさって、実は総合科学技術会議でプログラムディレクター会議に出ることになっている。文部科学省のガイドライン等がデファクトスタンダードでほかの省庁にまで及んだときに、これがマイナスの面というと言いすぎだとして、片面だけが提示されて、肝心の魂が抜けてしまうとほんとうにひどいことになると思うので、うまく機会をとらえて、その会議の最中に総合科学技術会議の議員の方々に説明をしてみたいと思う。それが効果を持つかどうか、そこはわからないが、問題点はよくわかったので努力してみたいと思っている。
 意見等がなければ…本日はこれで。何か次回等のロジスティックスの話を。

【清浦競争的資金調整準備室長】 次回の開催は9月の上旬ごろを予定している。
 それから、本日、ご議論をさまざまいただいたので、それを踏まえて必要な修正をしたいと思うので、特に報告書の様式等について追加的にご意見がある方は、ご連絡いただければと考えている。

【石井主査】 どうもありがとうございました。

―了―

(科学技術・学術政策局調査調整課競争的資金調整準備室)


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