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科学技術理解増進政策に関する懇談会(第4回)議事要旨

1.日時   平成17年4月27日(水曜日) 16時〜18時

2.場所   富国生命ビル28階 第1会議室

3.出席者   【委員】
 有馬座長、伊藤委員、佐々木委員、高柳委員、千野委員、遠山委員、中川委員、毛利委員
【招聘者】
 金丸 フューチャーシステムコンサルティング株式会社代表取締役社長、早川三重県教育委員会事務局高校教育室高校教育グループ指導主事、中川 愛媛県立松山南高等学校教諭、松尾 千葉県千葉市立加曽利中学校校長、浦田 熊本県菊池市立泗水中学校教諭、宇野 岐阜県本巣市立真正中学校教諭
【オブザーバー】
 國谷 独立行政法人科学技術振興機構理事、北村 独立行政法人国立科学博物館理事、長崎 文部科学省国立教育政策研究所総合研究官、小倉 文部科学省国立教育政策研究所総括研究官、今井 文部科学省科学技術政策研究所総括上席研究官
【事務局】
 有本科学技術・学術政策局長、河村科学技術・学術総括官、榊原基盤政策課長、佐藤基盤政策課企画官

4.議事    
 (1) 事務局より招聘者及び出席者の紹介後、配付資料の説明が行われた。
 (2) 議題1「企業経営者から見た学校教育」について、金丸 フューチャーシステムコンサルティング株式会社代表取締役社長より資料1−1、1−2を説明後、質疑応答が行われた。(○委員、△事務局等)

 
金丸代表取締役社長) 問題提起を兼ねて自己紹介をすると、生まれ、育ちは、大阪だが、両親は鹿児島出身ということで、中学のときに鹿児島に転校することとなった。おかげさまで関西と九州の両方の文化に触れるとともに、都会と田舎を両方知ることができた。また、高校のときに文系理系の適性検査を3回ぐらい実施したけれども、理系と文系のちょうど中間ぐらいであった。数学とか物理が好きで、また、結構弁も立つ方だったので、本当なら理系と文系の双方を行き来できればいいなと思ったが、この時点で分けなければいけないということで、何となく、特に数学が得意な男子であれば理系に行くのが自然だというような流れで、非常に曖昧な形で理系を選択し、その延長で大学は工学部に入った。私は、現在600名弱の社員を抱える、技術をベースにした会社を経営している。社員の90パーセント強がコンサルタントで、そのうち70パーセント近くが理科系である。理科系の出身で一番多いのは、現在東大の工学部の大学院生が一番多く、次いで早稲田や慶應の大学院の工学部の人間である。その人たちに、私は自分の経験を通じて(理科系出身者にも)いわゆるビジネスや財務会計など、経営に必要なスキルを徹底的に教育し、理科系の人が経営のコンサルティングをするという会社を牽引してビジネスを行っている。
 今、少し触れたが、私どもは会社として企業の経営戦略に占めるITの割合が非常に重要な指標であると考えている。金銭的な面だけでみても、企業の経費における断トツ一位がIT経費であり、そうすると、そのIT経費を単なる事務効率・業務効率のために使うだけではなく、いわゆる企業競争の武器にたり得るような仕組みをつくるにはどうしたらいいかを検討するべきで、こういう戦略に活路を見出している。私自身の、社会人経験としては、1989年に今の会社をつくったが、それ以前は、16ビットのパソコンの開発のリーダーをやっており、ITで最も優れていると言われているセブンイレブンの全店舗のPOSシステム(店舗で商品を販売するごとに商品の販売情報を記録し、集計結果を在庫管理やマーケティング材料として用いるシステム)の設計に携わったりしていた。そういう意味では、現場を大切にしつつ、経営戦略に生かす(=戦略と現場の連携を深める)ことを実践してきたと言える。いわゆる世界のコンサルティングカンパニーには、いろいろな形態のファームがあるけれども、65パーセントから70パーセントの人が理系で、しかも技術の相当深い知識を身につけて経営戦略のコンサルティングをやるという会社は、今のところ私どもぐらいではないかと思っている。
 次に、経済同友会が出張授業というのを行っており、私は同会の一員として、たまにご要請を受け、時間の許す限り中学とか高校に出向いて、いろいろな話をさせていただいているが、基本的に、これは学校だけではなく、日本社会そのものがそうだと思うが、同質化を求め、型にはめたがる傾向にある。基本的には供給サイドに都合のいい生徒づくりというのがまだ残っているのではないかと思う。それから、もっと(学生側から)反応があるはずなのになと、自分の無力さもあると思うが、そういうものを感じている。開き直って申し上げると、質問できない、あるいは質問する習慣がないのではないかと思う。それから、どうしても教える人と教えられる人という、受け身の姿勢になっているのではないか。そのようなことを出張授業を終えてると感じる。ところが、この間某学校に行ってきたが、授業時には何の反応もなかったなと思いながら帰ったけれども、後日アンケートをいただくと、結構過激なことも書いてあり、お名前も書いてある。例えば、「一番心に残ったのは個性とかユーモアがないとこれからはやっていけない、今この学校でも個性があるくぎが一本突き出ているととんとんトンカチでたたかれ、みんなと同じにされている。」や私は、実は会社をつくるというのが職業の選択肢の中にかなり早い時点でなければいけないと常々思っており、それも伝えたのが、「会社をつくることもステキだと思った。そういうことがあるのかと思った」などということも書いてあった。
 授業ではまた、「これからの日本は、盲目的な、理屈のない楽観主義者は抜きにして、理論的に積み上げると結構暗い未来だと思う。国の財政は破綻しており、競争力も低下しているので、皆さんが就職するころは結構厳しい」というようなことを言ったのだが、アンケートにはそれを受けていろいろな意見がどっと寄せているわりに、授業では反応を見せなかったので、その場で言ってくれればもっと盛り上がったのになと、こんな感想を抱いた。
 それから、本日の私のプレゼンテーションに対する皆様のご期待が、企業経営者としてということだけれども、私は、実は一方では3人の男の子の父親であり、上は高校2年生で、下はこの間小学校1年に入ったという、年代としては非常に長い子育てを夫婦で経験している。父親としても色々なことを考えており、基本的には、社会が変革しないと、小中高において理科系を大切にするというようなことは、今以上に促進されないのではないかと思っている。それは、一つは、終身雇用制はとっくの昔に崩壊したにもかかわらず、大学生の就職に対する期待の中に、まだ会社選びという概念が非常に残っている。ビジネス界においては、企業の合併・統合だとか、あるいは栄枯盛衰が今以上に激化するわけなので、ゼネラリストのポストというのは必然的に削減される。よって、基本的には、会社選びから職業選びに移っていかざるを得ない。職業選びとは、専門性だと思う。本来、理系というのは専門性が身につきやすく、わかりやすい分野なはずなのに、ゼネラリストでいくのか、スペシャリストでいくのかを、学生本人も迷っているし、それから企業の人事政策でも悩んだりしている。
 私は、今はもう50歳を越えたのですけれども、経済同友会の副代表幹事就任の発表時は40代だったので、これでも最近の経済同友会の中で、私は最年少の副代表幹事である。私の大先輩の方々は、プレゼン資料中に書いてある生産性向上というのは結構おっしゃる。確かに企業にとっては、生産性向上により、たくさんの商品が市場において競争優位で選ばれるということは重要だが、個人の人生から見たら、生産性向上ゲームの中にずっといるということに対して、技術屋としてはもっと設計をしたいとか、付加価値を追求したいというモチベーションと相反する疑問がずっとあった。実は、“戦艦大和”というのを技術者目線でとらえた、歴史のノンフィクションの本があり、この中に出てくる一節が、今の自分のビジネスモデルにもすごく影響を与えている。ご紹介すると、戦艦大和の設計者の一人の西島大佐が、偶然撃ち落とされたB29の小さな部品を拾いに行く。拾いに行って、彼はその戦争は負けたというふうに、その瞬間に確実なイメージとしてとらえたという話があった。それは、その金属部品がダイキャストでできていたということである。当時の日本軍、あるいは日本社会においては全部砂の金型でつくられていたので、金属部品の大量生産は難しかった。そういう意味で、一隻の精緻な戦艦をつくるということにおいては世界に伍した、世界で最も優れていたという話だが、空を飛び交う大きな爆撃機や無数の戦闘機を大量生産する工場はでき得ていなかった。結果的に生産技術というのが戦争に勝つ上ではものすごく重要であったことが、戦後、日本社会を工業社会に向かわせ、さらに生産性向上ということに社会全体が動いたということだと思う。その結果どうなっているかというと、企業経営者から見ると、生産性を向上させている技術者が大学からどんどん出てきてくれて、会社に入り、余り文句も言わずに工場で過ごしてくれれば一番都合がいいけれども、個人から見るとどうなのかというのが、私の問題提起である。技術屋の人生というのは、大まかに分けると次の3つになると思う。設計者になるか、あるいは生産性の向上のプレーヤーになるか、営利企業に入らないで研究者になるか。私どもは、コンサルタンティング企業として、製造業のお客様と一緒にお仕事をさせていただく中で、しばしば設計部門と生産部門のコミュニケーションがよくないことを見てきた。いろいろな理由はあるだろうが、やはり本来、技術屋は設計者になりたかったのではないか。でも、このポスト(=設計部門)はもともとは非常に少ないものである。それから、技術屋は、お金とはどちらかというと無縁のイメージを日本社会全体でつくっていて、ライブドアの堀江社長が、たかだか数億円の売り上げしかないときに200億円のキャピタルゲインを、個人でも会社としても得たというようなことに関しては誰もとやかく言わないけれども、青色LED発明の中村修二さんの特許対価が200億円と言えば、あれは取り過ぎだとか、何だとか、とんでもない技術屋だと、こういう話になる。社会貢献としてはどちらが大きいかというと、私はイノベーションを起こした人ではないかなと思うけれども、そうはなっていない。それから、理科離れへの提案だが、もともと子どもが理科離れになったのではなくて、子どもがいつも好奇心旺盛であることは変わりないが、大人社会が理科離れを促進させたのではないかと思う。つまり、このようなことである。企業社会においては、同じような製品をつくる会社が多過ぎるため、過当競争となり、よりいい物を安く売る競争になって、イノベーションよりも、やはり生産性が重視される。だから、技術屋の多くは工場で過ごす。作業服を着るか白衣を着るか。工場で過ごす限りは、人件費は製品の中の原価でしかすぎない。(学生時代に遡っても)理系は、大学でも研究もしなければいけないし、遊ぶ時間は文系の人よりも少ないけれども日の目を浴びない、そうすると一体理系って何だろうというようなことを、私自身もずっと感じてきた。
 理系と文系の生涯賃金が、理系が2億円で、文系の人は3億円という報道が先日あったが、それはないんじゃないかと思う。そういう背景もあり、私は理系の人たちに大企業から早く出てきて、自分が社長になってやりなさいとけしかけている。
 これからは、社会全体がイノベーションを評価するようにならなければいけない。一方で、技術屋の旬は短い。これだけ技術革新が目まぐるしく、技術のライフサイクルが短くなれば、終身雇用制の30年ぐらいで生涯賃金を稼ぐ仕組みにはもう無理がある。だから、技術屋の人は、会社の人事給与体系も変えて、10年から20年ぐらいで、仮に2億円か3億円だとすると、10年で2億円〜3億円、だから、年収が2,000万円〜3000万円として10年で技術屋の人生を終える。長くて20年ぐらいではないか。それから、技術屋はもっと顧客指向といった知識なり価値観を身につけなければいけない。また、利益がないと、自分の研究がうまくできないので、利益も重要だということを認識せねばならない。それから、マーケティングセンスも必要である。IT業界では、必ずしも優れたものがマーケットで一位になったわけではないので、そういう意味ではマーケティングも必要だし、それからキャッシュフローの知識も必要である。当社の理科系のコンサルタントは、内定が決まったら、入社する4月1日までに最低でも簿記2級を取得しないといけない。
 最後に低学年児童教育に対しては、これからは、NPOなどの活動にも期待したい。最近NPO的な団体主催している科学博士コースみたいなものに、子どもを参加させたが、自然に行ってきた後の子どもの目は輝いており、それから父親としての会話も盛り上がったりして子どもとのコミュニケーションもとれる。いろいろな話ができるということで、自然に触れるというようなことが一番重要なんじゃないかな、こんなふうに思っている。

委員  企業経営者の目から見て、こういう人材が欲しいというようなことの中で、特に特徴的なことがあれば教えていただきたい。理科の知識が要るというよりも、もっとガッツがある方がいいとか、文化的な知識も要るとか、いろいろなことがおありだと思うけれども、それについてご希望があるか。

金丸代表取締役社長) 当社の採用基準は、まずベースは論理的思考が優れていること、あとは基本的に体力も重視して採用している。ただ、私は今これだけIT、ITといって、それぞれの学校の工学部でコンピューターサイエンスの授業を実施していただいているけれども、東京大学工学部の大学院を卒業し、コンピューターサイエンスを専攻した人でも、かなりの部分を会社で教えなければならず、これは実践の場と学校との距離がまだ遠いのではないのかと思う。これは企業側が大学とか学校に偉そうに言っている場合ではないので、相互の努力が必要であり、我々も会社あるいはマーケットではこういうニーズがあるのだということを、大学や学校にもっとフィードバックして差し上げれば、大学の先生たちの研究も明確なインセンティブとモチベーションが発揮できるのではないかと思っている。

委員  このスライドの5ページ目の最初に終身雇用制の崩壊と書かれているが、例えば日本化学会でも、今、終身雇用制が崩壊しているのを前提にして、例えば化学士というような一つの資格、グレードを設けたような資格制度、これの策定を試みている。そのときに、企業の方々と共同で作業をしているが、企業にとっては、技術士みたいな資格認定をしようという一つの意味は、一つのステータスを身につけてから外に出る際に役立つだろうという認識なのだが、企業の方々にその話をすると、まだそんな時代じゃないという意見が多い。特に、私が所属している化学会では、化学企業、特に大企業の方々は全くそういう認識を持っていないような印象を時に受ける。その辺のところ、本当のところはどうなのかということを、私自身その仕事に携わっていることもあってお聞きしたい。
 次に、スライドの6ページ目に大人や社会が理科離れを促進という表現をされているけれども、下の方を見ると、これは企業の立場でのお考えのようにとれる。したがって、大人や社会といっている意味が、例えば一般社会、さらに例えば教育のシステムがこのような理科離れを促進しているというような考え方というのは、ここに入ってくる余地はないのか。

  (金丸代表取締役社長) 最初の質問で、私は、コンピューター業界にずっといたので、シリコンバレーに多分100回ぐらい出張はしている中で、実はアメリカの人たちに「アメリカも昔は終身雇用制だった。あるいは、終身面倒を見られるぐらいの会社の揺るぎない経営基盤があったが日本のせいでアメリカはやりたくてもできなくなった。」と言われたことがある。日本が、例えば自動車を出し、それから家電製品を出し、しかも、よりいい物を安く出してくるから、同じようなものを高く売っている会社は滅びていく。実は昔、実はIBM社は定年がないということを豪語していたのだが、経営不振になって、40万人ぐらいの社員を5年間で20万人に減らさざるを得なくなったという事実がある。世界の最優良企業だったIBMですらそんな事態になったことを考えると企業人が会社の中にいて、まだ自分が身の安全があると思い込んでいるのは、現実的ではない。それから、よりいいものを安く売るという点においては、今後は、日本が米国を脅かしたと全く同じように、中国が脅かしてくるわけだから、好むと好まざるとにかかわらず、終身雇用制というのはもう既に幻想であり、一部の終身雇用制をとれると言っている優良な企業も、いずれ脅かされるということがあるので、人材が流動性を高めるすべての施策は、私は打つべきだと思っている。
 それから、2番目で、この中に教育ということがあるけれども、教科書とか、学校だけの教育というのは非常に無理があり、そういう意味では、家庭の責任も大いにあって、理科離れを学校の責任にしている父親と母親というのも責任がある。それがシェアできて、先ほどの、週末を生かしてどこか自然に触れさせるというのは、それはむしろ親の責務だと思う。要するに、そういう連携をとって、広い意味で、家庭教育であるとか、あるいはNPOの方々のご参画も含めた全体の教育というのが理想的である。
 私はフランスに行って飛び級の話を聞き、イギリスでも同じような印象を受けたが、たくさんの科目が必須である必要はないと思う。例えば数学を強化させたければ、数学ができる子を小学校で見つけて、どんどん飛び級させていき、その子に他の知識も身につけさせ、国のエリートになっていく。国のエリートが総花的に全科目勉強していくことはそれでいいかもしれないが、企業の中ではだんだんある分野でしか闘わなくなるので、特殊な才能をもっと早期に見出していくというようなことがあってもいいのではないか。物理1科目で合格の大学とか、化学だけで合格するとか、そういう、差別化とか、特色とか、集中といったようなことも必要なのではないかと思う。

(3) 議題2「学習支援・理数教育の現状と課題」について小倉 総括研究官より「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)、理科大好きスクールの評価」について資料2−1、2−2を説明後、質疑応答が行われた。

 
小倉総括研究官) 本日は、我が国の児童生徒の科学への学習意欲の現状について行った全国調査の結果と、SSHと理科大好きスクールの児童生徒を対象に行った調査結果とを比較することで、SSHと理科大好きスクールで取り組まれてきた活動の成果を評価した結果を、ご報告申し上げる。なお、理科大好きスクールとSSHの調査は、JST、科学技術振興機構との共同で実施したものである。
 まず、全国調査の結果から、理科の専門家が学校を訪れて理科を教えてもらったことのある児童生徒は、科学への学習意欲が優位に高い傾向が見られた。調査では数多くの質問を行ったが、このグラフは、例として科学者や技術者の話を聞いてみたいかという質問への回答の平均値を示したものである。グラフの上にいくほど肯定的に回答したことを意味しているが、専門家の訪問による理科学習を経験した児童生徒は、経験のない児童生徒よりも、小中高校、すべての学年で統計的に優位に高い結果となった。
 そこで、理科大好きスクールとSSHの児童生徒が専門家の訪問による理科学習をどの程度経験しているかを比べてみると、全国平均よりも多く経験しているという結果になった。学習がよくあったや、時々あったという児童生徒の割合は、全国で約1割となっているが、理科大好きスクールでは4割程度、SSHでは9割程度と、かなり高い割合となっていた。
 次に、学校の活動で科学館や科学博物館などに出かけて理科を学習したことのある児童生徒は、科学への学習意欲が優位に高い傾向が見られた。このグラフは、例として理科について、興味があることを自分で調べたり、学習したりしているかという質問への回答の平均値を示したものだが、科学博物館等での理科学習を経験した児童生徒は、経験のない児童生徒よりも全般的に優位に高い値となっている。
 理科大好きスクールとSSHの児童生徒が科学博物館等での理科学習をどの程度経験しているかを比べると、全国平均よりも多く経験しているという結果になった。
 また、学校の活動で野外に出かけて理科を学習したことのある児童生徒は、科学への学習意欲が優位に高い傾向が見られた。このグラフは、例として、動植物の生き方やその環境を調べることに興味があるかという質問への回答の平均値を示したものだが、野外に出かけての理科学習を経験した児童生徒は、経験のない児童生徒よりも全般的に優位に高い値となっている。
 さらに、学校の授業で理科の研究、いわゆる課題研究を経験した児童生徒は、科学への学習意欲が優位に高い傾向が見られた。このグラフは、例として、理科を学習すれば疑問を解決したり予想を確かめる力がつくかという質問への回答の平均値を示したものだが、理科の課題研究を経験した児童生徒は、経験のない児童生徒よりも全般的に優位に高い値となった。そこで、理科大好きスクールとSSHの児童生徒が、理科の課題研究をどの程度経験しているかを比べてみると、全国平均よりも多く経験しているという結果になった。
 また、夏休み期間を利用して広く行われている理科の自由研究だが、理科の自由研究を体験したことのある児童生徒は科学への学習意欲が優位に高い傾向が見られた。このグラフは、例として新聞や雑誌や本で理科に関係する文章をよく読む方かという質問への回答の平均値を示したものだが、理科の自由研究を経験した児童生徒は、経験のない児童生徒よりも、顕著に高い値となっており、しかも自由研究を3回以上体験した児童生徒を抜き出して比べると、さらに高い値になっていた。そこで、理科大好きスクールとSSHの児童生徒が、理科の自由研究をどの程度経験しているかを比べたところ、全国平均よりも多く経験しているという結果になった。自由研究を経験した平均の回数は、中学校では約2回となっているが、理科大好きスクールでは約3回となっている。このことは、理科大好きスクールでは、より多くの児童生徒が理科の自由研究を行うような教育上の工夫がなされていることを示唆している。
 さて、理科大好きスクールが、その児童生徒の科学への学習意欲の向上にどれほど効果的であったかの評価についてだが、一部の質問項目で、児童生徒の回答は、全国平均よりも高い傾向を示していた。このグラフは、理科を学習すれば、疑問を解決したり、予想を確かめる力がつくかという質問への回答の平均値を示しているが、理科大好きスクールの小学校の児童は、全国平均よりも優位に高い値となっている。
 一方、中学校については、全国平均とほぼ同じ結果となった。ただ、理科大好きスクールの中でも、先ほど分析した、専門家を招聘したり、理科の課題研究をしたりといった、効果的な教育上の取り組みの頻度が高い学校の生徒を、抜き出して集計すると、全国平均よりも高い傾向を示している。また、別の質問、科学者や技術者の話を聞いてみたいかという質問への回答では、理科大好きスクールでは、小学校5年を除いて全国平均とほぼ同じ結果であった。
 一方、SSHについては、SSHの生徒は、ほとんどの質問項目で全国平均よりも顕著に高い傾向を示した。SSHの指定校の中で、その授業全般に参加した生徒は、その指定校の中で授業に参加していない一般の生徒と比べても顕著に高い回答傾向を示した。また、調査では、SSHに参加した生徒に対し、さまざまな授業に対する評価の質問をした。これは、SSHに参加したことで、科学全般の学習に対する興味、関心、意欲が増したかという質問への回答結果である。全くそのとおりと、ややそのとおりとを加えた肯定的回答の割合は、参加生徒全体で約6割となっている。SSHの中でも、専門家招聘の理科学習や科学博物館等や野外での理科学習、理科の課題研究を実施した頻度が高い、高頻度取組群の学校と、そうでない学校群と分けて集計すると、明らかに高頻度取組群の学校の生徒の肯定的回答の割合が高い結果となり、その差は全体で約2割、高3では30パーセントを超えていた。
 理科大好きスクール授業に関しては、科学への学習意欲に関する一部の質問項目で全国平均よりも肯定的に回答する傾向が見られた。専門家を招聘した理科学習の実施など、指定校における教育活動の程度の違いによって、児童生徒の科学への学習意欲の程度に違いが見られ、活動頻度の高い学校の児童生徒は科学へのより高い学習意欲を示す傾向が見られた。
 SSH事業については、全学年を通じて、科学に対して全国平均よりも顕著に高い学習意欲を示しており、かつ指定校内の授業に非参加であった生徒よりも科学への高い学習意欲を示していた。
 また、専門家を招聘した理科学習や課題研究の実施など、指定校における教育活動の程度の違いによっても生徒の科学への学習意欲の程度に違いが見られた。そして、学校における専門家招聘の理科学習、科学博物館等を訪問して行う理科学習、野外に出かけて行う理科学習、理科の課題研究の取り組み、及び児童生徒が主体的に行う理科の自由研究、これらはいずれも経験ある児童生徒の方が経験のない児童生徒よりも科学への高い学習意欲を示していることが明らかとなった。そして、理科大好きスクール事業とSSH事業に参加した児童生徒は、これらの学習を全国平均よりも高い頻度で経験していた。

委員  学校が子どもたちを野外に連れていき、その野外体験をさせると確かに子どもたちの理科好きが増加した。これは明らかに、もともと理科好き、理科嫌いをまとめて、学校として野外を見せるという努力をした結果、子どもたちが理科好きになったとポジティブに分析したけれども、子どもたちの自分の意思で参加するような自由研究とか課題研究に関して、もともと好きだったから自由研究にいき、課題研究をやった。だから、余計好きになったという可能性はないのか。
 それから、SSHで半分ぐらいがSSH本来の理科系の教育の対象だけれども、半分ぐらい文科系がいることがある。そこで、文系の子どもたちというのは、SSHになったことによって引きずられて理科好きになるのだろうか。この辺について何かご調査があったら、ご教示いただきたい。

小倉総括研究官) 十分に正確なことは今お答えできないと思うが、まず最初のご質問で、自由研究の質問は、確かに生徒の自主的な意思によるものなので、もともと関心の高い生徒が、それをすることによってさらに高まるという要因は入ってきている。課題研究の方については、質問の内容が、学校の授業で理科の研究(課題研究)ということで、学校の取り組みということに限定しているので、学校の授業でそうした課題研究ということが行われていないとここには入ってこないということがある。その学校の授業の頻度というものが高いほど、傾向としては意欲の高い傾向が見られた。
 それから、SSHの中にはさまざまな授業の実施形態があり、1クラス、2クラスの、いわゆる理数科の生徒だけを対象にした実施もあれば、学年全体、その学校の生徒全体を対象としたところもあり、そういう意味では、対象者がかなりまちまちである。ただ、理系、文系と分けるための十分な変数というものは非常に複雑で、高校1、2年ではそういう分け方もないから、今後ほかの質問項目等で、小学校のときに理科を好きだったかどうかとか、そうした項目もあるので、そうしたところとクロス集計をしてきたときにはある程度もっと深い分析ができるのではないかと思っている。現時点ではそこははっきりとしたことは言えない。

(4) 「学校現場の状況」について早川指導主事より資料3−1、3−2、中川教諭より資料3−3、3−4、松尾校長、浦田教諭より資料3−6、3−7、3−8、宇野教諭より資料3−8を説明後、質疑応答が行われた。

 
早川指導主事) 三重県の理数教育の取り組みについて、スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)、それからサイエンスパートナーシッププログラム(SPP)について、1校ずつ紹介し、それから今後望まれる支援の方向について少しお話をさせていただく。まず、四日市高校について、今年で指定の3年目の仕上げの年ということで、教職員一同頑張っているところである。主な研究の概要は、現代数理科学概論として、カリキュラムの開発、また、実験・実習中心のスーパー・サイエンス12という科目を中心に行っている。それから、以下、フィールドワーク、夏期集中講座、それからいかに授業を評価していくかということも研究の課題になっている。
 科目「現代数理科学概論」という学校独自の科目を設定しており、中身は、物理、化学、生物、それから数学、情報等を融合した、関連性を重視した科目です。理科とか、数学では別々のところで系統立てて授業はしているけれども、例えば物理と数学などは、非常に結びつきが多いところがあり、別の先生が実施しているけれども、これを統一できないかということを考えながら実施している。教員の間では新しい教科書をつくろうというのを合い言葉に実施している。それから、これも学校設定科目である「スーパー・サイエンス1」について、実験や実習の基礎をここで勉強する科目です。基本的には実験等はさせているけれども、例えば物理の重量加速度を求めよというのは、どんなふうに実験をするかは生徒に考えさせる。実験道具だけ与えて工夫を促すだけで、こちらからすべて与えるというわけではなく、なるべく生徒に考えさせることを主として、この授業をしている。プレゼンテーションの基礎もここの授業でやっている。それから、科目「スーパー・サイエンス2」は2年生の後半、春休み、ゴールデンウィーク等を利用して、大学の研究室に行かせていただき、研究室から与えていただいたテーマを勉強する。個人によってやっている研究テーマは変えることがあり、中では非常に高度なことを勉強している子もいます。次に夏期集中講座について、平成16年度は名古屋大学を中心に11講座用意した。大体生徒の希望にあわせて数講座受けるということで、基本的には午前中には研究室で講義を受けさせていただいて、午後に見学、実習、実験等をさせていただくという形である。これを行うことよって、大学の研究室のいろいろな施設等も見せてもらい、生徒への事後アンケートでは、興味関心が非常に広がったという答えが返ってきている。
 フィールドワークについて、平成16年度の1年生は夏休みを利用し、野辺山電波観測所、リニア実験線、日本科学未来館を、同じく2年生はこれも夏休みを利用し核融合研究所やスーパーカミオカンデを回り、実際に、その場でお働きになっている研究者の話等も聞かせていただくことができ、将来研究者になりたいとか、何か新しい発見ができたらいいなというような声が返ってきている。
 平成17年2月には、研究の発表ということで、研究大会を実施させていただいた。遠山委員にはわざわざ三重県までお越しいただきまして、午前中に記念講演をしていただいた。午後には生徒よるポスターセッション、それからパワーポイントによる発表をさせていただいた。これが四日市高校の昨年度までの取り組みということになる。津西高校のSPP授業を本日ご紹介させていただく。研究者の招聘講座ということで、地元三重大学より教授を招いて授業をしているが、このSPP授業の中では珍しく数学を取り上げており、平成15年度、16年度実施している。基本の流れとしては、まず生徒に何か作業をさせ、その作業の中から数学的な法則等を見つけ出し、最後それをコンピューターで処理する。平成15年度はピタゴラス数ということで、三平方の定理、それをどうもっていくかということで、まず、モアレ効果という、これはシートに格子点を打ち、その格子点をずらしていくと何か幾何学模様が書ける。この模様が出てくるのは何か意味があるのかということをまず考える。そうすると、格子の点だから、点と点の距離の関係が出てくるとピタゴラスの定理が出てくるのではないかというところから始め、実際それはどんなふうな計算をして表すのだろうかという検討段階で数学の話が出てくる。さらに、それはパソコンを使ったらどんなふうに証明できるのかということで、大体こういう一連の流れで授業をしている。平成16年度も同じ先生に来ていただき、この年は立体模型の工作というのをさせていただいた。カレイドサイクルといい、三角形を組み合わせて立体的なものにするけれども、中に折り込んでいって、いつまでも回転ができて、なおかついろいろな模様が出てくる。まず、これをつくらせ、さらにほかに立体的なものを制作できないかということで、こういうものを生徒に作成させた。カレイドサイクルのアニメーションは生徒がプログラムしたわけではないけれども、WEB上でこういうのを探して、こういうものをパソコン上で展開したらどういうふうにアニメーションで見えるのだろうかということを考えるために実施した。
 今後望まれる支援の方向ということだけれども、まずは、授業終了後も継続可能なプログラムというのが必要になるかと思う。SSH等が終わって、終わったら学校に備品だけ残ったというのでは非常に寂しいので、3年間の研究指定の中でいかにソフトを残していくかというのが大切だろうと思う。それから、生徒の興味関心をさらに引き出す方策は、SSHでもSPPでも、授業を行えば生徒はきっと興味関心は引き起こすことはできると思うけれども、そこからさらに科学への興味とか、理系の方向に進みたいとか、将来科学者になりたいとか、そこまでの動機づけがどれだけできるだろうかということが今後課題になってくるのではないかと思う。それから、授業の成果を他の学校に広める方策は、実際やっている学校は一生懸命その授業に取り組むけれども、県内のほかの高等学校においてこの授業の成果を使って何かできるかというと、それはまだ少し難しい。これを今後どのように広めていくかが課題だと思う。それから、教員の資質向上につなげる方策は、生徒と一緒に、例えば大学の研究室などに行くと、当然高校の理科の内容よりははるかに進んだことを大学で実施しているので、帰ってきた生徒に質問などをされると、こちらも全然わからないことがある。そこで一緒に考えようかということになる。そういう施設を見ることで、教員も意識が高まると思うし、生徒とともに勉強していくということで、非常に教員も刺激されて、資質向上にもつながるのではないかと思う。それから、最後になるが、ほかの授業との連携ということで、学校単独ではなくて、例えばほかのコース、小・中学校とも連携し、なるべく一つの学校の取り組みだけに終わらず、いろいろな学校もしくは地域等を巻き込んで、こういう授業が展開できると思う。

中川教諭) 愛媛県立松山南高等学校は、平成14年度にスーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)の指定を受けた。本校では、10クラスの普通科と1クラスの理数科があるが、この年に入学した理数科1クラスのみを3年間追跡する研究を行った。ただし、指定されたのは入学式の後だったので、従来どおりの生徒が、SSHとは何かを知らずに入学してまいったので、それまでの年と比較ができた。
 本校のSSHの目的は次の3点に集約される。第1は、普通科よりも人気が下がりぎみだった理数科に対して魅力的なカリキュラムを開発しようということ、2つ目は、進路指導が偏差値に偏っている現状を反省し、高大連携のあり方を推進しようということ、3つ目に、当時絶滅の危機に瀕していた科学系部活動を活性化しようということである。そのために、まず学校設定科目を3年間で10単位設定した。そのためには、一部の教科には時間数削減に協力していただいた。「サイエンスX」というのは、授業の中の実験中心の新しい授業開発である。「理数セミナー」が高大連携授業の開発になる。「チャレンジX」は、それまでも2年生に1時間だけやっていた課題研究をさらに発展させたものと位置づけた。また、それ以外の、授業以外の活動として、いろいろな体験をさせることにした。2年次には日本科学未来館で2日間の研修を設定している。これは、四国から出ていくので膨大な予算が必要である。SSHなくしてはできない企画だった。また、これによって生徒はとても成長できたので、今後も続ける予定である。その他、企業訪問や学習合宿、講演会は、本校の卒業生、研究者や技術者になっている人、及び大学の先生に年数回お願いしている。それから、科学系部活動の活性化だが、ほとんどの生徒は運動部や芸術系の部活動に入っており、理科系の部にはほとんど入らない。そこで、理数科の生徒に対し、サイエンスクラブと銘打って、週に一、二回、理科系の部活動を強制的に体験させる活動を盛り込んだ。これによって、実は実験の魅力に目覚めて理科系の部に入った生徒が何人も出た。あと、色々なコンテスト等にも挑戦させた。
 それらのことを重ねる過程で生徒がどのように変化したか、これがポイントだが、本校の生徒をあらわすのに、モチベーションが上がった、これが絶対に譲れない言葉になる。非常に意欲的な生徒が育った。昨年の9月に愛媛大学で行われた日本海洋学会で、高校生にもポスターセッションに参加させていただいたとき、大学の先生と質疑応答で盛り上がった生徒が、そのままAO入試を受けて北大に進んだという実績がある。
 最終的に、3カ年のSSHでどのような生徒が出たか、大きく3点にまとめた。
 まず1つは、高大連携が充実したという点である。これには、地元愛媛大学の全面協力が欠かせない。愛媛大学にとってもSSH、学校の事業として取り組むということなので、一切謝金というものを要らない体制でやっていただいた。このことによって、SSHが終わって予算の当てがなくなっても、金の切れ目が縁の切れ目にならずに済む下地ができた。それから、SSHに直結した新しいAO入試をつくっていただいた。これは、飛び級込みで、博士課程までの一貫教育を行う研究者養成のための特別コースの設定である。そのためのAO入試を全国に先駆けて導入していただいた。なお、これはSSH校でなくても実現できる。また、この入試制度については、近くの国立大学が追随の動きを示している。
 2つ目は科学系コンテストに多数の入賞を果たした。これは全国優勝などという一点豪華主義ではなく、ほとんどの生徒が、努力賞とか、入選とか小さな賞であるが、何かの賞を得た。このことによって生徒が自信を得ることができたし、指導した教師も自信を得ることができた。そして、さらにそれを足掛かりにして、AO入試や推薦入試に挑戦した結果、AO推薦入試で40人のクラスで国公立だけでAO推薦19人通ることとなった。
また、もう一つの特徴として、全員が理系に進学した。それからもう一つ、かなり多くの生徒が将来研究者を目指すようになった。これは大学とか科学館等での研修が非常にいい効果を発揮したからではないかと考えている。
 3年間の評価を行ったところ、理数系に進むのに有利、推薦入試に有利、これは予想どおりである。あと、学校が変わったという意見がたくさん出た。つまり、理数科1クラスの対象で実施したが、それが普通科にも十分波及したということを意味している。実際、普通科の理系クラスも、理数科に引きずられるように進路実績は向上している。また、文科系の科目も学力が向上したという結果が出ている。これこそが、まさに先ほどのモチベーションが上がったという象徴ではないかと考えている。
 なお、今後希望する支援策だが、まず指導教員へのバックアップ体制をもっと整えていただきたい。従来の学校の仕事が減ったわけではなく、SSHはプラスアルファの仕事なので現場の、特に理数系の教員の負担はかなり大きなものが生じている。したがって、SSH指定校には、理数系教員の増員、加配が必要ではないかと考える。愛媛県教育委員会は、本校に対して理科の加配をしていただいており大変助かっている。
 それから、指導教員のバックアップとして、高大連携のあり方だが、今、高大連携、高大接続というと、生徒ばかり注目されているが、生徒への課題研究の指導等を考えると、教員のレベルアップも必要である。そのために、むしろ教員こそが高大連携にかかわる必要があるのではないかと考える。
 2つ目に、学校設定科目の自由度の幅をもっと広げていただきたい。必須履修単位の縛りがあるので、学校設定科目を自由につくることがなかなかできない。したがって、学校の特色を出そうとしてもなかなかうまくいかない。これはSSHで実施したことを他校に普及しようとしてもなかなかうまくいかない理由の一つになる。
 3つ目に、評価基準の明示とあるが、どういう点を評価するか、あるいはどのような成功例があったのかを明らかにしていただけると、非常に活動しやすくなる。また、指示はもっと早くいただけると、いろいろと前もって対策が立てられると思う。
 最後に、今回3年間のSSHが終わりまして、次5年間のSSHに入るんですが、もうやめようという声が校内ですごくあったが、結果が出たのでやりがいを感じることができつづけることになった。この3年間を振り返って感じたのは、教師が変われば生徒が変わるということである。生徒が変わることによって、教師がまた変わる。この相乗効果によって学校全体を高めることができたと考えている。

松尾教諭) これまで過去2年間千葉市教育センターの所長をやっており、子どもたちの調査研究等にかかわっていた経験から、それから現在も、それから随分昔からも、中学校教育に携わっていたので、そういった公立小中学校の立場からということで、お話を申し上げる。
 まず、千葉市で調査研究をしたところから見えることだが、小中学生とも理科を学ぶのは大変好きだけれども、理科の授業はどうも好きではない、特に中学生だと、小学生の場合には80パーセント強が理科好きという言葉を口にしているが、中学生になるとこれが50パーセント台になる。この非常に大きな落差があるということについて、私どもは非常に心配をして、何とかしなければいけないと考えているが、その1つに、小・中学校の教師の深刻な理科教授力の不足があるというふうに見ている。先ほど、小倉さんの方から、いろいろな授業のスタイルによって興味関心というのは随分変わってくるんだというようなことをお話しされておられたが、もしあの中に、そういうことをやれる、課題研究をやれる先生とやれない先生という、そういうふうなところで、その辺の相関を取ってみられると、もっと歴然とした差が出てくるのではないかと思う。
 それから、もう一つは、特に中学生の場合にはさまざまな興味関心の多様さが出てくるけれども、そういったことに対応する実験資材とか、あるいは先生方だけではなくて、学校教育界全体にノウハウがないという問題もある。それから、特にこれは理科教育学会での調査からもうかがわれるけれども、特に中学校の理科は、受験に必要だという意識が子どもたちの間に一方ではある。理科が好きなのは実験をやりたい。だけれども、受験に必要な場合には知識が欲しいと、その辺りをうまく解決できない状況というのが、中学校の理科授業の中にあるのではないか。それから、もう一つ、これは先ほどの小倉さんのところにも出ていたけれども、小中学生とも人生に必要な教科として理科というものを置いていない。この辺りが、今後を考える上で、大変問題があると思う。特に今の時代は、科学技術創造立国という言葉はあるけれども、戦前から戦後間もないころにかけて、科学技術というのが非常に重要視された時代とは違い、子どもたちの興味は多様になってきている。ところが、理科の先生たちはどうも理科を教えているということだけでステータスが上という、そういうふうな意識を持っているようで、子どもたちとの間にその辺の意識の差というものがあるのではないかと見ている。私どもはこういう状況で、何とか理科教育振興を図りたいと考えているが、1つは、裾野の拡大という視点で考えると、豊富な理科授業が実践できるための支援ということになる。しかし特に力量が劣る先生たちがいるという現状を考えると、やはり科学者による出前授業や、あるいは科学技術関係のツアーといった取組みが必要なのではないかと思う。また、既存の教育センターあるいは現在の幾つかの学校を取りまとめる拠点校をつくり、これをカリキュラムセンターというような形にして、そこでさまざまな情報を与えていくといったことを推進していくことも考えられる。
 それから、特に力量のある理科の先生たちに聞いてみたけれども、やはり先ほどのノウハウの問題とか、それから素材の問題があるけれども、いろいろな実験や観察をやりたくても物がないというようなことがあるので、そういったものをどこかセンターとか、先ほどの拠点校などに置いておいていただくという支援のあり方があるのではないか。
 あとは、せっかくこれだけITの時代になっていますので、ネットワーキングを緊密に結びいろいろな情報をいろいろな形で取りやすくするために、そういったことをコントロールしてくれる人を配置し,先生のお手伝いしていただきたいと思う。
 それから、理科を人生に必要な教科という意識を持たせるためにも職業体験が大きな役割を果たすが、そういう職業体験の場として科学関係の事業所というのが意外と門戸を開いていない。この辺りの情報を私どもと科学事業所の方がお互いに情報交流することが必要なのではないか。それから興味のある子どもたちをもっと伸ばしていくという視点から言うと、地域の理科教育センターのようなところが実施する理科実験会のようなものが地方でも行われるということが、大変いいことなのではないかと思う。
 それから、特に中学校の場合には、選択授業のカリキュラムを研究者と一緒につくっていくような機会をふやしていただけるとありがたい。

浦田教諭) 地方の田舎の中学校の理科教育や理科教師の現状と今私が思っている願望をお話する。今、松尾校長先生からもお話があったけれども、中学校の理科教師に大きな負担がかかっている。現行の学習指導要領になり、さらに教師は多忙をきわめている状況である。必修理科の授業や、選択教科、そして新たに設けられた総合的な学習の時間への対応、そのほかに、相対評価から目標準拠評価への対応ということで、現場はまだ大分混乱をしている。そのほか、人権教育、部活動と、うちの若手の1週間の授業時数、本来は1週28時間の、計35週の980時間になるのですが、授業時数21時間、そして生徒指導の会議があって22時間、必修理科への、普通の理科の授業への対応、松尾先生が今おっしゃられたように、選択理科の時間への対応、2年、3年、そして道徳、学活、そして、総合的な学習の時間、そして生徒指導と非常に多忙である。本当に理科の教師が理科専科という気持ちで、理科という教科専属で指導に当たることができるような学校現場での環境、システムづくりをぜひ構築していただければという思いが強くある。理科実験の実習の助手とか、あるいは理科教師を理科専科として担任を外してスペシャリストとして理科教育に専念できる環境整備、あるいは理科教育のための加配、そういう制度が必要である。
 2点目に、理科の授業を行うに当たり、理科教育振興法に基づく理科教育等設備の本校での整備率は25パーセントにとどまり、ここ最近そんなに買ってもらえていないような状況である。理科教育振興法の本来の目標、目的にかなっているのかなと感じている。ITの理科授業への活用が地方ではまだまだ進んでいない。都市と地方の差がどんどん広がっているばかりではないか。ぜひ、先生方に、地方の小学校や中学校の理科室、理科準備室の状況をごらんいただければと、強く思う。
 私が授業する際には、科学技術振興機構、JST提供の理科ネットワークという、デジタル教材システムを効果的に活用させていただいている。どうにかインターネットがつながるようになり、ふだんの理科の授業の中でこういうデジタルコンテンツを使って子どもたちにわかりやすい授業を展開することが今できている。ただ、まだ本当に教科書に準拠したようなコンテンツまでは物足りない感じがしている。ぜひそういうところで数多くのデジタルコンテンツを提供していただいて、指導力ある教員も、そうでない教員も、これを使えば一律にある程度の水準まではもっていけるようなコンテンツ提供をお願いしたい。また引き続き無料配信をしていただきたい。
 3点目、やはり理振法の法改正まで含めて、大胆な改革を、先生方ご承知願えたらと思う。例えば加配教員、あるいは英語や数学のような理科の授業の少人数指導措置、そのほかに、ITに関しては、ITの整備率とか、あるいはITを使った指導可能教員の調査は文部科学省が毎年のように調査をされて公表されていると思うけれども、ぜひ今の理科教育の現状調査も定期的に実施をしていただきたい。
 4点目、理数大好きモデル地域事業ということだけれども、こういう事業は合っているなというのは、かすかに知っていたけれども、なかなか地方には伝わってこない。文科省から県教委、そして事務所、市町村教委、各公立学校、担当者へという、基本的な流れになっていると思うけれども、なかなか現場の担当までそういう話が来ていない。本校だけかもしれないけれども、県教委を通す行政上のシステムとして、ぜひこういうことは大事だと思う。全国の都道府県には中学校理科教育研究会という組織があるが、そういう組織を利用して、そういうところへの連絡とか、メールやダイレクトメールによる配信をぜひお願いしたい。
 熊本県の中学校理科教育研究会は、毎年公開授業、授業研究会、各現場の先生方が研究された研究発表会、夏休み中には夏期実技講習会、あるいは子どもたちが使う問題集や資料集の作成、県下一斉で行うような観点別テストの作成等も行っている。現場の先生方、中学校理科教師、そういうところでお互い情報交換しながら、自分たちの理科にかかわる指導力向上に努めている。そのあたり、ぜひ各県のそういう研究会、こういう理数大好きモデル地域事業を推進されるに当たっては、ご活用いただければと考えている。
 一中学校の理科担当者数名がこういう大事業を受けるとなると、かなりの負担になるのではなかろうかと感じている。
 5点目、サイエンス・パートナーシップ・プログラムの推進だけれども、やはりぜひ大学の先生方、あるいは高専の先生方、現場の方に、中学校に出向いてご指導していただければと思う。ただ単発的に来ていただくよりも、ぜひ長期的にご支援を願いたい。

宇野教諭) アジメドジョウ物語、始まり、始まり。拍手をいただけると始まることになっておるんですけれども。
 僕たちアジメドジョウが好きなところはこんなところです。僕たちほどきれいな水が好きな魚はそう多くはいないよ。何と言ったって、体がスマートだからね、こんな流れが速いところでもすすっと泳げるんだ。
 昔から、一部の人々は僕たちのことをおいしいと知っていて、食べていたんだ。ところが、昭和になって、丹羽 彌(にわ ひさし)という博士がわざわざ岐阜県に来て、僕たちを友達のシマドジョウと区別してアジメドジョウとして分類してくれたんだ。
 ここで問題です。さて、アジメドジョウはどちらでしょう。
 右が正解でしたね。模様がつながっているところが特徴です。理科の勉強では、このように違いを見つけることも大切になってくるんですよ。
 さて、物語に戻ります。
 人々は、シマよりアジメの方がおいしいと言って、僕たちばかりをねらうんだ。天皇陛下まで下呂温泉に来て僕たちを食べて、ううん、美味じゃなんて言うもんだから、どんどん食べられてしまって大変だったんだ。このままでは絶滅の恐れもあると心配されていたほどなんだ。それで、この夏に先生たちが長良川のいろいろなところに入って、僕たちのことを調査してくれたよ。吉田川や板取川、武儀川の仲間はとても元気にやっているそうだ。津保川では、川の工事のために水が濁って、僕たちの仲間も相当苦しんでいたそうだ。
 このような調子で理科の授業開きをしている。この紙芝居のベースになったのは、18年前に行われた岐阜県内6つの水系でのアジメドジョウ生息調査の私の体験である。箱眼鏡でのぞいたときに、目が合ってしまったあのアジメドジョウのことを、目の前の子どもたちに何としても伝えたいと思い、教材化した。
 そこで、要望の1つ目、理科教師に、調査や研究の機会を得やすくしてほしい。理科教師にとって、野外フィールドは絶好の研修場所である。夏休みに野外で研修してきますと申し出やすい、そんな環境になってくれればと思う。
 また、国土交通省等の河川モニター調査というようなところへ理科教師も呼んでもらえると、教材になって、理科好きの子どもづくりにつながると思う。
 岐阜では、7年前から、青少年のための科学の祭典、岐阜大会を行っている。立ち上げのころはほとんどの実験ブースを小中学校の理科教師が受け持った。最近は、先月毛利さんにもお越しいただいた新幹線岐阜羽島駅そばの三洋ソーラーアークが恒例の会場となった。最近は運営方法に変化が見られ、9割が大学生の実験ブースになってきた。4年生から6年生までの250名の児童が、理科の教員を目指す岐阜大学の1年生、2年生、43名の大学生から実験や工作の手ほどきを受けた。ソーラーアークの会場よりも1ブース当たりの人数が少ないこと、また、時間があって、児童は3つも4つも自分の好きなブースへと足を運び、児童ばかりでなく、担任の教師も一緒になって科学を楽しむ姿があった。
 そこで、要望の2つ目、理科教師を目指す大学生の活用である。科学の祭典を体験した児童は、科学はいろいろなものがつくれておもしろいと声をはずませていた。「楽しい」が伴う科学の体験が理科好きのスタートだと思う。また、教育実習以外でも理科教師を目指す大学生が小学校の理科の授業に実験観察の面でサポートしてくれることも有効だと思う。このことは、3つ目の要望、理科が得意でない教師への支援にもつながる。理科が得意でない教師自身も、科学の祭典のような場で実験が楽しいことを体験すれば、理科の授業で取り上げてみようと思う。さらに、科学館等で定期的に観察実験のポイントを研修できるようになれば、授業が変わり、理科好きの子どもがふえてくると確信している。

委員  それぞれが大変豊かな経験と、いい意見を持っておられ、文部科学省の関係の皆さん、今のご意見はほとんど取り入れ、実施に移していただきたいと思う。話題が余りにも広いので、ここではスーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)のことについて申し上げる。私も、大臣在任中と、それから今年は四日市に参ったりして幾つか拝見した。教育政策研究所の方の全国平均的な数値も、明らかに効果を上げているということだが、実は、あの数値に出てこないような効果もある。授業を受ける生徒たちの目の輝きとか、本当に興味を持った子どもたちの姿勢というのはすばらしいものがある。その意味で、SSHというのは、大変な成功をおさめていると思う。これは、ご発表にもあったように、トライアル・アンド・エラーというような、工夫をされながら進んでいると思うけれども、その工夫自体が非常に多様であって、画一でないことがまたいいのだと思う。それにしても、今はまだ数が少ないのではないかと私は思う。とにかくああいうチャンスを与えると高校生たちは物すごく伸びるので、規模の面を少し考えていただきたい。予算面も、1校当たりを若干減らしてでもいいので数を考えてもらいたい。そのやり方も、1クラスでいいのか、学校全体としてやっていくのか、その辺もこれまでの成果をよく分析して、取り上げていただきたい。それと、この中で育った子どもたちを、先ほどの飛び級ではないけれども、大学側がきちんと才能を見つけて、そして優れた子どもたちは入試を緩和するとか、大学との連携を、単に大学の先生が高校へ教えに来るだけではなくて、高校生を入試で優先するというふうなことにもぜひつなげてもらいたい。
 SSHの場合は、これは大変な効果を上げていると思うので、ぜひ継続して、やってもらいたい。

委員  サイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)もスーパーサイエンスハイスクール(SSH)も、お聞きしていて、すばらしいことと、後ろに潜んでいるいろいろな問題点というのが浮き彫りになって、非常によかった。
 1つ、博物館という立場からお話しするけれども、先ほど金丸さんの発表の中で、前段、企業の取り組みの話があって、最後に、自然に触れるということ、前段と最後の言葉の間に非常に開きがあった。だけれども、最後のところでそれが出てきたということが非常に象徴的だったと思うが、サイエンスというのはやはりトータルだろうと思う。だから、そういう理数的な、物理的な部分というのは、当然必要だけれども、そういう全体的な見方ができる子どもというのも必要だと思う。そういう意味で、SSHもそうだし、SPPもそうだが、余り偏らない方がいいんじゃないか。自然系の博物館というのも、基本的に全国でネットワーク化し、学校や企業と共同で連携して、今、申し上げたようなことを進めようという体制で臨んでいる。
 例えば、西日本自然系博物館ネットワークというのができ、西日本の学校や企業のそういう学習活動に連携しようというふうにしている。それから、今、国立科学博物館の佐々木館長さんが中心になって、自然系博物館の館長の集まりを一昨年からつくっている。そういうものの中で、今、全国的に自然系の博物館が提供できるもの、あるいは科学博物館が提供できるものというのがだんだん整備されつつある。そういう意味で、SPPのときに皆さんのお話を聞いていると、多くは高大連携という言葉がよく出てくるけれども、どうも学校と博物館の連携という言葉がきょうは一回も出てこなかったので、非常に寂しい。この点はぜひ、高大連携も極めて重要だが、そういう意味で、物と人材を持っている博物館を大いに活用していただきたい。

委員  今、博物館との関係、いろいろな意味でSSHというのは非常に画期的な国の試みではないかというふうに考えており、スタートのときから日本科学未来館は関わっていた。博物館では今まであまり関わってこなかったということだが、日本科学未来館では学校との連携についてまとめた本「スーパー・サイエンス・スクール」を発行した。この本をつくって、2年ほどになるが、書いていて、確かにいいことばかりに目が行きがちであった。というのは、スーパー・サイエンス・ハイスクールに選ばれたところは優秀なところばかりであり、さらにそれをのばそうという新しい試みである。先生方もきょうの先生方のような優秀な先生が実施しているわけ訳だから、それはもうレベルが高い。それにさらに国が支援して予算を投入すればレベルが上がるのは当たり前ではないかという見方も一つ必要だと思う。
 このSSH、あるいはSPPの最終的な目標は何なのかなということを、今、きちんと私たちは共通認識をする必要があるのではないか。いいことは幾らでも書ける。未来館はSSHの72校のうち59校について支援させていただいている。それは学校の教育以外にどのようにしたら科学館がお手伝いできるかという発想で行っている。今、選ばれている高校というのは、みんな優秀なところである。これを最終的にどこまで広げてどのレベルにしようと考えていくのか。もちろんどんどん予算をふやして、SSH高校をふやすのも結構だが限界がでてくるだろう。それを、今、私たちが検討しなければいけない時期に来ていると思う。政策研で今発表された結果を見ると、例えば理科大好きスクールの児童生徒は一部の質問事項で支援を投入しても、中学校が変わっていない部分がある。変わるのは当たり前で、変わっていないところに何か問題点があるのかもしれない。このような部分は本日ご出席の意欲のある先生方のところを幾ら調べても、問題点は出てこないと思う。SSHで失敗したところ、今、国から見てあまりうまく行かなかったところが幾つもあるはずだが、そういう先生方からも本音を聞くということまでしないと、これからただふやしていっても、だんだん成功の確率が減る。対費用効果がSSH、SPP教育に対してだんだん少なくなってくる。それを回避するためには、最終的に、何が問題だったのかということを真剣にこういうところで議論していただきたい。いずれにしてもSSHプログラムは日本の科学技術創造立国の将来構想に非常に重要な役割を果たすので、大いにこれからも盛んにしてほしいと思う。

委員  失敗したところの事例を探すのはなかなか難しいと思うが、一つ懸念されるのは、担当される先生のご負担が非常に大きいということ。恐らく学校によって温度差があると思うけれども、これによってかなり挫折をしているところもあり得るのではないかという恐れがある。今、科学技術・理科大好きプランというキャッチフレーズで行われている授業の中では、SSHは科学技術の専門家の育成という点では相当成功している。その面でコントリビュートしているというのはだんだん見えてきている事実だと思う。一方で、理科大好きプランのもう一つの重要な使命は、やはり日本人全体の科学技術リテラシーの底上げだと思う。後継者養成と、もう一つは底上げ、全体の科学技術リテラシーの向上、SPPの方はそれに対してかなり大きなコントリビュートができるのではないか。先ほどSSHとSPPと両方のお話があった。SPPをSSHと同じように位置づけても、私は余り意味がないと思う。SPPは、もっと底上げのために、要するに学校で必ずしも理科が得意ではない生徒、その時点では余り関心のない生徒に理科に対する興味を抱かせるというような機能をかなり浮き彫りにしてもいいのではないか。そういった意識を実際にお持ちかどうかということと、もう一つは、教員のための高大連携が必要だろうということに関しても、SPPには教員研修というのもあるわけで、それの活用を十分考えていただいてもいいのではないか。したがって、SPPの方を底上げに活用しようという意識があるかどうか、その辺のところをお伺いしたい。

中川教諭) スーパー・サイエンス・ハイスクールとサイエンス・パートナーシップ・プログラムは、事業の性格の違いというのは、文部科学省さんの方から説明は受けており、取り組むにしても、SPPの方は非常に学校としても気軽に取り組める。書く書類も少なくて済むし、応募して結構複数の学校を取り上げていただくということで、SSHとの違いというのは非常に大きいものはある。ただし、受ける生徒にとってはどちらもまず最初に理科、数学に対する興味関心から入るべきものだろうなと思うので、その点、例えばSSHは非常に長い期間深く勉強していくものであると思うし、SPPの方は最初の取っかかりをつくるということで、大変いい事業だなということで、私どもの方は活用させていただいている。

委員  やはり元気な先生のところでは生徒も元気なんだなと、拝見していて本当にそう思った。今、生徒が元気がないというのは、多分先生たちも元気がない。それが教育現場で今出ているのであって、うまくかみ合えば教育はうまくいくのではないかなと。一つ要望ということで、先生方が機会をふやしてほしいという要望があったと思う。これはとても大事なことである。いろいろな規則とか、手続とか、これらは学校現場だけではなくて、日本の社会全体にあると思うけれども、そういうものをなるべく減らして、タイミングよく機会がふやせるような現場をつくっていただけたらいいなと思う。
 それから、もう一つ失敗したケースというのはとても大事なことだと思う。失敗から何を学ぶかということと、もう一つは、失敗してもやり直せる社会にするということが、大事なことではないか。

委員  スーパー・サイエンス・ハイスクールの学校の決定は文科省でされるが、支援を私どもの方でさせていただいているので、先生方のお話のほかにちょっと追加させていただきたいと思う。一つ、SSHは非常に多種多様だというお話があったが、ある意味では体制の問題も多種多様であり、学校全体を挙げて協力されているスタイルと、非常に少数の先生たちがご熱心に進められているケースがある。失敗につながっているかどうかとは別に、やはり特定の先生方に仕事が集中されると、非常に大変なところがある。独立行政法人科学技術振興機構(JST)は支援する方なので、経費の負担などはいろいろ弾力的にできるだけ今図らせていただいているが、人件費はやはりフル人件費を私どもの方で負担することは、研究費と違いできないということで、こういう教員の定員などはぜひ教育委員会の方で、加配の話を含めて、いろいろご検討いただきたい。

委員  国立科学博物館でもやはり学校の実態がどうなっているか勉強して、学校のカリキュラム、それに合ったものを提供する、そういうメッセージを発しようということで、私ども、今、頑張っている最中である。

委員  私も二、三ご質問申し上げたいと思ったことがある。
一つは、最近新しい教育課程に入ってから確かに実験が熱心になった。その結果、今まで寝ていたような実験教室を活用しようということで、そして見ると、実験教室の装置が古くなったということがどうも出てきて、きょうも松尾先生、浦田先生からそういう話があった。理振法だけではとてもだめだと、もう少し根本的に実験器具を新しくしてくださいというようなご要望があれば、ひとつお聞かせいただきたいと思う。
 それから、もう一つは、先ほど理科教育に携わっている方々が、調査や研究の機会を与えてほしいというようなことをおっしゃっていたけれども、大変いいお考えだと思うが、一つ私が気になっていることは、7月、8月の間の先生方が、講習会にお出かけになったり、ご自身が理科教育を各地でやるボランティア活動に参加しようというようなときに、校長先生が出張を簡単に認めてくれるのか。何となく私の聞いているところだと、非常に人事管理が難しくて、なかなか出られないという声を聞くので、校長先生方はその辺をどう処理されているのか。もう少し端的に言うと、科学の祭典は割に自由に出してくださるようだが、それ以外にもたくさん、大学での講習会とか、教育センターでの講習会、あるいは講習会の先生になるというふうなこともおありになる。そういうときに、教育委員会はそれを積極的に勧められるのか、それともかなり厳しくされるか、私の聞いているところだと、かなり厳しいということを聞いており、その点どうかということを、一度またゆっくりとお聞かせいただきたい。

(4) その他(今後のスケジュール等)
次回懇談会は、5月24日(火曜日)14時〜16時30分に富国生命ビル28階第1会議室で開催することとした。


(科学技術・学術政策局基盤政策課)

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