本要求事項は、原子炉主任技術者試験筆記試験の一部科目免除制度の指定を受ける専門職大学院(以下「指定専門職大学院」という。)が満たさなければならない教育カリキュラム、教員組織、単位取得の判定方法等及び自主的な評価等について定めるものである。
原子炉主任技術者は原子炉の運転に関する保安の監督を行う者として重大な責務を担っており、その原子炉主任技術者の候補者を養成する指定専門職大学院は、原子力の安全確保とそのための人材確保といった社会の要請に応えるため、学生に高度な教育を施すことにより、原子力安全のための専門的知識を有する優れた人材を社会に輩出することが望まれる。また、重責を担う原子炉主任技術者の候補者を養成するには、優れた教育能力・力量を維持することが社会的に求められており、それに対応すべく、指定専門職大学院は、実効性ある優れた教育運営システムを有し、厳格に運用し、維持することにより、その修了者が原子炉主任技術者筆記試験合格者と同等またはそれ以上であることを保証しなければならない。
このような考え方に従って、文部科学省及び経済産業省は、本要求事項に基づいて指定専門職大学院の教育及び運営等の有効性を確認していくものとする。さらに、原子炉主任技術者試験の実施細目等に関する規則に基づいて指定専門職大学院の指定の申請があったときは、申請した専門職大学院の教育及び運営等の計画を本要求事項によって審査するものとする。
なお、指定専門職大学院及びその指定を受けようとする専門職大学院については、専門職大学院設置基準(平成15年文部科学省令第16号)に基づいて高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うものとして十分な審査がされていることから、原子炉主任技術者試験の実施細目等に関する規則に基づく指定専門職大学院として必要な要求事項のうち、原子炉主任技術者試験筆記試験の実効性確保のための措置を除き、専門職大学院設置基準と重複する部分は、本要求事項には記載しないこととする。
(考え方)
当該要求事項は、炉主任試験に関して一部科目免除の指定を受けようとする「専門職大学院等」のうち、まず専門職大学院について定めようとするものである。を念頭に設計するものとする。このため、専門職大学院の設置審査において、すでに「高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培う」実務教育を行うとして認められていることを前提とし、また、原子炉主任技術者筆記試験の実効性確保のための措置を除いた、教員数等の専門職大学院の設置審査の内容と完全に重複するものについても、設置審査において十分に審査されたものとして、要求事項の対象から外す。すなわち、専門職大学院としての文科省の認可が筆記試験の一部免除制度の適用を受ける専門職大学院としての指定の前提であるため、本要求事項において専門職大学院の設置審査で求められる事項を改めて要求する必要はない。
上記の観点から、専門職大学院と同様に実務的原子力エンジニアの育成に焦点を当てた大学院教育を実施する場合に限って専門職大学院に準じるとする一般の大学院については、本要求事項に加え、専門職大学院と同等レベルを担保する要求事項を別途設ける必要がある。
学校教育法に基づく専門職大学院であって、その修了者に「原子力修士(専門職)」の学位を与えるものとして、文部科学大臣の認可を受けていること。
指定専門職大学院は、次の要求事項を満たすこと。
(総論)
原子炉の運転に関する保安の監督を行う者として重大な責務を担う原子炉主任技術者の候補者を養成する指定専門職大学院は、学生に対して原子炉主任技術者にとって必要となる専門的知識を不足なく教育しなければならず、学生もまた、その意図を理解して学習に取り組むことが望まれる。このため、指定専門職大学院は、その教育目的を教員及び学生と共有するとともに、その教育課程を体系的に整え、実効性ある教育を実施しなければならない。特に、原子炉主任技術者としての専門的知識の定着やその専門的知識を応用する力量の修得、安全管理に関する観察眼の強化、原子炉に関する物理的・化学的現象や原子炉施設における安全管理を中心として実務の本質についての理解を深める学習が行われることが求められる望まれる。
(考え方)
知識の定着及び実践に役立つ応用力の修得に加え、安全管理に関する観察眼の強化のため、演習及び事例研究の規定を設けることが望ましいと考えられる。さらに、その演習や事例研究の目的や実施項目が曖昧にならないように、有効性の判定基準として原子炉主任技術者の専門的知識を身につけさせるとする目標を設定する。
また、演習・事例研究は、実践能力の獲得に加え、学生が自らの力量を客観的に把握することができる機会であるとともに、指導教員が学生の理解状況を把握する上でも重要な機会であることから、その実施方法に求められる留意点についても規定する。
(考え方)
原子炉に関する物理的・化学的な現象や原子炉施設における実務の本質について理解を促進させるため、実験・実習の規定を設けることが望ましいと考えられる。さらに、その実験・実習の目的や実施項目が曖昧にならないように、有効性の判定基準として原子炉主任技術者の専門的知識を身につけさせるとする目標を設定する。
なお、実験器具や設備等については、専門職大学院の設置審査の際に十分な審査が行われるとして、ここでは特段の規定を設けない。
(考え方)
基本的に、日本技術者教育認定機構(JABEE)の日本技術者教育認定基準の「基準3.3教育組織」のフレームワークを参考にして、教員の質的向上に関する要求事項について定める。
なお、教員の数については、専門職大学院の認可審査において十分な審査が行われているので、ここでは除外する。
研修については、1教育内容・方法について教員全体で議論する場の設定、2実務家の中には講義の方法等について大学教員が有するようなノウハウを有していないことも考えられるため、教員個人の指導能力の向上のための研修の実施、3最新の現場知識を身につけるための現地視察研修の実施等を行わせる。
また、申請書の計画書において、専門職大学院が企図する教員組織の質的な維持・向上の実現方法を記載させるものとする。
(総論)
専門職大学院の学生に原子炉主任技術者試験筆記試験相当の専門的知識を身につけさせるためには、その教育内容に加え、教員組織の質についても求められる。特に教員団に実務家が加わり、現場の知識を教育プログラムに反映させ、実効性のある教育を実現させることが必要である。このため、教員団には原子炉主任技術者免状を交付された者が含まれていることは重要であり、その者が積極的に教育計画に関与することが求められる。さらに、指定専門職大学院は、教育内容及びその実施方法について教員組織の質の向上を図るためのプログラムを確立することにより、常に教員組織教育団の質の維持、向上に努めていかなければならない。
(総論)
指定専門職大学院を修了した学生が原子炉主任技術者試験筆記試験合格者相当の専門的知識を有しているかは、最終的に学生個人の学習目標到達度によって判定されるべきであり、指定専門職大学院は、その判定の曖昧性を排除し、厳格に審査、判定することにより、筆記試験合格者相当又はそれ以上であると認定する責務を負う。このため、指定専門職大学院は、学生が確実に専門的知識を身につけたことを確認し、保証できる判定方法と客観的で厳格な判定の体制をあらかじめ明確にしておく必要がある。
(考え方)
判定方法に関しては、確実性を担保するため、次の二段階による判定の体制が必要である。
最終的な判定については、専門職大学院修了単位と筆記試験合格者相当が有する知識に相当する単位(内容及び数)が必ずしも一致しないことから、筆記試験合格者相当であることを保証させるために判定会議等を行うことを専門職大学院として再確認させることを目的とする。
(考え方)
要求事項は次の考え方によることが望ましいと考えられる。
要求事項を設定する区分と要求事項については、基本的には、どのような科目であれ、出席率は評価基準となるが、これに加え、座学形式、演習形式、実験・実習形式(内部)、外部組織への派遣による実習形式の特徴に応じた評価要求事項が考えられる。
なお、実際に判定に係る方法書については、シラバスをもとに1単位ごとに判定方法の明示、2可能な限り定量的な表現の記載を求めることとする。
※ 留意点として、座学形式については、例えば受講生が1名といった、試験による判定が合理的でない場合、有効な代替措置を採る裁量を与えることも認める。また、演習や実習については、グループ演習・実習等がある場合に、個人評価とグループ評価の2段階の評価方法が考えられる。
また、やむを得ない理由により、欠席した場合のフォロー等の在り方についても検討が必要。
(考え方)
基本的に、日本技術者教育認定機構(JABEE)の日本技術者教育認定基準の「基準6.教育改善」のフレームワークを参考にして、自主的な評価に関する要求事項を定めることとする。また、要求事項については、自主的な評価に係る創意工夫を確保するため、専門職大学院に対して詳細な仕組みを求めるものとはせず、簡素なものとし、申請時の計画書において専門職大学院が企図する評価の実現方法を記載させるものとする。
(総論)
炉主任技術者は原子炉の運転に関する保安の監督を行う者として重大な責務を担っており、その原子炉主任技術者の候補者を養成する指定専門職大学院は、原子力の安全確保とそのための人材確保といった社会の要請に応えるため、自らの教育手法について、絶えず評価し、改善を図っていかなければならない。このため、指定専門職大学院においては、評価・改善のための体制・システムを整備し、評価の範囲が確実にされるとともに、その体制・システムのもとで、教員及び学生を含めた関係者全員の参加により評価、改善していくべきである。さらに、この評価、改善のためには、目的、実効的な計画及び体制・システムがあらかじめ整えられるとともに、関係者に徹底され、計画と活動に一貫性を有し、継続されていなければならない。
JABEE認定基準 | 教員組織に関する要求事項(素案) |
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3.3 教育組織 | |
(1)プログラムの学習・教育目標を達成するために設計されたカリキュラムを、適切な教育方法によって展開し、教育成果をあげる能力をもった十分な数の教員と教育支援体制が存在していること。 | ・原子炉主任技術者試験筆記試験の一部科目免除の対象となる全科目の教員に原子炉主任技術者免状を交付された者を含むこと。 ・教育計画の立案に際して、原子炉主任技術者免状を交付された者が参画する仕組み又は意見を述べる仕組みを有していること。 ※十分な数の教員及び教育支援体制については、専門職大学院の設置審査において十分な審議が尽くされているとして要求事項に加えない。 |
(2)教育の質的向上を図る仕組み(ファカルティ・デベロップメント)があり、当該プログラムに関わる教員に開示されていること。また、それに関する活動が実施されていること。 | ・教員の質的向上を図る事務を運営管理する組織を設置すること。 ・次に掲げる研修等を含む教員の質的向上を図る仕組み及び計画を有すること。 -教育内容及び方法を改善するための組織的な研修及び研究 -教員の指導能力を高めるための研修及び研究 -原子力発電所等の原子炉施設の現場における安全管理に関する最新の知見を習得するための研修(P) ・教員組織の質的向上に関する計画を教員に周知すること。 ※当該部分が機能しているかについては、指定後に定期的に調査し、評価することとする。 |
(3)教員の教育に関する貢献の評価方法が定められ、当該プログラムに関わる教員に開示されていること。また、それに従って評価が実施されていること。 | ※専門職大学院の人事等に関係する内容であるため、対応する要求事項は特段設けない。 |
(4)カリキュラムに設定された科目間の連携を密にし、教育効果を上げ、改善するための教員間連絡ネットワーク組織があり、それに関する活動が実施されていること。 | ・科目間の連携を密にし、教育効果をあげ、改善するための教員間連絡ネットワーク組織を設置すること。 ※当該部分が機能しているかについては、指定後に定期的に調査し、評価することとする。 |
JABEE認定基準 | 自主的な評価に関する要求事項(素案) |
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6.1 教育点検 | |
(1)学習・教育目標の達成度の評価結果等に基づき、要求事項1~5に則してプログラムを点検する教育点検システムがあり、その仕組みが当該プログラムに関わる教員に開示されていること。また、それに関する活動が実施されていること。 | ・評価事務の管理責任者を配置すること。 ・評価事務を運営管理する組織を設置すること(組織の形態や専任か否かは問わない。)、かつ、その組織は客観性を有し、権威があること。 ・少なくとも評価の範囲に次のものを含むこと。 -カリキュラムの内容 -修了者全体の質 ・評価のための情報収集や分析の手法は、合理的、客観的及び効果的であること。 ・自主的な評価に関する計画書を教員及び学生に周知すること。 ※当該部分が機能しているかについては、指定後に定期的に調査し、評価することとする。 |
(2)教育点検システムは、社会の要求や学生の要望にも配慮する仕組みを含み、また、システム自体の機能も点検できるように構成されていること。 | ・少なくとも評価の範囲に次のものを含むこと。 -評価システム自体の機能 ・評価のための情報収集や分析の手法は、合理的、客観的及び効果的であること。 ・評価のための情報の収集にあたっては、受講後における教員及び学生の意見、要望を含めること。 ・第三者評価を評価システムに組み込むこと。 |
(3)教育点検システムを構成する会議や委員会等の記録を当該プログラムに関わる教員が閲覧できること。 | ・自主的な評価に関する記録を教員が閲覧できること。 |
6.2 継続的改善 | |
教育点検の結果に基づき、要求事項1~6に則してプログラムを継続的に改善するシステムがあり、それに関する活動が実施されていること。 | ・評価した結果をカリキュラムや運営方法に確実に反映すること。 ※当該部分が機能しているかについては、指定後に定期的に調査し、評価することとする。 |
科学技術・学術政策局原子力安全課原子力規制室
-- 登録:平成21年以前 --