原子力防災検討会(第8回) 議事要旨

1.日時

平成21年3月11日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省(合同庁舎7号館)3階 非常災害対策センター

3.議題

  1. 平成20年度の取組について
  2. 原子力の防災業務に関する行政評価・監視について
  3. 今後の取組について
  4. その他

4.配付資料

  • 資料8‐1: 平成20年度原子力防災に係る文部科学省の取組
  • 資料8‐2: 総務省による原子力の防災業務に関する行政評価・監視結果に基づく勧告(第二次)について
  • 資料8‐3-1: 事後対策訓練に関する調査
  • 資料8‐3‐2 海外における先進的取組について
  • 資料8‐3‐3: テロ関連調査実施概要
  • 参考資料  
  • ○「原子力防災検討会」の開催について
  • ○第7回原子力防災検討会 議事録
  • ○原子力の防災業務に関する行政評価・監視結果報告書(第二次)

5.出席者

委員

中込座長、明石委員、飯田委員、井川委員、磯貝委員、長見委員、金盛委員、衣笠委員、齋藤委員、数土委員、野村委員、山下委員、山田委員

文部科学省

中原科学技術・学術政策局次長、黒木原子力安全課長、木野防災環境対策室長、佐藤防災管理対策官、宮本専門官

オブザーバー

秋山氏、雑賀氏(財団法人原子力安全技術センター)
福本氏(独立行政法人日本原子力研究開発機構)

6.議事録

<議題(1)平成20年度の取組について>

宮本専門官より資料8-1に関して説明を行った。主な質疑応答は以下のとおり。

【飯田委員】 一般の方への事故状況の広報はどのようになされるのか。

【宮本専門官】 今日の説明は表面的な部分となっているが、この部屋を見て分かるように7つの機能班があり、その中に広報班がある。ここでは、実際にプレス資料作りや記者会見のやり方などの訓練を行っている。また、オフサイトセンターでは、自治体も参画して訓練を行っており、住民広報に関しては、適時的確に自治体が防災無線やビラなどの方法で行うことになるが、住民広報を行うためにはどのような情報が必要かということをオフサイトセンターの広報班が箇条書きにして自治体へ提供している。これらは住民の視点からすると受け側となるが、逆に住民からの問い合わせに対して、NEATに「住民問い合わせ窓口」の設置を依頼するなどの訓練を行っている。

【中込座長】 確かに住民広報は非常に重要であり、現場では時間に追われながら、住民も施設側もお互いにいらいらしてくるため、タイミングと内容、繰り返しとなったとしても頻繁に広報することが自分の経験からも大切だと考えている。受ける側として苛々する、国としても早く広報しなければならないという微妙なところがあるが、地域性なども含めて、各オフサイトセンターでの広報には特に注意してほしい。また、プレスを通した発表のタイミングが非常に重要なので、これからも訓練で活かしていってほしい。

【数土委員】 資料に記載されている今後の展開として、2.と3.は、具体的にどのようなことをするのか、既に考えられているか。

【宮本専門官】 1.は委託調査を実施して検討を進めているところで、今後訓練などに盛り込んでいきたいという構想はあるが、2.と3.はまだ具体的にはこれからと考えている。

【数土委員】 2.や3.も非常に重要なので、スケジュールに組み込んで、優先順位を決めて進めていっていただきたい。

【野村委員】 この資料は20年度の文科省の取組ということで紹介いただいたが、文科省の役割は、文科省所管施設での緊急時対応を一気通貫して実施すること、それ以外の所管外施設を含め、わが国の原子力防災全体における緊急時モニタリングという非常に重要な役割を担っている。この資料では、緊急時モニタリングについてどのような取組をされたのかわからない。

【木野室長】 緊急時モニタリングは、オフサイトセンターと自治体の放射線監視センターが協力して実施するものであるが、文科省は自治体の防災訓練や国の総合防災訓練に参加し、自治体のモニタリングチームと訓練を通してスキル向上や協力体制の構築を図っている。

【衣笠委員】 OFC活用シナリオのページについて、このような場合にOFCを活用してはどうかということで検討されたものと思うが、事務所のOFC活用を決定する者は誰なのか。また、どのような法律的根拠があって活用されるのか。

【宮本専門官】 マニュアル上は、社会的影響が大きい事象の場合に、局長が判断して活用することになる。そのために、原子力規制室や現地の防災専門官等から情報を集めて、防環室長、課長が局長へ具申するものと考えている。

【衣笠委員】 それでは最終的に局長が判断をして活用することになるという理解でよいか。

【宮本専門官】 そのとおりである。

【中込座長】 これまで10条段階になってから準備を始めて15条段階で本格的に活動を開始するというのが大きな流れであるが、10条未満から準備をするようなシナリオは文科省が初めてか。保安院でも同様のことをやっているのか。

【宮本専門官】 保安院ではマニュアルを改訂して、文科省でいうフェーズ1に該当する中レベル事象を新たに定義してやっている。文科省としては今回が初めてとなる。

【中込座長】 例えば大阪の熊取は、保安院と文科省の共管であって、所長が2名いる。前回の議事録にもあったように、国民の目から見ると、オフサイトセンターはどこの所管であっても国の機関であるため、所管ではないからといって自分たちの範囲ではないと言わないようにしていただきたい。

【井川委員】 2点。先ほどの質問と重なるが、この体制が動き出すのは局長の判断とのことだが、局長は文部系か科技系かどちらの方か。そのような事態になった際、幹部が甘い判断すると一巻の終わりになることから、本当に局長一人の判断で良いのか、どのようにするのかをきちんと詰めておいたほうがよい。もう1点は、適用の判断が1.から3.まで3つあるが、過去の事象や世界の事象を集めて分析し、ある程度類型化しておかないと、1.から3.のどれに該当するかを考えるのに時間がかかってしまい、また対応が遅れることになる。世界から集めて類型化しておくほうがよい。

【木野室長】 現局長は旧科技庁系であるので、原子力に関する知見も有しているし、局長に判断を仰ぐ際は、私や課長、次長など、原子力を知っている我々が局長を技術的にサポートすることになる。また、判断のための事例とのことだが、世界の色々な事例やトラブルを適宜収集していきたいと考えている。

【金盛委員】 10条未満の炉規法の段階から防災への連携をやることは、現実に即しておりより充実しているが、先ほどから話がある局長の判断の面もあるが、保安院の考え方を見ていると、地震の震度の目安を考えるなど、具体的なものを準備することにより、判断がスムーズになる、あるいは国内の考え方が統一されるといったことがあると思うので、今後検討していただければと思う。

【中込座長】 この点については各省庁で取り組んでいただくことはもちろんのこと、全体として原子力安全委員会に原子力防災部会があり、そちらでうまく統一化して、我が国としての方針が見える形にしたようがよい。私もその部会の委員となっているので、そちらでも発言し、まとめてもらいたいと思う。

<議題(2)原子力の防災業務に関する行政評価・監視について>

佐藤防災管理対策官より資料8-2に関して説明を行った。主な質疑応答は以下のとおり。

【山田委員】 SPEEDIの情報に関する勧告のうち、要援護者について、茨城県では44市町村全てにそのようなデータの整備を要請し、まもなく全部揃うことになるが、個人情報保護法の壁があり、担当市町村においても、担当課から災害対策の担当部署へ情報がでないという状況がある。同様に、県に対してもそのような情報がスムーズに入ってくるかどうかという心配がある。そのような点で、できれば担当している関係省庁に対し働きかけをしていただきたい。また、茨城県では、最低限、地域ごとの人数でもわかれば、避難等の際のピックアップでチェックすることも出来る。個人の名前がなくとも、人数程度でもいいので、関係する市町村、都道府県にそのような情報が出てくるように配慮いただければと思う。

【中込座長】 今の点は重要な部分である。特に緊急時の際、一般防災も含めて、自分の情報を知らせないのに助けてくれというのはなぜかといった矛盾する問題がでてくると思うが、プライバシーの問題と、緊急時の場合の救助に対する情報のあり方は大変重要である。原子力防災だけではなく、データベース化について、一般防災との関係はどのようになっているのか。

【佐藤対策官】 原子力防災を含む一般災害の災害時要援護者に対する対応については、内閣府が中心となってガイドラインを作成し、これに基づき各自治体がガイドラインを定め、データベースを構築することとなっている。最近のフォローアップの状況を見ると、まだ全ての県においてデータベースが完成した状況にはなっていないと聞いている。

【井川委員】 要援護者については、内閣府の防災担当でシナリオやビデオを作っているので、原子力についても文科省で入手し、しかるべき担当部署へ配布して、自治体の中で協議がスムーズに進むよう支援すべきではないかと思う。もう1点、最近青森県の原燃で、モニタリングポストが古くて更新しなければならなかったが、役所の認可がとれず、なかなか更新できないために、燃えたか誤データを出したかという騒ぎがあった。色々な事象があってから緊急時モニタリングを実施するという考え方も重要であるが、日頃から設置されているモニタリングポストの適切さ、更新頻度について、時代に応じて的確に点検をされているのか。気象庁では、震度計の半分ぐらいが役に立たないものを自治体が設置していて、阪神大震災から10年以上も経った今になって使えるか使えないかを点検し直すと言っている。このようなものは、技術やその場の環境の変化に応じて、あるいは蓄積された知見をもとに見直しておかないと、あっても役に立たない、それを頼りにして緊急時モニタリングをしたら変なところで変なデータが流れているなど、色々なところで異常を生じる。文科省においてどれくらい点検をされているのか。本来総務省の勧告に入るべきものが入っていないので、この点をどのように考えているのか。

【木野室長】 モニタリングポストは、事業者が年1回の校正を行っている。また、国の点検は、モニタリングポストを設置するとき、大幅な改造を行うときに、国の原子力防災専門官が現地で正常に作動するかどうかを確認している。原燃の話は設備が古くて燃えたということであるが、本来は事業者が定期的な点検をしておくべきものである。

【井川委員】 保安院は適切にやるよう規則で決まっていると言っているが、事業者は更新したいけれども許可が下りないのでできなかったと言っている。文科省においては、全部を一度総点検しないと、肝心なときに役に立たないことがあるのではないかということを、危機感を持ってやっているかということである。PDCAとして、水平展開も重要なことであり、六ヶ所で起こったことは他でも起こりうるとして、やったほうがよいのではないかと思う。

【中込座長】 これは事業者の努力はもちろんのこと、モニタリングは重要であるため、国も定期的な検査をし、全体が常に働く状態にしておくことが重要である。通常のことが異常を見つける重要なファクターとなる。これはどちらかというと防環室よりも原子力安全課の話になるが、常に国の検査と事業者の点検をして、性能の劣化を防ぐようにしてはどうかと思う。

【黒木課長】 モニタリングポストは事業者と各県それぞれが設置している。事業者が設置しているモニタリングポストは、原子力災害対策特別措置法に基づいて、防災業務計画に記載されて出される。また、電気事業者として、モニタリングポストは電気工作物という観点から、工事計画認可などの規制の対象となっている。我々が規制している部分において、事業者に対してモニタリングポストを原子力施設としての規制をしていないはずである。それを国がどれだけチェックするか、まずは事業者が原災法に基づいてきちんと管理する責任があるので、基本的には事業者の問題ではないかと考えているが、どのようにするかは検討したい。また、県が設置しているモニタリングポストは、国から交付金を交付しているので、何かあれば当然県から話があるものと考えている。県では、透明性の高い形で、オンラインで情報が出せるように運用しており、校正も毎年されていると聞いているが、それをチェックする必要があるのかどうか、整理していかないといけないと考えている。

【井川委員】 校正は当然重要であるが、設置位置も重要である。昨年、原潜から放射能が漏れたといった話があり、佐世保市長が文科省へモニタリングポストの設置数や設置位置が適切かどうかという申し入れがされていたと思うが、このようなこと他にもあれば、自治体から同様のことが言われるかもしれないので、先取りして、年数が経てば定期的に設置位置も含めて適切かどうかを検討すべきだと思う。

【中込座長】 そのようなことも含めて、検討されるものと思うので、今後の対応に期待したいと思う。また、三次被ばく医療への患者の搬送体制について、明石委員から御意見をいただければと思う。

【明石委員】 放医研はこの当事者としていつくかの自治体と体制構築を進めてきたところである。この体制構築は放医研の重要な仕事だと考えているが、実行する上でいくつかの問題点がある。まず、全体の三次被ばく医療機関として放医研が置かれている理由は、体内汚染患者、つまり一般の病院や自治体では手に負えない患者の対応をするということが基本にある。ところが実際に自衛隊の協力を仰いだときに出てくる問題が大きくわけて2点ある。1点目は、我々は機会ある毎に汚染している患者を航空機やヘリコプターに乗せることの危険性はないと言ってきているが、現場の自衛官にそのような教育が徹底されていない。2点目は、被ばく医療のあり方では住民も事業者も区別しないとしているが、民間の事業者を搬送することに対する抵抗感や違和感がある。これらの点について、現場に理解してもらうという根本的な問題が残っているのではないかと思う。どこの基地からどこの基地へ搬送するかは当然のことであるが、そこに到達するために現場で搬送に携わる自衛官の理解と教育の問題がある。極端な場合、現場の搬送に携わる自衛官と教育の機会で会った際、航空法違反である、危険物であると言われることがある。皆さんはおわかりだと思うが、現場ではそのような話が出てくる。放射線よりも命のほうが重要だとわかっていても、現場ではそこがネックになってくる。理解、教育という点を重視していかないと、根本的な問題の解決にならないと考えている。

【中込座長】 ご指摘のとおり、技術的な話だけではなく、メンタルの部分も大変重要であると思う。文科省は教育という点では専門機関でもあるので、専門家を派遣したり、地元の理解ある者を活用して、自衛隊の方々に対し、説得ではなく、理解を深めてもらうことは大変重要であると思う。

【野村委員】 自衛隊の件について、原子力災害の際は汚染や危険物が心配だといった話がでているようだが、核テロなどの際はまさに自衛隊が対応しなければならないはずだが、その認識からも理解されていないのか。

【明石委員】 外から見ていると2つの構造がある。自衛隊で放射線のテロに対応するため大宮に化学学校があり、そこの教官に対して別の立場として独自の教育を行っているが、その人たちが搬送にあたるわけではないため、事故現場で対応する人と搬送にあたる人のギャップが出ている。もっと一枚岩で対応してもらう、中での連絡をよくすることが必要ではないかと思う。

【木野室長】 文部科学省の取組を紹介してもらうと、現場の自衛官の放射線に対する意識はまだまだ低いため、被ばく医療研修を行っており、警察や消防も含めた搬送に関わる人を対象に放射線に関する研修を毎年行ってきている。ただ、人事異動などで人が入れ替わるため、全員に行き渡っているわけではないが、このような教育は引き続き実施していかなければならないと考えている。また、この勧告を受けて防衛省に対して、搬送への支援要請を行っているところであり、搬送体制の確立とともに、今後も理解増進を図って行かなければならないと考えている。

【中込座長】 昔に比べれば、消防や警察、自衛隊への教育は大分行き渡っているとは思うが、継続的に実施することが重要なので、他省庁とも協力してやっていただきたいと思う。

【山田委員】 井川委員より各県のモニタリングポストの御指摘があった件について、茨城県を含め、各県とも年2回の点検を行いる。また、ホームページでモニタリングポストのデータが見られるようになっており、茨城県では昨年より携帯電話でも見られる。何か異常があればすぐにわかるようになっている。また、ポストの位置について検討すべきとの御意見があったが、各県とも監視計画を作成しており、その計画を作るにあたっては、各地域の学識経験者に入っていただいて、妥当性を随時見直していることから、県のポストの位置については妥当であると考えている。

【数土委員】 先ほどの自衛隊の認識について、文科省で研修を行っているので、警察や消防にも幅広く継続的に実施していただければと思う。

<議題(3)今後の取組について(1)>

財団法人原子力安全技術センター 秋山氏より資料8-3-1に関して説明を行った。主な質疑応答は以下のとおり。

【衣笠委員】 事後対策として、どのようなことを重点的に考えないといけないのかという全体像がわからない。例えば、地域でどのような被害がでるのかということである。地域の汚染、健康への不安、産業関係への補助などが考えられるが、その中でこの事後対策の位置づけはどこにあるのか。今のご説明は事後対策の全てではないはずであるので、もう少し全体像がわかるようにご説明いただけるとわかりやすくて安心する。

【木野室長】 資料2ページ目にある事後対策訓練に関する調査範囲をご覧いただけるとわかりやすいと思う。文部科学省や他省庁が何をするかは防災基本計画にその枠組みがあって、文科省は放射線に関する事項が重点部分となっている。事後対策として汚染した地域を誰が除染するのか、一義的には事業者責任であり、被害が大きければ自衛隊がやることになるが、文科省では防護対策の解除に係る部分をやることとして調査をしているところである。

【衣笠委員】 そのとおりかと思うが、全体像が分かるよう書かれていると親切で安心する。

【中込座長】 事業の体制が良いとか悪いとかをここで議論しても仕方がないので、何を目的にしてどの範囲をやっているのか、内容的な位置付けを明確に説明していただければと思う。

【野村委員】 資料5ページの20年度の課題に「屋内退避等の長期化」とあるが、これはどういうことなのか。2日ぐらい続けば避難などを考えるが、屋内退避の長期化というと想像がつかない。衣笠委員からの御指摘のとおり、どのような事後対策の項目があって、その中で屋内退避がどのように位置付けられているのか、全体像が見えないのでこのような質問をしている。

【木野室長】 事故の規模によって出てくる放射性物質の種類にもよるが、50ミリシーベルと10ミリシーベルトの範囲で、例えばヨウ素の場合は半減期が8日なので、その間、屋内に閉じこもっている住民の水や食料をどうしたらいいかということで、屋内退避の長期化と記載してある。

【野村委員】 屋内退避はあくまでやり過ごす対策であって、これの長期化は通常耐えられるものではない。核爆弾による被災施設のように何日も地下に入っていなければならないような場合は別として、原子力防災では想定していないはずである。また、避難であれば1週間程度を目途として、あまりにも長くなるようであれば移転なども考えることになる。事後対策をどのフェーズとして捉えるのか、そこにずっといていいのかどうか、飲食物摂取制限を行った際に何年もやっていいものなのかどうか、そのあたりのデザインがどのようになっているのかわからない。

【中込座長】 これは課題の中に入っているので、長期化ということをどうのように考えるのか、論理的に分かりやすく説明していただければと思う。

<議題(3)今後の取組について(2)>

独立行政法人日本原子力研究開発機構 福本氏より資料8-3-2に関して説明を行った。主な質疑応答は以下のとおり。

【明石委員】 IAEAのConvExについて、放医研やJAEAも参加しているが、IAEAにRANETというシステムがあって、それに対して日本は国として正式に参加の表明をしていない。各専門家で登録されている人や、アジアでは韓国やいくつかの国が参加を表明している。IAEAから放医研として参加を求められているが、これについて、文科省はどのように考えているのか。

【木野室長】 RANETについては、外務省が窓口になっており、文科省からは参加意向を示しているが、外務省としては、全面的な参加ではなく、まずは技術的アドバイスとしての参加を考えているところである。IAEAに行っている日本側の人から、日本もRANETに参加すべきとの意見も寄せられていることから、調整をしているところである。

【中込座長】 国際機関への参加などの案件については、政府は勉強はするけどもなかなか現場にはいかず、財団や独法などの専門家を派遣することが多いが、政府の人が実際に現場の空気を味わうことは大変重要なことかと思う。2年や3年での異動の話とは別として、国として参加することが重要なので、国として取り組んでいただきたい。

【井川委員】 原発の海外事例となっているが、日本には再処理施設があるが、こちらはどのようになっているのか。また、事後対策とも関係するが、健康面に関して、厚生労働省との間の関係がどのようになっているのか、はっきり整理されていないような気がする。以前に衣笠委員のところで、ヨウ素だけではなく内部被ばくした場合のキレート剤に関するマニュアルを作成されているかと思うが、避難や解除といったことをやるのもいいが、健康面に関して文科省としては厚労省に任せっきりなのか。厚労省がこのようなことを自主的にやるとは思えない。医薬品の問題について、どのように検討されていくつもりなのか。逃げてばかりいると、文科省は国民の健康に対して無責任だったという批判から免れなくなる。

【木野室長】 キレート剤の問題であるが、薬事法としてまだ日本で認可が下りていない状況である。放医研では、いざというときに備えてある程度備蓄しているが、本来であれば、薬事法での認可が下りて、正式な薬として日本に広まるといいと思うので、文科省からも働きかけをしているが、なかなか難しいところである。

【井川委員】 今の状態で日本に広まるという文科省の認識について、薬事法上で優先的にそのような薬の認可を取ろうと考える企業があると思えないし、知見があるともとても思えないので、しかるべき対応を取るべきで、認識も甘いのではないかと思う。衣笠委員のところで文科省は勉強をしたほうがよいのではないかと思う。

【中込座長】 これは緊急時の問題であり、極端な話として、少々不潔な水も飲まなければならないかも知れないので、まずはここを考える必要がある。通常の法律の規制でなりたたないからこそ緊急時であると理解しているので、それも含めてご検討いただければと思う。

【明石委員】 我々も水面下で色々なことをしているが、マーケットがないため、メーカーとしては売る市場がないので受け入れない状態となっている。アメリカが最近多くの薬を承認したのは、ナショナル・ストック・パイルというシステムを作って、国が定期的に買い入れることとした。日本も国としてこのようなシステムを作ってもらうのが、一つの良い解決方法ではないかと考えている。

【野村委員】 文科省に全てを言うのは難しいものがある。アメリカの例では、訓練の評価の仕組みとして、事業者についてはNRCが、政府、自治体、防災関係機関が絡む防災基本計画全体については、FEMAが評価を行い、機能するかどうかを確認することになっている。先ほど説明があった総務省の評価価値の位置づけがよく理解できないが、我が国でも原子力防災全体が機能するようになっているかどうか評価を行う機関あるいは仕組みを作っていくべきである。

【中込座長】 まさにそのとおりである。文科省は一つの規制当局であって、ここだけが頑張ったとしても、他の規制当局が集まって国となった場合、50点や60点ぐらいになっているのではないかと思う。本当はそれぞれの規制当局が集まった場合に100点に近くないといけない。各省庁は頑張っているが、危機管理を国全体として取り組んでいかなければいけないと思う。文科省もこの一機関として認識してもらい、いい取組を発進していただければと思う。

<議題(3)今後の取組について(3)>

財団法人原子力安全技術センター 雑賀氏より資料8-3-3に関して説明を行った。主な質疑応答は以下のとおり。

【井川委員】 最後のページの6.に文部科学省の役割として「医薬品の備蓄」とあるが、これはどのようになっているのか。

【衣笠委員】 この資料では「示されている」と記載されているが、被害者の治療、治療関連情報の提供、医薬品の備蓄は文科省だけで対応しきれないことは誰が見ても明らかである。これらは「原因物質分析、特定」とは質が違うと思うが、そのあたりはどのように認識されているのか。

【中込座長】 ここに記載されている項目は必ずしも文科省だけに与えられたものではないと思う。

【雑賀氏】 文科省だけに丸がついているわけではなく、医薬品や治療のところには厚労省に二重丸が付いている。霞が関としては、文科省がその一端を担っているという認識であり、そのような表が付いている。

【中込座長】 文科省が所管している試験研究炉などでは、ヨウ素剤などを用意しておく必要があるとして、一部含まれているものがあるのではないかと思う。

【井川委員】 二重丸か一重丸かに関わらず、内閣危機管理監決裁の文章で文科省も一端を担っているという現実を踏まえると、文科省においても一重丸としての役割を果たして情報発信し、明確に役割分担をすべきものではないかと思う。

【佐藤対策官】 補足すると、NBCテロに関しては、今年度になって初めて東京都と横浜市が核テロの訓練を行ったところで、国・地方ともに、現在体制を整えつつある状況である。文科省としても、近年になって資料8-3-3のような調査を始めたところである。また、核テロが発生した場合の関係府省の体制については、国民保護指針の中で、原子力施設災害に準じるという扱いになっており、文科省としても、施設災害に準じて対応することとしている。しかしながら、原子力施設のない県に対しては、防災資機材がそろっていないことも考えられるので、この場合にどのように対応するのかということの調査を進めている。今後、さらに検討を進めていきたいと考えている。

【中込座長】 その点では期待をしているので、腰が引けていると思われないように頑張っていただきたいと思う。

【野村委員】 文科省からも話があったように、原子力施設がないところでこのような被害が出た場合の文科省の役割は大きい。自治体として原子力施設を対象に準備した緊急時モニタリング体制がないところでは、国の責任おいて実施しなければならない。これについては、しっかりとした計画を作っていただき、実際に訓練をして機能することを確認していただきたい。

<議題(4)その他>

主な質疑応答は以下のとおり。

【斉藤委員】 原子力センターに所属している観点からお願いをしたい。人材の教育として文科省で色々とされており、活用させていただいている。あと2、3年するとこれまでモニタリングの過去の経緯を知っている人間がいなくなってしまう。技術や知見の継承のため、モニタリング指針の解説書のようなものを国が率先して作成していただきたい。例えば、分析センターや原子力安全技術センターで実施している個々の研修テキストをあわせて編集することでも良いものができると思う。もう一つ、SPEEDIについて、高所の気象データは線量などの予測や検証のために非常に重要である。気象庁がウィンドプローファイラーという高所気象を測定する機器を全国に設置しているが、青森県にはなくカバーされていない。青森県の中央辺りに設置しようとしたが、電波を発する機器のため、航空機の管制に支障をきたす恐れがあり、青森県は見送りになったということを仄聞している。青森県は、原子燃料サイクル施設、東北電力東通原発があり、これから大間原発、中間貯蔵、MOX工場や東電東通原発の立地が進められている。このようなことから、是非、青森県、特に六ヶ所村へのウィンドプローファイラーの設置を文科省から気象庁へ働きかけていただきたい。

   以上

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