原子力防災検討会(第7回) 議事要旨

1.日時

平成20年3月21日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省(合同庁舎7号館)16階 16F2会議室

3.議題

  1. 原子力災害対策特別措置法施行規則の改正について
  2. 新潟県中越沖地震に係る対応について
  3. 財団法人原子力安全技術センターにおけるモニタリングシステムの開発状況について
  4. 平成19年度原子力防災に係る文部科学省の取組について
  5. その他

4.配付資料

  • 資料7‐1: 原子力災害対策特別措置法施行規則の改正について  
  • 資料7‐2: 新潟県中越沖地震に係る対応について
  • 資料7‐3: 財団法人原子力安全技術センターにおけるモニタリングシステムの開発状況
  • 資料7‐4‐1: 平成19年度原子力防災に係る取組について
  • 資料7‐4‐2: 平成19年度原子力防災訓練・研修について
  • 参考資料  
  • ○原子力災害対策特別措置法の施行状況について
  • ○中越沖地震における原子力施設に関する自衛消防及び情報提供に関するWG報告書
  • ○中越沖地震における原子力施設に関する自衛消防及び情報提供に関するWG参考資料

5.出席者

委員

中込座長、明石委員、飯田委員、井川委員、池内委員、齋藤委員、首藤委員、数土委員、山下委員、池田氏(山田委員代理)

文部科学省

川原田科学技術・学術政策局次長、野家原子力安全課長、木野防災環境対策室長、松原防災管理対策官、宮本専門官

オブザーバー

恒吉氏(財団法人原子力安全技術センター)

6.議事録

 <議題(1)原子力災害対策特別措置法施行規則の改正について>

 松原対策官より資料7‐1に関して説明を行った。質疑応答は特になし。   

<議題(2)新潟県中越沖地震に係る対応について>

 木野防災環境対策室長より資料7‐2に関して説明を行った。主な質疑応答は以下のとおり。

【池内委員】   資料4ページの2.に、地震の影響により管理区域から非管理区域へ放射性物質が漏えいしたとあるが、どのようにして漏えいしたのか。また、放水口から海へ放出したとあるが、どこで放射能の測定を行っているのか。

【木野室長】   地震により使用済み燃料プールの水面が大きく波打ち、フロアに漏れ、燃料交換機給電ボックスに流入した。ここがきちんと密閉されていればよかったが、電源ケーブルの貫通孔を伝い、非管理区域に漏えいし、排水溝を伝って下へ流れ、非放射性の排水タンクに流入した。非放射性の排水タンクは、一定水位を超えると自動的に排水する仕組みとなっており、チェックされずに海に放出されてしまった。管理区域からの水は、別の放射性の排水タンクに入り、きちんと測定され、ある一定以下に放射性物質濃度を低減した上で放出しているが、今回は非管理区域へ流入したことが問題であった。

【池内委員】   非管理区域では、放射能の測定は自動的に実施しているのか。

【木野室長】   非管理区域のため、おそらく実施していなかったはずである。

【中込座長】  漏えいした放射線量は、バックグラウンドレベル程度と非常に低いが、技術的に測定可能なのか。

【木野室長】   自然界から受けるレベルの10億分の1とあるが、測定すればきちんと値を出せる。

【池内委員】   Ge半導体検出器で測定すれば明らかにわかる。  

【数土委員】   11ページの広報の仕方であるが、国民からすると放射性物質は漏れていないということを最初に発信してもらえると安心することができる。広報というのは、現場の事象ばかりにとらわれず、国民側に立ち、安全・安心の観点から、どのような事項を優先し、情報を発信していくかが大変重要である。
 また、地震発生当時は、環境防災Nネットのホームページへのアクセスが非常に多かった。知っている人は見るが、そのようなホームページがあることを国民に知らせることは安心情報に繋がったという教訓でもあるのではないかと考えている。

【明石委員】   4ページの4.にある主排気筒からの放射性物質の放出について、住民が知らされたのはいつ頃か。新潟県庁から本件に関して住民が不安になっているので対応してほしいという問合せを受けた。  

【木野室長】   記憶が定かではないが、海への放出は発災した日の夜で、排気筒からの放出は発災翌日頃だったと思う。

【井川委員】   東電は、発災直後に主排気筒から放射性物質が放出していることを認識しておらず、定期測定の際に確認したようなので、2、3日程度後だったと思う。本来は、原子炉が停止した場合、排気筒のファンを停止する必要があったが、他の事に気を取られていて、止め忘れていた事が原因であった。

【中込座長】   4、11、17ページの内容が非常に関連している。当時、甘利大臣や安倍総理がすぐに現地に出向いた。そのとき東電側は、放射性物質を含んだ水が海水に放出されていたことを把握しておらず、異常はないと答えた。それから24時間以上経って、水漏れ、主排気筒からの漏えいの事実が発覚したため、大臣への報告とは異なる事態が発生した事が一つの反省点である。
 また、広報の関係では、東電から地元住民に対して何も報告がなく、プレス発表なども本社がある東京を中心に進めたため、地元のプレスにも東電からの公式発表が流れていなかったことが問題点であった。17ページに国による提供とあるが、本当に国がやるのか。第一報として事業者が地元住民に情報提供するとともに、東京の本社でも行う必要があるのではないか。国では情報収集に時間がかかる。中越沖地震の時は、国と事業者のどちらが悪かったのか。  

【飯田委員】   JCO事故の教訓として、オフサイトセンターを設置して、情報発信については国が一元化を図ることとしているので、国が中心となって情報発信をしていくべきである。

【池田氏】   オフサイトセンターの関係で、保安院で作成された自衛消防・情報提供WGでは、オフサイトセンターを活用していこうという話が出ており、話合いを進めているところである。今後は文部科学省とも相談させて頂きたい。

【井川委員】  今回のケースでは、国、県、事業者、メディアの全ての対応が悪かったと感じている。
 官邸や大臣については、今回政治的な側面が非常に強く、また、県知事も含め、風評等を沈めるような情報提供が適切ではなかった。
 地域住民やメディアは何が起きているのかを知りたいが、東電の事務棟が崩壊していて、もし休日でなければ職員が何人も亡くなったかもしれない状況下で、事務機能が失われており、情報発信が出来る状況ではなかった。これは体制の問題もあるが、人がいるような執務室の耐震設計が甘かったことが問題である。
 オフサイトセンターについては、法律により一定の放射能レベル以上でないと対応する必要がなく、沈黙して語らずという状態が問題であった。
 メディアについては、少ない情報を過剰に拡大して報道をやったことが問題であった。
 従って、各々が今回の問題点を認識して改善することが必要であり、保安院ではこれらに関する改善策を出して、一歩前進した形になっている。今回の検討会では、これらに対して、文科省が対応しているのかどうかを確認することが必要だと考えている。

【中込座長】   これを含めて文科省が管轄している施設については、水平展開を実施し、調査しており、適切に対応されているはずである。

【野家課長】   今回の地震では、サイト内の状況を文科省では把握出来なかったが、サイト外はNネットでモニタリングポストのデータを確認できた。震災時は休日のため、自宅で防災環境対策室長より、Nネットでモニタリングポストのデータを確認し問題がなく、原子炉も停止しているとの報告を受けて安心していた。その情報をきちんと外に向けて発信していればもう少し安心してもらえたのではないかと考えている。
 また、県も同様にNネットで問題ないことを確認していたが、このような情報をきちんと広報するところまで頭が回らなかった。水漏れや排気筒からの漏えいが発覚してから、環境放射能については問題ないということを発表したが、手遅れであった。最初のうちに監視上問題がないことについて情報発信をしていれば良かったと県の担当者と今回の反省点だという話をした。
 もんじゅの時に、原子力防災の話ではないので事業者中心の対応とし、科学技術庁が積極的に動かなかったことで社会的批判を受けた。翌年に起きた動燃のアスファルト固化施設の爆発事故では、もんじゅの教訓を活かし、科学技術庁が積極的に動き、モニタリング値に異常がなかったと夜中にプレス発表をした。当時、防災環境対策室長としてプレス対応を行ったが、プレスが安心していくのを手にとるように感じた経験がある。
 事故・トラブルが起きた場合は、もう少し役所が前に出て、現状わかっている情報を説明することが重要ではないかと考えている。  

【中込座長】   JCO事故後、私は日本の調査団の一員として、アメリカの危機管理を調査した。そこでわかったことは、緊急時は情報が非常に重要で、情報には早い情報と遅い情報の2種類があることである。当然ながら、早い情報は、9割は信憑性がないが状況は共有できる、遅い情報は正確ではあるが事態が進んでしまっている、では緊急時はどちらをとるべきなのか。緊急時では、当然早い情報が必要である。早い情報は不確かな情報を多く含んでおり、後になって変更されることがあるが、日本の政治家やマスコミは、事前に出した情報と異なると責め立てる風土がある。そのために正確な情報としたり、揚げ足をとられないようにするために、どんどん情報発信が遅くなり、後手後手になる。そうするとなぜ早く言わないのかと責められる。従って、どちらを選択しても責められるのであれば、どんどん情報を出していく方がいいのではないかと考えている。その点で、日本の危機管理は、国、事業者、国民の全てが未熟であり、これについては、文科省や経産省の委員会で述べさせていただいている。自分も含めて、この点に関しては反省すべき点であると考えている。  

【井川委員】   そのとおりである。今回の水漏れは検査するまでに時間がかかり、深夜の発表となったことに対して、甘利大臣が政治記者の前で激怒したところを見せてしまったために大騒ぎになった。政治家もメディアも、今後同様のことがあれば同じような騒ぎを繰り返すことになるので、関係者には発表文等の欄外に、以上の情報は全て暫定情報である等の断りを入れて情報発信すべきと提案しているが、まだそのようになされていない。

【中込座長】   先ほど井川委員から東電の事務所の耐震性に関して問題があった旨の発言内容について、原子力防災に関する私の考え方としては、まず原子炉を安全に止め、放射性物質が外部にでないようにすることが一番重要であることから、原子炉建屋などの耐震性は最大クラスで設計している。その他の建物については、一般建築物と同等の耐震クラスで設計している一般防災であるため、全てを原子力防災とすることは様々な面で困難ではないかと考えている。その点について井川委員に意見を伺いたい。

【井川委員】   様々な意見はあるが、原子力は色々な問題が起きることを前提として、原子力防災のリスクではなく、長期的な経営リスクとして上乗せした対応をとらないと今後もたなくなるのではないかと考えている。地震が発生して4、5日後になってから原子炉の安全は確保されていると言わなければならなかったのは、原子力における一般防災の考え方が、今のままでは問題があるためだと認識している。これに関しては、あまり受け入れられていないが、いろいろな意見がある。  

【齋藤委員】   環境放射能を連続して測定することは非常に重要であると考えているが、今回新潟県が連続してモニタリングデータを出せたのは偶然であり、一般的には電源や回線の耐震性や多重化の問題がある。今回、機器については据付けがしっかりされていたこと、電源については自家発電を付けていたこと、回線についてはたまたま大丈夫であったことが重なった。放調協ではこれらについて調査しているが、今後どうするかが課題である。
 また、国としては、原子力安全委員会が取りまとめている「モニタリング指針」があり、その下位の解説書等さらに具体的な記述があるが、これに対して協議会から要望を出している。このような問題に対して、国も積極的に検討を進めてマニュアルを作成し、自治体に対して指導していただきたい。

 <議題(3)財団法人原子力安全技術センターにおけるモニタリングシステムの開発状況について>

 財団法人原子力安全技術センターより資料7‐3に関して説明を行った。主な質疑応答は以下のとおり。

 【齋藤委員】   平常時のモニタリングは自治体が行っているが、緊急時モニタリングについては、国が放射線班としてだけではなく、モニタリングの実施主体として自らも活動してほしいと常々要望している。その中で、原安技センターが実施している無人ヘリによる環境放射能測定の技術開発は、国が積極的に関与をされていることであり、非常に重要なことなので、引き続き積極的に取り組んで頂きたい。
 開発された無人ヘリの整備については、自治体の範囲を超えるものであるため、自治体で整備するのではなく、原安技センターが整備し、緊急時に原安技センターから出動する体制としていただきたい。
 また、青森県の地域防災計画には、原安技センターが指定機関として位置づけられているが、モニタリング指針に原安技センターが位置づけられていないので、国の防災計画に位置付ける等、明確にしていただきたいと考えている。

【中込座長】   この計画は継続性のあるものか。

【恒吉氏】   これまで継続的に開発してきており、航空機サーベイシステムは平成23年度以降の本格運用に向けて、また、無人ヘリはもうしばらく仕様等を検討しながら、開発を進めていく予定である。

【井川委員】   詳細航空機サーベイは、平成18年度までに基本調査が終了し、訓練にも参加したとあるが、今回の地震で出動したのか。開発のための開発、行き詰まった開発になっていないかが心配である。宝の持ち腐れにならぬよう、実運用を常に心がけていないと、技術の問題点や課題が見つからない。  

【恒吉氏】   開発段階での試験や実運用を心がけた開発は、色々な面で隠された課題が浮き彫りとなることから、非常に有効なことであるが、今回の地震では出動していない。詳細航空機サーベイシステムは、現在、緊急時に比較するためのバックグラウンドデータを取得しているところである。これが完了した後で災害時に出動させることでその影響がよくわかるようになる。従って、現段階では、我々から積極的に出動させていない。  

【首藤委員】   これについては、オフサイトセンターと同様、原子力災害時用に開発したものなので、原子力災害ではないから使用されないという問題がある。原子力災害時用に作ったものであっても、原子力災害ではないということを広報するために活用すべきであり、このことを考慮した上で開発するべきである。中越沖地震の対応の話に戻ってしまうが、保安院で検討された報告書において大きな変革は、オフサイトセンターを原子力災害以外で活用できるようにするとしたことである。これに対して、文科省も所管のオフサイトセンターを同様に活用することとしているのか確認したい。

【木野室長】   保安院では、原子力災害時以外でもオフサイトセンターを活用するとされていることは承知している。文科省ではまだそのように活用することとはしていない。これは、文科省が専管している川崎と東大阪の試験研究炉は、他の施設と比較して規模が非常に小さく、住民へのインパクトも発電炉周辺に比べ少ないからである。今後、地震発生時の対応について、考えていかなければならない課題とは認識している。  

【野家課長】   今のご指摘の点であるが、文科省と経産省のオフサイトセンターでは、機能的に装備が違う。
 一つとしては、経産省のオフサイトセンターでは、サイト内の情報が分かるシステムを持っているが、原子力防災のときに使用することとなっていたため、今回、これを活用しなかった。これを活用すれば電力側からの情報がなくても、オフサイトセンターで把握することができた可能性があったにもかかわらず、それを行わなかったことが問題だと指摘された。文科省ではそのようなシステムを持っていない。
 もう一つ、広報について、文科省では本省が一元的に行っているが、原子力発電所の場合、地域住民との関係が優先となるため、経産省はオフサイトセンターで広報を行うこととなっている。しかし、実際はそれがなされておらず、また、ホームページの更新もされていなかったことが指摘された。
 文科省は、災害であっても原子力災害ではないから国は何もしないというわけではなく、安全・安心を得るために全面に出て対応しなければならないという覚悟はある。しかし、オフサイトセンターの活用については、現状で問題ないのではないかと考えている。  

【中込座長】   国民から見れば、国は一つである。経産省や文科省の違いを話されても理由にならない。オフサイトセンターがあることで国民に安心してもらうためには、所管の問題ではなく、国の対応が一本化している必要がある。規制当局として、このような話になってしまうことは理解できるが、国民から見ると理解できない。国としての一枚岩の対応を期待している。  

 <議題(4)平成19年度原子力防災に係る文部科学省の取組について>

 【井川委員】   防災訓練等の取組を伺うと、新潟中越沖地震の教訓が反映されていないと感じる。先ほども述べさせていただいたが、国は一定基準以下の場合は動かない。しかし、今回の地震では、その場合も対応すべきであることが教訓の一つとなった。先ほど木野室長からは、ある一定以下の場合でのオフサイトセンターの活用は考えていないとの発言があったが、オフサイトセンターを活用するべき事象以下の場合が頻発した場合、どのように対応するのかが問題となっている。これをしっかりと見直して、防災訓練自体も考え直さないと文科省も今後トラブルに巻き込まれる可能性があるということを自覚したほうがよいのではないか。

【木野室長】   文科省が所管する試験研究炉で原災法以下の事故が起こった場合の対応については、体制も含め既に整っている。

【中込座長】   オフサイトセンターは事故が起こったときは必要であるが、起こる可能性は非常に少ない。従って、平常時にどのように活用するかが非常に重要であり、首藤委員や井川委員はこの点をご指摘されている。事故対応が重要なことだとはわかっているが、それだけに特化するのではなく、通常や異常がどのような状態なのかを理解してもらうことをオフサイトセンターの大きな目的の一つとするべきではないかと考えている。

【川原田次長】   原子力防災にこれまで長く携わってきたため、井川委員のご指摘はよく理解できる。中越沖地震は結果的には原子力災害対策の事象には至らなかったが、発災した当時は、原子力災害対策につながる可能性もありえたにもかかわらず、対応に不備があったため、不信感を抱かれてしまった。これに対する対策や日頃の訓練は必要であると認識している。従って、行政的に考えると災害ではないのでなぜ対応するのかということになるかもしれないが、全体の対応体制等について検討させていただければと考えている。

  以上

お問合せ先

科学技術・学術政策局原子力安全課防災環境対策室

担当:松原、長山
電話番号:03‐6734‐4038
ファクシミリ番号:03‐6734‐4042

(科学技術・学術政策局原子力安全課防災環境対策室)