環境放射能評価検討会(第1回) 議事要旨

1.日時

平成18年11月6日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省10F4会議室

3.議題

  1. 環境放射能評価検討会の開催及び運営について
  2. 平成17年度海洋環境放射能総合評価事業の成果について
  3. 環境放射能調査研究の評価検討について
  4. その他

4.配付資料

  • 資料1.環境放射能評価検討会の開催及び運営について
  • 資料2.平成17年度海洋環境放射能総合評価事業(案)
  • 資料3.平成17年度海洋環境放射能総合評価事業成果報告書‐海洋放射能調査、放射能調査等の資料の収集・整理、総合評価のための解析調査及び普及‐
  • 資料4.平成17年度海洋環境放射能総合評価事業成果報告書‐温排水等により飼育した海産生物に関する放射能調査及び評価‐
  • 資料5.委員から頂戴したコメント
  • 資料6.環境放射能調査研究の評価検討について(案)
  • 参考資料1.横須賀港における放射能調査の結果について
  • 参考資料2.北朝鮮による地下核実験発表に伴う当面の対応措置について
  • 参考資料3.放射能調査研究に係る評価検討報告書(平成14年9月)

5.出席者

委員

 赤羽委員、浅野委員、◎飯田委員、長見委員、木村委員、小佐古委員、津旨委員、東嶋委員、長岡委員、成田委員、橋本委員、久松委員、廣瀬委員、皆川委員、宮原委員、吉岡委員
※◎主査

文部科学省

文部科学省袴着科学技術・学術政策局次長、松川防災環境対策室長、高橋防災環境対策室長補佐、猪狩調整第一係長

オブザーバー

財団法人海洋生物環境研究所森本理事長、(以下海生研)海生研城戸理事、海生研御園生総括研究員、財団法人温水養魚開発協会岩野課長(以下温水協)

6.議事進行

○委員紹介及び主査(座長)として飯田委員を選出

○事務局より資料1、2について説明

○説明者より資料3、4について説明

○資料5について事務局、説明者より説明

○資料6については、次回検討会までに調整して報告

7.主な質疑応答

<資料1関係‐環境放射能評価検討会の開催及び運営について‐>

【小佐古委員】かつて環境放射能を測定するということはいくつかの目的を持って実施された。当初は大気圏核実験の残滓の測定、あるいはバックグラウンド調査等であった。現在CTBTにより地下核実験を含めてやらない方向になっており、大気圏に出てきているものもかなり減衰してきている。その中で核実験由来の調査を見直すべきという話もあったところである。しかしながら、本年は、横須賀港の原子力艦の調査結果、国外における核実験の情報等の原子力施設の緊急時の対応に捉えて、社会としても話題になっており、対応するカウンターパートが無いので、環境関連の会議に取り上げられることとなっている。そのときにもともとは、原子力施設の放射能の測定等を実施し、バックグラウンドを見るというレベルの話のものが、話が広がってきており、どこかの核実験を検知するということになった場合、放射能を測るということではなくて、他と組み合わせて議論するべきものになってくる。防災計画と似たところがあり、原子力防災だけをやっていても、他の計画とのリンクがなければ、話は進まない。よってこの委員会でどのレベルまでやるのかということを今後議論していただければと思う。

【廣瀬委員】環境調査には2つの意味があり、諸外国から運ばれてくる放射能の対応、もうひとつは国内の原子力防災である。従来は環境放射能そのものの調査はどちらかといえば、核実験とか外国で発生した関連事象を監視するかという面が強かったが、最近は原子力防災の面もかなり含まれてくるようになり、境界線が曖昧になってきている。文科省の放射能調査研究では、どちらが重点かということである。それぞれの目的により監視のレベルが違ってくることとなり、また、それぞれのケースに応じての測定が異なってくることになり、どういう観点で測定をするのかということが重要である。

【飯田主査】評価委員会の性格をどの範囲まで広げるかということを今後議論していきたい。

【事務局】政府の内部では、国民及び環境への影響の観点からの調査と核実験実施の検知という2種類の話があった。今回は放射能対策連絡会議の場において関係省庁が調査を行ったものは、国民及び環境への影響という観点からである。また検知ということについては、別な枠組みで行うこととなる。少なくともこの場で国外での核実験等が実施されたかどうかの検知は文部科学省の役割にはなっていない本検討会はそこまで広げなくても良いのではないかと考えている。

【吉岡委員】原子力艦の寄港に関しては、「65Znの検出が~」という新聞記事が掲載されたことがあった。国連化学委員会には諸外国から核種組成は提出されている。日本ではまだ65Znが検出されたことはない。そういう情報は財産としてあるにもかかわらず関係者にも伝わっておらず、一般にも同様である。よって検討会の性格を議論するときには今までの実績としてどういう財産(情報)があるのかということを踏まえて議論していただきたい。

<資料2関係平成17年度海洋環境放射能総合評価事業(案)について>

【皆川委員】本事業は原子力施設周辺海域の漁場を対象とした放射能影響調査であり、その主要な目的は十分に果たしているものと判断できる。本事業は、我が国の原子力政策上必要な事業であると思われるので今後も実施されていくことを望む。

【事務局】本事業は今後とも実施していくことが重要と考えている。

【皆川委員】調査海域としては、妥当と思われる。ただし、青森県で現在計画中の大間原子力発電所は平成24年操業予定であることから、今後適当な時期に調査海域として加えていく必要があるだろう。海域としては、青森県下北半島むつ湾口側から北海道渡島半島南岸域(もしくは津軽海峡南北側海域)が適切と思われる。

【海生研】操業開始までには対応を考えたい。その際には、他海域と同様、海流・海底地形等を考慮して、風間浦~大間崎~佐井の沖合10~20kmの範囲に測点を配することになる。現在、恵山岬~尻屋崎の間に支援測点を配置してあるので、陸奥湾口、白神岬~竜飛崎の間に支援測点を設けることにやぶさかではない。

【津旨委員】原子力発電所および核燃料サイクル施設において、周辺海域に汚染がないことを確認し続けているものである。そういった目的において、十分に低いレベルの放射能を計測しており、目的を達している。国民の理解の増進という観点で、より分かりやすい表現を検討してはどうか。例えば、原子力発電所および核燃料サイクル施設の排水の影響の及ばない海域の調査結果を比較することは興味深い。または、低レベルの放射能は大気圏核実験とチェルノブイリ事故によるもので、原子力発電所および核燃料サイクル施設からの影響はないことを明示するために、可能なサイトについては、運開前後で変化がないことなどを盛り込む必要はないか?さらに、このような低レベルの放射能が人間の健康に影響を及ぼさないことを示すことは可能か?

【事務局】原子力施設の排水の及ばない海域の調査との比較については、「わが国の」という限定を付けないといけない。それはさておき、大和堆・四国沖・襟裳沖の測点は今後も継続して調査したく思っている。運転開始前後の比較については、本事業で海洋放射能調査を始めた時(1984)に原子力発電所が一基も稼働していなかったサイトは、柏崎刈羽(運開:1985.9)、泊(運開:1989.6)、志賀(運開:1983.7)に限られる。北海道海域の調査を始めたのは1988年から、石川海域の調査を始めたのは1991年だから、新潟海域を含めて、運転開始前の傾向を把握するには調査期間が短すぎたと言える。人の健康に影響を及ぼさないことを示すことについては、「環境放射線モニタリングに関する指針」(平成13年)に従い、137Csによる公衆の被曝線量を計算すると、食物・飲物に含まれる40Kによる被曝の1/1000程度になる。健康影響を云々するようなレベルでないことは自明であり、漁業者の関心は、むしろ、濃度レベルの変化の有無に向いているようであったので、報告書では特に言及していない。

【廣瀬委員】時間変動の観測は極めて重要である。このような変動は一般に指数関数で減少するので、濃度軸を対数で示すのが適切である。(NDは図では示すのは適切ではない。NDはゼロではない。)比較の基準は物理的半減期、次に海水の濃度変化、さらに魚類等になる。変動に付いて核種間の差の議論も必要である。)

【海生研】御指摘のとおり濃度軸は対数軸で示すのが正しいが、対数軸になじんだ方々にだけ結果の説明・報告をするわけではないので、今日のような形でのグラフ表記になったのだと思われる。NDを図に示したのは、全試料が検出下限値未満であった場合に欠測と間違えられるおそれがあったためであろうと思われるが、来年度以降、表記を工夫していく。

【成田委員】資料2のP4 1‐1‐1 海生生物試料3行目:2.の「生活期間が長い」の目安はどの程度の期間か。その際、当該漁場は、原子力施設地先海域なのか、もっと広い海域をさすのかも教えていただきたい。

【海生研】「生活期間が長い」については、本事業開始時にあげた魚種選定の際の留意事項では、1.当該漁場において漁獲量の多いもの、ないし漁業経営上主要なもの2.当該漁場に定着して棲息するもの、ないし生活史の相当期間滞留するものとなっている。いずれにしても、留意事項の趣旨から言えば、「生活期間が長い」とは3年以上5ないし6年程度を意味すると考えている。なお、スルメイカ・サケなどの回遊性の魚種は上記1.にあげた文言の中で読んでいる。「漁場」は当該原子力施設の地先の沖合で、小型底曳き・刺網などの漁業が行われている範囲としているが、施設者・漁業者の意向もあって、それより外側にずれることもあった

【成田委員】(漁獲される魚に2.の条件を当てはめると該当するものが無くなる可能性があり)考え方としては(望ましい)という程度の意味合いでよいか。

【海生研】結構である。

【成田委員】資料2 P11 表4、P12 表5:表中の有効数字の記載の整合性を図る意味からは、ND~0.06→ ND~0.06○(○の桁間で表示したほうが良い)0.038~0.08→0.038~0.08○ ND~0.06→ ND~0.06○

【海生研】平成14年度までは、分析センターから報告された数値を、検出限界値に関する海生研独自の考え方に基づき改変していた。その結果、分析センターの検出限界値と矛盾を生じることがあった。このため、平成15年度から、分析センターの報告値(有効数字2桁)をそのまま記載することにした。ご指摘のように桁をそろえる方が好ましいとは承知しているが、事情は上に陳べたとおりである。

【津旨委員】資料2 P. 11 1‐3 1‐3‐1については、Sr‐90が生物の骨に蓄積されやすいということを追記すべき。

【海生研】海産生物で90Srを測定対象としているのは核燃海域であるが、現地ではなぜこれを測定対象としたか、生物では肉部に検出されることはまれで、骨部に蓄積されやすいこと等を口頭で説明してきた。今年度作成のパンフレットには、90Srが骨部に蓄積されやすいことを陳べてある。

【廣瀬委員】環境の放射線影響が議論されている。その中でreference生物の概念がある。魚類等については、多くの研究成果が蓄積されているので、それに答えられる内容の成果を出して欲しい。

【海生研】ICRPが「環境の放射線防護」なる概念を持ちだしたことは承知しているが、チェルノブイリ事故で汚染がひどかった地区などでは意味があると思うが、日本近海ではそれを問題にしなければならない状況にはないと考えている。しかしながら、何かあってからでは間に合わないので、検討を始めることはやぶさかではない。なお、ICRPの言う「Reference 生物」からは概念が異なるかも知れないが、海域間の比較を、どの海域でも採れる海産生物(ヒラメ)の放射性核種濃度を調べることによって試みている。

【廣瀬委員】本件について、日本では魚類については関心が高いものである。かなり以前から研究成果が蓄積されているが、問題は、それが現在の研究や環境評価に適切に反映されているかどうかというところである。唯単に放射能に影響は無いということだけではなく、将来、環境評価や研究に、にどのように使えるかということを検討してもらいたい。

【成田委員】資料2 P13 1‐3‐3 海水試料(P73からP103 平成17年度発電所等海域海水試料の放射性核種濃度):下層海水の水深の選定の考え方を教えていただきたい。下層海水は、沈降性の核種が蓄積する底質の影響を受けて、表層水と核種によっては、放射性物質濃度が変化するので、その影響を見るという理由は分かるが、500~1000mと深い海域では、漁獲との関係で、そのくらいの深度を対象とした、漁獲対象となる海産生物がいるのか?また、放射能分析の対象となる漁獲対象の海産生物が生息する層の海水を採取したほうが良いと思われるが。(なお、海底土は、蓄積傾向を見る上で、その海域の水深が深ければ、深くても別の意義があると思われる。)(簡潔にまとめた形で標記するべきではないか。)

【海生研】下層水は、海底面から10~20m程度上で、安全に採水できる深さから採水することとしている。本事業開始時にあげた海水・海底土採取の測点選定の際の留意事項は、1.原子力発電所等の前面海域における主要漁場であること2.水深がおおむね50から100m程度であること3.海底表面が泥または砂泥で覆われていることである。実際には、陸棚が狭く、陸棚崖が急斜面であるなどの理由により、測点が200m以深になった海域もあるが、昭和61年度までの調査では、そのような測点でも水深200~320m程度で採水していた(これは、当該海域で行われている漁業を考慮したと言うよりは、使用した船の大きさ、積めたワイヤーの長さ・ウィンチの能力も関係したと思われる)。なお、昭和62年度以降は、全海域おしなべて底上10~15mでの採水になっている。ご指摘のように、500m以深では意味のある漁業は行われていないが、二十余年のデータを捨てるのも惜しく、継続性も重要と思われる。なお、青森および核燃海域ではPuのような沈降性の核種の拡散および移行に注目しなければならないので、底上10~20mの採水は必要と考えている。

【小佐古委員】日本には現在55基の原子力発電所があり、韓国でも20基の原子力発電所がある。海産生物を調査していて海底土とか下層水とか言っているが、魚は定住しているのか。日本海等で成長した魚が回遊してくれば、話は変わってくると思われる。日本しか原子力発電所を持っていないときには、放射能が検出されたという言い方は良いと思うが、少しメカニズムとか全体がどのようなパフォーマンスをしているかというところまで踏み込まないと測定したというデータの提示だけでは、分かりにくいということになる。魚種によっては定着性のものや回遊性のものもいると思われるので、やはりメカニズムまで入らないと全体として今の時期どうなっているのかを把握するべきだと思う。有効数字については、一般的に人への影響はなかったという言い方をするが、200mSv等の高い値が出ない限りは、多人数への影響とはいえないものである。原子炉事故の監視では何をやっているのかというと人への影響を見ているわけではなく、リスクマネージメントである。つまり、どのレベルのリスクマネージメントをやっているかを分かり易くレベル表示してもらえないと数字を並べて影響は無いといわれても何が起こっているのか分からない。原子炉ではレベル1,2又は大中小等の表示もある。そういうところを目指すというのも良いのではないか。【久松委員】トリチウムの濃度がBq/Lになっているが、組織自由水と有機結合型で分けて測定しているので、データの提示の際にどちらであるかを明記するべきである。また事故影響推定曲線の比較については、チェルノブイリ事故は地球規模で汚染が発生した場合なので、そういう場合にはという限定をつけた方がよいと思う。更に海水濃度との関連で解析したほうがよいと思う。

【海生研】今回提示したトリチウムのデータは組織自由水についてのものである。チェルノブイリのような事故で放射能が注入された場合、海水中の放射能濃度は事故後速やかにピークに達した後低下するシャープな変化を示すが、海産生物では海水の放射能濃度が下がった後で濃度が上がってくる傾向がある。放射能濃度のピークの出方が海水と海産生物では異なることを示すために提示した。

【吉岡委員】前述の【津旨委員】への【事務局】の回答について、運転開始時点で調査はできないというのは、調査の開始がそれ以降であったということであるが、そこにこの検討会の価値はあると考えている。さまざまな調査がさまざまな目的で行われているがそれは繋がっているものである。地方自治体が地先の調査を実施し、海生研がその沖合いを調査して全体としていわゆるバックグラウンドのレベルであった、安心であったということになっている。必要なのは、漏洩があってここから調査が始まるというときに、遡る部分はどうするのかということをたとえば今回得られている137Cs等のデータについて、チェルノブイルの影響はあるものの、施設寄与が加わったものはない。よって核実験影響であったということは、妥当であるという評価を与えて来たことを認めるのは良いのではないかと考える。そういうところも評価検討会の役割ではないかと思う。また人体への影響については、このようなレベルでは影響はあるはずはなく、INESの評価尺度で表しているということだが、日常的には通じるものではない。不幸な出発となった我国の原子力・放射線の世界では、国民・地域住民の理解と信頼が最も大切であり、先般定められた原子力政策大綱でもそう述べられている。一般に期待されているのは、発電所は汚染されていない、それで影響は無かったということである。学術的には詳細なデータということになるだろうが、実際にはこういう報告書が公表され、漁業関係者、地域住民にも伝えていかないとこの調査結果は活用されていないということになる。影響ということもなかなか伝わっていないのが現状である。NDだった場合は、マスコミは公表していても取り上げてくれない。という現状があることを踏まえていただきたい。【皆川委員】経年変動や季節変動をどのように考慮するかということであるが、今回報告のあった魚種については、それほど大きく回遊するものではないと考えている。従って今回調査対象の魚種は原子力施設周辺の影響を十分表していると思われる。ただ中には、広域回遊魚種もみられるが、それについては、この事業ではカバー出来かねるところかと考えている。他の省庁も含めて広域なバックグラウンド調査データが長年蓄積されているので、例えば異常値が出た場合、本事業で提出されたデータを比較した場合、施設由来のものなのかあるいは、他の要因があるものなのかというある程度の判断ができるのではないかと思う。そういう意味で魚類については過去の経年的な研究成果を活用するということは非常に良いことだと思う。

【津旨委員】資料2 P.13 1‐3‐3 下層水の定義が必要。後述の表を見ると30mから1000m程度となっている。これらの水深を"下層水"でまとめてよいのか。

【海生研】下層水は「底上10~20m」で採取した海水と定義している。

【廣瀬委員】海水の濃度については、海域間の差、海域内部でも分布が見られるかどうかについて議論が必要である。表面水に比べて深層水でばらつきが大きい原因は何か。堆積物についても海域差が大きいように見受けられる。その原因に付いても説明が必要である。

【海生研】対馬暖流、黒潮の流域では大きな差は見られない。核燃沖では津軽暖水と親潮の勢力関係で放射性核種濃度が変動することがある。海域内では通常違いは見られないが、核燃海域では、親潮の影響を受けやすい沖合の測点と津軽暖水の影響を受けやすい岸寄りの測点の間で差が見られることがある。下層水の放射性核種濃度にばらつきが大きいのは、採取深度が30~1000mとまちまちであるためである。海底土中の放射性核種濃度は海底土の性状により異なる。これについては、p15、16の「2 調査開始から平成17年度までの放射性核種濃度の変動状況」で簡単に触れてあるが、一般的に言って、砂質の場所では低く、シルト質の場所では高くなる。定常調査では採取した海底土の泥質を指で触った感じで、泥、細砂混じり泥、粗砂等のように分類しているだけなので、性状分析用の試料を採った場合を別とすれば、これ以上の議論は致し難いというのが実情である。

【橋本委員】資料2 P11~14までの結果を見ると、最高値でほとんどの試料及び核種で過去5年の最高値を上回っている。まとめの中で、"過去5年の測定値と同程度であった"としているが、少し減少傾向といった意味の記述を加えた方がいいのでは無いか。

【海生研】漁業者、あるいは自治体の関係者の関心は、むしろ、濃度レベルの変化の有無に向いているようだったので、まとめではそれについて陳べるのにとどまり、御指摘の点はp15、16の「2 調査開始から平成17年度までの放射性核種濃度の変動状況」で触れるようにした。

【木村委員】本調査については、モニタリングを実施している者の目から見れば、回遊している魚や原子力施設の沖合の調査を行っているということからも、モニタリング結果の評価に役立つと思われる。今後再処理工場が本格的に稼動した場合に施設からの寄与ということが調査結果の中にもみられることが予想される。しかし、過去より高いデータについてすべて再処理工場の影響であると思われるような記述とならないよう、メカニズムをきちんと把握して、施設寄与かそうでないのか明確にコメントしていただきたい。トリチウムについては、濃縮という表現が気になったが、濃縮される核種とは今も言われていない、また、海水もスポット的に採取したものをもとに評価をすることになるので、そこに長く棲んでいる海産生物のトリチウム濃度とスポット的に採取した海水のトリチウム濃度を単純に比較するというのは危険をはらんでいる。それについては、評価の仕方を考慮していただきたい。

【小佐古委員】判断を何処(国、地方、現場)がするのかというところもあるが、測定した結果だけではなく、少し踏み込んでメカニズムとか何が起こった時にどうなるといったものを蓄積し、それに対してどういうアクションをするのかという方向に委員会を舵取りしていただければと思う。この種の調査は何も起こらなければ、前回と同じということで、良いのだが、時々短期的な異常値を示すときがある。それについては理由があり、大気圏の時には、降雨や積雪によって測定値が変わったり、海洋の場合はあるときには変わるということも短期的に起こる。あるいは長期的に日本海全体の海域のモデリングがいわれたり、あるいは再処理施設ということになったら、何かが起こる以前に、短期的、長期的なものあるいはその後ろにあるメカニズム的なものを少しずつ紹介して、国として全体の方針をだして頂く、それがあれば、地方行政府としても的確な判断ができるし、あるいは場合によれば、モニタリングやサンプリングをやる経費についてメカニズムが解明されれば、我々にとって有効なデータの取り方ができるということになる。ただ格子を切るのではなくて、海域とか海流とか魚のパフォーマンス全体をみれば少し重点的に測定したいところが、見えてくる。時間や手間がかかることと認識しているが、メカニズムに踏み込んだより有効な経費の使い方を目指していただければと思う。

【廣瀬委員】海洋の場合は単独のデータだけではなく、他のデータと繋がっているので、いかにデータを使って一般に説得力のある形で説明できるかということが非常に重要である。例えばトリチウム濃度についても他に測っていないので高いのか低いのか比較できない。現実には、様々な海域で国内外もふくめて変動していることが知られている。そういうことも参考にして、時間的にどういう位置付けにあるのかということも含めて評価していかないと難しいと思う。また変動を起こす原因についても、どういうメカニズムかというところまで踏み込んでいただけると、もっと分かり易くなる。

【飯田主査】海洋環境放射能総合評価事業海洋放射能調査結果については、今回はこれまでと同じ水準であったということで確認されたということにする。記載内容については、資料2P14の形で結論とする。変化があったところは、P15、16でカバーしていると言うことで、内容については本検討会で確認された。

<資料4関係平成17年度海洋環境放射能総合評価事業成果報告書‐温排水等により飼育した海産生物に関する放射能調査及び評価‐>

【飯田主査】調査内容については問題は無いが、「まえがき」に書かれている事業の目的が明確ではない。この事業を今後も続けていく予定であれば、何のためにこの調査をおこなっているか明確に記述する必要がある。特に、温排水を利用した育種における温排水中の放射能の影響なのか、飼餌料中に含まれる放射能の濃縮割合なのか、曖昧である。

【温水協】一般に魚体に取り込まれる放射性核種は、餌及び海水から取り込まれるため、温排水中の放射能と、飼餌料中に含まれる放射能の両方の影響が想定される。よって、「まえがき」の事業目的の中で、原子力発電所温排水等により海産生物を飼育し、その飼育期間内における飼育海水、飼餌料、砂泥等から魚体に取り込まれる放射性核種の影響を調査し、原子力発電所施設前面の漁場の安全性を実証するとともに、漁獲物の食料としての安全性の確認を実施する。という一文を来年度以降追加することとする。

【皆川委員】原子力施設の影響調査の一環として、必要な事業内容であると考える。ただし、温排水の有効利用に目的があるのか、それとも温排水の影響を調べることに目的があるのか、曖昧に感ずる。

【温水協】本事業の目的は、温排水の海産生物への影響を調査することである。温排水の有効利用については、この事業とは別に当協会が設立当初から実施している企業化実証試験(実際に海産生物(ヒラメ・ウナギ・クルマエビ)を飼育し、一般市場に出荷)で実施している。

【皆川委員】温排水の有効利用にその目的があるならば、現在1箇所であるが今後は全国へ展開が可能であることから、積極的に取り組まれていくことを望む。その場合は、主要魚種をさらに絞る方が得策であると思われる。

【温水協】本事業の目的は、温排水の海産生物への影響調査であり、有効利用ではない。

【皆川委員】単なる温排水の影響を調べることならば、原子力発電所等周辺海域、核燃料サイクル施設沖合海域への事業、もしくは他の適切な事業へ吸収させたほうが良いだろう。

【温水協】当協会は、海生研が実施している原子力発電所等周辺海域で採取された海産生物等を調査するのではなく、直接原子力発電所温排水により海産生物を飼育し、放射能の影響を調査するため、今後も独自で事業を実施したいと考えている。

【成田委員】資料4 P9のさば区(さばを餌にしたブリ)、配合飼料区(配合飼を餌にしたブリ)の実験区の意味でよろしいか。

【温水協】放射能濃度の異なる2種類の飼餌料を給餌させ、餌から魚体への放射性核種の蓄積の有無及び体内挙動を調査するためである。配合飼料は約70%が魚粉のため、配合飼料を魚類代表とし、放射能濃度の低いオキアミを甲殻類代表として調査を実施したが、オキアミでは供試したブリの魚体重の増加に伴い、必要な栄養を供給できず、栄養不良により成育に影響を及ぼすため、骨及び内臓を除去したサバに切り替えた。

【廣瀬委員】温水利用で、どの程度養魚が効率化したか。

【温水協】温水利用のメリットは、年間を通じ、適水温(20~22℃)を維持することで魚体の生理活性が高まり、成長促進、生残率等がいいことである。ヒラメの場合、成長速度は年間で約3倍となり、効果が歴然と示される。また冬場でも大量の温海水が取水できることから水温を一定に保て、健康に飼育できることも利点である。

【廣瀬委員】資料4 魚類のCs‐137について、H5とH7の間でギャップが見られるが原因は何か。

【温水協】配合飼料の主原料となる魚粉が原因と推測される。平成5年頃にかけ日本の沿岸漁業におけるマイワシの漁獲量が激減したため、南米沖で漁獲された魚を原料として作られた魚粉の輸入量が増加し、当時どの程度の割合かは不明だが、飼料中の137Cs濃度が高くなる結果から、平成5年に魚体中の137Cs濃度が高くなる原因は配合飼料によるものと思われる。

【津旨委員】資料4 まえがき3段落目「これらのうち飼育技術が確立された魚介類~」という記述があるが、後を読んでも定義が不明確であった。ここで対象となった魚介類のうち、何が該当するのか

【温水協】魚介類の選定理由は、種苗生産技術の確立等により種苗が安定して入手可能であること、当協会の飼育環境(水温)で飼育可能なもの、養殖生産重要種、地先海域放流種である。

【成田委員】資料4 P8上から13行目:「飼料と餌料」は意味としてどう使い分けているのか。

【温水協】市販されている配合飼料を飼料、生えさ(オキアミ、サバ)を餌料として使い分けしている。

【成田委員】資料4 P9上から11行目:210Poの値の高いブリ配合飼料の中身は何か(原因となる可能性のあるものは)。

【温水協】ブリ配合飼料の原材料は約50%が魚粉である。魚粉は主にペルーとチリで採取されたイワシとアジを原料に、全身を乾燥粉末にしている。よって、筋肉以外の骨や内臓も含まれることによる。

【成田委員】資料4 P10上から9‐14行目:餌と海水がほぼ同一海域の一般海生生物と、養魚場のように、海水と、餌のトリチウム条件が異なる場合を同列に論じてよいのか。

【温水協】一応試験設定条件として、異なる環境条件下ではあるが、飼餌料を給餌した場合、得られた結果が天然海産生物の結果と比較して相違があるかどうかを確認するのが目的である。

【成田委員】資料4 P10下から4‐1行目:この文章は、何を意味しているか。趣旨が分かない。資料4 P16 表1‐18のデータそのまま、飼育海水の濃度が前年より高く、その濃度とほぼ一致していたことを説明すればいいので、周辺施設の排水を理由付けに持ち出す必要はないのではないか。「よって・・・」は、周辺施設の排水を理由にしているような文章になっているが、周辺施設排水の記載は、「なおがき」程度ではないか。資料4 P72も同様である。

【温水協】来年度以降周辺施設の排水の記載箇所を、「なおがき」に修正する。(資料4 P10、P72も同様)。

【橋本委員】資料4 P10下5行目~についてH‐3について三事業所の排水濃度と比較しているが、最高値(5.0×103Bq/cm3)は再処理施設の濃度と思われる。同排水は、海洋放出を前提にした濃度なので、今回の海水濃度と比較対照するのは、どうなのかとも思う。再処理施設以外の一般の施設の法令値は6×10Bq/cm3(水としての濃度限度)程度である。

【温水協】来年度以降周辺施設の排水の記載箇所を、「なおがき」に修正する。(資料4 P10、P72も同様)。当協会の分析値と比較するのではなく、あくまで参考までと言う程度の記述に修正することとする。

【廣瀬委員】飼育海水の放射線をモニタリングしているが、それは40Kに由来するのか。

【温水協】ほとんどが40Kに由来している。

【津旨委員】飼育海生生物、飼育飼料、飼育海水、砂泥について放射能分析が行われているが、これらのうち砂泥についての分析の目的が明確になっていない。また、記述としてこれらの分析結果が羅列されている感があるが、関連付けて記述したほうが読みやすい。

【温水協】砂泥の放射能分析の目的は、温排水は濾過器を通さず、生海水を飼育水として使用している。そのため海水と一緒に砂も混入しているため、試験池の底に堆積している。砂泥にも放射性核種のうち、239+240Puが検出されると考えられるため、137Csと共に分析試料対象にしている。

【津旨委員】結論として、温排水利用による飼育海生生物中の放射能は、天然海生生物と比較して相違がないことが記述されているが、重要な結果なので事業実施概要にも記述すべきではないか。

【温水協】来年度以降事業実施概要にも飼育海産生物中の放射能は天然海産生物と比較して相違がないことを記述することとする。

【津旨委員】普及資料としてのホームページは興味深かった。アクセス数280は決して多いとは思えないが、この程度で十分と考えているのか、またより普及させるために施策について検討すべきか、などの記述をすべきではないか。

【温水協】ホームページは平成15年度から開設した。当初アクセス件数をカウントしておらず、開設から2年後にカウントを始めた。よってもう少しアクセス件数は多いと思われる。普及活動として、発電所立地関係地域の漁業関係者、一般市民の方々、地元及び他県の小・中学生等の見学者が年間を通して約2,000~2,500人訪れる。また、(社)茨城原子力協議会は、原子力施設見学のための巡回コースに当協会施設が組み込まれている。その来場した方々に普及資料を配付し、温排水による海産生物の有効利用と実証、放射能調査による安全性の確認について説明している。

【久松委員】トリチウムの海水中濃度の1.5Bq/Lは低いとは思えない。結論として例年と差が無かったとしてよろしいのか。海中のトリチウムのデータとしては高いのではないか。

【温水協】過去に比べてかなり高い濃度が検出されている。原因については不明である。原子力施設から放出されたデータを今回の報告書の中に参考までに掲載している。

【久松委員】原因は別として、平常値であったといえるのか。環境水としては高いレベルではないので、環境水としては高いレベルではない。まとめ方としては環境水としては、平常の範囲内に入っている、といったまとめかたにしたらどうか。

【小佐古委員】養殖池を用意して放射能の変動を調査しているが、事業の評価であって、環境の評価としてはどうかと感じる。経年してやっているということもあるだろうが、リスクマネジメントをしっかりやって、答えを出すという時期にきているのではないか。突然の方向転換は無理だと思うが、是非今後検討していただきたい。例えば茨城の環境監視の委員会で昨年から今年にかけてかなり重要なことを決めている。ストロンチウム90を測定しているが、もう見ることができない。話題になっているのはサンプリングしている濾紙のナチュラルであるストロンチウムのレベルを追ってみるということである。大気圏核実験の影響はもうほとんど消えてなくなっている。茨城県の環境監視の委員会では、方針を大幅に変えるのだが、ストロンチウム90は測定を止めるということである。あるいは、東海村だと最後の酪農家はなくなった。牛乳は売店で買ってきて測定してはという現状である。(当然これはやってはいけないのであるが)。魚類についても長い間放射能測定を行っていても漁獲高が下がってきて測定できなくなるなどがある。時期としては、開始当初とは技術的にも進歩しているし、この事業の目的も変わってきている。一度整理する時期に来ているのではないかと思う。

【吉岡委員】見直しについては各県いろいろとやってきている。公表されていないから見えていないものもある。公表の場にあげるとなれば、膨大な量になる。その値はほとんどNDであり、測定しているという事実だけかも知れないが、例えば福井県では35年間原子力発電所起因のコバルト60が検出され続けていたが、36年目にして検出されなくなったというニュースもある。調査を止めるあるいは始めて行くというときにその目的も含めて出た成果に各都道府県が判定を下して、住民にも知らせているが、そのことが良かったかどうかということをここでも議論すれば財産となる。リスクマネジメントだけに関連させるのは行き過ぎかと思う。その側面はあるが、最大の関心事である放射能のレベル、水準を示すということとリスクマネジメントは少々違うのではないか。

【小佐古委員】現場の方で努力を重ねているということはよいと思う。ただ、国全体としてどのように考えるのかというところで、統一的な議論は必要である。原子力施設だけではなくて、文科省傘下でも航空機の乗務員にたいして、ガイドラインを出している。これはまさしくリスクマネジメントそのものであり、そのほかにも自然起源の物質NORMがある。火力発電所からも出ているし、石油・製鉄産業、鉱山の残渣、人形峠のJAEAにしても看過はできない残渣、残土の問題を抱えている。従前の大気圏核実験をベースにした組み立て、発電所からのディスチャージというような組み立てだけでは、よくない。病院から出るものもあるので、それらを統合的に議論しようとすると社会におけるリスクマネジメントをどうするかということになる。すぐには難しいと思うがそういう方向を考えていただきたい。

【飯田主査】温排水の評価については、提出いただいた内容については、一部記述の修正はあるものの、平年と同じように水準の範囲内であったということで本検討会で確認されたということにしたい。コメントがあったところについては、今後どのように進めていくべきか検討していただきたい。

【飯田主査】時間が無いので議題3については、次回の検討会で報告することとしたい。

【宮原委員】温排水の事業については役目を終えたように受け止めたが、そういう趣旨の発言か。

【飯田主査】そういう訳ではない。

<その他>

【事務局】第2回目の検討会については、再度日程調整をして決めさせていただきたい。

【飯田主査】これで第1回環境放射能検討会を終了する。

 

 

 

 

 

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