資料第12-2号: 放射線発生装置の解体等に伴って発生するクリアランス対象物(コンクリート及び金属)の物量の見直しについて(案)

平成21年10月21日
放射線規制室

高エネルギー加速器研究機構

1.はじめに

 第8回のクリアランス技術検討ワーキンググループ(以下、「クリアランスWG」という。)において、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(以下、「高エネ研」という。)より、国内の放射線発生装置使用施設を対象としたアンケート調査に基づいた放射線発生装置の解体等に伴って発生する放射性同位元素で汚染された物(以下、「RI 汚染物」という。)等の物量に係る報告が行われた。報告の中で、医療機関等の小規模の放射線発生装置使用施設及び研究機関や教育機関の大規模の放射線発生装置使用施設の解体等で発生する金属及びコンクリートのうち、低レベル放射性廃棄物として処分される物、クリアランス対象物となる物、原子炉でいう放射性廃棄物でない廃棄物に相当する物の物量について調査結果がとりまとめられた。
 この調査結果に基づいて、第9回のクリアランスWG において紹介された放射線発生装置の使用等に伴って発生するRI 汚染物(放射化物)(以下、「放射化物」という。)のクリアランスレベルの算出に必要な金属及びコンクリートのクリアランス対象物の想定物量(案)に対して、これらのクリアランス対象物量には、放射性廃棄物でない廃棄物の物量も含まれている可能性があるとの指摘があり、金属のうち最も重量の多い鉄及びコンクリートについて、施設の解体等に伴って発生する物量の多い大規模の施設を対象にして物量の見直しを行った。以下に、高エネ研により行われた物量の見直しに係る検討結果を示す。

2.金属(鉄)の物量について

 クリアランス対象物の放射能濃度として、例えばCo-60 の場合、RS-G-1.7 の値は0.1 Bq/gとなっている。また、その1/100 の濃度に相当する物品の場合は、通常の測定手法における検出感度を下回っており、バックグラウンドレベルとの有意な差を認められない。そこで、クリアランス対象物としては、クリアランスレベルに相当する放射能濃度から、その1/100 の放射能濃度に相当する物として物量を見積もることにする。
 高エネルギー加速器においては、鉄の1/10 価層は41cm と見積もられている(A.H.Sullivan、“A Guide to Radiation and Radioactivity Levels Near High Energy Particle Accelerators”、 Nuclear Technology Publishing、Ashford、Kent(1992).)ので、クリアランス対象物は約82cmの厚さになる。
 今回、物量の見直しの対象となる鉄は大型超伝導サイクロトロンの鉄ヨークである。資料第8-3-2 号の表2に示された研究機関のG施設では、約10 年前に廃止した旧160cmサイクロトロンの鉄ヨークの放射化は、最大0.4 Bq/g であった。超伝導サイクロトロンと旧サイクロトロンの出力比は、400/(100/12)×1/(3/4)=64倍であるが、加速器のビームロスは格段に改善しているので、放射化は10 倍程度(最大4 Bq/g)と仮定する。したがって、内側の1/10 価層に相当する41cm は低レベル放射性廃棄物、その外側の厚さ82cmがクリアランス対象物、さらにその外側は非放射性廃棄物として処分可能と考える。
 超伝導サイクロトロンを囲む鉄製の磁気遮蔽の厚さは約80cmである。上記より、クリアランス対象物は全体の質量8600 トンの1/2、4300 トンと仮定するのが適当と思われる。
 以上のことから、全廃棄物のうち、研究機関のG施設で施設の解体等に伴って発生する鉄については、以下のように見直すこととする。

低レベル放射性廃棄物 :

7940 トン

クリアランス対象物 :

4300 トン

放射性廃棄物でない廃棄物:

5800 トン

合計:

18040 トン

3.コンクリートの物量について

3.1 研究機関のF 施設
 コンクリートの発生量が最も多いのは資料第8-3-2号の表2に示された研究機関のF施設(陽子加速器施設)であった。この陽子加速器施設は、コックロフトワルトン型前段加速器、リニアック、ブースターシンクロトロン、12GeV シンクロトロンと複数の放射線発生装置からなっており、附属する実験施設は、中性子中間子実験施設、東カウンターホール、北カウンターホール、ニュートリノビームライン室からなっている。今回のコンクリート量の試算においては、放射線発生装置使用室のみならず、附属する電源室、空調機械室、通路なども建設図面の調査を行った結果、含めることにした。
 ここでは、鉄と同様に、コンクリートについてもクリアランスレベル対象物としては、クリアランスレベルに相当する放射能濃度から、その1/100 の濃度(検出下限値)に相当する領域として物量を見積もることにする。
 これまで行ったビームラインや実験ホールでのボーリング調査の結果、40cm から50cmで放射能濃度は一桁減少しており、1/100 の濃度になるのは100cmで区分すれば十分である。そこで、表層から50cm は低レベル放射性廃棄物、50cmから150cmまではクリアランス対象物、それ以上は放射性廃棄物でない廃棄物として再度物量を見積もった。
 また、遮蔽用コンクリートブロックの一部である約9000 トンが、他の高エネルギー加速器施設において再使用されていることから、その量を差し引いた。
 以上のことから、研究機関のF施設の陽子加速器施設の解体等に伴って発生するコンクリートの物量は、以下のように見直すこととする。

低レベル放射性廃棄物 :

36230 トン

クリアランス対象物 :

36380 トン

放射性廃棄物でない廃棄物:

73850 トン

合計:

146460 トン

3.2 教育機関のH施設
 アンケート調査の結果、コンクリートの発生量が二番目に多いのは資料第8-3-2 号の表2に示された教育機関のH施設であった。当該教育機関は、H施設であるリングサイクロトロン(陽子400MeV)のほかにAVFサイクロトロン(陽子65MeV)施設も使用している。AVFサイクロトロンで加速された陽子は、そのまま原子核実験などに利用されるとともに、リングサイクロトロンに入射され、更に高エネルギーの実験に利用されている。今回のコンクリートの物量の試算においては、主要箇所のボーリング調査結果をもとに、低レベル放射性廃棄物、クリアランス対象物、放射性廃棄物でない廃棄物に区分し、物量の見直しを行った。施設の解体等に伴って発生することが予想されるコンクリートの物量を表1に示す。

表1.教育機関のH施設におけるコンクリート物量の見直しの結果

 

全コンクリート量
(ton)

低レベル放射性廃棄物
(ton)

クリアランス対象物
(ton)

放射性廃棄物でない廃棄物
(ton)

サイクロトロン

14601

480

7040

7081

リングサイクロトロン

108959.5

4480

23700

80779.5

合計

123560.5

4960

30740

87860.5

 

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