放射線安全規制検討会航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ(第2回) 議事要旨

1.日時

平成16年9月14日(火曜日) 13時30分~15時40分

2.場所

経済産業省別館944号会議室(9階)

3.議題

  1. 航空機乗務員の立場からの見解
  2. 放射線防護の基本について
  3. 宇宙線の被ばく線量の測定方法について
  4. その他

4.出席者

委員

小佐古主査、飛鳥田委員、日下部委員、笹本委員、杉浦委員、津久井委員、東委員、藤高委員、米原委員 

文部科学省

文部科学省 加藤原子力安全課長、小原放射線規制室長、依田放射線安全企画官 他 

オブザーバー

厚生労働省、国土交通省
日本乗員組合連絡会議 鎌倉氏、他2名

5.議事要旨

○ 資料第2‐1号に基づき、第1回ワーキンググループの議事要旨(案)について確認がなされ、その内容について了承された。

○ 資料第2‐2号に基づき、日本乗員組合連絡会議の鎌倉氏より主に以下の点について航空機乗務員の立場から意見が述べられ、委員から以下のコメントがなされた。

【説明者の発言】

  • 航空機乗務員の年間の宇宙線被ばく線量は、概ね数ミリシーベルト程度と試算できる。この被ばく線量は、原子力発電所の放射線業務従事者の年平均被ばく線量の2~3倍となるので、生涯乗務期間(35年)の被ばく線量を考えると、果たしてどの程度の健康影響があるのか、不安を感じている。
  • LNT仮説に基づいて自分たちで試算したところ、日本の全運航乗務員約6000名中、約30名が将来致死的な癌になるということになり、「航空乗務員等の年間宇宙線被ばく線量は多くても数mSvであり、健康上問題ない」と言う説明には疑問を抱いている。
  • 11年に1度あるかないかの極度の太陽フレア(NOAAの基準でS5)に遭遇すると、一度に多くの宇宙線を被ばくするため、太陽フレアの影響についても考慮して欲しい。
  • 妊娠中の女性の航空機乗務員等について、胎児への放射線影響が最も大きいといわれる妊娠初期では、妊娠の自覚がないので心配である。
  • 宇宙線被ばくに関する疫学調査等の調査研究と、自分達に対する適切な教育・管理をして欲しい。飛行実績に基づいて自分がどの程度被ばくしているかを、常に知っておきたい。

【委員のコメント】

  • 確率的影響は、広島・長崎原爆被害者17万人の60年にわたる調査データより、100~200mSv以上の被ばく線量で有意な差が認められるが、それ以下の低線量域では、差は認められていない。しかしながら、できるだけ被ばくを低く抑える観点から、LNT仮説に基づき低線量域の被ばくを管理している。
  • LNT仮説は、低線量域の防護基準を安全側に考えるための管理目標値を示すだけのものであり、その値で致死的な癌になる人数を計算することは、正しくない。人間は自然放射線から年間平均2.4mSvの被ばくを受けており、例えば、西日本が東日本に比べて0.4mSv高いとか、インドやブラジルの一部など自然放射線が高い地域が知られているが、そのような場所で致死的な癌になる割合が高くなるということは知られてない。
  • 航空機運航時のソーラーフレアについては、胸部レントゲン撮影の100倍などという文学的な表現ではなく、より正確な数値を基に検討すべきである。
  • 妊娠中の女性の航空機乗務については、放射線防護という観点だけではなく、労働条件によってコントロールされるべきものであり、組み合わせて考える必要がある。また、妊娠初期の管理については、今後十分な検討が必要である。
  • 宇宙線等の自然起源の放射線をコントロールするのは無理であるが、被ばく防護のための航空機乗務員等への教育、個人被ばく線量評価、記録等の管理(介入)は必要である。また、不安や疑問を払拭するような報告書になるよう、科学的根拠に基づいて検討を進めたい。
  • 航空乗務員等の疫学データについては、日本、カナダ、フィンランド等で調査されているため、それらのデータも本検討に加えた方が良い。
  • 一般人と航空機乗務員等を比較して、死亡率や心筋梗塞、脳卒中の発症率について、有意な差はない。
  • 航空機乗務員等の宇宙線被ばくの実態等については、初めに国内外の既存データを集約し、その上で、科学的判断が難しいところについては、さらにどのような調査が必要かを明確にすべきである。
  • 本ワーキンググループの目的は、航空機乗務員等の宇宙線被ばくの原理及び原則を明らかにするものであるが、宇宙線被ばく防護の制度を決めるに当たっては、ラドン環境下の労働者や自然放射性物質(NORM)を扱う労働者のことも考慮する必要がある。

○ 資料第2‐3号に基づき、放射線防護の基本について、杉浦委員より説明がなされ、委員からは以下の意見等が述べられた。

  • 中性子の放射線荷重係数は、そのエネルギーによって大きな差があり、正確な評価をするためには、航空機が運航する高度の中性子エネルギーを知る必要がある。
  • PET検診を行っている医師、看護婦は年間数ミリシーベルトの放射線被ばくがある。医療現場では、被ばく線量が5mSv(電離放射線障害防止規則 第56条第4項)を目安に、自主的に医師等の配置転換などの被ばく低減対策を行っている。

○ 資料第2‐4号に基づき、宇宙線の被ばく線量の測定方法について、笹本委員より説明がなされ、委員からは以下の意見等が述べられた。

  • 航空機が運航する高度の中性子は、高LETであることに注意が必要である。
  • 宇宙線量の(被ばく線量)評価は精度が重要である。NASAの宇宙線量評価のデータがあるので、今後の議論で発表したい。

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