放射線安全規制検討会航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ(第3回) 議事要旨

1.日時

平成16年11月4日(木曜日) 15時~17時

2.場所

経済産業省別館944号会議室(9階)

3.議題

  1. 航空業界における航空機乗務員の被ばくへの対応の実例
  2. 諸外国における航空機乗務員の被ばくへの取組みについて放射線防護の基本について
  3. 国際放射線防護学会(IRPA11)で公表された航空機被ばくに関する最新の知見のまとめ
  4. その他

4.配付資料

  • 資料第3‐1号:第2回航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ議事要旨(案)
  • 資料第3‐2号:JAL・ANA乗務員の勤務について
  • 資料第3‐3号:航空機における宇宙線防護に関する諸外国の取組みについて
  • 資料第3‐4号:国際放射線防護学会(IRPA11)で公表された航空機被ばくに関する最新の知見のまとめ

5.出席者

委員

小佐古主査、 飛鳥田委員、 笹本委員、 杉浦委員、 津久井委員、東委員、 藤高委員、 米原委員 

文部科学省

文部科学省 加藤原子力安全課長、 小原放射線規制室長、依田放射線安全企画官 他 

オブザーバー

厚生労働省、 国土交通省、定期航空協会 高橋氏

6.議事要旨

○ 資料第3‐1号に基づき、第2回ワーキンググループの議事要旨(案)について確認が行われた。

○ 資料第3‐2号に基づき、JAL・ANA乗務員の勤務の実例について、定期航空協会の高橋氏より説明がなされ、委員から以下の質問及び意見等が述べられた。

・ 北極地区通過路線(以下、「ポーラルート」という。)を航行する乗務員はどの程度いるのか。

 【説明者応答】 JALにおいては、747‐400機に乗務する人数(820人)の約40%(330人程度)がポーラルートを航行している。ANAにおいては、330人よりは少ないと思われる。

・ ポーラルートのみを年間696時間乗務している例があるが、通例なのか。

 【説明者応答】 今回示した例は、無作為に抽出したものであるが、696時間も乗務した例は、稀である。

・ ブロックタイムではなく、飛行時間のみの乗務時間を集計することは可能か。

 【説明者応答】 業務管理の実態としては、飛行時間のみの管理は行っていないが、集計することは可能である。

 事業者側から得られた情報

 ・ 航空機乗務員等の集団数。

 JAL:約8,800人 (運行乗務員:2,200人,客室乗務員:6,600(うち 男性300)人)

 ANA:約5,900人 (運行乗務員:1,700人,客室乗務員:4,200(うち 男性40)人)

・ JALにおいては、ブロックタイムの4分の3が国際運航、4分の1が国内運航であること。

・ 就業規則により、乗務時間上限が運航及び客室乗務員共にJALでは900時間、ANAでは960時間に制限されていること。実際の勤務においても、この乗務時間上限が良く守られており、年間最大乗務時間数が1,000時間を越えるケースはないこと。

・ 客室乗務員の平均勤続年数は、JALでは13年程度、ANAでは10年程度であること。

・ 客室乗務員の乗務について、JALでは入社後1年半まで、ANAでは入社後3年までは国内線乗務のみであり、その後、国際線乗務も行うようになること。

・ フライト情報は電子化されてデータベース管理されており、ソフトウェアの改良などを行えば、被ばく管理を含めた詳細な管理を行える可能性があること。

・ 妊婦の扱いについては、運航及び客室乗務員共に、妊娠確認(本人からの申告)から乗務復帰可能(産業医の判断)と認められるまでの間は、乗務資格が一時停止となること。

 日乗連の意見

・ 被ばく線量評価の際は、便乗時間(デッドヘッド:乗務開始地への移動又は乗務後の基地への帰着のため、乗客として飛行機に搭乗する時間)をも考慮していただきたいこと。

○ 資料第3‐3号に基づき、諸外国における航空機乗務員の被ばくへの取組みについて、米原委員より説明がなされ、委員からは以下の質問及び意見等が述べられた。

・ EU加盟国内における高緯度の国とその他の国との間には、欧州放射線防護指令の取り扱いの上で意識の差はあるのか。

 【説明者応答】 欧州放射線防護指令は、全EU加盟国に対して法律への取り入れを求めている。EU加盟国内においては取り入れ時期の差はあるが、取り扱いの意識の差はないと思われる。

・ デンマークにおいて、添乗員等はどのように管理されているのか。

 【説明者応答】 添乗員等の所属する会社に対して、欧州放射線防護指令に基づく法令によって管理を求めているものと思われる。

 【主査応答】 本ワーキンググループの検討対象は航空機乗務員等であり、添乗員等は副次的な議論である。本WGではまず、骨格となる乗務員についての議論を固めるべきである。比較的年間搭乗時間の多い者の存在は認識しておき、副次的に議論すればよいのではないか。

・ ドイツや米国において被ばく線量計算コードが開発されているが、欧州放射線防護指令には計算コードの選択についての記述されているのか。

 【説明者応答】 欧州委員会では、(報告書(RP‐85,RP‐88)において)ドイツで開発されたものや米国(CARI‐6)の計算コードなどいくつか紹介されており、どの計算コードを使っても測定値と良い一致がみられると記述されている。

○ 資料第3‐4号に基づき、国際放射線防護学会(IRPA11)で公表された航空機被ばくに関する最新の知見について、杉浦委員より説明がなされ、委員からは以下の質問及び意見等が述べられた。

・ IRPA11において、高エネルギー放射線の測定精度に関する議論はなされたのか。

 【説明者応答】 使用した放射線測定器についての情報は明記されているが、高エネルギー放射線に対するレスポンスなどについての細かい議論はされていない。

 【主査応答】 本ワーキンググループは枠組みの議論が中心であり、そのために必要なレベルの計測、評価の精度評価があれば十分である。

・ 航空機乗務員等の宇宙線被ばくや自然放射性物質に関する発表は、近年増えているのか。

 【説明者応答】 ICRP1990年勧告において、ジェット機の運航に伴う被ばくを職業被ばくと位置づけたことから、約10年前から増えてきている。

小佐古主査によるとりまとめ

・ 次回は12月7日15時からとし、被ばく線量評価に関するNASAや宇宙航空研究開発機構(JAXA)の報告書や、諸外国における運用例を紹介し、測定に関する議論を行うこと。また、太陽フレア遭遇時の被ばく線量についても議論する必要があること。

・ 次々回は、航空機乗務員等の疫学データや、産業医の立場からの見解を伺うこと。(日乗連が国際定期航空操縦士協会連合会(IFALPA)の了解が得られた場合は、その疫学データを提供していただくこと。)

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