平成16年12月7日(火曜日) 15時~17時30分
経済産業省別館1014号会議室(10階)
小佐古主査、飛鳥田委員、日下部委員、笹本委員、杉浦委員、 津久井委員、藤高委員、米原委員
文部科学省 青山次長・原子力安全監、加藤原子力安全課長、小原放射線規制室長、依田放射線安全企画官 他
厚生労働省、国土交通省、 日本乗員組合連絡会議 鎌倉氏 定期航空協会 高橋氏 放射線医学総合研究所 内堀研究員 GLOBALOG社 Wollenberg副社長 デンマーク大使館 Mondorf書記官、山口商務官 宇宙航空研究開発機構 矢部開発部員
○ 資料第4‐1号に基づき、第3回ワーキンググループの議事要旨(案)について確認が行われた。
○ 資料第4‐2号に基づき、第2回ワーキンググループにおいて質問された、大規模なソーラーフレア時の被ばく線量について、事務局より補足説明がなされた。
○ 資料第4‐3号に基づき、第2回ワーキンググループにおいて質問された、旅客機等における搭乗時間と巡航時間の関係について、日本乗員組合連絡会議の鎌倉氏より補足説明がなされ、委員からは以下の質問が述べられた。
《委員質問》北極地区通過路線を航行する乗務員がどの程度の比率なのか把握しているのか。
【説明者応答】現状は把握していないが、調査は可能である。
《委員質問》巡航高度は、巡航時間に関係なく一定なのか。
【説明者応答】長距離路線の場合は、燃料消費の効率を考慮し、約27,000フィートから約30,000フィートまで徐々に高度を上げる飛行(ステップアップ)及び降下開始2,3時間前に約43,000フィートまで高度を上げる飛行を行っている。
○ 資料第4‐4号に基づき、第3回ワーキンググループにおいて説明された資料第3‐2号の改訂版について、定期航空協会の高橋氏より説明がなされた。
○ 資料第4‐5号に基づき、宇宙線の実測の意義について、藤高委員及び放射線医学総合研究所の内堀研究員より説明がなされ、委員からは以下の質問及び意見等が述べられた。
《委員質問》Goldhagen氏の中性子スペクトラムには、プロトンが混入しているのか。
【説明者応答】Goldhagen氏が、自身の論文において高エネルギー部分にプロトンの混入があることを認めている。よって、プロトンを排除した測定が必要であると考える。
《委員質問》ボナーボールは、減速材型の多検出器であると認識しているが、Goldhagen氏の測定にはどのような中性子検出器が使用されたのか。
【説明者応答】ヘリウム比例計数管が使用された。
【主査応答】資料に示されているボナーボールは小型なので、高エネルギー領域に対応できるかどうかは疑問である。したがって、中性子エネルギーが二峰性のピークを示すGoldhagen氏の結果の妥当性については、本当に正しいのかまだ結論が出ていないのではないか。(ボナーボールは測定の原理から考えて中性子のエネルギー分布をきめ細かく分けることは無理であり、どうしてもなだらかな分布となってしまう。)
○ 資料第4‐6号に基づき、宇宙線被ばく評価に関するNASAのデータについて、笹本委員より説明がなされ、委員からは以下の質問及び意見等が述べられた。
《委員質問》中性子スペクトル測定については、低エネルギー領域は過去に十分研究されているが、高エネルギー領域は核データがないので、計算の方が精度が高いのではないか。
【説明者応答】核データがない状態でスペクトルを測定することには限界があるが、高エネルギー加速器の分野においても、FLUKAコードの解析結果と実測値がおおよそ対応しているので、その点では、資料の実測値は評価できる。
《委員質問》現在の評価方法における不確実性による誤差の大きさを評価する必要があると考えられるが、そのような検討は行われているか。
【説明者応答】NASAの報告書には誤差についての記載はない。現在は、実測値と解析値を互いに比較し、精度を推測する段階であると思われる。
《事務局質問》太陽活動が活発な時期は、総合的に見て宇宙線強度が減少すると示されているが、どのような理由なのか。資料第4‐2号において説明された被ばく線量についても、単純に通常の被ばく線量に加算されるものではないのか。
【委員応答】太陽活動が活発な時期は地球の磁場が圧縮され、それが宇宙線に対して抵抗となり、宇宙線強度が減少する。したがって、太陽活動が活発な時期に、必ずしも地球での被ばく線量が増加するというものではない。
《委員質問》航空機内の照射線量について、操縦室と客室とで20~30%の違いがあると示されているが、どのような違いなのか。
【説明者応答】(風防ガラスのような放射線を通し易い材質の少ない)客室の方が、照射線量が20~30%低いと報告されている。
《委員質問》宇宙ステーション内においても、位置によって被ばく線量の違いがあるのか。
【矢部開発部員応答】宇宙ステーション内の被ばく線量については、構造(材)の違いにより、ロシア製よりもアメリカ製のステーション内の方が、被ばく線量が多いことがわかっており、現状では、太陽活動が活発な時期は、ロシア製のステーション内に退避することもある。
○ 資料第4‐7号に基づき、宇宙線被ばく防護に関するデンマークの例について、GLOBALOG社Wollenberg副社長、デンマーク大使館Mondorf書記官、山口商務官より説明がなされ、委員からは以下の質問及び意見等が述べられた。
《委員質問》計算コードの補正方法や5観測点を選んだ理由、航空機での実測の要否についてはどうか。
【説明者応答】世界の異なる5ヶ所の定点から高度・緯度等のデータが1分毎に取り込まれ、常に相対的に補正される仕組みとなっている。
【主査応答】補足すると、このシステムは、全世界で行われている宇宙天気予報の地上の観測定点のうちの5ヶ所からリアルタイムで送られてくる実測値に基づいており、それらのデータと乗務員のフライトデータから飛行中の機体の緯度・経度・高度に相当する部分の線量を計算で求めている。各飛行経路を網羅でき、個々の機体に計測器を搭載する必要がないため、設備投資や故障に対する不安材料が少なく、しかも実測値を基にしているため、ソーラーフレアなどの影響も正しく反映している点で優れた方法であるといえる。
しかしながら、航空機乗務員等の被ばく線量は年間数ミリシーベルトのオーダーであり、他の分野(医療やNORM等)と比較して低いという事実がある。被ばく線量が低い環境でこれ程きめ細かな対応を行うとなると、医療やNORMなど、より高い環境においてはもっときめ細かな対応を行う必要があるという話になるが、現実的には無理である。航空機乗務員の宇宙線被ばくに対する規制としてこれを考える場合には、他の分野の規制との現実的なバランスを勘案する必要がある。
○ 資料第4‐8号に基づき、宇宙放射線被ばく管理に関するNASDA報告書について、宇宙航空研究開発機構矢部開発部員より説明がなされ、委員からは以下の質問が述べられた。
《委員質問》生涯実効線量制限値は、どのように設定されたのか。
【説明者応答】(最も想定されやすい被ばくの条件として)10年間に3回の搭乗を想定して、3%に最も近いリスクを与える生涯実効線量を制限値として設定した。
小佐古主査によるとりまとめ
・次回は航空機乗務員等の疫学データや、産業医の立場からの見解を伺うこと。
担当:宮本、宮内
電話番号:03‐6734‐4045
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