放射線安全規制検討会航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ(第7回) 議事要旨

1.日時

平成17年5月30日(金曜日)15時~17時

2.場所

三田共用会議所 C会議室(3階)

3.議題

  1. 諸外国における航空機乗務員等の宇宙線被ばくへの対応について
  2. 太陽フレアと宇宙天気予報について
  3. 低線量放射線の影響について
  4. その他

4.配付資料

  •  資料第7‐1号:第6回航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ議事要旨(案)
  •  資料第7‐2号:諸外国における航空機乗務員等の宇宙線被ばくへの対応について
  •  資料第7‐3号:太陽フレアと宇宙天気予報~宇宙飛行士の放射線被曝管理~
  •  資料第7‐4号  航空機高度での太陽粒子による被ばくについて
  •  資料第7‐5号:低線量放射線の影響について
  •  参考資料1:ワーキンググループ委員名簿
  •  参考資料2:航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する論点整理
  •  参考資料3:NOAA Space Weather Scale 新旧対照表
  •  参考資料4:日常生活と放射線
  •  参考資料5:航空機乗務員の被ばくの管理に関する考察
  •  参考資料6:航空機乗務員のがんとその他の疾患‐疫学研究による最近の知見‐

5.出席者

委員

小佐古主査、飛鳥田委員、日下部委員、笹本委員、杉浦委員、津久井委員、藤高委員、米原委員

文部科学省

文部科学省 片山次長・原子力安全監、加藤原子力安全課長、依田放射線安全企画官 他

オブザーバー

厚生労働省、国土交通省、宇宙航空研究開発機構 矢部開発員
放射線医学総合研究所 保田チームリーダー
放射線影響協会 金子常務理事

6.議事要旨

 ○ 資料第7‐1号に基づき、第6回ワーキンググループの議事要旨(案)について確認が行われた。

 ○  資料第7‐2号に基づき、諸外国における航空機乗務員等の宇宙線被ばくへの対応について、事務局より説明がなされ、委員からは以下の質問及び意見が述べられた。

《委員意見》航空機乗務員の宇宙線被ばくの規制ついて、EU加盟国では、欧州指令により法令化が求められているが、これは加盟国間の一律的な取り組みを明確にするためである。我が国では、人工の放射性同位元素(以下、「RI」という。)の取り扱いに係る放射線防護について法令で綿密かつ厳しく規制されている。RIは規制せずに使用すると大量被ばくの危険性があるからである。一方、航空機乗務員の被ばく線量は放射線業務従事者の年間被ばく線量限度(20mSv)を超えることは考えられないので、RIと同様の規制の必要性には疑問がある。従って、航空機乗務員の宇宙線被ばくについては、我が国の規制の現状に即した対応を議論することが必要ではないか。

《委員質問》被ばく線量の管理基準値を設けている国よりも、被ばく線量による就労制限を設けている国が少ない点についての補足情報はあるか。

【説明者応答】補足情報は得られていないが、管理基準値は自主管理の意味合いが強いので、被ばく線量管理はしていても、さらに就労制限まで課す国は少ないと推測される。

《委員質問》航空機乗務員の被ばく管理に対して、法令を設けている国々は強制力をもっているのか。

【説明者応答】EU加盟国については、欧州指令により一律に法制化が求められているが、どこまで強制力(罰則等)があるのかは不明である。

《委員質問》諸外国においては、航空機乗務員以外の業種の自然放射線による被ばく管理の規制の整合性はとれているのか。

【説明者応答】自然放射線に対する被ばく管理について厳格な法的対応はどこの国でもそれほどなされていないと認識しているが、個別に整合性がとれているかについての情報はない。

《主査意見》自然起源の放射線による被ばく管理は、年間被ばく線量が放射線業務従事者並みに高くなるのであれば何らかの対策が必要であるが、そうでなくとも、作業者が受ける被ばく線量に関する情報提供及び放射線被ばく影響の教育をすることは重要である。

《委員意見》国際的な放射線防護の考え方として、航空機乗務員の宇宙線被ばくは、手法として法的な規制を行う必要があるかどうかは別として、防護に係る何らかの対応が必要だといえる。また、放射線審議会基本部会報告書「自然放射性物質の規制免除について」において、自然放射性物質による被ばく線量が1mSv/年(規制免除の線量規準)を超える場合には何らかの対応が必要としているが、法令化せよという主旨ではない。

《委員質問》諸外国において航空機乗務員が勤務後に確認できる被ばく線量は、実測データなのか。

【説明者応答】多くの国々が計算により被ばく線量を評価していることから、実測ではなく計算によるデータであると思われる。

 ○ 参考資料3に基づき、米国海洋大気庁(NOAA) Space Weather Scaleの改正部分について、事務局より説明がなされた。

 ○ 資料第7‐3号に基づき、太陽フレアと宇宙天気予報について、宇宙航空研究開発機構の矢部開発員より説明がなされ、その後、資料第7‐4号に基づき、航空機高度での太陽粒子による被ばくについて、放射線医学総合研究所の保田チームリーダーより説明がなされた。委員からは以下の質問及び意見が述べられた。

《委員質問》本年及び一昨年の太陽フレア発生時の宇宙飛行士の被ばく線量は、どの程度であったか。

【矢部開発員応答】どちらの太陽フレア発生時も、宇宙ステーション内において数mSvのオーダーであったと推定される。また、宇宙飛行士の被ばく線量限度は年間500mSv(骨髄における年間の等価線量)であるので、飛行中止には至らなかった。

《委員質問》1956年の太陽フレアの大きさについては、当時の測定精度に疑問があるが、過小評価されている可能性はないか。

【保田チームリーダー応答】1956年の太陽フレアでは、当時の測定において、大気圏内の被ばくに寄与する大きいエネルギーの粒子を実際より過大に含んで評価している可能性があると考えている。

《委員質問》太陽から宇宙ステーションまでの太陽粒子の到達時間が評価されているが、地上までの到達時間も同様に評価できるのか。

【保田チームリーダー応答】評価できる。

《委員質問》立体角あたりのフラックスとはどういう意味なのか。

【矢部開発員応答】太陽の方角から1立体角、1平方センチメートルあたりに飛んでくる粒子の数である。

《委員質問》資料第7‐4号に引用されているLantos氏の文献において、線量値はどのような線質係数を用いて計算されているのか。また、その他の引用文献もあわせて出典を明らかにしていただきたい。

【保田チームリーダー応答】周辺線量当量値は、ICRP Pub.60の体系に従って計算されている。引用文献の出典については、後日お知らせしたい。

 ○ 資料第7‐5号に基づき、低線量放射線の影響について、放射線影響協会の金子常務理事より説明がなされ、委員からは以下の質問及び意見が述べられた。

《主査意見》今回ご説明していただいたような様々な知見を総合して考えると、放射線業務従事者の年間実効線量限度の20mSv以下の被ばくでは、人体に対する放射線影響を検出するのは困難であるといえる。

《委員質問》自然放射線レベルの低い地域に居住している人が、自然放射線レベルの高い地域へ行った場合の健康影響を調査したデータはあるか。

【説明者応答】健康影響のデータはないが、自然放射線レベルの高い地域(イラン国ラムサール地域)に居住する人は、大線量放射線に対する抵抗性が高いという調査データが発表されている。

 小佐古主査によるとりまとめ

・ 参考資料2の航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する論点整理については、これまでの議論や今回のご説明・発言を踏まえて事務局でまとめていただき、次回の会合で議論したい。それを基に、我が国における航空機乗務員等の宇宙線被ばくへの対応について検討したい。

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科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室

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(科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室)