放射線安全規制検討会航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ(第9回) 議事要旨

1.日時

平成17年9月6日(水曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 10F1会議室(10階)

3.議題

  1. 低線量放射線影響に関する文献(米科学アカデミー報告書、仏科学アカデミー報告書)の紹介
  2. 「航空機搭乗者の宇宙線被ばくに関する専門研究会」(保健物理学会)における議論の紹介
  3. 航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する論点整理
  4. その他

4.配付資料

  •  資料第9‐1号:第8回航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ議事要旨(案)
  •  資料第9‐2号:BEIR‐Ⅶの主張と問題点・仏科学アカデミーの主張と問題点
  •  資料第9‐3号:「航空機搭乗者の宇宙線被ばくに関する専門研究会」における議論の紹介
  •  資料第9‐4号:航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する論点整理
  •  参考資料1:ワーキンググループ委員名簿
  •  机上配布資料:平成17年8月29日付 朝日新聞夕刊(3面)

5.出席者

委員

小佐古主査、飛鳥田委員、日下部委員、杉浦委員、津久井委員、藤高委員、米原委員

文部科学省

文部科学省 下村次長・原子力安全監、小原放射線規制室長、依田放射線安全企画官 他 

オブザーバー

厚生労働省、国土交通省、京都大学放射線生物研究センター 丹羽教授、琉球大学理学部物質地球科学科 古川教授

6.議事要旨

 ○ 資料第9‐1号に基づき、第8回ワーキンググループの議事要旨(案)について確認が行われた。

 ○  資料第9‐2号に基づき、低線量放射線影響に関する文献(米科学アカデミー報告書(以下、「BEIR‐Ⅶ」という。)、仏科学アカデミー報告書)について、京都大学丹羽教授より説明がなされた。特に、両アカデミー報告書とも、ベースにはほぼ同じ最近の研究論文などのデータを用いていながら、全く異なる結論が導き出されていることの背景事情にも触れ、少なくともLNT仮説は「科学的である」と初めて断定したBEIR‐Ⅶの論理には疑問が残る点が強調された。また、委員からは以下の質問及び意見が述べられた。

《委員質問》高自然放射線地域の疫学調査において、先住民に何らかの生物学的影響は見られるのか。

【説明者応答】中国で行われた20年間にわたる12万人規模の疫学調査・染色体解析研究によると、染色体異常頻度の上昇は認められたものの、これは健康影響に直接結びつくものではなく、発がんリスクの上昇や、遺伝的影響は観察されていない。

《委員質問》宇宙線にも含まれている高LET放射線による影響は、照射された細胞核だけの線量を評価すると、低線量ではあり得ないのでBEIR‐Ⅶでは扱わないとされていることについて、航空機乗務員の被ばくも、低LETの低線量被ばくのリスク評価を用いる必要があるが、この点をどのように考えるか。

【説明者応答】他の団体(欧州放射線リスク委員会)では、α線(高LET放射線)による生物影響が低線量影響を証明するために頻繁に用いられることもあるので、実態を明らかにしつつ、研究の限界と結果の意味合いを勘案しながら議論を進めることが重要ではないか。

《委員意見》中国で行われた高自然放射線地域の疫学調査に関する文献を読んだことがあるが、被ばく線量の評価方法があまりに簡素であったので、その調査結果には疑問をもっている。

 ○  資料第9‐3号に基づき、「航空機搭乗者の宇宙線被ばくに関する専門研究会」(保健物理学会)における議論について、琉球大学古川教授より説明がなされ、委員からは以下の質問が述べられた。

《委員質問》航空機乗務員の被ばく線量評価において、日本の輸送計算コードPHITSを応用した場合の被ばく線量と、既に諸外国で運用されている計算コード(EPCARD等)を用いた場合の被ばく線量との精度の差はどれほどか。

【説明者応答】本日は手元にデータがないので、精度の差はわからない。保健物理学会としては、日本にも航空機乗務員の被ばく線量評価に応用できる計算コードが開発されているということを、世界に発信していきたい主旨で紹介した。

《委員意見》線量限度を考えるための試算は、特定の条件下における試算であるので、それらの数値が各航路における標準的な実効線量や搭乗制限回数ではないということにも注意する必要があるのではないか。

《委員質問》航空機乗務員の皮膚悪性黒色腫のリスクの図は、ばらつきが見られるものの、最近のデータとして信憑性が高いものなのか。

【説明者応答】このデータは世界の多くの文献で見られる結果であるので信憑性は高いと思うが、それらの文献では、リスクの上昇は放射線影響だけによるものではなく、乗務員の休暇中の日光浴に大きな要因があるとの指摘もされている。

【委員応答】データのばらつきが大きいのは、航空機乗務員の皮膚悪性黒色腫のリスクの調査集団が小さいからである。また、日本人乗務員の中では、皮膚悪性黒色腫の発症は確認されておらず、日本の航空会社で採用した外国人乗務員1名に発症したことが報告されたのみと記憶している。

 ○ 資料第9‐4号に基づき、航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する論点整理の修正点について、事務局より説明がなされた。
出席委員の全てから、これ以上の論点整理ペーパーの修正は不要との意見が出された。主査により、論点整理の内容に異論がないこと及び論点が尽きたことの確認がなされ、委員から了承が得られたため、この論点整理を基に報告書案を作成し、次回(10月7日)から検討を行うことの決定がなされた。また、報告書案作成担当として、杉浦委員と米原委員の指名がなされ、両人の了承が得られた。

 ○ 平成17年8月29日付 朝日新聞夕刊記事(宇宙線対策に指針 文科省 航空乗務員の被曝多く)について、事務局より紹介がなされた。

 ○ 最後に、主査から関係省庁等の意見を求めたところ、厚生労働省及び国土交通省からは特段の意見は述べられなかった。日本乗員組合連絡会議からは、前回要望した米科学アカデミーの報告書の紹介について早急に対応頂いたことに対して感謝の意が述べられた。定期航空協会からは、今回も含めこれまでの議論が大変勉強になった旨が述べられた。

お問合せ先

科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室

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(科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室)