放射線安全規制検討会航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ(第10回) 議事要旨

1.日時

平成17年10月7日 (金曜日)10時~12時

2.場所

経済産業省別館 1014号会議室(10階)

3.議題

  1. 航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する報告書案について
  2. その他

4.配付資料

  •  資料第10‐1号:第9回航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ議事要旨(案)
  •  資料第10‐2号:航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討について(案)
  •  資料第10‐3号:航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する報告書案に対する委員コメント

5.出席者

委員

小佐古主査、日下部委員、杉浦委員、津久井委員、東委員、藤高委員、米原委員 

文部科学省

文部科学省 下村次長・原子力安全監、植木原子力安全課長、小原放射線規制室長、依田放射線安全企画官 他

オブザーバー

厚生労働省、国土交通省

6.議事要旨

 ○ 資料第10‐1号に基づき、第9回ワーキンググループの議事要旨(案)について確認が行われた。

 ○ 資料第10‐2号及び資料第10‐3号に基づき、航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する報告書案について、事務局による章ごとの読上げがなされ、委員からは以下の質問及び意見が述べられた。

 ・ 1章について

《委員質問》3.イの飛行経路・乗務時間において「日本の航空会社の就業規程による年間最大乗務時間数は年間900時間程度」とあるが、900時間程度ということは、日本航空インターナショナル(以下、「JAL」という。)と全日本空輸(以下、「ANA」という。)とで最大乗務時間数が異なるという理解で良いか。

【事務局応答】そのとおりである。航空会社によって時間数が違うので、「900時間程度」と数字を丸めたものである。

《委員意見》1.ウ.2)の緯度による変化において、「地球の磁場が弱まるため」では誤解が生じるので、「地球の磁束密度が低くなるため」に修正した方が良い。また、本文中に「宇宙線」と「宇宙放射線」が記載されているが、どちらかに統一すべきである。

【主査応答】指摘のとおりに修文し、用語は「宇宙線」に統一する。必要であれば、括弧で宇宙放射線を入れることとする。

《委員意見》本文中に「交絡因子」と「交絡要因」が記載されているが、本文の内容を考慮すると、「交絡因子」を用いた方が適切である。また、被ばく線量の単位が不揃いであるので、統一するべきである。

【主査応答】指摘のとおりに修文する。

《委員意見》1の宇宙線のメカニズムについて、高エネルギー粒子は記載された3種の粒子の他にも存在するので、「(陽子、アルファ粒子、重粒子等)」と記載した方が良い。

【主査応答】指摘のとおりに修文する。

《委員意見》1.エにおいて、NORMとはTENORMも含めた自然起源の放射性物質の総称であるので、その意味を踏まえた修文が必要である。

【主査応答】1.エのタイトルを「我が国のNORMによる被ばく線量」に修正し、本文「自然放射性物質(NORM)および技術的に高められた自然起源の放射性物質(TENORM)」を「自然起源の放射性物質(NORM)およびそのうち技術的に高められた自然起源の放射性物質(TENORM)」に修文する。

《委員意見》4の交絡要因による健康影響について、「宇宙放射線との関与は完全には否定できないが、宇宙放射線の関与が一番大きいと仮定すると、がんの発生が増えるはずであるので、宇宙放射線よりも社会経済的状況や生活習慣などの交絡要因の関与が大きいのではないかと考えられている。」の文章は意味が不明確であるので修文が必要である。

【事務局応答】「宇宙線との関与は完全には否定できない。しかしながら、仮に宇宙線の関与が一番大きいと仮定すると、現在の調査によるがんの報告数よりもがんの発生が増えるはずであるが、そのような結果は得られていない。このことは、むしろ宇宙線よりも社会経済的状況や生活習慣などの交絡因子の関与が大きいのではないかと考えられている。」に修文する。

 ・ 2章について

《委員意見》1.アの宇宙線被ばく線量の評価方法において、「多くのデータを基に確立されたいくつかの計算コードを用いて」とあるが、「多くのデータを基に提案されたいくつかの計算コードを用いて」に修文してはどうか。

【主査応答】航空機乗務員等の宇宙線被ばく線量評価に用いられる計算コードは、航空機乗務員等の宇宙線被ばく線量評価のために確立されたものではないことから、修文ではなく、「確立された」の部分を削除する。

《委員意見》1.アの宇宙線被ばく線量の評価方法において、「宇宙線の成分は、全体の・・・」の前に、2次宇宙線による被ばく線量の評価であることを明記した方が良いのではないか。

【委員応答】「民間航空機の飛行高度における宇宙線の成分」という文章があるので、「宇宙線の成分は、全体の・・・」を「この宇宙線の成分は、全体の・・・」に修文すれば、2次宇宙線による被ばく線量評価であることが理解できる。

《委員質問》2.アの諸外国における、航空機乗務員等の宇宙線被ばくに対する取り組みにおいて、ICRPが要求している放射線防護に関する不確実さに関連するEURADOS報告書の引用文章の日本語訳としては正しいのか。

【事務局応答】事務局による要約を記載している可能性もあるので、原文を確認して、適切な訳を記載する。

《委員意見》2.アの諸外国における航空機乗務員等の宇宙線被ばくに対する取り組みにおいて、「ガイドラインを示す等の「介入」によって」とあるが、ICRPが定義している介入には必ずしも該当するとは思えず、また、3章で介入についての記載があるので、ここの「介入」は削除すべきではないか。

【主査応答】指摘のとおり「介入」とその説明書きを削除して、「ガイドラインを示す等によって」に修文する。

《委員意見》1.アの宇宙線被ばく線量の評価方法において、「建物による宇宙線の遮へい等」は「構造物による宇宙線の遮へい等」に修正した方が良いのではないか。

【主査応答】指摘のとおりに修正する。

《委員意見》1.イの国際放射線防護学会における、航空機乗務員の宇宙線被ばく線量の測定・評価に関する発表において、「実測値と計算値との線量評価結果の比較では、大きな差はない」とあるが、国内線などの短距離飛行路線では差が大きくなることもあるので、評価条件を明記した方が良いのではないか。

【事務局応答】当該部分は一学会での発表をまとめたものであるので、詳細な評価条件までを記載する必要はないと考えるが、事実関係を確認して、適切に記載する。

《委員意見》1.アの宇宙線被ばく線量の評価方法において「ガラスバッジ」とあるが、これは商品名であると思われるので、「ガラス線量計」又は「蛍光ガラス線量計」に修正すべきである。

【主査応答】指摘のとおりに修正する。

《委員意見》2.アの諸外国における、航空機乗務員等の宇宙線被ばくに対する取り組みにおいて、Euratom96の引用で「健康診断」とあるが、付録5には抜粋されていないので、付録5に引用文章を追記して欲しい。

【主査応答】原文を確認して、適切に記載する。

《委員意見》2.イの日本人宇宙飛行士の宇宙線被ばく管理において、生涯実効線量制限値が示されているが、最低宇宙飛行開始年齢が27歳であることも記載すべきである。

【主査応答】指摘のとおり、実態に即した記載とする。

 ・ 3章について

《委員意見》本章だけ「閾値」と漢字で記載されているが、他の章に合わせて「しきい値」に統一すべきである。

【主査応答】指摘のとおりに修正する。

《委員意見》1.ウの妊娠中の女性乗務員の宇宙線被ばくの防護において、「通常妊娠の終了により十分前に」とあるが、意味が理解できないので修文が必要ではないか。

【主査応答】あまり詳細な記載は避けるべきと考えるが、航空機乗務員の健康管理に詳しい津久井委員とも検討した上で、適切かつ十分な記載とする。

 ・ 4章について

《委員意見》2.オの航空機乗務員等の健康管理に、「現在、放射線業務従事者に課せられている健康診断の内容と同等であるので、新たに付加的な健康診断を行う必要はない」旨を記載してはどうか。

【委員応答】航空身体検査は乗務に就けるかどうかを判断するための検査であり、放射線業務従事者に課せられている健康診断とは全く趣旨が異なるものあるので、放射線業務従事者に課せられている健康診断の内容と同等であると記載することには違和感を覚える。

【主査応答】航空機乗務員等の宇宙線被ばくについては、放射線障害防止法の規制外の議論であるので、委員の発言のような現状の法律体系との関連性に関する記載にまで踏み込むことの必要はないのではないか。ただし、一般健康診断と放射線業務従事者に課せられている健康診断の内容の整合性については、確認する必要があり、場合によっては修文する。

《委員意見》1の航空機乗務員等の宇宙線被ばくへの対応の必要性の最後に「実施されることが望まれる」との記載があるが、もう少し強い表現で「実施するべきである」と記載してはどうか。

【主査応答】本報告書は、放射線安全規制検討会の下部組織の報告書としてまとめるので、原案のような記載としている。しかしながら、原案のまま世の中に出しても何ら効力はなく、また、本件は関係省庁をまたがった問題である。これらを考慮すると、放射線審議会に提出して技術的事項を審議し、放射線審議会から関係省庁に対して、本件を関係機関に周知して積極的に実施していただくことを勧告することが、考え得る案の一つとして挙げられる。

【事務局応答】主査が発言されたことは事務局でも検討しているので、原案のような表現としている。

《委員発言》本報告書には専門用語が多数記載されているので、巻末に用語集を付けていただきたい。

【事務局応答】そのようにする。

 ○  最後に、主査から関係省庁等の意見を求めたところ、厚生労働省及び国土交通省からは特段の意見は述べられなかった。日本乗員組合連絡会議からは、世界の航空機乗務員等が関心を持っている宇宙線被ばくについて検討を行っていただき嬉しいこと、発言の機会を提供していただいたことに感謝していることが述べられた。また、報告書案については、日本乗員組合連絡会議内で検討し、後日意見を提出したい旨が述べられた。定期航空協会からは以下の意見が述べられた。

《定期航空協会意見》4章2.アの航空機乗務員等の被ばく管理において、管理目標値として記載されている「5mSv程度」を、もっと明確に書いてほしい(管理目標値は5mSvから6mSvまで自由に設定して良い、というように読める)。また、太陽フレアの予測から太陽フレア粒子到達までの間(1‐2日間)の事業者側の具体的な対策等を明確にして欲しい(この間に航空機の運航を中止することは困難である)。

4章2.オの航空機乗務員等の健康管理における「必要な場合には、産業医等による・・・」との記載は、事業者の自主管理として行うものと理解してよいのか。

【主査応答】本ワーキンググループの報告書は、法律や規則等の規制ではないので、自主的な実施が望まれる事業者の自由度を残す意味で、あまり厳格に書かない方針で原案を提示したところである。しかしながら、あまり自由度を求めないということであるならば、本日頂いた意見も参考にし、今後修正も考えていきたい。

 ○ 委員からの報告書案に関する追加の意見等は、10月14日(金曜日)までに事務局へ連絡することが確認された。

お問合せ先

科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室

担当:日高、宮内
電話番号:03‐6734‐4045
ファクシミリ番号:03‐6734‐4048

(科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室)