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資料17−4
諸外国のクリアランス制度について

平成17年3月28日
財団法人 原子力研究バックエンド推進センター
1.はじめに
   本調査では、クリアランス制度の検討対象として想定される放射性同位元素使用施設及び放射性発生装置(加速器施設)から発生する放射性廃棄物の扱いについて、諸外国におけるこれらの施設に相当する小規模の放射性物質の使用施設、病院及び加速器施設からの放射性廃棄物のクリアランスとして、下記の点についてまとめたものである。

  1) クリアランスに係る法令等の整備概要−非原子力施設−
  2) RI使用施設からの放射性廃棄物の扱い
−短半減期核種の減衰保管による廃棄等−
  3) 加速器の廃止措置及び廃棄物の扱い


2.調査方法及び調査結果
   EU諸国における最近のクリアランス制度の取り入れ状況については、放射線防護134「EU加盟国における1996年5月13日付欧州原子力共同体理事会指令96/29タイトル3に基づく行為に対する免除およびクリアランスの概念の適用評価」 (2003年)の報告書においてクリアランス制度の取り入れ状況をまとめている。
 そこで、この報告書においてクリアランスを実施しているとしている典型的な事例として、英国、ドイツ、スウェーデンを取り上げるとともに、ケースバイケースでのクリアランス及び短半減期核種の扱いについて制度を有する米国を加えた4カ国を対象国とした。本調査では、公開文献や法令等を用いた調査を中心として、これらの国でのクリアランスの規制制度等について整理を行ったものである。調査結果については、次頁の一覧表としてまとめた。

以上

諸外国のクリアランス制度について
国名 英国 ドイツ スウェーデン 米国
法令整備 クリアランス制度 放射性廃棄物の扱いも定めた「放射性物質法1993(RSA93)」においては法律上に明確にクリアランスを定義していないが、RSA93からの特定の規制を免除をする「1986年放射性物質(低放射性物質)免除令(SI ナンバー1002)」や「1990年放射性物質(病院)免除令(SI ナンバー2512)」等が整備され、これらの適用によりクリアランスを実施。また、RSA93にも天然放射性物質の基準値が一覧表として示されている。 原子力法及び放射線防護令第29条により、クリアランス制度として整備済み。原子力施設及び非原子力施設の区別はなく同じ規制の仕組みで実施。 放射線防護法の下、非原子力施設からの放射性廃棄物の扱いについては、スウェーデン放射線防護機関(SSI)規則・原子力エネルギーに関係しない放射性廃棄物に関する規則 (SSI FS 1983:7) で定められており、この中で固体廃棄物を地方自治体の処分場へ送ることができる放射能レベルが定めらている。 クリアランスレベル等についてはまだ定められていない。ただし、10CFR Part20第2002条によりケースバイケースでは実施。
法律上の減衰保管の扱い 放射性廃棄物の貯蔵・処分方法の申請において適用できる。 法令上、減衰保管の扱いについては定められていないが、クリアランスの1つの形態として実施。放射性廃棄物の貯蔵・処分方法の申請において適用できる。 法令上、減衰保管の扱いについては定められていないが、クリアランスの1つの形態として実施。
10CFR Part20第2001条と同Part35第95条において減衰保管について明確に規定。
クリアランスレベル
RSA93; SCHEDULE1
  Ac,Po,Pa,Ra: 0.37ベクレル毎グラム(固体廃棄物)
  Pb: 0.74ベクレル毎グラム(固体廃棄物)
  Th: 2.59ベクレル毎グラム(固体廃棄物)
  U: 11.1ベクレル毎グラム(固体廃棄物)
1986年放射性物質(低放射性物質)免除令(SI ナンバー1002) :0.4ベクレル毎グラム
1990年放射性物質(病院)免除令(SI ナンバー2512):400キロベクレル毎0.1立方メートルで個々のトータル40キロベクレル以下、α放射体は含まない。
放射線防護令において規制解除レベルの一覧表を整備しており、無条件クリアランス、条件付きクリアランス毎にベクレル毎グラム又はベクレル毎平方センチメートルの単位で表示。

例えば;
トリチウム:1E3ベクレル毎グラム
炭素14:8E1ベクレル毎グラム

等が示されている。

ただし、半減期7日未満の核種については、免除レベルをクリアランスレベルとして適用
SSI規則1983:7
1事業所あたり地方自治体の処分場へ送ることができる廃棄物中の各放射能は、

10ALI分毎
1ALI分毎1廃棄体
(ALI:年摂取限度 (ICRP30))

として示されている。
例えば、炭素14のALI分は90メガベクレルとされている。
規定無し

10CFR Part20第2005条の特定廃棄物規定では、以下の廃棄物について記録義務(保持義務も有り)を前提として非放射性廃棄物として扱う規定有り。
液シン廃液1.85キロベクレル以下のトリチウム又は炭素14
1.85キロベクレル(個々の動物組織全体重で平均)以下のトリチウム又は炭素14(人間又は動物の食料にならないように処分)
減衰保管規定 減衰保管に関する規定そのものはなく、対象となる放射性核種の半減期や保管期間についての規定もない。対象となる放射性廃棄物の性状に合わせて、保管期間等を決めている。

1990年放射性物質(病院)免除令(SI ナンバー2512)では、発生した放射性廃棄物は2週間以内に処分しない場合には免除令の適用がなされず法律の規制対象となる。
減衰保管に関する規定そのものはなく、対象となる放射性核種の半減期や保管期間についての規定もない。ただし、半減期については規制当局や州のガイダンスにおいて100日以内との記載がある。 減衰保管に関する規定そのものはなく、対象となる放射性核種の半減期や保管期間についての規定もない。 10CFR Part35第95条において半減期120日未満について減衰保管ができると規定。保管期間については規定はないが、放射性廃棄物の減衰保管に係る申請書見本では最低10半減期以上との記載有り。
クリアランス手続き 放射性廃棄物の貯蔵・処分について申請・許認可を得ることが必要。
免除令(病院)では規制機関への適用の申告が必要。減衰保管では、廃棄物の化学的・物理的な性質、含有される放射性核種とその放射能濃度の最大値及び保管期間等について申請書に記述することが必要。クリアランスのための特別の関与はないが、検査時に記録の確認を実施。
クリアランス計画の申請・承認を得ることが必要。実際のクリアランスでは、クリアランス測定と規制機関による確認が必要。
放射線防護協会のクリアランス・マニュアル(2003年)が整備されている。
クリアランスのための特別の申請・承認を得ることは必要ない。通常の放射性廃棄物の取り扱いの中で実施。 減衰保管のために特別に申請・承認を得ることは必要無い。放射性物質の取り扱いの許認可時に放射性物質の減衰保管による取り扱いを記述。また、州によるRIの使用も含めた年1回の検査を受ける。
放射能レベルの確認 一般的には、表面線量率の測定結果から廃棄物内の特定の放射性核種の放射能濃度を換算することにより確認。測定方法が合理的に正確であることを規制当局に示すことが必要。
1990年放射性物質(病院)免除令(SI ナンバー2512)では、信頼できる測定による確認か信頼できる方法による見積もり、と規定。
測定方法はドイツ工業規格(DIN)で細かく規定。
核種組成が複雑な場合には、主要核種の特定を行う。
放射線防護協会のマニュアルでは、短半減期の減衰保管では記録に基づく計算(差引き法)も可能であるが、その正当性の説明が必要。
原子力施設では、測定方法等について文書化が義務。
非原子力施設では、測定義務の規定はなく事業者の責任で確認。
減衰保管では、表面線量率の測定によりB.G.との区分が不可能であることを示す。
減衰保管時の長半減期核種の扱い 特に規制としての規定はない。 特に規制としての規定はない。
しかし、放射線防護協会のクリアランス・マニュアルでは、廃棄物の分別について以下のような区分での処理が推奨。
1 固体廃棄物
−長寿命放射性核種(半減期大なり100日)
2 固体廃棄物
−短寿命−放射性核種に応じて分離
3 可燃性液体廃棄物(測定可能)
−長寿命放射性核種
4 可燃性液体廃棄物
−短寿命−放射性核種に応じて分離
5 測定/研究活動からの廃棄物
6 測定/研究活動からの短寿命廃棄物
−放射性核種に応じて分離又は混合

特に規制としての規定はない。 NUREG1556第9巻付録Wとして示されるNRCの減衰保管の標準手順に「異なる半減期の廃棄物は別の容器を使用」とあり、半減期毎に分別。
Society of Nuclear Medicineのハンドブックでは、半減期1日未満、1日〜6日未満、6日以上の分別の記述。
加速器施設の廃止等 加速器の廃止に伴い発生する廃棄物についてクリアランスに関する特別な規定はなく、RSA93による規制及び1986年放射性物質(低放射性物質)免除令(SI ナンバー1002)の適用等により対応される。
加速器の廃止に伴い発生する廃棄物についてクリアランスに関する特別な規定はなく、放射線防護令の規制により対応される。 加速器及び密封線源の使用に関するSSI規則(SSI FS2000:9)では、加速器の廃止に伴い以下の規定がある。
解体計画の策定
発生する放射性物質及び廃棄物の放射線防護の観点から安全管理に必要な要件の策定

発生する廃棄物については、クリアランスに関する特別の規定はなくSSI規則1983:7により対応される。

米国:Pennsylvania州の規則25; PA.Code §228.23aの例(加速器許可の終了)では、加速器の廃止に伴い以下の規定がある。


1 加速器の使用を終了し、加速器を廃棄又は移譲
2 加速器の運転によって生じた目的外の(incidental)放射性物質を適切に処理
3 州当局に物質処分証明(Form 2900-PM-RP0314)を提出
4 当局が不要と認めた場合を除き、放射性物質が存在しないことを確認するために放射線調査レポートを提出
5 放射線検出の有無により、
(a)放射性汚染不存在の証明を提出し、情報が適切であれば当局が許可終了
(b)除染等を経て当局が許可終了を通知するまで許可期限日後も許可が継続
6 5(b)の場合は、許可範囲は除染等のみに限定される

以上


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