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山口委員の意見について

 放射線障害防止法政省令等改正のポイント(資料13‐2)への意見

1. 医療分野における規制の整理
 医療機関では医療機器の調整や画像診断の補助のために校正用線源や吸収補正用線源が用いられています。
 これらの校正用線源や吸収補正用線源には障害防止法の規制対象のものがあります。また、今後、新たに規制対象となる線源があることが想定されます。
 これらのうち、吸収補正用線源は医療法の規制対象とすることが措置されており、薬事法に基づいて承認された医療機器の線源について、医療法への一元化がなされれば現場ではより適正に管理することが可能であると考えられます。
 このため、核医学診療など医療で用いられている線源については、薬事法、医療法による規制と障害防止法の規制の対象外とするのが適切であると思われます。
 これを実現するには、政令第1条第3号の薬事法第2条第4項に規定する医療機器で文部科学大臣が厚生労働大臣または農林水産大臣と協議して指定するものに装備されているものという規定を利用するのがよいと考えられます。ただし、その前提として、これに対応する薬事法の整備が不可欠であり、調整が必要だと思われます。
 また、医療機器の校正用線源、吸収補正用線源を設計承認機器とするよう関係業界に働きかけるのも有益である可能性があると考えられます。
 このような措置が実現すると、厚生労働省における薬事法の改正を待つことなく、来年に迫った政令省令改正への当面の措置として、簡易な届出で設計承認機器が使用できるようになるため、医療現場での無用な混乱を回避できることが期待されます。また、装置に装備された線源に関する保管の要件については、それを徹底する共に(夜間も使用中であるとして、耐火性やセキュリテイ上万全でないままに装置に装備していることを認めているとすると安全確保上問題があるように思われます)、無理矢理に外して別の貯蔵施設で保管する必要がなく実効性のある保管がなされるように装置設計するよう政策誘導するのがよいと思われます。
 一方、放射線治療で使用される治療用線源やライナックについて、今後とも放射線障害防止法の規制から薬事法や医療法の規制へ一元化することを検討すべきであると思われます。ただし、一元化には薬事法および医療法での規制の整備が必要だと思われます。
 医療分野の規制の整理に関して、現在、検討中の事項以外の整理については、さらに慎重な検討を要するものであり、今回の政省令改正において措置することは困難と考えます。長期的な検討事項としたいと考えます。

2. 使用の許可と届出の区分の考え方
 各事業所における非密封線源に関する使用許可がいるか否かの判定において、下限数量の1/100以下の核種については加算の対象にしないことは放射線安全上も妥当であると思われます。
 一方、密封線源に関して線源を集合した場合の扱いについては、機器装備前と記載されています。しかし、使用後の線源を回収する事業者があり、そのような事業所内で線源が集合することも考えられるとすると、このような想定についても措置しておくのが安全確保には有用ではないかと思われます。
 密封線源については、機器装備前のもの、機器装備後のものいずれも密封されたもの1個ごとに判断することを検討しています。ただし、一式又は一組として使用をするものについては、一式又は一組で判断することになります。免除レベル以下の線源であっても、一台の機器に複数の線源を装備するものや、一の容器に入れて使用をするような場合、届出や許可が必要になります。
 免除レベルの0.01倍未満の非密封線源も規制対象として許可申請を要するが、被ばく評価や数量の申請を要しない扱いとすることを検討しています。

3. 移動使用の範囲の拡大
 移動使用の範囲の拡大は、放射線や放射性物質の有効利用に欠かせないものであり改正案に賛成します。
1) 対象について
 A型輸送が可能な数量とするとのご説明は理解できるものであり妥当であると思います。ただし、A2値を上限とするとあるのは、リスクを考えると特別形についてはA1を上限としないことの説明が困難であるように感じました。
 可能であれば、「放射性同位元素の区分に応じA1,A2値を上限」とされることを検討されてはいかがでしょうか。
 ただし、10テラベクレルを超える数量についても移動使用を認める場合には施設検査との関係の整理が必要だと思われます。
 いずれにしても、改正案に示されたように移動使用に関しある上限を設けることは理解できますが、移動使用と輸送は異なるので法令適用上の混乱を防止するには、説明が必要だと思われます。
 移動使用できる放射性同位元素の上限値を3テラベクレルを上限とするA1値とすることを検討中です。ただし、移動使用する機器について線源の脱落防止のための基準を設けることや、使用の場所では放射線取扱主任者免状所有者が指示して放射線取扱業務を行うことなどの安全確保の措置を求めることを検討しています。

  2) 発生装置等について
 医療法施行規則では、使用場所の制限の例外の規定により、手術室で放射線発生装置を移動使用できるように措置されています。
 また、放射性医薬品、照射器具等においても、一時的に管理区域を設定し、使用室以外で使用できるように措置されています。
 このような利用において、障害防止法の手続きに混乱が生じないように法令適用の考え方を整理されることを提案します。
 病院内での複数の場所での使用であるので、あらかじめ手術室も放射線発生装置使用室として許可を取り、施設検査に合格しておけば、複数の使用室で使用する運用は可能ではないかと考えています。使用室を変える都度、施設検査を受けることは要しません。ただし、管理区域としての措置が必要となります。
 管理区域としての措置については、今回の改正で新設する修理時の健康診断等の特例について、「放射線発生装置を他の管理区域に移動したとき」を加えることを検討します。
 管理区域としての標識については、放射線発生装置の修理時(及び移動時)の健康診断等の特例を適用しているときは、放射線発生装置の運転をしていない旨又は放射線発生装置を設置していない旨の表示をすることを検討します。

4. 新しい点検制度
 密封線源取り扱い事業所では「機器1台で10テラベクレル以上の線源」を施設検査の対象とするとあります。
 一方、これまでの議論では、IAEA TECDOC-1344の放射線源のカテゴリー分けを参考にしてはどうかとされてきました。
 規制の簡素化という側面では、検討中の案は評価できるのかもしれません。
 しかし、これまでの議論を踏まえると、核種ごとの特性を考慮してD値を定め、利用されている各機器についてD値の何倍かを調査してカテゴリーを分け検査の対象を決定するようにルール化するのが妥当ではないかと考えられます。
 実際に、カテゴリー1の機器に使用されている核種は、ごく少数の核種に限定されています。このため、核種ごとにD値を定めてD値の何倍として定める必要性に乏しいと考えます。
 このような場合は、核種ごとに定めるよりも一律10テラベクレルとする方がわかりやすい規定になると考えます。
 なお、IAEAのカテゴリー分類もD値だけで判断しているものではありません。今回の10テラベクレルは、実際に機器に装備されている放射性同位元素の数量の幅を考慮して定めようとするものです。

5. 設計認証の具体的制度
 「4.認証の基準」の「品質検査の条件」において「製品の線量当量率を測定により確認すること」とあります。
 しかし、漏洩線量が著しく低く容易に測定できないものもあると考えられます。
 また、計測機器校正用の線源は、放射能値や放射線放出率で値付けされているものがあり、必ずしも、「線量当量率」の測定が適正な品質検査であるとは限りません。
 このため、必要に応じて機器からの漏洩線量が設計の範囲であることを確認する測定を行うこととするのはいかがでしょうか。
 条文の具体的な規定ぶりについては、法令における用例を検討して定めますが、基本的に御趣旨を踏まえた内容又は運用としたいと考えています。

6. 下限数量以下の非密封線源の使用
 規制免除レベルを下回る放射性物質は、規制の枠外であり、その使用後の廃棄については、基本的には、規制対象外とすることで不都合はないと思われます。
 ただし、規制免除レベルを下回る放射性物質の使用において何らかの理由により廃棄時に廃棄の基準を上回るのであれば、それについても何ら規制の対象にしないというのは安全確保上、もしかしたら、不都合なことがあるのかもしれません。
 しかし、この判断が、他の放射性廃棄物を有しているかどうかで異なることに合理性があるとは考えがたいと思われます。
 「問題」であるとすると具体的に問題の所在を明らかにして対処法を考えるのがよいと思います(まずは「汚染された物」の定義を示されるとよいと思います)。
 許可廃棄業者に下限数量以下の使用後の固体廃棄物の廃棄を認めていないのは、放射性廃棄物のクリアランスが制度化されていないこと、下限数量がクリアランスの基準として認められていないためです。今後のクリアランスの検討の中でさらに御検討をお願いします。
 規制対象下限値以下の放射性物質の使用に伴い、液体廃棄物、気体廃棄物の廃棄が排出限度を超える場合があるかもしれません。これについて被ばく評価や規制が必要であるとは考えていません。
 規制対象下限値以下の放射性物質の使用に伴い、規制対象下限値を上回る数量の放射性物質が付着・混入した汚染物が発生した場合は、いずれかの時点で規制対象下限値を上回る放射性物質を取り扱っていたわけであり、所持制限の違反や無許可使用の問題となります。

   また、PET核種の廃棄物対応で、放射性廃棄物としての規制の対象としないとした議論が、クリアランスとは異なるという説明は、理屈の上では成り立つとは思いますが素直ではないので、クリアランスレベル導入後に再整理するのがよいと思います。
 保管後は放射能がないといえるPET廃棄物と放射能があるが防護を要しないクリアランスは、異なる概念だと考えます。クリアランスに関する今後の検討により再整理が必要になれば、考えたいと思います。
  事業所の概念については整理することが必要であり、座長からも指摘があったように、規制のあり方の観点から必要に応じて現状も調査し、対応策を検討するのがよいと思います。
 原則的には、法人格が同じ者が事業を営む地理的に一体的な場所が事業所と考えます。このように考えれば、同一敷地内は、原則として一の事業所になりますが、機能が大きく異なる場合は、別の事業所として許可している場合があります。
 同一の敷地内で複数の事業所の許可を得ている場合でも、敷地が広く建物が別であるときなどは、下限数量以下の数量を双方の事業所で使用しても、実際の被ばくの評価において問題となることはありません。
 一方、同一の建物の中で、法人格が異なる者が、それぞれ事業所を設けることも考えられます。このような場合でも下限数量以下の数量を双方の事業所で使用しても、実際の被ばくの評価において問題となることは、まず考えられませんが、敷地が広く建物が別である場合に比べ、より近接した位置に放射性同位元素があることになります。
 これらのことを考えると、厳格に事業所の要件を定義することの必要性は必ずしも大きくないのではないでしょうか。もちろん、社会通念上、適切ではないような無節操さで事業所を設定することは認めるべきではないと考えます。放射性物質の使用をする方の良識を期待します。

10. その他の規制の合理化等
 一定期間以上という条件を外すかその短縮を検討されてはいかがでしょうか(1週間というご提案には必ずしも合理性がないと思われるので)。
 予防規程に定める所内ルールに、一時的な管理区域解除の設定方法を明記するように規定されてはいかがでしょうか。確実に一時的な管理区域解除ができるのであれば、健康診断の義務の免除だけでなく立入の記録の記帳の義務も解除できると思われます。
 一定期間を1週間とすることについては、ある程度の期間運転しないことを条件にしなければ、運用上の誤りが起こりやすくなることを懸念したものです。
 期間の短縮については実績等を踏まえ、将来検討したいと考えます。
 一定期間以上運転をしないときは、健康診断、測定、教育訓練について要しない特例とすることを検討しています。その対象となる管理区域や始期と終期の確認に関する所内手続き等を予防規程に定めることを考えています。ただし、この期間の特例の措置の対象となった者については、記録しておくことを求めることとしています。万一運用上の誤りがあった場合に善後策を講じることができるようにするためです。



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