資料15−3
非密封放射性同位元素(RI)の安全取扱についてのコメント
大学等放射線施設協議会 会長 中村 尚司
今回の規制免除レベル取り入れに伴う法令改正には、協議会からの提言(別冊)も多く取り入れられており非常に適切なものと評価できる。ただし、協議会の理事会やクリアランス検討委員会で検討した結果、規制免除レベル以下の非密封放射性同位元素(RI)の安全取扱について様々な観点からの意見が出されているので、それを総括して協議会会長としてのコメントを述べることとした。
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新規制免除レベルの導入により、密封と非密封の区別がなくRIの定義数量が決められることになった。しかし、これまで、40年に及ぶ密封、非密封RIの安全取扱の歴史を考えて、密封、非密封RIの管理方法の区分は現行法令のまま残されることとなった。例えば、非密封RIの数量の合算、汚染と非汚染の管理区域の区分、排気・排水設備などである。
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2) |
特に非密封RIとしての使用数量(購入数量)が多く(全使用数量の大半を占める)、半減期も12年と長いトリチウムが、現行法令の数量3.7 、濃度74 から、新規制免除レベルでは1 、1 と大幅に規制値が上昇することに対して、利用者からは期待が寄せられているが、管理者からは大学等でのこれまでの非密封RI安全取扱に混乱をもたらすのではないかとの不安の声がある。
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3) |
非密封RIは事業所全体で使用する全核種について各核種の数量の規制免除レベルに対する割合の合計が1以上の時は許可が必要になる(数量合算される)ので、許可事業所ではこれまで通りのきびしい安全管理が要求される。しかし、許可を必要としない(例えばトリチウムだけを1 以下使用する)一般の事業所では使用、廃棄とも規制を一切受けないことになり、許可事業所の管理とは大きな落差が出来ることになる。今回廃棄の基準は改正されないので、例えば1 に近いトリチウムを使ってそのまま排水に流したとすると、排水濃度限度を大きく超えることになる。規制免除レベルとの整合性の取れた排水・排気濃度限度を今後早急に作るべきであろう。
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4) |
このような状況に鑑み、今回の法令改正を混乱なく推進するために、協議会では規制免除レベル以下の非密封RIの使用について、大学として全学の安全管理規定等を制定し、協議会で提言している管理区域外の特別に管理された区域(監視区域)で、自主管理方式で行うことを検討している。大学の中で、規制免除レベル以下の非密封RIを許可事業所ではきびしく管理し、許可が不要な事業所ではルーズに使用されるというアンバランスな事態を避けるためである。協議会として、自主管理方式に基づくこれらの規定のモデル案を作成することを決め、委員会で検討することにした。
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5) |
今回の改正では、許可使用者以外の者が規制免除レベル以下の非密封RIを使用する場合、貯蔵量、使用量、汚染された物の合計が免除レベルを超える時は所持制限違反になるので許可が必要となっており、また継続して使用する者については汚染された物を含めて免除レベルを超える場合は許可を求めるとなっているが、これをチェックし規制することは実際上困難であろう。BSS免除レベル設定のシナリオは、1年間10 以下となる線量基準に基づいており、1年間の総使用量(購入量)がトリチウムでは1 、1 以下でなければならないが、例えば1回に1 以下を購入して使用後に廃棄するという行為を繰り返す事も可能で、線量規準が満足出来ないという事例が発生することも考えられる。このような事は、現行の規制レベル以下の非密封放射性同位元素についても言えることであるが、少なくとも現行制度の下で問題とはなっていない。今回のトリチウムについて規制免除レベルが約3桁も大きな値となったことによって、上記のような使用を積極的に行う者が現れる可能性がないわけではないので、規制当局としてこの点に十分留意し、事態の推移を注視し、場合によっては、何らかの適切な対応(例えば、販売する側でチェックするとかガイドラインを出すなど)が必要と考えられる。 |
2004年11月29日 第15回放射線安全規制検討会資料
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