研究炉等安全規制検討会(第15回) 議事要旨

1.日時

平成16年 9月 3日(金曜日)15時~16時30分

2.場所

文部科学省ビル 10階 10F3会議室

3.議題

  1. 試験研究用原子炉施設等におけるクリアランス制度について 【審議案件】
  2. 原子力施設の解体、廃止措置に対する安全規制について 【審議案件】
  3. 自然放射性物質を含む物質及び少量核燃料物質の規制について 【審議案件】
  4. 試験研究炉における二次冷却系配管の健全性確保について 【報告案件】
  5. その他

4.配付資料

  • 資料15‐1 第14回研究炉等安全規制検討会の概要(案)
  • 資料15‐2 試験研究用原子炉施設等におけるクリアランス制度について
  • 資料15‐3 原子力施設の解体、廃止措置に対する安全規制について
  • 資料15‐4 自然放射性物質を含む物質及び少量核燃料物質の規制について
  • 資料15‐5 試験研究炉における二次冷却系配管の健全性確保について

5.出席者

委員

代谷座長、瓜生委員、神田委員、小佐古委員、桜井委員、高橋委員、丹沢委員、蜂谷委員、林委員、山中委員、前田委員、

文部科学省

青山原子力安全監、加藤原子力安全課長、青木原子力規制室長、黒村企画官、吉田運転管理・検査管理官他 

6.議事要旨

(1)  代谷座長から開会の挨拶

(2) 前回(第14回)検討会の議事概要の確認
資料15‐1に基づき、事務局より説明。訂正等を求める意見はなく、了承された。

(3) 試験研究用原子炉施設等におけるクリアランス制度について
資料15‐2に基づき事務局より説明の後、次のとおり委員から意見、質疑があった。

○ 小佐古委員 原子力安全委員会においては、発電用の原子炉、ガス炉及び一部の研究炉を対象として重要核種の抽出を行ったが、一部の研究炉において使用されている遮蔽材には133Baが含まれる等かなり特殊なケースも想定されるため、各試験研究用原子力施設に適用した場合、同様な理屈が通るかの確認及び想定シナリオの検討が必要かと考える。例えば、対象とする重要核種が当該施設には存在しないことがわかっている場合、発電炉と同様に大がかりな検査を行うのか。
 次に建物の再使用についてであるが、IAEAにおいてサイト解放の文書があるのではなかったか。いずれにしても建物の再利用はサイト解放等いろいろ絡んでくるが、IAEAの要求事項は日本の法体系と違うため、導入には若干の注意が必要と考える。
 また、全体に関する話であるが、このクリアランス制度の全体のフレーム、枠組みはどのように進めているのか。例えば、発電炉の検認は、計画段階における国によるコミット2回、実施段階における外部委託によると思われる抜き取り確認と2段構えになっているが、研究炉においてもそういう大がかりな仕組みで実施するのか、あるいは外部委託による検認のみとするのか。発電炉においては、解体廃棄物の量が多く、事業者の資金力もある。そういった観点からも研究炉に同じシステムを当てはめてよいのか。その辺りが大きな別れ目になると考える。
 また、特に研究炉の場合は、放射線障害防止法との境目がかなり微妙になるものと考えられる。原子炉を解体する際に、放射線障害防止法の規制対象となる部屋等について、そこだけを残す訳にもいかないし、部分的に重なって使用されているところもあるであろうから、どういう切り分け方、原則があるかについても若干の思考実験が必要ではないかと思う。

○ 代谷座長 毎回指摘されていることであるが、多種多様な試験研究用原子力施設にどのように適用するかが問題である。ご指摘の通り、少量の重要核種に対して大がかりな検査装置の導入は資金的にも困難という部分もあるため、測定方法等はどうするのかという具体的な検討が必要となる。こういう話を具体的に進めることになれば、専門的に検討を行う委員会を立ち上げるのが良いのではないか。そのような委員会における検討結果について、この場で審議する形をとるのがよいかと思うが。

○ 小佐古委員 まず議論の前提として、どれくらいの物量のものがどういう形で出てどう流れるのか、また規制行政庁がどのようにクリアランスレベルの規制を運用していくかについて把握していないと、何を議論しても収まりが非常に悪くなるように思う。例えば、検認方法は、部屋単位、壁単位、大型のものをパーツに分ける、あるいは破壊分析を混ぜて行う等いろいろある訳で、ある程度の材料が揃っていないとなかなか現実的な良い仕組みを提案できないのではないか。また、100万kW級と1kWの研究炉ではクリアランスの対象となる物量は大きく違う訳で、それについてもいくつかの思考実験を行わなければならない。クリアランスの度にあまりにも膨大な物量と人間が動くのであれば、クリアランスそのものを行わないとか、クリアランスレベルのものを低レベル放射性廃棄物として取り扱うことによりマンパワーや作業を1つにしてコストを削減するとか、複数の炉の解体を一斉に行いコストを削減するとか等もオプションとして考えられる。思考実験は、たぶん急がれる方も多いだろうから早期に実施した方がよいと思う。

○ 桜井委員 クリアランスを設けて管理対象を少なくすることにおいては、小佐古委員と同様にコストベネフィットの観点からの検討も必要と考える。

○ 小佐古委員 次の審議案件である原子炉の解体プロセスにおいて、一番大きな物量が出てくる。解体の手順とクリアランスを強くリンクさせ、解体の全体の流れ、区分けや手順をどうするのか、またその中でクリアランスをどうするかについて議論する方が全体にとって良いかと思う。

○ 丹沢委員 ご指摘の通り、ケーススタディが必要ではないかと思う。発電炉には解体時の低レベル放射性廃棄物を処分する場所があるが、小規模の試験研究炉においては行き場がないというのが現状である。小さな事業所にとって解体時の放射性廃棄物を事業所内でどうするか、クリアランスの中でどのような扱いとするのかは重要なシナリオであり、解体の際クリアランスが適用され、その施設を別な形で使用できるということは極めて重要な選択肢である。

○ 小佐古委員 IAEAの安全体系の中に、研究炉等の解体というガイドか要求事項があったように思う。それについて調査して国内法との関係を調整し、項目の洗い出し及び対応する法令で既に整備されているものと未整備なものを整理すると、落ち度なく極めて早い時期にいろいろなものが出来るような気がする。

(4)  原子力施設の解体、廃止措置に対する安全規制について
資料15‐3に基づき事務局より説明の後、次のとおり委員から意見、質疑があった。

○ 小佐古委員 現在保安院においても、発電炉等の解体について法令改正も視野に入れた規制体系の整備を行ってはどうかという議論が進んでいるが、それはここに反映されていると考えて良いか。
→ 原子炉等規制法は1つであるので、事務的な打ち合わせで調整しつつ両省庁の委員会に提案し方向性を決めていきたいと考えている。最終的には同じ形になるかと思う。

○ 小佐古委員 2年程前にガス炉を解体する際、解体届の提出だけでよいのかという問題意識があり、保安院は、IAEAの定める解体手順に関する要求事項をベースにして議論を行い、品質保証をどう組み込むか、記録等をどうするか、計画から実施に至るプロセスをどうするか等を検討した上でかなり丁寧な内規を策定している。ここで議論する際にもそういうものを参考とすれば抜けがなくなるのではないか。
 また、通産省の時代に議論していた際は、解体の措置は4段階程度で行い10~20年の冷却期間を経て解体に着手するという非合理的なものだったが、放射能がない又は低い部位についてはその必要がないため、先行解体という概念を取り入れたりもしている。そうすれば、そこを放射性物質の置き場あるいは除染設備、検査設備を入れるスペースとすることもでき、合理的である。研究炉においては発電炉と違い規模が小さいので、いくつかのケーススタディを早急に実施してほしい。炉規制法という1つの法律であるから、考え方は1通りでなければならないが、研究炉については、工夫が必要である。

○ 丹沢委員 資料のP2において、検討方針として「2.通知に基づき実施してきた報告徴収等の制度の取り入れ」は、事業者にとっては何をすればよいかがはっきりするので非常によいことだと思う。また「③「解体」行為に対する規制の明確化」については、基本的に解体と廃止措置の届け出は、廃止措置の届け出で一本化して体系化するものと理解しているが、この方向性でいいのではないか。
 また全体を通して、用語の定義として気になっていた「運転」という言葉であるが、「運転」=「原子炉の運転」というふうにきちんと定義できるように見直していただきたい。つまり「使用」と「運転」との使い分けを明確化して欲しいということである。例えば、法律の廃止の措置においては「全ての運転を終了して」とあるが、設置許可の申請書の流れからいうと、原子炉本体だけではなく全ての施設に係る訳で、保安管理の責任は事業者としている。この場合、「使用」と考えるべきではないか。施設の使用ということで、その中に原子炉の運転があるのだという定義をして、広義の運転と狭義の運転を明確に区別できるようにしていただきたい。

○ 小佐古委員 日本原子力発電(株)で解体を行う際に国から意見があったのは、解体した放射性廃棄物の行き先がちゃんとあるかどうかであった。研究炉の場合、低レベル放射性廃棄物等はどの程度出てくるのかだいたい把握しているという前提でこれから議論をしていくのか。

○ 代谷座長 今のところ、研究炉の放射性廃棄物は行き場がない、どこに持っていくか見えていない段階での話である。現状においては、経済産業省が所管するもの、文部科学省が所管するものという形で分かれているのが現状である。
→ 廃棄の事業の許可を得れば埋設処分ができる。原研東海研においては廃棄の業の許可を得ており、JPDRについては、極低レベル放射性廃棄物を東海の敷地内に埋設最終処分している。炉心については、固体放射性廃棄物として保管廃棄の形になっている。他の研究炉については、どなたかが事業を起こせば可能ではあるが、現状ではそこまで進んでいない。そうはいいながら解体の手続きをとられている原子炉は、8基ある。

○ 丹沢委員 もう一つ検討いただきたいのは、これは研究炉施設の特徴であると思うが、原子炉施設の廃止後、基本的に放射性廃棄物がなくなるまで自分のところで放射性廃棄物を隔離する責任がある訳だが、その時の管理区分についてである。原子炉施設としてそのまま管理するのか、核燃料使用施設として管理していくのかという管理区分の変更についての是非というか、可能性についても事業者にそれなりのオプションを与える必要があると思うので、その辺りについても必要な検討を進めていただきたい。

○ 桜井委員 それについてはJRR‐1で実績がある。

○ 代谷座長 これについては、同じ原子炉等規制法の中で実施できるので可能ではないか。放射線障害防止法が適用となるとややこしい話ではあるが。

○ 小佐古委員 原子炉施設を核燃料施設に規制替えして管理を軽くすると原子炉解体が進むわけでもないし、解体廃棄物の施設外搬出が出来るわけでもない。単なる先送りではないか。それでは廃止措置についてはっきりした方針とかが議論されたとは言えないと思う。よって、全体としてどう流れるかを早い時期に共通的な問題として議論していただきたい。これは国がということではなく、我々自身に言っていることであるが、原子炉を動かしてきた研究機関の者が、自らが行ったことに責任もって最後まで考えるべきであると思う。

○ 代谷委員 ご指摘のとおりだと思う。単に規制だけという訳ではない。日本の原子力のあり方に関わる問題であると思う。
→ 現実、民間の小さな炉だと、解体届は出ているが、結局何十年にも亘って最後の処置がはっきりしていない。廃止を終了するためには放射性廃棄物全てをなくさなくてはいけない。解体届、そしてその後に廃止届が出されるというのが現行の法体系であるから、今回の案のように廃止から始めても最終的には同じ要求をすることになる。なお、JRR‐1は廃止届が出ており、解体が終了した後に展示の目的で使用許可を新たに取られたという形となっている。

○ 高橋委員 現状においては、放射性廃棄物を事業所外に出すことが出来ず、事業所内で保管管理する状態で使用の許可を持ち続けることとなり、政令16条の2に該当すればそれなりの規制を受けることになると思うが、放射性廃棄物の管理だけを行う核燃料使用施設について、少し規制を緩和するとかそういう考えはあるか。
→ 使用施設について言えば、廃止届許可後の放射性廃棄物の保管・廃棄状況により保安検査を変更すれば実質上は軽くなるのでないかと考えており、原子炉についても同様に考えている。

○ 瓜生委員 いずれにしても1事業者で原子炉を単数所有しているところと複数所有しているところがある訳で、最低限の規制は当然満足した上で合理的な選択肢がとれるような制度としていただきたい。

○ 林委員 複数所有している場合において解体を考えた場合、新しい案のフローの考え方でやっていくのか、又は例えば使用変更みたいな形でやっていくのがいいのか、それぞれの条件によって妥当な管理方法、規制の方法があると思うので、いくつかのケースを考えながら幅広に検討する必要があるかと思う。

○ 小佐古委員 現在の法体系で不合理な部分についてはある程度工夫して合理的な体制にするということであるが、事業者側は、それで甘えてはいけないと思う。よく学会とかでいろいろな文句は出るが、それについての解決策は何も提示されない、これでは学者の名が泣く。国はいろいろ工夫している部分もある訳であるから、事業者側もいろいろな案を出すべきだ。国としても、事業者からの案がないから検討しないと言うとか、あるいは積極的にそういうことが検討できるような助成金を安全側でなく推進側に対して出すようなこと等は出来ないのか。新しい分野の開拓を助成することも大事であるが、その機能の終了時にきちんと終えるための工夫、活動を行うことも推進側の業務に入ると思うが。
→ 今のご指摘は非常に大事なポイントと考える。特に放射性廃棄物は存在する限り管理を行わなければならず、国としても何らかの規制を行わなければならない。一カ所にまとめて処分するのが限られた規制リソースの有効活用の点からも好ましいが、まず何よりも原子炉を使用した者が責任を持って管理処分を行い次世代にツケを負わせないことが原則であり、原子力開発の推進側にも今のお話は伝えておきたい。

(5) 自然放射性物質を含む物質及び少量核燃料物質の規制について
資料15‐4に基づき事務局より説明の後、次のとおり委員から意見があった。

 

○ 小佐古委員 まず、溶接棒等にはThが使用されているが、規制はされていない。商品へ注意事項を記載するなどが必要と考える。
 自然放射性物質を含む物質の規制については、放射線審議会は、参考資料にある表5「自然放射性物質を含む物質の分類と対応案」において、ガイドラインは個々に作っているのでこれでよいと思うが、1mSv/年を越えたものを目安として介入の対象とするという点は非常になじみが薄いので、法律になじむかについては若干の工夫が必要であろう。
 自然放射性物質については世界各国においても大きな話題となっており、IAEAにおいてもNORMのガイドラインを作るために動いているとのことである。
 自然放射性物質を含む物質の規制としては、第1に線量が高い特殊な場所について認知すること、第2にその認知した場所についてどういうカウンターメジャーをするか及び措置のレベルを定めることが考えられる。ここで、大量の自然放射性物質を使用する場合等については厳格に適用することは非常に難しいと考えるが、ある程度突出して高いものには何らかの手だてを採ることが必要である。このように、物差しについてはだんだん見えてきたが、自然放射性物質は広い産業で使用され、微妙な問題を多く含んでいるため、これを法律として規制するか、業界のガイドラインとして取り扱うのかについては、若干議論が残るものと考える。なお海外においては、チタン工場、肥料工場、製鉄所、タンカー、蒸留装置の缶石等に高いレベルがあるので、引き続き調査・検討が必要である。
 また、自然界に放射性物質が存在し産業として利用されており、1mSv/年を越えるものについては管理せざるを得ない状況にあることを理解すると、10μSv/年のクリアランスレベルの位置付けが非常にはっきりするため、今の時代においては事実をきちんと説明していけばいいのではないかと思う。
 少量核燃料物質については、来年の4月より改定された放射線障害防止法が施行され、IAEA及びBSS免除レベル以上については規制対象となるため、事業者は定義数量の中に入れる方向で準備をしている状況がある。U、Thについては、日本の法律の場合対象外ということで、0.8g、2.4gという数値がその下のボーダーラインに引っかかることとなる。これらについても、法律の平等性からいえば規制体系の中に入れるかという話であるが、従前使用していたものが突然規制対象となり原子炉と同じ扱いとなることは、リスクマネジメントの観点から奇妙な話であり、緩い管理で十分であるかと考えるが、トリウム等は比放射線が高い。
 2番目として、使用者に対する注意である。少量核燃料物質について取り扱う際の注意点について、現在の計量及び核不拡散上の管理だけでなく、安全の観点から、取り扱い方法(特に放射性廃棄物となった時)の認知、使用者への注意、使用場所(粉体の使用場所)の注意、の3つの注意事項について、法律で画一的に実施することは難しいであろうから、何らかのにガイドライン等で示すことが必要であろう。
 また、以前にも議論があったが、現在の規制対象となる核燃料物質の量の値は覚えにくいため、2g、3g等のきりのいい数字としてほしい。

○ 代谷座長 1つの方法として、ガイドライン的なもので運用してみて、それから問題点を洗い出すというやり方があると思う。 

(6) 試験研究炉における二次冷却系配管の健全性確保について
資料15‐5に基づき事務局より説明の後、次のとおり委員から意見があった。

○ 代谷座長 今の報告によれば、少なくとも試験研究炉においては、基本的に適切な管理が実施されており、現時点においては美浜と同じような事象が起こりそうにないということであると思う。
  今回の件においては、試験研究用の原子炉は発電炉とは温度条件等がかなり違うこと、2次冷却系には放射性物質は入っていないことを考慮した上での災害を引き起こす可能性が非常に重要なポイントになるかと思う。災害の蓋然性がないものについて、蓋然性があるものと同様に扱うのは合理的ではない。以上についても勘案し、規制を行っていただきたい。

お問合せ先

科学技術・学術政策局原子力安全課原子力規制室

担当:小川、荒川
電話番号:03‐5253‐4111(内線3915)(内線3922)
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(科学技術・学術政策局原子力安全課原子力規制室)