参考資料3-2 高速実験炉「常陽」における燃料交換機能の一部阻害に係る独立行政法人日本原子力研究開発機構からの最終報告及び文部科学省の対応について

平成21年7月23日
文部科学省科学技術・学術政策局
原子力安全課原子力規制室

1.経緯

 平成19年11月、独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)の大洗研究開発センターの高速実験炉「常陽」(施設定期検査中)において、計測線付実験装置の試料部が炉心上部機構等と干渉して燃料交換機能に支障が生じたため、原子炉等規制法に基づき報告があった。

 炉内観察の結果、試料部が所定の位置に収納されていないこと、試料部の上部部品から固定ピンが外れたこと、上部部品が炉心上部機構内に残存していること、炉心上部機構の一部が破損・変形していることが確認されたため、平成20年9月に報告(第2報)があった。

 なお、原子炉は停止中であり、閉じ込め機能及び炉心の冷却機能に問題はなく、原子炉の安全性は確保されている。また、環境モニタリングの結果及び作業員の被ばく状況に異常は見られなかった。

 平成21年7月22日、原因及び対策について最終報告があった。

2.最終報告の概要

(1)原因

 炉内ラックにおいて試料部と保持部の切離作業を実施した際に、試料部が正常に切り離されなかったことに加え、荷重計による測定で試料部の重量に相当する重量差が確認されたことで、切り離しが成功したと誤って判断したことにより、試料部が所定の位置に収納されない状態で回転プラグを回転させたことが燃料交換機能に支障が生じた原因である。この要因を精査した結果は以下のとおり。

1  試料部が正常に切り離されなかった要因

 設計・製作を実施したメーカーによる試料部切離機構の設計において、試料部の切り離しが確実に実施できるよう寸法が的確に設定されていなかったこと(設計不備)。

 過去に同一メーカーが設計・製作した計測線付実験装置において試料部の切り離しができたことから、メーカー及び原子力機構において切離機能の検証が的確に実施されなかったこと。

2  当該装置の切り離しが成功したと誤って判断した要因

 荷重計による重量測定で、試料部の切離作業前の摩擦力に対して作業後の摩擦力が減少したため、見かけ上の吊り上げ重量差が発生したこと。

(2)対策

1  試料部切離機構の設計不備に係る再発防止策

 炉内ナトリウム中で切離機能が要求される装置について、設計の実施時において、シミュレーションや炉外試験等により、切離機能の検証作業を確実に実施する。さらに、切離機能が検証されていることの確認を、品質保証体系の文書の中で明確化する。

2  切り離しの誤判断に係る再発防止策

 炉内ナトリウム中で切離機能が要求される装置について、切離検知機能や画像による確認など切離確認方法を多様化する。

3  水平展開

 原子力機構内各施設に対して、本事象の内容及び原因と対策を周知し、同種事象の発生防止を図る。

4  復旧措置

 炉心上部機構を交換するとともに、炉内から試料部を回収する。

3.文部科学省の対応

 当省としては、原子力機構から提出された報告書の内容を検討した結果、その原因及び対策は妥当なものと判断する。

 今後、再発防止策及び水平展開の実施状況について、保安検査により確認する。また、復旧措置について、使用前検査等により確認する。

 

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