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資料4−4

2. クリアランスレベル検認に係る技術的要件及び留意すべき事項
   試験研究用原子炉施設等におけるクリアランスレベル検認に係る技術的要件等の検討にあたっては、原子力安全委員会報告書「原子炉施設におけるクリアランスレベル検認のあり方について」(平成13年7月16日、以下「検認報告書」という。)及び総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物小委員会報告書「原子力施設におけるクリアランス制度の整備について」(平成16年12月13日改訂、以下「クリアランス制度報告書」という。)において検討された項目を踏まえて行った。

 
2−1  クリアランスレベル検認の対象物
  (対象物の性状について)
 クリアランスレベル検認の対象物は、試験研究用原子炉施設等の廃止措置及び施設の改造に伴い汚染のおそれがある区域から発生する固体状物質(ただし、焼却処理を行う物は除く)とする。ここで、固体状物質とは、例えば、金属(配管、タンク、ポンプ、熱交換器、弁、モーター、ダクト等の機器やその他の金属構造物)、コンクリート(建屋構造物、解体コンクリート(一体的に含まれる鉄筋類を含む)、保温材等)が該当する。また、試験研究用原子炉施設等では施設によっては、少量ではあるが、熱中性子柱として利用されている黒鉛も想定される。一方、原子力施設で焼却処理を行わないプラスチック類(塩化ビニル製配管、グローブボックスパネル等)については、産業廃棄物として処分される場合、焼却処理が行われる可能性を有していることから、対象物とはしないことが妥当である。

(評価を行う物量について)
 クリアランスレベルは、少なくとも1トン程度の物量を想定して算出されたものであるため、対象物の物量に関し、留意が必要である。

(施設の改造で発生した廃棄物について)
 クリアランスレベル検認における線量評価で相対的に重要となる放射性核種(以下「重要放射性核種」という。)は、原子炉停止後(照射済燃料及び材料については、原子炉から取り出し後)少なくとも半年以上の減衰期間を経た物を対象として評価がなされている。このため、施設の改造で発生するものについては、原子炉停止後の時間に関し、留意が必要である。

(対象物に係る規制について)
 クリアランス制度が当面、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、「原子炉等規制法」という。)の規制下のみで行われることから、現段階では、対象物として放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、「放射線障害防止法」という。)の規制対象である放射性同位元素で汚染されていないことが条件となる。原子炉等規制法と放射線障害防止法の双方の規制が係っている物に対してクリアランスを行う場合には、今後、両法律の整合を取りつつクリアランス制度の整備を行う必要がある。

(既に解体されたものについて)
 既に解体が行われ、貯蔵された物については、汚染の履歴、除染の履歴等の記録に基づき、クリアランスレベル検認が可能な物であれば対象物となり得るものと考えられる。ただし、このような物については、クリアランスレベル検認で求められる測定・判断の方法と同等の手法が必ずしもなされていないことが想定されるため、クリアランスレベル検認を行う際には、貯蔵された物の放射能濃度測定に係る記録の妥当性を十分に評価し、必要に応じ放射能濃度の再測定を行うなどの措置を講じることが求められる。

(汚染形態について)
 対象物の汚染形態については、放射化の汚染の可能性又は二次的な汚染の可能性があるものが対象となる。双方の汚染の可能性が無いことが明らかな物については、3章に示すとおり、放射性廃棄物でない廃棄物として取り扱う。

2−2  クリアランスレベル検認の基準等
 
  1 クリアランスレベル以下であることの判断基準
     クリアランスレベルは、放射性核種を含む廃棄物の処分又は再生利用について、現実に起こりえると想定されるシナリオに基づいた被ばく線量の評価を行い、個々の放射性核種ごとに年間10マイクロシーベルトの放射線量に相当する放射性核種濃度として算出されたものである。このため、対象物中に複数の放射性核種が存在する場合には、その重畳を考慮する必要がある。
 対象物の放射能濃度が、クリアランスレベル以下であることを判断する方法としては、原子力安全委員会の検認報告書で示されたとおり、クリアランスの判断に用いる評価対象核種2iの放射能濃度D(i)と、そのクリアランスレベルC(i)を除したもの(以下、「DパーC」という。)の総和が1以下であることが基本となる。
   
  2  クリアランスの判断に用いる評価対象核種;原子力安全委員会の検認報告書では、DパーCの総和が1以下であることにより判断する方法において評価の対象とする核種を「評価対象放射性核種」としているが、原子力安全委員会が別途示した「評価対象核種」と用語が類似しているため、本論では原子力安全委員会の示した「評価対象放射性核種」という用語について、「クリアランスの判断に用いる評価対象核種」と表記した。

  2 評価対象核種
    (背景となる考え方)
 クリアランスレベル検認方法については、原子力安全委員会では、原子炉施設から発生する種々の対象物について汚染経路毎の放射性核種組成が大きく異なることはないことに着目し、線量評価の観点から影響度の大きい限られた放射性核種の濃度を制限することで、その他の放射性核種の濃度も自ずと制限されるという考え方に基づき、重要放射性核種を用いたクリアランスレベル検認方法を示した。原子力安全委員会では、上記考え方が適用できる施設として、発電用原子炉施設の他に、試験研究用原子炉施設及び核燃料使用施設のうち照射済燃料及び材料を取り扱う施設について検討が行われ、それぞれの施設においてクリアランスレベル検認に用いるための重要放射性核種が選定されている(「主な原子炉施設におけるクリアランスレベルについて」(平成11年3月)、「重水炉、高速炉等におけるクリアランスレベルについて」(平成13年7月)、「核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)におけるクリアランスレベルについて」(平成15年3月)、以下、原子力安全委員会のこれらの報告書を「安全委員会報告書」という。)。
 なお、原子力安全委員会においては、最新の知見に基づき、クリアランスレベルの見直しが行われたが(「原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないものの放射能濃度について」(平成17年3月改訂、以下、「再評価報告書」という。)、その際、安全委員会報告書で示した重要放射性核種の見直しは行われていない。このため、文部科学省では、試験研究用原子炉施設及び核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)について、原子力安全委員会が行った重要放射性核種選定手法に基づき、かつ、クリアランスレベルとしてIAEAの安全指針RS-G-1.7で示された値を用い重要放射性核種の再評価を行った。

(試験研究用原子炉施設等において整備すべき評価対象核種)
 評価対象核種については、原子力安全委員会が、我が国の主な原子力施設で想定される放射性核種として選定した58核種(主な原子炉施設として33核種、核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)として49核種)について整備することが必要となる。試験研究用原子炉施設等における評価対象核種及びクリアランスレベルを重要放射性核種の再評価結果とあわせ、表1表2に示す。
 試験研究用原子炉施設等については、施設毎に炉型、積算出力、炉心に用いられている構造材等が異なるため、原子力安全委員会が評価を行った以外の施設に対する重要放射性核種の適用性については、個々の施設によって確認する必要がある。

(クリアランスの判断に用いる評価対象核種)
 原子力安全委員会の「検認報告書」に基づけば、クリアランスの判断に用いる評価対象核種は、以下のように決定される。

   
(1)  表1,表2に示す評価対象核種のうち、各施設に適用される重要放射性核種以外の放射性核種のDパーCの総和が、対象物に含まれる放射性核種のDパーCの総和の10パーセント未満である場合、当該重要放射性核種をクリアランスの判断に用いる評価対象核種とする。
(2)  表1,表2に示す評価対象核種のうち、重要放射性核種以外の放射性核種の影響が高いと考えられる場合、重要放射性核種以外の放射性核種jの放射能濃度D(j)と、そのクリアランスレベルC(j)を除したもの(以下、「D(j)パーC(j)」という。)が、DパーCの総和の10パーセントを超える場合、重要放射性核種に当該核種jを加えたものがクリアランスの判断に用いる評価対象核種となる。

    (クリアランスレベルについて)
 クリアランスレベルについては、基本的にはIAEAの安全指針RS-G-1.7で示されている値を用いることが妥当であるが、原子力安全委員会が示した評価対象核種の中には、RS-G-1.7で値が示されていない核種も存在する。この中で、銀いちまるはちエム,バリウムいちさんさんについては、IAEAの安全指針RS-G-1.7の基本となった安全レポート3の値を用いることが妥当である。また、スズいちいちきゅうエム,スズいちにさん,プロメチウムいちよんはちエム,については、原子力安全委員会の再評価報告書の値を用いることになるが、原子力安全委員会の数値は、IAEAの安全指針RS-G-1.7で行われた計算と異なる方法を用いて算出されたことに留意が必要である。
   
  3  安全レポート; Derivation of Activity Concentration Levels for Exclusion, Exemption and Clearance, Safety Report Series ナンバー44「規制除外、規制免除及びクリアランスのための放射能濃度値の算出」

  3 放射性核種濃度の評価
    (放射性核種濃度を評価するための評価単位)
 放射性核種濃度を評価するための評価単位は、原子力安全委員会の検認報告書において、「判断時における対象物の放射性核種濃度の評価は、対象物を形状や寸法に応じ適切な単位ごとに分割し実施する。放射性核種濃度の評価単位の重量は、通常、数トン以内が適切である。ただし、対象物の放射性核種濃度が均一である物については、これを超える単位で評価することもできる。」とされている。

(放射化の汚染を評価するための留意事項)
 試験研究用原子炉施設等においては、放射化による汚染を評価するためには、対象物について、材質に含まれる元素濃度、炉心からの距離・炉停止後の時間、積算出力等を考慮し、適切な評価単位を設定する必要がある。また、試験研究用原子炉施設には、すでに解体を実施し放射化計算の基礎となる中性子量の直接の測定が不可能な施設が存在することから、事前評価において計算結果の妥当性を適切に評価する必要がある。

(重要放射性核種による汚染の履歴が明らかにない場合)
 試験研究用原子炉施設では、その運転履歴等から、重要放射性核種として選定された核種によっては、その核種による汚染の履歴が無い場合が想定される。このような例として、

   
  (a) コンクリートの放射化影響がないことが明らかである場合
  (b) 原子炉停止後の時間が長く運転廃棄物4について評価された核種について排除できることが明らかである場合
  (c) 燃料破損の履歴が無く、当該事象による二次汚染で想定された核種が存在しないことが明らかである場合
  (d) 構造材が評価対象の物と異なる場合

     等が想定される。このような場合においては、重要放射性核種すべての濃度を厳密に測定することは合理的ではないため、汚染の履歴が無い核種については測定対象外とすることが妥当である。
   
  4  運転廃棄物; 原子力安全委員会では、運転中に発生する金属及びコンクリートについても評価を実施している。試験研究用原子炉施設等においては、施設の改造に伴い発生する金属及びコンクリートが該当する。

2−3  放射性核種濃度の決定の方法
  (参考となる考え方について)
 試験研究用原子炉施設等における対象物中の放射性核種濃度の決定の方法については、基本的には「検認報告書」、「クリアランス制度報告書」で述べられた方法を用いることが考えられる。また、社団法人日本原子力学会においても、標準委員会においてクリアランスの判断方法に関する報告書の取りまとめが行われており、今後、報告書の妥当性を評価することにより、当該学会の示した手法に準拠した手法が取り得るものと考える。

(測定が困難な放射性核種濃度の決定について)
 試験研究用原子炉施設については、積算出力が低く放射化生成物の生成量が少ない場合など、汚染の可能性のある放射性核種濃度すべての測定が困難である場合が想定されるため、測定可能な測定主要放射性核種5の濃度を測定し、その他の放射性核種の濃度を存在比から計算で評価する方法が有効となる。計算による評価を行う場合、一般的には、計算結果の妥当性を確認するため、放射能濃度の高い試料を用いるなどして、測定主要放射性核種及びその他の放射性核種の濃度を実測する方法が用いられるが、測定主要放射性核種と他の放射性核種との濃度比が大きい場合、測定主要放射性核種以外の濃度が測定できず、計算結果の妥当性を実測値からは評価できないことが想定される。このため、計算による評価を用いる場合には、計算結果の妥当性について適切に評価する必要がある。仮に実測値が得られる場合においても、放射性核種の濃度比を用いる場合には、その濃度比の適用範囲(炉心からの距離、材質の違い等)について適切に評価し、その妥当性を示す必要がある。
 
  5  測定主要放射性核種 放射性核種組成比及び外部からの測定の容易さなどを考慮し、その組成を代表して測定評価できる主要な放射性核種。

  (放射線測定装置の点検・校正、誤差の取扱)
 放射性核種濃度を測定する際には、放射性核種の特性や濃度に応じ、適切な放射線測定装置を用いることが必要である。また、放射線測定装置の点検・校正や、誤差の取扱に係る事項等、放射性核種濃度測定結果の妥当性を評価するための事項についても記録することが必要である。

2−4  保管・管理
  (国による確認までの措置)
 原子炉設置者等がクリアランスレベル以下と判断した対象物は、国による確認までの間、管理区域内に保管する場合は、二次汚染の防止措置を行う必要がある。また、管理区域外に保管する場合は別途管理区域と同等のエリア区分が必要になるものと考えられる。

(国による確認後の措置)
 国によりクリアランスレベル以下であると確認が行われた対象物については、原子炉設置者等は、解体工事や施設内の移送による汚染を防止するとともに、施設から搬出されるまでの保管に当たっては、施錠などにより隔離し、原子炉設置者等の承認を受けない者の接触を防止するなど、異物や汚染の混入などがないように適切に保管・管理しなければならない。

2−5  品質保証活動
   クリアランスレベル検認に係る活動を適切に行うためには、原子炉設置者等は、それらが一連の活動として高い信頼性をもって機能するための品質保証体制を整備する必要がある。
 原子炉設置者等のうち、保安活動への品質保証の取り入れがすでに行われている者は、クリアランスレベル検認に係る活動についても、既存の品質保証体制の中に適切に位置づけることが必要である。また、保安活動への品質保証の取り入れが義務化されていない核燃料物質使用者においては、クリアランスレベル検認を行う際に、新たに品質保証体制を確立することが必要となる。

 
1  品質保証計画の策定及び組織
 品質保証計画の策定及び組織に関しては、保安活動における品質保証と同様に、トップマネジメントが品質保証計画を策定するとともに、品質保証活動の実施、評価及び品質保証計画の継続的な改善を総括することが必要である。
 また、クリアランスレベル検認に係る活動を行うに当たっては、原子炉設置者等においてクリアランスレベル検認に係る活動を統一的に管理する者(クリアランスレベル検認責任者)を定め、その責任と義務を明らかにすることが必要である。クリアランスレベル検認責任者に求められる要件としては、保安を監督する管理職であること、クリアランス制度に関する知識を有すること、現場の施設を熟知していること、放射線管理・放射能濃度測定等の知識を有すること、関係法令の知識を有することが考えられる。

2  クリアランスレベル検認に係る活動の計画、実施、評価及び継続的な改善
 クリアランスレベル検認に係る活動を行うに当たっては、検認に係る事項(クリアランスレベル検認の対象物、クリアランスレベル以下であることの判断基準、評価対象核種、放射性核種濃度の評価、放射性核種濃度の決定の方法、測定・判断の結果、保管・管理等)について具体的な計画を策定するとともに、実施、評価及び継続的な改善を行うことが必要である。また、組織に属する者に対して、クリアランスレベル検認に係る活動及び品質保証活動に必要な教育・訓練を実施する必要がある。具体的には、クリアランスレベルの測定・判断に係る業務及び対象物の取扱を行う者に対して、それぞれの業務に必要な知識・技術を習得するための教育・訓練及びこれを維持するための定期的な教育・訓練を実施することが妥当である。

3  記録
 クリアランスレベル検認に係る活動が確実に行われたことを示すためには、当該活動について一定の方法と様式により記録されることが必要である。このため、原子炉設置者等は、クリアランスレベル検認に係る活動の実施、評価及び継続的な改善及びその他品質保証に係る事項等、クリアランスレベル検認に係る活動の妥当性を示す根拠について記録し、これを保存する必要がある。

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