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クリアランスレベル以下であることの判断基準 |
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クリアランスレベルは、放射性核種を含む廃棄物の処分又は再生利用について、現実に起こりえると想定されるシナリオに基づいた被ばく線量の評価を行い、個々の放射性核種ごとに年間10 の放射線量に相当する放射性核種濃度として算出されたものである。このため、対象物中に複数の放射性核種が存在する場合には、その重畳を考慮する必要がある。
対象物の放射能濃度が、クリアランスレベル以下であることを判断する方法としては、原子力安全委員会の検認報告書で示されたとおり、クリアランスの判断に用いる評価対象核種2iの放射能濃度D(i)と、そのクリアランスレベルC(i)を除したもの(以下、「D C」という。)の総和が1以下であることが基本となる。 |
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クリアランスの判断に用いる評価対象核種;原子力安全委員会の検認報告書では、D Cの総和が1以下であることにより判断する方法において評価の対象とする核種を「評価対象放射性核種」としているが、原子力安全委員会が別途示した「評価対象核種」と用語が類似しているため、本論では原子力安全委員会の示した「評価対象放射性核種」という用語について、「クリアランスの判断に用いる評価対象核種」と表記した。 |
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評価対象核種 |
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(背景となる考え方)
クリアランスレベル検認方法については、原子力安全委員会では、原子炉施設から発生する種々の対象物について汚染経路毎の放射性核種組成が大きく異なることはないことに着目し、線量評価の観点から影響度の大きい限られた放射性核種の濃度を制限することで、その他の放射性核種の濃度も自ずと制限されるという考え方に基づき、重要放射性核種を用いたクリアランスレベル検認方法を示した。原子力安全委員会では、上記考え方が適用できる施設として、発電用原子炉施設の他に、試験研究用原子炉施設及び核燃料使用施設のうち照射済燃料及び材料を取り扱う施設について検討が行われ、それぞれの施設においてクリアランスレベル検認に用いるための重要放射性核種が選定されている(「主な原子炉施設におけるクリアランスレベルについて」(平成11年3月)、「重水炉、高速炉等におけるクリアランスレベルについて」(平成13年7月)、「核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)におけるクリアランスレベルについて」(平成15年3月)、以下、原子力安全委員会のこれらの報告書を「安全委員会報告書」という。)。
なお、原子力安全委員会においては、最新の知見に基づき、クリアランスレベルの見直しが行われたが(「原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないものの放射能濃度について」(平成17年3月改訂、以下、「再評価報告書」という。)、その際、安全委員会報告書で示した重要放射性核種の見直しは行われていない。このため、文部科学省では、試験研究用原子炉施設及び核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)について、原子力安全委員会が行った重要放射性核種選定手法に基づき、かつ、クリアランスレベルとしてIAEAの安全指針RS-G-1.7で示された値を用い重要放射性核種の再評価を行った。
(試験研究用原子炉施設等において整備すべき評価対象核種)
評価対象核種については、原子力安全委員会が、我が国の主な原子力施設で想定される放射性核種として選定した58核種(主な原子炉施設として33核種、核燃料使用施設(照射済燃料及び材料を取り扱う施設)として49核種)について整備することが必要となる。試験研究用原子炉施設等における評価対象核種及びクリアランスレベルを重要放射性核種の再評価結果とあわせ、表1,表2に示す。
試験研究用原子炉施設等については、施設毎に炉型、積算出力、炉心に用いられている構造材等が異なるため、原子力安全委員会が評価を行った以外の施設に対する重要放射性核種の適用性については、個々の施設によって確認する必要がある。
(クリアランスの判断に用いる評価対象核種)
原子力安全委員会の「検認報告書」に基づけば、クリアランスの判断に用いる評価対象核種は、以下のように決定される。
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(1) |
表1,表2に示す評価対象核種のうち、各施設に適用される重要放射性核種以外の放射性核種のD Cの総和が、対象物に含まれる放射性核種のD Cの総和の10パーセント未満である場合、当該重要放射性核種をクリアランスの判断に用いる評価対象核種とする。 |
(2) |
表1,表2に示す評価対象核種のうち、重要放射性核種以外の放射性核種の影響が高いと考えられる場合、重要放射性核種以外の放射性核種jの放射能濃度D(j)と、そのクリアランスレベルC(j)を除したもの(以下、「D(j) C(j)」という。)が、D Cの総和の10パーセントを超える場合、重要放射性核種に当該核種jを加えたものがクリアランスの判断に用いる評価対象核種となる。
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(クリアランスレベルについて)
クリアランスレベルについては、基本的にはIAEAの安全指針RS-G-1.7で示されている値を用いることが妥当であるが、原子力安全委員会が示した評価対象核種の中には、RS-G-1.7で値が示されていない核種も存在する。この中で、 , については、IAEAの安全指針RS-G-1.7の基本となった安全レポート3の値を用いることが妥当である。また、 , , ,については、原子力安全委員会の再評価報告書の値を用いることになるが、原子力安全委員会の数値は、IAEAの安全指針RS-G-1.7で行われた計算と異なる方法を用いて算出されたことに留意が必要である。 |
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3 |
安全レポート; |
Derivation of Activity Concentration Levels for Exclusion, Exemption and Clearance, Safety Report Series 44「規制除外、規制免除及びクリアランスのための放射能濃度値の算出」 |
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放射性核種濃度の評価 |
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(放射性核種濃度を評価するための評価単位)
放射性核種濃度を評価するための評価単位は、原子力安全委員会の検認報告書において、「判断時における対象物の放射性核種濃度の評価は、対象物を形状や寸法に応じ適切な単位ごとに分割し実施する。放射性核種濃度の評価単位の重量は、通常、数トン以内が適切である。ただし、対象物の放射性核種濃度が均一である物については、これを超える単位で評価することもできる。」とされている。
(放射化の汚染を評価するための留意事項)
試験研究用原子炉施設等においては、放射化による汚染を評価するためには、対象物について、材質に含まれる元素濃度、炉心からの距離・炉停止後の時間、積算出力等を考慮し、適切な評価単位を設定する必要がある。また、試験研究用原子炉施設には、すでに解体を実施し放射化計算の基礎となる中性子量の直接の測定が不可能な施設が存在することから、事前評価において計算結果の妥当性を適切に評価する必要がある。
(重要放射性核種による汚染の履歴が明らかにない場合)
試験研究用原子炉施設では、その運転履歴等から、重要放射性核種として選定された核種によっては、その核種による汚染の履歴が無い場合が想定される。このような例として、
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(a) |
コンクリートの放射化影響がないことが明らかである場合 |
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(b) |
原子炉停止後の時間が長く運転廃棄物4について評価された核種について排除できることが明らかである場合 |
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(c) |
燃料破損の履歴が無く、当該事象による二次汚染で想定された核種が存在しないことが明らかである場合 |
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(d) |
構造材が評価対象の物と異なる場合
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等が想定される。このような場合においては、重要放射性核種すべての濃度を厳密に測定することは合理的ではないため、汚染の履歴が無い核種については測定対象外とすることが妥当である。 |
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4 |
運転廃棄物; |
原子力安全委員会では、運転中に発生する金属及びコンクリートについても評価を実施している。試験研究用原子炉施設等においては、施設の改造に伴い発生する金属及びコンクリートが該当する。 |
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