教育を取り巻く環境の変化 学校をはじめとする教育の場は、今日、社会的な環境の変化の中で様々な影響を受けており、それに対応するような内容、方法による教育を行うことの必要性が高まっている。大きな環境の変化としては、次の点をあげることができる。
情報化
情報が氾濫する現代社会においては、社会から届いた情報を処理することが生活の大きな部分となっており、脳の負担が高まることから心身に問題を生じる可能性も指摘されている。また、社会の情報化が進むことによって、間接体験による情報処理が大きな位置を占めるようになってきており、子どもの発達過程における直接体験の機会の減少によるコミュニケーション能力の育成にも問題が生じている可能性が指摘されている。また、情報化は教育の手法・技法にも影響を与えている。
効率化
今日では社会の効率化が進み、時間面、空間面、人や社会との付き合いなどの面でゆとりやあそびという部分が少なくなったことが、教育にも影響を与えている可能性がある。例えば、原っぱなどの無意味と思われている空間の消失と時間の効率化が子どもたちの成長に大きな影響を与える可能性が指摘されている。一見無意味な空間や時間から価値を見出すことができなくなり、人の創造性、適応能力、ストレス耐性などに影響を与えている可能性も指摘されている。また、生活習慣の変化にともない、睡眠の取り方や食生活にも変化が生じており、こうしたことが、乳幼児や児童の脳の発達に影響を及ぼしている可能性がある。
個人化
モノや情報が豊富になったことの反映として、家族や社会が協力する必要性が希薄になり社会の個人化が進んでいる。そのため、人や社会とのコミュニケーションの方法がわからないといった対人関係の病理現象が生じている。また、他者の理解や社会性の涵養というような、人格の形成にかかわる面でも様々問題を生じ、反社会的な行為の増加につながっているという指摘もある。
少子化
少子化が進んだ結果として、親が子育てや教育に当たって過剰に子どもに関わる状況が生じ、また子どもの側としても、兄弟・姉妹や遊ぶ相手が少ないといった状況が生じている。こうしたことが、情報化、効率化、個人化などの影響と相まって、子どもの主体的な学習意欲や社会で生きていく力の減退をもたらしたり、社会性に欠ける子どもを生じさせたりしているのではないかともいわれている。
競争社会の進展
社会生活や学校生活における競争や、社会と個人との関係の変化、産業、経済や技術の激しい変化などにより、ストレスの多い社会になってきている。こうしたことから、教育の場においても、こころの問題への対応の重要性が指摘されるようになっている。また、社会の変化に対応するための職業教育や訓練の重要性も高まっている。
高齢化
高齢化が進む中で、人生の様々な段階において新たな知識・技能の修得が求められている。また、学習活動、文化活動などを通じて自己実現を支援するような生涯学習の重要性も高まっている。さらに、高齢期においても、心身の健康と知的活動の活性を維持することが必要となっている。
化学物質の影響
環境や食品などに含まれる様々な化学物質による脳への影響が、成長制御の不全や様々な学習や心の障害の原因となっている可能性も指摘されている。特に、脳関門の未発達による胎児や新生児の脳への蓄積に関する問題がある。
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