(2)日本語能力試験の構成
級別の在り方
級別の在り方については,現行の級別では1,2級と3,4級との間の差が大きいことが指摘されているが,このことについては,上位の級と下位の級の構成内容を調整することで解決できるであろう。
また,将来は文字を媒介としないで受けられる試験を開設することにより,新たな受験者層を開拓できるものと考える。日本語学習への動機付け及び学習の奨励のために「5級」相当の試験を設けることも検討するに値する。ただし,当面は,従来の試験との継続性を踏まえ,級の数は4つとし,4級の中に「5級」相当の内容を含めることも一案である。
初等・中等教育段階の学習者への対応
近年の日本語学習者の増加において特に海外の初等・中等教育機関における学習者数は大幅な伸びを示しており,海外での日本語学習者数約210万人(平成10年度・国際交流基金調査)のうち,初等・中等教育機関の学習者は約3分の2を占めている。
海外における初等・中等教育段階の学習者向けの試験は,その国の教育課程や日本語教育態勢等の状況に合わせて行うことが適切である。しかしながら日本語教育関係の人材が十分でない国も多く,そのような場合には我が国が初等・中等教育段階の学習者向けの試験問題作成を支援することも必要であろう。
すでに各国において,初等・中等教育段階の学習者の日本語能力を測るために日本語能力試験が活用されている実態があるが,日本語能力試験の試験問題は,基本的に成人学習者を想定して作成されているため,年少者にとっては理解が困難な内容の設問が含まれている場合がある。試験問題の作成においては初等・中等教育段階の学習者への配慮も必要となる場合もあろう。
なお,初等・中等教育段階の学習者への対応として,国際交流基金では日本語能力試験とは別の試験として,例えば年少者向けの試験問題用素材集(教材に近い形の試験キット)の開発が考えられている。
(3)日本語能力試験の構成
従来の試験は「文字・語彙」,「聴解」,「読解・文法」の3類別で構成されているが,「読解・文法」は言語知識を問う文法と運用能力を問う読解が混在する類別となっている。しかし,類別としては主として知識面を問う「文字・語彙・文法」と,運用面を問う「聴解」,「読解」のような分け方が望ましいと考える。現在,実施団体において行っている統計的な調査分析を踏まえ,類別案についてさらに検討されることが必要である。
また,類別とともに出題内容は,学習目標への到達度を測定する下位の級では言語知識を問うものを多くし,日本語運用の熟達度を測定する性格が強い上位の級では,運用能力を問うものを多くして測定することが考えられる。
なお,口頭能力を測定する試験の開発や部分受験については,将来に向けての課題として検討することが望まれる。
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