I  日本語能力試験の改善について
  1  日本語能力試験の現状と課題



(1)日本語能力試験の現状
  日本語能力試験は,日本語を母語としない者を対象に日本語能力を測定し認定することを目的としている。日本語能力試験は,1級から4級の級別に行うもので,国内においては(財)日本国際教育協会が昭和58年度から,海外においては国際交流基金が昭和59年度から,毎年1回,12月に実施している。
  受験者は年々増加しており,平成12年度には,国内9都道府県,海外35の国・地域(82都市)で実施され,国内外の総受験者数は,201,021人であった。
  日本語能力試験は,基本的な日本語能力の測定を目的とするとともに,1級から4級まである級の中で,特に1級及び2級は外国人留学生の大学等の入学選考にも活用されている。特に1級の認定基準については,この両者の目的を両立させようという考えの下に設定されている。



(2)日本語能力試験の課題
  このような状況の下に,これまで試験関係者の努力によって試験問題作成のための出題基準の作成,試験問題の信頼性・妥当性の向上などが図られてきた。
  しかし,外国人留学生の大学等の入学選考については,日本の大学等での勉学に対応できる日本語力を測定する「日本留学試験」の実施が平成14年度から予定されている。このことに鑑み,日本語能力試験の基本的な在り方については,特にその目的・役割を検討する必要がある。
  また,国内外の日本語学習者の増加とともに,日本語能力試験の受験者についても,1級,2級の受験者が必ずしも日本への留学希望者のみではないという状況が以前から生じている。このような状況の中で,日本語能力試験が,多様な学習者の需要に適合し,今後より多くの学習者が受験することを促し,学習意欲の向上に資するためには,学習者が必要とする基本的で幅広い日本語能力を測定する試験へと,目的を明確化することを検討する必要がある。日本語能力試験が上述のとおり学習者の到達目標として利用されている状況を踏まえると,今後,日本語に関する知識があるかどうか,またそれが実際に運用できるかどうかを測定するための試験として,位置付けを明確にして実施されるべきである。
  日本語能力試験の各級別の認定基準は,学習時間数を基準にして初級の4級から上級の1級へという区分になっているが,学習者の需要が多様化している現状においては,むしろ具体的な言語技能を勘案した認定基準を設けることが合理的であると考えられる。したがって,どのような級別及び認定基準が適当であるか,見直しを行っていくことが必要である。
  また,現行の試験は,文字・語彙,聴解,読解・文法の3つの類別に分けて出題されているが,これらの類別の内容を運用能力をより重視する視点から見直すとともに,各類別の構成の仕方や各類別ごとの部分受験を認めること等についても将来検討が行われる必要がある。





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