公立文化会館の活性化に関する調査研究協力者会議 (第3回)議事録 |
公立文化会館の活性化に関する調査研究協力者会議(第3回)議事要旨
○ 日 時 平成11年11月8日(月) 10:00〜12:00
○ 場 所 文部省5A会議室(文部省5階)
○ 出席者 協力者:三善座長、上原、加藤、佐藤、澤井、清水、田村、西川、西本、根木、根本、山形の各協力者
事務局:水野文化部長、甲野地域文化振興課長、その他関係官
その他:社団法人全国公立文化施設協会千葉事務局長
○ 議事等(○:協力者、△:事務局等)
1 事務局から資料5「第1回、第2回における主な論点」について説明
2 事務局から「各種報告書等における公立文化会館等の役割・在り方について」について説明
3 個別討議(今後の公立文化会館の果たすべき役割・在り方)
・地域、時代、会館の性格、設置者の目的などによって期待される役割や在り方が異なるため、一律に書き込むことは非常に難しい。
・基本的には、会館が自主的に自分のところで、その役割・在り方を苦労しながら開発していくべきということが基本的な認識としてあるべき。
・地域のコミュニティー施設と芸術施設が機能乖離が起こっている。また、公の概念、施設の概念というものとは違う仕組みが必要になってきている。さらに、教育制度の中で舞台芸術のかくある仕組みがかなり難しい状況にある。
・公の施設という枠組みだけではなく、地域劇場、パブリックシアターという概念をうたった施策が必要になってきている。また今先行しているそのような事例をきちんと位置付けていくことが必要。
・地域の芸術文化活動に関わっている施設が多く(全国の10〜30%)、それら施設をコミュニティーシアターという形で考えてはどうか。
・研修、専門職員の養成のような場所をきちんとつくらないといけないのではないか。その際、大学の博物館コース等と関連させてユニバーシティシアターのようなものをつくりつつ、学内の芸術教養と地域への貢献を行う仕組みが必要になってくるのではないか。
・フランスの場合、文化施設が明確に分類されていて、多重層化されており、それに基づいて芸術活動がきちんと行われている。
・現実に劇場なり文化施設の持っている機能に応じて、あるいは将来的には建てる前から考えてきちんとタイプを考え、それに対して国はどのように金を出すか、地方公共団体はどうするのかを決めることが重要。
・日本での地方分権や自治体の自主性や多様性を促進し、画一的でないという意味において、あまり制度化ないしは国の管理的な要素が強く出てくることに対しては危惧がある。
・公の施設でありながらその施設を特定のグループに専用的に利用させているところもあり、このようなことは制度的も条例をつくり、議会の議決を得れば可能。そのような事例も出始めている中で、自治体の枠組みというものは無視できない。
・文化施設全体の2000館の中で、随分役割が違ってきているというのは厳然とある。それをもう少ししっかり把握した方がいい。
・地域劇場法というようなものをつくることもあり得るのではないか。それは民設民営であっても美術館・博物館や図書館は一つの法律的な枠組みの中でいろいろやっているように、必ずしも全部公立施設の話だけではない。何かそのような仕組みを国がつくるということは大事。
・「文化の民主化」、「文化の民主主義」は一番重要。政治に関わっている人たちの理解を得ることも大切だが、一般市民の中に理解者をどれだけ増やしていくかという論点が重要。
・今の公共施設の実態を旧来の概念に当てはめてやろうとすると、いろいろ無理が出てくるため、まず概念を整理し、その上でいくつかの項目をつくっていくことが必要がある。
・新しい概念の明示よりも、むしろ実態に即し、明らかに具体的に拡張されている部分を拾い出す作業がまず必要。そして、新しい活動や従来の活動のいくつかのモデルケースに対する支援システムといった環境をつくることをまず考えないといけない。
・突出している館に整備を行っていくことよりは、むしろ突出できないでいるところをどうやって変えていくかということについて、何か制度的な整備を考える必要がある。
・芸術文化に対する認識が日本では非常に遅れている。そのため、それを掘り起こしていく努力を、法律、条例等いろんな形でしなくてはいけない。その際に、芸術家の協力は絶対必要。
・環境という意味は複雑であり、政治家、市民意識、芸術家、芸術活動を取り巻く広い意味での風土にまで及ぶ。
・フランスでは、人口10万くらいの都市だと10%以上の予算が文化予算であり、地方公共団体が主体。文化省は、中身の性質等には言及するが、必ずしも干渉しない。それで1回館長が選ばれると、地元の人がアドミニストレーターになり、3年間なら3年間任せる。その館長がだめなら代える。こういうシステムがきっちりできていると、個性あるプロクラムができると思うんですけれども、そうなるのは大変。
・フランスの文化政策は国家主導型と簡単に割り切れるものではなく、「文化の民主化」と「文化の民主主義」の方向を模索している。きっちりした文化政策が現在まで存在しておらず、単に数字だけではなく内容的に外国の事例のいいところを研究し直す必要があると思う。
・国や地方自治体が公共性を全部担うものではなく、地域社会が公共性を全体で考えていくべきであり、文化センターは文芸的な公共圏の涵養の場として地域で存在すべき。
・公の施設の概念が、地方自治法上は非常に硬直した枠組みになっており、ある意味では制度的な仕組みも新たに考えないといけない。現状では他に拠り所がないので、公の施設の概念に拠ってしまう。
・文化の振興策を図ることで、地域への経済波及効果は非常に大きいものがある。
・人づくりこそまちづくり。
・文化会館の「在り方・役割」として、地域のイメージを変える、流入人口を増加させる、経済の文化化の時代に地域活性化の核になるという大きな役割がある。
・全国の館の6割が人口10万人未満の自治体が管理運営している施設であり、この施設が活性化していけば日本全体の会館が活性化すると思う。
・全国の2000館に共通する部分や、全体の6割を占める小さな会館が考えるべき点を整理していく必要がある。
・基本は、プログラムである。いい企画があれば人が寄るので、それをつくることに知恵を絞る方式を考えることが効果的。
・文化会館の大部分を占める人口10万人未満の自治体の文化会館でのプログラム、各々の地域の特殊性に応じたシステムを考えることが大事。全国に通用するような方式はないので、企画を行う委員会に、その地方に住んでいながら頑張っている芸術家のような方々をたくさん入れ、行政の専門家も入り、お互いよく考えていくことが大切。
・いろいろな館の間でネットワークをつくり、いい企画ができたらそれを他の会館も利用するといった、アイデアの流通というのが非常に大事。
・文化会館が地域と結びついて、地域に対して何をするのか。地域性、固有性の中で、個々の会館のアクティビティに違いが出てくる。地域が会館を支える意味で、政治家、市民、芸術家等の参加等も必要。
・個々の地域と文化会館との結びつきだけでなく、文化圏的な広がりや交流の観点から、地域自治体と国の仕分け等の概念的・制度的な点も考慮する必要がある。
・概念・制度の明示の前に、実態に即し、突出したものではないがあるモデルケースに対し、文化の在り方を象徴するような支援、その実行、実践について考え、そこから概念整理をし、改善するアプローチが大切。
・経済的効果、地域の伝統の継承と地域文化の創造の場という概念が拡張してきている。文化会館の新しい役割として、地域と共有するための活動があると思う。その部分は、まだ設置者の理解がなかなか少ない。
・単なる中身の多様性だけでなく、規模別や、オリジナル企画を発信できる能力を持っている施設とそうでない人口が少なく公民館的に行政の力でやっている施設とでは、バックグラウンドが違うし、それに対する地域における役割や支援の仕方も違ってくる。ダイバーシティーを前提に、おのおのに多層、重層的な考え方を投入していく必要がある。
・公立文化会館の活性化にあたり支障になるのは、行政の中の優先順位として、環境、福祉とこれからのライフスタイルにおける文化芸術の価値が一緒であることを強調しても理解がなかなか進まないこと。地方の状況として文化芸術活動の評価づけはまだまだ低い。
・評価づけが低いのは、意識の問題、教育の問題、首長の理解の問題等あるが、マスコミの地方での評価が問題。マスコミのいい活動に対する評価は、大都市では非常に敏感だが、地方では非常に鈍感。そのため、いいものをやっても悪いものをやっても余り差がなく、例えば行政による予算措置は余り変わらない。地方のマスコミの評判は、その町の住民の評判につながる。
・まず文化芸術活動自体の地域における意味づけ、評価づけを高めるための措置や努力があって、その中で役割分担としてパブリックなホールとプライベートなホールとの役割分担やそれ以外の新しい類型が出てくるだろうし、パブリックなホールの役割も従来の制度から少しはみ出したような形で広がる必要があるだろう。それも大都市や地方の小さな都市とは少し違った議論があると思う。
・地方のぎりぎりのところでは、非常に多目的にホールを使用し、民間の活動も非常に限られているため、そのようなところで最低限の地域文化活動、芸術活動を支えるには、自治体の首長の理解のもと、自治体がかなり頑張る必要がある。その上で、それをベースに、多様な民間のアクティビティを自由に受け入れるような、ふところの広い文化施設管理が必要。
・人口規模、設置者等の外的な要素によって一般化して分類するのではなく、活動の質やレベル(「望ましい基準」を作るのも一案)に応じて分類することも考えられる。
・会館の規模や住んでいる場所によって活動のタイプが違うため、仕訳はできないのではないか。
・継続性ができないとか助成等いろんな仕組みにひずみがきている。全部平等主義でやっているからそうなっているので、少しユニークなところは、ユニークなような仕組みに対して継続的にするのか、しないのかということもしっかりと議論しないといけない。
・芸術文化に関して制度をつくり、非常に大きなフレームを考えることは大切。それにより仕組みが整備されることにもなる。
・金を出すシステムだけではなく、内容についてある種の一貫性を持つ、あるいは国が責任を持つというようなシステムを伴うか、または、金の使われ方について厳しく審査することを伴わないといけない。
・地域との密着という観点から、公共事業の館と地域の住民の間で直接議論を行ったり、地域の住民の方々に積極的に働きかける活動を行うことが必要。館を支えている地域の意識がまだ手つかずの状況ではないか。
・日本の芸術文化は伝統と現代とが完全に切れてしまっている。地域に根づかないのはそのため。地域における伝統的な生活と芸術がまだ生活の中に取り込めておらず、それを取り込むという新しい伝統の創造を行わない限りは、地域は埋没していく。
・評価は必要。評価も評価の委員を次々と代えていけばいい。
・市民レベル、町民レベルでの総合評価が必要。
・文化会館は、存在の形態が極めて多様性に富んでいるため、一義的なもの求めるのは到底無理。地域に密着した形での活動について、パブリックシアター的な存在や、コミュニティーセンター的な存在が考えられる。その際、分類をして、こういう館の類型に対してはこういう支援の仕方があるというメニューを幾つか用意すべき。
・文化会館に対して、芸術文化に特化した方向を求めるのか、それとももう少し幅広い文化一般ということを期待するのか、それぞれの地域の事情に応じて各地の館が経営理念として持つべき。経営に関する行政のコミットの仕方も地域の実態に応じて違うと思う。
・千差万別の存在である文化会館に対して一義的な物の考え方というのはなかなか難しいが、いくつか分類をしながら、支援の対象なりを別途メニューとして考えるといった考え方をすべき。
・子供たちは、芸術あるいは創造的な分野に関して優れた感性を持っており、それをどのように引き出すかということが大切。子どもを育てるいい環境をつくらなければならないと切実に思っている。
・子供たちが文化会館での芸術活動を通じて、もっとやってみたい、あるいは聞いてみたい、見てみたいという意欲が出てくることが、将来的に、日本の文化立国化や、我が国の芸術文化の向上ということにつながる。
・行政の担当者に文化活動に対する理解があると、子供たちのために文化活動を行うにしても円滑に実施することができる。
・今の日本の文化状況を一言で言うと生活文化的であり、芸術文化的なものをどうするかが問題。
・分類をする際、生活文化的なもの、芸術文化的なもの、両方に使えるようなものという3つの分類もあるのではないか。
・視点の整理としてはそういう仕方もあるだろう。
4 千葉社団法人全国公立文化施設協会事務局長から基礎調査についての説明
5 閉会
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