公立文化会館の活性化に関する調査研究協力者会議 (第2回)議事録 |
公立文化会館の活性化に関する調査研究協力者会議(第2回)議事録 ○日 時 平成11年10月4日(月) 10:00〜12:12 ○場 所 東海大学校友会館三保の間 ○出席者 協力者:三善座長、上原、加藤、佐藤、澤井、清水、田村、西川、西本、根木、山形の各協力者 事務局:水野文化部長、甲野地域文化振興課長、その他関係官 その他:社団法人全国公立文化施設協会千葉事務局長 ○議事等(○:協力者、△:事務局等) ○ 皆さん、おはようございます。 ただいまから公立文化会館の活性化に関する調査研究協力者会議(第2回)を開催させていただきます。 お忙しいところをご出席賜りましてありがとうございます。きょうは神津さんと根本さん、両委員さんが所用のため欠席なさるということでございます。 まず、事務局から、本日たくさん資料が配付されておりますので、その説明とご確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 △ それでは、資料の確認をさせていただきます。 資料1といたしまして、2枚紙でございますが、公立文化会館の活性化に関する論点(素案)をおつけしております。資料2が、びわ湖ホールからちょうだいいたしました資料でございます。資料3といたしましては、豊田市からご提供いただきました資料でございます。「公立文化会館の状況」、それからパンフレットを用意してございます。資料4が、世田谷パブリックシアターの資料でございます。これはアニュアルレポートがございます。資料5といたしましては、喜多方プラザ文化センターの資料でございます。 以上でございますけれども、何か欠落等はございますでしょうか。よろしゅうございますか。 ○ それでは、本日の議題に入らせていただきますが、まず、ただいまご紹介がありました資料1「公立文化会館の活性化に関する論点(素案)」について、事務局からご説明をお願いいたします。 △ それでは、本日お配りいたしました資料1につきまして、簡単にご説明をさせていただきます。 前回も論点についてのペーパーをおつけしたところでございましたけれども、それに、前回の先生方からのご発言の内容を若干加えて、膨らませたものがこの論点の資料ということでございます。本日、四つの館の方々からそれぞれ事例発表等をしていただくわけでございますが、その後のフリートーキングの際に、一つの議論の参考にしていただければという趣旨でおつくりをしたものでございます。 1が「今後の文化会館の果たすべき役割・在り方について」でございますが、地域における文化振興の観点から公立文化会館の果たすべき役割という形で、コミュニティの果たす役割とか文化の創造に果たす役割、あるいは地域の事情によってケースは様々であるという趣旨をここのところに盛り込んだわけでございます。 2番目は、急激な社会の変化を踏まえた役割・在り方という形で、若干ご発言をいただきました子どもたちに対する役割とか、地域住民に対する役割、創造活動といった論点をここに加えさせていただきました。 2の機能の充実につきまして、(1)の「運営について」は、管理運営の在り方の部分では、設置の趣旨、活動方針、あるいは管理の在り方、財団の管理とか民活、ボランティア、劇場の優先的利用、予算単年度主義、館長の裁量権等が話題になったわけでございますので、ここのところに盛り込んでいるわけでございます。職員体制につきましても若干膨らませております。 2枚目にまいりまして、「事業について」のところでございますが、ここのところも住民に対する教育プログラム、アウトリーチプログラム等ということを入れております。 また、「その他」といたしまして、福祉等への対応(バリアフリー等)、老朽化施設への対応といったことをここに新たに盛り込んだわけでございます。 ネットワークの部分につきましては、予算や人材の共有ということが重要である。ネットワークがその解決の一つの方法であるというご趣旨のご意見も賜っておりますので、ここにその旨を加えております。 「その他」といたしましては、行政と民間との関わりでございますが、国の役割、設置者の役割等、新たに若干の論点を加えさせていただきました。 あくまでもここで議論していただく参考、たたき台といったものでございますので、いろいろな観点から自由に議論をしていただければいいと思いますが、とりあえずのものとして作成をいたしたわけでございます。 以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○ 果たすべき役割・在り方、機能、3番目にネットワーク、4にその他という組み立てですが、説明がとても簡潔でしたので、この資料そのものについて何かご質問があれば、特にこの時点でなくて、きょうこれから具体的な活動、あるいは取り組みについてのご紹介を4人の先生方からいただくわけで、その後、また自由討議を行いますので、それを踏まえて、あるいは事務局にさらにこれを膨らませていただくとか、修正していただくとかというお願いにつなげたいと思います。そのようなことでよろしゅうございましょうか。 それでは、早速ですが、前回お願いいたしましたとおり、具体的な活動、あるいは取り組み、アクティビティといったものにつきまして、4人の委員さんからご紹介をちょうだいしたいと思います。時間の都合もありますので、10分から15分ということでお願い申し上げたく存じます。 では、よろしくお願いいたします。 ○ それでは、早速ですが、びわ湖ホールからお話をさせていただきます。 実はきょうは、この論点整理から見ましても、資料が少し不足しているなと思っておりますので、補足資料を次回お配りさせていただきます。組織図などもそのときに補足させていただくということで、きょうは、びわ湖ホールはまだできたばかりなので、なぜこんな巨大なホールができてきたのか、何を目標としてやっているのかということだけをご説明申し上げます。 まず、びわ湖ホールは、突然この巨大なものが琵琶湖のほとりにできたという印象をもたれていますが、実は1972年に策定された「文化の幹線計画」というのがございまして、それに基づいて滋賀県は五つの文化芸術会館と中央館的機能を果たす図書館、美術館、博物館、それに県民文化会館のようなものをつくるということが明記されておりました。それに沿いまして、滋賀県はこの20世紀最後の四半世紀にこれらすべての計画を実現させてまいりました。そして、その最後がびわ湖ホールというわけでしたので、決して突然できたわけではない。ただし、こんな大きなものになるかどうかというのは、当時は全然思いもしなかったことですが、検討が昭和61年に始まりまして、どんなものがこの琵琶湖畔に必要なのかという討議をしている最中に、オペラができる4面舞台を持つ国立のオペラハウスができるということが世に打ち上げられ、周辺部分では、音楽ホールが関西にたくさんあり、京都にもコンサートホールが作られましたので、その中で滋賀県が広域的に見て果たせる役割は一体何かと考えたときに、4面舞台を持ったオペラハウスということになったのです。 びわ湖ホールは、お手元の資料に小さいリーフレットを入れてありますが、ちょうど新国立劇場と同じような4面舞台を持つ大ホールを中心に、大、中、小、三つのホールがございます。大ホールが、コンサートホール形式で1850席、中ホールが800席、小ホールが323席ということで、それぞれが特色を持ったホールになったがゆえに、運営が難しいということになっています。それぞれのホールの特色、個性を生かして何かやらなければいけないというので、オペラはもちろんのことシンフォニー、演劇、アンサンブル等多様なものをやっています。 大ホールは走行式音響反射板でコンサートホールになるんですが、コンサートホールになったらコンサートホールになったで、とてもすばらしい音に出てしまいますので、オペラとコンサートの両方をやりたいなという欲が出てまいりまして、これもプログラミングに大変苦労しているところです。 1年間のプログラムは、そこにあるとおりです。県からの補助金、わずかな助成金、そしてチケット収入、合わせて10億弱でこれだけの事業をやっているというところでございます。 私どもは芸術監督に若杉弘さんをお迎えしまして、創造する劇場の第一歩といたしまして、毎年一つはプロデュースオペラをつくるということを志として持っております。何もこれだけで創造する劇場になるわけではないのですが、そのほか、青少年のためのプログラム、『青少年オペラ劇場』というのを今年は6公演やります。そのうち4公演は学校からの見学になっております。 それから、『青少年コンサートホール』というのもございますが、それも私どもが工夫をして、子どもたちに、大人もいいんですけれども、聞いていただこうというようなものになっております。 一つ特色があるのは、『ジルベスター・コンサート』を大晦日からお正月にかけてやるということでしょうか。 夏にフェスティバルをやったり、このたびは世田谷パブリックシアターと一緒にコープロデュースという形で『ネネム』をやらせていただいりしておりますが、いろんな工夫をしながらプログラムを編成しているというところでございます。 芸術監督のほかに、演劇のプロデューサー、小ホール企画を組んでくださるプロデューサー、そしてダンス系のアドバイザーという方たちを組織の外に持っておりまして、組織の中にいる人たちを育てていただこうという工夫をしております。 組織については次回申し上げると申し上げましたが、2部5課からなっておりまして、総務、舞台技術、管理という三つの総務系の課と、企画事業、広報営業という企画に関する課がございます。臨時やアルバイトも入れて全部で42人、そのほかに委託で随分たくさんの人が常駐しておられます。舞台は、常に18人の方が委託業者の方から派遣されて、同じグループが常にいるという状況です。それから、レセプショニスト、総合案内、チケット販売についても常に5人がいるという形になっております。 もう一つの特色は、つくる、創造する劇場になりたいということがあったものですから、何か集団を持ちたい。それで随分検討したんですが、オーケストラは、小さな県、人口も面積も100分の1県の滋賀県ではなかなか難しいということで、声楽アンサンブル・・定員16名、各パート4人ずつで、ソリストもできるし、大きなオペラのアンサンブルパートを受け持てるというレベルの人をねらって、専属声楽アンサンブルというものをつくりました。全国から多数応募がございまして、かなりのレベルの人たちが入ってくれておりますので、『青少年オペラ劇場』は、この声楽アンサンブルがソロパートも何も全部やってくれますし、『プロデュースオペラ』は男性合唱が要るものが多いんですけれども、その部分も声楽アンサンブルが活躍をしているということでございます。年に4回の定期演奏会もやっております。 そういう創造する劇場、舞台をつくっていくという創造する劇場であるとともに、観客の創造というものがとても大切だなと最初から思っておりましたので、例えば若い人たちが未来の大人になったときにやってこられるような、小さいうちから劇場体験ができるようなことをと思いまして、『青少年オペラ劇場』『青少年コンサートホール』というようなものをやっているわけです。 そのほか、制作するものについてはプレトーク、それからワークショッブをやっておりますし、この夏は、北村想さんに脚本を書いてもらって、『ネネム』と連動して、お化けが出てきて劇場の中を案内する「劇場案内ツアー」を作り、大好評を博しております。年間を通じて館内ツアーをプログラムに組んでおります。このほかサポーターが100人、常にボランティアで活躍していただけるという形になっております。このサポーターは、劇場の中で活躍するのではなくて、外で観客をつくっていくサポーターという役割でございます。 もう一つ、とても大切なことで、まだ成功しているとは言えないんですが、シーズン制を本当はとりたいんです。シーズン制というのは、パブリックなシアターでは貸館もしなければいけないということもあって、なかなかとりにくい。しかも、自分のところだけでつくるわけにいかないということもありますので、シーズン制とまではいかなくても、歳時記のように、例えば、毎年クリスマスにはこういうものがある、ジルベスターは毎年ある、夏にはこんなものがあるというようなプログラムの工夫をしながら、お客様に訴えていく力をつけていきたいと思っております。 まだ歩き始めたばかりなので、余り報告することもなくて申しわけございません。プログラム並びにチラシをつけておりますので、どんなことをやっているのかは後で見ていただければ幸いかと思います。ちょっと時間オーバーしました。申しわけございません。 ○ どうもありがとうございました。 データとか数字に関してご質問があれば・・。 ○ それは、補足資料で、次回補足させてください。 ○ よろしいでしょうか、皆様。 それでは、次に、加藤委員からお願いいたします。 ○ それでは、豊田市の文化振興策についてのある意味では取り組みということになるかもしれませんけれども、少しお話を聞いていただきたいと思うわけです。 豊田市は、今人口が34万9000人、35万弱ですけれども、昭和26年に市制をしいたときには3万2000人でした。合併もしておりますけれども、面積も40平方キロが今は290平方キロという非常に広い地域を擁しているわけでありまして、その中に35万の市民がいるわけでありまして、当時の3万人の人口が今35万人になってきたわけです。これは、ご承知のように、トヨタ自動車の本社があるということで、まさに北は北海道から南は沖縄の方々・・18歳の高校生、または22歳の大学生、そういう方々がこの豊田市に移ってくる。第二のふるさととしてここで活躍し、今はその人たちが主役で、大きな子は既に社会人になっている子もあるわけでありますが、ある意味では急に人口が増えたということで文化不毛の地と言われていたわけであります。 それは無理もない話でありまして、昔からの豊田というところは、徳川家康の始祖、8代前になりますけれども、松平親氏公という始祖を輩出した立派な歴史もあるわけですけれども、大部分の方は、ふるさとに氏神様も鎮守の森も置いて豊田市に来てみえるわけでありまして、そういうことからしますと、やはり豊田市に住民あって市民なしというような嫌な思いをお互いにしてきたという歴史があるわけです。 歴史とか文化というものは金で買ってくるわけにはまいりません。だとするならば、その方々と一緒になって文化活動を積極的に推進することが必要なんだということから、私どものところには中学校が20校あるわけですけれども、その中学校に公民館を1館ずつということで、面積は1館1300平米〜1800平米、人口の規模にして多少変えていますけれども、そこで文化活動というか、自主サークルが結構できまして、そのサークル、グループが今1000以上、2万人くらいの会員を持ってきている。公民館は1年で平均9万人の方々が利用していただいているということであります。 ところが、いろいろな市民の方にここを利用していただいておるわけですが、役所の店開きは朝8時半から5時15分ですから、働く人はそこには参加しにくい。故に女性の方々の活躍が非常に大きくて、それが原動力になっているわけであります。自分たちで発表会をたくさんされるわけでありますけれども、それが今の文化会館の活用の大きな原動力になっているわけですが、何をしても9割は女性で、1割が男性というような実態であります。 しかし、きょうは大人の話よりは子どものところを視点に話をしたいと思うわけであります。 実は私が市長をして今12年になるわけでありますけれども、最初になったときに、東京のある文化人の方とお話をしたのを今でも覚えているわけでありますけれども、文化振興をするならば、今の大人は相手にするな、子どもを相手にした方が、それを積み重ねて大人に成長したときに花が咲く、文化というのはそんなものだと。短兵急に言っても育つものじゃないし、文化というのは歴史の積み重ねということならば、そんな思いもするわけであります。 今、中学生は1学年で約4000名、3年制ですから1万2000人の中学生がいるわけでありますけれども、そこに視点を当てまして、最初に私が市長になったときに、ヘリコプターで上空から豊田市の交通事情を調べたわけですけれども、交通事情のことよりも、上から豊田市を見たときに非常に緑が多くてすばらしいのどかさがあるものですから、こういう姿を中学3年生に・・高校は市外に行く子もあるだろうし、その後大学へ行って、立派な社会人として外国へ行って働く子もあるかもしれない。我がふるさとはこういう町だったということを見せて卒業させてやりたいということで、ヘリに乗せて生徒全員に見せようか教育長に話したら教育長は喜んで飛びついてきたわけです。ところが、ヘリは1回6人しか乗れなくて、何百回乗せるんだということでギブ・アップということになりました。 それでも、今の思いがありますから、7〜8年前からになりますけれども、毎年中学3年生を卒業するときに、お祝いで、心に残る記念事業をということで、東京フィルハーモニー交響楽団にお願いしておるわけでありますけれども、4000人ですから2回とか3回に分けて生の演奏を子どもたちが聞いて、それが子どもたちには一番刺激になっているようなんです。 初めのときに、思い出すわけでありますけれども、どこの地域にもいわゆるワルというのか、袴かズボンかわからないようなのを着ている中学生がいるわけですが、そうい子を置いてくるわけにまいりません。教育長が、市長がせっかくこんなにいい企画をしてくれるのに、こういう生徒を置いてくるわけにいかない、きっと悪いことというか、動いたり声を発したりする、それはしようがないという話をしておったわけでありますが、10分前にブザーが鳴って「今から10分後に始まるからトイルに行く子は行って」というマイクが入って、そして10分後に演奏を始めた。始めましたら、2時間ですけれども、そのワルが・・ワルと言っていいかどうかわかりませんが、子どもたちが、席も立たずに、後ろも向かずにずっと2時間聞き入ってしまったんですよ。これはまだ子どもだな、よい環境さえあれば結構うまくいくものもあるのではないか。それは、恐らく映画とか何かを見せたらきっとざわついていたと思う。あの指揮者から、100人の方が演奏する迫力に魅せられてしまったときに、これはという思いと、こんなチャンスを与えれば、まだまだ自立していくことはたくさんあるなという思いがいたしまして、ずっと続けてきたわけでありますけれども、年間約3300万円くらいかけております。 実はそのホールは2000人が入れる文化ホールですけれども、市民の方々の声というか、専門のコンサートホールが欲しい、日本の伝統文化的な施設が欲しいという声がありまして、能楽堂も、そしてコンサートホールも・・能楽堂が約460席、コンサートホールが1004席ですけれども、それをつくらさせていただき、昨年の11月にオープンしたわけであります。 施設も充実してまいりましたから、中学1年生には能を見せたらどうかということで、460席あるので、5日間で10回、2時間ずつやっていただく。2年生には、美術館で本物の絵を見てほしい。それぞれのよさは違うだろうけれども、絵にしても、能にしても、コンサートにしても、とにかく本物と接してほしい。それから自分は何をつかんだのか、自分で答えを出してほしいということを言い聞かせておるわけであります。 そして、3年生には、今言った専門のコンサートホールができましたから、昨年はデトロイトのオーケストラに来ていただきまして、オープニングのこけら落としをやっていただきましたけれども、子ども用ということで3日間とっていただいて、5回に分けてデトロイトのオーケストラに演奏してもらった。これがまた子どもたちには非常に刺激が強くて、一部、そこに感想文が行っていると思いますけれども、私が一番鮮明に残っているのは、今でも思い出すわけでありますけれども、コンサートは11月でしたから、しし座流星群の観察のときでありまして、「実は夕べ流星群の観察で眠たい。でも、先生が行けと言うんで、しようがないという思いで出掛けてきました。でも、入ったときにホールがきれいで、こんな世界があるというのを初めて知りました」という話から、要は「すばらしい音楽を聞き、本当に心を打たれました。きょうは、ただで市長さんに鑑賞させていただきましたけれども、これからは自分で金を払って行きたい」と、ここまで言ってくる子を思うときに、これは私にしてみれば本当に「やったな」という思いもするわけであります。そういうことが子どもたちの教育には大事ではないのか。その延長線上の中で、全体の会館の活性化につながっていけばと。 いろいろ細かいことはまた後になるかと思いますが、そんな思いで今私どもが取り組んでおる一端を申し上げて、私のお役御免にさせていただきます。 ○ どうもありがとうございました。 皆さん、例えば数字とか、そのようなことについて、ご質問はよろしいですか。 それでは、次の方、よろしくお願いいたします。 ○ 私どもの世田谷パブリックシアターというのは、正確に申し上げると、世田谷区が三軒茶屋地域の再開発のために地元と一緒に協同組合方式で建てました高層ビルの中に分散配置された、生活文化情報センターという複合施設の中の一部門としてあります。中劇場、主劇場が約600、小劇場が250という二つのホールと、三つの稽古場、そのほかバックヤード施設を持っている施設です。 私がこの施設にかかわりましたのはちょうど平成元年前後だったと思うのですが、区のこの施設に対する基本計画策定委員会の委員をやりまして、その後、専門家としての立場から、区の専門委員という形で、計画遂行のハード・ソフト面についてのアドバイスを行うというような立場でかかわってまいりました。 そのときに最初に考えたことは、世田谷区というのは既に幾つも文化施設を持っていらっしゃって、地区の文化センターあるいは児童館など、かなり文化施設は整備している。その中で、在来の文化施設と、今世田谷の三軒茶屋に建てようとしている文化施設はどのようなことを違えればいいか。そのときに、従来の公共ホールから公共劇場という概念に変えられないかというのが一つございました。もう一つは、逆に、公共劇場というふうに呼ぶからには、在来にある普通の劇場と公共劇場というのは一体どこが違うんだろう。その2点を考えたわけです。 非常に概念的なことになりますが、そのときに私が考えておりましたのは、従来の行政サービス、つまり公共のサービスと言われているものの範囲内、そして従来の民間でやっている経済活動とか、従来民間活動と思われていたものでは満足されない人々の要求みたいなものが出会う新しい公共圏みたいなが概念が要るだろう。単に従来のような公共のサービスとして劇場をつくるのではなくて、民間の方もそこからサービスを受けるという立場ではなくて、両方の力が寄り集まって新しい公共という概念が要るんではないかというようなことを、非常に概念的なことではありましたが、考えておりました。 そのために二つの大きな提言をしたのですが、一つは、劇場というのは実は非常に専門性の高い施設なんです。従来のように貸しホールであれば、施設を貸し出すという業務については、行政は既にいろいろなご経験もお持ちだし、それなりのやり方もある程度定着しているのですが、そこに劇場というものをつくろうとすると、劇場というのは非常に専門性の高いところである。そのために何とか専門家が関与できるような施設にしていただきたいということ、もう一つは地域という目標を正面に掲げた施設にしたい。劇場というのはいろんな要素があるけれども、しかし一番大きいのは、その劇場が建っている地域という問題が非常に大きいのだと、この二つの柱を立てました。 現在、それがどのように具体化されているかということでは、きょう資料として開館年度のアニュアルレポート、事業報告書をお出ししてあります。 まず、28ページをちょっと見ていただきたいのですが、「世田谷区コミュニティ振興交流財団組織図」というのがございます。ここは申し上げたように複合施設ですので、情報交流系とか、市民のNPOを支援するための施設も持っております。その左側の部分、劇場部分というところに、内部的、外部的、中間的な立場で私のディレクターという職務があって、その下の2課5係で劇場を構成しております。この2課5係については、全部外部からの専門家を雇用して組織をつくっております。 それから、地域へ真っ正面に掲げるということで、劇場の中での事業としては年間に三つ大きな、祭事的というか、ショーフェスティバル的な催し物をやっているんですが、まず一つは、春に、『フリーステージ』というふうに命名いたしまして、区内のアマチュアの文化団体の方に無料で劇場を使っていただいて、そこへ施設の技術系職員が協力をして、お客様にもそのかわりただで見ていただく。これは、お年寄りがやっていらっしゃる民謡・民舞から、カラオケ、アマチュアの演劇、ミュージカル、バレエ、いろいろな部門を限らず、音楽活動も含めてですが、二つの劇場を3日間くらい開放して、それぞれ自主的にプログラムも組んでいただいて、3日間ぶっ通しでやるという『フリーステージ』で、これは区内のアマチュアの文化活動に対する支援です。 それから、初夏に、『子どもの劇場』というふうに呼んで、子ども対象の企画を4企画から5企画、劇場の出し物、ワークショッブを含めた総合的な企画として展開しております。このアニュアルレポートは開館年度のアニュアルレポートですので、予算もやや多く、初年度は『子どもの劇場』というのは全部無料で行ったんですが、2年度目からは有料で行っております。それで、区内にある親子劇場、あるいは今年からは教育委員会の方にもお話しして、少しずつ区内の子どもの活動と連動させるような方向へ今育てようと思っているところです。 三つ目が、秋、大体10月の末から11月ごろに行っております「世田谷アートタウン」という事業でありまして、これは地元・三軒茶屋地区の商店街五つと共同いたしまして、三軒茶屋は幹線道路と小さな道が入り交じった複雑な街なのですが、その街の中に大道芸を内外から大体50組くらい招聘して、それを地域の方たちに見ていただく。その運営自体は、商店街の組織と劇場が一緒になって実行委員会をつくって、そこでいろいろなアイデアを練り合ったり運営を行ったりするということで、劇場と地元を結びつける。その期間は、劇場の中でも、今年は寄席と、『Can do Co 』というイギリスのバレエをやっていて体を壊した方たちが行うダンスなんですが、これは非常に専門性の高い、体がご不自由なダンサーたちと普通のダンサーの方が一緒に踊るんですが、非常にクオリティの高いダンスなんです。その期間は、そういうように、普通のお客さんが予備知識なしに入ってきていただいて楽しんでいただけるような企画を劇場で上演して、連動させた企画としてやっております。 もう一つは、この間の第1回目でも申し上げましたが、アウトリーチプログラムと私どもは呼んでおりますが、日本では教育普及活動というような形でも呼ばれております。劇場というのを上演の場所、あるいは鑑賞の場所以外の形で、劇場の活動をつくれないかということで活動しております。今のアニュアルリポートの26ページ、予算支出のところに、ワークショップ事業ということで引き当てられている金額が大体事業規模ということになるわけですが、実際、予算よりも、活動的に言うと、約3分の1ぐらいの活動をそのことに割こう。組織図で言うと、制作課の下の学芸係というところに、常勤・非常勤を含めて5人の職員がおりますが、この5人の職員がすべてアウトリーチプログラムの専門職員として、いろいろな事業計画並びに運営に当たっております。 事業の具体的な内容は、初年度にどんなことを行ったかというのは、70ページ以降に、ワークショッブ及びレクチャー、それから共催ですが、セミナー関係の企画をまとめてありますので、後ほどご参照いただけたらと思います。 それを立ち上げていく中で、手法的に言いますと、私自身は外部から専門委員という形でかかわっていたんですが、一つは、なるべく在来の制度の中でできる劇場としてパブリックシアターを立ち上げてみようということを目標にしておりました。つまり、余り極端な条例的な改変、あるいは突出した行政的な手法、独特な手法をとってしまうと、パブリックシアターというものがほかの施設へ伝播していかない。私、今回は区町村レベルの施設の事例としてご報告する立場にあると思うのですが、世田谷区というのは東京という地域にあって、いろいろな意味で他の区町村の公共施設とはやや違った役割を持っていると思います。その中で、次世代型のパブリックシアターの一つのモデルケース、あるいはテストケースとして、この劇場を立ち上げるためには、在来の中でどのような可能性を持っているかということを精いっぱい追求してみるということで、条例等につきましても、幾つか根本的な見直しをしなければならないところがあったんですが、その辺はまた後で議論に上ると思うんですが、なるべく在来の枠組みの中で行おう。 もう一つは、第3セクター、うちも財団法人という形で運営していますので、その特徴を生かして、区のスポンサーだけに頼らない、自分たちでも、そのほかのファンド・レージングを含めた運営計画ができるということを最初から組織の目標として持とうという、その大きな二つの方向性で立ち上げるに至りました。 実際3年間運営してみて、今出ている問題点として3点ほど挙げさせていただきたいんですが、一つは、立ち上げまで世田谷区は非常に積極的にご努力なさって、我々の提言あるいは専門家の意思もくんでくださって施設ができ、また施設もおかげさまで開けてから3年間、わりあいといろいろなところで評価をいただいているんですが、やはり運営してみると、一番評価が出てこないのは、区の本体の行政であったり、政治家の方たちなわけです。ですから、その落差がこうやって3年間運営してくるとだんだん広がってくる。せっかく区としていいお仕事をなさっているんだけれども、そのことを行政あるいは区の政治家の方々がうまく利用していただけない。むしろ、かかわりがだんだん薄くなってくるというか、区の施設であるにもかかわらず、世田谷区が評価しにくいということ。 もう一つは、これから広げていこうとする、ネットワークをいろいろ組もうとしているんですが、ネットワークというのは、改めて単館ではできないなと。つまり公共施設のどこかが音頭とりをしてネットワークをつくるということは非常に難しい。これは館レベルとは別のエナジーというか、協力がないと、公共施設がネットワークを組んでいくというのは非常に難しい。 それから、将来的には、ネットワークとも関連するんですが、恐らく館同士の人材交流にもっと積極的にならなければいけないだろう。ご承知のように、専門性の高い施設をつくってしまうと、ともすればそこで得た知識というのがその館の中に閉じこもってしまうわけです。組織としても固着しますし、実際には新しい人材を入れていくことがだんだんできなくなってくるわけです。パブリックシアターの場合は、インターンの受け入れとか、研修生の受け入れというのは非常に積極的にやっておりますが、そういう形じゃなくて、ある規模の館で、専門知識を蓄えた優秀な職員を他の公共施設とうまく人事として代えていくシステム・・在来の管理型の施設であれば余り問題がなかった、つまり行政職へ戻してしまえばよかったんですが、専門性の高い職員ということになってくると、他の自治体、あるいは民間を含めたそういう技術者の異動みたいなことをどうやって保障していくのかというのは、これからの問題になってくるのだろうと思います。 そのようなことを考え合わせると、今回の研究会は、この間も発言させていただきましたけれども、そういう大きな枠組みを考えるための機会として、ぜひ利用していきたいというのが私の個人的な考えです。 申し上げたように、せっかくいいお仕事をなさっているそれぞれの館の評価が、それを主管なさっている役所の・・もちろん所管の課・部の方たちはいいんですが、他の方たち、財政とか、あるときは企画とか、そういうところへ返すためには、どうしてももう一つ大きい枠組みの中で、その事業の意味みたいなものが外側からも位置づけられていく必要があると思うので、そのことと、ネットワークとか職員の異動、交流、さらに将来的に言うと、例えばアメリカのリージョナルシアターというのは、学校内施設としてずっと発展してきた歴史があるのですが、今後、地方の公共施設とこれからいろいろ改変・改組を迎えようとしている地方の高等教育機関との連動というのは、従来の公共施設にはなかった新しい公共施設と地域を結びつけるための一つのきっかけとなり得ることだろうと思うんです。ご案内のように、劇場というのは、学校の学部から言っても、専門学部だけに限らず、例えば理工系、人を動かすようなシステムエンジニアリングの問題等々につきましても、劇場の中でいろいろな形で生かしたり、また劇場の問題点を解決するために十分に役立つ研究素材となるだろう。しかも、その研究成果を地域に還元できるというような、一つのアウトプットとしては有効な機能をこれから持っていくのではないか。 もう一つは、地域のコミュニティ活動というのは、多分これから形を変えていくだろう。従来のボランティアということだけではなくて、もう少し創造的な地域活動があったときに、そのリーダーを育てていく場所としても大きな機能を果たすに違いない。その場合も、やはり高等教育機関等々の知的な蓄積というものをその中へ利用する方法というのは、これから考えていかなければならないのだろうというふうに思います。 話が自分のところの報告から若干拡散してしまいましたが、また、ぜひ議論の対象としていただければ幸いに思います。 ○ どうもありがとうございました。 それでは、最後の方、よろしくお願いいたします。 ○ 喜多方プラザ文化センターです。今までのお三人の方と比べて、うちの方はぐっと規模が小さくなりまして、ちまちまとした話になりますけれども、お許しをいただきたいと思います。 ただ、出がけに私の手元にある資料を調べてきましたら、全国にある約1300館の公立文化会館のうち約7割、69.3%が、人口10万人未満の自治体の施設であるということでありますから、これから私が話をさせていただくことは、小さな規模の自治体の会館の苦悩というふうなことでご理解いただけると思います。 私どもの館は、大ホールが1174席、小ホールが400席という二つの施設を持っておりまして、喜多方市の中央公民館を併設しております。職員の体制でございますけれども、文化会館だけですと、私を含めて5名プラス臨時職員が1名という体制になっております。私どもの人口は3万7500人ということで、館の運営は周辺の町村を巻き込んだ広域行政でやっているわけですけれども、全部で七つの市町村で、合わせても7万3000人しかいない。そういうようなところで館の運営をしているわけでございます。 お手元の資料の2のところに、「運営方針」として、いろいろと長い文章があるんですが、要約するとこの4点であります。一つは、文化会館を中心とする活動によって地域の活性化を図れないか。それから、文化会館で行う事業はいわゆる鑑賞型と住民の方の参加創造型を2本の柱にしていきたい。三つ目は行政臭さをできるだけ排除したい。できるだけ利用される方の立場に立った運営をしていきたいというふうに心がけています。四つ目としては、最小の経費で最大の効果を上げる。最小の経費というのはわかるんですが、最大の効果というのはどこまでを最大と言うのか、いつも迷っているところですけれども、とにかく経費をかけられないという実態があるものですから、その中でできるだけ住民の皆さんの期待にこたえるようなことをしていきたいというふうに考えています。 この四つをどういうふうなことで具体化しているかといいますと、3のところに「運営方針具体化の例」として挙げております。 15年前に開館しておりまして、開館当初から、とにかく国内・国外のトップアーティストの公演を意識的に企画する。人口3万7000人の市ですから、住民の人たち、市民の人たちの意識というのは、「どうせうちのまちは」というような思いがあったものですから、それを払拭したいという思いで随分背伸びをしまして、いろいろな公演を企画いたしました。開館から15年間で、今年の分も入れて、今までやってきた事業が235本、大体年平均16本やってきているわけです。その公演に対して県の内外からお客さんが来てくれるということで、喜多方という小さなまちも捨てたもんではないなというような市民感情が最近は生まれてきているというふうに思います。 イのところは、外からお客さんが来るものですから、館としては、チケットを買ってもらうときに、できるだけ地元に泊まってくださいというようなことをしつこく電話等でお願いをして、喜多方に泊まって、次の日は喜多方の観光をしていただくというようなことで、少しでも地域が活性化しないかなというようなことをやっております。 2ページの(2)のところ、自主事業を鑑賞型と参加創造型と2本の柱にしているわけですが、うちの方は典型的な多目的ホールですけれども、ホールの音響特性が、どちらかというとクラシックのピアノの演奏に非常に適するということがあるものですから、「音楽ホール」という性格を前面に打ち出そうということで、喜多方は「蔵のまち」と呼ばれているんですが、クラシックのコンサートにはいつも「蔵のまちにはクラシックがよくにあう」ということをくっつけてやっております。これも、クラシックのコンサートなんかの場合には、できれば東北6県でうちだけしかやらない。少なくとも福島県内ではうち1か所だけの公演というようなことを条件にして出演交渉をする。そのことによって観客の動員を有利にしようというようなことをやっております。 それから、イのところは、うちは雪国なものですから、1月、2月、3月というのは、大きなものを企画しますと、お客さんが雪のためになかなか集まらない、あるいは出演者が雪のために到着しないおそれがあるものですから、この3か月間は大きな企画は入れないことにしています。そのかわりに地元のアマチュアの皆さんに全面的にホールを開放して、無料で使っていただく。毎年夏に企画を募集しまして、二つか三つくらいの企画を採用して、その企画のために全面的にホールを開放する。必要に応じて演出家などの専門的な指導をされる方を館の経費でお招きして、団体の指導をお願いするということもやっております。 具体的な例としては、いわゆる市民劇、ちょっと珍しいところでは、地元の中学・高校の音楽の先生たちが、自分たちでオペラをやって子どもたちに見せるというようなことを毎年やっています。子どもたちはふだん知らない先生の一面を見て、先生と生徒の関係が非常にいい関係になっていくんじゃないかというふうに思っています。 あとは地元出身で地方で活躍されている方のUターンコンサートを『Uターン公演』という名前にして、毎年1人か2人の公演を開催しています。 エのところは、うちのホールの一つの特徴でありますけれども、これは賛否両論ありまして、舞台裏を支えるボランティアの団体を15年前に立ち上げていまして、現在40人の会員がおります。その後、全国に同じような団体が出てきまして、ネットワークを組んで、私どもの館が事務局をやっているわけですけれども、特に地元のアマチュアの舞台の裏を技術的な部分で支えるという集団です。そういう集団を15年前に立ち上げています。 それから、(3)の行政臭さの排除というところですが、私どもの広域行政組織は喜多方市長が長になっているわけですが、そこに私的な機関として「喜多方プラザ自主文化事業推進協議会」というのをつくっています。すべて協議会の名前で自主事業、あるいは自治体としてなかなかできにくいところは、この協議会の名をかりて、いわば隠れみのにしていろんなことを実はやっているわけであります。会館の管理運営経費の中から、事業予算としてこの協議会に補助金を支出しまして、これをベースに事業を展開していく。赤字が出ればその補助金から穴埋めをする。黒字ができれば補助金に積み上げていくというようなやり方で、自転車操業みたいなことをやっているわけです。 それから、3ページになりますけれども、15年前から年末年始以外は休館日を設けないということでやっています。開館時間も9時〜10時までですけれども、事前に申し出があれば午前7時でも開けましょうということで柔軟に対応している。会場の使用申請なんかも電話でできる。申し込みの際の印鑑は要らない。 これは普通の館ではやってないところですが、オのところ、民間の施設・・例えば私どもの方には酒蔵がいっぱいあるんですけれども、酒屋さんがその酒蔵を利用してコンサートをやりたいというようなことがしょっちゅうあるわけですが、そのときにうちの方で余裕があれば、機材・人材をその酒蔵へ持ち込んでやっています。つまり、特定の企業のために、うちのホールがバックアッブをするというようなこともずっとやってきています。 細かいことですと、職員は原則として私服で勤務する。役所なものですから制服があるんですが、それはなるべく着ないことにしよう。事務室の扉もいつも開けておこうというようなことをやっていますし、クのところ、事業をやるときにはスポンサー、協賛の企業をお願いすることがあるんですが、その企業の商品を公演当日はホールに陳列するということもやっています。お互いに持ちつ持たれつでいきましょうということでやっています。 ケのところでは、特定のテレビ局とか新聞社の事業を積極的に自主事業として位置づけてやっていく。これも経費節減ということでやっているわけですけれども、開局記念とか創立記念というようなことで、企業がいろいろな事業を組むわけですが、それをうちの方の自主文化事業というふうに位置づけて、うちの方が全部仕切る。そのかわりギャラ等は、テレビ局、新聞社等の方でお支払いをいただくというようなことをやっています。 それから、コのところですけれども、「喜多方プラザを支援する会」というのをつくりまして、これは企業会員と個人会員があるんですが、圧倒的に企業会員が多くて現在約150社、地元の企業です。年間1口1万円という会費を納めていただいて、この会から毎年300万円ぐらい入ってきます。この会員の企業名をホールのロビーに掲出をしております。「私たちは地域の文化を支援します」というのを頭にくっつけて、企業の名前をホールのロビーに掲出するというようなことをやっています。 (4)の最小の経費でというところですけれども、年間十何本やるうちの3分の1ぐらいの事業は民間企業との相乗りです。例えば今年度の事業のうち、春は、6月に既に終わっていますけれども、ジャズの『100 Gold Fingers-Pianoplayhouse Part 6』というコンサートをアメリカのジャズメン6人でやりました。これも通信機メーカーが協賛をしてくれまして、広告宣伝は全部このメーカーの方がやってくれる。 それから、劇団「四季」のミュージカルも毎年やっておりますが、これは地元のテレビ局の事業なんです。県内で3か所くらいやるんですが、そのうちの1か所、喜多方分だけは私どもが全部仕切る。販売したチケットの手数料分だけをうちの方がもらう。残りの出演料その他は、テレビ局が劇団の方に全部払うという形です。 4ページの方では、中年の女性から非常に要望があった美輪さんのコンサートですけれども、これはプロモーターとの共催ということで、売り上げは全部プロモーターの方に行ってしまうんですが、私どもの方はその手数料の10%だけをもらうということでやっております。 それから、読売日本交響楽団の演奏会が11月にありますが、これは競輪の公益資金を使う。年が明けてブーニンのリサイタルがあるんですが、これは地域創造さんの助成をいただくことになっております。 こういうことで、3分の1ぐらいの大きな事業は団体・企業等の助成で何とか賄っている。 それから、これは1回しかやらなかったんですが、4ページのエのところ、うちの方の近くに裏磐梯高原というリゾート地があるんですが、そこの宿泊ディナーとうちの会館のチケットをセットにしまして、試験的に旅行会社から商品として販売したこともあります。バス1台分ということでやってみまして、仙台で発売をしたんですが、3日で全部売れてしまう。ホテルの方からまたやってほしいという要望があるんですが、ホテルの希望としては、土曜日の午後にコンサートをやってくれと。終わってディナーということなものですから、そうなると一般のお客さんの入りが悪くなるということで、第2弾を打てないでいるんですけれども、こういうことも実はやっているわけです。 それから、4ページのカ、新聞社(地元紙)があるわけですが、そこにできるだけ多くの情報を発信して記事にしてもらう。単に、何月何日に何がありますよということだけですと記事にならないものですから、何とかしてネタになるような材料を探しながら送っている。一番後ろのページのところに新聞記事のコピーがついていますが、これは最近の記事ですけれども、今年の春にうちのホールが持っておりますピアノをリニューアルをしました。弦を張りかえてハンマーも交換したんですが、修繕前と修繕後に、全く同じ条件で音を録音をして、CDにプレスしまして、50枚ほどCDを発行したんですけれども、これを新聞社に持ち込んで、こういう形で記事にしてもらって、あわせてそのピアノを使う今後のコンサートの周知もしてもらうというようなことで、こういうことを年中やっているわけです。 4ページの下のところからはまとめみたいなことですけれども、こういうことを15年間やってきましたら、入場料比率というのがありまして、入場料収入で公演経費をどのぐらい賄えるかということですが、開館からの10年間は80%以上をずっと保ってきました。最近は景気が陰っていることもあって、右肩下がりになってきました。それでも70%くらいを維持してきている。つまり、公演経費の70%以上を入場料収入で賄っているということです。 これは実は余り声を大にして言えない恥ずかしい話なんですが、会館の運営経費の中から支出される事業のための補助金というのが500万円しかないんです。今年は700万円の補助金が出ましたが、年間700万円以上の赤字は出せないという背水の陣で実はやっているわけです。ここに協賛企業からの協賛金とか、そういうものをもろもろ足していくんですけれども、赤字の穴埋めには協賛金とか寄附金を先に充当していきまして、行政で支弁する補助金というのは最後の最後の手段ということで手をつけていく。そういうようなことをやってきますと、500万円とか700万円という補助金ですけれども、実際には300万円とか350万円ぐらいしか使わないというような結果になっております。 5ページの4のところ、「その他」ですけれども、これもうちの館の特徴だろうと思いますが、館長の専決権といいますか、規程の中に「会館の管理運営に関すること」という条文が入っていまして、これを最大限に利用しておりまして、ほとんどの案件が職員の合意で即決即断できるということになっています。ちょっと語弊のある言い方ですけれども、広域行政圏でやっているために、頭に教育委員会がないんです。私も教育委員会の職員ですけれども、かたい行政の中でもさらにかたいのが教育委員会であろうと思っているわけですが、そういう教育委員会が頭にないということが即決即断できる一つの理由になっているわけです。 あとは、実行委員会をどんどんつくってやってもらう。ホールの方に、いろんな市民の方から、あれをやってほしい、これをやってほしいという要望が来るんですけれども、そのときには、じゃああなたが実行委員会をつくってやってください、資金の面は会館がある程度面倒を見ますので、財政的なリスクは負うことはないから、皆さんでやってみませんかというようなことでやる事業が毎年二つか三つ入っています。それは小さな事業ですけれども、例えば最近の例ですと、講演会とか、十二絃ギターのコンサートとか、いわさきちひろ展とか、マルセ太郎さんのひとり語りの「スクリーンのない映画館」とか、8月のお盆の毎週土曜日の夜に「夏の夜のひとり語り」というシリーズで、民話を語ったり、一人芝居をやったり、女性の講談があったりというようなことを全部この実行委員の人たちがやっています。 最後に、文化ボランティアというのも最近立ち上がってきまして、これはあえてうちの方では組織化しておりません。好きなときに好きなことをやってもらうというような形のボランティアを立ち上げております。 以上でございます。 ○ どうもありがとうございました。 4人の委員の皆様方、それぞれ大変に示唆的な、今後の議論を全部含めたお話をちょうだいしたと思います。 それでは、これからお四方のご発言を踏まえまして、皆様に自由討論を始めていただきたいと思います。どうぞご自由に、ご質問なりご意見、ご感想、ご提言をいただければと思います。いかがでしょうか。 ○ これは議事録から削ってもらった方がいいかもしれませんけれども、今お話のありました文部省の中で、いわゆる教育委員会と理事者側・・私は市長をしているわけですけれども、私も、文化活動というのは、人づくりであり、まちづくりだと。都市の魅力というのは、そこに住む人の魅力なんだという思いがあるわけです。そうしたときに、今話したように、いわゆる縦割り行政の弊害というか、教育委員会といわゆる理事者側との接点をどこに持っていくのか。教育と名のつくものは、僕は教育委員会でいいと思うんですが、いわゆる文化活動というのはもう少し幅広くとらえて、市のまちづくりの中の一環としてやっていくべきだと。その辺は、私も市長ですから、きちっとしますけれども、職員にしてみれば、市長に聞き、また教育委員会との関係があってという話で二重行政になることがある。働いている職員にしてみると、両方に一応の連絡をする。決定は私がしますけれども、余分なことをすることがたくさんあるわけで、そこら辺は、国が、そろそろそういう分野の見直し、縦割り行政の見直しをする時期に来ているのではないかなという気がしてしようがないわけです。これはここの論議ではないかもしれませんけれども。 ○ 行政の大きなポジションとの落差みたいなものが、評価という形で生かされていない面もあるし、運営を始めようと思っているときの今のような縦割りによる二重性、二重構造というものが非常に大きな問題だと思うんです。事務局の方、いかがですか。 △ かなり時代によって私どもの考えも少し変化してきているなと思っていますけれども、従前、教育委員会というのは、いわゆる教育だけではなくて、文化、文化財のこともやるということに法律上なっておりますので、そういう本来の組織に与えられた権限に基づいた適正な行政をやっていただくという考え方が強い時代があったわけですけれども、今は、各地方におけるそれぞれのお考えによって、技術的、法律的には、事務委任とか教育委員会の事務のこの部分はこちらでやるということは必要でございますけれども、都道府県レベルは特にあれだと思いますが、現実には芸術文化の事業等はそちらの担当になる傾向が一般にあると思っております。そのことを私ども国として、こうでなければ、ああでなければいかんということは、今特に言っていないんでございます。 ただ、文化財のものは基本的にはこちらに残っているのと、教育と文化というもののつながりがある面で大切だというところがあります。そこのところをどちらに振るにしても、どううまく連携をとってやっていくかということが出ておると思いますけれども。 ○ 私のところは、新聞社ではありませんけれども、社会部をつくって、美術館も、今のこの分野も、全部市長部局にしてあるんですが、やはり教育委員会を全部通すということを下ではやってしまうんです。やらざるを得ないわけです。やはり職員は法律を生かすということよりは、法律を守るという方が強いですから、そこで社会教育法があって、結論としては、何をやっても二重行政をしながらやっているなという思いが強いんですよ。 ○ 私ども滋賀県の場合は、文化の部分は知事部局に移ったところなんですが、過去は教育委員会の中の文化部でやってきたんです。そのときも、知事の権限の補助執行をしながらやってまいりましたので、小さい自治体では、人事も交流しますから、どちらにあってもお互いに交流するということがありますね。 例えば今回、教育委員会とタイアップして、学校も公演を見に来るということができますから、おっしゃったように、自由度があるという事例を示していけば、そういうこともやり方があるんだなということがわかるかなと思います。 もう一つ、財団という組織に委託をしたり、補助したりして、会館を運営していることがあります。公民館の場合は当然直営ですね。だから実行委員会をつくって工夫されているんだと思いますが、多くの文化施設は財団。パブリックシアターも財団ですね。そうしますと、税金の関係・・論点整理の最後に、「税制上の検討」で対寄付金ということだけが出ているんですが、実は大変難しいことがありまして、例えばチケットが思わずたくさん売れてしまって剰余金が出た場合に、それに税金がかかるんです。その税金がかなりたくさんとられてしまって、結局、滋賀の場合は県にお返しをしてしまわざるを得ない。だから、お話にありましたように、内部留保しておけないということが一つあります。 それから、消費税がかかります。前々年度の売上げにかかりますので財団ができて実質ホールを運営していなかった3年間は消費税は払わなくてよかったのですが、その期間が過ぎ実質的に活動が始まると、消費税を払わなくてはいけなくなる。管理は委託されているんだから、委託費で人件費は来るはずなのに、今度消費税がかかるので、補助金にしなければいけないというので、何か事業の性質をゆがめてしまいますよね。この会館は何のためにつくったかといったら、決してハコをつくるためにつくったのではなくて、そこに人がいて、住んでいて、いろいろな事業を展開していくためにつくられているにもかかわらず、それが補助になると、財団が自主的にやるものに対して、県が、つまり設置者が補助するというふうに性格がゆがめられてしまうんですね。 これは非常に重大なことでして、今ごろになって、財団をつくたのはまずかったなと思います。直営の方がよくて、お話にあったような隠れみの的な実行委員会にした方がよかったのかなとさえ思うぐらいなんです。ただ、これだけ大きい組織になりますと、年間20億というお金を費やすところになると、そうもいかないということもありまして、財団にしてありますが、税金の問題というのは非常に大きくあります。 基本的には赤字なんです。赤字というか、例えば20億のうち17〜18億は県からの委託あるいは補助金をもらってやっていて、利益はチケットを一生懸命売った分だけしか上がらないんですが、全部が収入になってしまうので、余分に売り上げると税金がかかってしまうという非常な矛盾です。国も頑張ってる地域の文化団体への税金対策を積極的に考えていただきたいと思います。 △ 非常に初歩的なことなんですが、事業単位にすべてを・・。 ○ いえ、全部です。1年間でもちろん計算して、たくさん収入が上がって・・。 △ 私どもそういう問題意識がなかったものですから。 ○ でも、赤字であることは赤字なんですよ、全体事業で見れば。例えば10億という事業をやって、せいぜい収入は2億5000万ぐらいしかありませんから。初年度はたくさん売り過ぎて、1億以上、余分にチケットが売れてしまったんです。そうしたら、補助金を減らすか、つまり県からの補助金を減らすか、余った分を県に上納して、特別の基金をつくってもらってするかという、非常に難しい・・。 △ 県で、その仕組みを何か新しくつくれば。 ○ つくりましたけれども、結局、一遍県にお返しして、その中からまたもらうという変な手だてが必要なんです。それと今の消費税の問題も大きい問題です。 △ 一つ、私、その点をちょっとお聞きしたかったんです。5ページのレジュメの中に、補助金を翌年度の繰越金としているということですね。それはどうしてできるんだろうというのが・・。 ○ 行政の館の運営経費の中では、こういうことはできないんです。自主文化事業推進協議会という私的な協議会・・私的なというのは、法律に基づかない協議会をつくっているわけですが、その協議会の予算というか、その中に留保するんですね。補助金をもらいますね。 △ 実績報告が出せないような気がするんですけれどもね。これだけの補助金をもらいましたら、それに見合う、これだけの事業をやりましたという。 ○ 基本的には、もらった補助金は余っても返さないというのがあるんです、申し合わせというか。スタート時点に。 △ 監査は問題ないということですか。 ○ はい。この辺のところは、厳密に言うと・・。 △ 国の会計検査院は非常に厳密なものですから。ちょっと気になったものですから。 ○ 厳密に言うと、行政から出る補助金がどこかに残っていたということは、まずいことはまずいんです。ですけれども、うちの方の理論というのは、市の方から、行政の方からもらった補助金以外の分を先に使ってしまっているわけです。それがないとすれば、行政から来た補助金を全部使わざるを得ないわけです。 ○ 考えようによっては、理屈ですが、補助金を使ってしまって、もうけた分を留保する。お金は一緒ですから、そういう理屈も立ちますね。 ○ そうですね。そういう理屈も立ちますね。 ○ パブリックシアターの場合も、主催事業だと、提携事業という形にして、館は提供するけれども、入場実売の例えば何パーセントは納めていただくというふうに相手方とやって、その分は積み残すみたいな方法をとっているんですけれども、先ほどお話にあったことは、多分、短期的な問題よりは中長期的な問題として入れなければならないだろう。 一つは、利用料金制度の検討というのがあると思うんです。要するに、館を建てるのは公共だ。今度は、財団の方は使用料を払ってそこを運営する。ただ、それで公共施設と言えるかどうかというときには、新しい公共概念をつくらなければならないということと、たまたまうちの場合は教育委員会ではないんです。財団としても、文化庁・文部省所管ではなくて、自治省・外務省系の地域振興コミュニティ財団という財団でつくっているんですが、今度は逆に教育委員会と連動をしようとしたときに非常に難しいという問題。 それから、お話にあったように、今までだと文化財保護、要するに、伝統的なものとコンテンポラリーな現代的なものが、その段階ではっきりすみ分けられてしまっているんです。将来的に言うと、文化財保護みたいなものも、意識を拡張してみると、本当は連動させなければいけないということで、教育委員会をどうするかという問題ではなくて、その枠組み自体をもう少し・・教育委員会が持っていることは構わないけれども、その中をもう少し変えていくという長中期的な展望はぜひ必要だろう。そうじゃないと、今はどの館も運用でこなしていると思うんですが、運用でこなす限界が来ているなというのは実感として持っていますね。 うちも実行委員会方式をとっておりまして、便利な方法なんですが、これもやはり厳密に言うと、お金の問題では大きな問題を残している。もしもある規模以上のことをやって赤字が残ったときに、実は責任がとれないんです。実行委員会で必ず規約をつくって、公共と民間ぬか緒に財政責任を持ちますけれども、実際に、民間の側にその力が全然なかった場合にどうなるかというと、大きな規模の実行委員会をつくるのは非常に危険な場合がある。 そういうことを含めて、今、運用で現場が今こなしていることを実態に合わせた枠組みづくりにするというのは、長中期的には必要になってくるような実感を僕は持っておりますけれども。 ○ 先ほどの事務局の方からのお尋ねですけれども、私、今思い出しましたけれども、決算のときには翌年度事業準備金という形で決算したんです。 ○ そうですね。 ○ 今、お話にありましたように、子ども、次世代を育てていくというときに、大きく広い意味での教育と文化活動といったようなものが、一つのあらわれとして有機的に結びついていないといけないという意識がまずありますね。そのときに、教育制度と教育委員会制度と文化を実施していく仕組みというのが、まだ本当の意味で連動していないわけで、子どもたちを聴衆として動員するというときにも、教育委員会を通じてお願いするということは、実際面としては大きな利点なんだけれども、それが日本の文化活動の在り方として定着してきていない。 もう一つは、制度的には、地域における高等教育機関の拠点としての芸術活動の場といったものが、新しい地域創造に結びついていく可能性も、まだここから探究していく必要があるのではないかという気がします。 ○ 今の教育委員会の話ですけれども、私どもずっと調査をしていて、最近、傾向として教育委員会所轄の館が増えているんです。それはどうしてかというと、小さい町のホールが増えたということが実態なんですけれども、人口1万人前後とか3万5000人ぐらいのところも、多分どっちもあると思いますけれども、首長部局につくよりは教育委員会についた方が、実質的に職員の配置が便利だということで、そういう傾向が非常に強いです。そういうところは、ひょっとしたら教育委員会が直営でやった方がはるかにうまく動いているというところもあるんです。難しいのは、大都市の教育委員会と首長部局の関係のような気がしておりまして、その辺は少し整理をしておいた方がいいのかなと。 もう一つは、最近、我々の周辺の自治体で、先ほども大きな枠組みの中でのお話がありましたけれども、教育系の大学が今危機に瀕しています。教育系の大学が危機に瀕しているので、少し社会教育と関連させて、講座の出張も含めて大学との連携を強めようというようなことを考えているんですが、大学の方の仕組みというのは結構難しいということもあるんですが、その辺のところをうまくすると、教育委員会系は、そういう大学のOBがたくさん勤めておるものですから、制度よりはむしろ人の方でうまくいくということがあって、その辺を何とか外側から絡め取れないかなというふうにいろいろ考えているんですけれども、多分、その辺の視野というのは結構あるのではないか。 実は教育系大学が社会教育の領域に乗り出しても、公立文化施設のようなところに入ってくるには、大学のカリキュラム等々の中で、そういうところの講義ができないような仕組みが結構あるみたいですね。できないというよりも、そういうところに余り人を行かせないような高等教育機関への指導が少しあるような気がしておりまして、文部省サイドですが・・。 △ 大学については、大学の教育方針のカリキュラムもありますし、もちろん財政的な裏づけが最終的には必要ですけれども、教育系の大学というのは、非常に少子化が進んでいて、教員の採用というのが長期的に見て少ないというのは客観的な事実であって、それに対するいろいろなご検討等は基本的には各大学でやっておられますので、教える先生がいるのか、いないのかとか、カリキュラム全体が社会の実際の要請に見合ったものとして組めるのかどうかとか、そういうタイムラグみたいなものがかなりあるのかなという気もいたしております。 ○ そのことですけれども、実は私も教育委員会に美術関係の先生を置いて、教育の中にいろいろ織り込んでいったらどうかと言うわけです。ところが、県によって違うかもしれませんけれども、先生の人事権は県の教育委員会が持っておるわけで、故にそれは言うだけで、なかなか実現してこないというのが実態なんです。 ○ 教育の問題だと、特に国立大学の教育学部というのは、教員養成と、表現系については芸術大学の代行になっている部分がかなりあるんです、音楽、美術系については。もともとその大学に行かれる方でも、特に音楽系なんかは教員を目指している方よりは、そこで専門教育を要望されている方が多いということもあるので、そういう意味からも、教育大学と地方の公共施設というのは連動する可能性を人材的にも大きく持っていると思うんです。実際に大学の先生の配置も、表現系についてはかなりそういう配置になっていますね。教育というよりは、専門教育的な要素が非常に強いカリキュラムをとられている大学が多いですから。 ○ 事例としては、滋賀県は、大学生と美術館が連動して、子どもたちのためのワークショップを夏にするということもやっています。それから、びわ湖ホールも、音楽系の大学の先生と一緒になってプロデュースオペラをやるときに、インターンじゃないんですけれども、もっと短期で単位にするために学生さんが派遣されてくるということもやっております。現場ではある程度はできていると思うんですね。 ○ 例えば私が少しかかわった豊田の隣の長久手町の文化の家ですけれども、そこは県立芸大があるものですから、県立芸大と連携をしようということで、企画段階から随分やったんです。建物ができるまでは、教授会はうまく話がいったんですが、事務サイドで全部ノーと言われまして、一県と一自治体が連携することはどうもおかしいとか、いろいろ行政指導をいただきまして、なかなかうまくできなかったんです。 ただ、実際に建物ができて、すぐ隣にあるということと、先生方がすごく利用していただいているうちに内部のコミュニケーションができ始めて、実態が進んでしまったものだから、実際にはそこで公開講義、オーケストラの公開練習をやってもらったり、そういうことが結構盛んになってきていまして、今度は逆にそれをフィードバックしていくという、実態で動かしていくという格好ですけれども。 ○ その意味では、100%制度的な問題ではなくて、むしろ実践と意識改革の問題というか、実践を先行させて意識を改革していく。つまり制度的にできないということではないという気がするんですね。 ○ 制度的にできないということよりも、不文法が非常に多い。 ○ 確かに現実的はそうですね。 ○ 現実的には、県はある特定の自治体とばかりいいことをしてはいけないとか(笑声)、そういう反応が非常に強いものですから。 ○ まだご発言いただいていない先生方から、どうかご発言をお願いいたします。 ○ きょういろいろ聞かせいただいた四つの自治体の施設は、日本の中でもすばらしいものの例だと思います。さっきチケット収入のお話がありましたけれども、どことは申し上げられませんが、チケット収入は館の収入にはならない、自治体の雑収入になっているところが随分あるということも聞いております。その辺もホールの方たちが積極的になれない一つの要因だということも聞いております。何故施設の収入になるところとならないところがあるのか、よくわからないんですが。 それと、教育委員会というお話がございましたけれども、音楽の鑑賞教室など、東京でもよくやっておりますが、教育委員会というと、どうしても機会均等が重視されるように思います。先ほどお話にありましたように、芸術文化というのは、だれしもが同じものを好むというわけではない。一律にしようとすることによって、かえって拒否反応の方を育ててしまうということもあり得ると思います。その辺りが、教育委員会と一番相入れないところはではないかと私は常々感じております。音楽の鑑賞教室はどうあるべきかということは、実施に当たっている方は今相当考えていらっしゃいます。演劇の方は、その辺は問題になっていないのかもしれません。特に教育委員会とのバランスで、教育委員会がなさることによって、非常にうまくいっているところもあるのですが、規模が大きくなれば大きくなるほど難しいかなというふうには感じております。 ○ 1点だけ感じたことなんですが、論点との関係もあるんですが、きょういろいろお話を伺っていて、各文化ホールでいろいろないい活動をしていただいておりますけれども、その活動していただいている内容の情報発信という視点です。先ほどの資料でも地方のメディアにきちんと報告して、それが新聞に載った事例などもご報告がありました。 私どもの活動の中でも、地方の芸術文化活動支援、特に公立ホールを拠点とした支援の中で、東京の人にわかってもらうというか、知らしめるというか、情報を的確に上げてもらう努力を、恐らく公文協さんのお仕事にもそういう問題意識はあると思いますが、やっているんですが、現実は、我々自体のメディアではいろいろ取り上げて、地方、地域の文化活動の情報をできるだけ回すようにしているんですけれども、一つはマスメディアとの関係・・に一つ悩みがあります。例えば地域に起きた事件でも、単純に申し上げると、社会部的なものはどんどん全国のメディアに乗るんですが、文化・芸術セクションの話題というのは、地方から発信され、全国メディアに・・時々、NHKで取り上げていただいておりますけれども、きょうご報告があったような各地域でのいろいろなユニークなことは、全部取り上げられるのは難しいのです。いろんな機会に、ほかの分野、つまり社会・政治的なもの、経済的なものとできるだけ拮抗した形で話題になっていく状況というのが本当は望ましいと思っているんです。地方のマスメディアで芸術文化活動にご熱心な方がおられるところは非常に反応して打ち上げていただく、発信していただけますけれども、一般にはなかなか難しくて、そういう壁をどうやって破るかなという議論を、私どもは時々マスコミの方々と意見交換をしているんですけれども、なかなかいい方法がない。 そういった意味で、公立の文化ホールの活動の情報発信も、できるだけ地方から中央への情報発信というものが頻繁に行われていきますと、先ほどのネットワーキングとか、人材のローテーションとか、いろんなことも非常にうまくつながっていくのではないかと思うし、政治家とか親元の行政の理解というものも、マスコミの社会的な影響力というのは非常に強いですから、そういう間接的な影響も出てくると思います。こういうことで、情報発信なりマスメディアとの連携という部分も、論点の中で取り上げていただけるといいかなと思っております。 ○ 今おっしゃったことは、みんなの相互クリティックというか、相互批評という風土につながっていく、それが必要だと思うんです。もちろん情報交換する、また館同士の内部情報の交換という意味もありますけれども、市民も行政も含めたそれぞれの相互クリティックを触発していく風土がやっぱり必要じゃないか。そのことが、評価とか、税とか、教育の問題についても、やはり国民が当事者として発言していくことにつながっていくと思うんで、それがないと、館だけでやっていても余り意味がないことじゃないか、そんな感想も持ちました。 他の先生、いかがですか。 ○ 私、教育の立場から話をさせていただくことになると思うんですが、今、委員の方々からのお話を伺いながら、なるほど、費用というのはなかなか難しいんだな、館の運営というのはなかなか厳しいものがあるんだなということをまず切実に感じました。 私たちの現場から申しますと、先ほど、お話にありましたように、次代を背負って立つ子たちに何とか本物の、文化だけではなくて、体育的なものでも、お話でも、いろんな機会を与えたいというのは事実なんですが、私も音楽家の一人として、何とか音楽文化をということで、この間もお話をさせていただいたんですが、横浜は政令指定都市で、県とはまた別な感じで仕事ができるんですけれども、学校数も500以上あるものですから、どこに視点を当てていくかということなんですが、市長さんが先ほど中学校の1年生、2年生、3年生に当てていただいたということで、私は勇気あることだなと物すごく感動しました。うちの市長がいいとか悪いではなくて、この間から市長さんはご熱心で、文化活動、特に音楽関係のことに関してご理解いただいている。やっぱり理解者がそばにいてくださるということは、すごくありがたいなということで、私もそういう方にめぐり会いたいなと思うんですけれども。 実はどこを対象にしようかというときに、余り小学校の低学年だと音楽をずっと鑑賞するのは難しかろう。よい環境のところで、より本物の音楽を鑑賞させるにしても、じっとしていられないんじゃないかということで、5年生を対象に今から3年前ぐらいから活動を始めて、今年3年目になると思うんですけれども、大変好評で、351校あるんですが、どこの学校も申し込んで、鑑賞会を楽しんでいるという事実があるんです。その結果はいつ出てくるか、ちょっとわからないんですけれども、私は、小さい、まだいいか悪いかわからないようなときにいい経験させることはすばらしいことだということで、口を酸っぱくして言っているんですけれども、さっきの行政ではないんですが、かなり抵抗があって、一度はだめになった計画で、復活事業でお金をつけていただいて、やっと事業が成立したという経過があります。生みの苦しみをした方ですので、行政にご理解いただくことは難しいことだなというのをひしひしと感じている者の一人なんですね。 ただ、子どもたちはいろんな面を持っていまして、すごい力、エネルギーを持っています。それをどこにぶつけるかというのが今非常に難しい部分がありまして、そういう感動する体験・・音楽もそうだし、演劇もそうだし、運動もそうだし、何か感動するというか、体験をさせるのはすごく大事なことじゃないかなと私は思っています。 私、びわ湖には行ったことがないんですけれども、ホールに入ったときに、うわ、すごいなと思うだけでもすごく違うし、そこですばらしい演奏にめぐり会えたらもっとすごいだろうし、それから、先ほど、お話がありました子どもの作文の中にもあったんですが、今は無料だけれども、またお金を出して聞きに行ってみたいなという気持ちを起こさせてくださったことに対して、お金にかえがたいすばらしいものをしていただいたということで、横浜でももっともっとアピールしていきたいと思っております。 ○ 一番最後に、公文協から今後の調査方法について、皆様方のご意見を伺いたいので、まだ発言していない先生から一言ずつ何か総括でも。 ○ 先ほど教育委員会と首長部局の話が出ておりましたけれども、文化関係事務が教育委員会から首長部局に移る契機となったのは、梅棹忠夫さんの「文化は放電、教育は充電」の充電・放電論と思います。それによって、逐次的に、教育委員会を離れ、、首長部局の方で実施されるようになっていった、そういった歴史的経緯があろうかと思います。 私も、それはある意味では非常に重要なことという感じがしておりますが、一方、文化活動には、教育活動というか、学習活動の一環という側面が非常に強いところがあるわけです。同時に、子ども、青少年に対して文化の提供と同時に、創造活動への参加ということを考えますと、教育委員会ないし教育そのものと切り離した形での文化創造ということはあり得ないのではなかろうか。そこをうまく調和させ連携させて運用していく必要があるのではなかろうかということを常々感じております。ただ、現実にいろいろな難点があるわけですから、それを制度的に変え得るのか。変えられないとすれば、運用上の妙を発揮できる方法をもう少し考えるべきではなかろうかという感じがしております。 もう一つ、お話にもありましたように、教育学部の改組・転換に絡んでこういった要員の育成を大学教育に取り込むということは、当然あってしかるべきであろうと思います。ただ、教育はかたいというお話が出ておりましたけれども、従来の社会教育というのは、どちらかというと公民館に対してしか目が向いていなかった。芸術文化活動、ましては生活文化ということに関しては、ほとんど無関心に等しい状況であったのではなかろうか。そうしますと、そういった先生方を養成している教育学部の先生たちも、やはり社会教育という極めて狭い範囲でしか物を見ておられない。となると、教育学部の教授会では、芸術文化にかかわる要員の育成というところまで、目が届くかどうか。したがって、そういった提案をこちらからして、教育学部に、そのような若い世代の育成といった守備範囲もあるということを認識してもらう必要があるのではなかろうか。このような感じを持っております。 いずれにしましても、学校教育、特に初等・中等教育は当然ですけれども、高等教育との間の連携プレーについても、今後やはり文化会館として必要性がより高まってくるのではなかろうかと思われます。 ○ ちょっと違ったことを言うことになるんですけれども、学校というのは、僕は東大に長いこといましたが、基本的に閉じた社会で余り役に立たないと思っておるんです。 それから、学校が生徒を動員して、修学旅行みたいに好きでもない音楽の演奏会を聞きに行くということ自体も・・僕は実はローマに行く前に、武蔵野市の武蔵野文化会館の企画運営委員長を10年ぐらいやって、今でも理事ですけれども、あそこは毎年85本ぐらい自主企画をやっていて、全部完売なんです。前回お話にも出ましたけれど、1年に300日使っているわけです。あそこは財団なんです。市長も教育委員長も入っています。ただ、その連中は、一応理事長ということになっているんですが、企画に発言権はないんです。僕らが幾つかの委員会をつくって、僕は伝統芸能部会長ですけれども、理事会は各芸術分野の専門部会が出したものを大体承認するという形をとっている。それで運営するわけです。一つの可能性として、そういう方式はあり得ると思います。その方がいいこともある。教育委員会は、いると役に立つこともあるんです。 なぜかというと、一つは、武蔵野市は今第3セクターで幾つかの事業団を持っているわけです。文化事業団はやめろと議員の方は言っているわけです。スポーツ事業団と文化事業団はやめて、老齢福祉に向かえと。そっちの方が票になるんです。それは簡単明瞭な話で、それも大事なんですけれども、それだけではいかない。選挙目当ての場当たり的な動きを市長や教育長がある程度守るわけです。僕たちも「守らなければだめだろう、お前たち」と言って尻をたたくわけです。そういうことができるから、必ずしも行政を切らなくてもいいような気もしますけれども、使いようだと思うんですね。 武蔵野の場合は東京の近郊ですから、他の場所と事情が同じではないかもしれませんけれども、学生たちを連れてきて、見せて、1300のホールがあるから同じ学年の生徒を2〜3校つれてくる。すると、学校同士でけんかしたり、座席のビロードを切っていったり、とにかくかなりのことがあるんです。事業団自体が、学校を連れてきてやるのに反対なんです。なかなかいろんな問題があるんですよ。日本のグループ主義ということがあって、そういう文化があるんでしょうけれども、僕は、無理やり学校をまとめて連れてくるのではなくて、芸術活動というのは、基本的に、個人の意思で参加する方がずっといいと思います。好きでない者まで連れていって退屈させるよりは、そしてまた時間中に外へ出てロビーで殴り合いをしているということがないわけではないので、そういう問題は中学校や高等学校、または教育荒廃という文部省の問題でもあるわけだけれども、そう簡単にはいかない。 それから、お話にもありました宣伝の問題もあります。僕らのところはアルテという変な名前の友の会をつくって、今7000人の会員がいて、それを1万人にしようとやっているわけです。そのPR紙を通して情報を流せば、中央なんかいいんですよ。NHKに頼んでやってもらわなくても、「いいものをやれば」というぐらいの気概があれば、それでいいと思うんですね。 ○ それでは、そろそろ時間になりましたので、自由討論を打ち切らせていただきますが、事務局の方からご感想を一言。 △ 問題点を四つほど挙げられた中で、いわゆる公共劇場になれば、専門的な人材を抱えるということがあって、その際にそういう流動策、もう少し前に戻れば、教育学部、大学での養成とか、そういう問題提起があったわけですが、その関連で、私どもとしてはそういう流動を促進するような方策を具体的に提案できたらいいなということがありまして、従来からそういう資格・・資格というのも、その性質をよく吟味しなければいけませんけれども、そういうようなことについてもまた時間をとっていただいて、今後ご議論いただいたらと思った次第でございます。 ○ ありがとうございました。 今いろいろお話を賜りましたことは、最初の資料1「公立文化会館の活性化に関する論点(素案)」に盛り込ませていただくことを事務局の方にお願いいたします。 それでは、会議としてはこれで閉じさせていただきますが、公文協の調査方法について。 △ タイトルとして「公立文化会館の活性化に関する基礎調査(案)」といたしましたペーパーを用意いたしました。 「趣旨」は、公立文化会館の活性化に関する調査研究の議論をより円滑に進めていただく際に、一つの事実関係とか、そういったものを調査としてまとめ、それをご議論、あるいは結論を導き出す際の参考にしていただければというふうに思っております。 「内容」といたしましては、四つぐらいの柱でやってみたいというふうに考えました。一つは事実関係でございます。実態調査という分野、もう一つは今各公立文化会館がどのようなことを目指しているのかという意向調査の柱、さらに、これらはいずれもペーパーになりますので、調査票としての制約がございますので、三つ目はまさに事例調査といいますか、ある特定の館につきましては少し詳しく整理をしてみたい。四つ目に、資料分析という形で、公立文化会館は活性化を進めていろいろなことを考えなければいけないということなんですけれども、公立文化会館自体が、例えばこの国でどういうような位置づけになっているのか、あるいは現在の価値観の多様化の中で、国民がどういうふうなスタンスで見ているのか、どれぐらいのウエートを占めているのか、こういったことも整理しておく必要があるだろう、そんなような考えでございます。 時間等の関係がありますので、内容について、ポイントだけ説明させていただきます。 「実態調査」のところで、さらに幾つかの項目を用意いたしましたが、施設概要の際に、設置主体、運営主体ということで、先ほど来出ております財団の委託の問題、あるいは首長部局か教育委員会か、そういったところの整理・・最終的にはデータベース化を考えておりますので、設置目的、設置年月日、開館年月日等の中で経年的な傾向も見られるのではないか、あるいはホールの大きさとの関係を見られるのではないか、こんなふうに思っております。 ・の運営概要のところで、後の資格制度、研修ともつながります際の専門家といいますか、そういった活用の問題。そして先ほどチケット収入の話が出てまいりましたので、それは後のところでも新たに触れなければいけないと思っておりますけれども、財団等に委託されている場合、ホール使用料を財団の事業収入に充てているというケースも最近ありますけれども、多くの場合は、それはまさに委託先の教育委員会なり知事部局にそのまま行ってしまって、経営観念との問題があるやに聞いております。そういった点の実態も整理していきたいと考えております。 次のページは、お話にもありましたように、従来、公立文化会館のスタートの仕方等々の中で、生活文化というジャンル、多目的というジャンルがあったわけですけれども、これから芸術文化といったことを考えますと、ポチの四つ目ですけれども、特定芸術団体との関係とか、そういった事柄についても実態がある程度出てきておるように思いますので、整理しておきたい。 それから、この言葉自体に問題があろうかと思いますが、とりあえず貸館事業という言い方をしてございますけれども、こういったところで現実にいろいろな問題が起きておりますので、そういうような問題についても整理しておきたい。例えばキャンセル時の取り扱いとか、時間延長への対応とか、そういったものがいろいろな流れの中で変わってきているようでございますが、それらの実態も整理する必要があるだろうと考えました。 そして、これから大きなウエートを占めます自主事業について、きょうの報告にもありましたが、特に単年度予算主義の克服方策といったものがあるのではないか。上原委員の方からお話がありましたように、こういう事業を進めていく・・これはあるいは運営の場所かもしれませんけれども、税の問題とか、こういった点についての実態みたいなものも整理して、つけ加えて考えたいと思っております。それから、先ほどお話がありましたチケット収入、いわゆる事業を進めていくときのチケット収入の帰属の問題についても、実態を整理しておく必要があるのではないかと考えます。 ・として時代の変化への対応ですが、これは意向調査とほぼパラレルな関係になりますけれども、価値観の多様化とか情報化、特にインターネットの活用というのは、先ほどお話がありました広報の部分とも絡んでくるわけですけれども、マスメディアにどう取り上げてもらうかというテクニカルな領域もありますが、量的な制約といったものも考える中で、インターネットの活用とかいったものがどうであろうか、この辺について整理をしておく必要があるだろう。そしてまた、バリアフリーの問題、市民の文化活動意欲との絡み合わせの中でアウトリーチの問題。これらは主としてどこまで進んでいるかということで、むしろ後段の意向のところで大きく聞きたいと思っておりますけれども、そんなことでございます。 「意向調査」につきましては、問題点の認識。これは初回のときに文化庁の方でまとめた調査で、例えば予算が足りないのが問題であるとか、そういった総括的なことは一つ整理しておいた上で、運営の問題として、ここにあります専門家(職)の活用、事務局の方からもお話がありました資格制度問題、この間に、インターン制度といいますか、研修、大学との連携、そういった問題も具体的な事柄として設問で用意した方がいいのかというふうに考えましたが、その辺のところでございます。 それから、貸館事業、自主事業については、実態を踏まえた上で幾つか進むべき方向について、あるいは主として量的なポイントにするところなどを整理しておきたいと考えております。 次のページでございますが、自主事業のところで、特に意向を整理しておきたいなというのは、先ほど来お話がありますように、公立文化会館というのは地域のホールでございます。そういう中で、これはちょっと切り口を書き過ぎているのかもしれませんが、地域に密着した事業の展開、そういったことをどのように今後考えていくのか。役所的に言えば、地方分権ということが確実に進んでいく中で、それぞれ個性ある地域づくりとの関係。設問については少し工夫しなければならないと思っておりますが、その辺については注目していきたいというふうに考えている次第でございます。 時代の変化への対応については、先ほど実態調査のところで言い忘れたんですけれども、通常言われている価値観の多様化、情報化、少子高齢化のほかに、これは施設ハード面とかかわってきますけれども、バリアフリーの問題とか、そういう時代の要請にどうこたえていこうとしているのか、そういった点も触れておきたい。 それから、「事例調査」でございますが、これは仕組みとしては実地調査的なことをする必要があろうかと思っておりまして、最終的には、予算との関係で、どのようなところをどういうふうにしたらいいのかということもございますけれども、幾つか選定の視点があるのではないかと思っております。財団の特性を生かした自律的運営の推進、市民とのかかわり、創造集団の育成・支援、地域密着型事業展開、あるいはネットワーク形成、そしてきょうもいろいろと積極的なお話がありました学校等地域施設との連携、あるいは学校教育等との絡み合わせという問題、これはアウトリーチ活動ともつながってくるのではないか。こういったようを切り口で、これまで様々なところで進められている事例を見ながら選定をして、実地調査したい。その際には、非常にうまくいっている事例ではあるんですけれども、その中に潜んでいる問題点とか、どうやって克服してきたのか、そういったところに突っ込むという意味で、実地的な調査が必要であろうというふうに考えております。 「資料分析」は、今現在考えておりますのが、例えば総理府が文化に関する世論調査ということでやっておりますものを参考にしながら、文化創造、文化会館に対して国民がどう思っているのか。平ったい言い方をすれば、国民の生活の中でどの程度のウエートを占めているのか。これはやはり我々としては非常に重要なことであるけれどもということがあるのか、ないのか。そういった点は客観的な整理はしておく必要があるだろうと考えております。 「方法」でございますが、実態調査、意向調査については、全国の公立文化会館を悉皆調査・・といいますのは、実態については少しデリケートな部分があるかもしれませんので、工夫しなければなりませんが、基本的には、文化庁の方で既につくっているデータベースがあるわけですが、それを補強あるいは整理する、改正するという形のことを考えております。したがいまして、悉皆調査で、対象は、私どもの公文協で調べているところによりますと、きょう現在で文協加盟自体が1345あるんですけれども、約600余が、全国の公文協には加盟していないけれども、地区の公文協に加盟している。その逆の事例もあるんですけれども。そういったものにはとりあえず参加していない、しかし地区あるいは県で押さえられているものを聞き取りしますと、1990というのが現在の数字でございます。この施設を対象にしたい。それから、事例調査については、先ほど言いましたように実地に考えたい。 「スケジュール(当面)」ですが、時間とのかかわりですと、実態調査、意向調査については、専門機関といったところの協力を仰ぎながら、きょうのご議論等を踏まえながら、きょう4日ですので、調査の依頼をせめて2週間内外ぐらいでさせていただいて、1か月余で回収し、当面、第4回に速報値について報告し、少しでも早く事実関係あるいは意向のエッセンスみたいなものをにらんでいただきながら、議論の補強材料にしていただければ、そんなようなスケジュールを考えました。 最後には、非常に細かいんですが、先ほどの選定をするということの中で、公文協なりに地域創造さんの資料なども活用させていただきまして、現在、特色あると思われる施設・・つかんでおるのは大体70ぐらい。もっとあるのではないかと思いますけれども、こういったものを参考にしながら、予算その他の兼ね合いの中で、具体的な部分についての調査をしていきたいというふうに考えております。 ○ 2点ほどあるんですが、一つは、調査項目の自主事業というのは、今、多分お考えになっているのは公演型の事業主体だと思うのですが、公演型ではあるけれども、若干アウトリーチ的な側面を持っている事業もあると思うんです。既に枠組みとして、自主事業として公演事業以外を積極的に取り入れている館は全国的にかなりあると思うんで、自主事業項目の中に、アウトリーチという言い方がいいかどうか、わからないんだけれども、公演以外の形態というのをぜひ加えていただきたい。 それから、今回の調査で実際に可能かどうかわからないのですが、事例調査の中で、4の「資料分析」に当たるところはもう少しデータを補強したい。つまり国民的な意識というレベルではなくて、地方行政とのかかわりが強いですから、地域の反響ないしは意向というものが、こういう調査に張りついていないと意味がないと思うんです。特に実際に開いている館の検討ですから、少なくとも地域の芸術団体あるいは個人、つまり舞台を使う側と地域住民、それからお話に出たマスメディアを含めた広報関係、もう一つは自治体内の行政組織あるいは議会等のある程度の反響みたいなものが、サブデータとして、特に突出例についてはそういうものが必要だと僕は思うんです。要するに、客観的な評価と一番依拠している自治体の中でどう評価されているのかという問題は、やはり挙げていただかないと、今後の問題点が浮かび上がってこないだろうと思うので、もし何か調査方法等があれば・・これは数値的データが全くないんです。タックスペイヤーの合意を得るためには、この辺からまずきちっとしたデータをもって対策を講じないといけないと思うので、少なくともその辺の道筋がつく入口でもつくっていただけたらと、2点要望したいと思います。 ○ 調査に関しては、我々は15年ぐらいのこういうデータを蓄積しておりますし、5年ごとに調査票をかなり新しくしております。特にお金の出し方のところは、一律に聞いてもほとんど返ってこないし、粉飾決算じゃないですけれども、随分不思議な決算をしているところがあるので、それをはぎ取っていかないとわからないんです。その辺のノウハウは、我々はかなり持っております。一人のドクターがこの辺の経営分析をやっておりますので、資料を送らせていただきます。 それから、ぜひ聞いていただきたいのは、条例の設置目的のところだけはきちんと全部把握しておいていただいた方がいいと思います。多分、すごくあいまいな設置の仕方をしておりますので、その辺はかなりきちんと聞かれた方がいいと思います。 以上ですが、よろしくお願いします。 ○ ほかによろしいですか。 それては、よろしくお願いいたします。 どうもありがとうございました。 事務局から何か。 △ 簡単に、3点だけお願いします。 次回ですけれども、ペーパーを中に入れさせていただきましたが、11月8日、10時から、第1回目が開催されました文部省の5A会議室の方で行われますので、よろしくお願いいたします。お手数ですが、出席についてFAXで回答いただければと思います。 2点目ですが、お席の方に、詳細版の議事録と議事要旨をお配りいたしましたが、公開する方は細かい議事録の方です。この議事録をもとに、事務局の責任のもとで今後の会議の検討材料になるようにポイントをまとめたものが要旨です。次回までにFAX等々で議事録の方のコメントをいただければ、次回にまとめて1回目、2回目の議事録を会議にかけさせていただければと思っております。 3点目ですが、このファイルは今後資料を束ねてとじていきますので、次回の会議まで必要ないよということであれば、置いといていただければ、今回の会議の資料も束ねて次回の席上に置かせていただきますので、よろしくお願いいたします。 ○ それでは、皆さん、どうもありがとうございました。 |