公立文化会館の活性化に関する調査研究協力者会議 (第1回)議事録 |
公立文化会館の活性化に関する調査研究協力者会議(第1回)議事録 ○日 時 平成11年9月20日(月)10:30〜13:00 ○場 所 文部省5A会議室(文部省5階) ○出席者 協力者:三善座長、上原、神津、加藤、佐藤、澤井、清水、田村、西川、西本、根木、根本、山形の各協力者 事務局:林田文化庁長官、水野文化部長、甲野地域文化振興課長 その他関係官 その他:社団法人全国公立文化施設協会千葉事務局長 ○議事等(○:協力者、△:事務局等) △ ただいまから公立文化会館の活性化に関する調査研究(第1回)を開催いたします。 本日はお忙しい中、ご出席いただきましてまことにありがとうございます。 初めに、開会に当たりまして文化庁長官からごあいさつを申し上げます。 △ 林田でございます。 皆様方、本当にお忙しい中、このたびは協力者会議にご協力くださいますことをご了解いただきましてありがとうございます。また、最初の会に、皆様おそろいでご出席いただきましたことを改めてお礼申し上げたいと思います。 文化に対する関心はいろいろ高まってまいりまして、各地方公共団体におきましても、いろんな文化政策の充実が図られてまいりましたし、公立文化会館の整備ということも本当に目ざましいものがあるように思います。後ほどまた統計的なデータを資料の方でご説明すると思いますけれども、地方公共団体の文化予算というのは、実は文化庁の持っております予算の約10倍余りになるわけでございまして、特に、平成5年ごろは一番ピークだったということでございます。その後、やや減少している状況がございますけれども、中でも公立文化施設の整備ということが急激に進められてきたという状況があるわけでございます。 そういう中で、各地方におきましても、いろんなご努力を進められておりまして、大変目ざましい活動をなさっている館も多いわけでございます。今回ご出席のご協力いただきます先生方の中にも、そういう施設を代表しておいでいただく方もあるわけでございますけれども、社会一般において、公立文化会館の活動状況が満足がいくものというふうには必ずしも思われていないのが実情であろうかと思います。 そういう中で、文化庁も、近年、文化庁予算は文化財保護の予算が非常に大きいという経過があるわけでございますけれども、ここ数年は、いわゆる芸術文化振興ソフト事業というようなもの、特に新国立劇場の開場でございますとか、「アーツプラン21」というような事業の面で充実するように努力をしてきたつもりでございます。また、地方に対しますいろんな支援という意味でも、地域文化振興課を数年前に設置いたしまして、これまで必ずしも文化庁の仕事の中で大きな比重を占めているとは言えなかった面が確かにあるように思いますけれども、地域文化振興の仕事も大切な仕事として努力をしていかなければならないという心積もりで、充実するように努力はしてきたつもりでございますが、正直申しまして、一つは近年の国の財政状況の非常な困難ということもございまして、必ずしもご期待にこたえられるような形になっていない面が多いというふうな気もいたしております。 しかし、これから私どもやれることがいろいろまだあるのではないかというようなことを実は感じておるわけでございますして、そういう意味で、文化庁として努力すべき点、さらには関係者が力を合わせてやればもう少し改善をできるような点が何かとあり得るんじゃないかということで、この機会に皆様方のお力をおかりいたしまして、そのような問題点をご指摘いただき、今後取り組むべき対応策というようなことにつきまして、ご提言がいただければありがたいと思っているわけでございます。私どもとしてそれを受けまして、最大限の努力をすると同時に、関係方面にもいろんな形で訴えられる機会になればありがたいというふうに思っているわけでございます。 大変お忙しい中を恐縮でございますけれども、このような趣旨をご理解いただきまして、ご協力いただければありがたいと思っております。何分どうぞよろしくお願い申し上げます。 △ それでは、本日ご出席いただいておられます方々をご紹介いたします。 はじめに、調査研究協力者の方からご紹介いたします。 びわ湖ホール副館長でいらっしゃいます上原委員。 豊田市長でいらっしゃいます加藤委員。 エッセイスト、作家でいらっしゃいます神津委員。 劇作家、演出家、世田谷パブリックシアターディレクターでいらっしゃいます佐藤委員。 財団法人地域創造常務理事でいらっしゃいます澤井委員。 名古屋大学教授でいらっしゃいます清水委員。 NHK解説委員でいらっしゃいます田村委員。 横浜市立都岡中学校長でいらっしゃいます西川委員。 政策研究大学院大学教授・西本委員。 長岡技術科学大学教授・根木委員。 社団法人企業メセナ協議会専務理事、共立女子大学教授・根本委員。 作曲家、東京文化会館館長、社団法人全国公立文化施設協会会長でいらっしゃいます三善委員。 喜多方プラザ文化センター館長でいらっしゃいます山形委員。 また、社団法人全国公立文化施設協会から千葉事務局長にご出席いただいております。 文化庁からは、林田文化庁長官、水野文化部長、甲野地域文化振興課長、私、地域文化振興課長補佐をしております犬塚でございます。よろしくお願いいたします。 次に、本調査研究会の座長の選出をお願いしたいと思います。座長は互選となっておりまして、どなたか、ご推薦ございませんでしょうか。 僭越ですが、公文協の会長をしていただいて、全国の公立文化施設のことをよくご存じの三善先生にお願いしたらどうかと思うのですが、いかがでしょうか。 犬塚地域文化振興課長補佐 特にご意見がございませんでしたら、三善委員に座長の方をよろしくお願いいたします。 お手数ですが、お席の方にお移りいただけませんでしょうか。 〔三善委員・座長席に移動〕 △ それでは、早速ですが、座長からごあいさつをいただきまして、以後の会議の進行をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○ 皆さん、おはようございます。 ご推薦がありましたので、大変に微力ですけれども、座長を務めさせていただきます。たしか来年の5月くらいまで何回か調査研究会の会議が予定されていると伺っておりますが、私なりに一生懸命やらせていただきますので、どうかよろしくご協力をいただきたいと思います。 ただ、私から1点お願いでありますが、私自身一生懸命やるつもりですけれども、自分に心もとないところがありますし、また万が一、私が会議に出席できないというようなこともあるかもしれません。どうか私の後ろ盾として、座長代理という方をお一方お願いしたいのでありますが、文化庁さんの方からもそのポジションをお許しいただいているのでございますが、私からお願いしてもよろしいでしょうか。 それでは、長岡技術科学大学の根木先生に座長代理をよろしくお願いしたいと思います。皆様、いかがでしょうか。 〔「異議なし」の声あり〕 ○ 根木先生、よろしくお願いいたします。 それでは、会議に入らせていただきます。 まず、会議に入ります前に、本日お手元に配付してあります資料につきまして、事務局からご説明いただきたいと思います。 △ お手元の資料をご用意いただけませんでしょうか。 まず、公立文化会館の活性化に関する調査研究(第1回)議事次第でございます。その後に座席表を加えてございます。資料1といたしまして「公立文化会館の活性化に関する調査研究について」、この会議の要綱と委員のメンバーリストになっております。資料2といたしまして「公立文化会館の現状」、資料3といたしまして「公立文化会館の課題」。これは事務局で参考までにつくらせていただいたものでございます。資料4といたしまして「調査研究の今後の進め方(案)」また最後に、資料番号が付いておりませんが、第2回の会議の開催のご案内。その最後に、現在11月1日を予定しておりますが、第3回までお知らせ、ご案内させていただいているところですが、第4回、第5回につきまして、11月の下旬、12月の中旬ごろに会議が開催できればなと考えておりまして、その関係の日程調整の資料でございます。 以上でございます。 ○ ありがとうございました。皆様、資料の不備はございませんでしょうか。 それでは、議事に入りたいと存じますが、最初に、調査研究の運営上の確認事項について事務局からご説明いただたきいと思います。 △ 事務局からご説明いたします。 本調査研究の議事録でございますが、事務局において案を作成いたしまして、そのうち各委員の方々に内容をチェックしていただいて確定したいと考えております。 残り2点でございますが、もう1点といたしまして、本調査研究に関する公開でございますが、会議自体の公開は行わずに、発言者名を「委員」「事務局」等と記した議事録の公開を行うことを考えております。 また、最後の点でございますが、議論の上で参考となる公立文化会館の現状と関係情報等を説明していただくために、本日も参加いただいております社団法人全国公立文化施設協会の千葉事務局長に今後とも会議に参加していただければということでございます。 その3点でございます。 ○ ありがとうございました。 議事録の作成と公開の仕方、それから、公文協から千葉事務局長のご出席をいただいている点、3点ありましたが、皆様方、この点に関しましてご意見、ご質問等ありますでしょうか。 ○ 1つだけ確認させていただいていいですか。十分にキャッチできなかったんですが、議事録は発言者の名前をつけて公表するということをおっしゃいましたでしょうか。 △ 議事録自身は発言者名を記した議事録なんですけれども、公開するものにつきましては、発言者名を伏して、委員と事務局等の表記により公開しようと考えております。 ○ ほかに何かご質問ございませんでしょうか。 ありがとうございました。 次に、ただいまの確認事項を踏まえまして、調査研究の趣旨について、事務局からご説明いただきたいと思います。 △ 地域文化振興課長の甲野でございますが、私の方から調査研究の趣旨につきましてご説明を申し上げます。 お手元に配付してございます資料1をごらんになっていただきたいと思います。「公立文化会館の活性化に関する調査研究について」と題した文化庁長官裁定でございます。これに基づきまして調査研究を行うということで、先生方にお集まりいただいているわけでございますが、その趣旨は1番に記載しているとおりでございまして、それぞれの地域の芸術文化活動の拠点というようなことを考えますと、公立文化会館の整備はこれまで積極的に進められてきたわけでございますが、やはり機能の一層の活性化が求められているというような声もあるわけでございます。 また、社会が様々な形で、ここには多様化、情報化、少子高齢化といったキーワードを例として掲げておりますけれども、進んでおりまして、国民の生活の変化も急激に進んでいる。こういう状況の中で、それぞれの地域における文化会館の役割ということもさることながら、社会の中全体を見まして、文化会館というものがどういうような役割といいますか、在り方なのかという観点からも、根本的な形での在り方の検討が必要というふうに考えるわけでございます。 そのようなことから、文化立国を目指すとの観点に立って、公立の文化会館・・ここでは名称が「文化会館」というものに限るわけではございませんで、音楽をやるところ、あるいは演劇をやるところ、言いますれば舞台等、舞台芸術を対象とする施設につきまして、社会の変化に対応した役割、在り方、あるいは機能の充実について調査研究を行うというものでございます。 「調査研究事項」として掲げさせていただきましたのが次の2でございます。1番目が社会の変化に対応した公立文化会館の役割・在り方についてでございます。2番目が機能の充実でございます。3番目が他の施設・機関等との連携・ネットワーク等についてでございます。機能の充実の中にももちろん含まり得るわけでございますけれども、やはり単独の館だけの活動というよりも、今後は他の施設との連携、あるいはネットワーク等ということも重要になってくるということを鑑みまして項目を起こしてございます。そして、4ということで、その他いろいろなご意見がいただけるかとも思いますので、ここに挙げさせていただきました。 「実施の方法」でございますが、有識者の協力を得て調査研究を行うということでございます。2番目といたしまして、関係者、別の方々の意見を聞くことができるものとするということがございます。今の時点でどの方を選んだ方がいいかということは、特に事務局として腹案があるわけでもございませんけれども、様々な議論を重ねていく過程で、やはりこういう分野の方の意見を聞きたいということでありますれば、それに対応するということでございます。また、必要に応じて調査研究に関する実態調査等も行うということでございます。 期間といたしましては1年間でございます。また、スケジュールにつきましては追ってご説明をいたしますけれども、1年間ぎりぎりというよりも、もうちょっと早目の形でやっていただければいいかなというふうに思っている次第でございます。 調査研究は私ども文化庁の地域文化振興課で行うということでございます。 2枚目が別紙で、「調査研究協力者」を付けておりますけれども、これにつきましては省略させていただきます。 以上でございます。 ○ どうもありがとうございました。 資料1の1ページ目の調査研究事項が、「その他」を含めて四つ。(1)は地域との関係の仕方ということかと思います。また、(2)は実際の働き方ということかもしれません。 実は、ただいまの趣旨に沿ってこれから議論をお始めいただくわけですけれども、本日は文化会館の活性化についての自由討議とさせていただく予定でございます。その自由討議の内容を踏まえて、これからの会議で検討すべき個別課題を抽出していきたいと存じております。そのために、本日は皆様方の常日ごろからお感じになっていらっしゃることを自由にご発言いただきたいと思います。 自由討議に入ります前に、先ほどご紹介にありました資料2と資料3、資料2が現状、資料3が課題だと思いますが、それに基づいて、公立文化会館に関する現状と課題のご説明を事務局からお願いしたいと思います。 △ それでは、資料2と資料3につきましてご説明をさせていただきます。 〔資料2について説明〕 続きまして、議論の参考になるかという形で用意した参考メモ、資料3につきましてご説明をさせていただきたいと思います。 この資料3は、今回と次回は自由討議ということでもございます。調査研究事項につきましては、先ほどご説明をしたところでございますが、それをさらにかみ砕いてと申しますか、どのようなことが検討課題としてあるだろうかということを事務局なりに思いついたところを書いてみたものでございます。これを議論の参考にしていただければ幸いでございます。もちろん、これにとらわれず、様々な課題もあろうかと思いますので、そのような課題につきましては各委員から積極的にご発言、提言していただければ幸いと思います。 まず第1の「今後の公立文化会館の果たすべき役割・在り方について」ということでございますが、ここは二つの観点からの検討がなされ得るものではないかと考えたわけでございます。 第1番目が、地域における文化振興という観点からの果たすべき役割でございます。それぞれの地域ごとに、様々な文化活動をしている方々もたくさんいらっしゃるわけですし、いろいろな形での文化的なまちづくりという観点からの活動もありますし、様々なことが行われているわけでございますけれども、そうした地域における文化振興という観点から見て、公立文化会館は今後どういう役割を果たしていくのだろうかという観点の検討が恐らくあるのではないかと考えたわけでございます。 第2番目でございますけれども、これは公立文化会館全体をもう少しマクロにとらえまして、日本全体の社会の中で、これは今後どういうふうに役割を果たしていくべきかというものでございます。これも価値観の多様化、情報化、少子高齢化というような形で、キーワードとなるようなものを例示として挙げておりますけれども、これはあくまでも例示でございまして、社会の変化を意味づける用語としては、例えば国際化というようなものももちろんあるわけでございます。地域における国際化は文化交流等の面でも大変進んでおりますけれども、そうしたような社会の変化を踏まえて、公立の文化会館はどんな役割を担っていったらいいのか。そういう観点からの検討が、やはり在り方の検討としてはあるのではないかと思うわけでございます。 2が「公立文化会館の機能の充実等について」でございます。(1)運営、(2)事業についてということで、とりあえずまとめさせていただいております。 運営についてでございますけれども、これは管理運営をどういう形でやるのか。直轄でやるのか、あるいは財団に任せてやるのか等々、基本的な在り方について様々なやり方、利害得失等あろうかと思います。また、実際に運営に当たりましては、収支をどういうふうに考えたらいいのかという経営的な観点から、そこをどう考えるかということもあろうかと思います。また、職員の体制ということも重要であろうかと思います。ここに体制という形では書いてありますけれども、どんな質の人がいたらいいのかとか、研修の機会がどうであるとか、採用はどういう形ですべきなのか等々、職員に関する諸問題があろうかと思います。 また、広報の活動でございますけれども、一般的に、住民にその活動を周知してもらうという形での広報ももちろんでございますけれども、近年におきましては、情報公開とか、一般的な情報開示ということも非常に言われているわけでございます。そうしたことから、どのような形で広報活動をしていくかということは、今後非常に重要な課題になってくるのではないかと思いまして、あえて挙げさせていただきました。 (2)の事業についてでございますけれども、事業につきましては、従来から、例えば貸し館事業とか自主事業というような形で分類されることが多かったわけでございますが、自主事業というふうに言った場合でも、その内容は非常に様々でございまして、単に売り公演を買ったという形で自主事業ととらえるということで満足しているとは言いませんが、そうしたものも自主事業でございますし、実際に様々な作品を制作し公開するというのも自主事業でございます。そうしたことから、ここではもう少し機能に着目して、ちょっと概念を整理してみたわけでございます。 一つが住民の文化活動への支援ということでございます。これは実際に練習場所を貸すとか、発表の場を提供するということもあろうかと思います。それから、住民に対する教育のプログラムというものもあろうかと思います。こうしたような事業はどういうふうにやったらいいのかという観点が、機能の充実を考える上での一つ大きなポイントかと思います。 2番目でございますが、鑑賞機会の提供というものがあるわけでございます。公立文化会館が立派なホールをつくるということは従来からの非常に大きなテーマといいますか、役割だったわけでございますが、これをどういう形でどんどん進めていったらいいのかということがございます。 3番目といたしまして、芸術創造活動の実施ということがございました。様々な外国の例を取り上げてみましても、文化会館あるいは劇場といったような場合には、芸術発信というものがあって当然だというようなところもあると漏れ聞いているわけでございます。国内におかれましても、本日いらっしゃった中にもあるわけでございますけれども、様々な館におきまして積極的にこの活動をなさっているわけでございます。そうしたことから、今後の公立の文化会館の果たすべき役割、あるいは機能の充実ということを考える上では、この芸術創造活動の実施というものは重要ではないかと考えるわけでございますが、それをどういうふうに考えていったらいいのかにつきましても、様々な館もあるわけでございますし、大きな論点かと思います。 このような形で、事業につきましては様々な検討すべき課題があるのではないかと考えたところでございます。 3が「他の施設・機関等との連携・ネットワーク等について」でございます。会館の連携・ネットワークという形では、公立の文化施設全体を総括したものとして、既に公立文化施設協会があるわけでございますし、連携という意味では、地区ごとのまとまり、あるいは県ごとのまとまりということが様々あるわけでございます。また、事業に着目して、様々なネットワークをつくるという試みもなされているわけでございますけれども、そうした会館相互の連携とかネットワークをどんなふうに進めていったらいいのか、在り方はどうあるべきかということは、やはり大きなテーマになってくるかと思います。 そして、連携・ネットワークということで言えば、公立の文化会館という施設以外の様々な機関との連携、あるいは在り方をどういろいろ考えていったらいいかということも議論になるかと思います。子供に対する教育プログラムということを考えてみますと、学校あるいは社会教育の施設が関連してくるわけでございます。住民に対する教育プログラムももちろん社会教育の関係、公民館とか、様々な既存の施設との関連が出てきます。その辺をどのような形でうまく連携して進めていったらいいかということが重要になってくるかと思います。 なお、学校等教育機関の中には、もちろん小中高等学校ではなくて高等教育機関ということの関連も重要になってくるかと思います。その辺りにつきましても、いろいろご提言やご議論をいただければと思います。 最後の「その他」でございますけれども、ここでは「行政、民間との関わり等」という形で例示をさせていただいております。行政ということで、さらにここに書かせていただいておりますのは設置者、国でございます。やはり設置者がどういう考え方を持つかによりまして、公立の文化会館がどういうふうに運営されているかということがかなり大きく変わることがあるということが言われているわけでございます。また、国の役割ということを考えてみますと、地方分権ということが言われている中で、どうなのかということもいろいろあるわけでございます。その辺、国あるいは設置者がどういうふうな役割を考えていったらいいのかということは重要でございまして、それについての種々のご議論、ご検討、ご提言があれば大変ありがたいというふうに感じているところでございます。 そして、最後に民間との関わりでございます。景気の動向がなお一層不透明という中にあるわけでございますけれども、民間の関わりというものは、特に国のレベルの様々な芸術、関係団体等、あるいは施設だけに限らず、地方におきましても重要な観点かと思います。その辺につきましてもどのように考えるかということが重要であるわけでございます。 以上が、公立文化会館の課題についての参考のメモでございました。 なお、先ほどご説明をした資料2の中の8ページでございますが、9の「財政」で、「民間企業からの資金や人的支援の有無」でございますけれども、ちょっと書き方を間違えておりました。77.4%のところでございますけれども、これは全く受けたことがないというデータでございました。ですから、15〜16%ほどが「支援を受けたことがある」という形で、7割強が「受けたことがない」ということでございました。おわびの上、訂正をさせていただきます。 以上でございます。 ○ どうもありがとうございました。 ただいまの現状と課題についてのご説明については、それぞれの委員の先生方に解釈やご意見があろうかと思いますが、それを含めまして、本日は第1回目でありますので、皆様方お一人お一人から公立文化会館の活性化についてのご意見、ご提言等を、時間の関係もございますので、3分から5分くらいの時間でお聞かせいただければと思います。 先ほど申し上げましたように、自由なご発言の中から今後の個別課題を抽出したいということでございますので、少しバイアスをそこに置いていただければと思います。 いかがでしょうか。まず、ご意見をお述べくださる方がいらっしゃれば、口火を切っていただきたいと思います。 ○ ちょっと一つ確認をさせていただきたいんですけれども、6ページです。稼働状況のことで確認したいんですけれども、ここに300日以上稼働しているという数字があるわけですけれども、そんなところがあるのか。365日で、休館があるというときに、私どもの都市を見たときに大体200近くいけばまあまあよく利用して、稼働率が80%くらいの思いでいるわけですけれども、稼働状況が300日というところがあるんですか。 △ もとのデータを見てみますと、300日以上は確かにございます。ただ、このデータ自身は、実は「公私立文化活動に関する調査」というふうに銘打って調査をいたしましたけれども、300席以上の座席を有する国立のホール等も含めたわけでございます。国直轄ということか、あるいは国が大きく関与している財団や特殊法人が持っているホール等、そういうようなホールも含めてのものでございまして、大都市にある非常に大きなホールなども含んでいるわけでございます。 そのようなことから、ちょっと内訳を見てみますと、300日以上というものを回答してきたところの非常に多くの部分が国立と私立でございました。商業的にやっているところは、いろいろな形で利用させようということで稼働率を高めておりますので、そうしたところにこれが出ていたものというふうに考えられます。 ○ それでは、自由討議ですが、私から勝手にお願いしてもよろしいでしょうか。 ○ 私のホールというのは、福島県の西北部に会津地方というところがありまして、2市5郡で会津地方というエリアをつくっているわけですけれども、そこに私どもの喜多方市という、今は喜多方ラーメンで全国的に有名になりましたけれども、人口がわずか3万7000人しかないところに15年前にホールができまして、まさに多目的ホールでございます。 それ以来ずっとホールの運営にかかわってきておるわけですけれども、ただいまお示しをいただいた4ページの文化会館ホール運営上の問題点という、ここのかなりの部分をうちのホールでも抱えているんですけれども、私が実際に現場で仕事をしていていつも思うのは、公立ホールを運営していくときに行政という体質が一番邪魔になるというふうに思っているんです。 例えば予算一つにしても法律で縛られていまして、予算の単年度主義というのがあります。4月に始まって3月で終わるというふうになっていますので、例えば平成11年度の事業については、前年度から準備をするには、厳密に言えば議会の議決をもらわないと準備ができないということがあります。したがって、それをきっちり守ろうとすると、4月から始まる年度のうちの4月、5月、6月くらいは何もできない。やっと夏ぐらいに立ち上がってくるというような状況があります。 もう一つは、現場の館長の決裁権といいますか、権限が総じて小さいといいますか、何をやるのでも、自治体、市町村の場合は教育委員会の傘下にあるホールが比較的に多いわけですけれども、そうすると、教育委員会のオーケーをもらわないとスタートができないとか、さらには、議会の承認をもらわないと何もできないとか、そういう館長の上にいろいろなものがあって、それをクリアしているうちに日がどんどん過ぎていってしまうということがあります。 もう一つは、これを言ってしまうと身もふたもない話ですけれども、人の問題があります。一般的には、ホールに働く職員は専門的な知識とか経験が必要だというふうに認識されている市町村長さんがわりあい少ない。ですから一般の行政職と同じような基準で人事異動が行われてしまって、2年か3年のサイクルでどんどん人が入れ代わっていく。そうすると、いつもホールの運営というのはゼロレベルで、そこから上がっていかない。私どもの東北地区なんかでも公立文化施設協会の支部がありますけれども、5月ぐらいの総会に行くと、館長会議なんていうと、全然顔ぶれが変わっていて、会議が始まると「いや、この4月に来たばっかりで何にもわかりません」と、それを毎年繰り返している。それが館長職だけではなくて、一般職まで全部そういう状況です。 これらをすべてひっくるめて行政の体質が邪魔になるということですから、この辺のところをどう払拭するかということだろうと思います。 ○ ありがとうございました。行政との関係で3点、具体的な問題提起がありました。 ○ 数年前に都庁で、知事に諮問をする委員会を、高階さんが座長で、私が副座長で、池辺晋一郎さんとか、いろんな人が集まってやったんですけれども、1年半くらいやりました。それは東京を文化都市にするにはどうすればいいかというので、本当にフリーなトーキングだったんですが、結局、ないない尽くし、あらまほしきという青写真。でも、それはかなり自由に討議できたんです。答申も委員の意見を入れてそのままできました。ところが、都にそれを印刷して配るときは違う版になってしまうんです。つまり白は白、黒は黒とはっきり議論して、それが正確に記録される必要があると思います。それが一つ。 それから、幾つか考えたことがあるんですが、さっきキーワードとおっしゃいまして、価値観の多様化とか、少子高齢化、こういう今はやりの言葉。それはそのとおりなんですけれども、ちょっとでも具体的に考えると、物すごい恐ろしいことが進行しているんじゃないか。例えば、価値観の多様化と言いますけれども、偶然ですが、東京に住んでいるフランス人のジャーナリストが『仮想空間の子供たち』という「おたく」という題がついたフランス語の本が出したんです。「朝日新聞」にちょっと紹介されましたが、それを読んでみたんですけれども、本当にこれは物すごいことでありまして、何十万、恐らく100万という青少年がおたく化しつつあるわけで、しかも年齢がいよいよ下へ下がっていくわけです。「18禁」という言葉があるらしいんですが、映画でも、ソフトでも、18歳以下は見てはいけないという18禁のソフトがいっぱいありまして、ロールプレイングで、例えば恋愛なんかもちゃんとプログラムができる。パソコン相手に、現実の女性と恋愛するように・・笑い話みたいですけれども、それが大変深刻になっているわけです。 現に、例えば麻原彰晃もかつておたく青年だったとか言われますけれども、最近起こった全日空機ハイジャック事件で機長が殺されましたが、あの事件の青年はシミュレーション青年ですよね。つまり飛行機の操縦が趣味。こういうおたく、しかもそれが世界的に進出しておりまして、パリにも、ニューヨークにも、見たことないですけれども、おたく専門のお店、グッズがあるらしいです。日本のソフトは本当にすごい勢いで、つまり文化庁も文部省も認めていない文化が国際交流をやっているんです。それが世界の若い人の歓迎を受けている。こういう事態なんですね。 今は価値観の多様化ということだけを申しましたけれども、価値観の多様化というときに、わかったような気がするけれども、具体的にこういうことを連想して言っていらっしゃるのか、言っていないのか。 例えば公共施設、文化会館がこういう世代に利用されているのかどうか、あるいはこういう世代が今こなくても、こういう世代をどうやったら文化芸術を含めて公共施設に引き入れていくことができるのかということは大変だと思うんです。 もう一つ、少子高齢化でも、自殺者が4万人近い3万5000人。自殺者の統計というのはなかなかないらしいんですが、先進国の率としては最大ではないでしょうか。失業とか、中高年でブラブラして遊んで、絵をかいたり、いろいろやっている人が増えています。だけれども、少子高齢化という簡単な言葉の中に、こういう追い詰められて何の希望もない人たちに、文化施設はどういう対応をするのかということを考えると、物すごい深刻な話で、失礼ですが、官庁の作文みたいに来年5月になって何か出てというようなことではない、日本の文化状況というのは今すごく深刻な危機にあるんじゃないかと思うんです。そういうことを一つ申し上げたい。 それから、文化行政・・日本は、東京都もそうですが、私がやりました諮問委員会も生活文化局と言うんです。地方へ行くと、みんな生活文化局。要するに、生活文化と芸術文化が二つあって、これが混在していて、どこをどうするのか、文化施設というのはどっちを向いているのか、これがはっきりしない。つまり福沢諭吉流に言いますと、もちろん生活文化が要らないとか、そういうことではないんですが、議論の本意をはっきりしないと、文化施設の機能とか運営とか、生活文化と芸術というのは両方大事なんですが、どういう比重で、あるいは文化庁としては芸術文化に重点を置くのか、そこら辺のあれがないとはっきりしないと思うんです。 長くなって恐縮ですけれども、3番目には、独立行政法人というのがありますけれども、素人考えで、皆さん、文化庁の方とか文部省で研究なさっていると思いますけれども、例えばアメリカのハーバード大学にしましても、メトロポリタンにしましても、みんなあれは国立ではないですね。なぜ可能かというと、やはり寄付なんです。 例えば、ハーバード大学の学生が幾ら月謝を払っているか知りませんけれども、アメリカの大学は、私立は、最初にドカンと物すごいミリオネアの寄付がありまして、それで大学ができて、ファンドができまして、卒業生からどんどん寄付があって、それと授業料でやっている。 それから、メトロポリタンミュージアムとか、リンカーンセンターとか、取材したことがありますけれども、これは完璧に民間、あるいはコミュニティがやっていますけれども、それが可能なのは、そういうファンド、財産、それを可能にする税制ですね。毎年毎年の個人あるいは企業の寄付金に対する免税措置ですね。 こういうことが伴わなくて、政府は人が多すぎるから、ただ人数を減らせというのは芸術文化から言えば外在的な問題でありまして、それの一環として、つまり文化施設そのものがよくなるために民営化するとか、独立法人化するという発想で着手されるならいいんですが、外から来た理由で人減らしをしなければならない。それも必要なんでしょうけれども、それだったら、同時に物すごい意欲的にそういうことを可能にする税制上の検討をしなければ、いかに議論をしても、お金が足りないとか、要するに、それこそ21世紀へ向かっての基本構造ができないのではないか。 まだいっぱいありますけれども、その辺でやめます。 ○ ありがとうございました。 3点ご発言がありましたけれども、皆様からそれぞれご発言を賜りたいので、私からお願いですけれども、ここにいらっしゃる委員の皆様方は、短い言葉から膨大なパラダイムを読み取ることのできる皆様ばかりでいらっしゃいますので、私の横暴な3分ないし5分というのをどうかお許しください。 ○ 一般論になって恐縮でございますけれども、先ほど来、価値観の多様化、高齢化、少子化といったことが言われております。恐らく今後の社会は、生涯学習社会、余暇社会、あるいは福祉社会といった方向に次第にシフトしていこうとしてるのではないか。また、多様化、個性化、専門化、情報化ということをバックに、ソフト化社会、あるいは専門化社会、さらにはハイテク社会といった状況が今後、特に21世紀において大きな比重を占めるのではなかろうかと思われます。 そういった状況を考えますと、これからの社会における個々人には、よく言われていることですけれども、自己実現ということが非常に重要なキーワードになってくるのではなかろうかという感じがいたします。 もっとも70年代の終わりから80年代にかけましては、それまでの経済効率一点張りへの反省として、人間性の回復といったことも言われておりました。21世紀におきましては、人間性の回復ということよりも、さらに一歩進んだ個を中心とした自己実現ということに帰着するであろうと思われます。結局のところ、それは文化への志向といいますか−スポーツもありましょうけれども−文化に凝縮をしていくであろう。そうしますと、行政に対して、文化的な環境の実現ということが強く要請されるであろうことが推測されます。 文化的な環境を実現するということは、とりもなおさず、地域の課題であると言えます。つまり地域住民の日常の生活圏の中で文化をいかに享受できるか。そういった環境といいますか、条件整備が必要になってくるわけです。 それにはハード面とソフト面の両面があります。両者ひっくるめまして、まちづくりとかアメニティといったような言葉で言われておるわけですけれども、ハード面のことはさておきまして、ソフト面に関して考えますと、地域の人たちには、一方に平均的な水準の文化を確保し、維持してほしいという要請があろうかと思います。そして、他方では、それをベースにした地域の独自性といいますか、特色のある文化の開発といったことがもう一方の要請としてあるものと思います。 前者の平均的な水準の文化といいますのは、日本全国に共通的・普遍的なものというとらえ方ができるでしょうし、もう一つの特色ある文化は、普遍性・共通性の反対概念としての独自性、固有性ということになろうかと思います。いずれにしましても、その両面性を備えた地域の文化的な自律性というものが求められているものと思います。 さて、それを文化会館に引き直して考えてみますと、会館そのものは、一種の物的な施設でもあるわけでして、ハード面におきましても、町といいますか、地域の景観の一部分を形成しており、それを引き締めたり、あるいは際立たせるといった側面があろうかと思います。すなわち、地域のシンボルとしての存在といえます。 ただ、それにソフト面が伴わないと、無用の長物になりかねません。ソフト面に関しては、文化会館は、町に潤いを醸し出すと同時に、そこに文化的な活気をもたらすという機能があろうかと思います。言うなれば、そこに人を集め、行動文化を醸成する拠点であるといえます。 いずれにしましても、文化会館につきましては、地域の文化的な自律性を確保するための非常に重要な施設であるということは言うまでもないところといえます。ただ、文化会館に関しても、先ほど申し上げました普遍性・共通性に対するニーズと、地域固有の舞台芸術の創造と発信、この両面をいかにして調和させるかということが必要になってくるであろうと思います。ただ、これは非常に難しい事柄といえます。それは会館が立地しております地域の事情ということもありましょうし、その地域の歴史的な経緯ということもあります。したがって、十把一からげにこうあるべしということはなかなか難しい。すなわち、その土地土地といいますか、地域地域の実態を念頭に置きながら、一方では普遍性・共通性を志向するという側面があってもよろしいでしょうし、立地条件いかんによっては創造性の方向に特化するということがあってもいいのではなかろうかと思われます。 ただ、いずれにしましても、最終的な目標は、地域独自の文化を醸成し、創造し、それを発信するということにあろうかと思います。しかし、そこに至る過程といいますか、道筋にはいろんなステップがあるのではなかろうか。そのため、一挙に事を最終目的に持っていくのではなくて、段階を踏んで最終目的を達成するということが必要であろうと考えられます。このことが直ちにそれぞれの館に当てはまるかどうかよくわかりませんけれども、いずれにしてもステップを踏むということが必要ではなかろうかと思います。 特に、創造の面に関して申し上げますと、先ほど都の文化行政は生活文化局というお話もありましたが、すなわち、教育委員会系列では、どちらかというと芸術文化的な視点が中心になっており、それに対して首長部局の方は生活文化的な視座というものが大きな比重を占めている。その両者の間で、文化会館は法的なバックグラウンドもないので、大変バランスを欠いた状態となっている。このような話しもございます。 文化会館の場合、舞台芸術を中心とした芸術文化それ自体を志向するか、それとも地域コミュニティの核として機能するか、このことは非常に重要な問題です。芸術文化それ自体を志向する場合は、創造型と言うことができましょうし、地域コミュニティの核として機能する場合は、地域住民がこれに参加するという意味で参加型という色分けができます。 創造型の場合には、成果としての完成度の追求ということに向かっていくであろうし、参加型の場合には活動それ自体に価値を置く。したがって、前者はどちらかというとプロ志向になるであろうし、後者の方はアマチュア型になっていく。いずれにしましても両面を調和していくことが必要であろう。その際に必要なことは、創造のプロセス自体、過程自体を重視していくということが、一般的に会館に求められるのではなかろうか。それによって、究極的には地域の文化的な自律性というものを確保し、地域文化の創造と発信を図ることにつながってと言えるのではなかろうかと思います。 会館運営の在り方をどう考えたらいいのかということについては、先ほどの発言にもありましたように、経営的な側面といいますか、マネージメント性といったことを会館もこれから強く認識しながら、運営を図っていく必要があります。その際に、圧倒的多数は公立の文化会館であるわけですので、地域経営全体の中にどう位置づけるかといったような総合的な物の見方が必要と思います。そして、それを踏まえた上で、会館独自の経営的な視点を考える必要があるのではないか。言うなれば、行政、地域住民といった外部関係者から、会館というものが相対的に独立性を保ちながら運営を図っていく、こういう認識が必要なのではなかろうかという感じを持っております。それを行うため必要な経費、人材の不足ということが従前から言われておりますが、これらを行政に一切合財おんぶすることは、とても不可能であろうかと思います。その際に活用できるものということになりますと、人材面についてはボランティアがありましょうし、経費に関してはメセナの取り込みが必要なのではなかろうか。また、先ほど創造のプロセスを重視すべきだということを申し上げましたけれども、ということは、そのためのノウハウを会館独自に蓄積していくということが必要なのではなかろうかと思います。 具体性のないことで恐縮ですけれども、一般論として、とりあえず以上のことを申し上げたいと思います。 △ どうもありがとうございました。 来年の5月ぐらいまでの道筋をおっしゃっていただいたような気もいたしますが、それぞれの先生方、ご見識で、論議の組み立て方や何かご提言があると思いますが、本日は特に皆様方各自の現場から、問題のきっかけといったようなご発言で時間を切り詰めさせていただきたいと思います。 ○ 二つだけ言います。 僕は94年から97年までローマで日本文化会館の館長をやっていました。あれは国際交流基金の出店で、国内の地域文化会館ではなくて、国の文化宣伝の機関ですから、一寸事情が違いますけれども、そこでいろいろなことを見たり聞きました。その中で、国レベルで文化庁はいろいろやっておられるけれども、伝統芸術を持ってきて観せます。すると出てくるのは、これは日本で今やっていることと、どういう関係があるかという問題です。それは文化財・古典伝統芸能はもちろん保存中心だから、化石を博物館でとっておくというのは文化としても大事だと思うけれども、基本的には現代的に何か通用するようなもの、日本人が実際にやっているものをつくらなければしようがないので、やっぱり創造というところに向かわないとダメだという気がするんです。 創造はプロで、一般が参加だというのは、ちょっとおかしいので、シェイクスピアだって、だれだって、素人芝居から始まってだんだんプロになっていくわけです。その間のところを考えなければしようがないんで、いつまでたっても両方に分かれて水と油でやっていてはどうにもならないということが一つ。 もう一つは、文化庁が今度、国立の第二劇場をおやりになったけれども、いよいよやることがなくなってきて、国だけじゃなくて公立の方まで乗り出してくるのかなと思いますが、実際はそう簡単にはいかないんで、国の問題だけでは片がつかないし、国が地方に余り口を出してはいけない。だけれども、お金を出して口を出さないというのはかえっていけないので、やっぱり国としてはこうあるべきだという具体的なことではなくて、大きな方針を掲げて、それをおっしゃるのはいいと思うんです。だけれども、ああやれ、こうやれというのは、文化事業は、その地方の特殊性にのっかっているわけだから、それに口を出すということはやらない方がいいと思います。 僕はその二つだけ申し上げて、また別のときにゆっくり・・。 ○ 唯一の子どもの現場にいる者として発言させていただきたいと思います。 毎日の生活の中で、少子高齢化、価値観の多様化、全部学校に当てはまるなと感じているところなんですけれども、2002年(平成14年)に向けて、学校完全週5日制ということで、子どもたちが地域に帰る機会がたくさん増えるわけです。その中で、学校教育はこれからどうあるべきか、地域としてはどうあるべきか、家庭はどうあるべきかというところを今考えているところで、文部省では「生きる力」というところの生き方の教育の部分について非常に打ち出してくださっています。私は横浜なんですが、横浜でも文部省の答申を受けまして、新しい横浜をつくろうじゃないか、新しい横浜に活動できる子どもたちをつくろうというので、「新横浜教育プラン」を策定したんです。 その中では、子どもたちが生き方を勉強する。生き方の教育を一緒に考えることが大事じゃないか。それとしては、学校だけではだめだ、親も地域も一緒になって考えましょう、一緒になって地域の子として育てていきましょうという発想を持って今研究しているところなんでが、さてさて現実を見ますと、なかなか難しい場面がたくさんあります。 一つ言いますと、横浜は非常に大きな学校数がございまして、小学校ですと347、中学校ですと145、高等学校は養・聾・盲を合わせますと500以上の学校があるんです。今まで5日制が入らないときには、心の部分で、専門家の方をお呼びして芸術鑑賞教室、芸術祭をやっているようなところもたくさんあったんですが、5日制が入ってきたことにより、そこが真っ先に削られてしまって、学校ではとてもそういうのができないような状況が起こっております。 それから、少子化が非常に進みまして、単級という学校も随分出てきておりまして、とても自分の学校だけではお呼びすることができない。ヒト・モノ・カネのお金の部分ですが、とてもできないというようなことで、そちらの方の芸術鑑賞会を学校で行うことは難しいという状況が起こっております。 そこで、私は委員会にいるときにお願いして、いろんな子どもたちが今心の問題でつまずいている部分があるんじゃないか。そこで、できれば小さいときにできるだけ本物のよいものに触れさせておくことが一番大事じゃないか、教えるというのではなくて触れることが大事じゃないかということで、やっぱりひっかかっているのはお金のところなんですが、「ふれあいコンサート」を横浜市のある学年・・1時間以上聞ける学年というと、5年生か6年生かなということで、全市の5年生を対象に、おかげさまで「みなと未来」に大きなホールができましたので、そこのホールを使わせていただいて、一流のところで一流の音楽に触れ合うということを試みているんです。結果的には、それはまだ発表できるまではいっていないんですけれども、そういうところも大事じゃないか。何かの文化にかかわるところ、施設はおかげさまで能楽堂等々あるんですけれども、実際にはお金のところでひっかかってしまうんです。ですので、そういうところと行政とがうまく連絡、あるいは市の第三セクターとかにうまく連絡しながら、子どもたち、地域の人たちがもっともっと活用できるような場面をいっぱいつくったらいいんじゃないかなと考えております。 校内では、合唱コンクールとか、文化祭に向けた演劇発表とか、いろんなところで取り組んでいるんですが、まだ出掛けていくところまではいけない部分がありますので、これから学校ももっともっと開いて、そういうところに進出するのはいいことじゃないかなと考えております。 まとまりませんが、失礼いたしました。 ○ 私も、全国全部を見せていただいているわけではないのですが、幾つか拝見させていただいたところで考えますと、何のための文化施設かということが認識されていないということが一番の問題だと思います。いただいた資料にもございますように、技術の専門スタッフもいない、芸術専門家の登用もほとんどのところがない、常勤の技術者がいない、養成・研修もしていないところが大部分だということは、何のために文化施設をおつくりになって、何のためにそれを生かそうとしていらっしゃるのかということが一番不足しているのではないかと感じております。 もう一つ、最終的には、4ページにもございますように、住民の芸術文化に対する関心が薄いというのがございますけれども、大体、広報に自治体の広報誌を活用していますね。公立の文化施設は広報活動に対する費用がないそうです。だから広報活動はできない。PRはできないんですということをよくおっしゃいます。 自分を鑑みましても、港区報とか参りますけれども、これは私も余り見ません。多分、自治体のものを利用されていても見られることが少ない。広報活動にもう少し工夫があれば、最終的には地域の方々の理解を得ることができるのではないかと思います。 皆さんご存じの方がたくさんいらっしゃると思いますが、ハーレムにハーレム芸術学院というのがあります。それはハーレムの公共学校に芸術教育というものがないためにできたものなのですが、今ではパブリックスクールはそこを利用して芸術教育がされているそうです。ハーレムの子どもたちは取材に対して、「自分たちは今までは自己表現は暴力でしかなかった。それよりも音楽をしたり演劇をしたりすることの方がはるかに楽しい。こういう自己表現があるということを知った。」と言っていました。最初はある黒人のオペラ歌手、それから企業が支援して続けられてきたのですが、今ではそういうところを親たちは断って、子供たちのために自分たちのお金で続けています。1960年初期のスタートですから、30年以上になります。そこまで育ってきているということだと思います。 そういう意味では、日本はまだスタートしたばかりです。どこかがお金を出す必要があると思いますが、先ず何のために必要なのかということが一番大事ではないでしょうか。文化庁も国も自治体も含めて、その辺を最初に考えていただきたいと常々感じております。 ○ 今、お話のあった何のための施設かということが一番大事だということを私も申し上げたかったんですが、基本的には、そろそろ本音と建前をきちんと一致させることが必要だろう。 まず、公の施設の概念に対して、あるところではそれとはっきり訣別したり、あるところではそれと手をとっていくというところをかなり明確にしないといけないと思います。特に多様化の流れの中では、条例の設置が非常に大事だと思うんですけれども、その条例の設置がみんな右倣えですね。それから、地方自治法の教科書に典型的な公の施設として載っているのが文化施設。これが僕は一番最悪の状態だと思っておりまして、ここのところはやはり切り込んだ方がいいだろう。 そのキーワードは芸術と公共性との関係だと僕は思いますけれども、そのときに、芸術家が公共性に対してほとんど意識がない状況を少し何とか考えていかなくてはいけないだろう。もちろん、地域の人たちの公共性の在り方というのは多分変わってきておりますので、この辺は公共権というような社会学の領域でかなり議論されていますので、その辺のところへ少し踏み込んだ方がいいかもしれないと思います。 あと細かい運営の話は全部飛ばしますが、唯一私がハード系でいるものですから、ハード系は今は古いと言われておりますが、本当に古くなっておりまして、30年ぐらいたってどうしようもないホールがやたら増えております。お金がなくて建て替えられない、あるいはそれをどう活用するかわからないというものがあるので、その老朽化・・かなりいい使い方がたくさんできると思いますけれども、古い施設をどう使うかということもかなり大きな視点かなと思います。 もう一つは、福祉政策が最近かなり脚光を浴びていますが、芸術文化と福祉の関係をやはりきちんと考えた方がいいだろう。特に介護保険法等々で、いろんな福祉サービスが行われますが、例えば老人の機能回復で絵を描いてみるとか、演劇をやるとか、そういう部分がかなり最近強く望まれていますので、その辺の視点もいいだろう。 それから、民間のホールが今汲々としておりまして、名古屋周辺でも閉じるか閉じないかという話が常に出てきております。東京でもかなりいろんなところが閉じようとしております。そういう民間の施設の舞台芸術、あるいは芸術文化に対する在り方というのも何か考えていかないといけない。 大学については、私ども総合大学におりまして、先ほどの独立行政法人の旗振り役をうちの総長が務めたりしていますので、その関係でもいいんですけれども、やはり総合大学の文化が非常に弱いですね。芸術文化系が非常に弱くて、それは芸術系大学の仕事だというふうに今までずっと割り切ってきましたけれども、博物館構想とか、いろんな構想が出てくるわりには、芸術文化系の在り方が弱いだろうなと思っています。私立の大学では、芸術系はかなり頑張っておられますが、そこも多分なかなか厳しい状況にあります。公立系の施設は非常に弱くなって、特に工学部におりますと、教養学部が解体したこともありまして、芸術文化の話がほとんど入ってこれない状況になって、そういうことも多少気になっています。 ○ 私どもの財団は、自治体の文化施設の活性化などを通じまして、「感動と出会えるまちづくり」と言っているんですけれども、そういった形でソフト面のまちづくりのいろいろな活動を活発にしていこうという一つの考え方で、微力ながらいろいろとお手伝いをさせていただいております。 そういう視点からしますと、今後、公立の文化ホールなり、劇場なり、そういった公立文化施設が地域コミュニティの一つの活動の拠点といいましょうか、全体的な広場機能的な意味を持っていただけるような形に高めていくということが、一つの方向性じゃないかなと思っております。 そういう視点で現状をいろいろ見ますと、先ほど来お話が出ておりますように、また、きょうの資料にもありましたように、最近では大変立派な活動を維持できる公立の劇場なり公立のホールもたくさんできてきているんですけれども、たくさんある中で、中小の標準的な公立文化施設というのは、私どもはよく言いますけれども、予算、人材、ノウハウという経営ソフトが非常に不足しているということもよく指摘されております。そういったものをこれからの議論の中で、例えばネットワーク化を促進するというのも一つの方向性だろうと思っておりますが、そんなような形の中で支援をしていきたい。一つは、そういった形の中で、地域の市民を巻き込んだ形での主体的な、オリジナルな文化活動の動きをどんどん活発化していくという意味でのお手伝いをこれからもしていきたいと思っております。 管理運営面ではいろいろな問題点がありますが、きょうはお話を省略します。ただ、最近の動きの中で、確かに制度や行政の制約はありますけれども、民活型の施設ができたり、市民参加型の金沢の芸術劇場的な市民ボランティア管理型のものができたり、先ほど清水先生が公の施設の問題点も言われましたが、確かに問題点はあるんですが、その制度の中で劇場付き劇団といいましょうか、専用劇団の独占的な利用を図るような条例をつくった自治体も出てきておりますし、いろんな萌芽といいましょうか、多様性の芽があちこちに出てきておりますので、そういった多様な使われ方、多様な活動をできるだけエンカレジしていくということが、我々としても必要じゃないかなと思いながら考えておりまして、また、いろいろ個別各論では議論させていただきたいと思っております。 △ 実はきょうは13時までということにさせていただいております。文化庁さんの方で、昼食の用意もしてくださるそうですけれども、ただいま12時ごろですので、できましたら12時15分ぐらいまでにお四方のお話を伺えればと存じます。 そんなことでよろしくお願いします。 ○ 今後の議論に期待することを3点だけ挙げさせていただきます。 1点目は、先ほどお話にありましたことなんですが、私たちが検討しようとしている課題の文言、あるいはカテゴリーについて、従来の行政用語と現実が非常に乖離してきている、あるいはそごを来している面がある。ですから、文化施設という言葉自体についても、行政のカテゴリーと実際とが随分ずれてきているのではないか。そういうことを背景にして、もう少し一歩下がった上での文化芸術行政の在り方、あるいは政策の在り方の大きなターニングポイントを迎えているのではないか。その意味からは、非常に時宜を得た研究会だと思うので、ぜひ実質的な成果を何か提言できるような会にしていただきたいというのが一つ。 二つ目は、あとは具体的には多分公共施設の役割分担の問題が大きな問題としてあると思います。これは規模の役割分担、あるいは国、都道府県レベル、市町村レベルという所管の行政の問題もありましょうし、役割分担についてもう少し検討ができればと。 もう一つは、公共施設の新しい役割についての検討だと思います。これは具体的に事業内容ということになると思いますが、特に近年、教育プログラムとか、アウトリーチプログラムと呼ばれているようなプログラムについて、従来なかった公共文化施設の仕事として、新しい分野として考える必要があるだろう。 以上3点を話し合いに期待することとして今日は挙げさせていただきます。 ○ いろんなことがあるんですけれども、私が今一番思っているのは、運営とか企画のチーム力が上がれば、いろんな面白いことが起こり得るのではないか。そこに投資をしないと、活性化というのはなかなか進んでいかないんじゃないかなという気がしています。 公立文化会館とは全く違うんですけれども、幾つか例を挙げると、杉並の児童館で、名前は失念してしまったので、ユー杉並と言ったかと思うんですけれども、東京の中に児童館なんかがあって、運営していけるのかどうか。大体のところはさびれているんですけれども、そこのユー杉並は物すごく活気がありまして、何でかというと、そこはいつでもどんな形でも集まっていいというふうにしたんです。つまり児童館が持っている何歳までは何時とかいう細かい規則を全部撤廃して、だれが何時にどんなふうに集まってもいいという広い部屋を一つ提供していったら、みんなが適当に集まって話をしたり、トランプしたり・・よくトランプをしてはいけないとか、何とかしてはいけないという禁止事項があるんですけれども、そういうのを全部なくしたら、悪の巣窟になるんじゃないかというので、みんな物すごく心配したらしいんですけれども、結構皆さん健全にお集まりのようです。つまり集まると、すぐゲーセンとかコンビニの前で地べたに座っているとかいうことばかり想像してしまうんですけれども、行き場がないから、ああいうところに行ってしまうということもあって、行き場をつくったら、結構そういうところでトランプをしたり、話をしたり、文化祭の打ち合せをしたりということが行われているようなんです。 あとは、そこの施設に録音スタジオみたいなものをつくって格安で貸し出したり、いろんな講座もあるんですけれども、普通だったら児童館でやらないようなメイクアップ講座とか、ボーカルのカラオケ講座とか、そういうようなものもつくって、そこも結構人気がある。ここは児童館なんですけれども、企画運営のところに少し斬新なものを入れた途端に、突然、児童館が今までの児童館ではなくなって、でも児童、学童がいっぱい集まるようになった。 それから、世田谷区の公園ですが、これはボランティアが運営しているんですけれども、ここも公園の禁止事項を全部なくしまして、火を使ってもよくて、音を出してもよくて、ボール投げをしてもよくて、全部いいことになっているんです。だからノコギリとか金づちとか、そんなものも置いてあって、木っ端みたいなものも置いてあって、勝手にみんなで何かつくってもいいし、ドラムが置いてあって、そこでガンガンたたいて、近所の人が迷惑なのかなと思うと、時間を決めているので許すという感じで、近所とのコンセンサスもとってあるんです。それから、火をつけて遊んでもよい。そのかわりボランティアが常駐していて、そこで絶えずレクリエーションの指導をしているという形の公園。ここも公園としてはとても不思議な公園なんですけれども、子どもがとてもたくさん集まっている。 全然関係ない児童館と公園ですけれども、運営とか企画というのも、何かしらの概念を外せば、まだまだ新しい方法というのはあるんじゃないか。だからこういう公立文化会館のようなものも、企画運営力というところにもう少してこ入れをすると、何か起こり得るのではないかなという気持ちを漠然と持っています。 ○ それぞれの委員の皆様方からいろいろご発言がありました。特に「子どもに本物を」というのは同感でして、その分野で、次の機会か何かあれば、またうちの取り組み方、思いというものを発言したいと思います。 ただ一つ、私は委員というよりも、理事者側になってしまっていかんですけれども、行政が邪魔をするという話はよくわかる話でして、私どものところも、そういった行政・・議会もそうですけれども、単年度予算の原則がありまして、予算外義務負担ということは議決が必要になるということで邪魔をしているのは確かです。ですけれども、私の方は、文化協会を財団にしてもらって、そこに管理運営から企画を全部任せております。コンサートホールでも、いいものをしようとすると2年か3年前に決めないとやれないわけです。それを一々市の方ではできないということで、財団をつくって、財団に肩代わりしてもらって、そこで企画運営を全部やって、あとは行政が責任を持つよということで、そういう形で財団にお願いして、うまくやっているというのがうちの一つの方法なんです。 これから運営の問題で、また、その辺のところを論議していただければと思います。 ○ 皆様のお話はそのとおりだと思うんですが、一つ、最終的なまとめ方として薄巻きにしてほしくないという思いがあります。それは先ほど何人かの方のお話にありましたように、それぞれの地域で違った性格でやっております。例えばボランティアを使えばいいというものではなくて、ボランティアを使ったらいいというところもあれば、ボランティアは使わない方がいいという会館もあるわけです。例えば危険性の大変大きいびわ湖ホールのようなところでは、ボランティアというのはやめたいということもあります。ですから、薄巻きにしてほしくない。非常に多様な例があるんだということを入れてほしい。 そのために、一つの工夫なんですが、まとめとしての一番最後に事例を幾つか入れていただいて、小さなホールでボランティアを入れてすごく頑張っているところ、大きなホールで、国立並みまではいかないけれども、一生懸命頑張ってやろうとしているところ、子どもたちのためのプログラムを一生懸命やっているところ、いろいろなすばらしい例があると思いますので、そういうものを事例的に入れていただいて、地方の小さな会館というのはみんな四苦八苦していますから、それを読んで、こういう工夫もあるんだなということが参考になるような例をレポート風に入れていただくと、とてもいいんじゃないかなと思います。 あと2点だけ、私は図書館、美術館、博物館、ホールといろいろなものを立ち上げて、運営を回す仕事をしてまいりましたけれども、文化会館というのが一番苦しいのは、いわゆる司書・学芸員がいないということですね。残念なことに、図書館の館長の司書資格が取れてしまいましたけれども、これからの地方自治体においてはプロというものが非常に必要だと思っております。プロの運営ということを強調するということがとても大切なので、なぜ文化会館がなかなかうまくいかないかというと、専門的な資格・・みんな工夫して、音楽学芸員というのをつくったりしていますが、図書館、美術館、博物館とやってきた結果、一番難しいのはここだなと。プロが期待されていないというか、育っていないというところだなと思っております。今後、いろいろな工夫をしているところがあると思いますので、教えていただければいいなと思っております。 最後に、資料にいただいたものの8ページが象徴的にあらわしていると思いますが、管理運営費と文化事業費。ただ単に建物があるだけで、管理運営費が2400億要るのに、事業が771億で、3対1なんです。ここのところは、何のために文化施設をつくったんだろうかというのが象徴的にあらわされておりまして、少なくとも同じぐらいの金額が欲しいなと思っているんです。財政が苦しい中で、日々、闘い取るべく現場で頑張っているんですが、ここのところが一番大きな問題点じゃないかなと常々思っております。 ○ ご発言にご協力いただきまして、本当にありがとうございました。 長官、何か。 △ 大変ありがとうございました。 ご発言の中で、文化庁は何を考えてやっているのかねというところは、もう少しご説明をしておいた方がいいのかなという感じがしましたので、あれですが、確かに文化会館というのは一体何なのかねというところなんだろうと思います。結局、公的な文化政策というのは何なのかね、何をやるつもりなのかねというところだろうと思いますけれども、正直言って、文化庁そのものについても同じようなことが言えると思います。 これまで文化庁の予算の4分の3ぐらいは文化財保護だったのが、3分の2ぐらいになってきて、いわゆる芸術文化支援活動が少しずつ増やせるようになったということなんですけれども、それだって、結局、文化財保護で三宅坂の国立劇場は30年前にできたんですけれども、初台にあれをつくるにはやっぱり30年かかったということがあって、それは日本のそういうものに対する期待というか、役所もここまではある程度やっても許されるといいますか、応援してやろうという感じにようやくなってきたんだろうと思うんです。公立文化施設についても、正直言って、主として芸術家の皆さんがおっしゃるのは、建物はつくったけれども、貸しホールとしてしか考えていらっしゃらないじゃないですかということなんで、そういう意味では、多分地方の行政ないしは政治レベルでは、まだまだそういう意識が強い面があるんだろうなという感じがしております。 したがって、文化庁も、正直言って、諸外国に比べるとまだまだだと思います。いろんな面で、アメリカ型か、フランス型か、どっちかは別にしても、今の予算のレベルから何からしますと、まだまだのレベルにあるということは事実なんですが、ようやく少しそういう方向へ進められるようになってきたかなと。しかし、これは国だけでやっていては、全体のレベルアップにはならないというのが我々の問題意識で、したがって、国がやるべきことというのは、一番典型的なのは、地域でも国と余り変わらないような鑑賞の機会が持てるようにすべきじゃないかとか、人材養成はどうかとか、子どもにいろんな鑑賞の機会を与えることはどうかとかいうことが、かなり早い時期から理解が得られて、そういうことについてはこれまでもそういうプログラムがあるわけですけれども、じゃ公立文化施設に対してどういうことをやるべきなのかということについては、まだそれこそ発展途上のような状況かなという感じがしています。 しかし、別に地方を支配しようとか、コントロールしようとかいうつもりは毛頭ないわけでして、特に芸術文化の面では、どう考えてもバックアップの担当をするのが我々の仕事で、お求めのあるところにバックアップできることがあればお手伝いしましょうという基本は、国のレベルでもそうですけれども、特に地方のレベルで、今のように国と地方の役割分担が決まってくると、逆に言えば、地方向けの予算というのはなかなか取りにくいというのが正直なところなので、我々が大きく予算を拡大していくのは難しい分野だと思っております。しかし、せっかく使っているものを効果的にどんなところに使えば意味があるのかねということは、我々にとっても問題なんで、そのあたりを特にそういうことでご苦労なさっている皆さん方から伺って、少し変えていくなり、比重を変えていくなり、こんなことをやったらということがあるようであればやっていったらと思いますし、文化庁は何もそんなことをやる必要はないという結論もあり得るのかもしれませんから、それはそれでよろしいと思いますけれども、そんな気持ちでやっているわけですので、ご理解とご協力をお願いしたいと思います。 ○ どうもありがとうございました。 これで資料4の説明と次回のお話をということでよろしいんですか。 皆様方のただいまの自由なご発言で、極めて重要な提言、また我々同士が話し合うべき課題が出てきましたので、また事務局にもお願いして、個別の課題に弁別しながら組み立てていきたいと思っております。 それでは、事務局の方から今後の進め方についてご説明いただけますか。 △ 今後の進め方につきましてご説明申し上げます。 資料4をごらんになっていただきたいと思います。本日第1回目で自由討議をさせていただいているわけでございますが、第2回目は、既にご案内もさせていただていておりますが、10月4日に再度自由討議ということでございます。そして3回目以降からは、そこでちょうだいいたしました意見をもう少し整理いたしまして、個別の課題ごとについて討議をしていったらどうかと考えております。そして3、4、5、6という4回のうちの最後には、全体を総括してもう一度全般的に言い足りなかったこと等がおありになるかとも思いますので、総括の討議をしてはどうかということでございます。7回目からは、骨子を見ていただきまして、そして素案、案という形で進めることにしてはどうかと考えております。 時期のことでございますが、先ほど来からいろいろ触れられておりますように、1年間の議論ということでスタートしておりますけれども、いろいろな提言、それを実行するにはどうしたらいいか等々のスケジュールを考えますと、やはり春ごろにはおまとめをいただければいいかなと。4月とか、5月とか、そのくらいにはおおむねおまとめいただいて、時期を見て報告書を私どもちょうだいすることになるのかなと考えている次第でございます。 △ ありがとうございました。 それでは、時間が参りましたので、昼食をいただきながら、またきょうの今のお話をお続けいただきたいと存じます。 そこで、次回につきまして提案させていただきますが、ご出席の委員の数名の方々から、具体的な活動、取り組みについてご報告、ご紹介いただくということを次回には含ませていただきたいと存じます。そこで、びわ湖ホールの副館長でいらっしゃる上原委員、豊田市長でいらっしゃる加藤委員、世田谷パブリックシアターのディレクターでいらっしゃる佐藤委員、喜多方プラザ文化センターの館長でいらっしゃる山形委員、お四方に、次回ご活動の紹介その他、お話をちょうだいしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○ 先ほどお話の出ました文化庁と公文協が共同で行っていた事業などもありまして、例えばマネージメントの研修とか、そういった関係について、長官あるいは千葉さんの方から、その辺のお話をいただきたいと思います。 △ 文化庁として、地域文化を応援するチャンネルというのは何だろうかなと思って、いろいろ考えておりますもので一番大きいのは、やはり公立文化会館ではないかという理解で、ここ数年いろいろご相談をして、先生のところの公文協さんと共同でできることはなるべくやっていこう。その辺はある程度予算も取りやすいということがありますので、やってきておりまして、特に人材養成とか、芸術情報プラザと言って芸術団体と公立文化会館のチャンネルをつなげるような活動をやるとか、公文協の方に専門家を置いていただいて、いろんなご相談に応じて、いろんな企画なんかについてのアドバイスを差し上げるとか、情報センターをつくっていただいて、活動情報とか施設情報を出していただくとか、そんなことを進めさせていただいて、ご協力いただいていて、わりと着実に進んでいるんじゃないかなという感じがしておりますが、具体的に何かお話がありますか。 △ 私どもで公立文化施設協会にお願いしてしていただいている事業としては、今、長官からご紹介がありました芸術情報プラザ事業というのがございます。それは平成7年度から実施しているものでございまして、次の四つの点が事業内容としてございます。 一つが、芸術家、芸術団体の公演情報提供事業でございまして、公演事業に関する資料を作成配布したり、パンフレット・チラシを収集して配布するというものでございます。 それから、アートフェア、芸術見本市の開催ということで、各芸術ジャンルについて、公立の文化施設の職員の方々、すべての方々、例えばいろいろな分野ごとにについて、どんな芸術分野なのかということを、非常に基本的なことになってしまうんですけれども、必ずしもよくご理解していない方もいらっしゃるということもありましたので、理解を深めるためのビデオの製作をするとか、自主事業に関する様々な問題についてのフォーラムの開催とか、また詳しい人間がおりますので紹介させますけれども、そういう事業がございます。 また、マッチング事業という形で、様々な芸術分野に関して非常に詳しい人間をアドバイザーとして置きまして、その人間が、公立の文化会館からいろいろな問い合わせがあったときに、例えばこういう事業をやるんだったら、実際にこういうような公演団体がありますよとか、そういうアドバイスをするという事業もやっております。 それから、先ほどもご紹介がありましたとおり、公立の文化会館についての管理運営に携わる職員を対象としたアートマネージメント研修とか技術職員の研修、こうしたものもプラザ事業として行っているところでございます。 公立文化施設協会にお願いしてしていただいているんですけれども、さらに何か・・。 △ 公立文化施設協会は昭和36年に任意団体で発足しまして、文化施設は、次々に高度成長に乗って、文化庁からの公的施設に関する補助もできたということがあるわけですけれども、昭和36年に集まったときは23団体といいますか、23館と言っていいだろうと思いますが、それが年々増えまして、平成7年に社団化しましたときに既に1180できておりました。その後、入退会ということはあるにしても、現在は1345施設が集っております。 規定としては、舞台面を持って、そういうところで芸術文化の公演が行い得る施設という非常に緩やかな定義ですので、中には公民館、あるいは図書館という名前で舞台を持っておられるところも入っております。 今、私どもとしては、これだけ集まってきて、じゃこういった力が何をしなければいけないのか。予算もなくなってきまして、こういうところに入っている会費も切られそうなので、何とかしてくれという話がよくあるんですけれども、大切なことは、社団ですから、何かをその組織にしてもらうというよりも、自分たちが集まって何をするのかということが大切なんだろうということを基本に今進めています。 そういう中で、きょうも何のためにという論議があったんですけれども、僕自身が事務局を仰せつかって一番感じておりますのは、公立文化施設がどこまで認知されているんだろうか、その活動が国民にどこまで理解されているのか、その辺のところが・・私ども集まっている組織ですので、今大きく掲げたいと思っているのは、何をやっているのか、適切に知らしめる。集合体として、公立文化施設は今こういうことをやっている。そして現在は情報公開の時代でもありますから、問題点も含めて、国民の前に多くの情報をさらけ出す努力をしなければいけないんじゃないか。そういう中で、緊張関係も恐らく生まれてくるであろうということを大きく考えております。 それから、議論にありましたように、公立文化施設の場合、どうしても職員が異動してしまう。したがって、そういう中で基礎的な研修みたいなものを常に行わなければならない。これはどのような組織、行政体、様々なジャンルでも必ずあることでありまして、公立文化施設だけがそういう研修が必要だということはどうなんだろう。確かに扱っている芸術文化のジャンルというのはあるわけですが、私が常に公立文化施設の職員に言っているのは、私は音楽は詳しくないとか、演劇は詳しくないとか、みんな結構気後れしているところがあるんですが、そうではないだろう。地域に関する専門家であって、様々な行政経験を積んでいるということが、むしろ武器ではないだろうか。私は行政の人間ですから、地方分権とか地域の個性化とかいうことを考えたときに、それはひょっとしたら大変な武器になるんじゃないか。その武器をどう磨いて、芸術文化との間でいい緊張関係をつくっていけるのか、そういったことを少し考えてもらいたいし、そんなような組織にしていきたいなというふうに思っています。 それは、社団法人の運営、あるいはそういう中での問題点の克服を少しずつ考えているということなんですが、事業に関しては、ここのところ、日本国際音楽コンクールが中止になったり、カザルスが自主事業ができなくなったりという中で、公立文化施設の自主事業が全然元気がなくなっているだろうという話なんですが、きょう委員の先生方からも出たように、様々なところで様々な工夫をしている。少なくとも公立文化施設協会でとっている平成9年度までの自主事業に関する統計では、毎年増えています。9年度現在では、公演回数も1万6000回、自主事業ということでやっておりますし、使っている費用も326億。300億からの費用といったものがそこに投じられている、そんなような状況でございます。 そういう中で、今お配りしている芸術情報プラザは、特に文化庁から全面的に委嘱を受けまして、文化庁の考え方とともに動いているわけですけれども、そういう中で公立文化施設の職員は特に地域性を重視する。しかし、現実の公演というのはやはり芸術性のものが求められるわけですから、このプラザのアドバイザーの方々に協力を求めたい。特にセレクション的な機能といったものを積極的に出してもらいたいということを今進めているのと同時に、この活動をどうやっているのか、これも透明度を高めていきたい。そんなような形で、いろいろな仕事を文化庁から委嘱を受けながら進めております。 それから、今年から移動芸術祭についても事務局を引き受けさせていただいておりまして、地方の文化施設が、現実に地域の中でどういうようなスタンスで移動芸術祭あるいは体験劇場を受けとめているのか、よりその施設に立脚した組織として文化庁につないでいきながら、新たな段階を迎えることができたのか、そんな仕事でございます。 △ 東京都と東京文化会館には大変お世話になっております。 △ 今お手元に資料をお配りしましたのは、先ほど説明をさせていただきまして、今、千葉事務局長からも触れられました文化庁が公立文化施設協会に委嘱して、協会の方で実施している芸術情報プラザという事業についてのパンフレットでございます。真ん中のところにアドバイザーの紹介等がございます。また、最後のページには、どんなことをやっているのかということが簡単に紹介してありますので、ごらんになっていただければと思います。 ○ それでは、本日はどうもありがとうございました。 |