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映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会

1998/12/03 議事録

映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会 (第9回)議事要旨


     映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会(第9回)議事要旨



    平成10年12月3日(金)
    10:30〜13:00 
    東海大学校友会館「富士の間」

・出席者
  協    力    者 :半田座長ほか,秋田,石田,大久保,岡田(裕),恩地,高橋,高村,田中,棚野,田名部,中山,三山,吉田の各氏
  代理出席者  :古川和氏(大林氏の代理),徳間康快氏(岡田茂氏の代理),八千草薫氏(森氏の代理)
  オブザーバー:高橋通商産業省生活産業局文化関連産業課長,和田郵政省放送行政局放送番組流通促進室長
  事    務    局 :近藤次長,結城審議官,吉田著作権課長,岡本国際著作権課長その他の担当官

1.開会

2.議事 (○:協力者,△:事務局)
  (1)事務局より,先月ジュネーブで開催された,WIPO著作権常設委員会(第1回)における検討について報告の後,概ね以下のような意見交換が行われた。

○  「内外無差別」という言葉については,外国で先に権利が定まっていて日本がそれに対応しなければならない場合とまだ外国で定まってないものに関して日本が提案する場合の2通りが考えられるが,ここではどのような意味で解釈するのか。         
  
△  御指摘の通り,内外無差別には2通りの効果がある。すなわち,ベルヌ条約をはじめとして多くの著作権関係条約は,締約国内で他の締約国の著作物だけ保護すればよいことになっており,必ずしも自国の著作物を保護することが義務づけられているわけではない。ただし,日本は各条約を締結するに当たって条約上の義務を超えて,他の締約国の著作物だけでなく,日本の著作物も同様に条約に定める水準において保護するという「内外無差別」を確保している。
  つまり,条約が国内法よりも先行している(保護水準が高い)場合には,これを締結するときに,条約上の義務ではない「自国のものの保護」も同水準に高まるという効果を持ってきた。
  ところが,現在日本は条約水準に追いついており,新しい条約を定める時に意見を提案するという立場になっているため,条約が定まった後,日本の著作物と外国の著作物を等しく保護するという前提で考えると,条約について意見を提案する場合にはまず,国内のものについてその水準まで高めるということが既に決まっていなければならないということになる。
    
○  WPPTプロトコルに関する日本提案において実演家の人格権に関する提案が欠落していることについては,国内の意見が統一されていないからということであるが,映画監督協会は何十年に渡り映画製作者連盟と団体協約を結んでおり,いわば人格権を前提として2次利用に関して報酬を支払われることになっている。今後のWIPOにおける検討の中でも人格権の問題を排除しないで国際的な議論を進めていただきたい。
      
△  人格権についても,報酬請求権と同様に,「各国は人格権を与えても与えなくてもいい」という提案をすることが可能であったが,人格権というのは極めて重要な権利であるため,そのような提案は行わなかった。
  前回のWIPOの会合では,いくつかの国が人格権の条文を入れない提案をしたが、人格権について反対だから入れていない国と反対ではないが議論がまとまっていないため入れていない国との間の混乱が生じたので,日本提案においては,人格権の条文の見出しだけはたてておき,反対はしていないという姿勢を示した。

  (2)続いて,(社)日本放送協会より配付資料について説明の後,概ね以下のような意見交換が行われた結果,今後,放送事業者の権利に関する検討は著作権審議会において行われることとなった。

〇  今後の方針としては,様々な放送事業者団体の意見をとりまとめた上で日本提案とする必要があると考えるが,日本放送協会はあくまでEBU(ヨーロッパ放送連合)案についてこだわるのか。
  
○  この提案はEBUが中心となって,世界の大多数の放送連合が議論を行ってとりまとめたものであり、ABU(アジア太平洋放送連合)としてもこれに賛成したものである。提案としては世界の放送事業者等が一つにまとまることが望ましく,日本民間放送連盟その他の放送事業者等とも議論して一定の方向性を見いだしていきたいと考える。
  なお,この提案は,あくまで放送事業者の最低限必要な要求であると考える。

△  放送事業者の権利の保護については,これまでは幅広く映像分野の著作権の問題の一つとしてこの懇談会の場で議論を行ってきたが,今後WIPOにおいて放送事業者の権利に関する条約の検討が行われる予定になっており,来年の3月までには何らかの提案が求められているため,論点を整理したものを提出しようと考えている。このような状況に鑑み,放送に係る実務的な検討を早急に行う必要があること,様々な関係者の意見を聞きながら検討を行っていかなければならないことを踏まえ,今後は著作権審議会の中にワーキンググループを設けて検討を行おうと考えている。

  (3)続いて(協)日本映画監督協会より各配付資料に基づき説明の後,概ね以下のような意見交換が行われた。 

〇  日本映画製作者協会は,実演家にも報酬請求権を認め,利益配分に関しては,権利者達を統括したセンター方式をとるのが望ましいとしている。しかし,このような方式は,センターとなる組織の肥大化や映画の入場料の高騰を招き,到底世論の理解を得られないと考える。

〇  日本映画製作者協会としては,映像分野の著作権の問題は許諾権を中心にしつつ,報酬請求権として創造に寄与した者へ経済的利益を配分することも考慮する必要があると考えている。映画は,2次使用,3次使用という考え方でなく,マルチユースを前提にとらえるべきであり,最初の報酬以外に,実演家に報酬を支払わないのは問題があると考え,具体的な提案を行った。センター方式等については,利益配分については様々な問題があるが,各関係団体の協議により解決すべき問題ではないか。例えば,脚本家等のクラシカルオーサーには著作権があるが,映画監督等のモダンオーサーには権利が認められないという不均衡を是正するため,クラシカルオーサーも含め,全てを利益配分の請求者として位置づけることも考えられる。

○  日本映画製作者協会の提案は一つの案として受け止め,本懇談会において検討すべきではないかと考える。ただし,この提案には二つの問題点がある。一点はモダンオーサーの許諾権を否定するという著作権制度全体の見直しを要する大きな問題があることであり,もう一点は,報酬請求権は利益配分の形でなく,利用の対価として認められるべきであるということである。もし,労使交渉により労働協約を締結するということであれば利益配分も考えられるが,現在検討しているのは,製作者と実演家等の権利について著作権制度上,実演,著作物を利用した時に対価をどう払うのかという新たなシステムをつくることである。また,利益配分ということであれば損失が生じたときはどうなるのかという問題も生じる。

○  日本映画製作者協会提案のような例はアメリカの映画製作にみられる。アメリカの自主制作映画は,経費が資本金を上回る場合,スタッフ等のギャラを削減して製作を行い,利益が生ずれば配分するという方法をとっているが,実態は利益が生じても配分されていないことがよくある。これが法律上制度化されれば,現状よりは改善されるのではないか。

△  「モダンオーサー」,「クラシカルオーサー」という用語は条約や法律等で用いられた用語ではなく,定義も定まっていないため,今後議論を行うに当たっては用いない方がよいのではないか。
  なお,ベルヌ条約においては,「映画に複製,翻案されている著作物」について,「映画と関係なく以前から存在していた著作物」と「映画を作るために新たに作られた著作物」とが区別されているが,日本の著作権法は区別していない。仮に,映画製作の以前から存在していた著作物であって映画に用いられているものの権利を否定することが映画製作のベルヌ条約違反になる可能性があるので注意されたい。

○  総合芸術としての映画の製作にあたっては,アメリカ型の契約ありきという方式を基本としているが,この契約をもっと重要視し,それをどのように改善していくか等を議論していく必要がある。

○  21世紀に向けた文化の発展を考えるとき,著作権法においてどのような形で人権を守っていくのかという問題が重要になる。日本映画製作者協会の提案については,「フィーチャード・アーティスト」の定義がよくわからないが,人格権にも関わる問題であり,注意する必要がある。

○  映画に関しては,契約の問題も重要であるが,著作者である映画監督等が著作権を持っていないということがそもそもの問題であり,対等な立場で契約することができるようにするため,まず映画監督等に著作権を与え,さらに与えられた著作権をどう処理していくのかという問題についても考える必要がある。

〇  契約に関しては,確かに力の強い者に有利に働くという面があるが,合意により物事が決まるという面もあるため,一つの調節弁として考え,契約により自分の利益を確保することについても柔軟に考える必要がある。

3.閉会

(文化庁著作権課)

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