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映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会

1998/10/02 議事録

映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会 (第8回)議事要旨


 映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会(第8回)議事要旨

  平成10年10月2日(金)
  14:00〜16:00 
  東海大学校友会館「富士の間」

・出席者
  協    力    者 :半田座長ほか,秋田,安念,石田,大久保,大林,岡田(茂),岡田(裕),恩地,
                      齊藤,佐藤(ギ),佐藤(忠),杉井,高村,田中,棚野,田名部,三山の各氏
  代理出席者  :古川和氏(大林氏の代理),田島炎氏(高橋氏の代理),
                      松山政路氏(森氏の代理)
  オブザーバー:梅本外務省経済局国際機関第一課長
                      高橋通商産業省生活産業局文化関連産業課長
                      和田郵政省放送行政局放送番組流通促進室長
  事    務    局 :林田長官,近藤次長,結城審議官,吉田著作権課長,
                      岡本国際著作権課長その他担当官


1.開会

2.議事 (○:協力者,△:事務局)
  事務局より,映像分野の著作権等に係る諸問題について,配付資料に基づき説明が行われ,続いて(社)日本民間放送連盟より配付資料について説明の後,概ね以下のような意見交換が行われた。

○ 著作隣接権による放送事業者の保護の問題は重要であるが,放送が保護対象として価値を持つのは質の高いコンテンツの存在が前提である。また,WIPOの専門家委員会の検討結果を踏まえても,視聴覚的実演を含むコンテンツの保護は,放送の保護に優先して行われるべきである。      
  
○ 現状では,放送事業者には著作隣接権はあるが著作権はないのか。     

○ 放送事業者が,例えば劇場用映画を放送する場合,その映画に対しては,放送事業者は著作権を持たず,著作隣接権によってその放送行為が保護される。ただし,局製作の番組で固定されたものについては,著作権を有する。

○ 固定されていない放送の権利については,著作権ではなく著作隣接権を取得するようなアプローチを考えているのか。また,その前提として,固定されていない放送に著作権がないことの条文上の根拠はあるのか。

○ 固定されていない放送も著作物として保護してもらいたいと考えている。


△ 直接,映画の著作物は何かという規定はないが,著作権法第2条3項における「含む」という書き方は映画として通常想定されているものを前提として,その周辺のものも含まれるという意味である。今の法律の解釈としては,映画の著作物は固定されたものということで確立している。

○ 今の説明によれば固定されていない放送は映画の著作物ではないということはいえるが,著作物ではないことを言わなければ著作権の対象にならないということは言えないのではないか。

〇 固定されていない放送番組を映画の著作物とはいえなくて,広い意味で映像と捉えるならば,それによって保護されるということはあり得る。

〇 NHKとしてもこの問題について検討しており,近い時期に検討結果を文化庁に提出し,この場でも資料として配付して説明したい。

  続いて映像分野の著作権等に係る諸問題について,(協)日本映画製作者協会,(社)日本芸能実演家団体協議会より各配付資料に基づき説明の後,概ね以下のような意見交換が行われた。  

〇 日本政府がWIPOに提出した条文案について,日本映画監督協会としては今までこの懇談会で主張してきたことがほとんど反映されていないと考えている。

〇 映画評論家としての客観的な立場からいうと,日本映画製作者協会の提案は,現場の人たちにとれば大変な進歩であると考える。しかし,映画著作物はもともとマルチユースを前提として当初からビデオ化などの経済的利益を狙って製作されているという考え方については,それだけが目的のようにとられるのは文化としての映画の在り方を考えると非常に残念である。

〇 映画の著作物の保護の在り方については,アメリカ型やヨーロッパ型等があるが,将来の日本映画の文化の発展を考えると,日本独自の日本型というのも考えるべきである。

△ 今回参考でWIPOに提出した実演家の権利に関するプロトコルに関する提案は,その対象範囲はあくまでも実演家の権利に関わる事柄であり,映画監督など映画の著作者に関わる権利については,この提案とは直接的な関係はない。この提案は,映画監督など映画の著作者の権利に関して日本政府として方向性を打ち出すものではなく,そのことに関しては今後ともこの懇談会で議論してゆきたい。また,プロトコルの提案に関しては,「実演家がその実演の映像の製作に寄与することを約束したときは,反対又は特別の契約がない限り,映像の利用について反対することができない。」という定めにおいて一定の方向性を出していると考えているが,報酬請求権を認めるかどうかについては各国の裁量に委ねられるものとしており,この問題に関しては今後のこの懇談会で検討していきたい。

〇 映画監督協会が以前提出した資料では,我々が長年主張してきた監督単独著作権説というものには一切ふれていない。その主旨は,以前に映画の2次的利用の調査研究協議会において監督単独著作権説をめぐって意見が2つに割れ,妥協の余地がなかったため,再びこの懇談会で同じ問題をむしかえしてはいけないということであった。だが,このプロトコルを読むと,この懇談会で,映画監督協会が主張したこと,通産省を通じて意見書を提出したことが一切無視されている。     
  
○ 監督を中心とした著作者,つまり創造に寄与した者をひとまとめにして何らかの報酬請求権をもたせるという考え方はありえるのではないか。ただし,クラシカルオーサーの関係団体がこの懇談会に入っていないので,その方々の意見も聞く必要がある。

〇 この問題は,映画製作者側と監督,実演家等との意見のすれ違いにより議論が進まなかったわけであり,乗り越えるのは非常に難しい問題である。しかし,今回の日本映画製作者協会の今回の提案はこの問題を解決する何らかの糸口を見いだしたいというお考えであることが理解でき,評価に値する。この提案に対する賛否は別として,それぞれの立場からもう少し弾力的な意見をだして解決の方向に持っていきたい。

○ プロトコル提案について,その中の第9条第1項は結局現行法第91条第2項と同じなのか。次に,第10条の報酬請求権について,国内法を作っても作らなくてもいいという意味であるならば,このプロトコルが採択されただけでは,日本におけるこの問題に関する国内的な状況は変わらないのか。

△ そのとおり。

3.今後の日程等
  事務局より,次回は11月上旬のWIPOの常設委員会の状況等の報告及び今回に引き続く議論を行うこと,日程については調整の後,後日連絡する旨を伝達した。

(文化庁著作権課)

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