映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会 ((第6回)議事要旨) |
映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会(第6回)議事要旨 平成10年6月2日(火) 14:00〜16:00 東條会館「やよいの間」 ・出席者 協 力 者 :半田座長ほか,秋田,安念,大林,岡田(裕),岡田(茂),恩地, 齊藤,佐藤(ギ),杉井,高橋,高村,田中,棚野,田名部,三山 の各氏 代理出席者 :林芳信(石田氏の代理),佐藤允(森氏の代理) オブザーバー:梅本外務省経済局国際機関第一課長 高橋通商産業省生活産業局文化関連産業課長 吉崎郵政省放送行政局放送政策課放送ソフト振興室長 事 務 局 :林田文化庁長官,霜鳥文化部長,吉田著作権課長,その他担当官 1.開会 2.議事 (○:協力者,△:事務局) 事務局より,映画の著作物の著作者等に係る問題について配付資料に基づき説明し,続いて(協)日本映画監督協会 恩地氏,(協)日本映画撮影監督協会高村氏より各配付資料に基づき説明の後,概ね以下のような意見交換が行われた。 ○ 監督協会より監督を著作権者と認めるべきとの意見があったが,映画製作には多数の関係者がおり,監督の中には映画製作に対し著作権者と同等の寄与をしている者とそうでない者が存在する。 ○ 将来の映像分野の著作物の多様な利用を考える時,映像分野における製作参加者の権利は権利として認めていく必要がある。そうしないと,想像力豊かな人材が集まらなくなる恐れがある。 ○ 監督の立場として,脚本家と音楽家,シナリオ作家は著作権者で,監督,メインスタッフは著作権者ではないということに屈辱感がある。社会的にも映画製作の実態を見ても,監督の作品として認知されており権利を認めるべきである。 ○ 昭和40年代の著作権法制定に至る経緯ではなく,デジタル環境にあわせて映像の保護をどのように図っていくかという現在求められている議論をすべきである。 ○ 映画の初期投資の費用は監督はどのように調達するのか。また,仮に監督が著作権者になったとしても,初期投資の問題等で製作会社との間で著作権が譲渡され,結局状況は変わらないのではないか。 ○ 映画を企業論理で考えるか文化として考えるか2つの考え方があるが,文化として考えなければ映画文化は衰退する。現行法のもとでは監督は追加報酬を製作者から受け取っているが,監督が権利者になると使用料は映画を利用する者から直接受け取ることになること,また,現在,日本映画の製作本数のうち映連の映画会社の製作本数の方が少ないというのが実情であることから,仮に映画監督に著作権が帰属するようになった場合でもそのような状況は生じないと考える。 ○ ヨーロッパの映画製作の例として,オーストリア在住の映画監督が,国から資金を得て映画を製作したが,この映画の著作権は監督に属し,国はその映画のオーストリアの文化機関における上映権のみを有し,配給その他全ての権利は映画監督に属すという契約になっている。この例は,映画が文化であり,芸術と認められているということを表しているのではないか。 ○ 費用を負担し,リスクを負うからといって自動的に著作権者になるものではないということを共通に認識しておく必要がある。 ○ 映画ができるまでには人材,企画力を有する映画会社の役割が必要不可欠である。ヨーロッパにはメジャーの映画会社はなく,全て個人が資金を調達し,映画を製作し,配給は興行会社に依頼する方式であり,アメリカや日本の方式とは違う。 ○ 日本は確かにアメリカ型の映画製作方式が多いが,現在はヨーロッパ型の映画製作方式も増えつつある。 〇 監督がプロダクションを作り,映画を製作すれば著作権は得ることができる。しかし,著作権は基本的に自然人に発生する権利であり,著作権法第29条を改正する必要はある。 〇 基本的に自然人,ここでは監督,メインスタッフ等が著作権者となることは当然と考えるが,実際問題としてこれまでのルールを根本的に改定しないと混乱が生じる恐れがあると考える。また,クラシカル・オーサーのみに著作権が認められていることとの均衡がとれていないと思う。 〇 現在,映連の製作本数が減っており,映画監督協会,あるいはメインスタッフ等の各協会にさまざまな問題が寄せられている。その一つの例が伊丹裁判である。この裁判では,映画監督側は,ビデオ化に対する追加報酬の支払いは,映画監督協会と映連との覚書により映画製作業界の慣行となっていると主張したが,東京地裁は追加報酬の支払いは慣行でもなく,映画の監督契約締結前後の経緯等から2次的利用に対する報酬も含めて契約が締結されたと判じ,現在も高裁で争われている。 〇 現行法でも監督が映画製作者と無関係に民間企業等より資金を調達するなどにより自主制作をすれば,監督は著作権者となることになる。著作権法第29条は,映画製作者の製作に参加すれば著作権が映画製作者に帰属するという規定である。 〇 6月8日からジュネーブでWIPOの視聴覚的実演に関する専門家会合が開催されるが,この懇談会の意見の方向性が見えない状況であることから,日本政府が意見を主張することができないのが実情である。また,3月に策定された「文化振興マスタープラン」においては映画関係者の人材育成が明記され,他省庁においても映画等の文化関連産業の振興が検討されている。この懇談会においても,文化政策の問題としての視点から論じることが重要である。 〇 映画は将来デジタル化等の問題も含めると,ますます多様な利用形態が予想される。著作権の在り方も,映画業界全体の問題として論じる必要がある。 〇 映画製作者としては,現行法は維持すべきというのが基本的な考えであり,法改正の議論になってしまうと一致点は見い出せない。問題の核心が2次使用料の配分であるのであれば,実務的に解決が図れるのではないか。 〇 デジタル化,グローバル化の中でソフトの流通を増やすことについては各関係者に異論がないはずであるから,制度改正に当たってはソフトの流通が阻害されうるような改正は避けるべきである。 △ 来週WIPOの視聴覚的実演に関する専門家会合が開催されるが,アメリカの提案もこれまでとは異なり,一定程度実演家の権利を定める方向に向かっているとの印象を受ける。 3.今後の日程等 事務局より,次回は放送事業者の意見も含めて映像全体の保護の在り方についてについて議論を行うこと,日程については事務局において調整の後,後日連絡する旨を伝達した。 |