映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会 ((第4回)議事要旨) |
映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会(第4回)議事要旨 平成10年3月2日(月) 14:00〜16:00 東京全日空ホテル「青雲」 ・出席者 協 力 者:半田座長のほか,秋田,石田,大久保,大林,岡田(茂),岡田(裕),恩地,齊藤,佐藤(ギ),佐藤(忠),杉井,高橋, 高村,田中,棚野,田名部,三山,森,吉田の各氏 オブザーバー:伊藤外務省経済局国際機関第一課首席事務官,高橋通商産業省生活産業局文化関連産業課長 吉崎郵政省放送行政局放送政策課放送ソフト振興室長 事 務 局:林田文化庁長官,遠藤文化庁次長,霜鳥文化部長,板東著作権課長,片山マルチメディア著作権室長,その他の担当官 1.開会 2.議事 映像分野の実演の保護の在り方に関して,関係団体の各協力者(石田,大林,棚野)より提出された資料について説明があり,その後意見交換が行われた。 (○:協力者,△:事務局) ○ 実演家の経済的権利の側面だけではなく,むしろデジタル化・ネットワーク化の時代にあって,著作権法の中で実演家が人格的にどうあるべきかを議論すべきと考えている。 ○ 契約の実態をみると,実演家と映画製作者の間には文書契約はほとんどなく,仮に文書契約があっても製作者側に権利を握られてしまう状態である。また二次的な利用についてのルールがないのも実情である。 ○ 放送番組の権利処理における芸団協とNHK・民放との契約はいつから開始されたのか。 ○ 昭和46年からである。現行著作権法と共に歩んでいる。 ○ 映画について言えば,NHK・民放との間で2年間で3回放映まで許可するという契約が長い間続いた。しかし,最近ではテレビ局の発言力が増し期限をなくして権利を持とうとする傾向に移行しようとしている。 ○ 今の説明は実演家との関係というよりは,放送事業者と映画製作者との関係の問題であろう。芸団協が権利を集中管理する団体を作り放送番組の権利処理を始めたいきさつは,単に法律で実演家の権利が明記されるだけでは実効性に乏しいという理由からである。 ○ テレビ局が外部発注した製作番組における契約においては,将来作られるであろう開発技術に対してまでも番組製作会社が権利を持つという内容や,音の利用についても権利を放棄せよいう内容のものが存在する。 ○ 放送番組のビデオグラム化に関し,1〜3000本まで料率は6%という説明があったが,これは全出演者に対してこれが当てはまるのか。 ○ その通りであり,例えばドラマで言えば,画面に映っている俳優やその番組の中で流れる音楽の演奏家、歌手等すべての実演家を含む。 ○ それを芸団協がまとめて徴収して,分配しているのか。 ○ その通りであり,一つのテレビ番組の目的外利用で600人ぐらいの人に分配することもある。分配は1年に1回 まとめて行う。 ○ 番組の部分使用の別途協議とは具体的にはどのようなものか。 ○ 様々なケースが考えられるが,その都度金額を検討している。 ○ 先程言われた番組製作会社の契約内容のことだが,これは最近のことではないか。 ○ 将来作られるであろう開発技術までも権利の対象とする契約内容は,最近テレビ局から番組製作会社に要請され,そういう経緯もあり番組製作会社も実演家に対してそのような契約をしているのだろう。 ○ 制作プロダクションとの番組発注契約で,テレビ局が完全にあらゆる放送番組をマルチユース展開する権限の譲渡を受けるという内容の契約書を見た覚えはない。今問題になっているのは,二次利用窓口管理権で,窓口管理権とは二次利用ビジネスを窓口となりコントロールすることで,二次利用権を取得することではない。したがって、テレビ 局が制作プロダクションとの契約で実演家の権利を剥奪するようなことはしていない。 ○ 製作著作が番組製作会社に認められた番組については言われたとおりであるが,100%近く番組製作会社が作ったとしても,先程のような権利処理を要請される番組も少なくない。 ○ EU理事会指令の中で「貸与の相当なる報酬を受ける権利は,著作者また実演家はこれを放棄することができない。」という表現になっているが,このこととワンチャンスに関する「実演家の権利をすべて否定しているのではなく,実演家が完成した映画の利用について権利を及ぼしたいのであれば」という映画製作者側の説明との違いを法律の立場から説明願いたい。 ○ 俳優も製作者になるという意思表示をすればよいという意味で説明申し上げたものである。日本でもそのような例が見られる。 ○ お金を出して映画製作を担えば,権利を与えるという印象を受ける。テレビ放送番組においてドラマには2種類あり,テレビ局が直接製作するものと外部の製作会社が製作したものとがある。前者には二次使用・目的外使用もある程度実演家の権利が認められている。しかし後者については通常の映画の著作物として取扱われている。後者も放送用であるのだから,二次使用等に対する実演家の権利を認めてほしいと主張している。 ○ 貸与についての報酬請求権が放棄できないという規定については,(契約意識・法意識の比較的高い)ヨーロッパでも当事者間の力関係があることから生じたものである。我が国ではワンチャンス主義で相当な対価を払って1回で済ませようということだが,未知の利用については対価そのものの計算が不可能であるので,それはワンチャンス契約の中に含まないと見るのが妥当であろう。制度面において契約における法的支えがヨーロッパに比べ不足している。 ○ 著作権と隣接権の2つの権利があるが,著作権は製作者に帰属すると著作権法にうたわれている一方で,隣接権ができたため権利の帰属が曖昧になってきているように思われる。しかし根幹になるのは著作権であると思う。ワンチャンス主義について,最初の契約で決定しておかないとその後の計画が立てられない。 △ 著作権と隣接権の関係については,隣接権の方が後からでてきた権利であるが権利同士ができるだけ衝突しないように法整備しており,基本的には2つあわせて広い意味での著作権制度を形成している。なお,この映像分野の各権利者の保護の在り方については,一方で音の分野,すなわちレコードについては,ワンチャンス主義ではなく複製ごとに権利が働くという形になっており,そのことと映像とのバランスをどのように考えていくかという問題が提起されている。 ○ 隣接権が規定された契機はレコード会社からの要求であったと思う。作詞家・作曲家だけでなく歌手のウェイトも大きいことから認められていったが,当時は隣接権の創設について相当もめた。隣接権が規定されたのはいつ頃か。 △ 隣接権自体は昭和46年からであるが,旧著作権法時代にも一部著作権の中で隣接権に相当するものをカバーしていたものもあった。 ○ 著作権の中で歌手については権利を認めていなかったのではないか。 △ 旧著作権法の時代から演奏歌唱という形で保護していた。そして昭和46年以降隣接権で保護している。 ○ 現行著作権法を現代の流れの中で改正すべきという声がある。現行著作権法において既に措置済みであるから新たな権利は認められないという議論をしてしまうと,解決の糸口が見つからない。映画業界を活性化させたいという思いを根底に,著作権法の見直しを考えていきたい。 ○ 新しいメディアに関してはプロダクションと芸団協の著作隣接権センターの間で委任・分配の関係が成立しないケースもある。アウトサイダーに関しても議論が必要である。民放連としては,実演家の権利を守りつつ放送番組の円滑な流通をはかるには権利の集中管理を進めていくしかないと思われる。出演者全員との個別契約は不可能である。文書による出演契約も難しいと思われる。団体協約の場合,アウトサイダーをどうするのか。権利の集中管理の基盤整備には何らかの新しい法制度の確立が必要に思われる。 ○ 現行著作権法でこのような規定になっているからという主張は現在では通用しない。映画監督たちも著作権法をどのようにかえるべきか,日々考えている。1960年当時映画がビデオ化されること等はだれも想像しなかったという状況から現在にいたっているのであり,未だにワンチャンス主義といわれても困る。 ○ 「ワンチャンス」という言葉に対する誤解があるようだが,最初の契約で他メディア利用までみこして出演料を決定しないと,その後の利用に関する対応ができなくなる。 ○ 経済的権利だけでなく人格権の問題について,デジタル化・ネットワーク化の時代に実演家が一番被害にあう可能性が強い。旧著作権法では判例等により著作者とされていたと思う。様々な利用形態があり,ユーザーの中には著作権法を無視する者もおり,人権として実演家にも人格権を認めてほしい。21世紀に向けての創造者のインセンティブを高めるためにも必要不可欠である。 ○ 著作権法で人格権を規定するのは不必要であり,民法で十分に保護されるものであると思われる。 ○ 侵害されるのが実演家の人格権である以上,著作権法で規定するのが道理であるように思われる。民法だと損害賠償に止まり,差止めができないように思われ,あまり効力が発揮されない。さらに刑事罰を付けられれば抑止力にもなる。 ○ 実演家の人格権の侵害について様々なケースが列記されているが,少なくとも映画製作者はそのような侵害行為をしていない。他のメディアでの事例であり,そのような業界の人たちの意見を聞いた方がよい。 ○ 立場は違うかも知れないが,著作隣接権者であるレコード製作者と実演家とはパートナーとして相互協力しながら音楽産業,音楽文化発展のために活動している。このことは映画製作者と実演家の間でも同じことがいえるであろう。なお,人格権侵害は大抵第三者が行う行為であり,映画製作者が人格権侵害をすることはないと思う。従って,映画製作者も実演家の人格権を著作者人格権と同様に人格権を認めてくれると信じている。法改正についても協力しながら一緒に考えられればよいと思う。 ○ ワンチャンス主義の説明では,一回で決めてしまわないと後の対応ができないという理由であったが,今後現れるであろうメディアについては,相当な広がりを見せるであろうということはある程度予想できる。そのような時代を迎えるにあたり,映画というものを産業として芸術として製作者と実演家がどのようにお互いを支えあえるのかという大所高所からの議論をしないと,細かい所での対立に終始してしまう。次々と映画作品が新しいメディアに使われていくことになると,映画会社そして実演家にも損害を与えることになりきちっと報酬を得られなくなる。将来像をきちんともち,著作権制度がどうあるべきかを考えていくべきである。 ○ テレビ局が製作する番組は著作権法上放送の技術的手段による固定でできあがる放送番組であるが,番組製作会社が作成した番組については映画の著作物としての製作になり,両者には大きな違いがでてしまう。番組製作者は利が薄い仕事をしているので多チャンネル化を迎える中で,コスト回収をしなければならず番組を少しでも多く二次利用していきたい。この点は映画製作者よりも切実である。 ○ 元々レコード製作者や歌手は著作権に関心がなかったが,途中から権利主張してきたという歴史的流れを見ないといけない。ワンチャンス主義について様々な意見があったが,総合的に見て俳優にだけ独立して権利を認めることはできない。アメリカとヨーロッパの映画事情だが,ヨーロッパにはメジャー会社はなく,ほとんどがプロダクションが製作を行っている。実態の把握が必要である。 ○ アメリカの後追いばかりでなく,映像技術で最先端を走っている我が国において,新しい在り方を検討していくべきと考える。 ○ 20年前舞台の台詞として発せられた「著作権」という言葉に対し観客たちはあまり反応を示さなかったが,現在ではこの言葉に対する反応は全く違い,「著作権」というものが人々に浸透してきている。この懇談会が新しい秩序を生み出す場になればよいと思う。 ○ 製作者と実演家の意見は今のところ平行線をたどっているが,運命共同体であることは事実であり,その点からも協調性を見いだしていくべきだと思う。デジタル化により映画のコマ切れ利用が盛んに行われているが,これは実演家と共に映画製作者にとってもゆゆしき事態であり,実演家の人格権はこの場では対立するようなものではないと思う。問題になるのは経済的権利であろう。何とか一致点を見いだせるように努力したい。 3.今後の日程等 各委員のご都合をお伺いし調整の上,開催日を連絡する旨の発言があった。 |