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映像分野の著作権に係る諸問題に関する懇談会

1997/11/21 議事録

映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会 ((第1回)議事要旨)


 映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会(第1回)議事要旨

 平成9年11月21日(金)
 15:00〜17:00
 東條会館「やよいの間」

・出席者
 協力者   :半田座長のほか,秋田,安念,石田,大林,岡田(茂),岡田(裕),
         恩地,佐藤(ギ),佐藤(忠),杉井,高野,高橋,高村,棚野,
         田名部,中山,三山,吉田の各氏
 オブザーバー:梅本外務省経済局国際機関第一課長
         高橋通商産業省生活産業局文化関連産業課長
         吉崎郵政省放送行政局放送政策課放送ソフト振興室長
 事務局   :林田文化庁長官,遠藤文化庁次長,霜鳥文化部長,板東著作権課長,
         その他の担当官

1.開会

2.議事 (○:委員,△:事務局,◎:オブザーバー)
(1)本懇談会の進め方について
  事務局より,本懇談会の進め方について配布資料に基づき説明があり,原案どおり議事要旨を公開することが可決された(なお,各協力者が作成した資料を事前配布ができるようにしてほしい旨の発言が協力者からあり,この点については了承された)。

(2)映像分野の著作権等に関する現状と課題について
  事務局より,映像分野の著作権等に関する現状と課題について配布資料に基づき説明があり,その後質疑応答が行われた。

 ○ WIPO実演・レコード条約議定書の作成のスケジュールについて,平成10年1月15日までに各国から条文案を提出することとなっているが,日本政府としては昨年12月の外交会議と同様,基本的にB案に立脚して国際的に行動し,他方,国内問題に関しては本懇談会で検討していくと考えてよいか。
 △ 国際的にはWIPO実演・レコード条約についての検討において課題として残された部分につき,再検討をしようということであり,国内的にも議論していくべきということから懇談会を開催しているものである。1月15日までに政府全体の意見を取りまとめるのは困難であるが,これから半年で我が国の方針をまとめたい。A案・B案の問題については従来の延長としてではなく,あるべき保護の在り方という観点から議論すべきである。最終的には第1小委員会での議論になっていくので,本懇談会では大きな方向性というものを議論いただきたい。
 ○ ここでの議論で方向性を定め,議定書への日本政府としての対処を決めていくという理解でよいのか。
 △ 本懇談会の議論を踏まえて対応していきたいと考えているが,仮に最終報告が出ないと対応できないということではない。
 ○ 実演家の立場から言わせてもらえば,最終的な方向性だけでも早急に出してもらいたい。
 ○ 映画の繁栄のために,何が良くて何が悪いのかという点から議論を展開していかなければならない。各国には異なった見解が見られるが,まず映画について正確な理解をもつことが必要。アメリカはすべて契約優先の傾向が強まっているが,ヨーロッパ各国の映画に比べアメリカ映画には勢いがあり,我々はアメリカと行動を共にしたいというのが率直な気持ちである。
 ○ 監督協会としては,25年前にできた著作権法を改正してほしいという立場は変わっていないが,十分に話し合いをしていきたい。
 ○ 映画は総合芸術であり,また、映画を製作するために全財産を投げ出すリスクも伴うものであるので,ワンチャンス主義でクリアすることは適当。決算書にも表れているのだが,映画製作者は映画製作以外の収入でしのいでいる状況である。映画の活性化をしにくくする状況を作らないでほしい。
 ○ 実演家も映画製作者も共に良い映画を作ろうと努力しているところは共通している。91条2項,92条2項の廃止については,自然人としての権利を考えた上で議論を進めていくことが必要。
 ○ 現行法における映画の著作物の定義では,固定が要件になっているが,諸外国では生放送を著作物としている国もあり,我が国でも生放送を著作物として保護してほしい。また,放送事業者の権利の拡大に関する要望書も提出しているところである。さらに,著作権審議会マルチメディア小委員会第一次報告書にある分野別の権利処理のための集中処理機構も熱望する次第。なお,放送事業者はリピート放送の場合は94条2項に基づき実演家に報酬を支払っている。
 ○ 円滑な流通は映画製作に関するスタッフも望んでいる。しかし,現在は映画製作者とスタッフとの間に円滑な流通に関する適正なルールが形成されていない。16条に列記されている以外にも実際には映画製作に携わる人々には様々な人々がいる。映画製作において,どのような人達が著作者であり,それらの者のルールをどうするかが,この席上で話し合われることを望む。
 ○ 契約や映画製作に伴うリスクと権利の在り方とは別の問題だと思う。権利の問題についてもう少し客観的に考えていくべき。
 ○ 出資者と企画プロデューサーとの関係を考えると,昔は,製作・配給・興業をひとつの会社で行っていたため出資者に権利が集中していたが,今は分化してきている。出資者=映画製作者という認識が持たれているようであるが,映画の著作者には監督・スタッフのほかに「制作者」もいる。出資をしないプロデューサーに権利が残らないのは問題。
 ○ テレビ番組製作社にとっては,自分たちが作ったものが自分たちのものにならないという,ある意味では映画製作者の方々より切実な問題がある。我々は二次利用の中に活路を見いだしているのであり,その立場から言えば,映連や映像ソフト協会と立場は同じ。
 ○ 我々放送事業者は権利者であると同時に著作物の利用者でもある。その辺りをきちっと区別して論議したい。放送事業者の送信可能化権については、放送事業者が海賊版対策に苦労していることもあり,是非議論いただきたい。
 ○ 国会審議にもあったように,契約上の力関係が対等ならばワンチャンス主義もよいが,とてもそのような現状ではない。大手プロダクションには,「二次利用について云々いうなら,この仕事はやらせない。」という契約書を強要しているところもあるというのが現状。
 ○ 立場によって議論が分かれるのは理解できるが,経済学的に言えば,実演家の権利をどのように決定するのかが問題ではなく,権利の内容を明確に決めておけば,かつ自由な取引が行われるとすれば,最適になるはず。しかし,別の富の配分という観点からは問題かもしれない。国際的な動向を踏まえて議論することも必要であると思う。
 ○ 御意見が立場によって180度異なり,このままだと前回の協議会と同じように結果がまとまるのかは悲観的に思われるが,前回の協議会の時と異なるのは国際的な動向か。
 △ 国際的な議論が行われているという状況の違いはあるが,この5年のことを考えると映像の利用の仕方が大きく変わってきており,関係者への適正な利益の配分を考えなければならない。また前回の協議会では現行法の中で契約の秩序をどのように作っていくかという議論だったが,今回は制度面での対応も含めて,より大きな観点から議論願いたい。
 ○ アメリカ映画には勢いがあるが,それは流通機構のためである。ヨーロッパの場合,権利を尊重するが背後には国家的な保護があり,小さな独立プロダクションも成り立つ環境がある。いろいろな国で自国語の映画がなくなっている状況であり,日本語の映画がなくなるという状況を考えれば,日本映画の活性化ということを考えなければならない。
ただ映画は水ものであり,ヒットするかどうか分からない段階で契約するのはリスクをかなり負うことになる。
 ○ 権利の帰属に関しては,契約自由の原則のもとにおいては,人格権を除いて,実演家・映画監督等と映画製作者の法律の規定上どちら側に帰属するかが決め手ではないように思われる。今回の問題を著作権法だけで処理するのは不十分であり,競争法や映像の保護そして流通も含め総合的な観点から考えなければならない。
 ○ 契約すれば一応の秩序はあるが,現在出てきつつある人格権不行使特約などは,今後裁判で問題になりうる。ただ何でも著作権で規定するのもどうかと思われる。それから,映画の著作物に認められている頒布権については権利が強すぎると思っている。
 ○ 前回の協議会では映画の二次的利用に関してであり,今回の懇談会では映像分野に関する著作権の諸問題ということで取り扱う範囲がかなり異なる。対象の範囲を拡げたということは,大変意義のあることである。この問題解決の中心に著作権制度をもってくるべきである。それと同時に,著作権制度以外の対応も必要であり,何らかの共通理解を得るよう努めるべきである。
 ◎ 通産省としては,映像産業の発展のために著作権保護及びその処理がどうあるべきかということについて関心をもっている。ソフトの流通の円滑化及び映像関係者の意欲向上につながるように,著作権関係を整備することが大切。映像産業発展のためには様々なポイントがあるが,著作権の問題は重要課題の一つ。関係者間でも,良い映画を作りたいという点では共通していると思われるので建設的な議論を期待。
 ◎ 多チャンネル化という状況に対応し,多くの人が良い番組を見られる環境づくりが郵政省の仕事である。これには著作権の問題が密接にかかわってくるので,我々も勉強したい。WIPOの問題に関しても,日本政府の対処方針案を決定する場合には,積極的に意見を述べたい。
 ◎ 日本としての統一的な方針を作っていくのは困難であろうと実感したが,日本としての立場・考え方がないと,常に国際的な検討の結果の受け入れにならざるをえない。外務省としても今回はぜひ共通点を見いだしていただき,日本としての意見を持って,国際的な検討の場面に望みたい。

3.今後の日程等
  事務局より,今後は本懇談会を月1回くらいのペースで開催したいと考えている旨,及び次回の懇談会の具体的な日程については各協力者の日程を調整した上で別途連絡することとし,当面は映像分野の実演の保護の在り方について検討を進めていく旨の発言があった。 

(文化庁著作権課)

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