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映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会ワーキング・グループ

1999/10/26 議事録

映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会ワーキング・グループ(実演家の権利の在り方検討グループ)(第3回議事要旨)


 「映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会ワーキング・グループ」(実演家の権利の在り方検討グループ)(第3回)議事要旨

平成11年10月26日(火)
10:30〜13:00
東海大学校友会館「朝日の間」

・出席者
協力者:半田座長ほか,秋田,安念,岡田(裕),児玉,齊藤,高橋,棚野,福田,古川,三山,吉田の各氏
橘淹洌舗F森次外務省経済局国際機関第一課課長補佐
河本通商産業省生活産業局文化関連産業課総括班長
村上郵政省放送行政局放送政策課放送番組流通促進室放送ソフト振興係長
事務局:吉田著作権課長,石野国際著作権課長,尾崎マルチメディア著作権室長,その他の担当官

1.開会

2.議事

(1)事務局より,実演家の権利の在り方について配付資料に基づき説明が行われた後,概ね以下のような意見交換が行われた。(○:協力者,△:事務局)

○ 実演家の経済的権利については,1.実演利用について実演家には基本的には許諾権が与えられるべきである。2.しかし,制度上許諾権を認めるだけの規定では実際の実演の利用に安定性を欠くという強い反対があれば,実演家がその実演の映像の製作に寄与することを約束したときは,反対の又は特別の契約がない限り,映像の利用について反対することはできないという定めの検討をすることもやむを得ない。3.ただし,この場合,実演家が衡平な報酬を請求する権利を持つことが規定されなければならない。4.その実際上の権利行使の方法として,団体による包括的な権利行使システムが適切である,との4項目の要望を行っている。

○ 「実演家」の範囲はどこまでと考えるか。

○ 基本的にはエキストラを含まなくてもいいと考える。エキストラには,1人1人にではないが,グループを単位として多少の経済的な利益がいくような配慮をしている。

○ 「実演家がその実演の映像の製作に寄与することを約束した場合」について,約束する者と約束していない者がでるなど,実演家同士の間で意見の不一致が生じた場合はどうするのか。

○ 映像作品の場合,基本的には実演家が許諾権を持つべきだと考えるので,個々の権利行使については個々の実演家(権利者)の問題であり,契約によって自己の利益を確保するといった契約があればそれが優先され,逆に,契約がなければ,団体による報酬請求権の行使となり,同じ実演家でも権利行使の仕方が分かれる。

△ 「実演家がその映像の製作に寄与することを約束した場合は利用に反対できない」というが、通常は全ての実演家が何らかの形で出演契約をし,それによって映画製作に参加することになるのだろうから,「約束」というのはその「契約」を指し,実演家は必然的に映像の利用に反対できないということになるのではないか。

○ 確かに「約束」という表現については「契約」が前提となるべきだろうが,実態としては,ほとんどの場合出演契約や契約書を交わすといったことはないように思われる。

○ 出演の合意は契約になるのではないか。

○ 書面の有無に関わらず,エキストラも何らかの形で寄与するという意図を持って参加しているので,広い意味では契約関係にあるということになる。実演家にエキストラを含めるかどうかが問題であり,エキストラの中に許諾権を持つ者と持たない者の2種類あるという前提は考えがたい。

○ メインの俳優とは契約書を交わしているが,セリフが一言二言だけの俳優とは契約書を交わさず,口頭契約によるのが慣例である。エキストラに関しては,実態上も所属する事務所は俳優とは異なり,役や出演作品により仕事を依頼するわけではないので,実演家とは分けて考えるべきであると考える。

○ WIPOに提出した日本提案の第9条(契約上の取極)中にある「反対又は特別の契約」とは誰との間で交わすものなのか。

△ 基本的には映画製作者と実演家の関係である。第三者が権限なく複製や頒布した場合に,実演家にそれに対抗する権限が残りうるのではないかという考えによりこの条文を提案している。

○ 出演するということをもって契約がなされたと考え,反対又は特別の契約がない限り利用には反対できないとすると,どういう場合に許諾権が行使できるのか。

○ 出演契約するときに,1回の利用のみといった条件をつけた上で製作者と契約が結ばれれば,許諾権が行使されうる。

○ 許諾権はそもそも作品が作られて発生するものであるが,作品が作成される前に条件をつけるのはどのような権利に基づくものか。

○ 実態としては,昔の映像を流されることを嫌がる実演家は多く,それを予測して条件をつけるといったことは起こり得る。

○ 昔の映像が流されるのを嫌がるのは人格権の問題であり,撤回権のようなものを行使することとなると思われるが,その場合製作者に与える不利益は非常に大きいため,行使する実演家が不利益を補償すべきだと考える。

○ 実演家の権利については,経済的権利単独では考えられないし,実演家の範囲をエキストラ以外全てとするのも納得しがたい。映画の著作物の中における実演とはどういったものかという議論が必要である。

○ 実演家に二次的利用に関する報酬請求権を認めることとする場合の「報酬支払義務」は,二次使用を行う利用者が支払うのか,著作権者が支払うのか。

△ 利用者が使用料を支払うのが一般的なケースであると思う。

○ 現実には両方である。権利処理については契約書にも記されているが,映画製作には多業種が関わっており,また契約処理を行う者もまちまちであるので,混乱しているのが現状である。

○ 実演の利用と映画製作物の利用は重なるのか。実演の利用と映画著作物の利用を分けた場合,実演の一次利用が映画の製作だとすれば,二次利用者は映画の著作物について許諾権を行使する映画製作者となり,放送事業者ではないのではないか。放送事業者は,映画の著作物の二次利用者である。

○ ここで問題にしているのは実演の二次利用ではなく,映画の二次利用である。

○ 我々は映画の放送等を二次利用だとは思っていない。総合的にマルチユースする映画という1つの商品と考えているので,映画に関しては,一次利用,二次利用といった分け方はしていない。

○ 全俳優に追加報酬を払うことは考えられない。監督等を含め他の著作者たちにもすべて追加報酬を払うことになると,現在の商慣習を大きく変えねばならず,大変なことである。それを承知のうえで俳優だけでもそういう措置をして欲しいと主張しているのか。

○ 実演家だけの利益を求めているわけではなく,映画製作者との間でいいルールを作っていきたい。

○ 法的な枠組みと実務については,整理して議論してはどうか。

3.今後の日程等
 事務局より,11月開催予定のWIPO著作権等常設委員会及び次回の日程についての連絡後,閉会となった。

(文化庁長官官房著作権課)

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